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特許7410997スチレンを含まないコポリマー、及びこのようなコポリマーを含有するコーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】スチレンを含まないコポリマー、及びこのようなコポリマーを含有するコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/06 20060101AFI20231227BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20231227BHJP
   C09D 123/00 20060101ALI20231227BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20231227BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20231227BHJP
   C09D 171/12 20060101ALI20231227BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20231227BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231227BHJP
   C08F 285/00 20060101ALI20231227BHJP
   C08G 65/28 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D5/02
C09D123/00
C09D167/00
C09D171/00
C09D171/12
C09D175/04
C09D201/00
C08F285/00
C08G65/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022048674
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2018553140の分割
【原出願日】2017-04-13
(65)【公開番号】P2022101555
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】62/323,314
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518155030
【氏名又は名称】エスダブリューアイエムシー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,ロバート・エム
(72)【発明者】
【氏名】シュテュッテルベルグ,マーク
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/139971(WO,A1)
【文献】特開昭62-223211(JP,A)
【文献】特開2002-206017(JP,A)
【文献】国際公開第2014/025411(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/089747(WO,A1)
【文献】特表2008-516769(JP,A)
【文献】国際公開第2006/045017(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105008469(CN,A)
【文献】特表2015-528832(JP,A)
【文献】特開昭63-020311(JP,A)
【文献】特開平05-132647(JP,A)
【文献】特開平08-231925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/06
C08F 285/00
C09D 5/02
C09D 123/00
C09D 167/00
C09D 171/00
C09D 171/12
C09D 175/04
C09D 201/00
C08G 65/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の食品容器または飲料容器の食品接触コーティングの形成において使用するために好適な水性コーティング組成物であって、
この水性コーティング組成物は、水性担体と、水性担体に分散している樹脂系と、を含んでなり、ここで、水性担体に分散している樹脂系は、スチレンないしビスフェノールAに由来する構造単位を実質的に含まないが、以下の(a)および(b):
(a)1グラムあたり55~400mgKOHの酸価を有する水分散性ポリマー
(b)乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分を重合したポリマー
の両方を含んでなり、ここで、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、
(1)少なくとも30重量%の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレート、及び
(2)30重量%超の、脂環式基又は少なくとも4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマー、
を含んでいる、上記組成物。
【請求項2】
前記樹脂系が、前記水分散性ポリマーの水性分散物の存在下で乳化重合した前記エチレン性不飽和モノマー成分の反応生成物を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記水分散性ポリマーが、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタン、又はこれらの混合物若しくはコポリマーを含む、請求項1又は2のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記水分散性ポリマーが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS(これらのエポキシドを含む)のそれぞれを実質的に含まない芳香族ポリエーテルポリマーであって、ガラス転移温度が少なくとも60℃かつ数平均分子量が少なくとも2000である芳香族ポリエーテルポリマーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記水分散性ポリマーが、オルト置換ジフェノールのジエポキシドと展延剤とを含む反応物質から形成された芳香族ポリエーテルポリマーを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記水分散性ポリマーが、1グラムあたり70mgKOH以上の酸価を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、少なくとも80重量%の、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレートのうちの1つ以上を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記コーティング組成物の粘度が20~80秒(Ford Cup#2、25℃)であり、かつ食品又は飲料缶用の内側スプレーコーティング組成物である、請求項1~7のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分を重合したポリマーが、非ポリマー界面活性剤を使用することなく、水分散性ポリマーの存在下で重合されたものである、請求項1~8のいずれかに記載のコーティング組成物。
