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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】杭の施工管理システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/06 20060101AFI20231227BHJP
   G16Y 10/30 20200101ALI20231227BHJP
【FI】
E02D13/06
G16Y10/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021108377
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006016
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】早川 剛志
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 政善
(72)【発明者】
【氏名】深野 順一
(72)【発明者】
【氏名】勝山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】春山 豊茂
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191396(JP,A)
【文献】特開2020-148055(JP,A)
【文献】特開2002-351533(JP,A)
【文献】特開2003-261928(JP,A)
【文献】特開2019-27855(JP,A)
【文献】特開2017-117147(JP,A)
【文献】特開2018-145713(JP,A)
【文献】特開2017-218834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/06
G16Y 10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置を備えた杭打機による杭の打設状況を管理する杭の施工管理システムにおいて、
前記杭打機は、杭を実際に打設した際の施工データを所定の打設深度毎にリアルタイムで計測する計測手段と、該計測手段から出力された施工データをデータ転送ファイルに変換する転送用変換手段と、インターネットを介して前記データ転送ファイルをクラウドサーバに転送する杭打機側外部通信手段とを備え、
前記クラウドサーバは、インターネットを介して前記データ転送ファイルを受信するサーバ側外部通信手段と、受信した前記データ転送ファイルを外部端末で閲覧可能な閲覧データに変換する閲覧用変換手段とを備え、
前記外部端末から前記閲覧データを随時閲覧できるようにしたことを特徴とする杭の施工管理システム。
【請求項2】
前記クラウドサーバは、受信した前記データ転送ファイルを基に三次元画像データを作成する三次元画像データ生成手段と、該三次元画像データに基づいて前記杭の打設状況を前記外部端末に三次元画像で表示する三次元画像表示手段とを備えている請求項1に記載の杭の施工管理システム。
【請求項3】
前記クラウドサーバは、前記三次元画像とともに、少なくとも設計、製造、施工に係る各種パラメータ関係のデータをBIM/CIMデータとして保存する請求項2に記載の杭の施工管理システム。
【請求項4】
前記クラウドサーバは、前記閲覧データに基づく所定の項目の承認を求める承認画面を前記外部端末に表示する承認画面表示手段と、前記外部端末による承認入力に基づいて施工の可否を判断する承認確認手段とを備え、該承認確認手段によって承認された場合に施工の継続を許可するようにした請求項1~3の何れか一に記載の杭の施工管理システム。
【請求項5】
前記クラウドサーバは、外部端末から入力された設計データを設計転送ファイルに変換する設計用変換手段を備え、
前記制御装置は、前記サーバ側外部通信手段からインターネットを介して転送され、前記杭打機側外部通信手段で受信した前記設計転送ファイルを入力データに変換する入力データ変換手段と、該入力データを自動的に入力する自動入力手段とを備えている請求項1~4の何れか一に記載の杭の施工管理システム。
【請求項6】
前記クラウドサーバは、蓄積された施工データを機械学習し、最適な施工手法を解析し、解析データを算出する解析手段を備えている請求項1~5の何れか一に記載の杭の施工管理システム。
【請求項7】
前記杭を製作する各工程の状況を杭データとして記録する製作過程記録手段と、該杭データに対応した識別標識を作成する標識作成手段とを備え、
前記制御装置は、前記杭に添付された識別標識を読み取る標識読み取り手段と、該標識読み取り手段で読み取った識別標識のデータを読み取りデータ転送ファイルに変換する読み取り変換手段とを備え、
