(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】生体内留置チューブ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/848 20130101AFI20231227BHJP
A61F 2/94 20130101ALI20231227BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20231227BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61F2/848
A61F2/94
A61M1/00 160
A61M25/00 500
A61M25/00 600
(21)【出願番号】P 2022018032
(22)【出願日】2022-02-08
(62)【分割の表示】P 2019525364の分割
【原出願日】2018-06-07
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017115569
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小磯 智春
(72)【発明者】
【氏名】劉 嘉穎
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 陽平
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-538060(JP,A)
【文献】特表2007-519486(JP,A)
【文献】実開平01-152636(JP,U)
【文献】特開2001-224554(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0060894(US,A1)
【文献】国際公開第2012/057313(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/848
A61F 2/94
A61M 1/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側と遠位側を有する筒状部材と、
前記筒状部材の近位側に、近位側の基部と遠位側の自由端とを有する近位フラップと、
前記筒状部材の遠位側に、遠位側の基部と近位側の自由端とを有する遠位フラップとを含み、
前記近位フラップの前記基部よりも近位側と前記遠位フラップの前記基部よりも遠位側の少なくともいずれか一方に、
前記遠位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置と、
前記近位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置との間の前記筒状部材の平均外径よりも最大外径が大きい大径部を有し、
前記筒状部材は、前記筒状部材の径方向外方であって、前記遠位フラップの前記基部と前記自由端との中点よりも遠位
側に遠位側第1支持体を有し、
前記筒状部材は、前記筒状部材の径方向外方であって、前記遠位フラップの前記自由端よりも近位側かつ前記筒状部材の中点よりも遠位側にさらに遠位側第2支持体を有し、
前記
遠位側第1支持体の遠位端よりも遠位側に、前記筒状部材が前記
遠位側第1支持体から露出している部分が
ある生体内留置チューブ。
【請求項2】
近位側と遠位側を有する筒状部材と、
前記筒状部材の近位側に、近位側の基部と遠位側の自由端とを有する近位フラップと、
前記筒状部材の遠位側に、遠位側の基部と近位側の自由端とを有する遠位フラップとを含み、
前記筒状部材は、前記遠位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置と、前記近位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置の間の前記筒状部材の平均外径よりも最小外径が小さい小径部を有し、
前記近位フラップの前記基部と前記近位フラップが閉状態の前記近位フラップの前記自由端より近位側の位置の間と、前記遠位フラップの前記基部と前記遠位フラップが閉状態の前記遠位フラップの前記自由端より遠位側の位置の間の少なくともいずれか一方に前記小径部が設けられており、
前記筒状部材は、前記筒状部材の径方向外方であって、前記遠位フラップの前記基部と前記自由端との中点よりも遠位
側に遠位側第1支持体を有し、
前記筒状部材は、前記筒状部材の径方向外方であって、前記遠位フラップの前記自由端よりも近位側かつ前記筒状部材の中点よりも遠位側にさらに遠位側第2支持体を有し、
前記
遠位側第1支持体の遠位端よりも遠位側に、前記筒状部材が前記
遠位側第1支持体から露出している部分が
ある生体内留置チューブ。
【請求項3】
前記筒状部材は、前記小径部において穴を有している請求項2に記載の生体内留置チューブ。
【請求項4】
前記筒状部材は、前記筒状部材の径方向外方であって
、前記近位フラップの前記自由端よりも遠位側かつ前記筒状部材の中点よりも近位
側にさらに支持体を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【請求項5】
前記筒状部材は、前記筒状部材の近位側から順次、第1領域と第2領域とを有し、
前記近位フラップの前記基部よりも遠位側で、前記第1領域と前記第2領域の色が互いに異なる請求項1~4のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【請求項6】
前記遠位フラップまたは前記近位フラップの肉厚は、前記筒状部材の近位端の肉厚よりも薄い請求項1~5のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【請求項7】
前記近位フラップの肉厚は、前記近位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置と、前記遠位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置の間の前記筒状部材の平均肉厚以上である請求項1~6のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【請求項8】
前記近位フラップまたは遠位フラップを構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)は、前記遠位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置と、前記近位フラップの前記自由端に対応する前記筒状部材の位置の間の前記筒状部材を構成する材料の平均硬度(タイプAデュロメータ硬さ)よりも高い請求項1~7のいずれか一項に記載の生体内留置チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内管腔の閉塞または狭窄を防ぐために生体内に留置されるチューブおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントに代表される生体内留置チューブ、特に、胆管用または膵管用のステントは、胆管や膵管等の生体内管腔が狭窄または閉塞することにより生じる胆道閉塞症、黄胆、胆道がん等の様々な疾患を治療するための医療器具である。生体内留置チューブは、胆汁の胆管内から十二指腸側への排出や、狭窄または閉塞部位の病変部を内側から拡張することによる管腔内径の維持を目的として生体管腔に留置される。生体内留置チューブの内腔にがん細胞等の病変部の組織が入り込んで生体内留置チューブの内腔が閉塞または狭窄すると、生体内留置チューブを交換する必要がある。
【0003】
生体内留置チューブは金属材料から構成されているものと、樹脂材料から構成されているものがある。上述のような治療において、樹脂材料から構成されている生体内留置チューブが使用されることがある。
【0004】
まず、従来の生体内留置チューブについて
図16を用いて説明する。
図16に示すように、樹脂材料から構成されている生体内留置チューブ201は、近位端202と遠位端203を有し、遠近方向に延在している。生体内留置チューブ201は近位側の外表面に切り込みを入れて近位フラップ205を形成し、遠位側の外表面に切り込みを入れて遠位フラップ208を形成しているものが一般的である(例えば、特許文献1~3)。近位フラップ205および遠位フラップ208は、生体内留置チューブ201を生体内管腔に固定する機能を有している。生体内留置チューブ201が胆管ステントの場合、例えば、遠位フラップ208は、胆管から十二指腸側に生体内留置チューブが脱落しないように胆管の狭窄部(閉塞部)よりも遠位側に配置され、近位フラップ205は、胆管内に生体内留置チューブ201の近位端202が奥に入り込まないように十二指腸の乳頭付近に配置される。
【0005】
通常、近位フラップ205は、生体内留置チューブ201の近位側から遠位側、かつ径方向の外方に向かって延在している。また、近位フラップ205は、生体内留置チューブ201の近位端202が胆管内へ入り込むことを防ぐために、径方向の外方に向かって開くように形成されている。このような生体内留置チューブ201を内視鏡の管路に挿入すると、管路内壁と近位フラップ205が接触して近位フラップ205が折れ曲がるためチューブを通過させにくく、生体内留置チューブ201を所望の留置部位まで送達しにくいという問題があった。近位フラップ205の折れ曲がりを防止するため、内視鏡内の管路の分岐部の一部を閉鎖することにより、生体内留置チューブが挿通する部分の管路径を減少させる導入部材が知られている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-36043号公報
