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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】車載充電器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20231227BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231227BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20231227BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20231227BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/00 P
H02M3/28 Q
H02M7/12 F
H02M3/155 W
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021181005
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2023069257
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晃則
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-108236(JP,A)
【文献】特開2020-043728(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139200(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/022477(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
H02M 3/28
H02M 7/12
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源又は交流負荷が接続される双方向AC/DCコンバータと、前記双方向AC/DCコンバータが接続された共振型絶縁DC/DCコンバータと、前記共振型絶縁DC/DCコンバータが接続され蓄電池が接続される電圧調整DC/DCコンバータと、前記蓄電池の電圧よりも低い中間電圧で作動する中間電圧負荷に対して前記共振型絶縁DC/DCコンバータと前記電圧調整DC/DCコンバータとの間から直流電力を供給する中間電圧供給回路とを備え、
前記双方向AC/DCコンバータが前記交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して該直流電力を前記共振型絶縁DC/DCコンバータに供給し、前記共振型絶縁DC/DCコンバータと前記電圧調整DC/DCコンバータとが共働により前記双方向AC/DCコンバータから入力された直流電力を昇圧して前記蓄電池に供給する充電機能と、
前記電圧調整DC/DCコンバータと前記共振型絶縁DC/DCコンバータとが共働により前記蓄電池から入力された直流電力を降圧して前記双方向AC/DCコンバータに供給し、前記双方向AC/DCコンバータが入力された直流電力を交流電力に変換して該交流電力を前記交流負荷に供給する交流給電機能と、
前記電圧調整DC/DCコンバータが前記蓄電池から入力された直流電力を前記中間電圧に降圧して前記中間電圧供給回路に供給し、前記中間電圧供給回路が前記中間電圧負荷に前記中間電圧の直流電力を供給する中間電圧供給機能と
を備え、
前記共振型絶縁DC/DCコンバータは、
巻線比に応じた電圧変換を行うトランス部と、
前記トランス部と前記双方向AC/DCコンバータとの間に設けられた第1スイッチングレグと、
前記トランス部と前記電圧調整DC/DCコンバータとの間に設けられた第2スイッチングレグと、
前記トランス部と前記第2スイッチングレグとの間に設けられた共振回路と
を備え、
前記蓄電池の充電時、及び前記交流負荷への給電時に、前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグとは、前記共振回路の共振周波数と等しい駆動周波数で動作し、
制御装置は、前記充電機能、前記交流給電機能、及び前記中間電圧供給機能を実行する前に、前記双方向AC/DCコンバータを停止させた状態で前記電圧調整DC/DCコンバータ及び前記共振型絶縁DC/DCコンバータを動作させて、前記蓄電池からの給電により前記共振型絶縁DC/DCコンバータ及び前記双方向AC/DCコンバータ間に設けられた電解コンデンサを充電する起動機能を実行し、
前記共振回路が、前記トランス部と前記第2スイッチングレグとの間にのみ設けられ、前記トランス部と前記第1スイッチングレグとの間には設けられていない車載充電器。
【請求項2】
前記中間電圧よりも低い低電圧で作動する低電圧負荷に前記トランス部から直流電力を供給する低電圧供給回路を備える請求項1に記載の車載充電器。
【請求項3】
前記低電圧供給回路は、前記低電圧負荷と前記トランス部とを接続/遮断するスイッチを備える請求項に記載の車載充電器。
【請求項4】
前記トランス部は、複数のトランスを備える請求項1~の何れか1項に記載の車載充電器。
【請求項5】
前記複数のトランスは、
前記第1スイッチングレグに一端側が接続される第1巻線と、
前記第2スイッチングレグに一端側が接続される第2巻線と
を備え、
複数の前記第1巻線の他端側がY結線により相互に接続され、
複数の前記第2巻線の他端側がY結線により相互に接続されている請求項に記載の車載充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