【請求項10】
金属基材の少なくとも一部分の上に位置する請求項1~9のいずれかに記載のコーティング組成物から形成された硬化したコーティングを有し、かつ包装された食品又は飲料製品を収容している、食品容器、飲料容器またはその一部。
【請求項11】
食品容器、飲料容器またはその一部へ金属基材を成形する前又は後に、前記金属基材の表面に請求項1~9のいずれかに記載のコーティング組成物を塗布することを含む、食品容器または飲料容器をコーティングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[001]
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年4月15日に出願された、「Styrene-Free Copolymers And Coating Compositions」と題された米国特許仮出願第62/323,314号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[002]
ビスフェノールAは、様々な特性及び用途を有するポリマーを調製するために使用されてきた。例えば、ビスフェノールAは、エピクロロヒドリンと反応して、包装用コーティングに有用なポリマーを提供する場合がある。食品又は飲料容器コーティングにおける特定のビスフェノールAに由来するポリマーの使用を低減するか又はなくしたいという要望がある。ビスフェノールA無しで作製されるいくつかの代替のコーティング組成物が提案されてきたが、一部の代替の組成物は、不十分な金属基材上での耐腐食性、不十分な可撓性、又は不十分な堅牢性等の不十分なコーティング特性を呈してきた。
【0003】
[003]
更に、近年、スチレンは、より厳しい目にさらされるようにもなっている。科学的証拠のバランスが、重合スチレンを含有するコーティングが食品に接触する最終用途において安全であることを示しているにもかかわらず、このような最終用途からスチレンを排除することが一部では望まれている。しかし、スチレンは、食品又は飲料缶コーティングの全体的な性能に寄与するという有利な特性をもたらすことができ、他の物質を使用して再現することが困難である可能性がある。このように、従来のこのようなコーティングにおいてスチレンを使用することは一般的であった。
【0004】
[004]
コーティング組成物を食品又は飲料缶コーティングとして使用するために好適なものにするために必要とされるコーティング性能属性のバランスは、特に厳しく、他のコーティングの最終用途とは異なる。このように、他の最終用途のために設計されたコーティングは、典型的には、食品又は飲料缶コーティングとして使用するために好適ではない。
【0005】
[005]
例えば、食品又は飲料容器に使用するためのコーティングは、包装された食品又は飲料製品の味を不適当に変化させることを避けなければならず、また包装された製品の中へと剥がれ落ちたり欠け落ちたりすることも避けなければならない。また、当該コーティングは、長期間(例えば、数年間)にわたって、化学的に攻撃的な(aggressive)食品又は飲料製品(塩、酸、糖、脂肪などを含む、複雑な化学的プロファイルを有する可能性がある)に対しても耐性を有しなければならない。また、食品又は飲料容器コーティングは、その下に存在する基材に対して良好に接着しなければならず、硬化後に十分に可撓性のままでなければならないが、その理由は、後続の加工、及び輸送、保管、又は使用中の(例えば、落下による)へこみによって金属基材が変形することがあり、これによってコーティングが曲がるためである。脆弱なコーティングは、曲げている間に亀裂が生じ、容器の金属が包装された製品に露出され、これは時に容器内に漏れを引き起こすことがある。多数の食品及び飲料容器が生産されることを考えると、たとえコーティング不良の可能性が低
くても、かなりの数の容器に漏れを引き起こす場合がある。
【0006】
[006]
したがって、ビスフェノールA及び/又はスチレンを意図的に使用せずに作製されるが、食品又は飲料容器においてこのようなコーティング組成物を使用できるようにするために厳格なコーティング特性のバランスを呈する、改善されたコーティング組成物が当該技術分野において必要とされていることが理解されよう。
【発明の概要】
【0007】
[007]
一態様では、本発明は、水性コーティング組成物を提供する。好ましい実施形態では、当該コーティング組成物は、食品又は飲料缶の金属基材上における食品接触コーティングの形成において使用するのに好適な水性食品又は飲料缶コーティング組成物である。当該コーティング組成物は、好ましくは、水性担体と、当該水性担体に分散している樹脂系とを含む。当該樹脂系は、好ましくは、スチレンを実質的に含まず、水分散性ポリマー(例えば、水分散性ポリエーテルポリマー)及び重合エチレン性不飽和モノマー成分、より好ましくは乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分を含む。好ましい実施形態では、当該重合エチレン性不飽和モノマー成分は、(a)1つ以上のアルキル(メタ)アクリレート(より好ましくは、少なくとも30重量%の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレート)と、(b)脂環式基又は少なくとも4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマー(より好ましくは、30重量%超の、脂環式基又は少なくとも4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマー)とを含む。典型的には、重合エチレン性不飽和モノマー成分は、少なくとも1つのメタクリレートを含み、いくつかの実施形態では、50重量%以上の1つ以上のメタクリレートを含むことになる。
【0008】
[008]
