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特許7410965ホスファゼン化合物、潤滑剤およびコネクタ接点部材
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  • 特許-ホスファゼン化合物、潤滑剤およびコネクタ接点部材 図1
  • 特許-ホスファゼン化合物、潤滑剤およびコネクタ接点部材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ホスファゼン化合物、潤滑剤およびコネクタ接点部材
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6593 20060101AFI20231227BHJP
   C10M 137/16 20060101ALI20231227BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20231227BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20231227BHJP
   C10N 40/14 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
C07F9/6593 CSP
C10M137/16
C10N30:00 A
C10N30:06
C10N40:14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021553588
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2020040032
(87)【国際公開番号】W WO2021085356
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019199609
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146180
【氏名又は名称】株式会社MORESCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清水 豪
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀長
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-19278(JP,A)
【文献】国際公開第2007/105437(WO,A1)
【文献】米国特許第3201445(US,A)
【文献】IEEE Transactions on Magnetics,2012年11月,Vol. 48, No.11,pp. 4475-4478
【文献】株式会社MORESCO,フッ素系潤滑油用添加剤「モレスコホスファロールUP-3000」,潤滑経済,2013年,No. 577,pp. 24-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/6593
C10M 137/16
C10N 30/00
C10N 30/06
C10N 40/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるホスファゼン化合物。
(CF-C-O)6-x-(P)-Rf・・・(1)
式(1)中、xは1より大きく6以下の実数であり、Rfは、-OCH-(CF(CF(CF))-O-(CFCFCFO)(CFCF(CF)O)(CF(CF(CF))-Rであり、k、l、m、nは0~4の整数であり、k、l、m、nの少なくとも一つ以上は1以上の実数であり、q、sは0~40の実数であり、q、sの少なくとも一つは1以上の実数であり、RはFまたはCFである。
(ただし、前記ホスファゼン化合物は、式(1)においてRfが-OCH-(CF(CF))-O-(CFCF(CF)O)(CF-Rであり、かつx=6、s=1~10である化合物を除く化合物である。)
【請求項2】
官能基を有さないパーフルオロポリエーテルと、請求項1に記載のホスファゼン化合物とを含む潤滑剤。
【請求項3】
固形分を含まない、請求項に記載の潤滑剤。
【請求項4】
上記パーフルオロポリエーテルは、下記式(4)で表される構造を有する、請求項またはに記載の潤滑剤。
F-(CF(CF(CF))-(OCF(OCFCF(OCFCFCF(OCFCFCFCF(OCFCF(CF))-O(CF(CF(CF))-F・・・(4)
(上記式(4)中、a、b、c、d、eはそれぞれ0~200の実数であり、f、g、h、iはそれぞれ0~3の実数であり、a、b、c、d、e、f、g、h、iの少なくとも一つは1以上の実数である。)
【請求項5】
潤滑層を備えるコネクタ接点部材であって、
上記潤滑層が請求項のいずれか1項に記載の潤滑剤を含む、コネクタ接点部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホスファゼン化合物、潤滑剤およびコネクタ接点部材に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリカードおよびメモリスティック等の摺動部材の抜き差しが頻繁に行われるコネクタ等の電子部品に用いられる潤滑剤には、優れた潤滑性と、摺動耐久性および耐摩耗性が求められる。
【0003】
