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特許7410947使い捨て衛生製品を製造するための改良されたホットメルト接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】使い捨て衛生製品を製造するための改良されたホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20231227BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20231227BHJP
   C09J 123/18 20060101ALI20231227BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20231227BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20231227BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231227BHJP
   C09J 193/04 20060101ALI20231227BHJP
   C09J 191/06 20060101ALI20231227BHJP
   C09J 193/00 20060101ALI20231227BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J123/08
C09J123/18
C09J133/00
C09J11/08
C09J11/06
C09J193/04
C09J191/06
C09J193/00
A61F13/15 355A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021526684
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2019080238
(87)【国際公開番号】W WO2020099187
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】18306496.3
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501305888
【氏名又は名称】ボスティク エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユサン, ナジ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500357(JP,A)
【文献】特開昭62-243671(JP,A)
【文献】特開2011-236422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- a)5重量%から50重量%の、スチレンブロック共重合体(SBC)、並びにエチレンとアルファオレフィンモノマーの共重合体、エチレンと非アルファオレフィンモノマーの共重合体、ブタ-1-エンの単独重合体及び共重合体、エチレンとアクリレートの共重合体、エチレンとメタクリレートの共重合体、及びエチレンとメチルアクリレートの共重合体から選択されるポリオレフィンから選択される少なくとも一種の熱可塑性ポリマー(A);
- b)15重量%から60重量%の少なくとも一種の粘着付与樹脂(B);
- c)5重量%から30重量%の、ナフテン系油、パラフィン系油、ポリイソブチレン、安息香酸エステル、ワックス及びアクリル酸又はカルボン酸変性ワックスから選択される少なくとも一種の可塑剤(C);及び
- d)0.1重量%から10重量%の、8から24個の炭素原子を含むヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)
を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
熱可塑性ポリマー(A)が、線状トリブロックスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)であることを特徴とする、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
熱可塑性ポリマー(A)が、エチレンとα-オレフィンモノマーの共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
粘着付与樹脂(B)が
(a)天然及び変性ロジン;
(b)天然及び変性ロジンのグリセロール及びペンタエリスリトールエステル;
(c)ポリテルペン樹脂;
(d)フェノール変性テルペン樹脂;
(e)約60℃から140℃の環球式軟化点を有する脂肪族石油炭化水素樹脂(C5)と、対応する水素化誘導体;
(f)約60℃から140℃の環球式軟化点を有する芳香族石油炭化水素樹脂(C9)と、対応する水素化誘導体;
(g)約60℃から140℃の環球式軟化点を有する脂肪族及び/又は芳香族石油樹脂(C5/C9)と、対応する水素化誘導体
から選択されることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
粘着付与樹脂(B)の軟化点が、90℃から125℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項6】
ヒドロキシル化脂肪酸がリシノール酸であることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
ヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)が、120℃未満の融点を有する金属塩であることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項8】
ヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)がリシノール酸亜鉛又はカルシウムであることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項9】
- a)15重量%から45重量%の熱可塑性ポリマー(A);
- b)20重量%から60重量%の粘着付与樹脂(B);
- c)15重量%から25重量%の可塑剤(C);及び
- d)3重量%から10重量%のヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)
を含むことを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物の製造方法であって、少なくとも粘着付与樹脂(B)と熱可塑性ポリマー(A)を溶融するのに十分な時間の間、ホットメルト接着剤組成物の成分を混合し、かつ140℃から170℃の範囲の温度で加熱する工程を少なくとも含む、方法。
【請求項11】
- 請求項1から9の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物を、130℃から180℃の範囲の温度で、少なくとも前記ホットメルト接着剤組成物を基材上に塗布するのに十分な液体にするのに十分な時間、加熱する工程(i)と、ついで
- 第一の基材上に前記組成物をコーティングする工程(ii)、
- 第一の基材のコーティングされた表面を第二の基材の表面と接触させて、二つの基材を接合する接着剤接合を形成する工程(iii)
を含むアセンブリ品の製造方法。
【請求項12】
各基材が、不織布、ティッシュ、吸収性綿毛、超吸収性ポリマー(SAP)、複合材料、エラストマー又は非エラストマープラスチックから互いに独立して選択されることを特徴とする、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1から9の何れか一項に記載の少なくとも一のホットメルト接着剤組成物によって接合された少なくとも二の基材を含むアセンブリ品。
【請求項14】
使い捨て不織吸収性品であることを特徴とする、請求項13に記載のアセンブリ品。
【請求項15】
