(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】医療用インプラント送達システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20231227BHJP
【FI】
A61F2/966
(21)【出願番号】P 2021518652
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 US2019053138
(87)【国際公開番号】W WO2020072268
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-05-23
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(73)【特許権者】
【識別番号】515084904
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン ホールディングス I,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】STRYKER EUROPEAN HOLDINGS I,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バシリ,メヘラン
(72)【発明者】
【氏名】オオ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】ルク,ヘンリー
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-518717(JP,A)
【文献】特開平09-276302(JP,A)
【文献】特開2013-000586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラント送達システムにおいて、
管腔を有する送達カテーテルと、
前記送達カテーテルの管腔内にスライド可能に配置された細長い送達機構であって、環状チャネルおよび当該環状チャネル内に配置された圧縮可能な環状ブッシングを具え、当該環状ブッシングは
半径方向内側に圧縮された構成と半径方向外側に拡張した構成との間で変位するように構成されている、細長い送達機構と、
前記送達カテーテルと細長い送達機構との間に同軸に配置されたインプラントとを具え、
当該インプラントは、管状本体および当該管状本体に取り付けられた少なくとも1つの係合要素を具え、前記送達カテーテルの管腔は、前記少なくとも1つの係合要素を前記環状チャネル内に維持して前記環状ブッシングを
前記圧縮された構成に押しやるように寸法形成されており、前記細長い送達機構およびインプラントを前記送達カテーテルの管腔内で同時に遠位に変位させ、前記送達カテーテルから
前記インプラントを展開させると、それによって前記環状ブッシングが
前記拡張した構成になることが可能となり、
前記細長い送達機構がさらに、近位部分および遠位部分を有する送達ワイヤと、当該送達ワイヤの遠位部分に取り付けられた近位バンパーと、前記送達ワイヤの遠位部分の、前記近位バンパーの遠位に取り付けられた遠位バンパーであって、それによって前記近位バンパーと前記遠位バンパーの間に環状チャネルが作成される、遠位バンパーとを具え、
前記環状ブッシングは、
前記拡張した構成にあるときに、前記環状チャネルのほぼ全体を
占めており、
前記インプラントおよび前記環状ブッシングが前記送達カテーテルの内部にあるときは、少なくとも1つの前記係合要素が、前記近位バンパーと前記遠位バンパーとの間で前記圧縮された構成の環状ブッシングに係合され、
前記インプラントおよび前記環状ブッシングが前記送達カテーテルよりも遠位に送達されたときに、前記環状ブッシングが前記拡張した構成に変位して、少なくとも1つの前記係合要素が前記環状ブッシングから係合が解除されることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項2】
請求項1に記載のインプラント送達システムにおいて、少なくとも1つの前記係合要素が、半径方向外側に変位するようにバイアスされていることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項3】
請求項
1または2に記載のインプラント送達システムにおいて、
前記インプラントの管状本体は、前記送達ワイヤの遠位部分の、前記遠位バンパーの遠位の位置に配置されていることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項4】
請求項
3に記載のインプラント送達システムにおいて、前記細長い送達機構がさらに、
前記送達ワイヤの遠位部分の、前記遠位バンパーの遠位に配置されたコイルと、
当該コイル上に取り付けられた管状の遠位先端とを具え、
前記インプラントの管状本体は、前記管状の遠位先端上に配置されていることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項5】
請求項
4に記載のインプラント送達システムにおいて、前記コイルが放射線不透過性であることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項6】
請求項
1乃至5のいずれかに記載のインプラント送達システムにおいて、前記少なくとも1つの係合要素のうちの1以上が、角度の付いたアームを具えることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項7】
請求項
1乃至6のいずれかに記載のインプラント送達システムにおいて、前記少なくとも1つの係合要素が、
前記インプラントの管状本体の近位端部に取り付けられていることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項8】
請求項