このような潤滑剤として、特許文献1には官能基を有さないパーフルオロポリエーテルと、主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する化合物であって、末端に少なくとも1つの官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物とを含む潤滑剤が記載されている。上記パーフルオロポリエーテル化合物としては、例えば、非特許文献1に記載の、ホスファゼン構造を持つ、モレスコホスファロール UP-3000(MORESCO社製)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-19278号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】潤滑経済 2013年7月号No.577、p.24-27
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術は、主剤であるパーフルオロポリエーテルに対する添加剤であるパーフルオロポリエーテル化合物の相溶性と、高温環境下での耐摩耗性との観点からはさらなる改善の余地があった。
【0007】
そこで本発明の一態様は、パーフルオロポリエーテルへの高い相溶性を示す添加剤であって、高温環境下で高い耐摩耗性を示す潤滑剤を得ることができる添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ホスファゼン基を中心骨格として、パーフルオロポリエーテル構造を1つより多く有するホスファゼン化合物がパーフルオロポリエーテルに対して高い相溶性を示すこと、および、このホスファゼン化合物を用いた潤滑剤は高温環境下で高い耐摩耗性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を含む。
<1>下記式(1)で表されるホスファゼン化合物。
【0009】
(CF-C-O)6-x-(P)-Rf・・・(1)
式(1)中、xは1より大きく6以下の実数であり、Rfは、-OCH-(CF(CF(CF))-O-(CFCFCFO)(CFCF(CF)O)(CF(CF(CF))-Rであり、k、l、m、nは0~4の整数であり、k、l、m、nの少なくとも一つ以上は1以上の整数であり、q、sは0~40の実数でありq、sの少なくとも一つは1以上の実数であり、Rは非極性基である。
<2>官能基を有さないパーフルオロポリエーテルと、<1>に記載のホスファゼン化合物とを含む潤滑剤。
<3>固形分を含まない、<2>に記載の潤滑剤。
<4>上記パーフルオロポリエーテルは、下記式(4)で表される構造を有する、<2>または<3>に記載の潤滑剤。
F-(CF(CF(CF))-(OCF(OCFCF(OCFCFCF(OCFCFCFCF(OCFCF(CF))-O(CF(CF(CF))-F・・・(4)
(上記式(4)中、a、b、c、d、eはそれぞれ0~200の実数であり、f、g、h、iはそれぞれ0~3の実数であり、a、b、c、d、e、f、g、h、iの少なくとも一つは1以上の実数である。)
<5>潤滑層を備えるコネクタ接点部材であって、
上記潤滑層が<2>~<4>のいずれか1つに記載の潤滑剤を含む、コネクタ接点部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、パーフルオロポリエーテルへの高い相溶性を示す添加剤であって、高温環境下で高い耐摩耗性を示す潤滑剤を得ることができる添加剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタ接点部材の構成を示す断面図である。
図2】実施例および比較例にて作製された潤滑剤の耐摩耗性評価の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意図する。
【0013】
〔1.ホスファゼン化合物〕
本発明の一実施形態に係るホスファゼン化合物は、ホスファゼン基(P)を中心骨格とする化合物であって、パーフルオロポリエーテル構造を有する。具体的には、上記ホスファゼン化合物は下記式(1)で表される。
【0014】
((CF)-C-O)6-x-(P)-Rf・・・(1)
式(1)中、xは1より大きく6以下の実数であり、Rfはパーフルオロポリエーテル構造である。
【0015】
上記パーフルオロポリエーテル構造は、下記式(2)で表される。
-OCH-(CF(CF(CF))-O-(CFCFCFO)(CFCF(CF)O)(CF(CF(CF))-R・・・(2)
式(2)中、k、l、m、nは0~4の整数であり、k、l、m、nの少なくとも一つ以上は1以上の整数であり、q、sは0~40の実数であり、q、sの少なくとも一つは1以上の実数であり、Rは非極性基である。
【0016】
上記式(2)としては例えば、デムナム骨格:-CFCFO-(CFCFCFO)CFCF-、またはクライトックス骨格:CF(CF)O-(CFCF(CF)O)CF(CF)-を含む構造が挙げられる。前記骨格中、q、sは1~40の実数である。
【0017】
上記ホスファゼン化合物は、式(2)で表される構造を1つより多く有している。すなわち、上記ホスファゼン化合物は、式(2)で表される構造を2つ以上有していてもよい。また例えば、上記ホスファゼン化合物は、式(2)中のxがx=1とx=2である化合物を1対1で含有する混合物、すなわち式(2)中のxがx=1.5であってもよい。上記ホスファゼン化合物は、式(2)で表される構造を1つより多く有しているがゆえに、主剤であるパーフルオロポリエーテルに対して高い相溶性を示す。
【0018】
上記式(2)中の非極性基であるRの例としては、F、CF、炭化水素基等が挙げられる。
【0019】
なお、ホスファゼン基の構造は、下記式(3)で表される。
【0020】
【化1】
〔2.ホスファゼン化合物の製造方法〕