【文献】特開平9-56809号公報
【文献】特開平5-192389号公報
【文献】特開2006-87712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている生体内留置チューブは、筒状部材の外周を軸方向に切り込み、フラップを形成している。その結果、筒状部材のフラップの下部には、フラップと同程度の大きさであって、筒状部材の外部と内腔を連通する穴が存在している。例えば、十二指腸の乳頭付近にがんの病変部がある場合には、生体内留置チューブの近位フラップ付近が病変部に接する可能性がある。近位フラップ付近に病変部が入り込む程度の大きさの穴が形成されていると、当該穴を介して生体内留置チューブの内腔にがん細胞が侵入し、生体内留置チューブの内腔を閉塞または狭窄するおそれがある。
【0008】
特許文献2に開示されている生体内チューブは、筒状部材の側壁を浅く切り込み、近位フラップを形成している。このような生体内チューブは、近位フラップの強度が低く、生体内留置チューブの近位端が胆管内等に入り込むことを十分に防止できないという問題や、近位フラップが破断しやすいという問題があった。
【0009】
特許文献3に開示されている生体内留置チューブは、外側チューブと内側チューブの間に補強用のブレードが配設されている。このブレードにより、生体内留置チューブ全体の強度が高まる。そのため、このような生体内留置チューブは、生体内留置チューブを内視鏡の管路内に通過させにくく、所望の留置部位まで送達しにくいという問題があった。
【0010】
さらに、特許文献4のような導入部材は、その外径が一般的な内視鏡の管路の内径よりも大きくなる構成であるため、一般的な内視鏡の管路に挿入することができず、汎用性が低く使用しにくいという問題があった。
【0011】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フラップの強度が高く、かつ内視鏡の管路等の通過を円滑にすることができる生体内留置チューブおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決することができた生体内留置チューブの製造方法は、一方端と他方端を有する生体内留置チューブの製造方法であって、第1筒状部材の内腔に第2筒状部材の他方端を配置する第1工程と、第1筒状部材と第2筒状部材を接合する第2工程と、第2筒状部材よりも軸方向の長さが短い第3筒状部材の内腔に第2筒状部材を配置する第3工程と、第2筒状部材と第3筒状部材を接合する第4工程と、基部と自由端とを有するフラップを含む第4筒状部材の他方端側の内腔に第2筒状部材の一方端を配置する第5工程と、第2筒状部材と第4筒状部材を接合する第6工程を含むことを特徴とするものである。
【0013】
上記生体内留置チューブの製造方法において、第2筒状部材の肉厚は、第1筒状部材、第3筒状部材、および第4筒状部材の肉厚よりも薄いことが好ましい。
【0014】
上記生体内留置チューブの製造方法において、第4筒状部材のフラップの肉厚は、第1筒状部材および第3筒状部材の少なくともいずれか一方の肉厚よりも厚いことが好ましい。
【0015】
上記生体内留置チューブの製造方法において、第4筒状部材のフラップの肉厚は、第1筒状部材および第3筒状部材の少なくともいずれか一方の肉厚よりも薄いことが好ましい。
【0016】
上記生体内留置チューブの製造方法において、第4筒状部材を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)は、第1筒状部材、第2筒状部材、および第3筒状部材を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)よりも高いことが好ましい。
【0017】
上記生体内留置チューブの製造方法において、第1筒状部材の一方端の内径は、第1筒状部材の他方端の内径よりも大きいことが好ましい。
【0018】
上記生体内留置チューブの製造方法は、第4工程において、第1筒状部材と第3筒状部材を接合することが好ましい。
【0019】
上記生体内留置チューブの製造方法は、第6工程において、第3筒状部材と第4筒状部材を接合することが好ましい。
【0020】
上記生体内留置チューブの製造方法において、第6工程の前に、第3筒状部材の一方端を第4筒状部材のフラップの基部よりも一方端側または他方端側に配置することが好ましい。
【0021】
上記生体内留置チューブの製造方法において、第2工程および第4工程;または第2工程、第4工程、および第6工程を同じ加熱工程により行うことが好ましい。
【0022】
上記生体内留置チューブの製造方法において、第1工程の前に、第2筒状部材の内腔に芯材を配置する工程を含むことが好ましい。
【0023】
上記生体内留置チューブの製造方法において、第6工程の後に、第4筒状部材のフラップの基部よりも一方端側と、第4筒状部材のフラップの基部よりも他方端側かつ第1筒状部材の中点よりも一方端側の少なくともいずれか一方の径方向外方に支持体を配置する工程を含むことが好ましい。
【0024】
上記生体内留置チューブにおいて、近位側と遠位側を有する筒状部材と、筒状部材の近位側に、近位側の基部と遠位側の自由端とを有する近位フラップと、筒状部材の遠位側に、遠位側の基部と近位側の自由端とを有する遠位フラップとを含み、近位フラップの基部よりも近位側と遠位フラップの基部よりも遠位側の少なくともいずれか一方に、遠位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置と、近位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置の間の筒状部材の平均外径よりも最大外径が大きい大径部を有することが好ましい。
【0025】
上記生体内留置チューブにおいて、近位側と遠位側を有する筒状部材と、筒状部材の近位側に、近位側の基部と遠位側の自由端とを有する近位フラップと、筒状部材の遠位側に、遠位側の基部と近位側の自由端とを有する遠位フラップとを含み、筒状部材は、遠位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置と、近位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置の間の筒状部材の平均外径よりも最小外径が小さい小径部を有し、小径部は、近位フラップの基部よりも遠位側であり、かつ近位フラップが閉状態の場合の近位フラップの自由端が、小径部の遠位端よりも遠位側である位置と、遠位フラップの基部よりも近位側であり、かつ遠位フラップが閉状態の場合の遠位フラップの自由端が、小径部の近位端よりも近位側である位置の少なくともいずれか一方に設けられていることが好ましい。
【0026】
上記生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、小径部において穴を有していることが好ましい。
【0027】
上記生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、筒状部材の径方向外方であって、遠位フラップの基部と自由端との中点よりも遠位側、遠位フラップの自由端よりも近位側かつ筒状部材の中点よりも遠位側、近位フラップの基部と自由端との中点よりも近位側、および近位フラップの自由端よりも遠位側かつ筒状部材の中点よりも近位側の少なくともいずれか一つに支持体を有することが好ましい。
【0028】
上記生体内留置チューブにおいて、筒状部材は、筒状部材の近位側から順次、第1領域と第2領域とを有し、近位フラップの基部よりも遠位側で、第1領域と第2領域の色が互いに異なることが好ましい。
【0029】
上記生体内留置チューブにおいて、遠位フラップまたは近位フラップの肉厚は、筒状部材の近位端の肉厚よりも薄いことが好ましい。
【0030】
上記生体内留置チューブにおいて、近位フラップの肉厚は、近位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置と、遠位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置の間の筒状部材の平均肉厚以上であることが好ましい。
【0031】
上記生体内留置チューブにおいて、近位フラップまたは遠位フラップを構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)は、遠位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置と、近位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置の間の筒状部材を構成する材料の平均硬度(タイプAデュロメータ硬さ)よりも高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる製造方法にて生体内留置チューブが製造されることにより、生体内留置チューブ自体は柔軟であるがフラップの強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施の形態における生体内留置チューブのデリバリーシステムの側面図を表す。
【
図2】本発明の実施の形態における第1工程の工程断面図を表す。
【
図3】本発明の実施の形態における第2工程の工程断面図を表す。
【
図4】本発明の実施の形態における第3工程の工程断面図を表す。
【
図5】本発明の実施の形態における第4工程の工程断面図を表す。
【
図6】本発明の実施の形態における第5工程の工程断面図を表す。
【
図7】本発明の実施の形態における第6工程の工程断面図を表す。
【
図8】本発明の実施の形態における第6工程の前の状態の一例の工程断面図を表す。
【