1乃至7のいずれかに記載のインプラント送達システムにおいて、前記少なくとも1つの係合要素のうちの1以上が放射線不透過性であることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項9】
請求項
1乃至8のいずれかに記載のインプラント送達システムにおいて、前記細長い送達機構の環状ブッシングは、ポリエステルベースの熱可塑性ポリウレタンから構成されていることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項10】
請求項
4に記載のインプラント送達システムにおいて、前記遠位先端が、圧縮力がない場合に湾曲した形状をとるように事前に成形されており、
前記インプラントの管状本体が前記遠位先端を真っ直ぐな形状となるように拘束し、前記遠位先端は、
前記インプラントが前記送達カテーテルから外に展開されたときに湾曲した形状となることを特徴とするインプラント送達システム。
【請求項11】
送達カテーテルの管腔内にスライド可能に配置されるように構成された細長い送達機構であって、
近位部分および遠位部分を有する送達ワイヤと、
当該送達ワイヤの遠位部分に取り付けられた近位バンパーと、
前記送達ワイヤの遠位部分に、前記近位バンパーの遠位に取り付けられた遠位バンパーであって、それによって前記近位バンパーと前記遠位バンパーの間に環状チャネルが作成される、遠位バンパーと、
前記環状チャネル内に配置された圧縮可能な環状ブッシングであって、
半径方向内側に圧縮された構成と半径方向外側に拡張した構成との間で変位するように構成された環状ブッシングとを具え、
前記送達ワイヤの遠位部分が、前記遠位バンパーの遠位の位置でインプラント
の管状本体を受けるように構成されており、
前記環状ブッシングは、
前記拡張した構成にあるときに、前記環状チャネルのほぼ全体を
占めており、
前記インプラントおよび前記環状ブッシングが前記送達カテーテルの内部にあるときは、前記インプラントの少なくとも1つの係合要素が、前記近位バンパーと前記遠位バンパーとの間で前記環状ブッシングを前記圧縮された構成に押しており、
前記インプラントおよび前記環状ブッシングが前記送達カテーテルよりも遠位に送達されたときに、前記環状ブッシングが前記拡張した構成に変位することを特徴とする送達機構。
【請求項12】
請求項
11に記載の細長い送達機構において、さらに、
前記送達ワイヤの遠位部分の、前記遠位バンパーの遠位に配置された放射線不透過性のコイルと、
当該コイル上に取り付けられた管状の遠位先端とを具え、当該管状の遠位先端は
前記インプラントを受けるように構成されていることを特徴とする送達機構。
【請求項13】
請求項
11または12に記載の細長い送達機構において、前記送達機構の環状ブッシングがポリエステルベースの熱可塑性ポリウレタンから構成されることを特徴とする送達機構。
【請求項14】
請求項
12に記載の細長い送達機構において、前記遠位先端は、圧縮力がかかっていない場合に湾曲形状をとるように事前に成形されていることを特徴とする送達機構。
【請求項15】
請求項
14に記載の細長い送達機構において、前記湾曲形状が「j」形状を含むことを特徴とする送達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、一般に、医療機器および血管内医療処置に関し、より具体的には、血管または他の体腔の標的部位にインプラントを送達するための機器に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]血管内医療機器の使用は、多くの種類の血管疾患を治療するための効果的な方法になっている。一般に、適切な血管内機器が患者の血管系に挿入され、血管系を通って所望の標的部位にナビゲートされる。この方法を使用して、冠状動脈、脳、末梢血管系など、患者の血管系のほぼすべての標的部位にアクセスすることができる。
【0003】
[0003]ステント、ステントグラフト、分流器、および大静脈フィルタなどの医療用インプラントは、多くの場合、体内の所望の位置に配置するための送達デバイスと組み合わせて利用される。例えば、
図1を参照すると、ステントなどの医療用インプラント1は、ステント送達機構3を介して送達シース2に装填され得る。ステント送達機構3は、ステント1が取り付けられている遠位先端5を有する送達ワイヤ4を具える。ステント送達機構3は、近位バンパー6aおよび遠位バンパー6bをさらに含み、その間に、ステント1が送達シース2内で軸方向に変位可能なようにステント1に係合させる一方で、ステント1が送達シース2の外側に展開され、したがってもはや送達シース2に含まれなくなった時点でステント1を解放するための環状チャネル7が形成されている。この実施形態では、ステント1は、1つまたは複数の近位放射線不透過性マーカー8a(2つが図示されている)と、1つまたは複数の遠位放射線不透過性マーカー8b(2つが図示されている)とを含む。近位放射線不透過性マーカー8aは、バンパー6a、6bの間の環状チャネル7内に存在し、ステント1とステント送達機構3との間の係合を容易にする。
【0004】
[0004]
図2Aに示されるように、ステント1が引っ込められた非展開構成の送達シース2は、血管9の内腔に導入され、血管9内の標的位置に送達され得る。体内の標的位置に送達されたステント1は、その後、送達シース2を近位方向に後退させることにより、ステント送達機構3を介して送達シース2外に展開され、
図2Bに示されるように、血管9を開いた閉塞されていない状態に維持しながら、血管9の壁を支持し補強するために、血管9内で拡大構成へと拡張され得る。ステント1は、自己拡張するように構成されてもよいし、バルーンなどの貯蔵された潜在的な半径方向の力によって拡張されてもよいし、または自己拡張とバルーン拡張の組み合わせで構成されてもよい。
【0005】