更に別の態様では、本発明は、好ましくは水性担体と当該水性担体中に分散している樹脂系とを含む水性食品又は飲料缶コーティング組成物であって、当該樹脂系が、好ましくはスチレンを実質的に含まず、かつ水分散性ポリマー(例えば、水分散性芳香族ポリエーテルポリマー)と、好ましくは少なくとも大部分(例えば、>50重量%、>60重量%、>70重量%など)、より好ましくは少なくとも80重量%の、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート(例えば、n-ブチルアクリレート)、及びブチルメタクリレート(例えば、n-ブチルメタクリレート)のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ)を含む乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分とを含むコーティング組成物を提供する。
【0009】
[009]
更に別の態様では、本発明は、好ましくは水性担体と当該水性担体に分散している樹脂系とを含む水性食品又は飲料缶であって、当該樹脂系が、スチレンを実質的に含まず、かつ(i)ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS(これらのエポキシドを含む)のそれぞれを実質的に含まない水分散性芳香族ポリエーテルポリマーと、(ii)好ましくは当該水分散性芳香族ポリエーテルポリマーの存在下で乳化重合した乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分とを含む水性食品又は飲料缶を提供する。乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、好ましくは、少なくとも50重量%の1つ以上のアルキル又は脂環式(メタ)アクリレートと、30重量%超の、少なくとも4個の炭素原子を含み、少なくとも3個の炭素原子の鎖長を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーとを含む。好ましいこのような実施形態では、水分散性芳香族ポリエーテルポリマーと乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分との全総合重量は、当該コーティング組成物中に存在する全樹脂固形分の少なくとも50重量%である。
【0010】
[010]
更に別の態様では、本発明のコーティング組成物がその上に位置する基材(例えば、金属基材)も開示される。いくつかの実施形態では、当該基材は、本発明のコーティング組成物が外面、内面、又は両方の組み合わせに塗布された金属製の食品若しくは飲料缶又はその一部(例えば、ねじ切り密閉蓋、缶の端部、飲料缶の端部、缶の側壁及び底端部など)である。本発明の特定の実施形態は、例えばアルミニウム製飲料缶を含む食品又は飲料缶の内部にスプレー塗布するために特に好適であることが見出された。
【0011】
[011]
更に別の態様では、本発明は、食品又は飲料缶をコーティングする方法を提供する。当該方法は、好ましくは、金属基材を食品若しくは飲料缶又はその一部分へと成形する前又は後に、本明細書に記載されるコーティング組成物を金属基材の表面に塗布することを含む。
【0012】
[012]
更に別の態様では、本発明は、ラテックス分散物及びラテックス分散物を作製する方法を提供する。当該ラテックス分散物は、好ましくは、スチレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS(これらのエポキシドを含む)のそれぞれを実質的に含まず、また所望により、置換スチレン化合物も実質的に含まない。好ましい実施形態では、当該方法は、水分散性ポリマーの水性分散物を提供することと、当該水分散性ポリマーの水性分散物の存在下でエチレン性不飽和モノマー成分を乳化重合させることとを含む。好ましい実施形態では、当該エチレン性不飽和モノマー成分は、30重量%超の、脂環式基又は4炭素以上の炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマー、及び所望によりC1~C3アルキル(メタ)アクリレートを含むモノマーの混合物を含む。当該エチレン性不飽和モノマー成分は、好ましくは少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくは少なくとも1つのアルキルメタクリレートを含む。アルキル(メタ)アクリレートは、好ましくは、当該エチレン性不飽和モノマー成分の少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも95重量%、又は更には99重量%以上を構成する。
【0013】
[013]
本発明の上の「発明の概要」は、本発明のそれぞれの開示された実施形態又は全ての実施を記載することを意図したものではない。以下の記載により、例示的な実施形態をより具体的に例示する。明細書全体にわたっていくつかの箇所で、実施例の一覧を通して指針を提供するが、実施例は種々の組み合わせにて使用することが可能である。いずれの場合にも、記述された一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、限定的又は排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【0014】
[014]
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の記載で説明する。本発明の他の特徴、目的、及び利益は、説明及び特許請求の範囲により明らかとなるであろう。
【選択された定義】
【0015】
[015]
特に明記しない限り、以下の用語は、本明細書で使用するとき、以下に提供された意味を有する。
【0016】
[016]
「遊離(mobile)」という用語は、コーティング組成物中の化合物に関して使用される
場合、最終用途に応じて、いくつかの規定された条件一式に関して、コーティング(典型的には、約1mg/cm)を試験媒体に露出したときに、コーティング組成物から化合物を抽出することができることを意味する。これら試験条件の例としては、硬化したコーティングをHPLCグレードのアセトニトリルに25℃で24時間露出することが挙げられる。例示的な手順及び制限は、European Union Commission
Directives 82/711/EEC,93/8/EEC、及び97/48/EC、並びに連邦規則第21条175.300項(d)及び(e)に提示されている。
【0017】
[017]
「上に(on)」という用語は、表面若しくは基材上に(on)塗布されたコーティングという文脈で使用される場合、表面若しくは基材に直接又は間接的に塗布されたコーティングの両方を含む。したがって、例えば、基材を覆っている下塗り層に塗布されたコーティングは、基材上に塗布されたコーティングを構成する。
