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特許7410929光学ガラス、光学素子、光学系、交換レンズ及び光学装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学素子、光学系、交換レンズ及び光学装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/21 20060101AFI20231227BHJP
   C03C 3/062 20060101ALI20231227BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20231227BHJP
   C03C 3/066 20060101ALI20231227BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C03C3/21
C03C3/062
C03C3/064
C03C3/066
G02B1/00
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021506142
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019039991
(87)【国際公開番号】W WO2020188868
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2019049677
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500267712
【氏名又は名称】光ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 徳晃
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-069445(JP,A)
【文献】特開2019-001675(JP,A)
【文献】特開2014-185075(JP,A)
【文献】特開2014-159343(JP,A)
【文献】特開2019-001697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
含有率:27%以上41%以下、
TiO含有率:8%以上26%以下、
Nb含有率:5%以上39%以下、
Al含有率:0%
WO 含有率:0%以上3%以下、
LiOとNaOとKOの総含有率(LiO+NaO+KO):15%以上26%以下、
とBの総含有率(P+B):33.28%以上44%以下、
の含有率に対するTiOの含有率の比(TiO/P):0.28以上0.7以下である、
光学ガラス。
【請求項2】
質量%で、
NaO含有率:7%以上17%以下、
O含有率:5%以上10%以下、である、
請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
質量%で、
含有率:27%以上41%以下、
NaO含有率:7%以上17%以下、
O含有率:5%以上10%以下、
TiO含有率:8%以上26%以下、
Nb含有率:5%以上39%以下、
Al含有率:0%
WO 含有率:0%以上3%以下、
とBの総含有率(P+B):33.28%以上44%以下、
の含有率に対するTiOの含有率の比(TiO/P):0.28以上0.7以下である、
光学ガラス。
【請求項4】
質量%で、
LiOとNaOとKOの総含有率(LiO+NaO+KO):15%以上26%以下である、
請求項3に記載の光学ガラス。
【請求項5】
質量%で、
SiO含有率:0%以上3%以下、
LiO含有率:0%以上3.5%以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
質量%で、
CaO含有率:0%以上9.5%以下、
BaO含有率:0%以上9%以下、
ZnO含有率:0%以上3%以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項7】
質量%で、
ZrO含有率:0%以上3%以下、
含有率:0%以上3%以下、
Gd含有率:0%以上3%以下
含有率:0%以上0.4%以下である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項8】
質量%で、
の含有率に対するBの含有率の比(B/P):0以上0.15未満である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項9】
質量%で、
の含有率に対するNbの含有率の比(Nb/P):0.18以上1.3以下である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項10】
質量%で、
の含有率に対するTiOとNbの総含有率の比(TiO+Nb)/P:0.5以上2.0以下である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
質量%で、
NaOの含有率に対するKOの含有率の比(KO/NaO):0.3以上1.1以下である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
d線に対する屈折率(n)が、1.66以上1.80以下である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項13】