[0005]多くの場合、ステント送達機構3を患者内に残したまま送達シース2を患者から取り出し、展開されたステント1をステント送達機構3と再交差(re-cross)させ、別のデバイス(図示せず)をステント送達メカニズム3上に誘導して展開されたステント1と係合させることが望ましい。例えば、他のデバイスとは、ステントが自己拡張しない場合にステント1を拡張させて血管9の壁と接触するように、あるいはステントが自己拡張する場合に当該ステントが血管9の壁に確実に係合するように、展開されたステント1内で拡張されるバルーンカテーテルであり得る。
【0006】
[0006]しかしながら、展開されたステント1が送達ワイヤ3と交差することは、遠位先端5およびステント送達機構3のバンパー6a、6bと展開されたステント1の支柱との間の機械的相互作用が生じて問題となる場合がある。
図2Cに示される一例として、特にステント1が血管9の湾曲部に展開された場合、送達ワイヤ4の遠位先端5が展開されたステント1のセルに食い込み、展開されたステント1の安全な再交差の妨げとなる場合がある。送達ワイヤ4の遠位先端3が展開されたステント1と再交差される場合でも、送達ワイヤ3の剛性のある部分が展開されたステント1内にある状態として、展開されたステント1内へバルーンカテーテルの送達が容易になるように、展開されたステント1を十分な量再交差させることが望ましい。しかしながら、
図2Dに示されるように、ステント1を除去したことにより現在露出しているバンパー6a、6bの前縁がステント1の支柱に引っ掛かる可能性があり、それにより、バルーンカテーテルが展開されたステント1内に確実に誘導されるように展開されたステント1を十分な距離で再交差させるためのさらなる課題が生じる。
【発明の概要】
【0007】
[0007]開示される発明の例示的な実施形態では、インプラント送達システムが提供され、このシステムは、管腔を有する送達カテーテルと、前記送達カテーテルの管腔内にスライド可能に配置された細長い送達機構であって、環状チャネルおよび当該環状チャネル内に配置された圧縮可能な環状ブッシングを具え、当該環状ブッシングは圧縮プロファイルと拡張プロファイルとの間で配置されるように構成されている、細長い送達機構と、前記送達カテーテルと細長い送達機構との間に同軸に配置されたインプラントとを具え、この医療用インプラントは、管状本体および当該管状本体に取り付けられた少なくとも1つの係合要素とを具え、前記送達カテーテルの管腔は、前記少なくとも1つの係合要素を前記環状チャネル内に維持して前記環状ブッシングを圧縮プロファイルに押しやるように寸法形成されており、前記細長い送達メカニズムおよびインプラントを前記送達カテーテルの管腔内で同時に遠位に変位させ、前記送達カテーテルから前記医療用インプラントを展開させると、それによって前記環状ブッシングが拡張プロファイルになることが可能となる。
【0008】
[0008]前記医療用インプラントは、例えば、ステント、血流ダイバータ、または他のタイプの管状インプラントであり得る。前記細長い送達機構がさらに、近位端部および遠位端部を有する送達ワイヤと、当該送達ワイヤの遠位端部に取り付けられた近位バンパーと、前記送達ワイヤの遠位端部の、前記近位バンパーの遠位に取り付けられた遠位バンパーであって、それによって前記近位バンパーと遠位バンパーの間に環状チャネルが作成される遠位バンパーとを具え得る。前記医療用インプラントの管状本体は、前記送達ワイヤの遠位端部の、前記遠位バンパーの遠位の位置に配置することができ、その場合に細長い送達機構は、前記送達ワイヤの遠位端部の、前記遠位バンパーの遠位に配置されたコイル(放射線不透過性であり得る)と、該コイル上に取り付けられた管状遠位先端とを具え、前記医療用インプラントの管状本体は、前記管状遠位先端上に配置されている。前記少なくとも1つの係合要素のうちの1以上は、放射線不透過性であり、角度の付いたアームを具え、前記医療用インプラントの管状本体の近位端部に取り付けられている。前記送達機構の環状ブッシングは、ポリエステルベースの熱可塑性ポリウレタンから構成され、拡張プロファイルにあるときに、環状ブッシングは実質的に環状空間全体を占める。
【0009】
[0009]前記細長い送達機構は、圧縮力がない場合に湾曲形状(例えば、「j」形状)をとるように事前に成形された遠位先端を具えてもよく、前記医療用インプラントの管状本体が前記遠位先端を真っ直ぐな形状となるように拘束し、前記細長い送達機構の遠位先端は、前記医療用インプラントが前記送達カテーテルから外に展開されたときに湾曲した形状となるように構成される。
【0010】
[0010]開示された発明の例示的な実施形態は、送達カテーテルの管腔内にスライド可能に配置されるように構成された細長い送達機構であり、当該細長い送達機構は、近位端部および遠位端部を有する送達ワイヤと、当該送達ワイヤの遠位端部に取り付けられた近位バンパーと、前記送達ワイヤの遠位端部に、前記近位バンパーの遠位に取り付けられた遠位バンパーであって、それによって前記近位バンパーと遠位バンパーの間に環状チャネルが作成される、遠位バンパーと、前記環状チャネル内に配置された圧縮可能な環状ブッシングであって、圧縮プロファイルと拡張プロファイルとの間で配置されるように構成された環状ブッシングとを具え、前記送達ワイヤの遠位端部が、前記遠位バンパーの遠位の位置でインプラントを受けるように構成されている。前記細長い送達機構は、前記送達ワイヤの遠位端部の、前記遠位バンパーの遠位に配置されたコイルと、当該コイル上に取り付けられた管状遠位先端とを具え、当該管状遠位先端は医療用インプラントを受けるように構成され、前記コイルは、放射線不透過性であり得る。前記環状ブッシングは、ポリエステルベースの熱可塑性ポリウレタンで構成することができ、拡張プロファイルでは、環状ブッシングは、実質的に環状空間全体を占める。前記細長い送達機構は、圧縮力がない場合に湾曲した(例えば、「j」字型の)形状をとるように事前に成形された遠位先端をさらに含み得る。
【0011】