前記ホスファゼン化合物の製造方法については特に限定されるものではない。例えば、前記ホスファゼン化合物は、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンと、ヘキサフルオロキシレンおよびトリフルオロフェノールとを反応させること等により得られる。
【0021】
末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルは、上述の式(2)で表される構造を含む、R-(CF(CF(CF))-O(CFCFCFO)(CFCF(CF)O)-(CF(CF(CF))-CHOHで表される。k,l,m,n,q,sおよびRの定義は上述の式(2)の項目で説明した通りである。一例としては、CFCFCFO(CFCFCFO)CFCFCHOHで表される化合物等が挙げられる。
【0022】
式(1)で表されるホスファゼン化合物は、具体的には以下の方法により合成され得る。まず、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンと、ヘキサフルオロキシレンとをアルゴン雰囲気下で混合し、氷浴で冷却しながら触媒を加える。次いで加熱撹拌した後、再び氷浴で冷却し、トリフルオロフェノールを加え、さらに触媒を少しずつ加える。氷浴を外し、再び加熱撹拌した後、水洗、脱水し、その後、分子蒸留を行い低沸成分を除去することにより、例えば実施例の化合物1である、((CF)-C-O)-(P)-(OCHCFCF-(OCFCFCF-OCFCFCFで表される、ホスファゼン化合物が得られる。触媒として、t-ブトキシカリウムまたはt-ブトキシナトリウム等のアルカリ金属塩を用いることができる。加熱撹拌の反応温度は好ましくは50~120℃、より好ましくは70~90℃である。加熱撹拌の反応時間は好ましくは5時間~30時間、より好ましくは10時間~20時間である。なお、例えば、各原料の添加量等を調整することによりホスファゼン化合物が有するパーフルオロポリエーテル構造の数を制御することができる。
【0023】
また上述の式(1)で表され、かつx=6となるようなホスファゼン化合物は例えば、前記パーフルオロポリエーテルと、ヘキサフルオロキシレンと、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンを反応させることにより得られる。
【0024】
式(1)で表され、かつx=6となるようなホスファゼン化合物は具体的には、以下の方法により合成され得る。まず末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと、ヘキサクロロシクロトリホスファゼンと、ヘキサフルオロキシレンと、触媒とをアルゴン雰囲気下で混合し、加熱撹拌する。その後、水洗、脱水し、次いで分子蒸留を行い低沸成分を除去することにより、例えば実施例の化合物3である、(P)-(OCHCFCF-(OCFCFCF-OCFCFCFで表されるホスファゼン化合物が得られる。触媒として、金属ナトリウム等のアルカリ金属、またはt-ブトキシカリウムもしくはt-ブトキシナトリウム等のアルカリ金属塩を用いることができる。加熱撹拌の反応温度は好ましくは50~120℃、より好ましくは70~90℃である。加熱撹拌の反応時間は好ましくは10時間~70時間、より好ましくは40時間~50時間である。
【0025】
〔3.潤滑剤〕
本発明の一実施形態に係る潤滑剤は、官能基を有さないパーフルオロポリエーテルと、前記ホスファゼン化合物とを含む。以下、官能基を有さないパーフルオロポリエーテルを「無官能パーフルオロポリエーテル」とも称する。
【0026】
無官能パーフルオロポリエーテルのみを含む潤滑剤を接点基材に塗布した場合、潤滑剤の流動性が高いために、塗布面に留まりにくい。そのため、潤滑剤と接触させながら摺動部材を往復運動させると、摺動部材が接点基材に接触する。その結果、接点基材が損傷しやすくなるため、耐久性が悪い。
【0027】
加えてパーフルオロポリエーテル構造が1つのホスファゼン化合物を、無官能パーフルオロポリエーテルに添加した場合、特に低温で、相溶性が低いため添加量に制限がある。
【0028】
さらに、化学反応によって得られた混合物からパーフルオロポリエーテル構造が1つのホスファゼン化合物を製造する場合、水洗、脱水、蒸留した後、再度蒸留による精製を行う必要があり、製造のための費用がかかる。
【0029】
一方、本発明の一実施形態では、無官能パーフルオロポリエーテルと、ホスファゼン基を中心骨格とし、少なくとも2つのパーフルオロポリエーテル構造を有するホスファゼン化合物と、を用いることにより、高温環境下で高い耐摩耗性を示し、より安価な潤滑剤を提供できる。以下、詳細について図1を用いながら説明する。
【0030】
本発明の一実施形態に係る潤滑剤が接点基材に塗布された場合、潤滑剤は接点基材5 上に潤滑層4を形成する。上記潤滑剤に含まれる、少なくとも2つのパーフルオロポリエーテル構造を有するホスファゼン化合物は、ホスファゼン基中の窒素原子が接点基材と相互作用することによって、接点基材に付着し、固着層3を主に形成すると考えられる。上記潤滑剤に含まれる、無官能パーフルオロポリエーテルは、上記固着層3の上に、潤滑性を有する流動層2を主に形成すると考えられる。上記パーフルオロポリエーテルは官能基を有さないため、流動層2と接触させながら摺動部材1を往復運動させる際、摺動部材1にも付着しにくい。そのため、パーフルオロポリエーテルが接点基材5上に流動層2を形成することによって、潤滑剤の摩耗を抑制することができる。
【0031】
