(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】改良された再封性を備えた再封可能なパッケージのための新規多層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/28 20060101AFI20231227BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B32B27/28
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021524351
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 FR2019052539
(87)【国際公開番号】W WO2020094945
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-14
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】プシュワ,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ロベール,クリストフ
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-005903(JP,A)
【文献】特開2018-138638(JP,A)
【文献】特開2007-253395(JP,A)
【文献】特開2003-175567(JP,A)
【文献】特開昭59-086651(JP,A)
【文献】特開平01-167388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/28
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
7から50μmの範囲の厚さを有し、HMPSA組成物(a)からなる
接着剤層Aによって一緒に接合された熱可塑性材料の二つの薄層D及びEを含む多層フィルムであって、前記HMPSA組成物(a)が、前記組成物の全重量に基づいて、
- 40重量%から70重量%の、少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体の組成物(a1)であって、その全重量に基づいて、
- 30重量%から90重量%の、SI、SBI、SIB、SB、SEB及びSEPを含む群から選択される少なくとも一のジブロック共重合体、及び
- 10重量%から70重量%の、SIS、SIBS、SBS、SEBS及びSEPSを含む群から選択される、少なくとも一のトリブロック共重合体
からなり、
前記組成物(a1)のスチレン単位の全含有量が(a1)の全重量に基づいて10重量%から40重量%の範囲である前記組成物(a1);
並びに
- 30重量%から60重量%の一又は複数種の粘着付与樹脂(a2)
を含み、前記多層フィルムは、接着剤層Aが、
- つなぎ層Bによって層Dに連結され、かつ
- つなぎ層Cによって層Eに連結され;
二つの層B及びCのそれぞれは、それぞ
れ
- 4又は5個の炭素原子を含む環か6又は8個の炭素原子を含む直
鎖の何れかである不飽和カルボン酸無水物で変性されていてもよい、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)から選択されるポリオレフィン(P);及び
- エチレンとプロピレンの共重合体(EL1)及び少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体(EL2)から選択される少なくとも一のエラストマー化合物(EL)
を含む組成物(b)及び(c)からなる、多層フィルム。
【請求項2】
組成物(a1)が、SISトリブロック共重合体とSIジブロック共重合体からなることを特徴とする、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
使用可能な粘着付与樹脂(a2)が
、300Daと5000Daの間の重量平均分子量M
wを有し
、
-(i) 天然由来のロジン又は変性ロジ
ン;
-(ii) 石油留分から得られ
る5、9又は10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の水素化、重合又
は芳香族炭化水素と
の共重合によって得られる樹脂;
-(iii) フェノールの作用によって変性されてもよ
いテルペン炭化水素の重合か
ら得られるテルペン樹脂;
-(iv) 天然テルペンに基づく共重合
体
から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
つなぎ層B及びCの構成組成物(b)及び(c)のそれぞれが、前記組成物の全重量に基づき、
- 50重量%から98重量%のポリオレフィン(P);及び
- 2重量%から50重量%のエラストマー化合物(EL)
を含むことを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
組成物(b)及び(c)の少なくとも一に含まれるポリオレフィン(P)が、(PE
)であることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
組成物(b)及び(c)の少なくとも一に含まれるポリオレフィン(P)が、無水マレイン酸でグラフトされた(PE
)であることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の多層フィルム。
【請求項7】
つなぎ層B及びCの構成組成物(b)及び(c)の少なくとも一が、
- 50重量%から85重量%の、無水マレイン酸でグラフトされた(PE);及び
- 15重量%から50重量%の、エチレンとプロピレンの共重合体(EL1)
を含むことを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の多層フィルム。
【請求項8】
スチレンブロック共重合体(EL2)が
、ジブロック及びトリブロック組成物の形態であることを特徴と
し、前記ジブロック及びトリブロック組成物が、その全重量に基づいて、
- 30重量%から90重量%の、SI、SBI、SIB、SB、SEB及びSEPを含む群から選択される少なくとも一のジブロック共重合体、及び
- 10重量%から70重量%の、SIS、SIBS、SBS、SEBS及びSEPSを含む群から選択される、少なくとも一のトリブロック共重合体