[0011]開示された発明の別の例示的な実施形態は、インプラント送達システムであって、管腔を有する送達カテーテルと、当該送達カテーテルの管腔内にスライド可能に配置された細長い送達機構であって、圧縮力がかかっていない場合に湾曲形状をとるように事前に成形された遠位先端を有する細長い送達機構と、前記送達カテーテルと細長い送達機構との間に同軸配置されたインプラントであって、この医療用インプラントは、前記細長い送達機構の遠位先端が真っ直ぐな形状をとるように拘束する管状本体を具え、前記医療用インプラントは、前記細長い送達機構と解放可能に係合しており、前記細長い送達機構およびインプラントは、前記送達カテーテルの管腔内で遠位方向に同時に変位させて、前記送達カテーテルから前記医療用インプラントを展開することができ、それによって前記細長い送達機構の遠位先端が湾曲形状となる。
【0012】
[0012]
前記細長い送達機構がさらに、近位端部および遠位端部を有する送達ワイヤと、当該送達ワイヤの遠位端部に取り付けられた近位バンパーと、前記送達ワイヤの遠位端部の、前記近位バンパーの遠位に取り付けられた遠位バンパーであって、これによって前記近位バンパーと遠位バンパーの間に環状チャネルが作成される、遠位バンパーと、前記医療用インプラントは、前記管状本体に取り付けられた少なくとも1つの係合要素を有し、当該少なくとも1つの係合要素は、前記環状チャネルに配置されて、前記医療用インプラントを解放可能に前記細長い送達機構と係合する。前記細長い送達機構はまた、前記環状チャネル内に配置された圧縮可能な環状ブッシングを具え、当該環状ブッシングは、圧縮プロファイルと前記拡張プロファイルとの間で配置されるように構成され、前記送達カテーテルの管腔は、前記係合要素を前記環状チャネル内に保持し、前記環状ブッシングを圧縮プロファイルに押しやるように寸法決定され、前記送達カテーテルから前記医療用インプラントが展開すると、前記環状ブッシングが拡張プロファイルをとれるようになる。前記医療用インプラントの管状本体が、前記遠位バンパーの遠位面と隣接するように前記細長い送達機構上に配置することができる。前記細長い送達機構はさらに、遠位バンパーの遠位の送達ワイヤの遠位端部に配置されたコイル(放射線不透過性であり得る)と、当該コイル上に取り付けられた管状遠位先端を具え、前記医療用インプラントの管状本体は、前記管状遠位先端上に配置される。少なくとも1つの係合要素のうちの少なくとも1つは、角度の付いたアームであり得、少なくとも1つの係合要素(放射線不透過性マーカーであり得る)は、医療用インプラントの管状本体の近位端部に取り付けられ得る。前記環状ブッシングは、拡張プロファイルにあるとき、実質的に環状空間全体を占める。
【0013】
[0013]開示された発明の実施形態の他のおよびさらなる態様および特徴が、添付の図を考慮して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[0014]図面は開示された発明の例示的な実施形態の設計および有用性を示し、同じ要素には共通の参照番号が付されている。図面は一定の縮尺で描かれておらず、同じ構造または機能の要素は、図面全体を通して同じ参照番号で表されていることに留意されたい。これらの図面は、実施形態の詳細な説明を容易にすることのみを意図しており、その網羅的な説明として、または添付の特許請求の範囲によってのみ定義される開示された発明の範囲やそれらの均等物の限定として意図されていないことにも留意されたい。さらに、開示された発明の様々なクレームされた実施形態は、図面に示されているすべての態様または利点を有する必要はない。特定の実施形態に関連して説明される態様または効果は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、そのように図示されていなくても、他の実施形態で実施してもよい。これらの図面は、開示された発明の典型的な実施形態のみを示し、したがってその範囲を限定すると見なされるべきではないことが理解され、開示された発明は、添付の図面を使用することにより、追加の特異性および詳細とともに説明および説明される。
【0015】
【
図1】[0015]
図1は、従来技術のインプラント送達システムの断面図である。
【
図2】[0016]
図2A~2Dは、患者の血管系内にステントを展開するために
図1のインプラント送達システムを使用する従来技術の方法を示す平面図である。
【
図3】[0017]
図3は、開示された発明の一実施形態に従って構築されたインプラント送達システムの側面図である。
【
図4】[0018]
図4は、
図3のインプラント送達システムで使用される細長い送達機構の一実施形態の断面図である。
【
図5A】[0019]
図5Aは、環状空間を占有するために
図4の細長い送達機構で使用されるコンプライアント環状ブッシングの一実施形態の断面図であり、特に圧縮プロファイルの環状ブッシングを示す。
【
図5B】[0020]
図5Bは、
図5Aのコンプライアント環の断面図であり、特に拡大プロファイルで示されている。
【
図6】[0021]
図6は、
図4の細長い送達機構の遠位端部の側面図であり、特に、取り付けられた未展開のステントを示している。
【
図7】[0022]
図7は、
図6のステントの軸方向の図であり、特にステントの係合要素を示している。
【
図8】[0023]
図8は、患者の血管系内にステントを移植するために
図3のインプラント送達システムを操作する例示的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0025]最初に
図3を参照して、開示された発明の一実施形態に従って構築されたインプラント送達システム10の一実施形態を説明する。インプラント送達システム10は、一般に、細長い送達カテーテル12、細長い送達機構14、および医療用インプラント16を具える。図示する実施形態では、ステント16はステントとして説明されているが、代替の実施形態では、医療用インプラントは、細長い送達機構14を介して再交差(re-crossing)が可能な任意の管状インプラント、例えば、フローダイバータであり得る。
【0017】