請求項1から9の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物の固体堆積物によって汚れたラミネート加工装置の金属部品を洗浄するための方法であって、室温において操作者が前記堆積物を手作業で除去することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、使い捨て衛生製品の製造方法に適しており、前記方法中にホットメルト接着剤組成物によって汚れた製造設備の金属部品の容易な洗浄性を有利にもたらすホットメルト接着剤組成物である。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤(HM接着剤)は、周囲温度で固体であり、水も溶媒も含まない物質である。それらは、一般に100℃と250℃の間、最も多くは130℃と180℃の間の温度に加熱した後、溶融状態で塗布され、冷却中に固化し、アセンブルされる二つの基材の連結を可能にするシール(又は接着剤接合)を形成する。ホットメルト接着剤は、一般に、熱可塑性ポリマーと場合によっては粘着付与樹脂及び可塑剤を含む組成物の形態で提供される。
一部のHMは、対応するコーティングされた基材に比較的硬質で非粘着性の特性を付与するように配合される。他のHMでは、比較的柔らかい特性と高粘着性を備えたコーティングされた基材が得られる:これらのHMは、PSAラベルの製造に広く使用されている感圧接着剤(又はPSA)である。このような接着剤は、ホットメルト感圧接着剤(又はHMPSA)の名で指定される。
【0003】
米国特許第4680333号は、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、低軟化点脂肪族樹脂、及びステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸の金属塩から調製された除去可能なHMPSAを記載している。このHMPSAはラベル付けに有用で、優れた粘着性と接着性を提供するが、エージングの際の接着の増大がないため、所望されれば、接合された基材を簡単かつ明確に分離できる。前記HMPSAは、基材の永久的アセンブリはもたらさない。
【0004】
除去可能なHMPSA以外のホットメルト接着剤組成物は、例えば、紙や板紙をベースにした硬質パッケージの製造、出版業界での装丁の作成、電子機器、自動車又は繊維の分野における様々なアセンブリの製造、又は使い捨て衛生用品の製造など、幅広い用途で工業的に使用されている。
【0005】
後者の分野は、特に使い捨ておむつ及び女性用保護製品に関する。ホットメルト接着剤は、薄いシート及び異なる材料の多孔質基材の永久的アセンブリをラミネート加工により調製するためにそこで使用される。このような永久的アセンブリの例として、おむつの場合、ポリエチレン(PE)シートとポリプロピレン(PP)の不織布とのラミネートが挙げられ、後者は眼や手触りに心地のよい絹のような外観を与える。
このような永久的アセンブリ(又はラミネート)に必要とされる結合レベルは、通常、「剥離」及び/又は「剪断」試験によって定量される。
【0006】
このようなシート(又は基材)のラミネート加工は、
- ホットメルト接着剤組成物をバット(溶融ポット又はタンクと呼ばれる)内で(100℃と250℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の温度まで)それが溶融するまで、加熱すること、ついで
- アセンブルされる二つの基材の一方をコーティングし、ノズルによって、その厚さが制御され、一般に1μmと500μmの間である前記組成物の層を溶融状態で堆積させること、及び最後に
- このようにコーティングされた基材を、例えばニップロールによってもたらされるような圧力下で、ラミネート又はアセンブルされる基材と接触させること
を含む方法によって工業的に実施される。
【0007】
このようなラミネート加工プロセスの実施に使用される装置は、一般に、しばしば高速ライン速度で連続的に操作され、例えばラミネートされ又はアセンブルされる構成要素(シート、フィルム、又はその他の基材)と、しばしば「複合体」又は「ラミネート」という用語で示される最終製品の両方が、その非常に大きい寸法のため、大きな幅と直径のリールの形で巻き取ることによってパッケージ化される、機械(又は塗工機)である。
溶融ホットメルト接着剤組成物でコーティングする段階は、数バールから100バールを超えるほどの高圧で一又は複数のノズルにそれを通過させて、コーティングされる基材との良好な接触(又は濡れ)を達成することを含み、この濡れが二つの基材の最終的な永久的アセンブリへの必要なレベルの結合力の付与に寄与する。
【0008】
固有のホットメルト接着剤の特性(粘度又はレオロジーなど)と塗工機パラメータ(温度又はノズル空気圧など)に応じて、スプレーノズルの場合、ホットメルト接着剤が所望のコーティング領域の外側に噴霧される場合があり、ホットメルト接着剤組成物と装置の一部の金属部品との間に接着剤の飛散による望ましくない接触が生じ、この接触が、冷却と溶融接着剤の固化後に形成される粘着堆積物により、これらの金属部品の汚れ/汚染をもたらす。
そのような汚れを生じる別の問題は、スロットダイ(又はスロットノズル)が塗工機で使用される場合に時々観察される望ましくない垂れ現象に起因することがよくある。この垂れ現象は、接着剤がスロットノズルの外側に制御不能に漏れることによって発生する。
【0009】
そのような汚れのまた別の理由が、使い捨て衛生用品の製造業者によって頻繁に報告されている。これは、ニップロールレベルでの二つのラミネートされた基材間又は多孔性基材を通した接着剤のブリードスルーに対応する、ブリードスルー現象に関連している。
そのような汚れの結果、特に塗工機の金属表面に付着する固形接着剤組成物の粘着堆積物を除去するため、操業者はメンテナンスと清浄のために生産ラインを頻繁に中断しなければならない。これらの頻繁な中断と清浄作業により、使い捨て衛生製品(おむつなど)製造の生産性が低下する。
【発明の開示】
【0010】
従って、本発明の一目的は、これらの欠点を回避するホットメルト接着剤組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、ラミネート加工装置の一部の金属表面を汚した後、製造作業者が室温で容易に洗浄/除去/拭き取ることができる、ラミネート加工プロセスに適したホットメルト接着剤組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、二つの基材のアセンブル(又はラミネート加工)のために、一般には周囲温度に近い温度範囲にある複合製品の使用温度において許容可能な及び/又は改善されたレベルの結合を達成することができるホットメルト接着剤組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、様々な温度条件において経時的な複合体製品の貯蔵後にそのような結合レベルを維持することを可能にするホットメルト接着剤組成物を提供することである。
【0011】
加えて、ラミネート加工プロセスで用いられるホットメルト接着剤組成物は、それをこの用途に適したものにする所定の物理化学的特性を示すこともまた必要である。
而して、その様々な成分の加熱混合によって調製される前記組成物は、特に溶融ポットからコーティングノズルまでのラミネート加工プロセスの様々な段階に対応する温度において均質(又は安定)でなければならない。この熱安定性は、使い捨て衛生用品の製造業者が組成物を溶融状態で溶融ポットに最大3日間保存することが強いられる場合があるため、長期にわたってまた維持されなければならない。
従って、本発明の別の目的は、溶融タンクの高温まで、例えば130℃より高く、好ましくは約180℃に等しい温度まで安定であり、その均質性が、この温度で数日間、例えば最大3日間保管した後も維持される、ホットメルト接着剤組成物を提供することである。そのような均質性は、好ましくは、149℃で測定される安定した粘度によって評価される。
上記の目的は、本発明の主題であるホットメルト接着剤組成物によって全部又は一部が達成できることが今見出された。
【0012】
本発明の第一の目的によれば、本出願は、
- a)5重量%から50重量%の、スチレンブロック共重合体(SBC)及びポリオレフィンから選択される少なくとも一種の熱可塑性ポリマー(A);
- b)15重量%から60重量%の少なくとも一種の粘着付与樹脂(B);
- c)5重量%から30重量%の、ナフテン系油、パラフィン系油、ポリイソブチレン、安息香酸エステル、ワックス及びアクリル酸又はカルボン酸変性ワックスから選択される少なくとも一種の可塑剤(C);及び
- d)0.1重量%から10重量%の、8から24個の炭素原子を含むヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)
を含む、ホットメルト接着剤組成物に関する。