図9】本発明の実施の形態における第6工程の前の状態の他の一例の工程断面図を表す。
【
図10】本発明の実施の形態における第6工程の後の状態の一例の工程断面図を表す。
【
図11】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの側面図を表す。
【
図12】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの一例の側面図を表す。
【
図13】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの他の一例の側面図を表す。
【
図14】本発明の実施の形態における生体内留置チューブの他の一例における近位フラップが閉状態の側面図を表す。
【
図15】本発明の実施の形態における生体内留置チューブのさらに他の一例の側面図を表す。
【
図16】従来の生体内留置チューブの側面図を表す。
【
図17】従来の生体内留置チューブにおける近位フラップが閉状態の近位フラップ付近の拡大側面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0035】
生体内留置チューブは、生体内留置チューブを病変部まで搬送するために、生体内留置チューブを設置する部位を有するカテーテル等のデリバリーシステム(搬送装置)に取り付けて用いられる。
【0036】
本発明において、近位側とは生体内留置チューブの延在方向に対して使用者(術者)の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向(すなわち処置対象側の方向)を指す。また、生体内留置チューブの近位側から遠位側への方向を軸方向と称する。径方向とは筒状部材の半径方向を指し、径方向において内方とは筒状部材の軸中心側に向かう方向を指し、径方向において外方とは内方と反対側に向かう放射方向を指す。
【0037】
なお、以下の実施形態においては、一方端が近位端である場合、つまり近位側のフラップの製造工程を記述するが、本実施形態は、遠位側のフラップの製造にも適応することができる。その場合、実施形態の記述は、遠近方向の記述を逆にして理解されるべきである。なお、実施形態は、両方のフラップに適用してもよく、片方のフラップのみに適用してもよい。
【0038】
本発明の生体内留置チューブの製造方法について詳しく説明する前に、まず、
図1を参照して、生体内留置チューブを留置対象部位に送達するデリバリーシステムの構成例を説明する。
図1にデリバリーシステムの一例を示す。デリバリーシステム2は、インナーカテーテル3の径方向の外方にアウターカテーテル4と生体内留置チューブ1が配置されている。生体内留置チューブ1とアウターカテーテル4とは縫合糸5によって結合されている。生体内留置チューブ1とアウターカテーテル4とが結合されていることにより、病変部へ生体内留置チューブ1を搬送する際に、生体内管腔において生体内留置チューブ1を引き戻し、位置の微調節をすることが可能となる。そのため、病変部の適切な位置に生体内留置チューブ1を留置しやすくなる。アウターカテーテル4の径方向の外方に挿入補助チューブ6が配置されている。挿入補助チューブ6によって、生体内留置チューブ1の搬送途中にフラップを折り返りにくくすることができ、かつ、挿入時にデリバリーシステム2のキンクを防止することができる。その結果、生体内留置チューブ1の搬送を円滑に行うことができる。
【0039】
本発明において、一方端と他方端を有する生体内留置チューブの製造方法は、第1筒状部材の内腔に第2筒状部材の他方端を配置する第1工程と、第1筒状部材と第2筒状部材を接合する第2工程と、第2筒状部材よりも軸方向の長さが短い第3筒状部材の内腔に第2筒状部材を配置する第3工程と、第2筒状部材と第3筒状部材を接合する第4工程と、基部と自由端とを有するフラップを含む第4筒状部材の他方端側の内腔に第2筒状部材の一方端を配置する第5工程と、第2筒状部材と第4筒状部材を接合する第6工程を含むことを特徴とするものである。以下、
図2~
図7を用いて本発明における生体内留置チューブの製造方法について、説明する。以下の説明において、一方端は近位端を示し、他方端は遠位端を示すものとするが、遠位端を一方端として、近位端を他方端としてもよい。なお、
図2~
図7において、紙面左方向が生体内留置チューブの遠位側に相当し、紙面右方向が生体内留置チューブの近位側に相当する。
【0040】
上記工程を経て製造される生体内留置チューブの長軸方向の長さや長軸に垂直な断面の外径は、病変部や適用部位の大きさに応じて適宜設定することができる。一般的には、生体内留置チューブの長軸方向の長さは、200mm以上700mm以下であり、長軸に垂直な断面の外径は1.5mm以上4.2mm以下が好ましい。また、生体内留置チューブの肉厚は、0.2mm以上0.6mm以下が好ましい。生体内留置チューブの長軸に垂直な断面の形状は、病変部に応じて適宜選択することができる。体腔内を傷つけないようにするために、断面の形状を、円形状、楕円形状等とすることができる。
【0041】
第1筒状部材10、第2筒状部材20、第3筒状部材30、および第4筒状部材40は、軸方向に延在している筒状の部材であり、例えば押出成形によって成形された樹脂チューブを用いることができる。第1筒状部材10、第3筒状部材30、および第4筒状部材40は、主に生体内留置チューブの径方向の外側に配置される。第2筒状部材20は、主に生体内留置チューブの径方向の内側に配置される。
【0042】
各筒状部材10、20、30、40およびフラップ43を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。なお、各筒状部材を構成する材料は、他の筒状部材を構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。第2筒状部材20を構成する材料と他の筒状部材10、30、40を構成する材料が同一であれば、後述する工程での、第2筒状部材20と他の筒状部材との接合性が良好となるため、第1筒状部材10と第2筒状部材20を構成する材料を同じにすることができる。また、例えば、第3筒状部材30と第4筒状部材40を構成する材料を、第1筒状部材10を構成する材料よりも強度の高い材料とすることにより、生体内留置チューブ1の近位側の強度を上げ、遠位側は柔軟性の高いものとすることができる。
【0043】
図2に示すように、第1工程は、第1筒状部材10の内腔に第2筒状部材20の遠位端22を配置する工程である。上記第1工程において、第1筒状部材10の内腔への第2筒状部材20の遠位端22の配置は、第1筒状部材10の近位端11側からその内腔に第2筒状部材20の遠位端22を挿入してもよい。第1筒状部材10の内腔に第2筒状部材20の遠位端22を配置しやすくするために、第1筒状部材10の近位端11の内径は、第2筒状部材20の遠位端22の内径より大きいことが好ましい。
【0044】
第1筒状部材10の肉厚は、0.2mm以上0.6mm以下であることが好ましい。第1筒状部材10の内径は、軸方向全体にわたって一定であってもよく、軸方向の位置によって異なっていてもよい。第1筒状部材10の近位端11の内径は、第2筒状部材20の遠位端の外径よりも大きいことが好ましい。第1筒状部材10の近位端11の内径がこのように構成されていることにより、第1筒状部材10の内腔に第2筒状部材20の遠位端22を配置しやすくなる。また後述する第2工程を行いやすくなる。第1筒状部材10の近位端11を拡径して、第2筒状部材20の遠位端の外径よりも大きくすることができる。また、第2筒状部材20の遠位端22を減径して、第1筒状部材10の近位端の内径よりも小さくすることができる。拡径部および減径部は、径変化が階段状でもよく、テーパ状であってもよい。
【0045】
また、上記第1工程において、第1筒状部材10の内腔への第2筒状部材20の遠位端22の配置は、第1筒状部材10の近位端部にスリット(図示せず)を入れておき、第2筒状部材20の遠位端22に第1筒状部材10を被せてもよい。第1筒状部材10のスリットが設けられた部分が径方向外方に拡がるため、第1筒状部材10のスリットが設けられた部分に第2筒状部材20の遠位側を挿入しやすくなる。
【0046】
ここで、スリットの長さは、第1筒状部材10の近位端11から10mm以内の長さであることが好ましい。第1筒状部材10を径方向外方に拡げやすくするために、スリットは第1筒状部材10の内外に貫通していることが好ましい。スリットは、第1筒状部材10の軸方向に沿って設けられることが好ましい。スリットがこのように第1筒状部材10に設けられていることにより、第1筒状部材10のスリットが設けられた部分を径方向外方に拡げやすくなる。
【0047】
第1筒状部材10にスリットを設ける方法は特に制限されず、例えば、回転刃、チューブカッター、レーザーによる切断を用いることができる。
【0048】
スリットは第1筒状部材10に1または複数設けられてもよく、例えば2以上、3以上、または5以下であることも許容される。スリットが第1筒状部材10に複数設けられる場合、各スリットが第1筒状部材10の周方向において等間隔に配置されていることが好ましい。複数のスリットが第1筒状部材10にこのように設けられていることにより、第1筒状部材10のスリットが設けられた部分を径方向外方に拡げやすくなる。
【0049】
第2筒状部材20の内径は、軸方向全体にわたって一定であってもよく、軸方向の位置によって異なっていてもよい。第2筒状部材20の内径は、第2筒状部材20の遠位端22の内径と同じ大きさであってもよく、異なっていてもよい。第2筒状部材20の内径と第1筒状部材10の近位端の内径が同じ大きさであれば、生体内留置チューブ1の体液の排出機能を妨げにくくなる。そのため、第2筒状部材20の内径は、第1筒状部材10の近位端の内径に等しい、または近いことが好ましい。