アッベ数(ν)が、22以上32以下である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項14】
比重(S)が、2.8以上3.4以下である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項15】
異常分散性を示す値(ΔPg,F)が、0.0180以上0.0320以下である、
請求項1~14のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項16】
前記光学ガラスの原料50gを1100℃以上1250℃以下の温度で加熱したときの、前記原料が融解するまでの時間が、15分未満である、
請求項1~15のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項17】
液相温度が、1050℃以下である、
請求項1~16のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いた光学素子。
【請求項19】
請求項18に記載の光学素子を含む光学系。
【請求項20】
請求項19に記載の光学系を備える交換レンズ。
【請求項21】
請求項19に記載の光学系を備える対物レンズ。
【請求項22】
請求項19に記載の光学系を備える光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学素子、光学系、交換レンズ及び光学装置に関する。本発明は2019年3月18日に出願された日本国特許の出願番号2019-049677の優先権を主張し、文献の参照による織り込みが認められる指定国については、その出願に記載された内容は参照により本出願に織り込まれる。
【背景技術】
【0002】
撮像機器等に使用可能な光学ガラスとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。近年、高画素数のイメージセンサーを備えた撮像機器等が開発されており、これらに用いる光学ガラスとして、高分散低比重であるものが求められている。また、脈理品質の良いガラスを得るために液相温度の低い組成であることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-144064号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る第一の態様は、質量%で、P含有率:27%以上41%以下、TiO含有率:8%以上26%以下、Nb含有率:5%以上39%以下、Al含有率:0%、WO 含有率:0%以上3%以下、LiOとNaOとKOの総含有率(LiO+NaO+KO):15%以上26%以下、PとBの総含有率(P+B):33.28%以上44%以下、Pの含有率に対するTiOの含有率の比(TiO/P):0.28以上0.7以下である、光学ガラスである。
本発明に係る第二の態様は、質量%で、P含有率:27%以上41%以下、NaO含有率:7%以上17%以下、KO含有率:5%以上10%以下、TiO含有率:8%以上26%以下、Nb含有率:5%以上39%以下、Al含有率:0%、WO 含有率:0%以上3%以下、とBの総含有率(P+B):33.28%以上44%以下、Pの含有率に対するTiOの含有率の比(TiO/P):0.28以上0.7以下である、光学ガラスである。
【0005】
本発明に係る第の態様は、上述した光学ガラスを用いた光学素子である。
【0006】
本発明に係る第の態様は、上述した光学素子を含む光学系である。
【0007】
本発明に係る第の態様は、上述した光学系を備える交換レンズである。
本発明に係る第七の態様は、上述した光学系を備える対物レンズである。
【0008】
本発明に係る第の態様は、上述した光学系を備える光学装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の他の例の正面図である。
図3図3は、図2の撮像装置の背面図である。
図4図4は、本実施形態に係る多光子顕微鏡の構成の例を示すブロック図である。
図5図5は、各実施例の光学恒数値をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0011】
本明細書中において、特に断りがない場合は、各成分の含有量は全て酸化物換算組成のガラス全重量に対する質量%(質量百分率)である。ここでいう酸化物換算組成とは、本実施形態のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩等が熔融時に全て分解されて酸化物に変化すると仮定し、当該酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0012】
本実施形態に係る光学ガラスは、質量%で、P成分:27~41%、NaO成分:7~17%、KO成分:5~10%、TiO成分:8~26%、Nb成分:5~39%であり、かつ、部分分散比(Pg,F)が、0.635以下である、光学ガラスである。
【0013】
従来、高分散化を実現するためにTiOやNbといった成分の含有量を増やす手法が試みられている。しかしながら、これらの含有量が多くなると、透過率の低下や比重の上昇を招く傾向がある。この点、本実施形態に係る光学ガラスは、高分散でありながら比重を低くすることが可能であるため、レンズの軽量化を実現できる。また、本実施形態に係る光学ガラスは液相温度が良好で脈理の発生を抑制することができるため、高い生産性を実現できる。