前記クラウドサーバは、前記杭を製作した工場の外部端末から入力された杭データと、前記杭打機側外部通信手段からインターネットを介して転送され、前記サーバ側外部通信手段で受信した前記読み取りデータ転送ファイルに基づく識別標識のデータとを照合し、施工対象の杭であるかを判断する杭照合手段とを備え、該杭照合手段によって施工対象の杭であると認められた場合に施工の継続を許可するようにした請求項1~6の何れか一に記載の杭の施工管理システム。
【請求項8】
前記制御装置及び前記計測手段に接続された無線送受信機と、該無線送受信機を介して前記制御装置の操作及び前記施工データの表示が可能な管理用端末とを備えている請求項1~7の何れか一に記載の杭の施工管理システム。
【請求項9】
前記クラウドサーバは、受信した前記データ転送ファイルから各種書類に記入されるパラメータに関するデータを抽出し、前記各種書類の電子データを作成する書類データ作成手段を備えている請求項1~8の何れか一に記載の杭の施工管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機による杭の打設状況を管理する杭の施工管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
杭の施工では、構築する構造物の内容に基づき、設計図書に基づいた事前打ち合わせを経て、工法、杭種、杭径、継手、杭本数、杭長、掘削長、全長、ヤットコ、柱状図等(以下、杭セット情報という)を決定し、杭セット情報を基に施工費用の見積書、施工計画書、施工品質計画書、安全計画書等を作成し、これを基に杭の製造、使用する装置(杭打機)等が手配される。
【0003】
実際の杭施工では、杭セット情報を基に設計データを杭打機の制御装置に入力し、設計データに基づいて杭の打設作業を行うとともに、実際に杭を打設した際の施工データを計測し、この施工データに基づく日々の工事進捗状況が施工管理者から工事責任者や関係各所に報告される。
【0004】
そして、工事責任者は、この施工データを基に杭の施工状況を把握して管理するとともに、施工データを記録・蓄積し、今後の杭施工に役立てている。
【0005】
従来、この種の施工データは、杭打機に取り付けられた計測装置(データロガー)に記録された施工データを施工管理者が記録紙に打ち出し、その記録紙を工事責任者や関係各所に提出し、保存することが一般的であった。
【0006】
しかしながら、このような従来の技術では、記録紙の紛失や汚損により、施工データが保存できない場合があるという問題があり、また、施工管理者や工事責任者が記録紙に記録されたデータを直接入力して電子データとする場合、入力の際にデータが改ざんされるおそれがあった。
【0007】
そこで、近年では、得られた施工データをメモリーカード等の記録媒体に保存し、記録媒体より取り出したデータを外部端末でメールに添付して工事責任者等に送信するもの、杭打機に装備されている操作パネルの画面に表示された施工データをスクリーンショット等の画像データとして保存し、インターネットを介して保存した画像データをサーバに送信するシステム等が開発されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-218834号公報
【文献】特開2018-145713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、記録媒体に保存されたデータや操作パネルの表示画面の画像、即ち、従来の記録紙の代替品を送信するものであり、直接施工データを提示するものではないため、リアルタイムに施工データを管理することができないという問題があった。
【0010】
また、従来の技術では、工事責任者等が送られた施工データを確認し、それに対して別途承認手続きを行うため、施工データの提出から工事責任者等の承認を得るまでに時間を要するという問題もあった。
【0011】
さらに、杭の設計、製造、施工等に係るデータが工事責任者、施工管理者、設計事務所等の関係各所においてそれぞれ別個に管理されていたため、データを一元管理することができないという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、リアルタイムで施工データを管理することができ、杭の設計、製造、施工等に係るデータを一元管理することができる杭の施工管理システムの提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、制御装置を備えた杭打機による杭の打設状況を管理する杭の施工管理システムにおいて、前記杭打機は、杭を実際に打設した際の施工データを所定の打設深度毎にリアルタイムで計測する計測手段と、該計測手段から出力された施工データをデータ転送ファイルに変換する転送用変換手段と、インターネットを介して前記データ転送ファイルをクラウドサーバに転送する杭打機側外部通信手段とを備え、前記クラウドサーバは、インターネットを介して前記データ転送ファイルを受信するサーバ側外部通信手段と、受信した前記データ転送ファイルを外部端末で閲覧可能な閲覧データに変換する閲覧用変換手段とを備え、前記外部端末から前記閲覧データを随時閲覧できるようにしたことにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