【0013】
より好ましくは、本出願は、
- a)5重量%から50重量%の熱可塑性ポリマー(A);
- b)15重量%から60重量%の粘着付与樹脂(B);
- c)5重量%から30重量%の可塑剤(C);及び
- d)0.1重量%から10重量%のヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)
から本質的になり、上記成分の全含有量が100重量%になることを特徴とするホットメルト接着剤組成物に関する。
ホットメルト接着剤組成物中の上述の成分(AからD)の含有量は、重量百分率で、ホットメルト接着剤組成物の全重量に相対して表されている。
【0014】
驚くべきことに、金属への接着力が著しく低下したため、ラミネート加工プロセス中及び溶融状態で、ラミネート加工装置の金属部品を汚し/汚染した本発明のホットメルト接着剤組成物を、固体状態まで冷却した後、製造作業者によって簡単に拭き取ることができることが見出された。これにより、メンテナンス作業が短縮される。
同時に、前記ホットメルト接着剤は、特に非金属基材、より具体的にはポリマー基材へのその強い接着力のおかげで、ラミネートに高レベルの結合力をもたらす。最後に、前記ホットメルトは均質であり、物理的かつ熱的に安定であり、特に粘度が塗工機溶融タンク内で、ラミネート加工プロセスの工業的実施中、特に3日間まで安定であり、これは前記プロセスの実施、柔軟性及び生産性の点で非常に有利である。
【0015】
[熱可塑性ポリマー(A)]
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、5重量%から50重量%の、スチレンブロック共重合体(SBC)及びポリオレフィンから選択される少なくとも一の熱可塑性ポリマー(A)を含む。
第一の実施態様では、熱可塑性ポリマー(A)はSBCである。
本発明において有用なスチレンブロック共重合体には、ポリスチレンブロックである少なくとも一の非エラストマーブロックAと、完全に又は部分的に水素化された又は非水素化のジエンポリマーブロックである少なくとも一のエラストマーブロックBを含む線状又は放射状ブロック共重合体が含まれる。
【0016】
特に、本発明に係るスチレンブロック共重合体は、次の共重合体とそれらの混合物から選択されうる:
- AB構造の線状ジブロック共重合体、
- ABA構造の線状トリブロック共重合体、
- (AB)Y構造の放射状ブロック共重合体
ここで、
- Aは非エラストマーポリスチレンブロックであり、
- Bは、ポリブタジエン又はポリイソプレンブロックなどのエラストマージエンブロックポリマーであり、
- Yは多価化合物であり、かつ
- nは少なくとも3の整数である。
ABA構造の線状トリブロック共重合体は、単独で、又はAB構造の線状ジブロック共重合体と混合して使用されうる。
エラストマーブロックBは、その熱的安定性を改善するために、部分的又は完全な水素化によって後処理することができる。
【0017】
好ましくは、本発明に有用なスチレンブロック共重合体は、次の線状トリブロック共重合体から選択される:
- スチレン-ブタジエンジブロック(SB)を含むか含まない、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、
- スチレン-イソプレンジブロック(SI)を含むか含まない、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、
- スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、
- スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)、
- スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)、
- 及びそれらの任意の混合物。
より好ましくは、スチレンブロック共重合体は、上に記載のABA構造の線状トリブロック共重合体であり、更により好ましくは、線状SIS又はSBSトリブロック共重合体である。
【0018】
スチレンブロック共重合体が、上に記載の、ABA構造の線状トリブロック共重合体とAB構造の線状ジブロック共重合体の混合物である場合、線状ジブロックの含有量は、好ましくは、トリブロック及びジブロック混合物の全重量に対して1から70重量%の範囲である。
上に記載のABA構造の線状トリブロック共重合体中の末端ブロックAの量は、ABA構造の線状トリブロック共重合体の全重量に対して、又はABA及びAB構造のトリブロック及びジブロック共重合体の混合物の場合、トリブロック及びジブロック混合物の全重量に対して、14から51重量%、好ましくは20から40重量%の範囲でありうる。
【0019】
有用な市販のスチレンブロック共重合体には、KRATON POLYMERSのKRATON D及びG(登録商標)シリーズ、VERSALIS(ENIグループ)のEUROPRENE Sol T(登録商標)シリーズ、DYNASOL ELASTOMERSのSOLPRENE(登録商標)シリーズ、及びTSRC社のTAIPOL(登録商標)及びVECTOR(登録商標)シリーズが含まれる。
【0020】
有用な特定のスチレンブロック共重合体の例として、次のものを挙げることができる:
- 混合物の全重量に対して29.5重量%のスチレン含有量、約122000g/モルの平均分子量、5キログラム(kg)の荷重下、200℃において8.5グラム(g)/10分(mn)のMFI(ISO1133に従って測定)、及び混合物の全重量に対して約17重量%のSBジブロック含有量を持つ、線状SBSトリブロック及びSBジブロック共重合体の混合物である、KRATON(登録商標)D1152ES、
- 混合物の全重量に対して15重量%のスチレン含有量、5kgの荷重下、200℃において9g/10mnのMFI(ISO1133に従って測定)、約220000g/モルの平均分子量、及び混合物の全重量に対して約19重量%のSIジブロック含有量を持つ、線状SISトリブロック及びSIジブロック共重合体の混合物である、KRATON(登録商標)D1161、
- トリブロック共重合体の全重量に対して40重量%のスチレン含有量、1%未満のSBジブロック含有量、5kgの荷重下、190℃において3-10g/10mnのMFI(ASTM D1238に従って測定)、 約102400g/モルの平均分子量を持つ、線状SBSトリブロック共重合体である、TSRC社のTAIPOL(登録商標)SBS4202、
- トリブロック共重合体の全重量に対して44重量%のスチレン含有量、1%未満のSIジブロック含有量、5kgの荷重下、200℃において40g/10mnのMFI(ASTM D1238に従って測定)、 約106000g/モルの平均分子量を持つ、線状SISトリブロック共重合体である、TSRC社のVECTOR(登録商標)4411。
【0021】
第二の実施態様では、熱可塑性ポリマー(A)は、ポリオレフィンである。
本発明において使用することができるポリオレフィンには、次のもの含まれる:
- エチレンとアルファオレフィンモノマーの共重合体、エチレンと非アルファオレフィンモノマーの共重合体、及びそれらの任意の混合物、
- ブタ-1-エンの単独重合体及び共重合体、及びそれらの任意の混合物、
- エチレンと酢酸ビニルの共重合体(EVA)、エチレンとアクリレートの共重合体、エチレンとメタクリレートの共重合体、エチレンとメチルアクリレートの共重合体、これらのモノマーの幾つかの共重合体、及びそれらの任意の混合物。
【0022】
本発明において使用されうるポリオレフィンは、DOW CHEMICALのAFFINITY(登録商標)、VERSIFY(登録商標)及びINFUSE(登録商標)シリーズ、EVONIK INDUSTRIES社のVESTOPLAST(登録商標)シリーズ、EXXONMOBIL CHEMICALのVISTAMAXX(登録商標)シリーズ、CLARIANTのLICOCENE(登録商標)及び出光興産のL-MODU(登録商標)、アルケマのEVATANE(登録商標)シリーズ及びLOTRYL(登録商標)シリーズを含む、様々な商品名で市販されている。
【0023】
より好ましい実施態様によれば、熱可塑性ポリマーAは、エチレンとα-オレフィンモノマーの一又は複数の共重合体であり、更により好ましくは、エチレンと1-オクテンの共重合体である。
有用な特定のエチレンと1-オクテンの共重合体の例として、次のものを挙げることができる:
- エチレンと1-オクテンのブロック共重合体であるINFUSE(登録商標)9807、及び