AC電源から高圧バッテリに給電して充電する高圧バッテリ充電機能と、高圧バッテリからAC負荷に給電するAC給電機能と、AC電源から補機バッテリに給電する補機バッテリ充電機能とを備える車載充電器が知られている(例えば、特許文献1の図5参照)。特許文献1の図5に記載の車載充電器は、高圧バッテリ充電機能を実現するための充電回路を用いて上記の3つの機能を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-70518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図5に記載の車載充電器では、回路構成上、入出力電圧の範囲が制限される。例えば、この車載充電器は、400Vの高圧バッテリを搭載するBEV(Battery Electric Vehicle)において、400Vの高圧バッテリに対する高圧バッテリ充電機能と、400Vの高圧バッテリから200VacのAC出力を行うAC給電機能とを実現することは困難である。加えて、例えば、200V等のHEV(Hybrid Electric Vehicle)のバッテリで作動するような仕様の負荷を、上記のBEVに搭載した場合、この負荷に対して400Vの高圧バッテリから給電する機能を実現することも困難である。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、入出力電圧の範囲を拡張できる車載充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車載充電器は、交流電源又は交流負荷が接続される双方向AC/DCコンバータと、前記双方向AC/DCコンバータが接続された共振型絶縁DC/DCコンバータと、前記共振型絶縁DC/DCコンバータが接続され蓄電池が接続される電圧調整DC/DCコンバータと、前記蓄電池の電圧よりも低い中間電圧で作動する中間電圧負荷に対して前記共振型絶縁DC/DCコンバータと前記電圧調整DC/DCコンバータとの間から直流電力を供給する中間電圧供給回路とを備え、前記双方向AC/DCコンバータが前記交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して該直流電力を前記共振型絶縁DC/DCコンバータに供給し、前記共振型絶縁DC/DCコンバータと前記電圧調整DC/DCコンバータとが共働により前記双方向AC/DCコンバータから入力された直流電力を昇圧して前記蓄電池に供給する充電機能と、前記電圧調整DC/DCコンバータと前記共振型絶縁DC/DCコンバータとが共働により前記蓄電池から入力された直流電力を降圧して前記双方向AC/DCコンバータに供給し、前記双方向AC/DCコンバータが入力された直流電力を交流電力に変換して該交流電力を前記交流負荷に供給する交流給電機能と、前記電圧調整DC/DCコンバータが前記蓄電池から入力された直流電力を前記中間電圧に降圧して前記中間電圧供給回路に供給し、前記中間電圧供給回路が前記中間電圧負荷に前記中間電圧の直流電力を供給する中間電圧供給機能とを備え、前記共振型絶縁DC/DCコンバータは、巻線比に応じた電圧変換を行うトランス部と、前記トランス部と前記双方向AC/DCコンバータとの間に設けられた第1スイッチングレグと、前記トランス部と前記電圧調整DC/DCコンバータとの間に設けられた第2スイッチングレグと、前記トランス部と前記第2スイッチングレグとの間に設けられた共振回路とを備え、前記蓄電池の充電時、及び前記交流負荷への給電時に、前記第1スイッチングレグと前記第2スイッチングレグとは、前記共振回路の共振周波数で動作し、制御装置は、前記充電機能、前記交流給電機能、及び前記中間電圧供給機能を実行する前に、前記双方向AC/DCコンバータを停止させた状態で前記電圧調整DC/DCコンバータ及び前記共振型絶縁DC/DCコンバータを動作させて、前記蓄電池からの給電により前記共振型絶縁DC/DCコンバータ及び前記双方向AC/DCコンバータ間に設けられた電解コンデンサを充電する起動機能を実行し、前記共振回路が、前記トランス部と前記第2スイッチングレグとの間にのみ設けられ、前記トランス部と前記第1スイッチングレグとの間には設けられていない
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蓄電池の充電時、及び交流負荷への給電時に、共振型絶縁DC/DCコンバータのトランス部が巻線比に応じた電圧変換を行い、第1スイッチングレグと第2スイッチングレグとが共振駆動することにより、ソフトスイッチングを実現でき、高効率な電圧変換を実現できる。そして、蓄電池の充電時、交流負荷への給電時、及び中間電圧負荷への給電時に、電圧調整DC/DCコンバータによる電圧調整が行われることにより、ソフトスイッチングによる高効率な電圧変換と相俟って、入出力電圧の範囲を拡張できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る車載充電器を示す回路図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る車載充電器を示す回路図である。
図3図3は、高圧バッテリ充電機能の実行モードの動作シーケンスを示すシーケンス図である。
図4図4は、AC電源供給機能の実行モードの動作シーケンスを示すシーケンス図である。