[0026]送達カテーテル12は、例えば、シース、カテーテル、マイクロカテーテルなどの形態であり得る。インプラント送達システム10は「オーバーザワイヤ(over-the-wire)」構成で使用することができ、これは送達カテーテル12が既に導入されたガイドワイヤ(図示せず)を介して患者に導入され、送達カテーテル12がガイドワイヤ(図示せず)の全長にわたって延在するものである。あるいは、インプラント送達システム10は、ガイドワイヤ(図示せず)がガイドワイヤポート(図示せず)から送達カテーテル12の遠位部分のみを通って延在する「迅速交換(rapid-exchange)」構成で使用されてもよい。他の代替実施形態では、インプラント送達システム10は、ガイドワイヤの抜去後にシースまたはアクセスカテーテルの遠位部分を標的部位に残した状態で患者に導入され、インプラント送達システム10をシースまたはアクセスカテーテル内で患者の血管系を通ってナビゲートするようにしてもよい。
【0018】
[0027]送達カテーテル12の長さは、例えば約50cm~300cm、典型的には約60cm~200cmであり得る。送達カテーテル12は、標的部位での所望の治療のために、血管などの体の内腔にアクセスするように構成される。例えば、標的部位は、2~5mmの管腔直径を有する小径の血管内であって、曲がりくねった血管経路を介してアクセス可能な場合があり、これに急な血管の曲がりや複数の血管分岐が含まれる場合がある。そのような場合、送達カテーテル12は、小さい適切な直径および柔軟な構造を有する。
【0019】
[0028]いずれにせよ、送達カテーテル12は、近位部分20および遠位部分22を有する細長いシース本体18と、シース本体18の近位部分20と遠位部分22との間に延びる内腔24とを含む。シース本体18の近位部分20は患者の外側に留まり、インプラント送達システム10の使用中にオペレータがアクセスできる一方、シース本体18の遠位部分22は、血管系の遠隔位置に到達してステント16を患者の体の標的位置、例えば血管、動脈瘤頸部に隣接する血管、分岐血管などの閉塞部などに送達できるようなサイズで寸法決定される。送達カテーテル12の管腔24は、半径方向に収縮したインプラント16および細長い送達機構14の縦方向の動きに対応するようなサイズになっている。
【0020】
[0029]送達カテーテル12は、細長い送達機構14およびステント16を水和させるため、流体を送達カテーテル12に導入するために管腔24と流体連絡する少なくとも1つの流体ポート26を有し得る。送達カテーテル12は、イメージング技術(例えば、透視室イメージング)を使用して、患者の血管系内における、あるいは未展開または展開済のステント16と比較した送達カテーテル12の遠位端の位置を識別するために使用できる放射線不透過性材料でなりシース本体18に沿って形成された1つまたは複数のオプションのマーカーバンド(図示せず)を含み得る。
【0021】
[0030]送達カテーテル12は、その長さに沿って、構成および/または特性の異なる1つまたは複数の領域を含み得る。例えば、シース本体18の遠位部分22は、近位部分20の外径よりも小さい外径を有するようにして、遠位部分22のプロファイルを低減して曲がりくねった血管系でのナビゲーションを容易にすることができる。さらに、遠位部分22は、近位部分20よりも柔軟にしてもよい。一般に、近位部分20は、遠位部分22よりも剛性のある材料から形成され、その結果、近位部分20は患者の血管系を通って前進するのに十分な押し込み性を有する一方、遠位部分22はより柔軟な材料から形成され、その結果、この遠位部分22が柔軟性を維持し、ガイドワイヤ上を追従し易くなり、血管系の曲がりくねった領域内の遠隔位置にアクセスできるようになる。場合によっては、近位部分20は、送達カテーテル12の押し込み性を高めるために、編組層またはコイル層などの補強層を含んでもよい。送達カテーテル12は、近位部分20と遠位部分22との間の移行領域を含み得る。
【0022】
[0031]送達カテーテル12のシース本体18は、ポリエチレン、ステンレス鋼といった、適切なポリマー材料、金属、および/または合金、または他の適切な生体適合性材料またはそれらの組み合わせなどで構成され得る。適切な金属および金属合金の例には、304V、304L、および316Lステンレス鋼などのステンレス鋼;超弾性(すなわち、擬弾性)または線形弾性ニチノールなどのニッケル-チタン合金;ニッケル-クロム合金;ニッケル-クロム-鉄合金;コバルト合金;タングステンまたはタングステン合金;タンタルまたはタンタル合金、金または金合金、MP35-N(約35%Ni、35%Co、20%Cr、9.75%Mo、最大1%Fe、最大1%Ti、最大0.25%C、最大0.15%Mn、および最大0.15%Siの組成);またはその類似物;または他の適切な金属、またはそれらの組み合わせまたは合金を含み得る。いくつかの適切なポリマーの例には、限定しないが、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルブロックエステル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリスフォン、ナイロン、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、ポリエーテルエステル、ポリマー/金属複合材料、またはそれらの混合物、ブレンド、または組み合わせを含み得る。
【0023】
[0032]送達カテーテル12のシース本体18は、ポリマーコーティングによってカプセル化または囲まれたステンレス鋼フラットワイヤの編組シャフト構造を含み得る。非限定的な例として、ハイドロレンは、シース本体18の外側部分を覆うために使用できるポリマーコーティングである。もちろん、システム10は、特定の構造またはタイプの送達カテーテル12に限定されず、当業者に知られている他の構造を、送達カテーテル12のシース本体18に使用することができる。送達カテーテル12の管腔24は、管腔24内で縦方向に動かしたときにシース本体18と細長い送達機構14およびインプラント16との間の摩擦力を低減するために、PTFEなどの潤滑性コーティング(図示せず)で有利にコーティングされてもよい。