からなり、前記スチレンブロック共重合体(EL2)のスチレン単位の全含有量が、(EL2)の全重量に基づいて10重量%から40重量%の範囲である、請求項1から5の何れか一項に記載の多層フィルム。
【請求項9】
つなぎ層B及びCの構成組成物(b)及び(c)の少なくとも一が、
- 70重量%から98重量%の(PE);及び
- 2重量%から30重量%の、少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体(EL2)
を含むことを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の多層フィルム。
【請求項10】
スチレンブロック共重合体(EL2)が
、HMPSA組成物に含まれることを特徴と
し、前記HMPSA組成物が、前記組成物の全重量に基づいて、
- 40重量%から70重量%の、スチレンブロック共重合体(EL2)であって、その全重量に基づいて、
- 30重量%から90重量%の、SI、SBI、SIB、SB、SEB及びSEPを含む群から選択される少なくとも一のジブロック共重合体、及び
- 10重量%から70重量%の、SIS、SIBS、SBS、SEBS及びSEPSを含む群から選択される、少なくとも一のトリブロック共重合体
からなり、前記スチレンブロック共重合体(EL2)のスチレン単位の全含有量が(EL2)の全重量に基づいて10重量%から40重量%の範囲であるスチレンブロック共重合体(EL2);並びに
- 30重量%から60重量%の一又は複数種の粘着付与樹脂(a2)
を含む、請求項1から5及び8又は9の何れか一項に記載の多層フィルム。
【請求項11】
層B及びCの組成物(b)及び(c)が同一であることを特徴とする、請求項1から10の何れか一項に記載の多層フィルム。
【請求項12】
接着剤層A、二つの中間層B及びC、
並びに二つの外層D及びEからなる五層を、D/B/A/C/E順で含むフィルムであることを特徴とし、ここで、「/」記号は、当該層の面が接触していることを示す、請求項1から11の何れか一項に記載の多層フィルム。
【請求項13】
ホットメルト感圧接着剤組成物(a)、組成物(b)及び(c)、並びに層D及びEの構成材料の共押出しを含むことを特徴とする、請求項1から12の何れか一項に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項14】
共押出しがバブルブローにより行われることを特徴とする、請求項13に記載の多層フィルムの製造方法。
【請求項15】
再封可能なパッケージを製造するための、請求項1から12の何れか一項に記載の多層フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、押出可能なホットメルト感圧接着剤組成物からなる層を含む多層フィルム、前記フィルムの製造方法、及びまた特に食品、特に腐敗しやすい食品のパッケージを意図した再封可能なパッケージ(又はトレイ)の製造におけるその使用である。
【背景技術】
【0002】
再封可能なパッケージ(又はトレイ)の製造における使用を意図した押出可能なホットメルト感圧接着剤組成物は、出願WO02/064694、WO12/045950、WO12/045951及びWO14/020243から知られている。
例えばトレイ又は袋の形の再封可能なパッケージは、腐敗しやすい食品、特に生鮮製品のパッケージのために食品加工産業及び大規模流通において使用される。そのようなパッケージはまた特許EP1053952に記載されている。
【0003】
パッケージが初めて開けられ、その中に含まれる食品の一部が消費された後、消費者はパッケージを実質的に密封して手で再封することができ、従って、必要に応じて、冷蔵庫に入れた後、その食品の残りの部分を保存することができる。再び開け再封することもまた可能である。
【0004】
これらのパッケージは、一般に、溶着によって密封して互いに取り付けられた、容器(又はレセプタクル)と蓋を形成するシールを備えている。
程度の差はあれ深く、比較的硬い容器は、200μm、一般に200μmと1000μmの間の最小厚を有する多層シート(複合シート又は複合材シートとも呼ばれる)からなる。このシートは、食品が置かれる平らな底部と平らな帯状形態の周部を有するように熱成形されている。底部にほぼ平行なこの周部は、一般に40μmと150μmの間の厚さを有し、シーリングフィルムと呼ばれることもある多層フィルム(複合フィルム又は複合材フィルムとも呼ばれる)からなる柔軟で平らなシールに溶着によって接合される。
【0005】
パッケージを開ける間、シーリングフィルムは、容器の周部の平らな帯状部から手で分離される。この操作により、それまでは接触していたシーリング帯状部と容器帯状部上の双方に、この平らな帯状部の接着剤層が現れる。「ドーター」と呼ばれるこれら二つの(連続又は非連続)接着剤層は、最初の又は「マザー」接着剤層の切り裂き、あるいは場合によってはそれに隣接する多層複合フィルムの二つの層の一つからのその分離(又は剥離)の結果として生じる。従って、最初の接着剤層は、それ自体が容器を構成する複合シート又は好ましくはシーリングフィルムの何れかに含まれる構成要素である前記多層複合フィルムの層の一つである。
【0006】
従って、パッケージが開かれた後、容器とシールのそれぞれの周部に位置する帯状部上に存在する二つのドーター接着剤層が互いに対向する。従って、ドーター接着剤層の二つの帯状部を再び接触させるためには、開ける前のパッケージ内のその位置に従って、容器上にシールを再配置するだけで十分である。単純な手の圧力により、パッケージの再封が可能になる。
従って、マザー及びドーター接着剤層を構成する接着剤組成物が、必然的に感圧接着剤(PSA)である。
【0007】
前述の出願に記載されている押出可能な感圧接着剤組成物は、粘着付与樹脂とエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体とを含むホットメルト組成物である。ホットメルト感圧接着剤組成物は、「ホットメルト感圧接着剤(Hot-Melt Pressure-Sensitive Adhesive)」という用語の頭文字に対応して、一般にHMPSAとも呼ばれる。それらは、雰囲気温度で固体で、水も溶媒も含まない物質である。融解状態で塗布されると、それらは冷却されるにつれて固化して接着剤層を形成し、これが、組み合わせられる熱可塑性ポリマー材料の二つの薄層間の接合をもたらすと同時に、対応するパッケージに有利な開封及び再封特性を提供する。