【0014】
まず、本実施形態に係る光学ガラスの各成分を説明する。
【0015】
は、ガラス骨格を形成し、耐失透性を向上させ、屈折率と化学的耐久性を低下させる成分である。Pの含有量が少なすぎると、失透が生じやすくなる傾向にある。また、Pの含有量が多すぎると、屈折率と化学的耐久性が低下する傾向にある。このような観点から、Pの含有量は27%以上41%以下である。この含有量の下限は、好ましくは27.5%以上であり、より好ましくは28%以上である。この含有量の上限は、好ましくは39%以下であり、より好ましくは38%以下である。Pの含有量をかかる範囲とすることで、耐失透性を向上させ、化学的耐久性を良好にしながら高屈折率化を図ることができる。
【0016】
NaOは、熔融性を向上させ、化学的耐久性を低下させる成分である。また、Pg,F値を低下させる成分でもある。NaOの含有量が少なすぎると、熔融性が低下する傾向にある。このような観点から、NaOの含有量は、7%以上17%以下である。この含有量の下限は、好ましくは7.5%以上であり、より好ましくは8%以上である。この含有量の上限は、好ましくは16%以下であり、より好ましくは15%以下であり、更に好ましくは14%以下である。
【0017】
Oは、熔融性を向上させ、化学的耐久性を低下させる成分である。また、Pg,F値を増加させる成分でもある。KOの含有量が少なすぎると、熔融性が低下する傾向にある。このような観点から、KOの含有量は、5%以上10%以下である。この含有量の下限は、好ましくは5%超であり、より好ましくは5.5%以上であり、更に好ましくは6%以上である。この含有量の上限は、好ましくは9.5%以下であり、より好ましくは9%以下である。
【0018】
TiOは、屈折率を上げ、透過率を低下させる成分である。また、Pg,F値を増加させる成分でもある。TiOの含有量が多いと、透過率が低下する傾向がある。このような観点から、TiOの含有量は、8%以上26%以下である。この含有量の下限は、好ましくは8.5%以上であり、より好ましくは9%以上であり、更に好ましくは10%以上である。この含有量の上限は、好ましくは24%以下であり、より好ましくは23%以下であり、更に好ましくは21%以下である。
【0019】
Nbは、屈折率と分散性を高め、透過率を低下させる成分である。また、Pg,F値を増加させる成分でもある。Nbの含有量が少ないと、屈折率が低くなる傾向がある。また、Nbの含有量が多いと、透過率が悪化する傾向がある。このような観点から、Nbの含有量は、5%以上39%以下である。この含有量の下限は、好ましくは6%以上であり、より好ましくは7%以上であり、更に好ましくは8%以上である。この含有量の上限は、好ましくは38%以下であり、より好ましくは37%以下であり、更に好ましくは35%以下である。
【0020】
さらに、本実施形態に係る光学ガラスは、SiO、B、Al、LiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO、Y、Gd、WO及びSbからなる群より選ばれる1種以上を更に含んでもよい。
【0021】
SiOは、恒数調整に有効な成分であり、耐失透性を一層向上させる観点から、この含有量の上限は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2.5%以下であり、更に好ましくは2%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0022】
は、恒数調整に有効な成分であり、粘度を高める成分でもある。また、一定比率以上含有することで液相温度を悪化させる(高い値にしてしまう)成分である。この含有量の上限は、好ましくは4%未満であり、より好ましくは3.8%以下であり、更に好ましくは3.7%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0023】
Alは、化学的耐久性を向上させる一方で、耐失透性を低下させ、一定比率以上含有することで液相温度を悪化させる(高い値にしてしまう)成分である。また、Pg,F値と粘度を高める成分でもある。この含有量の上限は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2.5%以下であり、更に好ましくは2%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0024】
LiOは、熔融性を向上させ、屈折率を上昇させる成分である。耐失透性を一層向上させる観点から、この含有量の上限は、好ましくは3.5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0025】
CaOは、高屈折率化に有効な成分であり、耐失透性を一層向上させる観点から、この含有量の上限は、好ましくは9.5%以下であり、より好ましくは9%以下であり、更に好ましくは8%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0026】
BaOは、高屈折率化に有効な成分であり、耐失透性を一層向上させる観点から、その上限は、好ましくは9%以下であり、より好ましくは8.5%以下であり、更に好ましくは8%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0027】