【0024】
[0033]細長い送達機構14は、送達カテーテル12の管腔24内にスライド可能に配置され、一般に、近位部分30および遠位部分32を有する送達ワイヤ28を含む。送達ワイヤ28は、従来のガイドワイヤ、トルク可能なケーブルチューブ、またはハイポチューブから構成され得る。いずれの場合も、医療機器に一般的に関連する所望の特性を達成するために送達ワイヤ28に使用可能な材料が多く存在する。いくつかの例には、金属、金属合金、ポリマー、金属-ポリマー複合材料など、または任意の他の適切な材料が含まれ得る。
【0025】
[0034]例えば、送達ワイヤ28は、ニッケル-チタン合金、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金およびステンレス鋼の複合体を含み得る。場合によっては、送達ワイヤ28はその長さに沿って同じ材料で作ることができ、またはいくつかの実施形態では、異なる材料で作られた部分またはセクションを含むことができる。いくつかの実施形態では、送達ワイヤ28を構築するために使用される材料は、送達ワイヤ28の異なる部分に様々な柔軟性および剛性特性を与えるように選択される。例えば、送達ワイヤ28の近位部分30と遠位部分32は、異なる材料、例えば異なる弾性係数を有する材料で形成され、その結果、柔軟性が異なってもよい。例えば、近位部分30はステンレス鋼で形成し、遠位部分32はニッケルチタン合金で形成することができる。しかしながら、必要に応じて、任意の適切な材料または材料の組み合わせを送達ワイヤ28に使用することができる。
【0026】
[0035]
図4を参照すると、送達ワイヤ28の遠位端の柔軟性を高めるために、送達ワイヤ28は、比較的大きな直径の近位部分30から比較的小さな直径の遠位部分32へと先細になっている。この場合、細長い送達機構14は、近位部分30と遠位部分32との間の送達ワイヤ28の遷移領域に取り付けられたコイル34をさらに含み、それにより、近位部分30と遠位部分32の間に均一なプロファイルを提供しつつ、遠位から近位部分32への細長い送達機構14の横方向の柔軟性を維持するようにしてもよい。細長い送達機構14は、任意選択のガイドワイヤ管腔(図示せず)を含み得る。
【0027】
[0036]細長い送達機構14は、送達ワイヤ28の遠位端部30に取り付けられた近位バンパー36aと、送達ワイヤ28の遠位端30において近位バンパー36aの遠位に取り付けられた遠位バンパー36bとをさらに含み、それによって近位バンパー36aと遠位バンパー36bとの間に環状チャネル38を作成している。バンパー36a、36bは、ステンレス鋼またはニチノールなどの適切な生体適合性材料から構成され得る。バンパー36a、36bのそれぞれは円盤状であり、送達カテーテル12の管腔24に当接(engage)するようなサイズである。バンパー36a、36bの外面は、それらが形成される材料によって低摩擦性であり得る。代替的または追加的に、バンパー36a、36bの外面は、潤滑性コーティング、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でコーティングされ、これによって送達カテーテル12の管腔24を通るバンパー36a、36bの移動が容易になるようにしてもよい。バンパー36a、36b、したがって環状チャネル38は、好ましくは円形の断面を有するが、バンパー36a、36bおよび環状チャネル38は、不規則な形状を含む非円形の断面を有してもよい。重要なことに、細長い送達機構14は、環状チャネル38内に配置された環状ブッシング40をさらに含む。環状ブッシング40は、圧縮プロファイル(
図5A)と拡張プロファイル(
図5B)の間に位置するように構成され、これらは以降に詳述される。環状ブッシング40は、圧縮プロファイルへと小さくなり膨張プロファイルへと展開できる適切な材料で構成することができ、例えばポリマー材料や、超弾性材料などの非ポリマー材料から構成され得る。好ましくは、環状ブッシング40は、環状チャネル38内に回転固定されておらず、したがって、環状チャネル38内で自由に回転する。
【0028】
[0037]細長い送達機構14は、好ましくは遠位バンパー36bの遠位表面と隣接して、送達ワイヤ28の遠位端部30の周りの、遠位バンパー36bの遠位に配置されたコイル42をさらに含む。コイル42は、後述するように、再交差処手順中の細長い送達機構14の遠位先端46の位置および湾曲の視覚化を助けるために、放射線不透過性であることが有利である。この場合、コイル42は、白金、金、タングステン、またはそれらの合金または他の金属などの適切な生体適合性材料から構成され得る。あるいは、コイル42の代わりに、細長い送達機構14は、送達ワイヤ36の遠位端部30における遠位バンパー36bの遠位に、溶融して配置された材料を含み得る。細長い送達機構14は、アセンブリをユニボディ設計に完全に統合するために、送達ワイヤ28とコイル34、42との間の空間を充填するポリマー44をさらに含んでもよい。
【0029】
[0038]重要なことに、細長い送達機構14は、非制約時に湾曲した形状(および好ましい実施形態ではJ字型の形状)をとり、制約時に直線形状(点線で示す)をとるように事前成形された遠位先端46をさらに具える。図示の実施形態では、遠位先端46はコイル42上に取り付けられているが、代替の実施形態では、遠位先端46は送達ワイヤ28の少なくとも一部から形成されてもよい。以下に詳述するように、追加された遠位先端46の追加された厚さは、細長い送達機構14の遠位先端の直径を増加させるだけでなく、展開されたステント16の再交差を容易にする屈曲を作成する。
【0030】
[0039]
図3に示されるように、ステント16は、送達カテーテル12と細長い送達機構14との間に同軸配置される。細長い送達機構14は、細長い送達機構14を送達カテーテル12に対して軸方向に並進させたらステント16と係合し、ステント16を患者の標的部位に送達できるように構成される。細長い送達機構14とステント16との間のインターフェースは、以下でさらに詳細に説明される。