【0008】
更に、ホットメルト感圧接着剤(又はHMPSA)組成物は、その成分を熱混合することによって調製されるが、例えば、押出製品を切断するためのツールを備えた二軸スクリュー押出機によって、混合工程後に高温条件下で直接実施される押出工程によって顆粒(1mmと10mmの間のサイズ)の形に作製できるという更なる利点を有する。
このようにして得られた顆粒により、ホットメルト感圧接着剤組成物の層と、組み合わせられる熱可塑性ポリマー材料の二つの薄層とからなる三層フィルムを、例えば上に記載したサイズの顆粒の形態で三層の構成材料をバブルブロー装置に供給することによって共押出しにより簡便に製造することができる。
【0009】
このようなパッケージの開けやすさは、PSAの性質、より特定的にはパッケージを開ける間に(以下、一回目の開封と呼ぶ)、上述の多層複合フィルムにおいてマザー接着剤層の切り裂き及び/又はそれに隣接する二層の一つからのその分離を達成するために加えられなければならない力と密接に関係している。
パッケージの再封能力と得られる再封性の品質(以下、一回目の再封と呼ぶ)は、その内容物の保存をよって保証できる実質的に密封性のパッケージをもう一回得るためにまた重要である。一回目の再封性の品質はまたPSAの性質に密接に関係している。これは、パッケージの周部に加えられる手の圧力に続いて、二つのドーター接着剤層の再配置によって形成された接着剤層の切り裂き及び/又は剥離をもう一度達成するために、再び開く(以下、二回目の開封と呼ぶ)間に加えられなければならない力によって評価される。
【0010】
特許出願EP1053952は、複合化可能な層、接着剤層、及び引き剥がしシール層を含む容器を備えた再封可能なパッケージを教示している。この接着剤は、非常に一般的な形で記載されている感圧接着剤である。
出願US2013/0029553は、特定のアモルファスポリエチレンテレフタレートからなるヒートシール可能な層、PSA層、及びエチレンとメチルアクリレートの共重合体からなる少なくとも一つのつなぎ層を含む再封可能なパッケージのための多層フィルムを記載している。
出願WO12/045951は、スチレンブロック共重合体に基づく接着剤組成物の層によって互いに接合された熱可塑性材料の二つの薄層を含む多層フィルムを開示しており、前記層は7μmと300μmの間の厚さを有する。再封可能なパッケージの製造に適したこの多層フィルムは、一回目の開封の力を弱めることにより、後者を開けるのを容易にし、同時に、その後の再封 (又は一回目の再封) の品質を実質的に同じレベルに維持する。
【0011】
出願EP2946920は、熱可塑性材料の二つの薄層D及びEと、それらを一緒に接合するホットメルト感圧接着剤組成物の層Aに加えて、一方で層Aと、他方で層D及びEそれぞれとの間に挿入され、結果として得られる多層フィルムにD/B/A/C/E構造を与える、二つのつなぎ層B及びCを含む多層フィルムを記載している。前記層B及びCは、無水マレイン酸などの不飽和酸の環状無水物で変性されたポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)、特に無水マレイン酸でグラフトされたPEに基づく組成物からなる。
このような多層フィルムは、一回目の開封の容易性を維持しながら、対応するパッケージの再封性能を有利に改善することを可能にする。而して、再封性能、特に一回目の再封の品質の向上は、内容物の一部を消費するために再封可能なパッケージの一回目の開封を行った消費者に、腐敗しやすい食品の残りの部分のより効率的な保存をもたらす。
【発明の開示】
【0012】
本発明の一目的は、再封可能なパッケージの製造に適した多層システムをもたらす新しいつなぎ層を提供することであり、これにより、(パッケージの一回目の開封の容易性を維持しながら)消費者が傷みやすい食品の残りの部分をより効果的に保存できるようにするため、前記パッケージの再封(又は一回目の再封)の品質を改善することが可能になる。
【0013】
本発明の別の目的は、一回目の開封の力を許容可能なレベルに維持しながら、二回目の開封の力を増大させることである。
本発明の別の目的は、消費者がパッケージを開けて再封する温度に相当する周囲温度で上記の目的を達成することを可能にする多層フィルムを提供することである。
本発明の別の目的は、再封可能なパッケージを製造する目的で、特にバブルブロー共押出しにより、顆粒の形態に調整された原材料からの共押出しにより製造可能な多層フィルムを提供することである。
【0014】
これらの目的は、以下に記載される本発明に係る多層フィルムによって全体的又は部分的に達成できることが現在見いだされている。
【0015】
従って、本発明の主題は、先ず第一に、7から50μmの範囲の厚さを有し、ホットメルト感圧接着剤組成物(a)からなる連続層Aによって一緒に接合された熱可塑性材料の二つの薄層D及びEを含む多層フィルムであって、前記ホットメルト感圧接着剤組成物(a)が、前記組成物の全重量に基づいて、
- 40重量%から70重量%の、少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体の組成物(a1)であって、その全重量に基づいて、
- 30重量%から90重量%の、SI、SBI、SIB、SB、SEB及びSEPを含む群から選択される少なくとも一のジブロック共重合体、及び
- 10重量%から70重量%の、SIS、SIBS、SBS、SEBS及びSEPSを含む群から選択される、少なくとも一のトリブロック共重合体
からなり、該組成物(a1)のスチレン単位の全含有量が(a1)の全重量に基づいて10重量%から40重量%の範囲である前記組成物(a1);及び
- 30重量%から60重量%の一又は複数種の粘着付与樹脂(a2)
を含み、前記多層フィルムは、接着剤層Aが、
- つなぎ層Bによって層Dに連結され、かつ
- つなぎ層Cによって層Eに連結され;
二つの層B及びCのそれぞれは、それぞれが
- 4又は5個の炭素原子を含む環か6又は8個の炭素原子を含む直鎖状の何れかである不飽和カルボン酸無水物で変性されていてもよい、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)から選択されるポリオレフィン(P);及び
- エチレンとプロピレンの共重合体(以下、EL1)及び少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体(以下、EL2)から選択される少なくとも一のエラストマー化合物(EL)
