IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アジアテック カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7410973鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法
<>
  • 特許-鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法 図1
  • 特許-鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法 図2
  • 特許-鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法 図3(a)
  • 特許-鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法 図3(b)
  • 特許-鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法 図4
  • 特許-鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法 図5
  • 特許-鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法 図6
  • 特許-鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/30 20060101AFI20231227BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20231227BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20231227BHJP
   C22C 38/04 20060101ALN20231227BHJP
   C22C 38/18 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
B23K35/30 340A
C21D9/00 A
B23K35/30 340P
B23K35/30 340C
C22C38/00 301Z
C22C38/04
C22C38/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021560374
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 KR2020005665
(87)【国際公開番号】W WO2021107295
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0152960
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521440909
【氏名又は名称】アジアテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジン, リー
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-152844(JP,A)
【文献】特開平09-076091(JP,A)
【文献】特開2009-226476(JP,A)
【文献】特開2018-187640(JP,A)
【文献】特開平08-025080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0116549(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1709636(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/30
C21D 9/00
C22C 38/00-38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗した鉄道車輪を再生するために前記摩耗した鉄道車輪を肉盛した後、前記肉盛された鉄道車輪を溶接して表面硬化層を形成するのに用いられる溶接部材において、
前記溶接部材が、炭素(C)0.1~0.25重量%、シリコン(Si)1.0~2.0重量%、マンガン(Mn)2.2~3.3重量%、ニッケル(Ni)0.45~0.65重量%、クロム(Cr)0.85~2.45重量%、モリブデン(Mo)0.01~0.4重量%、チタン(Ti)0.01~0.05重量%、バナジウム(V)0.03~0.10重量%、ニオブ(Nb)0.01~0.10重量%、不可避不純物および残部鉄からなることを特徴とする鉄道車輪の再生用溶接部材。
【請求項2】
摩耗した鉄道車輪を第1溶接部材で溶接して肉盛する鉄道車輪肉盛ステップと、
前記肉盛された鉄道車輪を第2溶接部材で溶接して表面硬化層を形成する表面硬化層形成ステップと、を含み、
前記第1溶接部材が、炭素0.05~0.15重量%、シリコン0.2~1.0重量%、マンガン1.0~2.0重量%、クロム0.6~1.2重量%、不可避不純物および残部鉄からなり