【0050】
第2筒状部材20の肉厚は、第1筒状部材10、後述する第3筒状部材30、および第4筒状部材40の肉厚よりも薄いことが好ましい。第2筒状部材20の肉厚は、第1筒状部材10の肉厚の0.2倍以上が好ましい。第2筒状部材20の肉厚がこのように構成されていることにより、第2筒状部材20を第1筒状部材10等の他の部材に配置する作業が行いやすくなる。また、第2筒状部材20の肉厚がより薄ければ、第2筒状部材と他の部材との接続部分の段差が少なくなり、生体内留置チューブ1のデリバリー性能が向上する。
【0051】
図3に示すように、第2工程は、第1筒状部材10と第2筒状部材20を接合する工程である。第1筒状部材10の近位端11を含む部分と第2筒状部材20の遠位端22を含む部分を互いに接合する。詳細には、第1筒状部材10の近位端部の内表面と、第1筒状部材10の内腔に配置した第2筒状部材20の遠位端部の外表面とを接合し、固定する。第1筒状部材10と第2筒状部材20を接合する方法としては、例えば、熱や高周波による溶着、接着剤による接着等が挙げられる。中でも、第1筒状部材10と第2筒状部材20を溶着することが好ましい。第1筒状部材10と第2筒状部材20を溶着することにより、第1筒状部材1と第2筒状部材20を強固に接合することが可能となる。
【0052】
図4に示すように、第3工程は、第3筒状部材30の内腔に第2筒状部材20を配置する工程である。
【0053】
ここで、第2筒状部材20は、遠近方向に延在している筒状の部材であり、第1筒状部材10、第3筒状部材30、後述する第4筒状部材40を接続するために用いられる。また、第3筒状部材30は、遠近方向に延在している筒状の部材であり、第1筒状部材10、第2筒状部材20、後述する第4筒状部材40を接続するために用いることもできる。第3筒状部材30の近位端31は、第4筒状部材の遠位端42と接していることが好ましい。
【0054】
第3筒状部材30の遠位端32から近位端31までの軸方向の長さは、第2筒状部材20の遠位端22から近位端21までの軸方向の長さよりも短い。第3筒状部材30の内腔への第2筒状部材20の配置は、第1筒状部材10の内腔に第2筒状部材20の遠位端22を配置する第1工程と同様の方法で行うことができるが、中でも、第3筒状部材30の遠位端32側から第2筒状部材20の近位端21を挿入することが好ましい。このように第3筒状部材30の内腔へ第2筒状部材20を配置することにより、第3筒状部材30の内腔に第2筒状部材20を容易かつ確実に配置することができる。
【0055】
第3筒状部材30の内径は、第2筒状部材20の外径よりも大きいことが好ましい。第3筒状部材30の内径がこのように構成されていることにより、第3筒状部材30の内腔に第2筒状部材20を配置することが容易となる。また、後述する第4工程が行いやすくなる。
【0056】
第3筒状部材30の外径は、第1筒状部材10の外径の0.9倍以上であることが好ましく、第1筒状部材10の外径の1.3倍以下であることが好ましい。第3筒状部材30の外径がこのように構成されていることにより、後述する第4工程を行う際に、第1筒状部材10と第3筒状部材30との間に段差が少ない仕上がりとなる。
【0057】
第3筒状部材30の肉厚は、第1筒状部材10の肉厚と同じであってもよく、異なっていてもよい。第3筒状部材30の肉厚が、第1筒状部材10の肉厚の0.6倍以上であることが好ましく、第1筒状部材10の肉厚の1.3倍以下であることが好ましい。第3筒状部材30の肉厚がこのように構成されていることにより、後述する第4工程を行う際に、第1筒状部材10と第2筒状部材20との接合強度と、第2筒状部材20と第3筒状部材30との接合強度の差が小さくなる。なお、第3筒状部材30の肉厚と第2筒状部材20の肉厚を加えた厚さが、第1筒状部材10の肉厚と等しいことが最も好ましい。
【0058】
図5に示すように、第4工程は、第2筒状部材20と第3筒状部材30を接合する工程である。第2筒状部材20の外表面と第3筒状部材30の内表面とを互いに接合し、固定する。第2筒状部材20と第3筒状部材30を接合する方法としては、第1筒状部材10と第2筒状部材20を接合する第2工程と同様の方法で行うことができるが、中でも、溶着によって接合することが好ましい。第2筒状部材20と第3筒状部材30を溶着によって接合することにより、第2筒状部材20と第3筒状部材30を強固に接合することが可能となる。また、第2工程と第4工程を同じ加熱工程により行うことが好ましい。第2工程と第4工程を同じ加熱工程によって行うことにより、第1筒状部材10および第3筒状部材30と第2筒状部材20の接合強度のばらつきを抑制することができる。
【0059】
また、第4工程において、第1筒状部材10と第3筒状部材30とが接合されてもよい。詳細には、第1筒状部材10の近位端11と第3筒状部材30の遠位端32を含む部分を互いに接合する。第1筒状部材10の近位端11の端面と第3筒状部材30の遠位端32の端面を接合してもよく、第1筒状部材10の近位端部の外表面と第3筒状部材30の遠位端部の内表面とを接合してもよい。第1筒状部材10と第3筒状部材30とは隣り合って配置されるため、第2筒状部材20と第3筒状部材30を接合する工程において、効率的に接合することができる。
【0060】
図6に示すように、第5工程は、第4筒状部材40の遠位側の内腔に第2筒状部材20の近位端21を配置する工程である。第4筒状部材40は、軸方向に延在している筒状の部材であり、近位側の基部44と遠位側の自由端45とを有するフラップ43を含んでいる。基部44とは、フラップ43が第4筒状部材40から立ち上がる基点であり、自由端45とは、第4筒状部材40から立ち上がったフラップ43の先端である。第4筒状部材40の遠位側の内腔への第2筒状部材20の近位端21の配置は、第1工程および第3工程と同様の方法で行うことができるが、中でも、第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位側の内腔に第2筒状部材20の近位端21を挿入して配置することが好ましい。第4筒状部材40の遠位側の内腔に第2筒状部材20の近位端21をこのようにして配置することにより、容易かつ確実に配置を行うことができる。
【0061】
第4筒状部材40は、第1筒状部材10や第2筒状部材20、第3筒状部材30と同様に、例えば押出成形によって成形された樹脂チューブにフラップ43を形成したものを用いることができる。フラップ43の形成は、フラップ43となる別部材を樹脂チューブに接合する、樹脂チューブの遠位端において、フラップ43となる部分以外の箇所を切り離してフラップ43を形成する等の手段が挙げられる。
【0062】
第4筒状部材40のフラップ43を構成する材料とフラップ43以外の部分を構成する材料とは同じであってもよく、異なっていてもよい。フラップ43以外の部分を構成する材料とフラップ43を構成する材料が同じであれば、フラップ43以外の部分とフラップ43との接合を強固に行える。また、フラップ43以外の部分を構成する材料とフラップ43を構成する材料が異なっていれば、例えば、フラップ43以外の部分は柔らかい材料を用いて柔軟とし、フラップ43は硬い材料を用いて、フラップ43の強度を上げることができる。
【0063】
第4筒状部材40を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)は、第1筒状部材10、第2筒状部材20、および第3筒状部材30を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)よりも高いことも好ましい。タイプAデュロメータ硬さは、JIS K7215に準拠した方法にて測定することができる。第4筒状部材40を構成する材料の硬度を第1筒状部材10、第2筒状部材20、および第3筒状部材30を構成する材料の硬度よりも高くすることにより、フラップ43の剛性が増し、生体内留置チューブ1を生体内管腔に固定する機能を向上させることができる。
【0064】
第4筒状部材40の内径は、第2筒状部材20の外径よりも大きいことが好ましい。これにより、第4筒状部材40の内腔に第2筒状部材20を配置することが容易となる。また、後述する第6工程が行いやすくなる。
【0065】
第4筒状部材40の外径は、第3筒状部材30の外径の0.7倍以上であることが好ましく、第3筒状部材30の外径の1.3倍以下であることが好ましい。第4筒状部材40の外径がこのように構成されていることにより、第3筒状部材30および第4筒状部材40の間に段差が少ない仕上がりとなり、低侵襲の生体内留置チューブ1とすることができる。
【0066】
第4筒状部材40の肉厚は、第3筒状部材30の肉厚と同じであってもよく、異なっていてもよい。第4筒状部材40の肉厚が、第3筒状部材30の肉厚の0.7倍以上であることが好ましく、第3筒状部材30の肉厚の2.0倍以下であることが好ましい。第4筒状部材40の肉厚がこのように構成されていることにより、後述する第6工程を行う際に、第1筒状部材10と第2筒状部材20との接合強度と、第3筒状部材30と第4筒状部材40との接合強度の差が小さくなる。
【0067】
第4筒状部材40のフラップ43の肉厚は、第1筒状部材10および第3筒状部材30の少なくともいずれか一方の肉厚と同じであってもよく、異なっていてもよい。ここで、フラップ43の肉厚とは、フラップ43の基部44の肉厚をいう。フラップ43の肉厚には、第4筒状部材40の内腔を構成する部分の肉厚を含まない。第4筒状部材40のフラップ43の肉厚が厚いと、フラップ43の強度が増し、生体内留置チューブ1の近位端102が、狭窄が発生している胆管等の生体管腔内へ入り込むことを防止することができる。第4筒状部材40のフラップ43の肉厚が薄いと生体内留置チューブ1のデリバリー性が高くなる。生体内留置チューブ1のサイズや求められる強度等に応じて、各筒状部材10、20、30、40の一部または全部の肉厚を調整することが好ましい。