ZnOは、高屈折率化、高分散化に有効な成分であり、Pg,F値を高める成分でもあるが、耐失透性を一層向上させる観点から、この含有量の上限は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、更に好ましくは1.5%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0028】
ZrOは、高屈折率化、高分散化に有効な成分であり、耐失透性を一層向上させる観点から、この含有量の上限は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、更に好ましくは1.5%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0029】
は、高屈折率化に有効な成分であり、耐失透性を一層向上させる観点から、この含有量の上限は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、更に好ましくは1%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0030】
Gdは、高屈折率化に有効な成分であり、耐失透性を一層向上させる観点から、この含有量の上限は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2.5%以下であり、更に好ましくは2%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0031】
WOの含有量は、高屈折率化、高分散化に有効な成分であり、Pg,F値を高める成分でもあるが、高価な原料であるため、この含有量の上限は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2.5%以下であり、更に好ましくは2%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0032】
Sbは、脱泡剤として有効であるが、一定量以上含有するとガラスの透過率性能を悪化させてしまう。ガラスの透過率性能を向上させるため、この含有量の上限は、好ましくは0.4%以下であり、より好ましくは0.3%以下であり、更に好ましくは0.2%以下である。この含有量の下限は、好ましくは0%超である。
【0033】
本実施形態に係る光学ガラスは、高価な原料であるTaの含有量を低減すること、更にはこれらを実質的に含有しないことも可能であるため、原料コスト面でも優れている。ここで、本明細書中において「実質的に含有しない」とは、当該成分が、不純物として不可避的に含有される濃度を超えて、ガラス組成物の特性に影響する構成成分として含有されないこと、を意味する。例えば、製造過程における100ppm以下程度のコンタミネーションについては、実質的に含有されていないものとする。
【0034】
これらの好適な組み合わせとしては、SiO成分:0~3%、B成分:0~4%未満、Al成分:0~3%、LiO成分:0~3.5%、CaO成分:0~9.5%、BaO成分:0~9%、ZnO成分:0~3%、ZrO成分:0~3%、Y成分:0~3%、Gd成分:0~3%、WO成分:0~3%、Sb成分:0~0.4%である。
【0035】
加えて、各成分の組み合わせや割合については、以下の好適例が更に挙げられる。
【0036】
とBの含有量の総和(P+B)は、好ましくは28~44%である。そして、これらの含有量の総和の下限は、より好ましくは28.5%以上であり、更に好ましくは29%以上である。これらの含有量の総和の上限は、より好ましくは43%以下であり、更に好ましくは42.5%以下である。P+Bをかかる範囲とすることで屈折率を一層高くすることができる。
【0037】
に対するBの比(B/P)は、好ましくは0以上0.15未満である。そして、この比の下限は、より好ましくは0.015以上であり、更に好ましくは0.02以上である。この比の上限は、より好ましくは0.135以下であり、更に好ましくは0.13以下である。B/Pをかかる範囲とすることで、耐失透性を一層高め、屈折率を一層高くすることができる。
【0038】
に対するTiOの比(TiO/P)は、好ましくは0.28以上0.7以下である。そして、この比の下限は、より好ましくは0.3以上であり、更に好ましくは0.4以上である。この比の上限は、より好ましくは0.68以下であり、更に好ましくは0.66以下である。TiO/Pをかかる範囲とすることで、高いPg,F値と高屈折率を実現することができる。
【0039】
に対するNbの比(Nb/P)は、好ましくは0.18以上1.3以下である。そして、この比の下限は、より好ましくは0.19以上であり、更に好ましくは0.2以上である。この比の上限は、より好ましくは1.28以下であり、更に好ましくは1.26以下である。Nb/Pをかかる範囲とすることで、高いPg,F値と高屈折率を実現することができる。
【0040】
LiOとNaOとKOの含有量の総和(LiO+NaO+KO)は、好ましくは15%以上26%以下である。そして、これらの含有量の総和の下限は、より好ましくは16%以上であり、更に好ましくは17%以上である。これらの含有量の総和の上限は、より好ましくは25%以下であり、更に好ましくは24%以下である。LiO+NaO+KOをかかる範囲とすることで、化学的耐久性を低下させずに溶融性を向上させることができる。
【0041】