前記第2溶接部材が、炭素(C)0.1~0.25重量%、シリコン(Si)1.0~2.0重量%、マンガン(Mn)2.2~3.3重量%、ニッケル(Ni)0.45~0.65重量%、クロム(Cr)0.85~2.45重量%、モリブデン(Mo)0.01~0.4重量%、チタン(Ti)0.01~0.05重量%、バナジウム(V)0.03~0.10重量%、ニオブ(Nb)0.01~0.10重量%、不可避不純物および残部鉄からなり
前記鉄道車輪が、貨車、客車、都市鉄道および地下鉄のいずれか1つの車輪であり、
前記鉄道車輪肉盛ステップの前に、前記摩耗した鉄道車輪を予熱する鉄道車輪予熱ステップ、をさらに含み、
前記鉄道車輪予熱ステップが、250~300℃の温度範囲で行われ、
前記表面硬化層形成ステップの後、前記溶接された車輪を後熱処理する鉄道車輪後熱処理ステップ、をさらに含み、
前記鉄道車輪後熱処理ステップが、240~260℃の温度範囲で4時間行われ、
前記鉄道車輪後熱処理ステップが、
240~260℃の温度範囲で4時間後熱処理を行った後、260℃の温度で時間あたり40℃の速度で4時間徐々に冷却して100℃まで冷却させるステップと、
大気上で100℃以下の温度を維持しながら徐々に冷却させるステップと、をさらに含むことを特徴とする鉄道車輪の再生方法。
【請求項3】
前記鉄道車輪肉盛ステップおよび前記表面硬化層形成ステップにおける前記溶接が、ガスシールド溶接、オープンアーク溶接、サブマージドアーク溶接および自動溶接のいずれか1つの方法で行われることを特徴とする請求項2に記載の鉄道車輪の再生方法。
【請求項4】
前記鉄道車輪後熱処理ステップの後、前記後熱処理が行われた車輪を切削加工または研削加工する鉄道車輪加工ステップ、をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪の再生方法。
【請求項5】
前記切削加工または研削加工が、CNC旋盤機械(CNC turning)を用いて行われることを特徴とする請求項に記載の鉄道車輪の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法に関し、詳しくは、車輪の肉盛に適した溶接部材とともに熱処理過程により車輪を肉盛溶接し、表面硬化層を形成し、車輪の金属組織を強化させて車輪を再生できるように実現された鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、鉄道車両は、複数の車両が一編成をなしてレール上を走り、このために、鉄道車両の車輪は特殊な形態から構成されるが、このような鉄道車両の車輪の形態が図1に示されている。
【0003】
図1を参照すれば、列車の車輪20は、列車が移動する時にレール10の上部と接するタイヤ部分21と、レール10の内部で車輪の離脱防止のためのフランジ部分22とからなる。
【0004】
図2に示されるように、このような鉄道車輪は、列車がレール上を走ったり、停止したりする時、レールとの摩擦によって摩耗(wear)するが、この時、一編成の列車に含まれている複数の車輪は、レールの状態や、列車の運行特性によってその摩耗の程度がそれぞれ異なり、1つの車輪もその摩耗した程度が異なる偏摩耗が発生し得る。図2は、摩耗した鉄道車輪を示す写真であり、図2に示されるように、車輪に偏摩耗が発生した場合、車両の運行において乗車感が低下することはもちろん、安全上様々な問題を誘発させる。
【0005】
一方、鉄道車輪とレールとの間の応力が大きくなると、車輪とレールの表面に塑性変形が増加して材料の破損に至るが、このような現象をスポーリング(spalling)という。スポーリングは車輪の表面で発生するが、これは高い摩擦力が主な原因である。スポーリングにおける亀裂は、表面から浅い角度で半径方向に開始し、方向を円周方向に変えて進行した後、再び表面側に進行し、表面から小片が剥がれていく。また、車輪がレール上で局部的に滑りながらレールの接触部位に局部的であるものの平坦な部分(flat)を作る。
【0006】
この部分は高い温度で急冷するので、状態変化が起きてマルテンサイト(martensite)区域を形成し、この区域は脆性が非常に強くて亀裂伝播が起こりやすくて鉄道車輪にスポーリング(spalling)現象が発生する。
【0007】
一方、列車の走行時にレールと車輪は転動接触を受ける。レールの転動接触を受ける回数が多くなると、レールと接触する車輪外部の表層金属が疲労する。また、車両の駆動、制動時に車輪が空転・滑走すれば、摩擦熱によって車輪の表層部分が硬くて壊れやすい金属組織に熱変態する。この金属疲労と白色層を起点として亀裂が生じる場合がある。これらの亀裂を放置したまま車輪を運行し続けると、車輪の表面に凹みや剥離が生じてレール折損に至る場合があるが、このような損傷を包括してシェリング(shelling)という。このようなシェリング(shelling)は、車輪表面の凹みによって、車両運行時に衝撃荷重が加えられて騒音や車輪破壊などにつながる。
【0008】
したがって、一定期間運行した列車は、その車輪の摩耗、スポーリング(spalling)およびシェリング(shelling)の程度を測定して、その程度が一定範囲を超える車輪は取替が行われなければならない。この時、車輪の取替による費用などの問題を解消するために、従来は、偏摩耗(wear)、スポーリング(spalling)およびシェリング(shelling)が進行した車輪を検査して、内部クラックが存在しない車輪は、補修および加工により再生して再使用してきた。
【0009】