- エチレンと1-オクテンのランダム共重合体であるAFFINITY(登録商標)GA1900。
本発明に従って使用される熱可塑性ポリマー(A)の全量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、好ましくは15重量%から45重量%、更により好ましくは15重量%から25重量%の範囲である。
【0024】
[粘着付与樹脂(B)]
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、15重量%から60重量%の少なくとも一種の粘着付与樹脂(B)を含む。
前記粘着付与樹脂(B)は、一又は複数の炭素-炭素二重結合を含んでいてもよく、又は炭素-炭素二重結合を含んでいなくともよい。この後者の場合、飽和粘着付与樹脂は、不飽和粘着付与樹脂の全水素化により調製することができる。
【0025】
粘着付与樹脂(B)は、好ましくは次から選択される:
(a)天然及び変性ロジン、例えばガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン及び重合ロジン。
(b)天然及び変性ロジンのグリセロール及びペンタエリスリトールエステル、例えば、ペール(pale)ウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、ペールウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル、及びロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステル;
(c)ポリテルペン樹脂には、約20℃から140℃の環球式軟化点を有する水素化ポリテルペン樹脂が含まれ、後者のポリテルペン樹脂は、適度に低い温度においてフリーデル・クラフツ触媒の存在でピネンとして知られるモノテルペンなどのテルペン炭化水素の重合から一般に得られる;
(d)フェノール変性テルペン樹脂、例えば、酸性媒体中でのテルペンとフェノールの縮合から得られるもの;
(e)約60℃から140℃の環球式軟化点を有する脂肪族(脂環式を含む)石油炭化水素樹脂(C5)であって、C5炭化水素モノマーの重合から得られる樹脂と;それらの続く全体的又は部分的水素化の結果として生じる対応する水素化誘導体;
(f)約60℃から140℃の環球式軟化点を有する芳香族石油炭化水素樹脂(C9)であって、C9炭化水素モノマーの重合から得られる樹脂と;それらの続く全体的又は部分的水素化の結果として生じる対応する水素化誘導体;
(g)約60℃から140℃の環球式軟化点を有する脂肪族(脂環式を含む)及び/又は芳香族石油樹脂(C5/C9)であって、C5/C9炭化水素モノマーの重合から得られる樹脂と;それらの続く全体的又は部分艇水素化の結果として生じる対応する水素化誘導体。
【0026】
クラス(e)又は(g)に属する粘着付与樹脂を調製するのに有用なC5炭化水素モノマーの例としては、トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロペンテン、及びそれらの任意の混合物を挙げることができる。
クラス(f)又は(g)に属する粘着付与樹脂を調製するのに有用なC9炭化水素モノマーの例としては、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、インデン、メチルスチレン、スチレン、メチルインデン、及びそれらの任意の混合物を挙げることができる。
【0027】
本発明の特定の実施態様によれば、上述の粘着付与樹脂の二種以上の混合物が、本発明に係るホットメルト接着剤組成物に使用される。
本発明に従って使用される粘着付与樹脂(B)は市販されている。
【0028】
クラス(a)に属する市販の粘着付与樹脂(B)の例として、次のものを挙げることができる:
- SYLVAROS(登録商標)(85、90及びNCY)の商品名で販売されているKRATON社からの未変性の天然トール油ロジン、
- FORALYN(登録商標)Eの商品名で販売されているEASTMAN社からの部分水素化ロジン、及びFORAL(登録商標)AX-Eの商品名で販売されているEastmanからの完全に水素化されたロジン、
- DYMEREX(登録商標)の商品名で販売されているEASTMAN社からの二量化ロジン。
【0029】
クラス(b)に属する市販の粘着付与樹脂(B)の例として、次のものを挙げることができる:
- ペンタエリスリトール系トール油ロジンエステルである、SYLVALITE(登録商標)RE100L、及び
- トール油ロジンのグリセロールエステルである、SYLVALITE(登録商標)RE85Lで、
両方ともKRATON社から入手可能である。
【0030】
クラス(c)に属する市販の粘着付与樹脂(B)の例として、次のものを挙げることができる:
- SYLVAGUM(登録商標)TR及びSYLVARES(登録商標)TRシリーズ(7115、7125、A25L、B115、M1115)の商品名で販売されているKRATON社のポリテルペン粘着付与剤。
【0031】
クラス(d)に属する市販の粘着付与樹脂(B)の例として、次のものを挙げることができる:
- SYLVARES(登録商標)TP(96、2040、300、7042、2019)の商品名で販売されているKRATON社のテルペンフェノール樹脂。
【0032】
クラス(e)に属する市販の粘着付与樹脂(B)の例として、次のものを挙げることができる:
- 60℃から140℃の環球式軟化点を有し、EASTMAN社からWINGTACK(登録商標)98、WINGTACK(登録商標)ETの商品名で販売され、EXXONMOBILからESCOREZ(登録商標)1310LCの商品名で販売される、C5石油炭化水素留分(トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロペンテンの混合物など)に基づく脂肪族及び脂環式石油炭化水素樹脂、
- 80℃から140℃の環球式軟化点を有し、KOLON社からSUKOREZ(登録商標)SU210及びSUKOREZ(登録商標)230の商品名で販売されているC5石油炭化水素留分(トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、2-メチル-2-ブテン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、シクロペンテンの混合物など)に基づく部分脂肪族及び脂環式石油炭化水素樹脂。SUKOREZ(登録商標)SU210の軟化点は110℃である。
- 60℃から140℃の範囲の環球式軟化点を有し、EXXONMOBILから商品名ESCOREZ(登録商標)5400シリーズ(5400、5415、5490)で販売されている、ジシクロペンタジエン-石油炭化水素留分に基づく完全に水素化された脂環式石油炭化水素樹脂。ESCOREZ(登録商標)5400の軟化点は100℃である。
【0033】
クラス(f)に属する市販の粘着付与樹脂(B)の例として、次のものを挙げることができる:
- 約60℃から140℃の環球式軟化点を有し、KOLON INDUSTRIESから入手可能で商品名HIKOTACK(登録商標)(P-90、P110S及びP120S)で販売されている、C9炭化水素石油留分(ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、インデン、メチルスチレン、スチレン、メチルインデンの混合物など)に基づく芳香族石油炭化水素樹脂。
【0034】
クラス(g)に属する市販の粘着付与樹脂(B)の例として、次のものを挙げることができる:
- 約60℃から140℃の環球式軟化点を有し、EXXONMOBIL社からESCOREZ(登録商標)5600シリーズ(5600、5615、5690)の商品名で販売されるC5/C9炭化水素石油留分に基づく部分水素化脂環式変性芳香族石油炭化水素樹脂。ESCOREZ(登録商標)5600の軟化点は100℃である。
- ZEONからQUINTONE(登録商標)DX390Nの商品名で販売されている軟化点93℃のC5/C9炭化水素石油留分に基づく非水素化脂肪族変性芳香族炭化水素石油樹脂。
【0035】
好ましい実施態様によれば、粘着付与樹脂(B)の環球(又は軟化点)は、好ましくは90℃から125℃の範囲、更により好ましくは90℃から115℃の範囲にある。