【0018】
[018]
特に指示しない限り、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー及びコポリマー(例えば、2種以上の異なるモノマーのポリマー)の両方を含む。同様に、特に指示しない限り、例えば、「ポリエーテル」等といったポリマークラスを表す用語の使用は、ホモポリマー及びコポリマー(例えば、ポリエーテル-エステルコポリマー)の両方を含むことを意図する。
【0019】
[019]
同じであっても異なってもよい基は、「独立して」何かであると呼ばれる。「基」という用語は、単一原子部分も包含する。したがって、例えば、ハロゲン原子を基とすることもできる。
【0020】
[020]
「アクリレート」及び「アクリル」という用語は、本明細書において広く使用され、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、又は任意のアクリレート若しくはメタクリレート化合物のうちの1つ以上から調製される物質を包含する。したがって、例えば、「アクリレート」成分が完全に重合(メタ)アクリル酸からなるポリエーテル-アクリレートコポリマーは、たとえ(メタ)アクリレートモノマーが使用されていなくてもやはり「アクリレート」成分を含むことになる。
【0021】
[021]
「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」において使用するとき、「(メタ)」という用語は、水素又はメチル基のいずれかがモノマーの適切な炭素原子に結合する場合があることを示すことを意図する。例えば、「エチル(メタ)アクリレート」は、エチルアクリレート、エチルメタクリレートの両方、及びこれらの混合物を包含する。
【0022】
[022]
本明細書で使用するとき、「フェニレン」という用語は、任意の置換基(例えば、水素原子、炭化水素基、酸素原子、ヒドロキシル基などを含む)を有することができる、6個の炭素原子のアリール環(例えば、ベンゼン基におけるような)を指す。したがって、例えば、以下のアリール基:-C-、-C(CH)-、及び-CH(CH(OH)-は、それぞれフェニレン環である。加えて、例えば、ナフタレン基のそれぞれのアリール環はフェニレン環である。
【0023】
[023]
本明細書で使用するとき、「多価フェノール」という用語(二価フェノールを含む)は
、1つ以上のアリール又はヘテロアリール基(より典型的には、1つ以上のフェニレン基)と、同一又は異なるアリール又はヘテロアリール環に結合する少なくとも2つのヒドロキシル基とを有する任意の化合物を概して指す。したがって、例えば、ヒドロキノン及び4,4’-ビフェノールの両方が、多価フェノールであると考えられる。本明細書で使用するとき、多価フェノールは、典型的には、アリール環中に6個の炭素原子を有するが、他のサイズの環を有するアリール又はヘテロアリール基が使用されてもよいことが想到される。
【0024】
[024]
「多価ポリフェノール」という用語(ビスフェノールを含む)アリール環又はヘテロアリール環に結合した少なくとも1つのヒドロキシ基をそれぞれ有する2つ以上のアリール又はヘテロアリール基を含む多価フェノールを指す。
【0025】
[025]
「ビスフェノール」という用語は、それぞれが環の炭素原子に結合しているヒドロキシル基を有する2つのフェニレン基を有する多価ポリフェノールモノマーであって、当該2つのフェニレン基の環が共通していかなる原子も共有していないモノマーを指す。「多価モノフェノール」という用語は、(i)アリール又はヘテロアリール環に結合している少なくとも2つのヒドロキシル基を有するアリール又はヘテロアリール基(より典型的には、フェニレン基)を含み、(ii)環に結合しているヒドロキシル基を有するいかなる他のアリール又はヘテロアリール環も含まない多価フェノールを指す。「二価モノフェノール」という用語は、アリール環又はヘテロアリール環に結合したヒドロキシル基を2つだけ含有する多価モノフェノールを指す。
【0026】
[026]
「実質的に含まない(substantially free)」という用語が特定の遊離化合物を含有する場合があるコーティング組成物に関して使用されている場合、コーティング組成物が記述される遊離化合物を1,000ppm(百万分率)未満しか含有しないことを意味する。「本質的に含まない(essentially free)」という用語が特定の遊離化合物を含有する場合があるコーティング組成物に関して使用されている場合、コーティング組成物が記述される遊離化合物を100ppm(百万分率)未満しか含有しないことを意味する。「本質的に完全に含まない(essentially completely free)」という用語が特定の遊離化合
物を含有する場合があるコーティング組成物に関して使用されている場合、コーティング組成物が記述される遊離化合物を5ppm(百万分率)未満しか含有しないことを意味する。「完全に含まない(completely free)」という用語が特定の遊離化合物を含有する
場合があるコーティング組成物に関して使用されている場合、コーティング組成物が記述される遊離化合物を20ppb(十億分率)未満しか含有しないことを意味する。上記語句が(例えば、「BPA化合物を実質的に含まない」のように)「遊離状態(mobile)」という用語なしに使用されている場合、当該化合物がコーティング内で遊離状態であろうと、コーティングの成分と結合していようと、当該組成物は、上記の量未満の量の当該化合物を含有する。語句「~を含まない」(前述の語句の文脈以外で)、及び「全く含まない」、及びこれに類するものを本明細書において使用するとき、このような語句は、例えば環境汚染物質として存在する場合がある、微量の関連する構造物又は化合物の存在を除外することを意図するものではない。
【0027】
[027]
「スチレンを含まない」という用語は、スチレンが意図的には使用されなかったが、微量の混入スチレンはまだ存在する場合があることを示す。以下の議論においては、便宜上、語句「スチレンを含まない」は、別々の閾値を提供するために「スチレンを実質的に含まない」と置換可能である。
【0028】
[028]
「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利益をもたらす場合がある実施形態を指す。しかし、同一の又は他の状況下において、他の実施形態も好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを暗示するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0029】
[029]
「含む(comprises)」という用語及びその変形は、それらの用語が明細書及び請求項