従来は、鉄道車両の車輪を再生するために、内部クラック確認用探傷装置およびこれを備えた車輪再生装置を用いて、損傷が発生した車輪を切削加工して再生させる方法を使用してきた。しかし、このような切削加工による車輪の再生方法は、摩耗した鉄道車輪を再生するために車輪を切削して再使用し、車輪が一定の大きさ以下に小さくなるとこれを廃棄する方法であるので、車輪の寿命が短くなるというデメリットがあった。
【0010】
これにより、車輪を切削加工して再生する代わりに、車輪の肉盛に適した溶接部材を用いて車輪を肉盛溶接し、表面硬化層を形成して再生する方法が使用された。しかし、このような肉盛溶接による車輪の再生方法の場合にも、再生された車輪が鉄鋼組織の特性によって、再生される前の車輪と同じく、摩耗やスポーリング(spalling)およびシェリング(shelling)現象が持続的に発生するというデメリットがあった。
【0011】
このような摩耗やスポーリング(spalling)およびシェリング(shelling)現象は、鉄道車輪の鉄鋼組織の特性および機械的性質に大きな影響を受ける。特に、最近、鉄道車両の高速化と荷重の増加によって摩耗やスポーリング(spalling)およびシェリング(shelling)現象のような鉄道車輪の損傷発生が増加しており、これによって走行安定性の低下および維持補修費用の増加、騒音振動による乗車感の低下などの問題が発生している。
【0012】
図3は、鉄道車輪の金属組織を比較して示す写真である。
図3(a)は、既存の鉄道車輪の金属組織であるパーライト(pearlite)金属組織を示す写真であり、図3(b)は、マルテンサイト(martensite)とベイナイト(bainite)の金属組織が混在していることを示す写真である。両金属組織の差は、主に化学記号FeCで表すセメンタイト(cementite)と呼ばれる鉄と炭素化合物(炭化物)の形態に始まる。炭化物は、マルテンサイト(martensite)が混在しているベイナイト組織(b)では粒状に分散しているが、パーライト組織(a)では板状の層状に配列されていることが分かる。
【0013】
一般的に、ベイナイト金属組織がパーライト金属組織に比べて摩耗には弱いが、スポーリングやシェリングを防止する特性にはより優れている。したがって、鉄道車輪には、パーライト組織よりはベイナイト組織を有する金属を使用するのが有利である。
【0014】
したがって、摩耗やスポーリング(spalling)およびシェリング(shelling)などのような鉄道車両の車輪から発生する損傷を最小化するために、鉄道車輪の鉄鋼組織を変更させ、これにより、鉄道車輪の機械的性質を改善して鉄道車輪の再生効果を改善させる方策に関する研究の必要性が増大してきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の問題を解決するためのものであって、車輪の肉盛に適した溶接部材とともに熱処理過程により車輪を肉盛溶接し、表面硬化層を形成し、既存のパーライト金属組織からなる鉄道車両の車輪をベイナイト金属組織を有する鉄道車両の金属組織に変更して車輪を再生できるように実現された鉄道車輪の再生用溶接部材およびこれを用いた鉄道車輪の再生方法を提供することを、目的とする。
【0016】
また、本発明は、鉄道車輪の再生方法を適用するための鉄道車輪の再生装置および鉄道車輪の再生方法により再生された鉄道車輪を提供することを、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を達成するために、本発明による鉄道車輪の再生用溶接部材は、摩耗した鉄道車輪を再生するために前記摩耗した鉄道車輪を肉盛した後、前記肉盛された鉄道車輪を溶接して表面硬化層を形成するのに用いられる溶接部材において、前記溶接部材が、炭素(C)0.1~0.25重量%、シリコン(Si)1.0~2.0重量%、マンガン(Mn)2.2~3.3重量%、ニッケル(Ni)0.45~0.65重量%、クロム(Cr)0.85~2.45重量%、モリブデン(Mo)0.01~0.4重量%、チタン(Ti)0.01~0.05重量%、バナジウム(V)0.03~0.10重量%、ニオブ(Nb)0.01~0.10重量%、不可避不純物および残部鉄を含むことを特徴とする。
【0018】
上記の課題を達成するために、本発明による鉄道車輪の再生方法は、摩耗した鉄道車輪を第1溶接部材で溶接して肉盛する鉄道車輪肉盛ステップと、前記肉盛された鉄道車輪を第2溶接部材で溶接して表面硬化層を形成する表面硬化層形成ステップと、を含み、前記第1溶接部材が、炭素0.05~0.15重量%、シリコン0.2~1.0重量%、マンガン1.0~2.0重量%、クロム0.6~1.2重量%、不可避不純物および残部鉄を含んでなり、前記第2溶接部材が、炭素(C)0.1~0.25重量%、シリコン(Si)1.0~2.0重量%、マンガン(Mn)2.2~3.3重量%、ニッケル(Ni)0.45~0.65重量%、クロム(Cr)0.85~2.45重量%、モリブデン(Mo)0.01~0.4重量%、チタン(Ti)0.01~0.05重量%、バナジウム(V)0.03~0.10重量%、ニオブ(Nb)0.01~0.10重量%、不可避不純物および残部鉄を含んでなり、前記鉄道車輪が、貨車、客車、都市鉄道および地下鉄のいずれか1つの車輪であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による鉄道車輪の再生用溶接部材によれば、鉄道車輪と類似の性質を示しながらも、硬度が高くて鉄道車輪の表面硬化層として用いることができ、既存のパーライト金属組織からなる鉄道車両の車輪をベイナイト金属組織を有する鉄道車両の車輪に変更させることができ、これによって再生された鉄道車輪の損傷を防止できる効果がある。