図5図5は、12V電源供給機能の実行モードの動作シーケンスを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0010】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る車載充電器1を示す回路図である。これらの回路図に示す車載充電器1は、高圧バッテリ充電機能、AC電源供給機能、12V電源供給機能、及び中間電圧供給機能を備える。高圧バッテリ充電機能は、AC電源2(図1参照)から高圧バッテリ3に給電する機能であり、AC電源供給機能は、高圧バッテリ3からAC負荷4(図2参照)に給電する機能である。また、12V電源供給機能は、高圧バッテリ3から12V負荷5に給電する機能であり、中間電圧供給機能は、高圧バッテリ3又はAC電源2から中間電圧負荷6に給電する機能である。
【0011】
AC電源2は、例えば電圧が85~265V、入力電力が7.5kW、出力電力が2kWの商用電源である。また、高圧バッテリ3は、例えば電圧が240~470V、入出力電力が7.5kWの高圧の蓄電池である。また、AC負荷4は、例えば電圧が85~265VのAC電力で作動する負荷である。また、12V負荷5は、例えば電圧が10.5~15.5VのDC電力で作動する負荷である。本実施形態の12V負荷5は、12Vの鉛蓄電池等の12Vの蓄電池である。さらに、中間電圧負荷6は、高圧バッテリ3の電圧VHVより低く12V負荷5の電圧VLVより高い中間電圧VHV_link(例えば155~240V)のDC電力で作動するエアコンコンプレッサやPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ等の補機である。
【0012】
ここで、パラレル方式やシリーズ・パラレル方式のHEVに搭載される補機は、本実施形態の中間電圧負荷6と同様に、上記中間電圧VHV_linkのDC電力で作動する仕様であるのが一般的である。即ち、240~470Vの高圧バッテリ3を搭載するBEVに、HEVにも搭載され155~240VのDC電力で作動する補機が搭載されている場合であっても、本実施形態の車載充電器1は、当該補機に上記中間電圧VHV_linkを供給して当該補機の作動を可能とする。
【0013】
車載充電器1は、双方向AC/DCコンバータ10と、共振型絶縁DC/DCコンバータ20と、電圧調整DC/DCコンバータ30と、中間電圧ジャンクション回路40と、12V給電回路50と、制御装置100とを備える。AC電源2又はAC負荷4は、双方向AC/DCコンバータ10に接続される。また、高圧バッテリ3は、電圧調整DC/DCコンバータ30に接続される。また、中間電圧負荷6は、中間電圧ジャンクション回路40に接続される。さらに、12V負荷5は、12V給電回路50に接続される。
【0014】
双方向AC/DCコンバータ10は、トーテンポールタイプの双方向PFC(Power Factor Correction)コンバータである。この双方向AC/DCコンバータ10は、入力電力が7kWを超える本実施形態の車載充電器1の大電流に対応するという観点から、2相インターリーブ構成となっている。即ち、双方向AC/DCコンバータ10は、2相インターリーブ型PFCコンバータであり、並列の2個のPFCインダクタLPFC0,LPFC1と、2組のスイッチングレグ(スイッチH0,L0の第1レグとスイッチH1,L1の第2レグ)と、1組の整流レグ(スイッチDH,DL)とで構成されている。スイッチH0,L0,H1,L1,DH,DLは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)等のFETスイッチである。なお、PFCインダクタLPFC0,LPFC1は、磁気結合タイプにしてもよい。
【0015】
双方向AC/DCコンバータ10は、高圧バッテリ3の充電時に、AC電源2から入力されたAC電圧VACを整流及び昇圧し、AC電圧VACの最大値(例えば265V)のピーク値以上のDC電圧VAC_link(例えば380V(≧265V×√2))を出力する。他方で、双方向AC/DCコンバータ10は、AC負荷4への給電時に、共振型絶縁DC/DCコンバータ20から入力されたDC電圧VAC_linkを整流及び降圧し、AC電圧VACをAC負荷4に出力する。高圧バッテリ3の充電時とAC負荷4への給電時とで双方向AC/DCコンバータ10の動作は逆転する。他方で、高圧バッテリ3の充電時とAC負荷4への給電時とで双方向AC/DCコンバータ10の入力電圧と出力電圧との関係は同様である。
【0016】
共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、電解コンデンサ60を介して双方向AC/DCコンバータ10に接続されている。この共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、AC電源2、高圧バッテリ3、及び12V負荷5を相互に絶縁するためのコンバータである。この共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、7kWを超える本実施形態の車載充電器1の大電流に対応するという観点から、3つのトランス(後述の第1~第3トランス211~213)を備える3相結合回路となっている。また、共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、スイッチング効率を高めるという観点から、電流共振型のDC/DCコンバータとなっている。
【0017】
共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、トランス部21と、共振回路22と、AC側レグ23と、HV側レグ24と、LV側レグ25とを備える。トランス部21は、第1トランス211、第2トランス212、及び第3トランス213を備える。第1~第3トランス211~213はそれぞれコア21CとAC側巻線21AとHV側巻線21HとLV側巻線21Lとを備える。AC側巻線21A,HV側巻線21H、及びLV側巻線21Lは、コア21Cに巻き付けられている。