成の加え、前記クラウドサーバは、受信した前記データ転送ファイルを基に三次元画像データを作成する三次元画像データ生成手段と、該三次元画像データに基づいて前記杭の打設状況を前記外部端末に三次元画像で表示する三次元画像表示手段とを備えていることにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項2の構成の加え、前記三次元画像とともに、少なくとも設計、製造、施工に係る各種パラメータ関係のデータをBIM/CIMデータとして保存することにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1~3の何れか一の構成の加え、前記クラウドサーバは、前記閲覧データに基づく所定の項目の承認を求める承認画面を前記外部端末に表示する承認画面表示手段と、前記外部端末による承認入力に基づいて施工の可否を判断する承認確認手段とを備え、該承認確認手段によって承認された場合に施工の継続を許可するようにしたことにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1~4の何れか一の構成の加え、前記クラウドサーバは、外部端末から入力された設計データを設計転送ファイルに変換する設計用変換手段を備え、前記制御装置は、前記サーバ側外部通信手段からインターネットを介して転送され、前記杭打機側外部通信手段で受信した前記設計転送ファイルを入力データに変換する入力データ変換手段と、該入力データを自動的に入力する自動入力手段とを備えていることにある。
【0018】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項1~5の何れか一の構成の加え、前記クラウドサーバは、蓄積された施工データを機械学習し、最適な施工手法を解析し、解析データを算出する解析手段を備えていることにある。
【0019】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項1~6の何れか一の構成の加え、前記杭を製作する各工程の状況を杭データとして記録する製作過程記録手段と、該杭データに対応した識別標識を作成する標識作成手段とを備え、前記制御装置は、前記杭に添付された識別標識を読み取る標識読み取り手段と、該標識読み取り手段で読み取った識別標識のデータを読み取りデータ転送ファイルに変換する読み取り変換手段とを備え、前記クラウドサーバは、前記杭を製作した工場の外部端末から入力された杭データと、前記杭打機側外部通信手段からインターネットを介して転送され、前記サーバ側外部通信手段で受信した前記読み取りデータ転送ファイルに基づく識別標識のデータとを照合し、施工対象の杭であるかを判断する杭照合手段を備え、該杭照合手段によって施工対象の杭であると認められた場合に施工の継続を許可するようにしたことにある。
【0020】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項1~7の何れか一の構成の加え、前記制御装置及び前記計測手段に接続された無線送受信機と、該無線送受信機を介して前記制御装置の操作及び前記施工データの表示が可能な管理用端末とを備えていることにある。
【0021】
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項1~8の何れか一の構成に加え、前記クラウドサーバは、受信した前記データ転送ファイルから各種書類に記入されるパラメータに関するデータを抽出し、前記各種書類の電子データを作成する書類データ作成手段を備えていることにある。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る杭の施工管理システムは、請求項1の構成を具備することによって、インターネットを通じて杭の施工データを工事責任者、設計事務所等の関係各所が外部端末よりリアルタイムで閲覧でき、施工データを一元的に管理し、迅速な対応が可能となり、データの改ざん等も防止することができる。
【0023】
また、本発明において、請求項2の構成を具備することによって、杭の施工状況を三次元画像によって視覚的に把握することができる。
【0024】
また、本発明において、請求項3の構成を具備することによって、三次元画像と各工程でのデータを統合し、設計、製造から施工までの各工程で情報を活用することができ、施工効率の向上を図ることができる。
【0025】
さらに、本発明において、請求項4の構成を具備することによって、承認作業を円滑に行うことができる。
【0026】
さらにまた、本発明において、請求項5の構成を具備することによって、設計データを杭打機に円滑に入力することができる。
【0027】
さらに、本発明において、請求項6の構成を具備することによって、今後の杭施工に際し、解析データを用いて杭打機の操作を半自動化することができ、機械学習が進むにつれてさらに精度を増すことができる。
【0028】
さらに、本発明において、請求項7の構成を具備することによって、使用する杭の状態を確実に把握することができるとともに、取り違えを防止することができる。