【0068】
図7に示すように、第6工程は、第2筒状部材20と第4筒状部材40を接合する工程であり、第2筒状部材20の外表面と、第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位側の内表面とを接合する。接合は、例えば、熱や高周波による溶着、接着剤による接着等が挙げられる。中でも、溶着によって接合することが好ましい。第2筒状部材20と第4筒状部材40を溶着によって接合することにより、第2筒状部材20と第4筒状部材40を強固に接合することが可能となる。また、第2工程および第4工程を同じ加熱工程により行うことが好ましく、第2工程、第4工程、および第6工程を同じ加熱工程により行うことがより好ましい。第2工程および第4工程を同じ加熱工程により行うことにより、第1筒状部材10と第2筒状部材20、および第3筒状部材30と第2筒状部材20の接合強度のばらつきを抑制することができる。また、第2工程、第4工程、および第6工程を同じ加熱工程によって行うことにより、第1筒状部材10と第2筒状部材20、第3筒状部材30と第2筒状部材20、および第4筒状部材40と第2筒状部材20の接合強度のばらつきを抑制することができる。
【0069】
また、第6工程において、第3筒状部材30と第4筒状部材40とが接合されてもよい。詳細には、第3筒状部材30の近位端31と第4筒状部材40の遠位端42を含む部分を互いに接合する。第3筒状部材30の近位端31の端面と第4筒状部材40の遠位端42の端面を接合してもよく、第3筒状部材30の近位端部の外表面と第4筒状部材40の遠位端部の内表面とを接合してもよい。第3筒状部材30と第4筒状部材40とは隣り合って配置されるため、第2筒状部材20と第4筒状部材30を接合する工程において、効率的に接合することができる。
【0070】
第1工程の前に、第2筒状部材20の内腔に芯材50を配置する工程を含んでいることが好ましい。芯材50とは、軸方向に延在している円柱状の部材であり、第2筒状部材20の軸方向の長さよりも長いことが好ましい。芯材50を第2筒状部材20の内腔に配置するには、例えば、第2筒状部材20の遠位端22または近位端21に芯材50を挿入してもよく、芯材50の径方向外方に切り込みを入れた第2筒状部材20を被せてもよい。第2筒状部材20の内腔に芯材50を配置することにより、第1工程、第3工程、および第5工程において各部材の軸位置を正確に合わせやすくなることによって、配置が行いやすくなり、第2工程、第4工程、第6工程において接合工程が容易となり、また接合を確実に行えるようになる。
【0071】
図8に示すように、第6工程の前に、第3筒状部材30の近位端31を第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位側に挿入し、配置することが好ましい。このように第3筒状部材30と第4筒状部材40を配置することにより、第3筒状部材30の近位端部の外表面と、第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位の部分の内表面とを当接させることができる。第6工程の前に、第3筒状部材30の近位端31を第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位側に挿入することにより、第2筒状部材20上にて第3筒状部材30と第4筒状部材40が重なり合った大径部(後述)が形成される。このため、フラップ43の基部44付近に穴が形成されず、穴を介して生体内留置チューブ1の内腔にがん細胞等の病変部が侵入することを防ぐことができる。
【0072】
また、
図9に示すように、第6工程の前に、第3筒状部材30の近位端31を第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも遠位側に配置することも好ましい。このように第3筒状部材30と第4筒状部材40を配置することにより、第3筒状部材30の近位端31と第4筒状部材40のフラップ43の基部44との間に隙間が空いた状態となる。第6工程の前に、第3筒状部材30の近位端31を第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも遠位側に配置することにより、第2筒状部材20が第3筒状部材30にも第4筒状部材40にも覆われていない小径部(後述)が形成され、生体内留置チューブ1を内視鏡の管路に挿入する際に管路内壁とフラップ43が接触しにくくなり、生体内留置チューブ1のデリバリー性能が向上する。
【0073】
上述した接合工程の後の工程で、生体内留置チューブの遠位側または近位側を切断する工程を付加してもよい。切断工程により、生体内留置チューブの全体の長さや、フラップ43の端部からの位置を制御することができる。また、切断工程により、端面を平坦化することもできる。なお、生体内留置チューブの各筒状部材の長さは以下のとおりであることが好ましい。第1筒状部材:300mm以上1800mm以下、第2筒状部材:10mm以上500mm以下、第3筒状部材:10mm以上30mm以下、第4筒状部材:4mm以上20mm以下。フラップ43の基部44は、第4筒状部材40の遠位端42から10mm以内の領域に設けられていることが好ましい。
【0074】
図10に示すように、第6工程の後に、第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位側と、第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも遠位側かつ第1筒状部材10の中点よりも近位側の少なくともいずれか一方の径方向外方に支持体60を配置してもよい。ここで、第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位側に設けられる支持体60を近位側第1支持体60aとし、第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも遠位側かつ第1筒状部材10の中点よりも近位側に設けられる支持体60を近位側第2支持体60bとする。第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位側に近位側第1支持体60aを配置することにより、第4筒状部材40のフラップ43の基部44に応力が加わった際に、基部44が裂けてフラップ43が破断することを防ぐことができる。また、第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも遠位側かつ第1筒状部材10の中点よりも近位側に近位側第2支持体60bを配置することにより、生体内留置チューブ1の近位側第2支持体60bを配置した部分の強度を高めることができ、生体内留置チューブ1のプッシャビリティを向上させることができる。
【0075】
本発明の生体内留置チューブの実施態様について、図面を参照しつつ説明する。
図11に示すように、生体内留置チューブ1は、近位側と遠位側を有する筒状部材104と、筒状部材104の近位側に、近位側の基部106と遠位側の自由端107とを有する近位フラップ105と、筒状部材104の遠位側に、遠位側の基部109と近位側の自由端110とを有する遠位フラップ108とを含んでいる。生体内留置チューブ1は、近位端102と遠位端103を有しており、軸方向に延在している。基部106とは、近位フラップ105が筒状部材104から立ち上がる基点であり、自由端107とは、筒状部材104から立ち上がった近位フラップ105の先端である。基部109とは、遠位フラップ108が筒状部材104から立ち上がる基点であり、自由端110とは、筒状部材104から立ち上がった遠位フラップ108の先端である。
【0076】
筒状部材104の内径は、軸方向全体にわたって一定であってもよく、軸方向の位置によって異なっていてもよい。
【0077】
筒状部材104の遠位端103の外径は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置の間の筒状部材104の平均外径よりも小さいことが好ましい。筒状部材104の外径が、遠位端部において、遠位端103に向かってテーパ状に小さくなっていてもよい。筒状部材104の遠位端103の外径が小さくなっていることにより、生体内管腔の狭窄部あるいは閉塞部を生体内留置チューブ1が通過しやすくなる。
【0078】
筒状部材104の肉厚は、必要な強度、柔軟性に応じて適宜設定することができるが、0.2mm以上から0.6mm以下であることが好ましい。近位フラップ105および遠位フラップ108の肉厚は、0.2mm以上0.6mm以下であることが好ましい。近位フラップ105と遠位フラップ108の肉厚は同じであってもよく、異なっていてもよい。異なっている場合、近位フラップ105の肉厚が遠位フラップ108の肉厚より薄いと、近位フラップ105が内視鏡の管路内壁と干渉しにくくなって、デリバリー性の向上の効果がある。近位フラップ105の肉厚が遠位フラップ108の肉厚より厚いと、近位フラップ105の強度が上がって、生体内留置チューブ1の近位端102が生体内管腔へ入り込むことを防止する効果を高めることができる。
【0079】
筒状部材104の近位端102の肉厚は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置の間の筒状部材104の平均肉厚よりも厚いことが好ましい。筒状部材104の近位端102の肉厚がこのようになっていることにより、生体内留置チューブ1のプッシャビリティを向上することができる。近位端102の端面は、平坦であることが好ましい。これにより、生体内留置チューブ1の近位端102端面の強度が一定となり、生体内留置チューブ1のプッシャビリティを向上することができる。また、近位端102の端面は、体腔内を傷つけないようにするために、外周が面取りされていてもよい。