本明細書において、「高い相溶性を示す」との表現は、従来よりも多い添加剤が、潤滑剤の主剤である無官能パーフルオロポリエーテルに溶解することを意図する。相溶性は、例えば、実施例にて後述するように、確認用サンプルを作製し、撹拌後の外観を目視することで評価される。
【0032】
本明細書において、「高い耐摩耗性を示す」との表現は、潤滑剤を接点基材の露出表面に塗布し、潤滑剤を塗布した接点基材に接触させながら摺動部材を往復運動させた際、潤滑層が摩耗しにくく、接点基材の耐久性が優れることを意図する。耐摩耗性は、例えば、実施例にて後述するように、振動摩擦摩耗試験機SRV5(Optimol社製)とデジタルマイクロスコープVHS-5000(KEYENCE社製)を用いて評価される。
【0033】
また、本発明の一実施形態に係る潤滑剤は、固形分を含まないことが好ましい。上記固形分の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、PVF(ポリビニルフルオライド)等のフッ素系微粒子が挙げられる。
【0034】
潤滑剤が「固形分を含まない」ことは、具体的に以下の場合を意図する。潤滑剤を、2000rpmで2時間遠心分離した場合に得られる沈殿物の量が、潤滑剤の重量に対して、0重量%~0.01重量%であれば、潤滑剤が「固形分を含まない」とみなす。または、潤滑剤をろ過した場合に得られる残渣の量が、潤滑剤の重量に対して、0重量%~0.01重量%であれば、潤滑剤が「固形分を含まない」とみなす。
【0035】
本発明の一実施形態に係るパーフルオロポリエーテルは、官能基を有さない。そのため、パーフルオロポリエーテルは、接点基材と相互作用することなく、潤滑性を有する流動層を主に形成すると考えられる。また、摺動部材とも相互作用しにくいため、流動層に接触させながら摺動部材を往復運動させた場合であっても、潤滑剤が摩耗しにくく、接点基材の耐久性が優れると考えられる。
【0036】
上記パーフルオロポリエーテルとしては、例えば、下記式(4)で表される構造を有する化合物を挙げることができる。
F-(CF(CF(CF))-(OCF(OCFCF(OCFCFCF(OCFCFCFCF(OCFCF(CF))-O(CF(CF(CF))-F・・・(4)
(上記式(4)中、a、b、c、d、eはそれぞれ0~200の実数であり、f、g、h、iはそれぞれ0~3の実数であり、a、b、c、d、e、f、g、h、iの少なくとも一つは1以上の実数である。)
上記式(4)中、a、b、c、d、eはそれぞれ0~200の実数であるが、3~200の実数であることが好ましく、60~120の実数であることがより好ましい。
【0037】
パーフルオロポリエーテルの数平均分子量は、1000~30000であり、1250~25000が好ましく、1500~20000がより好ましい。ここで数平均分子量は、例えば、JNM-ECX400(日本電子製)を用いた19F-NMRによって測定することができる。
【0038】
上記パーフルオロポリエーテルは、主鎖中に、下記式(5)で表される構造を有することがより好ましい。
-(OCF(OCFCF- ・・・(5)
上記式(5)中、a+bは10~300の実数であり、150~200の実数がより好ましい。上記式(5)中、b/aは0.5~2の実数であり、0.8~1.2の実数がより好ましい。
【0039】
上記式(5)中、a+bは10~300の実数であり、b/aは0.5~2の実数である限りにおいて、特に限定されないが、bは、3~200の実数であることが好ましく、60~120の実数であることがより好ましい。また、aは、60~120の実数であることが好ましい。
【0040】
上記パーフルオロポリエーテルは、下記式(6)で表される構造を有することがより好ましい。
CF-(OCF(OCFCF-OCF・・・(6)
上記式(6)中、a+bは10~300の実数であり、50~250の実数が好ましく、150~200の実数がより好ましい。上記式(6)中、b/aは0.5~2の実数であり、0.8~1.2の実数が好ましい。
【0041】
上記式(6)中、a、bは、a+bは10~300の実数であり、b/aは0.5~2の実数である限りにおいて、特に限定されないが、bは、3~200の実数であることが好ましく、60~120の実数であることがより好ましい。また、aは、3~200の実数であることが好ましく、60~120の実数であることがより好ましい。
【0042】
上記パーフルオロポリエーテルとしては、従来公知の市販の化合物を用いることができる。
【0043】
上記式(6)で表される構造を有する化合物の例としては、Fomblin(登録商標)M、Z(Solvay社製、a+bは40~180の実数であり、b/aは0.5~2の実数である)が挙げられる。
【0044】
上記市販の化合物としては、例えば、下記式(7)で表されるFomblin(登録商標) M30(分子量16000)
CF-[(OCFCF-(OCF]-OCF・・・(7)
上記式(7)で表され、分子量が5400であるFomblin(登録商標) M07、
下記式(8)で表される構造を有するFomblin(登録商標) Y(Solvay社製)
CF-(OCF(CF)CF(OCF-O-CF・・・(8)
(上記式(8)中、a、eはそれぞれ0~200の実数である)、
下記式(9)で表される構造を有するDemnum(登録商標)(ダイキン工業(Daikin Kogyo Co., Ltd., Japan)製)
CFCFCF-(OCFCFCF-O-CFCF・・・(9)
(上記式(9)中、dは0~200の実数である)、
および下記式(10)で表される構造を有するKrytox(登録商標)(DuPont Specialty Chemicals, DeepWater, N.J.)