【0029】
さらに、本発明において、請求項8の構成を具備することによって、従来杭打機に搭載されていた操作パネルで行っていた制御装置へのデータ入力や施工データの確認を杭打機から離れた位置で安全に行うことができる。
【0030】
また、本発明において、請求項9の構成を具備することによって、帳票資料、工事日報等の書類を半自動的に作成することができ、手入力による作業を省力化し、管理作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る杭の施工管理システムを示す概略図である。
図2図1中のクラウドサーバにおける動作を説明するためのブロック図である。
図3】同上の外部端末で表示される画面の一例を示す画像である。
図4】同上の外部端末で杭の施工状況を三次元画像で表示した場合の一例を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明に係る杭の施工管理システムの実施態様を図1図4に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号Sは杭の施工管理システム、符号1は杭打機1である。
【0033】
杭の施工管理システムS(以下、管理システムSという)は、図1に示すように、杭打機1による杭の打設状況を管理するものであり、杭打機1より送信された施工データがインターネットを介してリアルタイムで工事責任者(元請け業者)、施工管理者、設計事務所、監理会社等の関係各所の外部端末2a~2eから閲覧できるとともに、関係各所の外部端末2a~2eとインターネットを介して双方向通信が可能となっている。
【0034】
杭打機1は、その動作を制御する制御装置3と、杭を実際に打設した際の施工データを所定の打設深度毎にリアルタイムで計測・記録するデータロガー等の計測手段4と、計測手段4から出力された施工データをデータ転送ファイルに変換する転送用変換手段5と、インターネットを介してデータ転送ファイルをクラウドサーバ6に転送する杭打機側外部通信手段7と、制御装置3を操作する操作パネルとを備え、随時施工データをクラウドサーバ6に転送できるようになっている。
【0035】
また、杭打機1は、制御装置3及び計測手段4に有線で接続された無線送受信機8(無線LANアクセスポイント)と、無線送受信機8を介して制御装置3の操作及び施工データの表示が可能なタブレット端末等の管理用端末9とを備え、制御装置3、計測手段4及び管理用端末9が無線LANで接続され、従来、杭打機1に搭載された操作パネルで行っていた作業を管理用端末9によって杭打機1から離れた位置で行うことができるようになっている。
【0036】
転送用変換手段5は、制御装置3及び計測手段4と有線で接続された内部端末10に格納されたFTPクライアント等のコンピュータプログラムによって構成され、入力されたdat、csv等の様式の施工データをFTP等の所定の様式に則ったデータ転送ファイルに変換し、杭打機側外部通信手段7に出力するようになっている。
【0037】
杭打機側外部通信手段7は、モデム等によって構成され、インターネットを通じてFTPによってクラウドサーバ6とのコネクションを確立し、転送用変換手段5から出力されたデータ転送ファイルをクラウドサーバ6に随時転送できるようになっている。
【0038】
計測手段4は、現在の掘削深度と掘削速度を測定する深度センサと、初回掘削電流を測定する電流計と、掘削水量を測定する水量センサと、セメントミルクの瞬時注入量、注入深度及び積算注入量を測定する注入センサとを備え、制御装置3によって制御され、所定の深度(0.1m)毎にリアルタイムで測定された各データ及び各データより算出される算出データ(以下、施工データという)をdat、csv等の形式で記録媒体に記録するともに、転送用変換手段5に出力するようになっている。
【0039】
クラウドサーバ6は、図2に示すように、インターネットを介してデータ転送ファイルを受信するサーバ側外部通信手段11と、受信したデータ転送ファイルを外部端末2a~2eで閲覧可能なウェブデータ等の閲覧データに変換する閲覧用変換手段12とを備え、閲覧データをデータベース14に保存するとともに、インターネットを通じて外部端末2a~2eからアクセスすることによって施工データをリアルタイムで閲覧できるようになっている。
【0040】
サーバ側外部通信手段11は、モデム等によって構成され、インターネットを通じて杭打機1及び各外部端末2a~2eと双方向通信できるようになっている。
【0041】
また、クラウドサーバ6は、受信したデータ転送ファイルを基に三次元画像データを作成する三次元画像データ生成手段と、三次元画像データに基づいて杭の打設状況を外部端末2a~2eに三次元画像で表示する三次元画像表示手段とを備えている。
【0042】
さらに、クラウドサーバ6は、閲覧データに基づく所定の項目の承認を求める承認画面を外部端末2a~2eに表示する承認画面表示手段と、外部端末2a~2eの画面に表示された承認画面に則り承認操作(承認入力)するとその承認入力に基づいて施工の可否を判断する承認確認手段とを備え、承認確認手段によって承認された場合には施工の継続を制御装置3に許可するようになっている。