【0018】
第1~第3トランス211~213のAC側巻線21Aの一端側は、AC側レグ23に接続されている。他方で、第1~第3トランス211~213のAC側巻線21Aの他端側は、Y結線により接続されている。詳細は後述する。
【0019】
第1~第3トランス211~213のHV側巻線21Hの一端側は、共振回路22を介して、HV側レグ24に接続されている。他方で、第1~第3トランス211~213のHV側巻線21Hの他端側は、Y結線により接続されている。詳細は後述する。
【0020】
第1~第3トランス211~213のLV側巻線21Lは、センタータップ付きの巻線である。第1~第3トランス211~213のLV側巻線21Lの両端側は、ダイオードを介して12V給電回路50の入力端子に接続されている。他方で、第1~第3トランス211~213のLV側巻線21Lのセンタータップは、12V給電回路50の出力端子に接続されている。
【0021】
共振回路22は、第1共振回路221,第2共振回路222、及び第3共振回路223を備える。第1~第3共振回路221~223は、コイルLとコンデンサCとを備える。第1~第3共振回路221~223のコイルLの一端は、第1~第3トランス211~213のHV側巻線21Hの一端側に接続されている。また、第1~第3共振回路221~223のコイルLの他端は、コンデンサCを介してHV側レグ24に接続されている。詳細は後述する。
【0022】
AC側レグ23は、3組のスイッチングレグ(スイッチH0AC,L0ACの第1レグとスイッチH1AC,L1ACの第2レグとスイッチH2AC,L2ACの第3レグ)で構成されている。スイッチH0AC,L0AC,H1AC,L1AC,H2AC,L2ACは、MOSFET等のFETスイッチである。このAC側レグ23と双方向AC/DCコンバータ10との間に電解コンデンサ60が設けられている。
【0023】
第1トランス211のAC側巻線21Aの一端側が、スイッチH0ACとスイッチL0ACとの間に接続され、第2トランス212のAC側巻線21Aの一端側が、スイッチH1ACとスイッチL1ACとの間に接続されている。また、第3トランス213のAC側巻線21Aの一端側が、スイッチH2ACとスイッチL2ACとの間に接続されている。
【0024】
HV側レグ24は、3組のスイッチングレグ(スイッチH0HV,L0HVの第1レグとスイッチH1HV,L1HVの第2レグとスイッチH2HV,L2HVの第3レグ)で構成されている。スイッチH0HV,L0HV,H1HV,L1HV,H2HV,L2HVは、MOSFET等のFETスイッチである。第1共振回路221のコンデンサCが、スイッチH0HVとスイッチL0HVとの間に接続され、第2共振回路222のコンデンサCが、スイッチH1HVとスイッチL1HVとの間に接続されている。また、第3共振回路223のコンデンサCが、スイッチH2HVとスイッチL2HVとの間に接続されている。
【0025】
共振型絶縁DC/DCコンバータ20では、高圧バッテリ3の充電時、及びAC負荷4への給電時に、AC側レグ23とHV側レグ24との駆動周波数fSWは、第1~第3共振回路221~223の共振周波数fに調整される。即ち、共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、高圧バッテリ3の充電時、及びAC負荷4への給電時に、AC側巻線21AとHV側巻線21Hとの巻線比に応じた電圧変換を行うのみであり、AC側レグ23とHV側レグ24とのスイッチング制御による電圧調整は行わない。そのため、共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、ソフトスイッチングを実現でき、高効率での電圧変換を実現できる。
【0026】
また、共振型絶縁DC/DCコンバータ20では、12V負荷5への給電時に、AC側レグ23とHV側レグ24との駆動周波数fSWは、第1~第3共振回路221~223の共振周波数fに調整される。即ち、共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、12V負荷5への給電時に、HV側巻線21HとLV側巻線21Lとの巻線比に応じた電圧変換を行うのみであり、AC側レグ23とHV側レグ24とのスイッチング制御による電圧調整は行わない。そのため、共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、ソフトスイッチングを実現でき、高効率での電圧変換を実現できる。
【0027】
また、共振型絶縁DC/DCコンバータ20では、AC側レグ23とHV側レグ24とのスイッチングのタイミングが揃うので、制御が容易である。ここで、AC側レグ23とHV側レグ24との駆動周波数fSWを第1~第3共振回路221~223の共振周波数f以外に調整する場合、AC側レグ23とHV側レグ24とでスイッチングのタイミングがずれる。そのため、この場合には、電流センサで電流を検知して、AC側レグ23とHV側レグ24とのスイッチングのタイミングを同期させる同期処理を行う必要がある。それに対して、本実施形態の共振型絶縁DC/DCコンバータ20では、当該同期処理が不要となり、センサレスにすることが可能となる。
【0028】
