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  • 特許-筐体の扉機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】筐体の扉機構
(51)【国際特許分類】
   E05F 13/02 20060101AFI20231227BHJP
   E05B 7/00 20060101ALI20231227BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
E05F13/02
E05B7/00
H05K5/02 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021126413
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021512
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】317011975
【氏名又は名称】株式会社キョウデンプレシジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】水口 貢
(72)【発明者】
【氏名】石川 信哉
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-314888(JP,A)
【文献】特開2011-111880(JP,A)
【文献】特開平9-137643(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0284301(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00 - 13/04, 17/00
E05B 1/00 - 85/28
E06B 3/04 - 3/46
E06B 3/50 - 3/52
A47B 95/02
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の扉部に設けられ、第1アーム部と第2アーム部とを有する把手部と、
一方の端部に前記把手部の前記第1アーム部が固定され、他方の端部に押出し部が取り付けられる第1支持部材と、
前記第1支持部材を支持軸によって移動可能に支持し、前記扉部に取り付けられる第2支持部材と、を有し、
前記把手部を用いた扉開操作に応じて、前記支持軸を支点として前記第1支持部材の一方の端部を引出すことで、前記他方の端部の押出し部を前記扉部のロックを弱くする方向に押し出すことを特徴とする筐体の扉機構。
【請求項2】
前記第1アーム部を前記第1支持部材の一方の端部に固定するため、扉表面に前記第1アーム部を貫通する第1孔が設けられ、
前記第2アーム部を前記第1支持部材の中間部に固定するため、扉表面に前記第2アーム部を貫通する第2孔が設けられ、
前記第1孔の径は前記第1アーム部の径より広く逃げ幅を有していることを特徴とする請求項1に記載の筐体の扉機構。
【請求項3】
前記第1支持部材は、前記支持軸への取り付け位置を頂点として、少なくとも前記第1アーム部が固定される一方の端部に向けて扉表面から離れる方向に傾斜を有する形状であることを特徴とする請求項1に記載の筐体の扉機構。
【請求項4】
前記支持軸から前記押出し部までの距離R1より、前記支持軸から前記第1アーム部の固定位置までの距離R2の方が長いことを特徴とする請求項に記載の筐体の扉機構。
【請求項5】
前記第1支持部材が前記扉表面に向けて設定距離だけ移動した時、前記距離R1と距離R2の比率により、前記第1支持部材に取り付けた前記押出し部を強い力で前記扉部のロックを弱くする方向に押し出すことを特徴とする請求項に記載の筐体の扉機構。
【請求項6】
第2支持部材は、前記第1支持部材を両側で挟み、断面L字形状を有して扉表面に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の筐体の扉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、筐体の扉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電子通信筐体等では、例えば、強力なマグネットによって扉が閉じられている。そのため、扉を開くためには把手部を強い力で引っ張る必要がある。即ち、扉を開く時の操作力がマグネットキャッチの着磁力以上の力を要するため、強い引っ張り作力を必要とする。
【0003】
例えば、強力なマグネットによって扉が閉じられている筐体において、扉を開く時にハンドル部を回転することで、マグネットを強制的に下部(および又は上部)に位置をづらす機構が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、マグネットを筐体フレームの切欠きに対向する位置に移動することで、マグネットの磁気力によるロックを解除するものである。このような特許文献1では、回転機構や切欠き付きのフレームなど、複雑な構成である。複雑な構造を有し、力で扉を開く機構では、経年劣化による故障発生率が高くなる。また、部品点数が多いので、コスト増や組み立てに時間が掛かる等の問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-78863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、簡単な把手機構により、扉部のロックを解除できる筐体の扉機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の筐体の扉機構は、筐体の扉部に設けられ、第1アーム部と第2アーム部とを有する把手部と、一方の端部に前記把手部の前記第1アーム部が固定され、他方の端部に押出し部が取り付けられる第1支持部材と、前記第1支持部材を支持軸によって移動可能に支持し、前記扉部に取り付けられる第2支持部材と、を有する。前記把手部を用いた扉開操作に応じて、前記支持軸を支点として前記第1支持部材の一方の端部を引出すことで、前記他方の端部の押出し部を前記扉部のロックを弱くする方向に押し出すことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る電子通信筐体を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る筐体の扉機構の把手部の側面図および斜視図である。