軟化温度(又は点)は、標準化されたASTM E28試験に従って定量され、その原理は次の通りである。直径約2cmの真鍮のリングに、試験される樹脂を溶融状態で充填する。室温まで冷却した後、リングと固体樹脂を、その温度が毎分5℃ずつ変化しうる、サーモスタット付きのグリセロール浴に水平に配する。直径約9.5mmの鋼球を、固体樹脂のディスクの中心に置く。軟化温度は、浴の温度が毎分5℃の割合で上昇する段階で、樹脂のディスクが鋼球の重さで25.4mmの量まで流れる温度である。
本発明により使用される粘着付与樹脂(B)の全量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、好ましくは20重量%から60重量%、より好ましくは45重量%から60重量%の範囲である。
【0036】
[可塑剤(C)]
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、5重量%から30重量%の、ナフテン系油、パラフィン系油、ポリイソブチレン、安息香酸エステル、ワックス及びアクリル酸もしくはカルボン酸変性ワックスから選択される少なくとも一種の可塑剤(C)を含む。
可塑剤(C)は、ホットメルト接着剤組成物に良好な加工性を付与することができる。更に、可塑剤(C)はまた、ホットメルト接着剤の接着強度又は供給温度(使用温度)を実質的に低下させることなく、所望の粘度制御をもたらしうる。
ナフテン系油及びパラフィン系油は、ナフテン系炭化水素(脂肪族、飽和又は不飽和のCからC員の炭化水素環、好ましくは脂肪族、飽和又は不飽和のCからC員環(例としてシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどのシクロアルカンを挙げることができる))、パラフィン系炭化水素(飽和、直鎖又は分岐アルカン)及び芳香族炭化水素(単環式又は多環式であり得、好ましくは芳香族C員炭化水素環である芳香族炭化水素環)の混合物からなる石油系油である。
【0037】
ナフテン系油とパラフィン系油の分類は、油中の各タイプの炭化水素の量に基づいてなされる。典型的には、可塑剤の全重量に対して、パラフィン系油は、少なくとも50重量%のパラフィン系炭化水素含有量を有し;ナフテン系油は30重量%と40重量%の間のナフテン系炭化水素含有量を有する。
【0038】
好ましくは、本発明に係る組成物に含まれる可塑剤(C)は、ナフテン系油である。
有用な可塑剤(C)は市販されている。例として、NYNASからNYFLEX(登録商標)223及びNYFLEX(登録商標)222Bの商品名で販売されているナフテン系油を挙げることができ、これらは好ましく使用される。
【0039】
上述の可塑剤(C)に同等の又は改善された利点を付与するために、本発明に係るホットメルト接着剤組成物に他の可塑剤を添加してもよい。これらの他の可塑剤としては、次の製品を挙げることができる:
- INEOSオリゴマーから入手可能な1300の分子量(Mn)を持つ液体ポリブテンであるINDOPOL H300などのポリイソブチレン;
- 固体可塑剤、例えば
- BENZOFLEX352の商品名でEASTMAN CHEMICALから入手可能な1,4-シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート(軟化点118℃)などの安息香酸エステル;
- HONEYWELLから入手可能なポリエチレン系ワックスであるAC(登録商標)617などの1000から5000g/モルの範囲の分子量を有するワックス;
- HONEYWELLから入手可能なAC(登録商標)573P、AC(登録商標)580又はAC(登録商標)596Pのような、1000から5000g/モルの範囲の分子量を有するアクリル酸又はカルボン酸変性ワックス。
【0040】
本発明に従って使用される可塑剤(C)の全量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、より好ましくは15重量%から25重量%の範囲である。
【0041】
[ヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)]
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、0.1重量%から10重量%の、8から24個の炭素原子を含むヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)を含む。
ヒドロキシル化脂肪酸は、飽和、不飽和又は部分不飽和であり得、1から3のヒドロキシル官能基、好ましくは1又は2のヒドロキシル官能基を含みうる。
【0042】
本発明において使用されうるヒドロキシル化脂肪酸としては、次のヒドロキシル化脂肪カルボン酸を挙げることができる:
- 式:
の飽和直鎖状モノヒドロキシル化一酸、例えば2-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシオクタン酸、3-ヒドロキシデカン酸、2-ヒドロキシドデカン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、α-ヒドロキシステアリン酸、β-ヒドロキシラウリン酸、β-ヒドロキシミリスチン酸、β-ヒドロキシパルミチン酸12-ヒドロキシオクタデカン酸、又は
例えば、10-ヒドロキシデカン酸、11-ヒドロキシウンデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸及び16-ヒドロキシヘキサデカン酸(又はジュニペル酸)。そのような飽和脂肪酸は、例えばSIGMA-ALDRICHから市販されている;
- 式:
の飽和分岐状モノヒドロキシル化脂肪酸、例えば2-エチル-3-ヒドロキシカプリル酸;
- 式:
の飽和ポリヒドロキシル化脂肪酸、例えば9,10-ジヒドロキシオクタデカン酸及び9,12-ジヒドロキシオクタデカン酸;
- 式:
の不飽和モノヒドロキシル化脂肪酸、例えば、10-ヒドロキシ-2-デセン酸、2-ヒドロキシ-15-テトラコセン酸(又はヒドロキシネルボン酸)及び12Z-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸(又はリシノール酸)、14Z-ヒドロキシ-11-エイコセン酸(又はレスクエロール酸);又は
例えば、その合成が、Helvetica Chimica Acta, volume 25, pages 965-77 (1942)に記載されている16-ヒドロキシ-6-ヘキサデセン酸、又は
例えば、12-ヒドロキシ-9Z,15Z-オクタデカジエン酸(又はデンシポリン酸)及び14-ヒドロキシ-11Z,17Z-エイコサジエン酸(又はオーリコリン(Auricolic)酸)。
ヒドロキシル化脂肪酸が飽和である場合、好ましくは8から18個の炭素原子を含む。
【0043】
デンシポリン酸、オーリコリン酸及びリシノール酸などの不飽和モノヒドロキシル化脂肪酸が好ましく、その中でも、式:
のリシノール酸がより特に好ましい。
【0044】
デンシポリン酸及びオーリコリン酸は、それぞれ、加水分解されたレスケレラ・デンシピラ(Lesquerella Densipiia)油から容易に得ることができる、一価不飽和のヒドロキシル化されたC18及びC20脂肪酸である。レスケレラ・デンシピラ(Lesquerella Densipila)油は、レスケレラ・デンシピラの種子から得られる植物油であり、本質的にデンシポリン酸とオーリコリン酸のトリグリセリド(グリセロールの三重エステル)で構成されている。
リシノール酸は、加水分解されたヒマシ油から容易に得ることができる、一価不飽和でヒドロキシル化されたC18脂肪酸である。ヒマシ油は、ヒマ種子から得られ、リシノール酸のトリグリセリド(グリセロールの三重エステル)から本質的に構成されている植物油である。
【0045】
ヒドロキシル化脂肪酸は、部分的に不飽和である場合、ONIDOL、ITERG及びCETIOMの特許FR2617839に記載されているように、中間体エポキシ化によって、ヒマワリ、菜種又は大豆などの天然源から入手可能な不飽和脂肪酸から調製することができる。
【0046】
本発明に係るホットメルト接着剤組成物に含まれる脂肪酸の塩(D)は、好ましくは金属塩であり、より好ましくは120℃未満、有利には90℃未満の融点を有する塩(D)である。
(D)の特に好ましい実施態様は、リシノール酸亜鉛又はカルシウムである。
脂肪酸の塩(D)の量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、好ましくは3から10重量%、より好ましくは3から8重量%の範囲である。
【0047】
[任意選択的成分]
[エンドブロック強化樹脂(E)]