に出現する箇所において、限定的な意味を有するものではない。
【0030】
[030]
本明細書で使用するとき「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ以上の(one or more)」は、互換的に
使用される。したがって、例えば、「1つの(a)」ポリエーテルポリマーを含むコーテ
ィング組成物は、当該コーティング組成物が「1つ以上の」ポリエーテルポリマーを含むことを意味すると解釈することができる。
【0031】
[031]
また、本明細書では、端点による数値域の詳細説明は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。更に、範囲の開示は、より広い範囲内に含まれる全ての部分範囲の開示を含む(例えば、1~5は、1~4、1.5~4.5、及び4~5等を開示する)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[032]
例えば、金属製の食品又は飲料缶などの食品又は飲料容器上にで使用するための水性コーティング組成物は、典型的には、少なくともいくつかのスチレン含有ポリマーを含む。例えば、金属製の食品又は飲料缶のコーティングにおいて使用するための水性エポキシコーティング系及びラテックスコーティング系は両方とも、典型的には、スチレン(例えば、「アクリル」ポリマー又は成分)を含む1つ以上のフリーラジカル重合エチレン性不飽和モノマー成分が組み込まれる。このようなコーティング組成物におけるスチレンの使用は、例えば、スチレンが高レベルの疎水性及び比較的高いガラス転移温度(「Tg」)(例えば、スチレンホモポリマーは約100℃のTgを呈する)を両方有することを含む様々な理由のため有利であった。このような水性食品又は飲料缶コーティングにおけるスチレンを置き換えようとする以前の試みの結果、食品若しくは飲料容器コーティングの最終用途に適していないコーティング特性のバランスを呈するか、又は従来のスチレン含有系と比較して実質的に劣る1つ以上のコーティング特性を呈するかいずれかのコーティング系が得られた。
【0033】
[033]
本発明のコーティング組成物は、スチレンを実質的に含まず、また、好ましくは、ビスフェノールA(「BPA」)、ビスフェノールF(「BPF」)、及びビスフェノールS(「BPS」)(これらのエポキシド(例えば、BPAのジグリシジルエーテル「BADGE」などを含む)のそれぞれも実質的に含まない。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、かなりの量のBPA及びスチレンの両方を利用する従来のエポキシ-アクリレートコーティング系と遜色ない、食品又は飲料缶コーティングの最終用途におけるコーティング特性のバランスを呈する。特定の好ましい実施形態では、コーティング組成物は、置換スチレン化合物(例えば、アルファ-メチルスチレン、メチルスチレン(例えば、
2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、ビニルトルエン、及びこれに類するもの)、ジメチルスチレン(例えば、2,4-ジメチルスチレン)、トランス-ベータ-スチレン、ジビニルベンゼン、及びこれに類するもの)もまた実質的に含まない。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、ビニル芳香族化合物を実質的に含まない。
【0034】
[034]
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、水性コーティング組成物である。好ましい実施形態では、このような水性コーティング組成物は、好ましくは、(i)水分散性ポリマー(好ましくは水分散性ポリエーテルポリマー、より好ましくは水分散性芳香族ポリエーテルポリマー)及び(ii)重合エチレン性不飽和モノマー成分を両方含む。上記(i)成分及び(ii)成分は、それぞれ好ましくは(例えば環境汚染などにより微量の意図せず添加されたスチレンが潜在的に存在する場合があるが)スチレンを含まない成分を用いて作製され、より好ましくは、コーティング組成物は、全体として、スチレンを含まない成分を用いて作製される。好ましい実施形態では、コーティング組成物はラテックス分散物であり、エチレン性不飽和モノマー成分は、その中に分散している水分散性ポリマーを含む水性分散物の存在下で乳化重合する。重合エチレン性不飽和モノマー成分は、典型的には、好ましくは水性媒体中でフリーラジカル開始重合することができる2つ以上の異なるモノマーの混合物である。便宜上、以後「重合エチレン性不飽和モノマー成分」を、「乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分」と呼ぶ。
【0035】
[035]
好ましい実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、脂環式基若しくは少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素基を含む1つ以上のエチレン性不飽和モノマー(以後まとめて「モノマー成分A」又は「モノマーA」と短縮して呼ぶ)、又は両方の混合物を含む。任意の好適なエチレン性不飽和モノマー(複数可)Aを使用してよいが、このようなモノマーは、典型的には、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族(例えば、アリール(メタ)アクリレートを含む)、ビニルエステル、及びこれに類するものなどのビニルモノマーである。1つ以上のヘテロ原子は、所望により、脂環式基又はC4以上の炭化水素基内に存在してもよい。いくつかの実施形態では、炭素原子及び水素原子のみが、脂環式基又はC4以上の炭化水素基内に存在する。C4以上の炭化水素基は、任意の好適な構造を有することができるが、いくつかの実施形態では直鎖又は分岐した直鎖が好ましく、特定の実施形態では、少なくとも3個の炭素原子を含む最長鎖を有する直鎖又は分岐した直鎖基が特に好ましい。指定の基を有するアルキル(メタ)アクリレートが、好ましいこのようなモノマーAの例であるが、このような基を有する任意の好適な種類(複数可)のエチレン性不飽和モノマーを使用してもよい。
【0036】
[036]
理論に束縛されるものではないが、脂環式基及び/又は少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素基を含む1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含むことは、数ある中でも好適に高いレベルの疎水性を付与するのを助けることができると考えられる。これは、例えば、耐水性及び/又は耐レトルト性を強化し、特定の水性の包装された製品(例えば、特定のコーラ)中に存在する低濃度の香味料のコーティングへの分配を低減するのを助けるなどの複数の理由のため、望ましい場合があると考えられる。