【0080】
筒状部材104、近位フラップ105、および遠位フラップ108を構成する材料としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。なお、筒状部材104、近位フラップ105、および遠位フラップ108を構成する材料は同じであってもよく、異なっていてもよい。筒状部材104、近位フラップ105、および遠位フラップ108を構成する材料が同じであれば、生体内留置チューブ1の全体的な強度や柔軟性が均一なものとなる。また、例えば、近位フラップ105と遠位フラップ108を構成する材料を、筒状部材104を構成する材料よりも硬度の高い材料とすることにより、近位フラップ105および遠位フラップ108の保持力は高いが、筒状部材104の柔軟性は保たれている生体内留置チューブ1とすることができる。
【0081】
近位フラップ105は、近位側から遠位側に向かう軸方向かつ径方向の外方に向かって延在している。遠位フラップ108は、遠位側から近位側に向かう軸方向かつ径方向の外方に向かって延在している。近位フラップ105および遠位フラップ108は、それぞれ1または複数設けられていてもよく、例えば、2以上、3以上、または5以下であることも許容される。近位フラップ105または遠位フラップ108が複数設けられる場合、各フラップ105、108が筒状部材104の周方向において等間隔に配置されていることが好ましい。複数の近位フラップ105がこのように配置されていることにより、生体内留置チューブ1の近位端102が生体内管腔に入り込むことを防止する効果を高めることができる。複数の遠位フラップ108がこのように配置されていることにより、生体内留置チューブ1が生体内管腔から脱落することを防止する効果を高めることができる。また、フラップが複数設けられる場合は、後述するフラップの基部から自由端までの長さやフラップの幅、厚みは、全て同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、各フラップの長さや幅、厚みが同じであれば、製造が容易となる。また、各フラップの長さや幅、厚みが異なることにより、それぞれのフラップの強度を変えることができる。具体例としては、荷重がかかりやすく破断のおそれがある箇所のフラップの強度を上げる、柔軟性が求められる箇所のフラップの強度を下げる等が挙げられる。
【0082】
近位フラップ105の基部106から自由端107までの長さ、および遠位フラップ108の基部109から自由端110までの長さは、特に限定されないが、4mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0083】
近位フラップ105の肉厚は、特に限定されないが、筒状部材104の近位端の肉厚よりも薄くてもよく、厚くてもよい。近位フラップ105の肉厚を筒状部材104の近位端の肉厚よりも薄くすることにより、近位フラップ105と接する生体内管腔を傷つけにくくすることができる。近位フラップ105の肉厚を筒状部材104の近位端の肉厚よりも厚くすることにより、近位フラップ105の強度を上げることができる。また、近位フラップ105の肉厚は、基部106から自由端107にかけて一定であってもよく、異なっていてもよい。例えば、近位フラップ105の基部106から自由端107に向かって肉厚が減少している部分を有していてもよい。
【0084】
遠位フラップ108の肉厚は、特に限定されないが、筒状部材104の近位端102の肉厚と同等か薄いことが好ましい。遠位フラップ108の肉厚を筒状部材104の近位端102の肉厚よりも薄くすることにより、生体内管腔を穿孔したり傷つけたりすることを防ぐことができる。また、遠位フラップ108の肉厚は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置の間の筒状部材104の平均肉厚よりも厚いことも好ましい。遠位フラップ108の肉厚がこのようになっていることにより、遠位フラップ108の生体内管腔への保持力を高めることができる。なお、遠位フラップ108の肉厚は、遠位フラップ108の基部109から自由端110にかけて一定であってもよく、異なっていてもよい。
【0085】
近位フラップ105の肉厚や長さは、遠位フラップ108の肉厚や長さと同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、近位フラップ105の長さを遠位フラップ108の長さよりも長くすることにより、近位フラップ105が径方向外方に大きく開き、生体内留置チューブ1の近位端102が、狭窄の発生している生体内管腔へ入り込むことを防止する効果を向上させることができる。また、例えば、遠位フラップ108の長さを近位フラップ105の長さよりも長くすることにより、遠位フラップ108の開く大きさを大きくすることができ、生体内管腔への生体内留置チューブ1の保持力を高めることができる。
【0086】
近位フラップ105、遠位フラップ108を構成する材料は、特に限定されないが、筒状部材104を構成する樹脂として挙げたものを使用することができる。なお、近位フラップ105を構成する材料は、筒状部材104を構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。各フラップ105、108を構成する材料と筒状部材104を構成する材料が同じであれば、筒状部材104と各フラップ105、108の接合性がよくなり、筒状部材104に各フラップ105、108を設けることが容易となる。各フラップ105、108を構成する材料と筒状部材104を構成する材料が異なっていれば、例えば、筒状部材104を構成する材料を柔らかいものとし、柔軟性は高いが各フラップ105、108の強度が高い生体内留置チューブ1とすることができる。
【0087】
近位フラップ105または遠位フラップ108を構成する材料の硬度(タイプAデュロメータ硬さ)は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置の間の筒状部材104を構成する材料の平均硬度(タイプAデュロメータ硬さ)よりも高いことも好ましい。タイプAデュロメータ硬さは、JIS K7215に準拠した方法にて測定することができる。近位フラップ105を構成する材料の硬度を筒状部材104の硬度よりも高くすることにより、近位フラップ105の剛性が増し、生体内留置チューブ1の近位端102が生体内管腔へ入り込むことを防止する機能を向上させることができる。また、遠位フラップ108を構成する材料の硬度を筒状部材104の硬度よりも高くすることにより、遠位フラップ108の剛性が増し、生体内留置チューブ1を生体内管腔に固定する機能を向上させることができる。
【0088】
図12に示すように、生体内留置チューブ1は、近位フラップ105の基部106よりも近位側と遠位フラップ108の基部109よりも遠位側の少なくともいずれか一方に、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2の間の筒状部材104の平均外径よりも最大外径が大きい大径部111を有することが好ましい。遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1とは、遠位フラップ108を筒状部材104に沿わせて、遠位フラップ108が閉じた状態としたときに、遠位フラップ108の自由端110が筒状部材104と接する位置のことである。近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2とは、近位フラップ105を筒状部材104に沿わせて、近位フラップ105が閉じた状態としたときに、近位フラップ105の自由端107が筒状部材104と接する位置のことである。近位フラップ105の基部106よりも近位側に大径部111を有することにより、近位フラップ105の強度を高め、近位フラップ105の破断を防ぐことができる。同様に、遠位フラップ108の基部109よりも遠位側に大径部111を有することにより、遠位フラップ108の強度を高めることができる。
【0089】
近位フラップ105の基部106よりも近位側に大径部111を形成するには、例えば、第6工程の前に、第3筒状部材30の近位端31を第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位側に配置すればよい。このように生体内留置チューブ1を製造することにより、生体内留置チューブ1の近位フラップ105の基部106よりも近位側に大径部111が形成される。また、近位フラップ105の基部106付近に穴が形成されず、穴を介して生体内留置チューブ1の内腔にがん細胞等の病変部が侵入することを防ぐことができる。
【0090】
遠位フラップ108の基部109よりも遠位側に大径部111を形成するには、例えば、第6工程の前に、第3筒状部材30の遠位端32を第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも遠位側に配置すればよい。このように生体内留置チューブ1を製造することにより、生体内留置チューブ1の遠位フラップ108の基部109よりも遠位側に大径部111が形成される。また、遠位フラップ108の基部109付近に穴が形成されず、穴を介して生体内留置チューブ1の内腔にがん細胞等の病変部が侵入することを防ぐことができる。
【0091】