CFCF-(OCFCF(CF))-F・・・(10)
(上記式(10)中、eは0~200の実数である)も挙げられる。
【0045】
上記潤滑剤中のホスファゼン化合物の濃度は、0.005重量%~45重量%が好ましく、0.5重量%~40重量%が好ましく、1.0重量%~10重量%がより好ましい。
【0046】
上記潤滑剤の全体量に対する、上記パーフルオロポリエーテルの含有量は、55重量%~99.5重量%が好ましく、90重量%~99重量%がより好ましい。
【0047】
また、潤滑剤の主剤である前記パーフルオロポリエーテルの構造と、前記ホスファゼン化合物が有するパーフルオロポリエーテル骨格の構造は、異なることが好ましい。これにより主剤と添加剤とが互いに補完し合うことができると考えられる。
【0048】
潤滑剤は、その性能を損なわない範囲で、パーフルオロポリエーテルおよびホスファゼン化合物以外のその他の成分を含んでいてもよい。例えば、本発明の一実施形態に係る潤滑剤は、さらに、溶媒を含んでいてもよい。
【0049】
上記溶媒の例としては、アセトン、メタノール、フッ素系溶媒が挙げられる。パーフルオロポリエーテルおよびホスファゼン化合物の溶解性がよいという観点から、上記溶媒は、フッ素系溶媒であることが好ましい。市販のフッ素系溶媒として、例えば、PF-5060、PF-5080、Novec-7100、Novec-7200(以上、3M製)、Vertrel-XF(三井・デュポンフロロケミカル製)、アサヒクリンAK-225(旭硝子株式会社製)などが適宜使用できる。
【0050】
溶媒の含有量は、潤滑剤の全量に対して、50重量%~99.5重量%が好ましく、80重量%~99重量%がより好ましい。また、溶媒の含有量は、潤滑剤の全量に対して、40重量%以下であってもよい。
【0051】
また、溶媒の含有量は、上記パーフルオロポリエーテルと上記ホスファゼン化合物との合計含有量100重量部に対して、50重量部~99.5重量部が好ましく、80重量部~99重量部がより好ましく、90重量部~99重量部がさらに好ましい。溶媒の含有量が、上記パーフルオロポリエーテルと上記ホスファゼン化合物との合計含有量に対して、50重量部~99.5重量部であれば、潤滑剤の粘度を十分に小さくすることができ、潤滑層の厚さを調節しやすいため好ましい。
【0052】
〔4.コネクタ接点部材〕
本発明の一実施形態に係るコネクタ接点部材は、潤滑層を備え、上記潤滑層が上記潤滑剤を含んでいればよい。
【0053】
本明細書において、「コネクタ」とは、電子部品およびケーブルを他の部品に着脱できるように設けられた部品を意図する。より具体的には、「コネクタ」の一例としては、メモリカード、メモリスティック等の可搬型記憶媒体用のコネクタ、イヤホンのコネクタ、ACアダプター用のコネクタが挙げられる。上記メモリカードの一例としては、SDメモリカード、miniSD(登録商標)カード、トランスフラッシュ(T-Flash)、microSD(登録商標)カード等のSDカード;SIMカードが挙げられる。上記メモリスティックの一例としては、USBメモリ等が挙げられる。
【0054】
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタ接点部材の構成を示す断面図である。コネクタ接点部材6は、接点基材5と摺動部材1との接触面に、本発明の一実施形態に係る潤滑剤を含んでいる潤滑層4を備えている。当該潤滑剤は、無官能パーフルオロポリエーテルと、ホスファゼン化合物と、を含んでいる。そのため、ホスファゼン化合物は、接点基材5とホスファゼン基との相互作用によって、接点基材5に付着し、固着層3を主に形成すると考えられる。また、パーフルオロポリエーテルは、上記固着層3の上に、潤滑性を有する流動層2を主に形成すると考えられる。
【0055】
本発明の一実施形態に係るコネクタ接点部材は、好ましくは、上記コネクタのメス端子の表面に上記潤滑層を備える。
【0056】
上記接点基材5は、一般的には端子とも呼ばれる。上記接点基材は、銅、銅合金、または鉄合金等の接点部材の最表面に、金または金合金をめっき方法または蒸着等によって施されていてもよい。
【0057】
上記摺動部材1は、メモリカード等のオス端子に対応する。
【0058】
〔5.コネクタ接点部材の製造方法〕
接点基材5において、摺動部材1との接触面に潤滑層4を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、接点基材5を潤滑剤に浸漬させて、潤滑剤を塗布する方法が挙げられる。また、接点基材5において、摺動部材1との接触面に上記潤滑剤を浸漬させた後、紫外線照射または熱処理を行ってもよい。
【0059】