【0037】
[037]
モノマーA中に含めるのに好適なC4以上の炭化水素基の例としては、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、又は8個以上の炭素原子を有する炭化水素基が挙げられ、好ましいこのような炭化水素基は、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びこれらの異性体(例えば、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチルなど)である。このようなモノマーAの
いくつかの具体例としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシルメタクリレート、3,5,5-トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、これらの誘導体及び異性体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、4~6個の炭素原子を有するC4以上の炭化水素基が好ましい。理論に束縛されるものではないが、長い直鎖状炭素鎖(例えば、C7以上、特定の例ではC5及び/又はC6)を有するモノマーAを過剰量含むと、特定の缶内部コーティング用途に適していない低いガラス転移温度を有する乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が生じる場合があると考えられる。例えば、4員環、5員環、6員環、又は更には7員環以上の脂環式基を含む任意の好適な脂環式基をモノマーAで使用してもよい。また、脂環式基は、単環式であっても多環式(例えば、二環式、三環式、四環式など)であってもよい。例えば、架橋多環式環系(例えばノルボルナン基)、縮合多環式環系、又はこれらの組み合わせ(例えばトリシクロデカン基)を含む任意の好適な多環基を使用してもよい。典型的には、環(複数可)を構成する原子は炭素原子であるが、上で論じたように、環内に1つ以上のヘテロ原子も存在していてもよい。脂環式基を有するモノマーAの例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、これらの変異体(variants)及び異性体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
[038]
いくつかの実施形態では、ブチル(メタ)アクリレートが好ましいモノマーAである。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和モノマー成分は、ブチルアクリレート及びメタクリル酸ブチルの両方を含む。いくつかのこのような実施形態では、ブチルアクリレートの量に対して過剰量のブチルメタクリレートを使用することが好ましい場合がある。
【0039】
[039]
いくつかの実施形態では、以下の式(I)の少なくとも1つのモノマーAが使用される:
CH=C(R)-X-C(CH(R3-t (I)
(式中、Rは、水素又はアルキル基、より典型的には水素又はメチル基であり、
nは、0又は1、より典型的には1であり、
Xは、存在する場合、二価結合基、より典型的には、アミド、カーボネート、エステル、エーテル、尿素、又はウレタン結合、更により典型的には、いずれかの方向性のエステル結合(すなわち、-C(O)-O-又は-O-C(O)-)であり、
tは、0~3であり、
それぞれのRは、存在する場合、独立して、所望によりそれ自体分枝鎖であってもよい有機基、より典型的には、所望により1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、P、Siなど)を含んでもよいアルキル基であり;かつ、
2つ以上のRは、所望により、互いに環式基を形成してもよい)。
【0040】
[040]
いくつかの実施形態では、tは1であり、両方のR基に存在する炭素原子の総数は、6、7、又は8である。このようなモノマーAの例としては、Hexionから市販されているVEOVA 9(Tg 70℃)、VEOVA 10(Tg -3℃)、及びVEOVA 11(Tg -40℃)モノマーが挙げられる。
【0041】
[041]
いくつかの実施形態では、tは0、1、又は2であり、少なくとも1つのRは分枝鎖有機基、より典型的には分枝鎖アルキル基である。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、三級又は四級の炭素原子を含む少なくとも1つのRが存在する。VEOVA
9モノマーは、このような分枝鎖モノマーの例である。
【0042】
[042]
本明細書に含まれる考察では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の構成要素に関して種々の重量割合が提供される。当業者には理解されるように、具体的に反することが示されない限り、これらの重量割合は、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分を形成するために使用されるモノマーの総重量に基づく。
【0043】
[043]
好ましい実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、30重量パーセント(「重量%」)超、好ましくは少なくとも35重量%、より好ましくは少なくとも40重量%、更により好ましくは少なくとも45重量%の1つ以上のモノマーAを含む。ここでは好ましくないが、いくつかの実施形態では、使用される他のモノマーのバランスに応じて、30重量%未満のこのようなモノマー(例えば、少なくとも20重量%のモノマーA)を使用することが可能である場合もある。上限量は限定されないが、典型的には、エチレン性不飽和モノマー成分は、100重量%未満、より典型的には80重量%未満、更により典型的には75重量%未満、更により典型的には65重量%未満の1つ以上のモノマーAを含むことになる。
【0044】
[044]