共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、高圧バッテリ3の充電時、双方向AC/DCコンバータ10からAC側レグ23に入力されるDC電圧VAC_linkをAC側巻線21AとHV側巻線21Hとの巻線比に応じた定数倍の中間電圧VHV_linkに昇圧して電圧調整DC/DCコンバータ30に出力する。また、共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、AC負荷4への給電時、電圧調整DC/DCコンバータ30からHV側レグ24に入力される中間電圧VHV_linkをHV側巻線21HとAC側巻線21Aとの巻線比に応じた定数倍のDC電圧VAC_linkに降圧して双方向AC/DCコンバータ10に出力する。さらに、共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、12V負荷5への給電時、電圧調整DC/DCコンバータ30からHV側レグ24に入力される中間電圧VHV_linkをHV側巻線21HとLV側巻線21Lとの巻線比に応じた定数倍の電圧VLVに降圧して12V給電回路50に出力する。
【0029】
ここで、中間電圧負荷6としては、HEVに搭載される高圧バッテリの電圧範囲(例えば100~300V程度)で作動する補機を対象としている。このため、中間電圧VHV_linkの変化が155~240V程度であれば、中間電圧負荷6は問題無く作動する。
【0030】
上述したように、第1~第3トランス211~213のAC側巻線21Aの他端側は、Y結線により接続されている。また、第1~第3トランス211~213のHV側巻線21Hの他端側は、Y結線により接続されている。ここで、AC側巻線21Aの他端側の接続方法及び、HV側巻線21Hの他端側の接続方法をΔ結線に変えることも可能である。しかしながら、巻線(コイル)のサイズアップや発熱を抑えるという観点から、AC側巻線21Aの他端側の接続方法及び、HV側巻線21Hの他端側の接続方法は、Y結線が好ましい。また、AC側巻線21Aの他端側の接続方法、及びHV側巻線21Hの他端側の接続方法の一方をY結線にし、他方をΔ結線にすることも可能である。しかしながら、この場合のようにトランスの入力側と出力側とで異なる結線により巻線が接続されていると、位相が変化し制御が複雑になる。そのため、AC側巻線21Aの他端側の接続方法、及びHV側巻線21Hの他端側の接続方法の双方をY結線にすることが好ましい。
【0031】
具体的には、例えば、以下の(1)~(4)の条件を想定すると、Δ結線の場合に、AC側巻線21Aの巻数は23、HV側巻線21Hの巻数は15、Y結線の場合に、AC側巻線21Aの巻数は11、HV側巻線21Hの巻数は7となる。
(1)中間電圧VHV_linkの最大値を高圧バッテリ3の電圧VHVの最小値(240V)とする。
(2)AC側レグ23に入力するDC電圧VAC_linkを380Vとする。
(3)12V給電回路50に入力する電圧VLVが最大値(15.5V)になる時に中間電圧VHV_linkが最大値となる。
(4)LV側巻線21Lの巻数を1とする。
【0032】
電圧調整DC/DCコンバータ30は、共振型絶縁DC/DCコンバータ20のHV側レグ24に印加される中間電圧VHV_linkを調整する回路である。この電圧調整DC/DCコンバータ30は、高圧バッテリ3の電圧VHVと中間電圧VHV_linkとがVHV>VHV_linkの関係にあるという条件で作動するチョッパ回路である。そのため、高圧バッテリ3の充電時、AC負荷4への給電時、12V負荷5への給電時、及び中間電圧負荷6への給電時に、中間電圧VHV_linkは、高圧バッテリ3の電圧VHVより低い電圧に制御される。具体的には、高圧バッテリ3の電圧VHVの最小値が240Vであれば中間電圧VHV_linkの最大値は240V未満に制御される。
【0033】
電圧調整DC/DCコンバータ30は、入力電力が7kWを超える本実施形態の車載充電器1の大電流に対応するという観点から、2相インターリーブ構成となっている。即ち、電圧調整DC/DCコンバータ30は、2相インターリーブ型DC/DCコンバータであり、並列の2つのインダクタLC0,LC1と、2組のスイッチングレグ(スイッチH0’,L0’の第1レグとスイッチH1’,L1’の第2レグ)とで構成されている。スイッチH0’,L0’,H1’,L1’は、MOSFET等のFETスイッチである。なお、インダクタLC0,LC1は、磁気結合タイプにしてもよい。また、回路誤差による電流の偏り(インダクタLC0とインダクタLC1とに流れる電流の偏り)の発生を抑制するという観点から、インダクタLC0とインダクタLC1とに流れる電流を監視し、2組のスイッチングレグによる電流バランス制御を実行することが好ましい。
【0034】
中間電圧ジャンクション回路40は、中間電圧負荷6に対して電源供給及び保護を行う回路である。この中間電圧ジャンクション回路40は、ヒューズ41を備える。本実施形態の中間電圧ジャンクション回路40は、複数の中間電圧供給系統を備え、複数の中間電圧負荷6に対して電源供給及び保護を行う。中間電圧ジャンクション回路40は、中間電圧負荷6をHV側レグ24と電圧調整DC/DCコンバータ30との間に接続しており、中間電圧VHV_linkを中間電圧負荷6に供給する。
【0035】
12V給電回路50は、12V負荷5に対して電源供給及び保護を行う回路である。この12V給電回路50は、遮断スイッチ51とコンデンサC12とを備える。12V給電回路50は、上述したように、12V負荷5をLV側巻線21Lに接続しており、電圧VLVを12V負荷5に供給する。
【0036】
ここで、本実施形態の車載充電器1は、回路構成上、高圧バッテリ3の充電時、及びAC負荷4への給電時に、電圧VLVの調整を行わない。このため、12V負荷5をLV側巻線21Lに接続した状態で、高圧バッテリ3の充電やAC負荷4への給電を実施した場合、12V負荷5に対して、約15.5V(=VAC_link(380V)÷2÷AC側巻線21Aの巻数(11)-V(1.5V))の成り行き電圧が出力される。12V負荷5に12Vのバッテリが含まれる場合、バッテリ電圧と電圧VLVとの電位差により12Vのバッテリに流れる電流が過電流となる可能性がある。そこで、本実施形態の車載充電器1では、高圧バッテリ3の充電時、及びAC負荷4への給電時に、遮断スイッチ51により、12V負荷5への電圧VLVの出力を遮断する。なお、12V負荷5に12Vのバッテリが含まれない場合には、遮断スイッチ51を12V給電回路50に設けることは必須ではない。