を含む組成物(b)及び(c)からなる、多層フィルムである。
【0016】
上に示したパーセントに加えて、組成物の成分の量を示すために本明細書で一般に使用される全てのパーセントは、別段の指示がない限り、前記組成物の全重量に基づく重量で表されるパーセントに対応する。
本発明に係る多層フィルムに含まれる層A、B、C、D及びEの特徴を、いま以下により詳細に説明する。
【0017】
[接着剤層Aの構成組成物(a)の説明]
[少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体の組成物(a1)]
接着剤層A自体の構成HMPSA組成物(a)に含まれる、少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体の組成物(a1)は、その全重量に基づいて、
- 30重量%から90重量%の、SI、SBI、SIB、SB、SEB及びSEPを含む群から選択される少なくとも一のジブロック共重合体、及び
- 10重量%から70重量%の、SIS、SIBS、SBS、SEBS及びSEPSを含む群から選択される、少なくとも一のトリブロック共重合体
からなる。
使用されるスチレンブロック共重合体は、一般に50kDaと500kDaの間の重量平均分子量Mwを有する。
【0018】
これらのスチレンブロック共重合体は、少なくとも一のポリスチレンブロックを含む様々な重合した単量体のブロックからなり、ラジカル重合法によって調製される。
特に明記しない限り、本明細書において与えられている重量平均モル質量Mwは、ダルトン(Da)で表され、ゲル浸透クロマトグラフィーによって定量され、カラムはポリスチレン標準で校正される。
【0019】
トリブロック共重合体は、二つのポリスチレンブロックと1つのエラストマーブロックを含む。それらは様々な構造を持ちうる:線状、星型(放射状とも呼ばれる)、分岐、又は櫛型。ジブロック共重合体は、1つのポリスチレンブロックと1つのエラストマーブロックを含む。
【0020】
トリブロック共重合体は、一般式:
ABA (I)
[上式中、
- Aは、スチレン(又はポリスチレン)非エラストマーブロックを表し、かつ
- Bは、
- ポリイソプレン(この場合、ブロック共重合体は、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンの構造を有し、SISとの名称を有する);
- ポリイソプレンにポリブタジエンブロックが続く(この場合、ブロック共重合体は、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリブタジエン-ポリスチレンの構造を有し、SIBSとの名称を有する);
- ポリブタジエン(この場合、ブロック共重合体は、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンの構造を有し、SBSとの名称を有する);
- 完全に又は部分的に水素化されたポリブタジエン(この場合、ブロック共重合体は、ポリスチレン-ポリ(エチレンブチレン)-ポリスチレンの構造を有し、SEBSとの名称を有する);
- 完全に又は部分的に水素化されたポリイソプレン(この場合、ブロック共重合体は、ポリスチレン-ポリ(エチレンプロピレン)-ポリスチレンの構造を有し、SEPSとの名称を有する)
でありうるエラストマーブロックを表す]を有する。
【0021】
ジブロック共重合体は、一般式:
A-B (II)
(上式中、A及びBは上に記載した通りである)を有する。
【0022】
組成物(a1)が幾つかのトリブロックスチレン共重合体を含み、後者がSIS、SBS、SEPS、SIBS及びSEBSを含む群から選択される場合、前記トリブロックはこれらの5種の共重合体ファミリーの一又は幾つかに属しうることが明確に理解される。ジブロック共重合体についても、必要な変更を加えて、同じことが当てはまる。
同じエラストマーブロックを有するトリブロック共重合体及びジブロック共重合体を含む組成物(a1)を使用することが好ましいが、これは特にそのようなブレンドが市販されているという事実のためである。
【0023】
特に好ましい一実施変形態様によれば、組成物(a1)中のジブロック共重合体の含有量は、40%から90%、好ましくは50%から90%、更により好ましくは50%から60%の範囲でありうる。
本発明に係る多層フィルムに含まれる層Aの構成組成物(a)の特に有利な一実施態様によれば、組成物(a1)は、SISトリブロック共重合体及びSIジブロック共重合体からなる。この場合、組成物(a1)中のスチレン単位の合計含有量は、10%から20%の範囲である。
【0024】
組成物(a1)に含まれるトリブロック共重合体は、好ましくは線状構造を有する。
組成物(a)において使用できる、特にSI及びSISタイプの、エラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体は、しばしばトリブロック/ジブロックブレンドの形で市販されている。
KratonのKraton(登録商標)D1113BT及びZeon ChemicalsのQuintac(登録商標)3520は、SIS及びSIからなる組成物(a1)の例である。
Kraton(登録商標)D1113BTは、スチレン単位の全含有量が16%であり、45%のMw約250kDaの線状SISトリブロック共重合体と、55%のMw約100kDaのSIジブロック共重合体からなる組成物である。Quintac(登録商標)3520は、それぞれ22%及び78%の線状SISトリブロック(Mw約300kDa)及びSIジブロック(Mw約130kDa)からなり、そのスチレン単位の全含有量が15%である組成物である。
【0025】
[粘着付与樹脂(a2)]
層Aの構成HMPSA組成物(a)は、一又は複数種の粘着付与樹脂(a2)をまた含む。
使用できる粘着付与樹脂(a2)は、一般に300Daと5000Daの間の重量平均分子量Mwを有し、特に以下から選択される:
-(i)天然由来のロジン又は変性ロジン、例えば、松やにから抽出されたロジン、木の根から抽出されたウッドロジン、及び水素化、脱水素化、二量化、重合又はモノアルコール又はグリセロールなどのポリオールでエステル化されたそれらの誘導体;
-(ii)石油留分から得られる約5、9又は10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の水素化、重合又は(芳香族炭化水素との)共重合によって得られる樹脂;