【0043】
さらにまた、クラウドサーバ6は、人工知能を搭載し、過去の作業で蓄積された施工データを機械学習し、最適な施工手法を解析し、解析データを算出する解析手段を備え、今後の杭施工に際し、この解析データを用いて杭打機の操作を半自動化することができるようになっている。
【0044】
閲覧用変換手段12、三次元画像データ生成手段、三次元画像表示手段、承認画面表示手段、承認確認手段、解析手段及び後述する杭照合手段を構成する管理ソフト13は、コンピュータプログラム(webアプリ)によって構築され、クラウドサーバ6上に格納されている。
【0045】
杭打機1に搭載された制御装置3は、PLC等の制御機器で構成され、杭セット情報(工法、杭種、杭径、継手、杭本数、杭長、全長、ヤットコ、柱状図等)に基づく設計データを入力することによって自動制御(シーケンス制御)できるようになっている。
【0046】
この制御装置3は、内部端末10を介して杭打機側外部通信手段7と有線で接続され、インターネットを通じてクラウドサーバ6と接続され、クラウドサーバ6を介して外部端末2a~2eと相方向通信できるようになっている。
【0047】
また、制御装置3は、サーバ側外部通信手段11からインターネットを介して転送され、杭打機側外部通信手段7で受信した設計転送ファイルを入力データ(dat、csv等)に変換する入力データ変換手段と、入力データを自動的に入力する自動入力手段とを備え、設計事務所等の関係各所から送られた設計データを基に自動制御できるようになっている。
【0048】
さらに、この制御装置3は、杭打機1の所定の位置に取り付けられ、杭Pに添付された識別標識16を読み取る標識読み取り手段15と、標識読み取り手段15で読み取った識別標識16のデータを読み取りデータ転送ファイルに変換する読み取り変換手段とを備え、読み取りデータ転送ファイルを杭打機側外部通信手段7に出力し、読み取りデータ転送ファイルがクラウドサーバ6に転送されるようになっている。
【0049】
これに対し、クラウドサーバ6は、杭照合手段によって、杭を製作した工場の外部端末2eから入力された杭データと、杭打機側外部通信手段7からインターネットを介して転送され、サーバ側外部通信手段11で受信した読み取りデータ転送ファイルに基づく識別標識16のデータとを照合して施工対象の杭Pであるかを判断し、施工対象の杭Pであると認められた場合に制御装置3に施工の継続を許可し、杭照合手段によって施工対象の杭Pであると認められない場合は、制御装置3に警告音を発するように指示を出すようにしている。
【0050】
入力データ変換手段、自動入力手段及び読み取り変換手段を構成する制御ソフトは、コンピュータプログラムによって構成され、内部端末10に格納されている。
【0051】
この管理システムSによる施工は、先ず事前準備として、構築する構造物の内容に基づき、事前打ち合わせを経て、工法、杭種、杭径、継手、杭本数、杭長、全長、掘削長、ヤットコ、柱状図等(以下、杭セット情報という)が決定される。
【0052】
次に、この決定した杭セット情報に基づいて主に設計事務所等において杭計算ソフトによって設計データが算出され、この設計データが工事責任者、施工管理者、営業部署等の端末に送信され、施工費用の見積書、施工計画書、施工品質計画書、安全計画書等を作成し、これを基に杭Pの製造、使用する装置(杭打機1)等が手配される。
【0053】
杭Pの製造工場では、杭Pの杭仕様及び製作する各工程の状況を杭データとして記録する製作過程記録手段と、杭データに対応した識別標識16を作成する標識作成手段とを使用し、製作過程記録手段に保存された杭データをクラウドサーバ6上の管理ソフト13に入力するとともに、標識作成手段によって作成されたQRコード(登録商標)やバーコード等の識別標識16を対象の杭Pに添付し、出荷時には読み取り手段で識別標識16を読み取り、その杭情報と製作過程記録手段に保存された杭データとを照合した上で出荷する。
【0054】
クラウドサーバ6では、外部端末2a~2eから入力された設計データをデータベース14に保存するとともに、設計用変換手段で所定の様式(FTP)の設計転送ファイルに変換し、インターネットを通じて設計転送ファイルを杭打機1に転送する。
【0055】
実際の施工現場では、サーバ側外部通信手段11からインターネットを介して転送され、杭打機側外部通信手段7で受信した設計転送ファイルを入力データ変換手段で入力データ(dat、csv形式等)に変換し、その入力データを自動入力手段によって制御装置3に自動的に入力する。
【0056】
また、管理用端末9から遠隔操作で必要に応じて上記入力データ以外のデータを入力し、施工準備が完了する。
【0057】
次に、杭Pを杭打機1にセットする際、杭Pの座標データと標識読み取り手段15で杭Pに添付された識別標識16を読み取り、それを制御装置3に出力する。
【0058】