【0037】
図3は、高圧バッテリ充電機能の実行モード(モードA)の動作シーケンスを示すシーケンス図である。このシーケンス図に示すように、制御装置100(図1参照)は、モードAでは、車載充電器1を、起動命令を受信して停止(状態1)から起動(状態2)に移行させる。その後、制御装置100は、車載充電器1を、待機(状態3)としてから運転(状態4)に移行させ、停止命令を受信して終了(状態5)に移行させる。ここで、制御装置100は、モードAの実行中、遮断スイッチ51をOFFとして12V負荷5を車載充電器1から遮断する。
【0038】
状態1において、車載充電器1の全ての回路が停止する。ここで、状態1において、電解コンデンサ60の電圧は0Vである。この点については後述する。
【0039】
状態2において、高圧バッテリ3からの給電により、電圧調整DC/DCコンバータ30、HV側レグ24、トランス部21、AC側レグ23が駆動され、電解コンデンサ60が充電される。状態2において、電圧調整DC/DCコンバータ30は、定電圧動作を実行し、HV側レグ24は、第1~第3共振回路221~223の共振周波数fよりも高い駆動周波数fSWで動作する。即ち、HV側レグ24は、非共振駆動を行う。
【0040】
状態2において、トランス部21は、HV側巻線21HとAC側巻線21Aとの巻線比に応じた定数倍変換出力を行い、AC側レグ23及びLV側レグ25は、逆流防止の観点から、ダイオード整流を行う。ここで、電解コンデンサ60は、状態2において、中間電圧VHV_linkを生成可能な所定の電圧(例えば380Vであり、AC電源2の電圧波形のピーク値以上の電圧)まで昇圧される。電解コンデンサ60の電圧が当該所定の電圧以上に維持された後に状態3に移行する。
【0041】
状態3において、AC側レグ23及びHV側レグ24の駆動周波数fSWが第1~第3共振回路221~223の共振周波数fまで低下する。即ち、AC側レグ23及びHV側レグ24が共振駆動を開始する。また、状態3において、電解コンデンサ60は定常動作を行う。
【0042】
状態4において、AC電源2が双方向AC/DCコンバータ10にAC電力を出力する。制御装置100は、双方向AC/DCコンバータ10へのAC電圧VACの入力を確認してから、双方向AC/DCコンバータ10を駆動する。状態4において、双方向AC/DCコンバータ10は、順方向動作を行い、電解コンデンサ60は定常動作を行う。
【0043】
また、状態4において、AC側レグ23及びHV側レグ24は、共振駆動を行い、トランス部21は、AC側巻線21AとHV側巻線21Hとの巻線比に応じた定数倍変換出力を行う。さらに、状態4において、電圧調整DC/DCコンバータ30は、AC電源2の出力電力を所定値以下に抑えAC電源2側の過負荷を防止するという観点から、高圧バッテリ3への供給電力を所定値に調整する。
【0044】
状態5において、双方向AC/DCコンバータ10は停止し、共振型絶縁DC/DCコンバータ20(図1参照)及び電圧調整DC/DCコンバータ30は、電解コンデンサ60の電荷を高圧バッテリ3に移動させ電解コンデンサ60の電圧を低下させる動作を行う。具体的には、AC側レグ23の駆動周波数fSWが第1~第3共振回路221~223の共振周波数fより高い値まで上昇されることにより、AC側レグ23が非共振駆動に移行する。トランス部21は、AC側巻線21AとHV側巻線21Hとの巻線比に応じた定数倍変換出力を行い、HV側レグ24は、逆流防止の観点から、ダイオード整流を行う。電圧調整DC/DCコンバータ30は定電圧動作に移行する。これにより、状態1において、電解コンデンサ60の電圧が0Vとなる。
【0045】
制御装置100は、中間電圧VHV_linkが安全電圧(例えば60V)未満まで低下したことを確認した後に、車載充電器1の全ての回路を停止させる。
【0046】
図4は、AC電源供給機能の実行モード(モードB)の動作シーケンスを示すシーケンス図である。このシーケンス図に示すように、制御装置100(図2参照)は、モードBでは、車載充電器1を、起動命令を受信して停止(状態1)から起動(状態2)に移行させる。その後、制御装置100は、車載充電器1を、待機(状態3)としてから運転(状態4)に移行させ、停止命令を受信して終了(状態5)に移行させる。ここで、制御装置100は、モードBの実行中、遮断スイッチ51をOFFとして12V負荷5を車載充電器1から遮断する。
【0047】
状態1において、車載充電器1の全ての回路が停止する。ここで、状態1において、電解コンデンサ60の電圧は0Vである。この点については後述する。
【0048】
状態2において、高圧バッテリ3からの給電により、電圧調整DC/DCコンバータ30、HV側レグ24、トランス部21、AC側レグ23が駆動され、電解コンデンサ60が充電される。状態2において、電圧調整DC/DCコンバータ30は、定電圧動作を実行し、HV側レグ24は、第1~第3共振回路221~223の共振周波数fよりも高い駆動周波数fSWで動作する。即ち、HV側レグ24は、非共振駆動を行う。
【0049】
状態2において、トランス部21は、HV側巻線21HとAC側巻線21Aとの巻線比に応じた定数倍変換出力を行い、AC側レグ23及びLV側レグ25は、ダイオード整流を行う。ここで、電解コンデンサ60は、状態2において、中間電圧VHV_linkを生成可能な所定の電圧(例えば380Vであり、AC電源2の電圧波形のピーク値以上の電圧)まで昇圧される。電解コンデンサ60の電圧が当該所定の電圧以上に維持された後に状態3に移行する。