大径部111の最大外径は、筒状部材104の位置P1と位置P2の間の筒状部材104の平均外径の1.05倍以上であることが好ましく、1.07倍以上であることがより好ましく、1.1倍以上であることがさらに好ましい。大径部111の最大外径の下限値をこのように設定することにより、近位フラップ105の強度を高めることができる。また、大径部111の最大外径は、筒状部材104の位置P1と位置P2の間の筒状部材104の平均外径の1.3倍以下であることが好ましく、1.25倍以下であることがより好ましく、1.2倍以下であることがさらに好ましい。大径部111の最大外径の上限値をこのように設定することにより、生体内留置チューブ1の近位フラップ105付近に柔軟性を持たせることができる。
【0092】
図13に示すように、生体内留置チューブ1は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2の間の筒状部材104の平均外径よりも最小外径が小さい小径部114を有しており、
図14に示すように、小径部114は、近位フラップ105の基部106よりも遠位側であり、かつ近位フラップ105が閉状態の場合の近位フラップ105の自由端107が、小径部114の遠位端116よりも遠位側である位置と、遠位フラップ108の基部109よりも近位側であり、かつ遠位フラップ108が閉状態の場合の遠位フラップ108の自由端110が、小径部114の近位端115よりも近位側である位置の少なくともいずれか一方に設けられていることが好ましい。近位フラップ105が閉状態とは、近位フラップ105を筒状部材104に沿わせて、近位フラップ105が閉じた状態のことである。遠位フラップ108が閉状態とは、遠位フラップ108を筒状部材104に沿わせて、遠位フラップ108が閉じた状態のことである。なお、小径部114は、後述する穴を有していることによって、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2との間の筒状部材104の平均外径よりも最小外径が小さくなっていてもよく、穴を有さずに径方向全体が小さくなることによって、最小外径が小さくなっていてもよい。
【0093】
近位フラップ105の自由端107よりも近位側に小径部114を有することにより、近位フラップ105が閉じた状態としたときに筒状部材104と近位フラップ105が重なる箇所の筒状部材104の外径を小さくすることが可能となる。筒状部材104と近位フラップ105が重なる箇所の筒状部材104の外径を小さくすることにより、生体内留置チューブ1を内視鏡の管路等に通過させる際に、管路の内壁と生体内留置チューブ1とが干渉しにくくなり、管路の通過が円滑となる。また、遠位フラップ108の自由端110よりも遠位側に小径部114を有することにより、遠位フラップ108が閉じた状態としたときに筒状部材104と遠位フラップ108が重なる箇所の筒状部材104の外径を小さくすることが可能となる。
【0094】
近位フラップ105の基部106よりも遠位側に小径部114を形成するには、例えば、第6工程の前に、第3筒状部材30の近位端31を第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも遠位側に配置すればよい。このように生体内留置チューブ1を製造することにより、生体内留置チューブ1の近位フラップ105の基部106よりも遠位側に小径部114が形成され、近位フラップ105が筒状部材104に沿って閉じた状態の時に、筒状部材104と近位フラップ105が重なる箇所の外径を小さくすることができる。
【0095】
遠位フラップ108の基部109よりも近位側に小径部114を形成するには、例えば、第6工程の前に、第3筒状部材30の遠位端32を第4筒状部材40のフラップ43の基部44よりも近位側に配置すればよい。このように生体内留置チューブ1を製造することにより、生体内留置チューブ1の遠位フラップ108の基部109よりも近位側に小径部114が形成され、遠位フラップ108が筒状部材104に沿って閉じた状態の時に、筒状部材104と遠位フラップ108が重なる箇所の外径を小さくすることができる。
【0096】
図16および
図17に示すように、従来の生体内留置チューブ201は、筒状部材204の近位側に切り込みを入れて近位フラップ205を形成し、遠位側に切り込みを入れて遠位フラップ208を形成している。そのため、近位フラップ205を筒状部材204に沿わせて、近位フラップ205が閉じた状態で、近位フラップ205の自由端207は小径部214の遠位端216よりも近位側に位置する。また、遠位フラップ208が閉じた状態では、遠位フラップ208の自由端210は小径部214の近位端215よりも遠位側に位置する。
【0097】
図13および
図14に示すように、本発明の生体内留置チューブ1は、近位フラップ105が閉じた状態で、近位フラップ105の自由端107は小径部114の遠位端116よりも遠位側に位置する。また、遠位フラップ108が閉じた状態で、遠位フラップ108の自由端110は小径部114の近位端115よりも近位側に位置する。なお、小径部114の軸方向の長さは、近位フラップ105の軸方向の長さと遠位フラップ108の軸方向の長さの少なくともいずれか一方よりも短いことが好ましい。
【0098】
小径部114が、近位フラップ105の基部106よりも遠位側であり、かつ近位フラップ105が閉状態の場合の近位フラップ105の自由端107が、小径部114の遠位端116よりも遠位側である位置に設けられている場合、小径部114の近位端115の最大外径は、小径部114の遠位端116の最大外径よりも小さいことが好ましい。小径部114の最大外径がこのようになっていることにより、近位フラップ105の閉状態時に、筒状部材104と近位フラップ105が重なる箇所の外径をより小さくすることが可能となる。
【0099】
小径部114が、遠位フラップ108の基部109よりも近位側であり、かつ遠位フラップ108が閉状態の場合の遠位フラップ108の自由端110が、小径部114の近位端115よりも近位側である位置に設けられている場合、小径部114の遠位端116の最小外径は、小径部114の近位端115の最小外径よりも小さいことが好ましい。小径部114の最大外径がこのようになっていることにより、遠位フラップ108の閉状態時に、筒状部材104と遠位フラップ108が重なる箇所の外径をより小さくすることが可能となる。
【0100】
筒状部材104は、小径部114において、穴を有していてもよい。穴は、筒状部材104の内腔と筒状部材104の外部とが連通する貫通穴であってもよく、筒状部材104上のくぼみであって、筒状部材104の内腔と筒状部材104の外部とが連通していない穴であってもよい。また、小径部114の全域に穴が設けられていてもよい。すなわち、小径部114が穴であってもよい。
【0101】
穴の深さ方向に垂直な面の穴の断面積は、特に限定されないが、筒状部材104の内腔の最大断面積よりも小さいことが好ましい。穴の大きさがこのようになっていれば、がん細胞等の病変部が穴に接する場合でも、病変部が穴から生体内留置チューブ1の内腔に侵入しにくくすることができる。
【0102】
穴の形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形等が挙げられる。また、筒状部材104の軸方向における穴の長さは、小径部114が近位フラップ105の基部106よりも遠位側であり、かつ近位フラップ105が閉状態の場合の近位フラップ105の自由端107が小径部114の遠位端116よりも遠位側である位置に設けられている場合、小径部114の遠位端116から近位端115までの長さよりも短くてもよく、筒状部材104の軸方向に直交する方向の穴の長さは、近位フラップ105の軸方向に直交する方向の長さよりも短くてもよい。穴の形状がこのようになっていることにより、穴を介してがん細胞等の病変部が生体内留置チューブ1の内腔に侵入する可能性を低くすることができる。また、穴が小径部114の全域に設けられていてもよい。つまり、小径部114が穴であってもよい。
【0103】
小径部114が遠位フラップ108の基部109よりも近位側であり、かつ遠位フラップ108が閉状態の場合の遠位フラップ108の自由端110が小径部114の近位端115よりも近位側である位置に設けられている場合も同様に、筒状部材104の軸方向における穴の長さは、小径部114の近位端115から遠位端116までの長さよりも短くてもよく、筒状部材104の軸方向に直交する方向の穴の長さは遠位フラップ108の軸方向に直交する方向の長さよりも短いことが好ましい。また、穴が小径部114の全域に設けられていてもよい。つまり、小径部114が穴であってもよい。
【0104】
穴の位置は、特に限定されないが、小径部114が近位フラップ105の基部106よりも遠位側であり、かつ近位フラップ105が閉状態の場合の近位フラップ105の自由端107が小径部114の遠位端116よりも遠位側である位置に設けられている場合、小径部114の近位端115から遠位端116まで延在していてもよく、小径部114の遠位端116と近位端115との中点よりも近位側に穴が配置されていてもよい。穴の位置がこのようになっていれば、がん細胞等の病変部が生体内留置チューブ1の内腔に穴を介して入り込みにくくすることが可能となる。
【0105】
小径部114が遠位フラップ108の基部109よりも近位側であり、かつ遠位フラップ108が閉状態の場合の遠位フラップ108の自由端110が小径部114の近位端115よりも近位側である位置に設けられている場合も同様に、小径部114の近位端115から遠位端116まで延在していてもよく、小径部114の近位端115と遠位端116との中点よりも遠位側に穴が配置されていてもよい。
【0106】