【0031】
[0040]
図6を参照すると、ステント16は管状弾性体48を含み、これが細長い送達機構14の遠位先端46を拘束して真っ直ぐな形状にするとともに、ステント16が送達カテーテル12から展開されたら、送達機構14の遠位先端46から拘束力を解放して、送達機構14の遠位先端46が湾曲形状となるようにする。ステント16は、近位部分50、遠位部分52、および近位部分50と遠位部分52との間の管状本体48を通って延びる内腔54とを有する。ステント16は、
図3に示されるように、送達カテーテル12の管腔24内に半径方向に拘束されているときは送達構成を有する。好ましくは、管状弾性体48の断面寸法は、ステント16が送達構成にあるとき、送達カテーテル12内で細長い送達機構14およびインプラント16の変位を容易にするために、バンパー36a、36bの断面寸法と同じである。
【0032】
[0041]ステント16の管状本体48は、間にセル58を形成する複数の支柱56を具え、送達カテーテル12から外に展開されると、半径方向外側に拡張して展開構成になるようにバイアスされている。ステント16は、金属、金属合金、ポリマー、金属-ポリマー複合材料などを含む医療機器に一般的に関連する任意の数の様々な材料、例えばステンレス鋼、コバルトベースの合金、金合金、エルジオロイ、ニッケル、チタン、プラチナ、ニチノール、形状記憶ポリマー、またはそれらの組み合わせから構築され得る。ステント16も同様に、様々な態様で形成することができる。例えばステント16は、ステント材料のチューブまたはシートからパターンをエッチングまたはカッティングすることによって形成することができる。すなわちステント材料のシートを所望のステントパターンに従ってカッティングまたはエッチングし、その上でシートを所望の実質的に管状の、分岐した、または他の形状に圧延または他の方法で形成することができる。ステント16の場合、ステント材料の1つまたは複数のワイヤまたはリボンを、所望の形状およびパターンに織る、編む、または他の方法で形成することができる。ステント16は、互いに溶接、結合、または他の方法で係合されたさらなる構成要素を含み得る。ステント16が血流ダイバータとして使用される場合、ステント16は、非多孔性、非透過性の生体適合性材料、カバーなどを含み得る。ステントなどのインプラント16は、2013年12月23日に出願された米国特許出願第14/139,815号「多層ステント」、2013年12月12日に出願された米国特許出願第14/104,906号「ステント送達システム」にさらに記載されており、これらは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0033】
[0042]さらに
図7を参照すると、ステント16は、管状本体48の近位部分50に形成された少なくとも1つ(この場合、3つ)の近位放射線不透過性マーカー60a、および管状本体48の遠位部分52に形成された少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカー60b(この場合
図7に示されていない3つ)をさらに含む。放射線不透過性マーカー60a、60bは、白金、金、タングステン、またはそれらの合金または他の金属などの適切な生体適合性材料から構成される。放射線不透過性マーカー60a、60bは、ステント16が血管内の標的位置への送達中に視覚化されることを可能にする。すなわち、近位マーカー60aはステント16の近位端の位置を示し、一方、遠位マーカー60bはステント16の遠位端の位置を示す。重要なことに、近位放射線不透過性マーカー60aは、細長い送達機構14の環状チャネル38と解放可能に係合する係合要素として機能する。図示の実施形態では、係合要素60aのそれぞれは、細長い送達機構14の環状チャネル38を捕捉する角度付き弾性アームの形態をとる。
【0034】
[0043]ステント16の角度付き弾性アーム60aは、半径方向外向きに半径方向に変位するようにバイアスされている。しかしながら、送達カテーテル12の管腔24は、細長い送達機構14の環状チャネル38内に角度付きアーム60aを維持し、環状ブッシング40を(
図5aに示されるような)圧縮プロファイルに押しやるように寸法構成され、細長い送達機構14およびステント16を、送達カテーテル12の管腔24内で同時に遠位方向に変位させて送達カテーテル12からステント16を展開できるようになっている。ステント16が送達カテーテル12の管腔24から展開されると、角度付き弾性アーム60aが半径方向外向きに変位し、それによって係合が解除され、ステント16を解放する。以下に詳述するように、環状ブッシング40は、ステント16が送達カテーテル12から展開された後、(
図5bに示される)拡張プロファイルとなって実質的に環状チャネル38全体を埋める(すなわち、環状チャネル38の少なくとも90パーセントが占有される)。ただし最適には、環状ブッシング40の外面がバンパー36a、36bの外面と完全に同一平面となり、それによって環状チャネル38の不連続性を完全に排除して、以下でさらに詳細に説明するように、再交差プロセス中に展開されたステント16に引っ掛からないようにしてもよい。このように、環状ブッシング40は、好ましくは近位放射線不透過性マーカー60aを収容しつつ、環状チャネル38を可能な限り占有するように形成される。
【0035】
[0044]係合要素60aは放射線不透過性の角度付きアームとして説明したが、代替の実施形態では、係合要素60aは放射線不透過性ではなく、角度付きアーム以外でも、環状チャネル38と係合することができ環状ブッシング40を圧縮プロファイルに配置する他の形態としてもよいことを理解されたい。
【0036】
[0045]次に、インプラント送達システム10の構造および特徴をよりよく理解するために、インプラント送達システム10を使用する例示的な方法100(
図8に示す)を説明する。インプラント送達システム10の使用方法100は、患者の血管系内の血管の標的部位での閉塞を治療するという文脈で説明され、前もって閉塞が血管から除去されていると仮定する。