成分に対するTiO成分とNb成分の含有量の総和の比((TiO+Nb)/P)は、好ましくは0.5以上2.0以下である。そして、この比の下限は、より好ましくは0.6以上であり、更に好ましくは0.7以上である。この比の上限は、より好ましくは1.8以下であり、更に好ましくは1.7以下である。(TiO+Nb)/Pをかかる範囲とすることで屈折率を増大させずにPg,F値を高めることができる。
【0042】
NaO成分に対するKO成分の比(KO/NaO)は、好ましくは0.3~1.1である。そして、この比の下限は、より好ましくは0.32以上であり、更に好ましくは0.33以上である。この比の上限は、より好ましくは1.0以下であり、更に好ましくは0.99以下である。KO/NaOをかかる範囲とすることで、低い液相温度を実現することができる。
【0043】
なお、その他に必要に応じて清澄、着色、消色や光学恒数の微調整等の目的で、公知の清澄剤や着色剤、脱泡剤、フッ素化合物等の成分をガラス組成に適量添加することができる。また、上述した成分に限らず、本実施形態に係る光学ガラスの効果が得られる範囲でその他成分を添加することもできる。
【0044】
本実施形態に係る光学ガラスの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、製造条件は、適宜公的な条件を選択することができる。好適例の一つとしては、上述した各原料に対応する酸化物、水酸化物、リン酸化合物(リン酸塩、正リン酸等)、硫酸塩、炭酸塩及び硝酸塩等から選ばれる1種をガラス原料として選択し、これを混合し、1100~1400℃の温度で熔融させて攪拌均一化する工程を行い、その後、冷却して、成形する工程を含む方法が挙げられる。
【0045】
より具体的には、酸化物、水酸化物、リン酸化合物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩等の原料を目標組成となるように調合し、好ましくは1100~1400℃、より好ましくは1100~1300℃、更に好ましくは1100~1250℃にて熔融し、撹拌することで均一化し、泡切れを行った後、金型に流し成形する製造方法を採用できる。このようにして得られた光学ガラスは、必要に応じてリヒートプレス等を行って所望の形状に加工し、研磨等を施すことで、所望の光学ガラスや光学素子を得ることができる。
【0046】
そして、本実施形態に係る光学ガラスの組成は、熔融しやすいため、攪拌均一化が容易であり、生産効率に優れる。すなわち、光学ガラスの原料50gを1100~1250℃の温度で加熱したときの、当該原料が融解するまでの時間が、好ましくは15分未満であり、より好ましくは13分以下であり、更に好ましくは10分以下である。ここでいう「融解するまでの時間」とは、光学ガラスの構成に必要な原料に対する加熱保持を開始した時点から、これらの原料が熔融し、目視で液面付近に確認できなくなるまでの時間をいう。
【0047】
1100~1250℃の温度範囲において、上述したような短時間でガラス原料が融解するため、残存するガラス原料がガラス中へ混入することを抑制できる。また、残存するガラス原料を無理に融解させようとして、高温での加熱や長時間の加熱保持を行うと、ガラスの生産効率の低下や透過率悪化の原因となり得るが、本実施形態によればかかる不具合も発生しない。
【0048】
また、原料は不純物の含有量が少ない高純度品を使用するのが好ましい。高純度品とは、当該成分を99.85質量%以上含むものである。高純度品の使用によって、不純物量が少なくなる結果、光学ガラスの内部透過率を高くできる傾向がある。
【0049】
次に、本実施形態に係る光学ガラスの諸物性値について説明する。
【0050】
本実施形態に係る光学ガラスは、部分分散比(Pg,F)が0.635以下である。また、本実施形態に係る光学ガラスは、大きな部分分散比(Pg,F)を実現するものであるため、レンズの収差補正に有効である。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスの部分分散比(Pg,F)の下限は、好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.610以上であり、更に好ましくは0.615以上である。そして、部分分散比(Pg,F)の上限は、より好ましくは0.634以下であり、更に好ましくは0.633以下である。
【0051】
レンズの薄型化の観点からは、本実施形態に係る光学ガラスは、高い屈折率を有している(屈折率(n)が大きい)ことが望ましい。しかしながら、一般的に屈折率が高いほど比重が増大する傾向にある。かかる実情を踏まえれば、本実施形態に係る光学ガラスにおけるd線に対する屈折率(n)、1.66~1.80の範囲であることが好ましい。そして、屈折率(n)の下限は、より好ましくは1.67以上であり、更に好ましくは1.68以上である。屈折率(n)の上限は、より好ましくは1.78以下であり、更に好ましくは1.77以下である。
【0052】
本実施形態に係る光学ガラスのアッベ数(ν)は、22~32の範囲であることが好ましい。そして、アッベ数(ν)の下限は、より好ましくは23以上であり、更に好ましくは24以上であり、アッベ数(ν)の上限は、より好ましくは31以下であり、更に好ましくは28以下である。
【0053】
そして、本実施形態に係る光学ガラスについて、屈折率(n)とアッベ数(ν)の好ましい組み合わせは、屈折率(n)が1.66~1.80であり、かつ、アッベ数(ν)が22~32である。かかる性質を有する本実施形態に係る光学ガラスは、例えば、他の光学ガラスと組み合わせ、凹レンズ群中の凸レンズとして使用することで、色収差や他の収差が良好に補正された光学系を設計可能である。