図3】実施形態に係る電子通信筐体の扉が閉じられた状態を示す図である。
図4】実施形態に係る電子通信筐体の扉が把手機構により開かれた状態を示す図である。
図5】実施形態の把手機構の力作用を示す図である。
図6】実施形態に係る筐体の扉機構の縦型の把手部の斜視図および上面図である。
図7】実施形態に係る筐体の扉機構の縦型の把手部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る筐体の扉機構について、図1乃至図7を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成には同一符号を付す。
【0009】
図1は、実施形態に係る電子通信筐体を示す斜視図である。電子通信筐体10は、機器収納部20と、扉部30とを有する。機器収納部20の開放側の左側面(扉側から見た場合)には、第1磁石40aが取り付けられる。また、第1磁石40aと対向する位置の扉部30には、第2磁石40bが取り付けられる。なお、機器収納部20の開放側の右側面(扉側から見た場合)と扉部30の第2磁石40bとは反対側側面には不図示のヒンジ機構が取り付けられ、扉部30の開閉動作を支持する。扉部30が閉じられた状態では、例えば第1磁石40aと第2磁石40bとがマグネットキャッチされて、普通の力では開くことが出来ないくらいに磁気結合されている。そして、扉部30の表面の第2磁石40bの上側には、把手部50が水平方向に取り付けられる。
【0010】
図2は、扉機構の把手部の側面図と斜視図を示している。図3は、電子通信筐体の扉部が閉じられた状態を上面から見た図を示している。
図2および図3に示すように、把手部50は、ハンドル形状の把手510と、第1支持部材520と、第2支持部材530とを有している。第1支持部材520は、水平方向に長く、支持軸550への取り付け位置(接続箇所)を頂点として、少なくとも第1支持部材520を固定する一方の端部に向けて扉表面540から離れる方向に傾斜を有する形状である。また、この実施形態のように、第1支持部材520の他方の端部に向けて扉表面540から離れる方向に傾斜を設けても良い。即ち、支持軸550への取り付け位置(接続箇所)を頂点として、後述する押出し部560の向けて扉表面540から離れる方向に傾斜を設けても良い。第2支持部材530は、第1支持部材520を挟むように上下に設けられ、その間に上述した支持軸550が設けられる。両側(ここでは上下)の第2支持部材530は、それぞれ断面L字形状を有して、扉表面540に取り付けられる。第1支持部材520は、上下の第2支持部材530の間に配置され、支持軸550によって第2支持部材530に取り付けられる。
【0011】
把手510は、左右に第1アーム部510aと第2アーム部510bを有している。磁石40a,40bから遠い位置の第1アーム部510aは、第1支持部材520の一方の端部に固定される。そして、図3に示すように、第1アーム部510aは、第1支持部材520の固定部と扉表面540との間に移動距離h1が形成されている。つまり、把手510の第1アーム部510aは、支持軸550を支点として、扉表面540の方向に向けて距離h1だけ移動可能である。このため、第1アーム部510aを貫通する扉表面540には第1孔570が設けられる。第1孔570の径は、第1アーム部510aの径より広い幅を有している。第1孔570の径を広く形成することで、第1アーム部510aが距離h1だけ引き出された時に、第1アーム部510aの傾きを許可する。第1孔570の径は、第1アーム部510aの逃げ幅を有する大きさである。
【0012】
一方、第1支持部材520の他方の端部である機器収納部20の側面のフレーム20aに対向する位置には、フレーム20aに向けて押出し部560が設けられる。第1アーム部510aが距離h1だけ引き出された時に、支持軸550を支点として押出し部560がフレーム20aに向けて押し出される機構となる。
【0013】
把手510の磁石40a,40bから近い位置の第2アーム部510bは、第1支持部材520の中間部に固定される。第2アーム部510bを貫通する扉表面540には第2孔580が設けられる。第2孔580の径は、第2アーム部510bの径とほぼ等しい(僅かに広い)幅を有している。扉部30を開けるため、把手510を手前に引いた時、第2アーム部510bは僅かな距離だけ手前に移動するだけであるので、第2孔580の径は、第1孔570の径より狭くて構わない。
【0014】
図4は、上述した電子通信筐体10の扉部20が人により把手510を手前に引いた時の状態を示している。
例えば、管理者又は保守員等が、電子通信筐体10の内部を点検或いは修理を行う時に、ハンドル形状の把手510を軽く手前に引くと、把手510の第1アーム部510aが図3に示した距離h1だけ移動する。すると、図4に示すように、第1アーム部510aが取り付けられる第1支持部材520が支持軸550を支点として同じ距離h1だけ手前に移動する。
【0015】
これにより、第1支持部材520の反対側に取り付けられる押出し部560が、支持軸550を支点としてフレーム20aに向けて押し出される。その結果、図4に示すように、扉部30が距離h2だけフレーム20aから引き離され、第1磁石40aと第2磁石40bとが離間して、マグネットキャッチの着磁力が低下することとなり(扉部のロックが弱くなる方向に押し出すので)、簡単に扉部30を開けることが出来る。