【0037】
[0046]最初に、細長い送達機構14およびインプラント16(この場合、ステント)を、例えば送達カテーテル12の近位端に導入し、続いてステント16が送達カテーテル12の遠位端に位置するまで、送達カテーテル12の管腔24内で細長い送達機構14とインプラント16を前進させることによって、送達カテーテル12の前部に装填する(ステップ102)(
図3を参照)。このステップは、製造元または医療関係者が実行することができる。ステント16および細長い送達機構14のバンパー36a、36bが、ステント16が送達カテーテルの遠位端部12に位置するまで、アイリスクリンパ(Machine Solutions, Inc.から入手可能)または漏斗を使用して、送達カテーテル12の近位端にねじ込まれる。この時点で、ステント16は細長い送達機構14に固定され、その結果、細長い送達機構14の遠位先端46がステント16によって拘束され、したがって真っ直ぐなプロファイルをとる(
図4を参照)。ステント16の係合要素52(すなわち、角度付きアーム)は、環状ブッシング40がその圧縮プロファイルをとるように、細長い送達機構14の環状チャネル38内に配置される(
図5Aを参照)。
【0038】
[0047]次に、通常の生理食塩水などの水和液を、送達カテーテル12のシース本体18の近位端部20の液体ポートに導入し、シース本体18の管腔24を通して移動させて、ステント16を水和する(ステップ104)。次に、インプラント送達システム10の遠位端部を従来の方法で患者の血管系に導入し、送達カテーテル12の遠位部分20が患者の血管9内の標的部位に隣接するまで、(例えば、前もって配置されたガイドワイヤ上で)血管系を通して前進させる。(ステップ106)(
図9Aを参照)。シース本体18の遠位部分20上の放射線不透過性マーカー(図示せず)により、送達カテーテル12が血管系を通って案内されるときに、解剖学的目印に対して送達カテーテルを視覚化するのが補助される。インプラント送達システム10を同時に患者の血管系に導入することができ、その場合、ステップ102に関して上述したように細長い送達機構14およびステント16が最初に送達カテーテル12に装填されるか、あるいは細長い送達機構14なしで送達カテーテル12が最初に患者の血管系に導入されて血管の標的部位に進められ、次いで、細長い送達機構14およびステント16がその後にステップ102に関して上記した方法で送達カテーテル12内へと装填される。
【0039】
[0048]次に、送達カテーテル12および細長い送達機構14が、互いに対して軸方向に並進され(例えば、送達カテーテル12を近位方向に引っ張ることによって、細長い送達機構14を遠位方向に押すことによって、またはその両方によって)、それによって遠位方向に移動される。ステント16が血管9の標的部位で送達カテーテル12の管腔24から外に展開するまで、送達カテーテル12の管腔24内でインプラント16(この場合はステント)を前進させる(ステップ108)(
図9B参照)。ステント16の展開の結果として、すなわち細長い送達機構14の遠位端部における送達カテーテル12による圧縮力の解放の結果として、係合要素60a(すなわち、角度付きアーム)の弾力性によってこれらがバンパー36a、36bの間の環状チャネル38から半径方向外向きに移動し、ステント16が細長い送達機構14から解放され、これにより、細長い送達機構14の環状ブッシング40が拡張プロファイルとなり(ステップ110)、そして細長い送達機構14の遠位先端46が湾曲形状(この場合、J字型)となる(ステップ112)(
図9B参照)。これにより、拡張された環状ブッシング40が環状チャネル38の全体を実質的に占有し(
図5B参照)、遠位先端46は自身の上に湾曲し、それによって細長い送達機構14がステント16と再交差(re-crossing)するのを阻害するエッジや薄型の機構が排除される。ステント18の放射線不透過性マーカー(この場合、近位および遠位マーカー60a、60b)により、送達カテーテル12および標的部位に隣接する他の解剖学的特徴に対するステント18の視覚化が可能になる。
【0040】
[0049]次に、展開されたステント16は、遠位先端46および環状チャネル38が展開されたステント16の遠位となるまで、細長い送達機構14の遠位端と再交差される(ステップ116)(
図9C参照)。細長い送達機構14の遠位先端46の増大した直径およびJ字形の組み合わせ、ならびに細長い送達機構14のバンパー36a、36bの間の環状チャネル38内で環状ブッシング40が拡張することにより、細長い送達機構14が、再交差手順中にステント16の支柱に引っ掛かったり絡まる可能性が回避されるか、少なくとも最小限に抑えられる。細長い送達機構14の遠位端部にある放射線不透過性マーカー(この場合、送達ワイヤ28の遠位部分32に配置されたコイル42)により、再交差手順中にステント16に対する遠位先端46の位置や形状の視覚化が可能となる。送達カテーテル12は、細長い送達機構14から取り外され(
図9D参照)、最終的には患者から完全に抜去される(ステップ118)。
【0041】
[0050]送達カテーテル12は、ステント再交差手順の前または後に除去することができる。別のカテーテル70(この場合、バルーンカテーテル)が、細長い送達機構14上を案内され、一方で遠位先端46および環状チャネル38は、バルーンカテーテル70の)の手術要素72(この場合、バルーン)が、標的部位(この場合、展開されたステント16の内側)に隣接するまで、展開されたステント16の遠位にある(ステップ120)(
図9E参照)。次に、バルーンカテーテル70が作動され、特に、バルーン72が膨張して、血管を開いた状態、障害物のない状態に維持しながら、血管の壁を支持および補強するために、展開されたステント16を血管の壁に対して半径方向に押し付ける(ステップ122)(
図9F参照)。次に、バルーン72が収縮され、細長い送達機構14およびバルーンカテーテル70が患者から取り外される(ステップ124)。