また、本発明による鉄道車輪の再生方法によれば、損傷が発生した鉄道車輪を元の大きさに肉盛させ、表面硬化層を形成し、第2溶接部材の組成を変更し、予熱処理と後熱処理のプロセスを調整して、既存のパーライト金属組織をベイナイト金属組織に変更させることにより、再生された鉄道車輪の損傷発生を最小化できるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】レール上に配置された鉄道車輪の一般的な形態を示す図である。
図2】摩耗した鉄道車輪を示す写真である。
図3】鉄道車輪の金属組織を比較して示す写真である。
図4】本発明による鉄道車輪の再生方法の工程を示すフローチャートである。
図5】本発明による鉄道車輪の再生方法により摩耗した鉄道車輪に肉盛溶接を行うことを示す写真である。
図6】本発明による鉄道車輪の再生方法により肉盛溶接が行われた鉄道車輪を示す写真である。
図7】本発明による鉄道車輪の再生方法においてCNC旋盤機械を用いて鉄道車輪を加工することを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を図面に例示し本文に詳しく説明しようとする。しかし、これは、本発明を特定の開示形態について限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0022】
他に定義されない限り、技術的または科学的な用語を含む、本文に使われるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有している。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本出願で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0023】
先に説明したように、鉄道車輪にはパーライト組織よりはベイナイト組織を有する金属を用いることが有利である。したがって、本発明は、既存のパーライト金属組織からなる鉄道車両の車輪をベイナイト金属組織を有する鉄道車両の車輪に変更するために、第2溶接部材の組成を変更し、予熱処理と後熱処理のプロセスを調整することを特徴とする。
以下、図面を参照して、本発明を詳しく説明する。
【0024】
図4は、本発明による鉄道車輪の再生方法の工程を示すフローチャートである。
図4を参照すれば、本発明による鉄道車輪の再生方法は、鉄道車輪肉盛ステップS200と、表面硬化層形成ステップS300とを含む。
【0025】
一方、鉄道車輪は、鋳造状態で組織の安定と硬度を高めるために、基本的に、高炭素、低マンガン、低クロムで設計をすることが普遍的であり、例えば、摩耗した鉄道車輪は、炭素0.01~0.75重量%、シリコン0.15~1.0重量%、マンガン0.5~0.9重量%、不可避不純物および残部鉄を含むことができる。また、前記摩耗した鉄道車輪は、クロム0.1~0.3重量%をさらに含むことができる。
【0026】
前記鉄道車輪肉盛ステップS200は、摩耗した鉄道車輪を前記第1溶接部材で溶接を行って、摩耗する前の鉄道車輪の大きさに肉盛してその大きさを成長させるステップである。
【0027】
摩耗した鉄道車輪を切削して再生する従来の方法とは異なり、本発明による鉄道車輪の再生方法は、摩耗した鉄道車輪を元の大きさに肉盛させて再生し、再摩耗が起きてもこれを廃棄せずに引き続き肉盛できるので、車輪の使用周期が延長されて新しい車輪の製作に費やされる各種原資材と炭素排出量を減少させ、製作費用および維持補修費用を節減できる効果がある。また、肉盛された車輪に表面硬化層を形成して初期摩耗時間を延ばすことができて、車輪の使用周期を延長させることができるというメリットがある。
【0028】
前記鉄道車輪肉盛ステップS200で摩耗した鉄道車輪を溶接して肉盛するのに用いられる第1溶接部材は、組織の安定および硬度を高めるために、低炭素、高マンガン、高クロムで設計することができる。この時、溶接部が鉄道車輪と類似の性質を示しながらも、肉盛溶接を行うのに適切な組成を有するために、前記第1溶接部材は、炭素0.05~0.15重量%、シリコン0.2~1.0重量%、マンガン1.0~2.0重量%、クロム0.6~1.2重量%、不可避不純物および残部鉄を含むことができる。
【0029】
この時、前記第1溶接部材は、炭素0.06~0.09重量%、シリコン0.4~0.8重量%、マンガン1.0~1.5重量%、クロム0.8~1.0重量%、不可避不純物および残部鉄を含むことがさらに好ましい。
【0030】
前記第1溶接部材は、炭素を0.05~0.15重量%含むことができる。
前記第1溶接部材が前記摩耗した鉄道車輪の炭素含有量より少ない量の炭素を添加する場合、溶接中の摩耗した鉄道車輪への炭素の注入を防ぐことができるというメリットがある。もし、前記第1溶接部材が炭素を0.05重量%未満で含む場合には、強度が低下する問題点があり、前記第1溶接部材が炭素を0.15重量%超過で含む場合には、溶接中に車輪に炭素が注入されることがあり、脆性が生じる問題点がある。