図15に示すように、筒状部材104は、筒状部材104の径方向外方であって、遠位フラップ108の基部109と自由端110との中点P3よりも遠位側、遠位フラップ108の自由端110よりも近位側かつ筒状部材104の中点P5よりも遠位側、近位フラップ105の基部106と自由端107との中点P4よりも近位側、および近位フラップ105の自由端107よりも遠位側かつ筒状部材104の中点P5よりも近位側の少なくともいずれか一つに支持体60を有することが好ましい。
【0107】
詳細には、筒状部材104が、遠位フラップ108の基部109と自由端110との中点P3よりも遠位側に遠位側第1支持体60cを有することにより、遠位フラップ108の基部109に応力が加わった際に、基部109が裂けて遠位フラップ108が破断することを防ぐことができる。
【0108】
遠位フラップ108の自由端110よりも近位側かつ筒状部材104の中点P5よりも遠位側に遠位側第2支持体60dを有することにより、筒状部材104の遠位側第2支持体60dを設けた部分の強度を高めることができる。その結果、生体内留置チューブ1の遠位フラップ108付近のプッシャビリティを向上させることができる。
【0109】
近位フラップ105の基部106と自由端107との中点P4よりも近位側に近位側第1支持体60aを有することにより、近位フラップ105の基部106に応力が加わった際に、基部106が裂けて近位フラップ105が破断することを防ぐことができる。
【0110】
近位フラップ105の自由端107よりも遠位側かつ筒状部材104の中点P5よりも近位側に近位側第2支持体60bを有することにより、筒状部材104の近位側第2支持体60bを設けた部分の強度を高めることができる。その結果、生体内留置チューブ1の近位フラップ105付近のプッシャビリティを向上させることができる。
【0111】
図15に示すように、筒状部材104は、筒状部材104の近位側から順次、第1領域70と第2領域80とを有し、近位フラップ105の基部106よりも遠位側で、第1領域70と第2領域80の色が互いに異なることが好ましい。第1領域70と第2領域80の色が互いに異なるとは、第1領域70の色と第2領域80の色とで、JIS Z8721で定める色相、明度、および彩度の少なくとも1つが異なっていることを指す。筒状部材104が第1領域70と第2領域80とを有し、第1領域70と第2領域80の色が互いに異なることにより、生体内留置チューブ1を生体内管腔の所望の箇所へ搬送する際に、生体内留置チューブ1の近位フラップ105の位置を内視鏡にて確認することが容易となる。第2領域80の色が、第1領域70と異なる色であり、内視鏡下で視認し易い色であれば、第1領域70と第2領域80との境界を確認することが容易となり、生体内留置チューブ1の近位フラップ105を確認しやすくなる。例えば、第1領域70の色が黒色等の明度の低い色であり、第2領域80の色が黄色等の明度の高い色であってもよく、第1領域70の色が明度の高い色であり、第2領域80の色が明度の低い色であってもよい。
【0112】
第1領域70および第2領域80とは別に、筒状部材104は、近位フラップ105の基部106よりも近位側に、第1領域70と第2領域80の少なくともいずれか一方と色が異なる領域を有していてもよく、有していなくてもよい。筒状部材104が近位フラップ105の基部106よりも近位側に色が異なる領域を有していれば、生体内留置チューブ1の近位端102と遠位端103の判別がしやすくなる。近位フラップ105の基部106よりも近位側に色が異なる領域を有していなければ、第1領域70が目立ち、内視鏡での第1領域70の視認性が高まる。
【0113】
第1領域70と第2領域80の色を互いに異なるものとするには、例えば、筒状部材104において第1領域70と第2領域80となる部分の少なくとも一方を着色する、第1領域70と第2領域80となる部分の少なくとも一方に筒状部材104とは色が異なるフィルムや筒型部材を配置する等の方法が挙げられる。着色する方法としては、塗料を塗布する、染料にて染色する等の方法が挙げられる。中でも、筒状部材104の第1領域70となる部分に、筒状部材104とは異なる色の塗料を塗布して着色することが好ましい。このように第1領域70と第2領域80の色を互いに異なるものとすることにより、内視鏡にて生体内留置チューブ1の近位フラップ105の位置の視認性を高めることができる。また、筒状部材104は、第2領域80より遠位側に、第2領域80とは異なる色の領域を有してもよい。
【0114】
第1領域70を支持体60によって構成してもよい。詳細には、例えば、筒状部材104の近位フラップ105の自由端107よりも遠位側かつ筒状部材104の中点P5よりも近位側に設けられた近位側第2支持体60bの色を第1領域70の色とは異なる色とし、第1領域70よりも遠位側に配置し、近位側第2支持体60bを第2領域80としてもよい。第2領域80は、近位側第2支持体60bを含む領域であってもよい。
【0115】
第1領域70、および第2領域80の軸方向の長さは、視認しやすいように適宜設定することができる。少なくとも第1領域70は、筒状部材104の近位フラップ105の基部106よりも近位側から始まり、近位フラップ105の基部106よりも遠位側で終わる部分であればよい。第1領域70の近位端は、筒状部材104の近位端102と一致していてもよい。
【0116】
第1領域70の近位端は、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2よりも遠位側に配置されていることが好ましい。近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2とは、近位フラップ105を筒状部材104に沿わせて、近位フラップ105が閉じた状態としたときに、近位フラップ105の自由端107が筒状部材104と接する位置のことである。
【0117】
筒状部材104が大径部111、遠位側第2支持体60d、第1領域70、および第2領域80を有する場合、大径部111の最大外径は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1または遠位側第2支持体60dの近位端と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2または第1領域70の遠位端との間の筒状部材104の平均外径よりも大きいことが好ましい。
【0118】
筒状部材104が小径部114、遠位側第2支持体60d、第1領域70、および第2領域80を有する場合、小径部114の最小外径は、遠位フラップ108の自由端110に対応する筒状部材104の位置P1または遠位側第2支持体60dの近位端と、近位フラップ105の自由端107に対応する筒状部材104の位置P2または第1領域70の遠位端との間の筒状部材104の平均外径よりも小さいことが好ましい。
【0119】
以上のように、一方端と他方端を有する生体内留置チューブの製造方法であって、第1筒状部材の内腔に第2筒状部材の他方端を配置する第1工程と、第1筒状部材と第2筒状部材を接合する第2工程と、第2筒状部材よりも軸方向の長さが短い第3筒状部材の内腔に第2筒状部材を配置する第3工程と、第2筒状部材と第3筒状部材を接合する第4工程と、基部と自由端とを有するフラップを含む第4筒状部材の他方端側の内腔に第2筒状部材の一方端を配置する第5工程と、第2筒状部材と第4筒状部材を接合する第6工程を含むことを特徴とする。このような製造方法にて生体内留置チューブが製造されることにより、生体内留置チューブ自体は柔軟であるがフラップの強度を高くすることができる。
【0120】
本願は、2017年6月13日に出願された日本国特許出願第2017-115569号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年6月13日に出願された日本国特許出願第2017-115569号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0121】
1:生体内留置チューブ
2:デリバリーシステム
3:インナーカテーテル
4:アウターカテーテル
5:縫合糸
6:挿入補助チューブ
10:第1筒状部材
11:第1筒状部材の近位端
20:第2筒状部材
21:第2筒状部材の近位端
22:第2筒状部材の遠位端
30:第3筒状部材
31:第3筒状部材の近位端
32:第3筒状部材の遠位端
40:第4筒状部材
41:第4筒状部材の近位端
42:第4筒状部材の遠位端
43:フラップ
44:フラップの基部
45:フラップの自由端
50:芯材
60:支持体
60a:近位側第1支持体
60b:近位側第2支持体
60c:遠位側第1支持体
60d:遠位側第2支持体
70:第1領域
80:第2領域
102:生体内留置チューブの近位端
103:生体内留置チューブの遠位端
104:筒状部材
105:近位フラップ
106:近位フラップの基部
107:近位フラップの自由端
108:遠位フラップ
109:遠位フラップの基部
110:遠位フラップの自由端
111:大径部
112:大径部の近位端
113:大径部の遠位端
114:小径部
115:小径部の近位端
116:小径部の遠位端
P1:遠位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置
P2:近位フラップの自由端に対応する筒状部材の位置
P3:遠位フラップの基部と自由端との中点
P4:近位フラップの基部と自由端との中点
P5:筒状部材の中点
201:従来の生体内留置チューブ
202:従来の生体内留置チューブの近位端
203:従来の生体内留置チューブの遠位端
204:従来の筒状部材
205:従来の近位フラップ
206:従来の近位フラップの基部
207:従来の近位フラップの自由端
208:従来の遠位フラップ
209:従来の遠位フラップの基部
210:従来の遠位フラップの自由端
214:従来の小径部
215:従来の小径部の近位端
216:従来の小径部の遠位端