エチレン性不飽和モノマー成分には、1つ以上の(メタ)アクリレートの任意の組み合わせが含まれていてもよい。好適な(メタ)アクリレートとしては、本明細書に参照されているもののいずれかに加えて、以下の式(II):CH=C(R)-CO-OR(式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、好ましくは1~16個の炭素原子を含有するアルキル基、脂環式基、アリール基、シラン基、又はこれらの組み合わせである)の構造を有するものが挙げられる。必要に応じて、Rは、所望により、1つ以上の(例えば、1~3つの)部分(例えば、ヒドロキシ、ハロ、フェニル、及びアルコキシなど)で置換されてもよい。好適な(メタ)アクリレート(例えば、好適なアルキル(メタ)アクリレートを含む)の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びこれに類するもの、これらの置換変異体(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート又はフェニル(メタ)アクリレートの環置換変異体)、並びにこれらの異性体及び混合物が挙げられる。
【0045】
[045]
特定の好ましい実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分に含まれる任意の(メタ)アクリレートに関して、それぞれのRは、独立して、水素又はメチルであり、それぞれのRは、独立して、シクロアルキル基又は2~8個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態では、それぞれのRは、独立して、水素又はメチルであり、それぞれのRは、独立して、2~4個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0046】
[046]
典型的には、(メタ)アクリレート(例えば、1つの(メタ)アクリレート、又は2つ以上の(メタ)アクリレートの混合物)は、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分のかなりの部分を構成することになる。いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレートは、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも95重量%、又は更には99重量%以上を構成する場合がある。上述の重量割合は、モノマーのうちの1つ以上が「モノマーA」としても認められ得るかどうかにかかわらず、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分中に存在する全ての(メタ)アクリレートモノマーを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のメタクリレートモノマーが、この段落内に記述される量でエチレン性不飽和モノマー成分中に存在する。
【0047】
[047]
いくつかの実施形態では、アルキル(メタ)アクリレートは、乳化重合エチレン性不飽和モノマーの少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも95重量%、又は更には99重量%以上を構成してもよい。上述の重量割合は、全てのこのようなモノマーも(メタ)アクリレートであるという事実にかかわらず、また、モノマーのうちの1つ以上が「モノマーA」としても認められ得るかどうかにかかわらず、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分中に存在する全てのアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0048】
[048]
いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分中に存在する(メタ)アクリレートの大部分(例えば、>50重量%、≧60重量%、≧70重量%、≧80重量%、≧90重量%、≧95重量%など)又は更には全てが、メタクリレート、より好ましくはアルキルメタクリレートである。好ましいメタクリレートの例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、及びこれらの異性体(例えば、t-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートなど)が挙げられる。いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、n-ブチルメタクリレート及びエチルメタクリレートを両方含む。いくつかのこのような実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、(i)n-ブチルメタクリレート及びエチルメタクリレートと、(ii)1つ以上のアルキルアクリレート、より典型的には1つ以上の「低Tg」アルキルアクリレートモノマー(例えば、ホモポリマーのTgが≦50℃、≦40℃、≦30℃、≦20℃、≦10℃、≦0℃、≦-10℃、又は≦-20℃)、例えば、エチルアクリレート(そのホモポリマーのTg -22℃)、n-プロピルアクリレート(そのホモポリマーのTg -37℃)、メチルアクリレート(そのホモポリマーのTg 10℃)、及び/又はn-ブチルアクリレート(そのホモポリマーのTg -54℃)を少なくとも含む。したがって、いくつかの実施形態では、ホモポリマーのTgが0℃未満(又は上に参照した他のTg値のうちのいずれか未満)である、1つ以上のエチレン性不飽和モノマー、例えば、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレート、より典型的には1つ以上のアルキルアクリレートを含むことが望ましい場合がある。
【0049】
[049]
いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、C1~C3炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含む。メタクリル酸のアルファ炭素に結合しているメチル基は、このようなC1~C3炭化水素基であるとはみなされない。同様に、ビニルモノマーのビニル基は、このようなC1~C3炭化水素基中に存在するとはみなされない。好ましいこのような炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、及びイソプロピル基が挙げられる。このようなモノマーの例としては、アルキル基(例
えば、上記式(II)におけるR基)がC1~C3アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びこれらの混合物など)であるアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。C1~C3炭化水素基を有する好ましいこのようなモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、例えば、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、又は少なくとも40重量%を含む任意の好適な量のこのようなモノマーを含むことができる。典型的には、C1~C3炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーは、70重量%未満、より典型的には65重量%未満、更により典型的には60重量%未満を構成する。いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、約45~約55重量%のC1~C3炭化水素基を有するエチレン性不飽和モノマーを含む。