本発明に係るホットメルト接着剤組成物が、二つのアセンブルされた基材を接合する接着剤接合の高い結合を必要とする非常に要求の厳しい用途に使用されることが意図される場合、組成物は、好ましくは少なくとも一種のエンドブロック強化樹脂(E)を含む。
エンドブロック強化樹脂(E)は、芳香族モノマーの純粋な又は混合モノマー流に基づく主として芳香族樹脂である。そのような芳香族モノマーの典型的な例には、芳香族C9炭化水素モノマー、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンが含まれる。α-メチルスチレンに基づくものが好ましい。
有用なエンドブロック強化樹脂(E)は、例えばEASTMAN CHEMICALのPLASTOLYN(登録商標)シリーズを含み、様々な商品名で市販されている。
本発明に従って使用されるエンドブロック強化樹脂(E)は、典型的には、5000から15000g/モルの分子量を有する。
芳香族エンドブロック樹脂(E)の環球式軟化点は、好ましくは90℃から160℃、より好ましくは100℃から140℃、より好ましくは120℃から140℃の範囲である。
エンドブロック強化樹脂(E)が本発明に係るホットメルト接着剤組成物中に存在する場合、その全量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、好ましくは3から20重量%、より好ましくは5から15重量%の範囲である。
【0048】
[酸化防止剤(F)]
好ましくは、本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、0.1重量%から2重量%の少なくとも一種の酸化防止剤(F)を含む。
本発明に有用な酸化防止剤(F)は、ホットメルト接着剤組成物を化学的分解から保護するのを助けるために、ホットメルト接着剤組成物に好ましくは導入される。前記分解は、一般には、紫外線又は熱によって触媒される鎖切断から生じるフリーラジカルと二酸素との反応を伴う。このような分解は、通常、接着剤の外観(色の褐色化)又はその他の物理的特性、及び接着剤の性能特性の劣化に現れる。
特に、酸化防止剤(F)は、ホットメルト接着剤組成物とその成分が二酸素の存在下、高温で長時間加熱される接着剤の製造及び塗布過程中に主に起きる熱分解反応の影響から接着剤を保護する。
【0049】
有用な酸化防止剤(F)には、ヒンダードフェノールと硫黄及びリン含有フェノールが含まれる。ヒンダードフェノールは当業者によく知られており、そのフェノール性ヒドロキシル基に近接して立体的に嵩が高い基をまた含むフェノール性化合物として特徴付けられる。特に、第三級ブチル基は、一般に、フェノール性ヒドロキシル基に対してオルト位の少なくとも一においてベンゼン環上に置換される。
【0050】
代表的なヒンダードフェノールには、次のものが含まれる:
1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;
ペンタエリスリトールテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
n-オクタデシル-3(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;
4,4’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);
4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール);
2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;
6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン;
2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル-フェノキシ)-1,3,5-トリアジン;
ジ-n-オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート;
2-(n-オクチルチオ)エチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート;
ソルビトールヘキサ-(3,3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート;
2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)ホスファイト、例えば、トリス-(p-ノニルフェニル)-ホスファイト(TNPP)及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ジフェニレンジホスホナイト、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート(DSTDP);
テトラキス(メチレン(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン;
(トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスフェート)、及びそれらの組み合わせ。
【0051】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、単独で、又は他の酸化防止剤、例えば、IRGAFOS(登録商標)シリーズのようなホスファイト酸化防止剤、又はADDIVANTのNAUGARD(登録商標)シリーズのような芳香族アミン酸化防止剤と組み合わせて、使用することができる。
有用な酸化防止剤Eは、例えば、IRGANOX(登録商標)1010(テトラキス(メチレン(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン)、及びIRGAFOS(登録商標)168酸化防止剤(トリス(2,4-ジtert-ブチルフェニル)ホスフェート)を含むBASFからのIRGANOX(登録商標)シリーズのヒンダードフェノール系酸化防止剤を含み、様々な商品名で市販されている。
【0052】
酸化防止剤(F)の全量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、好ましくは0.1から3重量%、より好ましくは0.5重量%から1重量%の範囲である。
本発明において有用な酸化防止剤の性能は、それと併せて、(1)例えば、チオジプロピオン酸エステル及びホスファイトのような相乗剤;及び/又は(2)キレート剤及び金属不活性化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、その塩、及びジサリチラルプロピレンジイミン(disalicylalpropylenediimine)を利用することにより、更に向上させることができる。
【0053】
本発明に係るホットメルト接着剤組成物には、その物理的性質の幾つかを変更するために、他の任意選択的成分を導入してもよい。
任意選択的成分としては、フィラー、界面活性剤、着色剤、紫外線安定剤、蛍光剤、レオロジー調整剤等を挙げることができる。
これらの任意選択的成分の全量は、ホットメルト接着剤組成物の全重量に対して、0重量%から10重量%、好ましくは0.1重量%から5重量%、より好ましくは0.1重量%から2重量%の範囲でありうる。
【0054】
好ましい実施態様によれば、本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、
- a)15重量%から45重量%の熱可塑性ポリマー(A);
- b)20重量%から60重量%の粘着付与樹脂(B);
- c)15重量%から25重量%の可塑剤(C);及び
- d)3重量%から10重量%のヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)
を含み、好ましくは本質的にこれらからなる。
【0055】
更により好ましい実施態様によれば、本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、
- a)15重量%から25重量%の熱可塑性ポリマー(A);
- b)45重量%から60重量%の粘着付与樹脂(B);
- c)15重量%から25重量%の可塑剤(C);及び
- d)3重量%から8重量%のヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)
を含み、好ましくは本質的にこれらからなる。
【0056】