【0054】
レンズ軽量化の観点からは、本実施形態に係る光学ガラスは、低い比重を有していることが望ましい。しかしながら、一般的に、比重が低いほど屈折率が低下する傾向にある。かかる実情を踏まえれば、本実施形態に係る光学ガラスの好適な比重(S)は、2.8を下限、3.4を上限とした2.8~3.4の範囲である。
【0055】
本実施形態に係る光学ガラスの異常分散性を示す値(ΔPg,F)は、好ましくは0.0180~0.0320である。この上限は、より好ましくは0.0315以下であり、更に好ましくは0.0310以下であり、この下限は、より好ましくは0.0185以上であり、更に好ましくは0.0200以上である。ΔPg,Fは、異常分散性の指標であり、後述する実施例に記載の方法に準拠して求めることができる。
【0056】
本実施形態に係る光学ガラスの液相温度は、好ましくは1050℃以下であり、より好ましくは1040℃以下であり、更に好ましくは1030℃以下である。この値を有するガラスとすることで、例えば、連続溶解時に引き出しパイプから低温での引き出しが可能となるため、脈理の発生が抑制され、生産性を高めることができる。また、溶解温度を高くする必要が無くなるため、ガラスと溶解槽との化学的な反応による異物の発生を抑制し、かつ、透過率を悪化させない溶解が可能となる。
【0057】
上述した観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、原料コストが安価であり、低比重、高分散(アッベ数(ν)が小さいこと)である。また、異常分散性を示す値(ΔPg,F)及び部分分散比(Pg,F)も大きくすることができる。本実施形態に係る光学ガラスは、カメラや顕微鏡等の光学装置の備えるレンズ等の光学素子として好適である。このような光学素子には、ミラー、レンズ、プリズム、フィルタ等が含まれる。これら光学素子を含む光学系としては、例えば、対物レンズ、集光レンズ、結像レンズ、カメラ用交換レンズ等が挙げられる。そして、これらは、レンズ交換式カメラ、レンズ非交換式カメラ等の撮像装置、多光子顕微鏡等の顕微鏡に用いることができる。なお、光学装置としては、上述した撮像装置や顕微鏡に限られず、ビデオカメラ、テレコンバーター、望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡、レーザ距離計、プロジェクタ等も含まれる。以下にこれらの一例を説明する。
【0058】
<撮像装置>
図1は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の斜視図である。
【0059】
撮像装置1はいわゆるデジタル一眼レフカメラ(レンズ交換式カメラ)であり、撮影レンズ103(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。カメラボディ101のレンズマウント(不図示)にレンズ鏡筒102が着脱自在に取り付けられる。そして、当該レンズ鏡筒102のレンズ103を通した光がカメラボディ101の背面側に配置されたマルチチップモジュール106のセンサチップ(固体撮像素子)104上に結像される。このセンサチップ104は、いわゆるCMOSイメージセンサー等のベアチップであり、マルチチップモジュール106は、例えばセンサチップ104がガラス基板105上にベアチップ実装されたCOG(Chip On Glass)タイプのモジュールである。
【0060】
図2は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の他の例の正面図であり、図3は、図2の撮像装置の背面図である。
【0061】
この撮像装置CAMはいわゆるデジタルスチルカメラ(レンズ非交換式カメラ)であり、撮影レンズWL(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。
【0062】
撮像装置CAMは、不図示の電源ボタンを押すと、撮影レンズWLのシャッタ(不図示)が開放されて、撮影レンズWLで被写体(物体)からの光が集光され、像面に配置された撮像素子に結像される。撮像素子に結像された被写体像は、撮像装置CAMの背後に配置された液晶モニタLMに表示される。撮影者は、液晶モニタLMを見ながら被写体像の構図を決めた後、レリーズボタンB1を押し下げて被写体像を撮像素子で撮像し、メモリ(不図示)に記録保存する。
【0063】
撮像装置CAMには、被写体が暗い場合に補助光を発光する補助光発光部EF、撮像装置CAMの種々の条件設定等に使用するファンクションボタンB2等が配置されている。
【0064】
このようなデジタルカメラ等に用いられる光学系には、より高い解像度、軽量化、小型化が求められる。これらを実現するには光学系に高屈折率なガラスを用いることが有効である。特に、高屈折率でありながらより低い比重(S)を有し、高いプレス成形性を有するガラスの需要は高い。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、かかる光学機器の部材として好適である。なお、本実施形態において適用可能な光学機器としては、上述した撮像装置に限らず、例えばプロジェクタ等も挙げられる。光学素子についても、レンズに限らず、例えばプリズム等も挙げられる。
【0065】
<多光子顕微鏡>