【0050】
状態3において、AC側レグ23及びHV側レグ24の駆動周波数fSWが第1~第3共振回路221~223の共振周波数fまで低下する。即ち、AC側レグ23及びHV側レグ24が共振駆動を開始する。また、状態3において、電解コンデンサ60は定常動作を行う。
【0051】
状態4において、高圧バッテリ3が電圧調整DC/DCコンバータ30にDC電力を出力する。制御装置100は、電圧調整DC/DCコンバータ30への電圧VHVの入力を確認してから、双方向AC/DCコンバータ10を駆動する。状態4において、双方向AC/DCコンバータ10は、逆方向動作を行い、電解コンデンサ60は定常動作を行う。
【0052】
また、状態4において、AC側レグ23及びHV側レグ24は、共振駆動を行い、トランス部21は、HV側巻線21HとAC側巻線21Aとの巻線比に応じた定数倍変換出力を行う。
【0053】
状態5において、双方向AC/DCコンバータ10は停止し、共振型絶縁DC/DCコンバータ20(図2参照)及び電圧調整DC/DCコンバータ30は、電解コンデンサ60の電荷を高圧バッテリ3に移動させ電解コンデンサ60の電圧を低下させる動作を行う。具体的には、AC側レグ23の駆動周波数fSWが第1~第3共振回路221~223の共振周波数fより高い値まで上昇されることにより、AC側レグ23が非共振駆動に移行する。トランス部21は、AC側巻線21AとHV側巻線21Hとの巻線比に応じた定数倍変換出力を行い、HV側レグ24及びLV側レグ25はダイオード整流を行う。電圧調整DC/DCコンバータ30は定電圧動作を行う。これにより、状態1において、電解コンデンサ60の電圧が0Vとなる。
【0054】
制御装置100は、中間電圧VHV_linkが安全電圧(例えば60V)未満まで低下したことを確認した後に、車載充電器1の全ての回路を停止させる。
【0055】
図5は、12V電源供給機能の実行モード(モードC)の動作シーケンスを示すシーケンス図である。このシーケンス図に示すように、制御装置100(図1及び図2参照)は、モードCでは、車載充電器1を、起動命令を受信して停止(状態1)から起動(状態2)に移行させる。その後、制御装置100は、車載充電器1を、運転(状態3)に移行させ、停止命令を受信して終了(状態4)に移行させる。モードCの実行中、双方向AC/DCコンバータ10は停止する。
【0056】
状態1において、車載充電器1の全ての回路が停止する。ここで、状態1において、電解コンデンサ60の電圧は0Vである。この点については後述する。
【0057】
状態2において、高圧バッテリ3からの給電により、電圧調整DC/DCコンバータ30、HV側レグ24、トランス部21、AC側レグ23が駆動され、電解コンデンサ60が充電される。状態2において、電圧調整DC/DCコンバータ30は、12V負荷5(図1及び図2参照)に含まれる12Vのバッテリの過電流防止の観点から、電圧スロープ制御により動作し、中間電圧VHV_linkを徐々に上昇させる。また、状態2において、HV側レグ24及びAC側レグ23は、共振駆動を開始し、トランス部21は、HV側巻線21HとAC側巻線21Aとの巻線比に応じた定数倍変換出力を行う。
【0058】
状態2において、遮断スイッチ51がONになり、12V負荷5がLV側レグ25に接続される。トランス部21は、HV側巻線21HとLV側巻線21Lとの巻線比に応じた定数倍変換出力を行い、LV側レグ25は、ダイオード整流を行う。ここで、LV側レグ25がダイオード整流を行うため、LV側レグ25が出力する電圧VLVが12Vのバッテリの電圧(12V電源電圧)よりも低い場合には、LV側レグ25から12V給電回路50(図1及び図2参照)へ電流は流れない。電圧VLVが12V電源電圧以上に維持された後に状態3に移行する。
【0059】
状態3において、電圧調整DC/DCコンバータ30は定電圧動作に移行し、電解コンデンサ60は定常動作を行う。また、HV側レグ24及びAC側レグ23は、共振駆動を継続し、トランス部21は、HV側巻線21HとAC側巻線21Aとの巻線比に応じた定数倍出力を行う。さらに、LV側レグ25は引き続きダイオード整流を行う。ここで、電圧VLVが12Vバッテリの電圧以上に維持されていることから、LV側レグ25から12V負荷5へ電力が供給される。
【0060】
状態4において、遮断スイッチ51はOFFになり、12V負荷5がLV側レグ25から遮断される。また、共振型絶縁DC/DCコンバータ20(図1及び図2参照)及び電圧調整DC/DCコンバータ30は、モードA,Bと同様に、電解コンデンサ60の電荷を高圧バッテリ3に移動させ電解コンデンサ60の電圧を低下させる動作を行う。これにより、状態1において、電解コンデンサ60の電圧が0Vとなる。
【0061】
制御装置100は、中間電圧VHV_linkが安全電圧(例えば60V)未満まで低下したことを確認した後に、車載充電器1の全ての回路を停止させる。
【0062】
なお、本実施形態の車載充電器1において、モードA,B,Cは、相互に排他的に実行される。また、12V負荷5が12Vのバッテリを含む場合には、モードA,Bの実行中に12Vのバッテリの残量が所定値以下になると、車載充電器1は、一時的にモードCに移行する。また、本実施形態の車載充電器1では、モードA,B,Cの実行中、必要に応じて、中間電圧供給機能が実行される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の車載充電器1では、共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、高圧バッテリ3の充電時及びAC負荷4への給電時に、AC側巻線21AとHV側巻線21Hとの巻線比に応じた電圧変換を行うのみであり、AC側レグ23とHV側レグ24とのスイッチング制御による電圧調整は行わない。そして、AC側レグ23とHV側レグ24とが共振駆動を行う。これにより、共振型絶縁DC/DCコンバータ20は、ソフトスイッチングを実現でき、高効率での電圧変換を実現できる。そのうえで、高圧バッテリ3の充電時、及びAC負荷4への給電時に、電圧調整DC/DCコンバータ30による電圧調整が行われることにより、ソフトスイッチングによる高効率な電圧変換と相俟って、車載充電器1の入出力電圧の範囲を拡張できる。