【0031】
前記第1溶接部材は、シリコンを0.2~1.0重量%含むことができる。
前記第1溶接部材が前記摩耗した鉄道車輪のシリコン含有量より少ない量のシリコンを添加する場合、溶接の作業性を高め、ビーズ(bead、溶接作業で母材と溶接棒が溶けて生じた帯状の長めの波形の溶着痕)の形状、大きさ、連続性を良くすることができる。もし、前記第1溶接部材がシリコンを0.2重量%未満で含む場合には、硬度が低下する問題点があり、前記第1溶接部材がシリコンを1.0重量%超過で含む場合には、作業性の低下およびビーズの形状、大きさ、連続性が良くない問題点がある。
【0032】
前記第1溶接部材は、マンガンを1.0~2.0重量%含むことができる。
前記第1溶接部材が前記摩耗した鉄道車輪のマンガン含有量より過剰のマンガンを添加する場合、溶接時、ビーズの形状を広げるようにして溶接が緻密に行われるようにできる。もし、前記第1溶接部材がマンガンを1.0重量%未満で含む場合には、脱酸剤として作用できない問題点があり、前記第1溶接部材がマンガンを2.0重量%超過で含む場合には、ビーズが広がらない問題点がある。
【0033】
前記第1溶接部材は、クロムを0.6~1.2重量%含むことができる。
前記第1溶接部材が前記摩耗した鉄道車輪のクロム含有量より過剰に添加する場合には、溶接された車輪の強度を高めることができる。この時、車輪自体の場合、高い炭素含有量が強度を高めるのに対し、溶材の場合、低炭素で設計されるので、強度を高めるために、クロムを過剰に添加することができる。もし、前記第1溶接部材がクロムを0.6重量%未満で含む場合には、溶接された車輪の強度が低下する問題点があり、前記第1溶接部材がクロムを1.2重量%超過で含む場合には、むしろ強度が低下する問題点がある。
【0034】
前記第1溶接部材は、不可避不純物を含むことができ、前記不可避不純物は、リン、硫黄、モリブデンを含むことができる。
前記表面硬化層形成ステップS300は、前記鉄道車輪肉盛ステップS200で肉盛された鉄道車輪を第2溶接部材で溶接して表面硬化層を形成するステップである。具体的には、前記鉄道車輪肉盛ステップS200で大きさが肉付けされた鉄道車輪に、前記第2溶接部材で表面を硬化して鉄道のレールよりは硬度が低く、既存に再生された鉄道車輪よりは硬度が高い表面硬化層を形成するステップである。
【0035】
一方、前記表面硬化層形成ステップS300で前記肉盛された鉄道車輪を溶接して表面硬化層を形成するのに用いられる第2溶接部材は、鉄道車輪と類似の性質を示しながらも、車輪の表面を硬化できる溶接用材料として適切な組成からなるため、これを鉄道車輪の表面を硬化するための溶接材として用いることができる。
【0036】
前記第2溶接部材は、炭素(C)0.1~0.25重量%、シリコン(Si)1.0~2.0重量%、マンガン(Mn)2.2~3.3重量%、ニッケル(Ni)0.45~0.65重量%、クロム(Cr)0.85~2.45重量%、モリブデン(Mo)0.01~0.4重量%、チタン(Ti)0.01~0.05重量%、バナジウム(V)0.03~0.10重量%、ニオブ(Nb)0.01~0.10重量%、不可避不純物および残部鉄を含む。
【0037】
前記第2溶接部材は、炭素(C)を0.1~0.25重量%含むことができる。
前記第2溶接部材が前記第1溶接部材の炭素含有量より多い量の炭素を添加する場合、硬度が高くて車輪の表面を硬化することができる。もし、前記第2溶接部材が炭素を0.1重量%未満で含む場合には、強度が低下する問題点があり、前記第2溶接部材が炭素を0.25重量%超過で含む場合には、脆性が生じる問題点がある。
【0038】
前記第2溶接部材は、シリコン(Si)を1.0~2.0重量%含むことができる。
前記第2溶接部材が前記摩耗した鉄道車輪のシリコン含有量より少ない量のシリコンを添加する場合、溶接の作業性を高め、ビーズの形状、大きさ、連続性を良くすることができる。もし、前記第2溶接部材がシリコンを1.0重量%未満で含む場合には、硬度が低下する問題点があり、前記第2溶接部材がシリコンを2.0重量%超過で含む場合には、作業性の低下およびビーズの形状、大きさ、連続性が良くない問題点がある。
【0039】
前記第2溶接部材は、マンガン(Mn)を2.2~3.3重量%含むことができる。
前記第2溶接部材が前記摩耗した鉄道車輪のマンガン含有量より多量のマンガンを添加する場合、溶接時、ビーズの形状を広げるようにして溶接が緻密に行われるようにできる。前記第2溶接部材がマンガンを2.2重量%未満で含む場合には、脱酸剤として作用できない問題点があり、前記第2溶接部材がマンガンを3.3重量%超過で含む場合には、ビーズが広がらない問題点がある。
【0040】
前記第2溶接部材は、ニッケル(Ni)を0.45~0.65重量%含むことができる。
前記第2溶接部材がニッケルを含むことにより、溶接された鉄道車輪の強度および硬度が向上できる。
【0041】
前記第2溶接部材は、クロム(Cr)を0.85~2.45重量%含むことができる。
前記第2溶接部材が前記摩耗した鉄道車輪のクロム含有量より過剰に添加する場合には、溶接された車輪の強度を高めることができる。この時、車輪自体の場合、高い炭素含有量が強度を高めるのに対し、溶材の場合、低炭素で設計されるので、強度を高めるために、クロムを過剰に添加することができる。もし、前記第2溶接部材がクロムを0.85重量%未満で含む場合には、溶接された車輪の強度が低下する問題点がある。クロム含有量が2.45重量%を超える場合、クロムの高い価格によって費用が上昇する問題点がある。