紫外線照射または熱照射を行うことで、潤滑層4と接点基材5との間に、より強固な結合を形成できる。紫外線照射を行う場合には、潤滑層4および接点基材5の深部に影響を与えないことから、185nmまたは254nmの波長を主波長とする紫外線を用いることが好ましい。熱処理を行う場合の温度は、接点基材の大きさ等に合わせて適宜決定すればよいが、60~170℃であることが好ましく、60~120℃がより好ましく、60~80℃がさらに好ましい。熱処理の長さは、上記熱処理を行う場合の温度に合わせて適宜決定すればよい。
【実施例
【0060】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
〔ホスファゼン化合物のパーフルオロポリエーテルへの相溶性評価〕
<実施例1>
下記式で表される化合物1を以下のように合成した。
【0062】
((CF)-C-O)-(P)-(OCHCFCF-(OCFCFCFOCFCFCF
アルゴン雰囲気下、ヘキサフルオロキシレン(600g)、CFCFCFO(CFCFCFO)CFCFCHOHで表されるパーフルオロポリエーテル(600g)、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(77g)を混合し、氷浴で冷却しながらt-ブトキシカリウム(30g)を加えた。その後、室温で1時間撹拌し、さらに80℃で19時間加熱撹拌した。その後、氷浴で冷却し、次いでトリフルオロフェノール(260g)を加え、さらにt-ブトキシカリウム(150g)を少しずつ加えた。氷浴を外し、80℃で17時間加熱撹拌し、次いで水洗、脱水した。その後、分子蒸留により低沸成分を除去することにより、シクロトリホスファゼン基に4つのトリフルオロフェノキシ基と2つのパーフルオロポリエーテル構造を含む化合物1を550g得た。
【0063】
NMRを用いて行った化合物1の同定結果を示す。
【0064】
19F-NMR(溶媒:なし、基準物質:生成物中の-OCFCFCFO-を-129.7ppmとする。)
δ=-129.7ppm[40F、-OCFCFCFO-]
δ=-84.1ppm[80F、-OCFCFCFO-]
δ=-130.7ppm[4F、-OCFCFCF
δ=-84.7ppm[4F、-OCFCFCF
δ=-82.4ppm[6F、-OCFCFCF
δ=-64.8ppm[12F、-OC-CF
19F-NMRの結果、化合物1はq=10であることがわかった。
【0065】
Fomblin M30(1.99g)と、得られた化合物1(0.01g)とを用いて、化合物1の添加量が0.5重量%である相溶性確認サンプルを2.0g作製した。同様にして化合物1の添加量が1.0重量%、2.0重量%、3.0重量%、5.0重量%、7.0重量%、10.0重量%、15.0重量%、20.0重量%、40.0重量%である相溶性確認サンプルも作製した。
【0066】
<実施例2>
ヘキサクロロシクロトリホスファゼンを20g使用したこと以外は化合物1と同様にして、下記式で表される化合物2を得た。
【0067】
((CF)-C-O)-(P)-(OCHCFCF-(OCFCFCF-OCFCFCF
NMRを用いて行った化合物2の同定結果を示す。
【0068】
19F-NMR(溶媒:なし、基準物質:生成物中の-OCFCFCFO-を-129.7ppmとする。)
δ=-129.7ppm[80F、-OCFCFCFO-]
δ=-84.1ppm[160F、-OCFCFCFO-]
δ=-130.7ppm[6F、-OCFCFCF
δ=-84.7ppm[6F、-OCFCFCF
δ=-82.4ppm[9F、-OCFCFCF
δ=-64.8ppm[9F、-OC-CF
19F-NMRの結果、化合物2はq=13であることがわかった。化合物2はパーフルオロポリエーテル構造を3つ持つ。
【0069】
化合物1の代わりに化合物2を用いたこと以外は実施例1と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。
【0070】
<実施例3>
下記式で表される化合物3を以下のように合成した。
【0071】
(P)-(OCHCFCF-(OCFCFCF-OCFCFCF
アルゴン雰囲気下、ヘキサフルオロキシレン(370g)、CFCFCFO(CFCFCFO)CFCFCHOHで表されるパーフルオロポリエーテル(124g)、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(2g)、金属ナトリウム(2.6g)を混合し、80℃で2日間加熱撹拌し、水洗、脱水した後、分子蒸留により低沸成分を除去し、シクロトリホスファゼン基に6つのパーフルオロポリエーテル構造を含む化合物3を84g得た。
NMRを用いて行った化合物3の同定結果を示す。