【0064】
さらに、本実施形態の車載充電器1では、高圧バッテリ3の電圧VHVよりも低い中間電圧VHV_linkを中間電圧負荷6に供給することもできる。これにより、240~470Vの高圧バッテリ3を搭載するBEVに、HEVにも搭載され155~240VのDC電力で作動する補機が搭載される場合であっても、本実施形態の車載充電器1は、当該補機に上記中間電圧VHV_linkを供給して当該補機を作動させることができる。また、800Vの高圧バッテリ3を搭載するBEVに、400Vのバッテリを搭載するBEVにも搭載されていた補機が搭載される場合であっても、本実施形態の車載充電器1は、当該補機に上記中間電圧VHV_linkを供給して当該補機を作動させることができる。
【0065】
また、本実施形態の車載充電器1では、高圧バッテリ3からの給電によりモードA,B,Cが起動されるので、共振型絶縁DC/DCコンバータ20において、共振回路22は、トランス部21とHV側レグ24との間に設けられていればよい。そこで、本実施形態の車載充電器1では、共振回路22が、トランス部21とHV側レグ24との間にのみ設けられ、トランス部21とAC側レグ23との間には設けられていない。これにより、共振型絶縁DC/DCコンバータ20を小型化でき、車載充電器1を小型化できる。
【0066】
また、本実施形態の車載充電器1では、12V給電回路50が、中間電圧VHV_linkよりも低い電圧(12V)で作動する低電圧負荷(12V負荷5)に電圧VLVを供給する。ここで、トランス部21が3個のトランス(第1~第3トランス211~213)を備えることにより、LV側巻線21Lを例えば巻数1のように小型化することができる。
【0067】
また、トランス部21が第1~第3トランス211~213を備えることにより、共振型絶縁DC/DCコンバータ20の動作時に第1~第3トランス211~213のそれぞれに流れる電流が、トランスが1個の場合に比して1/3となる。これにより、第1~第3トランス211~213のそれぞれで発生するジュール損失(電流の2乗)は、トランスが1個の場合に比して1/9となる。これにより、第1~第3トランス211~213のバスバの断面積を理論上1/9にできるので、渦電流損を概算で1/9に抑制できる。また、トランス部21を通過する電力を第1~第3トランス211~213に分散できることにより、AC側巻線21A及びHV側巻線21Hの発熱を大幅に下げることができ、リッツ線を不要にできるので、トランス部21の大幅なサイズダウン、及びコストダウンが見込まれる。
【0068】
また、本実施形態の車載充電器1では、12V給電回路50が、遮断スイッチ51を備える。これにより、高圧バッテリ3の充電時やAC負荷4への給電時に、12V負荷5をLV側巻線21Lから遮断することができ、上述の成り行き電圧が12V負荷5に供給されることを防止できる。従って、12V負荷5が12Vのバッテリを含む場合に、当該12Vのバッテリの過電流を防止できる。
【0069】
さらに、本実施形態の車載充電器1では、トランス部21の3個のAC側巻線21AがY結線により相互に接続されると共に、トランス部21の3個のHV側巻線21HがY結線により相互に接続されている。即ち、トランス部21の入力側と出力側との結線を揃えることにより入力側と出力側との位相を合わせ、制御を容易にしている。また、3個のAC側巻線21Aの接続方法、及び3個のHV側巻線21Hの接続方法を、Δ結線ではなくY結線とすることにより、これらの巻線の巻数を低減し、これらの巻線のサイズダウン、及びコストダウンを可能にしている。
【0070】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0071】
例えば、上記実施形態では、12V給電回路50を備える車載充電器1を例に挙げて本発明を説明したが、12V給電回路50を備えることは必須ではない。また、第1~第3トランス211~213の3個のトランスを備える共振型絶縁DC/DCコンバータ20を例に挙げて本発明を説明したが、トランスの数は単数や2個でもよく4個以上であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 :車載充電器
2 :AC電源(交流電源)
3 :高圧バッテリ(蓄電池)
4 :AC負荷(交流負荷)
5 :12V負荷(低電圧負荷)
6 :中間電圧負荷
10 :双方向AC/DCコンバータ
20 :共振型絶縁DC/DCコンバータ
21 :トランス部
21A :AC側巻線(第1巻線)
21H :HV側巻線(第2巻線)
22 :共振回路
23 :AC側レグ(第1スイッチングレグ)
24 :HV側レグ(第2スイッチングレグ)
30 :電圧調整DC/DCコンバータ
40 :中間電圧ジャンクション回路(中間電圧供給回路)
50 :12V給電回路(低電圧供給回路)
51 :遮断スイッチ(スイッチ)
211 :第1トランス(トランス)
212 :第2トランス(トランス)
213 :第3トランス(トランス)
:共振周波数
SW :駆動周波数
HV_link:中間電圧
LV :電圧(低電圧)
HV :電圧
図1
図2
図3
図4
図5