-(iii)フェノールの作用によって変性されてもよい、フリーデル・クラフツ触媒の存在下での、例えばモノテルペン(又はピネン)などのテルペン炭化水素の重合から一般に得られるテルペン樹脂;
-(iv)天然テルペンに基づく共重合体、例えばスチレン/テルペン、α-メチルスチレン/テルペン及びビニルトルエン/テルペン。
【0026】
好ましい一変形態様によれば、本発明に係る組成物に使用できる粘着付与樹脂の軟化温度(又は軟化点)は、5から140℃の範囲でありうる。軟化温度は、標準化された試験ASTM E28に従って定量され、その原理は次の通りである。直径約2cmの真鍮のリングに、試験される樹脂を溶融状態で充填する。周囲温度まで冷却した後、リングと固体樹脂を、その温度が毎分5℃ずつ変化しうる、サーモスタット付きのグリセロール浴に水平に配する。直径約9.5mmの鋼球を、固体樹脂のディスクの中心に置く。軟化温度は、浴の温度が毎分5℃の割合で上昇する段階で、樹脂のディスクが鋼球の重さで25.4mmの高さになる温度である。
【0027】
好ましい一変形態様によれば、カテゴリー(ii)又は(iii)に属する脂肪族樹脂が使用され、そのための市販の樹脂の例としては、次のものが挙げられる:
(ii)約5個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の重合によって得られる樹脂であり、94℃の軟化温度と約1800Daの重量平均モル質量Mwを有する、Exxon Chemicalsから入手可能なEscorez(登録商標)1310LC;約9又は10個の炭素原子を有する不飽和脂肪族炭化水素の混合物の重合と続く水素化によって得られる樹脂であり、100℃の軟化温度と約570DaのMwを有する、またExxon ChemicalsからのEscorez(登録商標)5400;
(iii)115℃の軟化温度と約2300DaのMwを有するテルペン樹脂である、Derives Resiniques et Terpeniques(又はDRT)から入手可能なDercolyte(登録商標)S115。
【0028】
好ましい一変形態様によれば、層Aの構成HMPSA組成物(a)は、本質的に、
- 40%から70%の、スチレンブロック共重合体の組成物(a1);及び
- 30%から60%の、5℃と140℃の間の軟化温度を有する少なくとも一種の粘着付与樹脂(a2)
からなる。
【0029】
別の好ましい変形態様によれば、層Aの構成HMPSA組成物(a)は、
- 50%から70%の、スチレンブロック共重合体の組成物(a1);及び
- 30%から50%の、5℃と140℃の間の軟化温度を有する少なくとも一種の粘着付与樹脂(a2)
を含むか、又は本質的にこれらからなる。
【0030】
更に別の好ましい変形態様によれば、層Aの構成HMPSA組成物(a)は、組成物(a1)及び粘着付与樹脂(a2)に加えて、0.1%から2%の一又は複数の安定剤(又は抗酸化剤)をまた含みうる。これらの化合物は、熱、光、又は粘着付与樹脂などの所定の出発物質上の残留触媒の作用によって形成されやすい酸素との反応から生じる分解から組成物を保護するために導入される。これらの化合物には、フリーラジカルを捕捉し、一般に置換フェノールである、CibaのIrganox(登録商標)1010などの一次酸化防止剤を含みうる。一次酸化防止剤は、単独で、又は例えばホスファイトなどの他の酸化防止剤、例えば、やはりCibaのIrgafos(登録商標)168、又はアミンなどのUV安定剤と組み合わせて使用することができる。
【0031】
組成物(a)はまた可塑剤を、しかし5%を超えない量で、含みうる。可塑剤として、芳香族化合物を含んでいてもよい(Nyflex 222Bなど)パラフィン系及びナフテン系油(ESSOのPrimol(登録商標)352など)を使用することができる。
最後に、組成物(a)は、無機又は有機フィラー、顔料又は染料を含みうる。
【0032】
層Aのホットメルト感圧接着剤組成物(a)のメルトフローインデックス(MFI)は、標準ISO1133の条件d)に従って、190℃において、全重量2.16kgについて測定される。MFIは、2.16kの全重量を有する負荷ピストンによって加えられる圧力の影響下で、固定直径のダイを10分間流通する(前には垂直シリンダーに入れられた)組成物の重量である。特に明記しない限り、本明細書に示されるMFI値は、これらの同じ条件下で測定された。
2から100g/10分の範囲のMFIを有する層Aのホットメルト感圧接着剤組成物が特により好ましい。
【0033】
[つなぎ層B及びCのそれぞれの構成組成物(b)及び(c)の説明]
つなぎ層B及びCはまた「中間層」という用語によっても示される。
これら二層はそれぞれ、同一又は異なりうる組成物(b)及び(c)からなり、それぞれが、
- 4又は5個の炭素原子を含む環か6又は8個の炭素原子を含む直鎖状の何れかである不飽和カルボン酸無水物で変性されていてもよい、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)から選択されるポリオレフィン(P);及び
- エチレンとプロピレンの共重合体(以下、EL1)及び少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体(以下、EL2)から選択される少なくとも一のエラストマー化合物(EL)
を含む。
【0034】
一実施態様によれば、組成物(b)及び(c)のそれぞれは、前記組成物の全重量に基づき、
- 50重量%から98重量%のポリオレフィン(P);及び
- 2重量%から50重量%のエラストマー化合物(EL)
を含み、一の好ましい変形態様によれば、本質的にそれらからなる。
【0035】
特により好ましい範囲は、
- 55重量%から97重量%のポリオレフィン(P);及び
- 3重量%から45重量%のエラストマー化合物(EL)
である。
【0036】
[ポリオレフィン(P)]
ポリオレフィン(P)は、4又は5個の炭素原子を含む環か6又は8個の炭素原子を含む直鎖状の何れかである不飽和カルボン酸無水物で変性されていてもよい、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)から選択される。
(PE)は、線状ポリエチレン、例えばHDPE(高密度ポリエチレン)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)又は超低密度ポリエチレン(ULDPE)、あるいは分岐状ポリエチレン、例えば低密度ポリエチレン(又はLDPE)を含みうるポリエチレンの単独重合体(又は共重合体)である。このようなポリエチレンは、チーグラー・ナッタ触媒の存在下での重合、メタロセン触媒による重合、及びラジカル重合を含む幾つかの方法によって調製することができる。