【0016】
図5は、上述した把手機構における力作用を示している。実施形態の把手機構では、支持軸550から押出し部560までの距離R1より、支持軸550から第1アーム部510aの固定位置までの距離R2の方が長い。従って、把手510を手前に軽い力(P1)で引くことで、第1アーム部510aおよび第1支持部材520が手前に距離h1だけ移動し、距離R1とR2の比率により、第1支持部材520の反対側の端部に取り付けた押出し部560を強い力(P2)でフレーム20aに突き当てることが出来る。これにより、第1磁石40aと第2磁石40bとを離間させ、マグネットキャッチの着磁力が低下することとなり、簡単に扉部30を開けることが出来る。
【0017】
図6および図7は、把手部30を垂直方向に取り付けて形状を示している。それぞれの構成要素は、図1乃至図5で示したものと同じであるので、同一符号を付してその説明は省略する。図6および図7に示すように、ハンドル形状の把手510を軽く手前に引くと、把手510の第1アーム部510aが距離h1(図7参照)だけ移動する。すると、第1アーム部510aが取り付けられる第1支持部材520が支持軸550を支点として同じ距離h1だけ手前に移動する。
【0018】
これにより、第1支持部材520の反対側に取り付けた押出し部560が、支持軸550を支点としてフレーム20aに向けて押し出される。その結果、図3と同じ原理で、扉部30が距離h2だけフレーム20aから引き離され、第1磁石40aと第2磁石40bとが離間して、マグネットキャッチの着磁力が低下することとなり、簡単に扉部30を開けることが出来る。
【0019】
以上の説明から明らかなように、実施形態の筐体の扉機構によれば、部品点数が少なく、簡単な把手機構により、マグネットの磁気力によるロックを解除することが出来る。また、少しの力でマグネットキャッチの着磁力を低下させるので、簡単に扉部を開けることが出来る。
【0020】
実施形態の筐体の扉機構によれば、強力なマグネットによって扉が閉じられている筐体10において、筐体10の扉部30に設けられ、第1アーム部510aと第2アーム部510bとを有する把手部510と、一方の端部に把手部の第1アーム部510aが固定され、他方の端部に押出し部560が取り付けられる第1支持部材520と、第1支持部材520を支持軸550によって移動可能に支持し、前記扉部に取り付けられる第2支持部材530と、を有し、把手部510を用いた扉開操作に応じて、支持軸550を支点として第1支持部材の一方の端部を引出すことで、他方の端部の押出し部560を扉部のロック(磁石40a,40b)を弱くする方向に押し出す機構であるので、部品点数が少なく、簡単な把手機構により、例えばマグネットの磁気力によるロックを解除することが出来る。また、少しの力で、例えばマグネットキャッチの着磁力を低下させるので、簡単に扉部を開けることが出来る。
【0021】
実施形態の筐体の扉機構によれば、第1アーム部510aを第1支持部材520の一方の端部に固定するため、扉表面540に第1アーム部510aを貫通する第1孔570が設けられ、第2アーム部510bを第1支持部材520の中間部に固定するため、扉表面540に第2アーム部510bを貫通する第2孔580が設けられ、第1孔570の径は第1アーム部510aの径より広く逃げ幅を有しているので、第1孔570を広く開口することで、第1アーム部510aが距離h1だけ引き出された時に、第1アーム部510aの傾きを許可する。
【0022】
実施形態の筐体の扉機構の第1支持部材520は、支持軸550の取り付け位置を頂点として、少なくとも前記第1アーム部が固定される一方の端部に向けて扉表面540から離れる方向に傾斜を有する形状であるので、把手510を手前に軽い力(P1)で引くことで、第1支持部材520を手前に設定距離h1だけ移動することが出来る。これにより、支持軸550を支点として、第1支持部材520の他方の端部に設けられる押出し部560を設定距離h2だけ押出すことが出来る。
【0023】
実施形態の筐体の扉機構によれば、支持軸550から押出し部560までの距離R1より、支持軸550から第1アーム部510aの固定位置までの距離R2の方が長い機構であるので、距離R1とR2の比率により、第1支持部材520の反対側の端部に取り付けた押出し部560を強い力(P2)でフレーム20aに突き当てることが出来る。
【0024】
実施形態の筐体の扉機構によれば、第1支持部材520が扉表面540に向けて設定距離だけ移動した時、距離R1と距離R2の比率により、第1支持部材520に取り付けて押出し部560を強い力で前記扉部のロック(例えばマグネットの着磁力)を弱くする方向に押し出す機構であるので、把手510を手前に軽い力(P1)で引くことで、押出し部560を強い力(P2)でフレーム20aに突き当てることが出来る。
【0025】
実施形態の筐体の扉機構によれば、第2支持部材530は、第1支持部材520を両側で挟み、断面L字形状を有して扉表面540に取り付けられる機構であるので、第1支持部材520および第2支持部材530の取り付けが容易に行うことが出来る。
【0026】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
10…電子通信筐体、 20…機器収納部、 30…扉部
40a…第1磁石、 40b…第2磁石、 50…把手部
510…把手、 510a…第1アーム部、 510b…第2アーム部
520…第1支持部材、 530…第2支持部材
540…扉表面、 550…支持軸、 560…押出し部
570…第1孔部、 580…第2孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7