図4は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える多光子顕微鏡2の構成の例を示すブロック図である。
【0066】
多光子顕微鏡2は、対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210を備える。対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210のうち少なくとも1つは、本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。以下、多光子顕微鏡2の光学系を中心に説明する。
【0067】
パルスレーザ装置201は、例えば、近赤外波長(約1000nm)であって、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置201から射出された直後の超短パルス光は、一般に所定の方向に偏光された直線偏光となっている。
【0068】
パルス分割装置202は、超短パルス光を分割し、超短パルス光の繰り返し周波数を高くして射出する。
【0069】
ビーム調整部203は、パルス分割装置202から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ206の瞳径に合わせて調整する機能、試料Sから発せられる多光子励起光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために超短パルス光の集光及び発散角度を調整する機能、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、逆の群速度分散を超短パルス光に与えるプリチャープ機能(群速度分散補償機能)等を有する。
【0070】
パルスレーザ装置201から射出された超短パルス光は、パルス分割装置202によりその繰り返し周波数が大きくされ、ビーム調整部203により上述した調整が行われる。そして、ビーム調整部203から射出された超短パルス光は、ダイクロイックミラー204によりダイクロイックミラーの方向に反射され、ダイクロイックミラー205を通過し、対物レンズ206により集光されて試料Sに照射される。このとき、走査手段(不図示)を用いることにより、超短パルス光を試料Sの観察面上に走査させてもよい。
【0071】
例えば、試料Sを蛍光観察する場合には、試料Sの超短パルス光の被照射領域及びその近傍では、試料Sが染色されている蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、「観察光」という。)が発せられる。
【0072】
試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた観察光は、対物レンズ206によりコリメートされ、その波長に応じて、ダイクロイックミラー205により反射されたり、あるいは、ダイクロイックミラー205を透過したりする。
【0073】
ダイクロイックミラー205により反射された観察光は、蛍光検出部207に入射する。蛍光検出部207は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)等により構成され、ダイクロイックミラー205により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部207は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0074】
一方、ダイクロイックミラー205を透過した観察光は、走査手段(不図示)によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー204を透過し、集光レンズ208により集光され、対物レンズ206の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられているピンホール209を通過し、結像レンズ210を透過して、蛍光検出部211に入射する。
【0075】
蛍光検出部211は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、結像レンズ210により蛍光検出部211の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部211は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0076】
なお、ダイクロイックミラー205を光路から外すことにより、試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた全ての観察光を蛍光検出部211で検出するようにしてもよい。
【0077】
また、試料Sから対物レンズ206と逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー212により反射され、蛍光検出部213に入射する。蛍光検出部213は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、ダイクロイックミラー212により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部213は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0078】