19F-NMR(溶媒:なし、基準物質:生成物中の-OCFCFCFO-を-129.7ppmとする。)
δ=-129.7ppm[100F、-OCFCFCFO-]
δ=-84.1ppm[200F、-OCFCFCFO-]
δ=-130.7ppm[12F、-OCFCFCF
δ=-84.7ppm[12F、-OCFCFCF
δ=-82.4ppm[18F、-OCFCFCF
19F-NMRの結果、化合物3はq=8であることがわかった。
【0072】
化合物1の代わりに化合物3を用いたこと以外は実施例1と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。
【0073】
<実施例10>
CFCFCFO(CFCFCFO)CFCFCHOHで表されるパーフルオロポリエーテルの代わりに、CFCFCFO(CFCF(CF)O)CF(CF)CHOHの式で表されるパーフルオロポリエーテルを使用したこと以外は化合物1と同様にして、下記式で表される化合物4を得た。
【0074】
((CF)-C-O)-(P)-(OCH(CF)CF-(O(CF)CFCF-OCFCFCF
NMRを用いて行った化合物4の同定結果を示す。
【0075】
19F-NMR(溶媒:なし、基準物質:生成物中の-OCFCFCFを-130.0ppmとする。)
δ=-130.0ppm[4F、-OCFCFCF
δ=-82.4ppm[6F、-OCFCFCF
δ=-143.8ppm[22F、-(OCF)CFCF-]
δ=-134.5ppm[2F、-OCH(CF)CF-]
δ=-83.0ppm[6F、-OCH(CF)CF-]
δ=-64.3ppm[12F、-OC-CF
δ=-80.6ppm[114F、-(OCF)CFCF-、-OCFCFCF
19F-NMRの結果、化合物4はs=11であることがわかった。化合物4はパーフルオロポリエーテル構造を2つ持つ。
【0076】
化合物1の代わりに化合物4を用いたこと以外は実施例1と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。
【0077】
<比較例1>
市販のフッ素系潤滑油用添加剤であるモレスコホスファロール UP-3000(MORESCO社製)(以下、UP-3000とも称する)を化合物1の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。当該添加剤は、デムナム骨格を含むパーフルオロポリエーテル構造を1つ有する。
【0078】
<比較例2>
フッ素系潤滑油用添加剤であるA20H-2000(MORESCO社製)を化合物1の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。当該添加剤は、フォンブリン骨格を含むパーフルオロポリエーテル構造を1つ有する。
【0079】
<相溶性評価試験1>
作製した相溶性確認サンプルに攪拌子を投入し、25℃で10分攪拌後、目視で分離または濁りの有無を確認することにより、無官能パーフルオロポリエーテルに対するホスファゼン化合物の相溶性を評価した。ホスファゼン化合物が溶解した場合に〇、溶解しなかった場合に×と評価した。実施していない項目は‐と記す。
【0080】
実施例1~3、10、比較例1および2の添加剤、添加量、および相溶性評価の結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
表1より、化合物1~4は従来の製品であるUP-3000およびA20H-2000と比較すると、パーフルオロポリエーテルに対して、より高い相溶性を示した。このことから、パーフルオロポリエーテル構造を2つ以上有する化合物は、従来のパーフルオロポリエーテル構造を1つしか有しないUP-3000およびA20H-2000に比べて、パーフルオロポリエーテルへの高い相溶性を示すことがわかる。
【0082】
<相溶性評価試験2>
実施例1~3、10、比較例1および2の相溶性確認サンプルについて、試験温度を0℃にしたこと以外は、相溶性評価試験1と同様にして相溶性を評価した。
【0083】
実施例1~3、10、比較例1および2の添加剤、添加量、および相溶性評価の結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
表2より、低温環境下でも化合物1~4は高い相溶性を示した。したがって、化合物1~4は、低温環境下でも添加剤として使用可能である。
【0085】
<相溶性評価試験3>
実施例1~3、10、および比較例1の相溶性確認サンプルについて、試験温度を100℃にしたこと以外は、相溶性評価試験1と同様にして相溶性を評価した。
【0086】
添加剤およびそれぞれの添加量、相溶性評価の結果を表3に示す。
【0087】
【表3】