【0042】
前記第2溶接部材は、モリブデン(Mo)を0.01~0.4重量%含むことができる。
モリブデン(Mo)は、ベイナイト組織生成のための臨界冷却速度を減少させ、析出硬化に寄与する。前記第2溶接部材がモリブデン(Mo)を0.01重量%未満で含む場合には、溶接時、瞬間的に3000℃に近づく場合に、高温での耐摩耗性が十分でない問題点があり、前記第2溶接部材がモリブデンを0.4重量%超過で含む場合には、モリブデンの高い価格によって費用が上昇する問題点がある。
【0043】
前記第2溶接部材は、チタン(Ti)を0.01~0.05重量%含むことができる。
チタン(Ti)は、析出硬化に寄与し、粒子サイズを微細化する機能をするもので、0.01重量%未満で含む場合、析出硬化および粒子サイズ微細化の効果が大きくなく、0.05重量%を超える場合、析出硬化の効果が大きくないだけでなく、チタン(Ti)の高い価格によって費用が上昇する問題点がある。
【0044】
前記第2溶接部材は、バナジウム(V)を0.03~0.10重量%含むことができる。
バナジウム(V)は、析出硬化に寄与するために圧延鉄鋼製品に添加される成分であり、0.03重量%未満で含む場合、強度向上の効果を得ることができず、0.10重量%を超える場合、析出硬化の効果が大きくないだけでなく、バナジウム(V)の高い価格によって費用が上昇する問題点がある。
【0045】
前記第2溶接部材は、ニオブ(Nb)を0.01~0.10重量%含むことができる。
ニオブ(Nb)は、結晶粒の微細化と再結晶の温度を高めることにより、強度を増加させる機能をする。前記ニオブ(Nb)を0.01重量%未満で含む場合、強度向上の効果を得ることができず、0.10重量%を超える場合、結晶粒の微細化および強度向上の効果が大きくないだけでなく、ニオブ(Nb)の高い価格によって費用が上昇する問題点がある。
【0046】
前記第2溶接部材は、不可避不純物を含むことができ、前記不可避不純物は、リン、硫黄を含むことができる。
前記第2溶接部材の組成をこのように変更することにより、鉄道車輪の鉄鋼組織をパーライト(pearlite)組織からベイナイト(bainite)組織に変化させることができ、これにより、スポーリング(spalling)およびシェリング(shelling)のような鉄道車両の車輪の損傷を防止することができる。
【0047】
この時、前記鉄道車輪肉盛ステップS200および前記表面硬化層形成ステップS300における溶接は、ガスシールド溶接、オープンアーク溶接、サブマージドアーク溶接および自動溶接のいずれか1つの方法で行うことができる。
【0048】
ガスシールド溶接(Gas sheil welding)は、フラックスコアードアーク溶接(Flux cored arc welding)とも呼ばれ、溶接棒の大きさが1.2または1.6φの時に使用する方法であり、アークの保護膜は、シールドガス(shield gas、COガスまたはNガス)がその役割をし、入熱が少ないというメリットがある。
【0049】
オープンアーク溶接(Open arc welding)は、溶接棒の大きさが2.4~3.2φの時に使用する方法であり、最も現代的な方法である。作業性が最も良く、大容量溶接時に使用可能である。
【0050】
サブマージドアーク溶接(submerged arc welding)は、溶接棒の大きさが2.4~4.8φの時に使用し、作業性が良いものの、保護膜フラックス(flux)を用いる時、無駄な時間(dead time)が発生するため、オープンアーク溶接よりは作業性が低下する問題点がある。
【0051】
前記自動溶接は、水平面、円面をデジタル化された数値によって自動で形状に沿って行うものであってもよい。前記自動溶接は、アルゴリズムをリアルタイムに作動させて、自動溶接と溶着状態の監視を融合して用いることができ、判断確率が高く、リアルタイム全数検査が可能であるというメリットがある。
【0052】
この時、前記自動溶接は、溶着状態監視装置(monitering system)を用いて行うことができるが、前記自動溶接装置がこれに限定されるものではない。
【0053】
は、本発明による鉄道車輪の再生方法により摩耗した鉄道車輪に肉盛溶接を行うことを示す写真であり、図は、本発明による鉄道車輪の再生方法により肉盛溶接が行われた鉄道車輪を示す写真である。
【0054】
一方、図4に示されるように、本発明による鉄道車輪の再生方法は、前記鉄道車輪肉盛ステップS200を行う前に、前記摩耗した鉄道車輪を予熱する鉄道車輪予熱ステップS100をさらに含むことができる。
【0055】
前記鉄道車輪予熱ステップS100により、金属の溶融接合を容易にし、溶接後の残留応力を軽減することができる
【0056】
この時、前記予熱は、250~300℃の温度で行うことができる。
もし、前記鉄道車輪の予熱を250℃未満の温度で行う場合には、溶融接合が容易な効果および溶接後の残留応力の軽減効果が低下し、溶接後、亀裂などの不良が発生する問題点があり、前記鉄道車輪の予熱を300℃を超える温度で行う場合には、前記範囲内での予熱による効果を十分に得ることができるため、温度を上昇させるための費用が増加する問題点がある。
【0057】