蛍光検出部207、211、213からそれぞれ出力された電気信号は、例えば、コンピュータ(不図示)に入力され、そのコンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示したり、観察画像のデータを記憶したりすることができる。
【実施例
【0079】
次に、以下の実施例及び比較例の説明をするが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0080】
<光学ガラスの作製>
各実施例及び比較例に係る光学ガラスは、以下の手順で作製した。まず、各表に記載の組成(質量%)となるよう、酸化物、水酸化物、リン酸化合物(リン酸塩、正リン酸等)、硫酸塩、炭酸塩、及び硝酸塩等から選ばれるガラス原料を秤量した。次に、秤量した原料を混合して白金坩堝に投入し、1100~1300℃の温度で70分程度熔融させて攪拌均一化した。泡切れを行った後、適当な温度に下げてから金型に鋳込んで徐冷し、成形することで各サンプルを得た。
【0081】
1.屈折率(n)とアッベ数(ν
各サンプルの屈折率(n)及びアッベ数(ν)は、屈折率測定器(株式会社島津デバイス製造製:KPR-2000)を用いて測定及び算出した。nは、d線(波長587.562nm)の光に対するガラスの屈折率を示す。νは、以下の式(1)より求めた。n、nは、それぞれC線(波長656.273nm)、F線(波長486.133nm)に対するガラスの屈折率を示す。

ν=(n-1)/(n-n)・・・(1)
【0082】
2.部分分散比(Pg,F
各サンプルの部分分散比(Pg,F)は、主分散(n-n)に対する部分分散(n-n)の比を示し、以下の式(2)より求めた。nは、g線(波長435.835nm)に対するガラスの屈折率を示す。

g,F=(n-n)/(n-n)・・・(2)
【0083】
3.異常分散性を示す値(ΔPg,F
各サンプルの異常分散性を示す値(ΔPg,F)は、以下に示す方法に準拠して求めた。
【0084】
(1)基準線の作成
まず、正常部分分散ガラスとして、以下に示すアッベ数(ν)と部分分散比(Pg,F)を有する2つのガラス「F2」及び「K7」を基準材として用いた。そして、各ガラスについて、横軸にアッベ数(ν)をとり、縦軸に部分分散比(Pg,F)をとり、2つの基準材に対応する2点を結ぶ直線を基準線とした。

ガラス「F2」の特性:ν=36.33、Pg,F=0.5834
ガラス「K7」の特性:ν=60.47、Pg,F=0.5429
【0085】
(2)ΔPg,Fの算出
次に、横軸をアッベ数(ν)、縦軸を部分分散比(Pg,F)としたグラフ上に各実施例の光学ガラスに対応する値をプロットし(図5参照)、上述した硝種のアッベ数(ν)に対応する基準線上の点と、その縦軸の値(Pg,F)との差分を、異常分散性を示す値(ΔPg,F)として算出した。なお、部分分散比(Pg,F)が基準線の上側にある場合、ΔPg,Fは正の値を有し、部分分散比(Pg,F)が基準線の下側にある場合、ΔPg,Fは負の値を有する。
【0086】
4.比重(S
各サンプルの比重(S)は、4℃における同体積の純水に対する質量比から求めた。
【0087】
5.ガラス原料の融解時間
ガラス原料の融解時間は、ガラス原料50gをよく混合した上で白金坩堝に入れ、1150~1250℃の温度で加熱保持を開始したときから、ガラス原料が融解するまでの時間を意味する。本実施例においては、白金坩堝中のガラス液面に目視でガラス原料の溶け残りが確認できなくなったことにより、ガラス原料が融解したと判断した。
【0088】
6.液相温度
液相温度は、ガラス約0.1gを穴の空いた白金板に載せ、10℃刻みの温度勾配がついた試験炉内で18分間保持した後、炉から出して自然急冷し、倍率100倍の顕微鏡で失透の有無を観察した。なお液相温度の値は、失透が生じない高温側の温度(℃)を記載した。
【0089】
各表に、各実施例及び各比較例の組成及びその物性値をそれぞれ示す。なお、特に断りがない限り、各成分の含有量は質量%基準である。
【0090】
図5は、各実施例の光学恒数値をプロットしたグラフである。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
本実施例の光学ガラスは、高分散でありながら低い比重を有しており、1050℃以下の低い液相温度を有し、かつ、大きなΔPg,F及びPg,F値を有していることが確認された。また、ガラス作製時におけるガラス原料の融解時間が短いため、生産効率に優れることが確認された。なお、比較例1~4は、失透のため各種物性値の測定が不可能であった。比較例5は、ガラスが濃黒褐色に着色したため、光学恒数の測定が不可能であった。
【符号の説明】
【0096】
1・・・撮像装置、101・・・カメラボディ、102・・・レンズ鏡筒、103・・・レンズ、104・・・センサチップ、105・・・ガラス基板、106・・・マルチチップモジュール、2・・・多光子顕微鏡、201・・・パルスレーザ装置、202・・・パルス分割装置、203・・・ビーム調整部、204,205,212・・・ダイクロイックミラー、206・・・対物レンズ、207,211,213・・・蛍光検出部、208・・・集光レンズ、209・・・ピンホール、210・・・結像レンズ、S・・・試料、CAM・・・撮像装置、WL・・・撮影レンズ、EF・・・補助光発光部、LM・・・液晶モニタ、B1・・・レリーズボタン、B2・・・ファンクションボタン
図1
図2
図3
図4
図5