つなぎ層(B)及び(C)の組成物(b)及び(c)に含まれる(PE)又は(PP)は、4又は5個の炭素原子を含む環か6又は8個の炭素原子を含む直鎖状の何れかである不飽和カルボン酸無水物で場合によっては変性させることができる。
【0037】
4又は5個の炭素原子を含む環状不飽和カルボン酸無水物としては、次の化合物を挙げることができる:
- 式:
の無水マレイン酸
- 式:
の無水イタコン酸:
- 式:
の無水シトラコン酸。
【0038】
6又は8個の炭素原子を含む直鎖状不飽和カルボン酸無水物として、次の化合物を挙げることができる:
- 式:
の無水クロトン酸
- 式:
の無水アクリル酸。
無水マレイン酸が特に最も好ましい無水物である。
【0039】
ポリオレフィン(P)は、好ましくは(PE)であり、これは、上に記載したように場合によっては不飽和カルボン酸無水物で変性させることができる。
前記無水物で「変性されたポリエチレン」という用語は、エチレンと前記無水物の共重合体、又は前記無水物でグラフトされたエチレンの単独重合体又は共重合体の何れかを意味すると理解される。
【0040】
エチレンと無水物の共重合体は、例えば、
- エチレンから誘導された繰り返し単位、
- 無水物から誘導された繰り返し単位、及び場合によっては
- 3から20個の炭素原子を有しうるα-オレフィンから誘導された繰り返し単位
を含むランダム共重合体である。使用されるα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン及び1-オクタデセンでありうる。
エチレンと無水物の共重合体は、0.3重量%から20重量%の上に記載の無水物と、(対応するコモノマーが存在する場合)20重量%から30重量%のα-オレフィンを含みうる。エチレンから誘導された繰り返し単位は、共重合体の約20重量%、40重量%又は50重量%から約70重量%、80重量%、90重量%又は95重量%を占めうる。
【0041】
グラフト化エチレン単独重合体(又は共重合体)は、既に形成されたエチレン(共)重合体を、フリーラジカル生成触媒(有機過酸化物など)の有無にかかわらず、また溶媒の有無にかかわらず、加熱によってグラフト化される化合物と反応させることによって調製される。
しばしばラジカル反応によって加えられるグラフト化ラジカルの構成原子は、エチレン(共)重合体の主鎖に取り込まれない。グラフト化ラジカルは、ペンダント基として、(共)重合体の主鎖の所定の繰り返し単位に結合される。
【0042】
無水物がグラフトされるエチレンポリマーは、単独重合体又は共重合体の何れかである。このような共重合体は、例えば、エチレンから誘導された繰り返し単位に加えて、上に記載されたα-オレフィンから誘導された繰り返し単位を含むランダム共重合体である。
第一の変形実施態様によれば、組成物(b)及び(c)の少なくとも一つに含まれるポリオレフィン(P)は、(PE)、好ましくは(LDPE)である。
第二の変形実施態様によれば、組成物(b)及び(c)の少なくとも一つに含まれるポリオレフィン(P)は、無水マレイン酸でグラフトされた(PE)、好ましくは無水マレイン酸でグラフトされた(LLDPE)である。
【0043】
無水マレイン酸で変性された多くのポリエチレンが市販されている。
無水マレイン酸で変性されたLLDPEである、DuPontから販売されているBynel(登録商標)4206、又は両方とも無水マレイン酸グラフト化LLDPEである、Arkemaから販売されているOrevac(登録商標)18360及びDuPontから販売されているBynel(登録商標)41E865が挙げられる。
好ましい一変形例によれば、組成物(b)及び(c)に含まれる変性ポリエチレンは、グラフト化エチレン単独重合体又は共重合体である。
【0044】
[エラストマー化合物(EL)]
エラストマー化合物(EL)は、エチレンとプロピレンの共重合体(EL1)と、少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体(EL2)から選択される。
第一の実施態様によれば、エラストマー化合物(EL)は、エチレンとプロピレンの共重合体(EL1)である。
エチレンとプロピレンの共重合体(エチレンプロピレンゴムとしても知られている)は、自動車のエンジン、電気配線、及び建築の分野で使用される合成ゴムのクラスを形成する。それらは、チーグラー・ナッタ触媒の存在下、有機溶媒(ヘキサンなど)の溶液中でエチレンとプロピレンを重合させることによって調製される。エチレン重量含有量は、使用されるモノマーの全重量を基準にして、通常、40重量%から65重量%の範囲内である。エチレンとプロピレンの共重合体はまた広く市販されている。
【0045】
この第一の実施態様の一つの有利な変形態様によれば、つなぎ層B及びCの構成組成物(b)及び(c)の少なくとも一は、
- 50重量%から85重量%、好ましくは50重量%から70重量%の、無水マレイン酸でグラフトされた(PE);及び
- 15重量%から50重量%、好ましくは30重量%から50重量%、更により好ましくは35重量%から45重量%の(EL1)
を含み、好ましくは本質的にこれらからなる。
無水マレイン酸でグラフトされた(LLDPE)が、この変形態様の場合における(PE)として最も特に好ましい。
このような混合物もまた市販されている。約55重量%-60重量%の無水マレイン酸グラフト化LLDPEと40重量%-45重量%のエチレンプロピレンゴムから本質的になる組成物である、三井化学から入手可能な製品AdmerTMAT1955Eを挙げることができる。
【0046】
第二の実施態様によれば、エラストマー化合物(EL)は、少なくとも一のエラストマーブロックを含むスチレンブロック共重合体(EL2)である。
前記スチレンブロック共重合体は、接着剤層Aの構成HMPSA組成物(a)について上に記載した通りであり、本発明の好ましい変形態様によれば、それ自体が組成物(a1)について上に記載され、(a1)と同一か又は異なりうる、ジブロック及びトリブロック組成物の形態で提供される。
この第二の実施態様の有利な一変形態様によれば、つなぎ層B及びCの構成組成物(b)及び(c)の少なくとも一は、
- 70重量%から98重量%、好ましくは80重量%から97重量%の(PE);及び
- 2重量%から30重量%、好ましくは3重量%から20重量%の(EL2)