表3より、高温環境下でも化合物1~4は高い相溶性を示した。したがって、化合物1~4は、高温環境下でも添加剤として使用可能である。
【0088】
<実施例4>
Fomblin M07(1.99g)をFomblin M30の代わりに用いたこと以外は実施例1と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。
【0089】
<実施例5>
化合物1の代わりに化合物2を用いたこと以外は実施例4と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。
【0090】
<実施例6>
化合物1の代わりに化合物3を用いたこと以外は実施例4と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。
【0091】
<実施例11>
化合物1の代わりに化合物4を用いたこと以外は実施例4と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。
【0092】
<比較例3>
化合物1の代わりにUP-3000を用いたこと以外は実施例4と同様に、相溶性確認サンプルを作製した。
【0093】
<比較例4>
化合物1の代わりにA20H-2000を用いたこと以外は実施例4と同様に相溶性確認サンプルを作製した。
【0094】
<相溶性評価試験4>
実施例4~6および比較例3、4について、相溶性評価試験1と同様にして相溶性を評価した。添加剤およびそれぞれの添加量、相溶性評価の結果を表4に示す。
【0095】
【表4】
表4より、Fomblin M07に対しても化合物1~4は従来のUP-3000およびA20H-2000に比べて高い相溶性を示すことが分かった。したがって、化合物1~4は様々な種類のパーフルオロポリエーテルに対して、高い相溶性を示す添加剤として使用可能である。
【0096】
〔潤滑剤の耐摩耗性評価〕
<実施例7>
化合物1の添加量が0.5重量%となるようにFomblin M30に上述の化合物1を加えて、さらに攪拌子を投入し、25℃で10分攪拌することにより、耐摩耗性確認サンプルを作製した。同様にして、化合物1の添加量が1.0重量%である耐摩耗性確認サンプルも作製した。
【0097】
<実施例8>
化合物1の代わりに化合物2を用いたこと以外は実施例7と同様に耐摩耗性確認サンプルを作製した。
【0098】
<実施例9>
化合物1の代わりに化合物3を用いたこと以外は実施例7と同様に耐摩耗性確認サンプルを作製した。
【0099】
<実施例12>
化合物1の代わりに化合物4を用いたこと以外は実施例7と同様に耐摩耗性確認サンプルを作製した。
【0100】
<比較例5>
Fomblin M30のみを耐摩耗性確認サンプルとして用いた。
【0101】
<比較例6>
化合物1の代わりにUP-3000を用いたこと以外は実施例7と同様に耐摩耗性確認サンプルを作製した。
【0102】
<耐摩耗性の評価>
Optimol社製、振動摩擦摩耗試験機SRV 5およびSUJ2材のφ10ベアリング球を用い評価を行った。C5191材のリン青銅(28×18×1.0 mm)の表面に各サンプルを100μL滴下し試験温度100℃にて実施した。試験条件は、荷重10N、周波数10Hz、振幅1mm、試験時間30sにて慣らし運転した直後、試験条件を荷重50N、周波数50Hz、振幅1mm、試験時間20minにて本運転を実施し、耐摩耗性評価用試験片を得た。KEYENCE社製、デジタルマイクロスコープVHS-5000にて、図2のように試験片摩耗部位の長軸径11と短軸径12の測定を行った。得られた長軸径11、短軸径12の長さを以下の式に適用して、摩耗面積Cを求めて比較評価を行った。
長軸径11÷2=A
短軸径12÷2=B
A×B×π=C
実施例7~9、12、比較例5および6の添加剤および添加量、摩耗面積についての結果を表5に示す。
【0103】
【表5】
表5より、無官能パーフルオロポリエーテルに添加剤を加えるとより高い耐摩耗性を示すことが分かる。また、化合物1、2、4は、従来の添加剤であるUP-3000と同機能を有することがわかった。
【0104】
したがって、本発明の一実施形態に係る潤滑剤は、上述のように従来の添加剤よりも多く潤滑剤へ添加可能であり、それにより高い耐摩耗性を実現できることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の一態様は、コネクタ接点基材に塗布する潤滑剤として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 摺動部材
2 流動層
3 固着層
4 潤滑層
5 接点基材
6 コネクタ接点部材
11 長軸径
12 短軸径
図1
図2