制御装置3は、標識読み取り手段15で読み取った識別標識16のデータを読み取りデータ転送ファイルに変換して杭打機側外部通信手段7に出力し、インターネットを通じてクラウドサーバ6に転送する。
【0059】
これに対し、クラウドサーバ6では、杭照合手段で識別標識16のデータと杭データとを照合し、杭データと座標とが一致しない場合には、施工対象の杭Pでないと判断して制御装置3にアラート音を発生させるように指示し、一致する場合には施工対象の杭Pであると認めて施工を許可する。
【0060】
実際に施工を開始すると、計測手段4が現在の掘削深度、掘削速度を測定するとともに、所定の深度(0.1m)毎に積分電流、初回掘削電流、掘削水量、セメントミルクの瞬時注入量、注入深度及び積算注入量を測定し、更に、各データ及び各データより算出される算出データ(以下、施工データという)をリアルタイムで設計データ、杭データと関連付けて記録媒体に記録するともに、転送用変換手段5に出力する。
【0061】
転送用変換手段5に入力された施工データは、所定のファイル様式のデータ転送ファイルに変換された状態で随時杭打機側外部通信手段7に出力され、インターネット回線を通じてクラウドサーバ6に転送される。
【0062】
クラウドサーバ6に転送されたデータ転送ファイルは、閲覧用変換手段12でウェブデータ等の外部端末2a~2eで閲覧可能な閲覧データ(html等)に変換され、直接データとしてデータベース14に保存されるとともに、外部端末2a~2eから管理ソフト(webアプリ)13上で閲覧可能な状態となる。
【0063】
外部端末2a~2eからログインID及びパスワードを入力し、クラウドサーバ6にアクセスすると、現場選択画面、施工杭の選択画面の順に表示され、対象の杭を選択すると、図3に示すように、外部端末2a~2eの画面上で杭番号、工法、記録開始日時、最終更新日時、掘削深度、設計掘削深度、最終掘削深度、掘削速度、電流値、積分電流値、瞬時流量、掘削水積算量、根固め注入量、根固め積算量、設計根固め区間深度、杭周中詰注入量、杭周中詰積算量、設計杭周中詰区間深度、杭芯位置、掘削鉛直率、杭本体の鉛直率を閲覧できるようになる。
【0064】
これらの閲覧可能な各情報は、杭打機1より所定の深度(0.1m)毎の施工データが直接転送されてくるので、随時情報が更新され、リアルタイムで杭の打設状況を把握することができる。
【0065】
また、管理ソフト(webアプリ)13上で三次元表示を選択すると、クラウドサーバ6は、受信したデータ転送ファイルを基に三次元画像データ生成手段が三次元画像データを作成し、図4に示すように、三次元画像データに基づいて杭の打設状況を外部端末2a~2eに三次元画像で表示することができる。
【0066】
このように、インターネット環境下において、工事責任者、設計事務所、監理会社等の関係各所において、外部端末2a~2eから杭の施工状況がリアルタイムで確認することができ、迅速な管理体制を敷くことができるとともに、データの改ざんが防止される。
【0067】
さらに、この管理システムSでは、クラウドサーバ6の管理ソフト(webアプリ)13上で閲覧データに基づく所定の項目(試験杭の評価、支持層の確認、根固め液注入量、杭周固定液の注入量等)の承認を求める承認画面を外部端末2a~2eに表示し、関係各所に承認・確認を求めることができ、外部端末2a~2eから承認入力をすると、承認されれば制御装置3に施工の継続を許可し、不許可の場合には施工を中断させる。
【0068】
また、クラウドサーバ6には、蓄積された施工データを機械学習し、その結果に基づいて最適な施工手法を解析し、解析データを算出する解析手段を備えているので、今後の杭施工に際し、解析データを用いて杭打機の操作を半自動化することができ、機械学習が進むにつれてさらに精度を増すことができる。
【0069】
尚、クラウドサーバ6には、施工データがデータ転送ファイルに変換されて直接転送されてくるので、受信したデータ転送ファイルから各種書類に記入されるパラメータを抽出し、各所書類の電子データを作成する書類データ作成手段をクラウドサーバ6に備えることにより、帳票資料、工事日報等の書類を半自動的に作成することができ、手入力による作業を省力化し、管理作業の効率化を図ることができる。
【0070】
また、本発明に係る杭の施工管理システムSの態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、クラウドサーバ6に送信された施工データから作成された三次元画像とともに、設計、製造、施工データ等の各種のパラメータ関係のデータをBIM/CIMデータとして保存し、工事責任者(元請け会社)等に電子納品できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
S 杭の施工管理システム
P 杭
1 杭打機
2a~2e 外部端末
3 制御装置
4 計測手段
5 転送用変換手段
6 クラウドサーバ
7 杭打機側外部通信手段
8 無線送受信機
9 管理用端末
10 内部端末
11 サーバ側外部通信手段
12 閲覧用変換手段
13 管理ソフト
14 データベース
15 標識読み取り手段
16 識別標識
図1
図2
図3
図4