を含み、好ましくは、本質的にこれらからなる。
(LDPE)が、この変形態様の場合の(PE)として特に最も好ましい。
【0047】
本発明の好ましい一変形態様によれば、スチレンブロック共重合体(EL2)はそれ自体が、一又は複数の粘着付与樹脂をまた含み、それ自体がHMPSA組成物(a)について上に記載した通りであり、かつ(a)と同一又は異なりうるHMPSA組成物に含まれる。
好ましくは、スチレンブロック共重合体(EL2)は、接着剤層Aの構成HMPSA組成物(a)と同一であるHMPSA組成物に含まれる。
等しく好ましい変形態様によれば、層B及びCの組成物(b)及び(c)は同一である。
【0048】
[層D及びEの構成組成物の説明]
接着剤層Aは、つなぎ層B及びCによって、薄い複合化可能な層Dと薄いシール可能で引き裂き可能な層Eとの間の接合を確実にすることを可能にする。
複合化可能な層は、パッケージの作製のための他の層、例えば、容器を作製するための硬質層と複合化(又は積層)されうる。
シール可能で引き裂き可能な層は、容器が溶着によってシールに接合される周部において、引き裂き可能な弱くなったゾーンによって、パッケージの一回目の開封を確実にする。開けた後、弱くなったゾーンは、
- 密閉パッケージに接触していたシール帯部及び/又は容器帯部上のマザー接着剤層、及び/又は
- マザー接着剤層の引き裂きから生じ、シール帯部及び/又は容器帯部上に位置する二つのドーター接着剤層
を露出させる。
【0049】
二層D及びEを構成するために使用できる材料は、一般に熱可塑性ポリマー(二層に対して同じか異なる)、例えば、
- ポリエチレン(PE)、
- ポリプロピレン(PP)、
- エチレンとプロピレンに基づく共重合体、
- ポリアミド(PA)、
- ポリエチレンテレフタレート(PET)等
- エチレンに基づく共重合体、例えば無水マレイン酸グラフト共重合体、エチレンと酢酸ビニルの共重合体(EVA)、エチレンとビニルアルコールの共重合体(EVOH)、又はエチレンとアルキルアクリレートの共重合体、例えばメチルアクリレート(EMA)又はブチルアクリレート(EBA)、
- ポリスチレン(PS)、
- ポリ塩化ビニル(PVC)、
- ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、
- 乳酸ポリマー(PLA)、又は
- ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)
である。
二層D及びEを構成するために、好ましくは、ポリオレフィン系材料、最も具体的にはPE、更により優先的には低密度PE(低密度ポリエチレン又はLDPEとも呼ばれる)が使用される。
【0050】
本発明に係る多層フィルムに含まれる層Aの厚さは、7から50μm、好ましくは8から25μm、更により優先的には10から20μmの範囲でありうる。
前記多層フィルムに含まれるつなぎ層B及びCの厚さは、その部分について、一般に1μmと10μmの間、好ましくは2μmと8μmの間である。
二層D及びEと、本発明に係る多層フィルムにおいて場合によっては使用される他の層の厚さは、5から150μmの広い範囲内で変化しうる。
【0051】
一実施変形態様によれば、本発明に係る多層フィルムは、順序D/B/A/C/Eに従う、接着剤層A、二つの中間層B及びC、及び二つの外層D及びEからなる五層を含むフィルムであり、ここで「/」は、該当する層の面が接触していることを意味する。
別の実施変形態様によると、本発明に係る多層フィルムは、五層A、B、C、D及びEに加えて、パッケージの製造に必要とされる他の薄層、例えば、
- 容器の機械的強度に必要とされる硬質層、又は
- 印刷可能な層、又は
- 酸素、水蒸気、又は一酸化炭素に対してバリア効果のある層
を含む。
前記層を形成するために使用されうる材料は、同一でも異なっていてもよく、一般に、層D及びEについて上述したポリマーから選択できる熱可塑性ポリマーを含む。
【0052】
より好ましい実施変形態様によれば、本発明に係る多層フィルムは、順序D/B’/BO/B/A/C/Eに従って、
- 接着剤層A、
- そのうち少なくとも層Bが、50重量%から85重量%の、上に記載の無水物でグラフトされた(PE)と、15重量%から50重量%のエチレンとプロピレンの共重合体(EL1)からなる、二つの中間層B及びC;
- 酸素に対してバリア効果のあるEVOHからなる層BO;
- その組成が組成物(b)に対して記載した通りであり、好ましくは層Bの組成と同じである第三の中間層B’;
- 薄い複合化可能な層D;及び
- 薄いシール可能で引き裂き可能な層E
からなる7層フィルムであり、ここで、「/」という記号は、該当する層の面が接触していることを意味する。
一方では層BOと、他方では層B及びB’との間の接触により、前記多層フィルムは改善された密着性を示し、同時に肉ベースの製品など、大気中の酸素との酸化により反応しうる食品を長期間保存することを可能にする再封可能なパッケージの製造に特に適している。
【0053】
本発明はまたホットメルト感圧接着剤組成物(a)、組成物(b)及び(c)並びに層D及びEの構成材料の共押出しを含むことを特徴とする、上に記載した多層フィルムを製造するための方法に関する。
好ましくは、層A、B、C、D及びEの構成組成物及び材料が、1mmと10mmの間、好ましくは2mmと5mmの間のサイズの顆粒の形態で共押出装置に供給される。従って、本発明に係る多層フィルムに使用される感圧接着剤組成物(a)は、前記フィルムに必要とされる特性と前記組成物(a)を上述の顆粒の形態で提供する可能性の双方を、特に有利な形で、達成することを可能にする。多層フィルムに場合によっては含まれる他の層は、対応する構成材料を同じサイズの顆粒の形で共押出装置に導入するか、又は共押出しから直接生じるフィルムを複合化する方法によって、例えばポリウレタン系接着剤を使用して、得ることができる。
【0054】
接着剤組成物(a)は、押出された製品をダイから出るときに切断するためのツールを備えた二軸スクリュー押出機によって、150℃と200℃の間、好ましくは約160℃で、その成分を単純に熱混合することにより、この顆粒形態で、調製することができる。
【0055】
バブルブロー共押出法(「ブロー成形共押出」としても知られる)がより特定的に好ましい。当業者に知られている形で、この方法は、
- 層A、B、C、D及びEの構成組成物及び材料の別個の押出機での溶融、ついで
- 最終構造に望まれる順序に対応する順序で、幾つかの層を含む筒状のバブルを形成するような、環状及び同心ダイのセットに対応する流れの流通、