本発明の第二の目的によれば、本出願は、本発明に係るホットメルト接着剤組成物の成分を、少なくとも粘着付与樹脂(B)及び熱可塑性ポリマー(A)を溶融させるのに十分に長い時間の間、140℃から170℃の範囲の温度で混合し、かつ加熱する工程を少なくとも含む、本発明に係るホットメルト接着剤組成物の製造方法に関する。
本発明のホットメルト接着剤組成物は、当該技術分野で知られている技術の何れかを使用して製造することができる。使用される成分は、好ましくは混合され、高温で少なくとも数時間、典型的には140から170℃の範囲の温度で少なくとも4時間、好ましくは4から6時間、加熱される。
【0057】
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、酸化反応による分解の可能性を制限するために、二酸素の存在下(例えば空気雰囲気下)、又は好ましくは不活性雰囲気下、例えば二酸化炭素又は窒素下で調製することができる。
好ましい実施態様によれば、本発明に係るホットメルト接着剤組成物を製造する方法は、 - 粘着付与樹脂(B)及び可塑剤(C)を、存在する場合は好ましくは酸化防止剤(F)と共に、120℃から140℃の範囲の温度で、少なくとも全ての粘着付与樹脂(B)を溶融させるのに十分長い時間、混合し加熱する第一工程、
- 先の工程で得られた混合物中に、熱可塑性ポリマー(A)を、150℃から170℃の範囲の温度で、少なくとも全ての熱可塑性ポリマーAを溶融させるのに十分長い時間、撹拌し加熱しながら添加する第二工程
を含み、
- ヒドロキシル化脂肪酸の塩(D)が、場合によっては、第一工程中又は第二工程中に他の成分との混合物中に、又はその後の第三工程中に第二工程から得られるホットメルト接着剤組成物に130℃から150℃の温度範囲で撹拌しながら添加される工程
を含む。
【0058】
好ましくは、塩(D)は、低い融点を有するので、第三工程で添加される。
加えて、本発明の方法は、先に記載した方法の任意の工程の前又は後に、混合物中に閉じ込められた空気を除去するために真空を適用する工程を含みうる。
本発明に係るホットメルト接着剤組成物中に存在しうる他の有用な任意選択的成分は、本発明に係る方法の任意の工程で添加されうる。
上述の方法により調製された本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、更に、例えば、溶融ケトル内で、更なる15時間まで溶融状態に保たれ得、その後、冷却され、使用の準備ができた固体組成物の形態で包装される。
【0059】
本発明の第三の目的によれば、本出願は、
- 本発明に係るホットメルト接着剤組成物を、少なくともホットメルト接着剤組成物を基材上に塗布されるように十分に液体にするのに十分長い時間(例えば、工業的規模では少なくとも2時間)、130℃から180℃の範囲の温度で加熱する工程(i)、ついで
- 第一の基材上に前記組成物をコーティングする工程(ii)、ついで
- 第一の基材のコーティングされた表面を第二の基材の表面と接触させて、二つの基材を接合する接着剤接合を形成する工程(iii)
を含む、アセンブリ品(又はラミネート)の製造方法に関する。
基材は、様々な形態 (層又はフィルム、ストランド、綿毛状)で、異なる性質又は同じ性質でありうる。
【0060】
好ましくは、各基材は、不織布、ティッシュ、吸収性綿毛、超吸収性ポリマー(SAP)、複合材料、エラストマー又は非エラストマーであり、例えばスチレンブロック共重合体(SBC)、ポリウレタン、及びポリオレフィン、及びそれらの任意の混合物から選択されうるプラスチックから互いに独立して選択されうる。
複合材料は、上述の材料の少なくとも一種から作製されうる。
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、接触型塗布(スロットダイコーティングなど)及び非接触型塗布(噴霧又は繊維化など)を含む、当該技術分野で知られている様々な塗布技法でコーティング又は塗布することができる。
特に、上述のように、本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、0.305から0.762mmの直径を有するものなどの一般的なコーティングノズル、又はシムによって調節可能で20μmから300μmの範囲のスロットダイによって容易に塗布できる。
【0061】
表面単位でのコーティングされた接着剤の量は、接合が意図された基材に応じて、0.1から50gsm(平方メートル当たりのグラム)の非常に大きな範囲で変化しうる。例えば、不織布基材をポリエチレンフィルムに接合して布状のバックシートアセンブリを製造する場合、0.2から1gsmの範囲を挙げることができる一方、使い捨て多層アセンブリの場合、3から7gsmの範囲が使用されうる。20から40gsmのかなり高い範囲は、例えば、おむつの外枠部に耳を接合する場合など、高いせん断性能が必要とされる場合にまた使用できる。
【0062】
第一の基材の表面に塗布される前に、本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、4日間まで溶融ケトルに更に保持されうる。本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、酸化反応による分解を制限するために、二酸素の存在下(空気雰囲気下)、又は好ましくは不活性雰囲気下で、基材上に塗布され又は保存されうる。
【0063】
本発明の第四の目的によれば、本出願は、本発明に係る少なくとも一のホットメルト接着剤組成物によって接合された少なくとも二つの基材を含むアセンブリ品(組立品)に関する。
接合される基材は、本発明に係る、ホットメルト接着剤組成物を塗布する方法について上に列挙した基材のなかから選択されうる。
本発明に係るホットメルト接着剤組成物は、例えば、トイレットペーパー、ペーパータオル、拭き取り繊維及びその他の消費者向け製品、特に使い捨て衛生製品などの吸収性物品、より特定的には使い捨ておむつを製造するために、複数の基材層を接合させるためのラミネート接着剤として使用することができる。
【0064】
本発明の特定の実施態様では、本発明に係るアセンブリ品は、本発明に係る少なくとも一のホットメルト接着剤組成物によって接合された少なくとも二層の基材を含む多層品でありうる。
本発明に係るアセンブリ品では、少なくとも二層の基材は、本発明に係るホットメルト接着剤組成物の層によって、二層の基材間に挟まれて接着接合されうる。
あるいは、又は累積的に、基材の少なくとも二層は、本発明に係るホットメルト接着剤組成物のスポットによって接着接合されうる。好ましくは、アセンブリ品は使い捨て不織吸収性物品である。
【0065】
本発明の第五の目的によれば、本出願は、本発明に係るホットメルト接着剤組成物の固体堆積物によって汚れたラミネート加工装置の金属部品を洗浄する方法であって、室温において操業者によって前記堆積物を手作業で除去することを含む方法に関する。
例えば、場合によっては溶剤を染み込ませた布、又は金属ブラシを使用して、固体堆積物を拭き取ることができる。
【0066】
次の実施例は、純粋に本発明を説明するためのものであり、如何なる状況においても、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0067】
実施例1(参照例):
表1の組成物を、本発明の詳細な説明において上で指摘したように、その成分の単純混合によって調製する。
この接着剤組成物を次の試験及び測定に供する。
【0068】
A.ステンレス鋼に対するループタック試験:
接着剤組成物のループタックを、FINAT試験法第9番に記載されているステンレス鋼に対するループタック試験によって決定する。
A.1.実施例1の接着剤組成物によってコーティングされた支持体の事前準備:
ACUMETER Laboratory社から販売されている、約20m/分のライン速度で連続的に作動される機械のラミネート加工装置が使用される。この機械では、コーティングノズルはスロットノズルである。
用いる支持体は、15cmの幅を有する50μm厚のPETフィルム(Mylar(登録商標))である。
接着剤組成物を溶融ポット内で149℃の温度に加熱し、ついでPETフィルム上に20g/mのコーティング重量を持つ5cm幅の接着剤層として、該PETフィルム上の中心にコーティングする。ついで、1バールの圧力をかけるニップロールによって、15cm幅の剥離ライナーをPETフィルム上のコーティングされた表面に接触させる。
2.5cm×17.5cmの長方形の帯状体をラミネートのコーティングされた中央領域で切り取り、23℃、相対湿度50%で一晩調整する。