一方、図4に示さないが、本発明による鉄道車輪の再生方法は、前記鉄道車輪予熱ステップS100を行う前に、車輪の亀裂の程度および摩耗量を検査するステップをさらに含むことができる。
【0058】
車輪内に亀裂がある場合には、前記鉄道車輪予熱ステップS100および前記鉄道車輪肉盛ステップS200を進行させることが不可能なため、亀裂の程度を検査することができ、摩耗量を検査して肉盛すべき溶接量を測定することができる。好ましくは、超音波自動磁気システム(Ultra sonic auto system)を用いて亀裂の程度および摩耗量を検査することができるが、前記検査装置がこれに限定されるものではない。
【0059】
また、図4に示さないが、本発明による鉄道車輪の再生方法は、前記鉄道車輪予熱ステップS100および前記鉄道車輪肉盛ステップS200を行う前に、車輪の圧面部位を切削するステップをさらに含むことができる。
【0060】
前記摩耗した鉄道車輪は、長い時間鉄道レールと接触して、表面の硬化が発生し得るため、この部位を切削して除去することにより、溶接部位間の付着力を向上させることができる。
【0061】
一方、本発明による鉄道車輪の再生方法は、前記表面硬化層形成ステップS300を行った後、前記表面硬化層形成ステップS300で溶接された車輪を後熱処理する鉄道車輪後熱処理ステップS400をさらに含むことができる。前記後熱処理により溶接中に発生した残留応力を除去することができる。
【0062】
前記後熱処理を行った後、これを長い時間徐々に冷やすと、パーライト組織に形成され、これを非常に短い時間急冷(quenching)させると、マルテンサイト組織に形成される。パーライト組織は、スポーリングおよびシェリングなどに弱く、マルテンサイト組織は、脆性が非常に強くてスポーリング現象が発生する。また、ベイナイト組織の場合、スポーリングおよびシェリングを防止するには優れているが、摩耗特性はパーライト組織に比べて劣る。
【0063】
したがって、本発明では、パーライト組織またはマルテンサイト組織よりはベイナイト組織に近く金属組織を形成できるように熱処理工程のプロセスを調整したことを特徴とする。
【0064】
本発明による鉄道車輪の再生方法において、後熱処理は、240~260℃の温度で4時間行うことができる。次いで、250℃から100℃まで時間あたり40℃の速度で4時間徐々に冷却させる。以後、100℃以下を維持しながら大気状態で徐々に冷却させる。
【0065】
つまり、本発明による後熱処理ステップでは、後熱処理後、恒温に徐々に冷却させることにより、金属組織をパーライト組織よりはベイナイト組織に近い金属組織に形成することができる。
【0066】
前記後熱処理を240℃未満の温度で行う場合には、残留応力を除去する効果が低下する問題点があり、前記後熱処理を260℃を超える温度で行う場合には、再生された車輪の強度が低下する問題点がある。また、前記後熱処理を4時間未満で行う場合には、残留応力を除去する効果が低下する問題点があり、前記後熱処理を4時間を超えて行う場合には、再生された車輪の強度が低下する問題点がある。
【0067】
本発明による鉄道車輪の再生方法は、前記鉄道車輪後熱処理ステップS400を行った後、前記鉄道車輪後熱処理ステップS400で熱処理された鉄道車輪を切削加工または研削加工する鉄道車輪加工ステップS400をさらに含むことができる。このような鉄道車輪加工ステップS400により再生された鉄道車輪のディメンション(dimension)、粗さおよび真円度を満足させることができる。この時、前記研削加工は、CNC旋盤機械(CNC TURNING)を用いて行うことができるが、前記研削装置がこれに限定されるものではない。
【0068】
以下、本発明を実施例を通じてより具体的に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の説明のためのものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
ステップ1:直径が820mm、フランジ(Flange)が23mmの場合であり、炭素(C)0.66重量%、シリコン(Si)0.22重量%、マンガン(Mn)0.72重量%、不可避不純物および残部鉄を組成とする摩耗した鉄道車輪を、溶接トーチに垂直となるように装着した。前記摩耗した鉄道車輪の亀裂の有無および摩耗量を検査して溶接を行えるか否かと、溶接を行う程度を決定した。
【0069】
前記摩耗した鉄道車輪に表面硬化が発生した部分を切削で除去した後、鉄道車輪を軸と分離して、車輪単独でポジショナ(positioner)に装着し、前記摩耗した鉄道車輪を溶接しやすいように250~300℃に予熱した。(鉄道車輪予熱ステップ、S100)
【0070】
制御システムを用いて前記摩耗した鉄道車輪を線速度が分あたり最小600mmとなるように回転させながら、前記摩耗した鉄道車輪の上部外縁の母材上に、炭素(C)0.09重量%、シリコン(Si)0.51重量%、マンガン(Mn)1.32重量%、クロム(Cr)0.92重量%、不可避不純物および残部鉄を組成とする第1溶接部材を用いて、溶接厚さが15~20mmとなるように肉盛溶接を実施した。(鉄道車輪肉盛ステップ、S200)
【0071】
溶接条件は、電圧26~35V、電流350~450A、ワイヤチップ(wire tip)および上部外縁の母材表面との間隔は25~35mmであった。
【0072】