- バブルの半径方向の膨張(環状ダイに対する)及び伸長(軸方向)、ついで
- バブルの冷却
を含む。
半径方向の膨張の程度や引き抜き速度などのプロセスパラメータのような、ダイの幾何学的特性は、多層フィルムの様々な構成層に所望される厚さを達成するように設定される。バブルブロー共押出法のより完全な説明については、特に特許出願US2013/0029553を参照のこと。
【0056】
本発明は、再封可能なパッケージを製造するための、上述の多層フィルムの使用にも関する。
再封可能なトレイを製造するための使用は、これらのトレイのシーリングフィルムを製造するための特に好ましい一実施態様によれば、特に有利である。
【0057】
次の実施例は、純粋に本発明を説明するために与えられるものであり、本発明の範囲を限定するために決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0058】
実施例A(参照):層Aの組成物(a)
重量/重量%に基づいて、59.5%のKraton(登録商標)D1113BT、25%のEscorez(登録商標)1310LC、15%のDercolyte(登録商標)S115及び0.5%のIrganox(登録商標)1010からなる組成物を、二軸押出機によって160℃で材料を単に混合することにより、約4mmの直径を持つ顆粒の形態で調製する。
57g/10分のMFIが測定される。
【0059】
実施例B(参照):実施例Aの組成物の層Aからなる三層フィルムD/A/E:
この三層フィルムは、連続的に操作されるバブルブロー共押出パイロット規模の装置によって製造され、この装置では、三基の押出機に次のように供給される:
- 一基には実施例Aの組成物(a)が供給され、かつ
- 他の二基にはLDPEが供給され、
三種の組成物は、約4mmのサイズを有する顆粒の形態である。
【0060】
プロセスパラメータは、
- 層Aとして、実施例Aの組成物からなる厚さ15μmの層、
- 複合化可能な薄層Dとして、LDPEからなる厚さ25μmの層;
- 密封可能かつ引き裂き可能な薄層Eとして、LDPEからなる厚さ10μmの層
からなる三層フィルムを生成するように調整される。
通常設定されるパラメータとしては、3に等しいバブルの半径方向の膨張度、7m/分の引き抜き速度及び11kg/時間の総スループットが挙げられる。
このようにして得られた三層フィルムは、50μmの総厚み、50mの長さを有し、250mmの機械幅のリールの形態にパッケージされる。
【0061】
[23℃、Tでの剥離による一回目の開封力の測定]
このようにして得られた三層フィルムからA4判(21×29.7cm)の長方形シート状のサンプルを切り出す。
このサンプルの複合化可能な層Dの外面を、
- 第一段階で、(プラズマによる)コロナ表面処理に供し、次に
- 第二段階で、Mayerバー型のコーティング装置を使用して、ポリウレタン系溶剤ベースの接着剤によって、23μmの厚さを有するPETフィルム上に複合化(つまり、積層)する。
次に、長方形のシートを24時間加圧下に置く。
次に、前記長方形のシートを、長方形のその中央に位置し、短辺に平行な線に沿って折り畳み、密封可能で引き裂き可能な層Eがそれ自体と接触するようにする。
次に、130℃において1秒間6バールの圧力下で二つの加熱クランプジョーを使用して部分的なシーリングを行い、折り目に直交して配置された長方形(長さ8cm、幅1cm)のシール領域を得る。各シールゾーンを切断して、長さ8cmのシールゾーンが、長さ約2cmでフリーでシールされていない2本の帯状部によって(折り目の反対側にあるその端部まで)延びる引張試験片を得る。
【0062】
これら二つのフリーな帯状部を、垂直軸上に位置する引張試験装置の固定部と可動部にそれぞれ連結された二つの保持装置(ジョー)に取り付ける。この引張試験装置は動力計である。
駆動機構が可動部に300mm/分の均一速度を与え、二層のシール層が剥がされる一方、端部が180°の角度を形成して垂直軸に沿って徐々に移動する。前記可動部に連結された力センサーが、このようにして保持された試験片が耐える力を測定する。測定は、23℃の温度に維持された温度と湿度が調節された室内で行われる。
得られた力を表1に示す。
【0063】
[23℃、Tでの剥離による二回目の開封力の測定]
先の試験片の二つの部品を、剥離後、互いに対向して再配置し、手で接触させる。次に、2kgの重量のローラーによって圧力をかけ、試験片の長さに平行な方向に前後に移動させる。
このようにして、先の剥離試験のために準備したものと形状が同一である引張試験片を得て、これをついで繰り返す。
得られた力を表1に示す。
【0064】
実施例1:五層D/B/A/C/Eを含み、層Aが実施例Aの組成物からなり、層B及びCがAdmerTMAT1955Eからなるフィルム:
三層フィルムに、同じ厚さ5μmと同じ組成物、すなわち表1に示されるような製品AdmerTMAT1955Eを有する二層B及びCを追加するように共押出プロセスを変更することにより、実施例Bを繰り返す。
全厚が60μmに等しい五層フィルムが得られる。
一回目の開封力及び二回目の開封力を表1に示す。
【0065】
実施例2:五層D/B/A/C/Eを含み、層Aが実施例Aの組成物からなり、層B及びCが95%のLDPEと5%の実施例Aの組成物からなるフィルム:
三層フィルムに、同じ厚さ5μmと同じ組成物を有する二層B及びCを追加するように共押出プロセスを変更することにより、実施例1を繰り返す。前記組成物は、(重量で)95%のLDPEと5%の実施例Aの組成物からなる。二層B及びCの組成物が、対応する押出機に適切な量のLDPE顆粒と実施例Aの組成物の顆粒を供給することにより得られる。
一回目の開封力及び二回目の開封力を表1に示す。
【0066】
実施例3-5:実施例Aの組成物からなる層AとLDPE及び実施例Aの組成物からなる層B及びCとを有する五層D/B/A/C/Eを含むフィルム:
表1に示したものを二つのつなぎ層B及びCの構成材料として使用して、実施例2を繰り返す。
一回目の開封力及び二回目の開封力をまた表1に示す。
【0067】
実施例1-5について得られた一回目の開封力の結果は、実施例Bで得られたものと同じオーダーの大きさであり、完全に許容できる再封可能なパッケージの開封品質に対応する。
二回目の開封力について得られた結果は、実施例Bと比較して明らかな増加を示しており、よって、その一回目の開封後の再封可能なパッケージの再封の品質が顕著に改善していることを示している。
【0068】