【0069】
A2.FINAT試験法第9番の実施:
ついで、剥離ライナーをこの帯状体から取り除き、その二端を結合させて、その接着層が外側を向くループを形成する。
結合した二端を、前後運動をなすことが可能な、垂直軸に沿って300mm/分の移動速度を課すことができる引張試験機の可動ジョーに配置する。垂直位置に置かれたループの下方部は、最初に、一辺約2.5cmの正方形の領域にわたって、2.5cm×3cmの水平なステンレス鋼プレートと接触させる。
この接触が生じると、ジョーの移動方向が逆になる。
ループタックは、ループがプレートから完全に剥離されるのに必要な力の最大値であり、ニュートン(N)で測定される。
ループタックは、以下の表2に報告される。
【0070】
B.PEと不織布PPを含むラミネートに対する剥離試験:
B.1.実施例1の接着剤組成物により接合されたラミネートの事前準備:
ラミネート加工装置として、コーターCTL4400の名でNORDSONから販売されている、約200m/分のライン速度で連続的に作動される機械を使用する。
この機械において、コーティングノズルはスプレーノズル(NORDSON SignatureTM)である。
用いる二基材は次の通りである:
- 不織布シート上に事前にラミネートされて布状のバックシートを形成した20cmの幅を有する20μm厚のPEフィルム、及び
- ポリプロピレン(PP)の繊維で構成された、同じ幅の14g/mのスパンメルト不織布シート。
これら二基材を、20cm幅のリールとしてパッケージ化する。
接着剤組成物を、149℃の温度の溶融ポット内で加熱する。
ついで、布状バックシートフィルムのPE側に、約3g/mと5g/mの2つの異なるコーティング重量でコーティングする。コーティングパターンは、接着剤繊維で作製された2.54cm幅の非連続層であり、リールの軸に直交する軸に沿って、前記PEフィルムの中心に置く。
ついで、1バールの圧力をかけるニップロールによって、不織(PP)シートをPEフィルムのコーティングされた表面と接触させる。
【0071】
B.2.剥離:
ついで、得られたアセンブリをリールとしてパッケージ化し、周囲温度及び相対湿度50%で24時間放置する。
ついで、ラミネートのコーティングされた中央領域で、2.54cm×約10cmの長方形の帯状体を切り取る。
二つの個々の基材を、上記の長方形の帯状体(試験片として)の一端から約2cmにわたって分離させる。
このようにして得られた二つの自由端を、垂直軸上に位置する引張試験装置の固定部と可動部にそれぞれ連結された2つのクランプ装置に固定する。
駆動機構が可動部に毎分300mmの均一速度を伝えることで、二基材の分離が生じ、その分離した端部が180°の角度を形成しながら垂直軸に沿って徐々に移動され、動力計に連結された固定部分が、このように保持された試験片が耐える力を測定する。
周囲温度で24時間後の剥離に対応する各コーティング重量の結果を、Nで表す。
周囲温度で1か月後と、55℃の温度で1か月後の剥離を、積層後に得られたアセンブリを対応温度でそれぞれの時間放置したことを除いて、上記のプロトコルを繰り返すことによって測定する。
結果を以下の表2に報告する。
【0072】
C.二枚の不織布PPを含むラミネートに対する剪断試験:
ラミネートアセンブリの結合レベルをまた、その原理が接着剤組成物によって接合される二基材の剪断による分離に必要な力の定量からなる、剪断試験によって評価する。
C.1.実施例1の接着剤組成物により接合されたラミネートの事前準備:
ラミネート加工装置として、コーターCTL4400の名でNORDSONから販売されている、約200m/分のライン速度で連続的に作動される機械を使用する。
この機械において、コーティングノズルはスロットノズルNORDSON SlotTMである。
用いる二基材は同一で、ポリプロピレン(PP)の繊維で構成された20cmの幅を持つ40g/mのメルトブロー不織布シートからなる。
これら同一の二基材は、20cmの幅を持つリールとしてパッケージ化される。
接着剤組成物を、149℃の温度の溶融ポット内で加熱し、ついで第一基材の右端から2cmの位置にコーティングし、約15g/mの量に対応する1.5cmの幅を持つ連続層の前記端部上に堆積物が生じ、この層をリールの軸に直交して配置する。
ついで、接着剤層がその左端から2cmになるように、1バールの圧力を加えるニップロールによって、第二基材を第一基材上に積層する。
【0073】
C2.剪断:
ついで、得られたアセンブリをリールとしてパッケージ化し、周囲温度及び相対湿度50%で24時間放置する。
ついで、1.5cm幅のコーティングされた領域によってアセンブルされた全幅約35cmのラミネート基材を、幅方向に切り出し、約35cmの長さと2.54cmの幅を持つ長方形の試験片を得る。
次に、試験片の第一基材を37.8℃のオーブンにしっかりと吊るし、500gのおもりを第二基材に取り付ける。
周囲温度で24時間後の剪断に対応する、アセンブリが落ちるまでの時間を分単位で記録する。
周囲温度で1か月後の剪断を、積層後に得られたアセンブリを対応する時間と温度で放置することを除いて、上記のプロトコルを繰り返すことによって測定する。
結果を以下の表2に報告する。
【0074】
D.粘度変化試験:
接着剤組成物の初期粘度を、ブルックフィールド・サーモセル粘度計及び27番スピンドルを使用して、ASTM D-3236に従って、149℃の温度で測定する。スピンドル速度は、トルクパーセントが45%と90%の間になるように調整した。結果をセンチポアズ(cP)で報告する。
ついで、200gの接着剤組成物を400mlのガラスジャーに入れ、アルミホイルで覆う。
溶融タンクでの接着剤のエージングをシミュレートするために、ジャーを149℃において72時間エージングさせる。
接着剤組成物のサンプル10gをエージング中の様々な時間(24時間、48時間、72時間)で取り出し、初期粘度に対するものと同じ方法を使用して、149℃の温度で粘度を測定する。
エージング時間での粘度変化(又は最終粘度)を、次の式に従って計算し、パーセントで表す:
粘度変化=((最終粘度-初期粘度)×100/(初期粘度))
結果を以下の表2に報告する。
【0075】
実施例2(発明例):
実施例1を、表1に示した実施例2の組成物で繰り返す。
ループタック試験、剥離試験、剪断試験及び粘度変化の結果を以下の表2に報告する。
実施例1を参照すると、ステンレス鋼に対する室温タックの非常に有意な低下(倍数4)が観察でき、ホットメルト接着剤組成物の金属基材への接着力が著しく低下したことを示している。
剥離及び剪断の結果は、参照例1で得られた結果と同等であり、特にポリマー基材への強い接着性を示している。
粘度変化に関して、実施例2の組成物は、参照例1の組成物と全く同じように安定なようであり、3日間まで塗工機溶融タンクに留まるのに丁度適している。
【0076】
実施例3(参照例):
表1の組成物を、発明の詳細な説明において上で指摘したように、その成分の単純混合によって調製する。
この接着剤組成物を、前述のようなステンレス鋼に対するループタック試験、剥離試験、粘度変化試験に供する。
結果を以下の表2に報告する。
この接着剤組成物を、次の試験にも供する。
【0077】
E.アルミホイルからの層間剥離試験:
E.1.実施例3の接着剤組成物により接合されたラミネートの事前準備:
上記のA.1のプロトコルを、剥離ライナーを20μmの厚さのアルミホイルに単に置き換えて、繰り返す。
E.2.剥離:
ついで、剥離測定をB.2で上述したように実施する。
アルミホイルからの層間剥離に対応する結果を、Nで表す。
それを以下の表2に報告する。
【0078】
実施例4(発明例):
表1に示す実施例4の組成物を用いて実施例3を繰り返す。
ループタック試験、アルミホイルからの層間剥離試験、剥離試験及び粘度変化試験の結果を、以下の表2に報告する。
参照例3に関して、ステンレス鋼に対するループタックについて、大幅な低下(倍数3)を観察できる。参照例3を参照して、アルミホイルからの層間剥離に必要な力の大幅な低下(倍数2)も観察できる。これらの2つの結果は、ホットメルト接着剤組成物の金属基材上での接着力が著しく減少したことを示している。
2つのコーティング重量のそれぞれについての剥離の結果は、参照例3で得られた結果に匹敵し、特にポリマー基材上での強い接着性を示している。
粘度変化に関しては、実施例4の組成物は参照例3の組成物と全く同じように安定しているようであり、3日間までコーター溶融タンクに留めるのに丁度適している。
【0079】
【0080】