ステップ2:前記ステップ1の溶接条件と同一の条件で前記ステップ1の肉盛溶接が実施された車輪に、炭素(C)0.18重量%、シリコン(Si)1.22重量%、マンガン(Mn)2.55重量%、ニッケル(Ni)0.52重量%、クロム(Cr)1.8重量%、モリブデン(Mo)0.09重量%、チタン(Ti)0.02重量%、バナジウム(V)0.03重量%、ニオブ(Nb)0.02重量%、不可避不純物および残部鉄を組成とする第2溶接部材を用いて、溶接厚さが9~10mmとなるように表面硬化層形成のための溶接を実施した。(表面硬化層形成ステップ、S300)
【0073】
前記再生された鉄道車輪を250℃で4時間後熱処理を行った後、時間あたり40℃の速度で4時間徐々に冷却して100℃まで冷却させ、以後、大気上で100℃以下の温度を維持しながら徐冷して溶接後の応力を除去した。(鉄道車輪後熱処理ステップ、S400)
【0074】
前記後熱処理が行われた鉄道車輪をディメンション、粗さおよび真円度を満足するようにCNC旋盤機械で加工を実施して鉄道車輪を再生した。(鉄道車輪加工ステップ、S500)
【0075】
参考例
ステップ1:他の条件は実施例1と同一であり、前記摩耗した鉄道車輪は、炭素(C)0.7重量%、シリコン(Si)0.25重量%、マンガン(Mn)0.7重量%、クロム(Cr)0.17重量%、不可避不純物および残部鉄を含む組成であり、第1溶接部材は、炭素(C)0.77重量%、シリコン(Si)0.5重量%、マンガン(Mn)1.1重量%、クロム(Cr)0.9重量%、不可避不純物および残部鉄を含む組成として、実験を行った。
【0076】
ステップ2:他の条件は実施例1と同一であり、第2溶接部材は、炭素(C)0.19重量%、シリコン(Si)1.42重量%、マンガン(Mn)2.8重量%、ニッケル(Ni)0.55重量%、クロム(Cr)2.0重量%、モリブデン(Mo)0.16重量%、チタン(Ti)0.03重量%、バナジウム(V)0.05重量%、ニオブ(Nb)0.02重量%、不可避不純物および残部鉄を含む組成として、同様に行って鉄道車輪を再生した。
【0077】
<実施例3>
ステップ1:他の条件は実施例1と同一であり、前記摩耗した鉄道車輪は、炭素(C)0.06重量%、シリコン(Si)0.4重量%、マンガン(Mn)1.0重量%、クロム(Cr)0.8重量%、不可避不純物および残部鉄を含む組成として、実験を行った。
【0078】
ステップ2:他の条件は実施例1と同一であり、第2溶接部材は、炭素(C)0.2重量%、シリコン(Si)1.6重量%、マンガン(Mn)3.0重量%、ニッケル(Ni)0.58重量%、クロム(Cr)2.0重量%、モリブデン(Mo)0.2重量%、チタン(Ti)0.04重量%、バナジウム(V)0.06重量%、ニオブ(Nb)0.04重量%、不可避不純物および残部鉄を含む組成として、同様に行って鉄道車輪を再生した。
【0079】
<実施例4>
ステップ1:他の条件は実施例1と同一であり、第1溶接部材が炭素(C)0.09重量%、シリコン(Si)0.8重量%、マンガン(Mn)1.5重量%、クロム(Cr)1.0重量%、不可避不純物および残部鉄を含む組成として、実験を行った。
【0080】
ステップ2:他の条件は実施例1と同一であり、第2溶接部材は炭素(C)0.22重量%、シリコン(Si)1.7重量%、マンガン(Mn)3.2重量%、ニッケル(Ni)0.6重量%、クロム(Cr)2.4重量%、モリブデン(Mo)0.3重量%、チタン(Ti)0.05重量%、バナジウム(V)0.07重量%、ニオブ(Nb)0.05重量%、不可避不純物および残部鉄を含む組成として、同様に行って鉄道車輪を再生した。
【0081】
<実験例1>
前記実施例1で製造された摩耗した鉄道車輪の再生過程を観察し、その結果を図5図7に示した。
図1に示すように、摩耗した鉄道車輪は、長期間レールとの接触によって相当量の摩耗が発生した状態である。
【0082】
図5に示すように、硬化された表面を切削でカッティング(cutting)した面に溶接が進行しながらビーズが適切な溶接電圧(amp volt)で溶接が行われることを確認することができる。
【0083】
図6に示すように、ステップ1の溶接が行われた後に、ビーズの形状および大きさが適切に形成され、ビーズの連続性があり溶接が均一に行われたことを確認することができる。
【0084】
図7に示すように、ステップ2の後熱処理後、CNC旋盤機械で車輪の表面をディメンション、粗さおよび真円度を満足するように加工が行われることを確認することができる。
このように、前記実施例の再生方法により車輪が再生されることを確認することができた。
【0085】
以上説明したように、本発明による鉄道車輪の再生用溶接部材によれば、鉄道車輪と類似の性質を示しながらも、硬度が高くて鉄道車輪の表面硬化層として用いることができ、再生された車輪の金属組織を変更させることができ、これによって再生された鉄道車輪の初期摩耗時間を延ばすことができる効果がある。また、本発明による鉄道車輪の再生方法によれば、損傷が発生した鉄道車輪を元の大きさに肉盛させ、表面硬化層を形成し、溶接部材の組成変更および予熱および後熱処理過程により車輪の金属組織を変更させることにより、再生された鉄道車輪の損傷発生を最小化できるというメリットがある。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5
図6
図7