【0050】
[050]
二官能性(メタ)アクリレートモノマーは、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分中にも使用してもよい。例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、及びこれに類するものが挙げられる。
【0051】
[051]
いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、少量(例えば、5重量%未満、2重量%未満、又は1重量%未満)の酸又は無水物官能性エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。好適なこのような酸又は無水物官能性モノマーの例としては、本明細書に開示されるポリエーテル-アクリレートコポリマーのいずれかのアクリレート部分と共に使用するために開示されているもののいずれかが挙げられる場合がある。
【0052】
[052]
エチレン性不飽和モノマー成分は、任意の他の好適なモノマーもまた含んでもよい。例えば、好適な他のビニルモノマーとしては、イソプレン、ジアリルフタレート、共役ブタジエン、ビニルナフタレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドなど)、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、及びこれに類するもの、並びにこれらの変異体及び混合物が挙げられる場合がある。
【0053】
[053]
いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、いかなるオキシラン基含有モノマーも含有しない。
【0054】
[054]
目下の好ましい実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、いかなるアクリルアミド型モノマー(例えば、アクリルアミド又はメタアクリルアミド)も含まない。
【0055】
[055]
乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、所望により、スチレン以外の1つ以上のビニル芳香族化合物を含んでもよい。このようなビニル芳香族化合物は、置換スチレン化合物及び/又は他の種類のビニル芳香族化合物(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなどの本明細書に記載されるアリール基含有エチレン性不飽和モノマーのいずれか)であってもよい。いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、存在する場合、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満のビニル芳
香族化合物を含む。いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、このような化合物を実質的に含まない。
【0056】
[056]
いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、存在する場合、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の総重量に基づいて、10重量%未満、20重量%未満、40重量%未満、50重量%未満、60重量%未満、又は70重量%未満の量のメチルメタクリレートを含む。
【0057】
[057]
乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分用のいくつかの好ましいモノマー混合物の例を以下の表に提供する。モノマーのカテゴリの記載にはいくつか重複があることに留意すべきである。例えば、ブチルメタクリレートは、モノマーA、アルキル(メタ)アクリレート、及びメタクリレートである。更に、表に列挙されていないモノマーの種類(例えば、アリールアクリレート、(メタ)アクリレートでもモノマーAでもないエチレン性不飽和モノマーなど)がモノマー混合物中に含まれている場合もある。
【0058】
【化1】
【0059】
[058]
乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、任意の好適なTg値を呈する場合がある。感受性の高い着香料製品(例えば、特定の香味料が非常に低濃度で存在する特定のコーラ)及び/又は化学的に攻撃的な食品又は飲料製品(例えば、高酸性、高塩分、及び/又は高脂肪)に露出される内部の缶コーティングなどのいくつかの実施形態では、Flory-Fox式によって判定したとき、約0℃超、好ましくは約20℃超、更により好ましくは約30℃超、更により好ましくは約40℃超、又は約50℃超のTgを有する乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分を使用することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、更に、約60℃超又は約70℃超のTgさえ有する場合がある。Tgは、Flory-Fox式によって判定したとき、典型的には約100℃未満、より典型的には約90℃未満である。乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が2段以上の段階を含む場合、使用される全モノマープールにFlory-Fox式を適用すべきである(例えば、独立してそれぞれのモノマー段階を考慮するのとは対照的に)。乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、(例えば、モノマーがホモ重合することができないため)ホモポリマーのTgを有しない1つ以上のモノマーを5重量%超含む場合、Flory-Fox式に依存する代わりに、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分と同じ全体のモノマー組成及びDSCを介して測定された実際のTgを使用して一段階参照ラテックスを作製することができる。乳化重合エチレン性不飽和量が、ホモポリマーのTgを有しない1つ以上のモノマーを5重量%以下含む場合、1つ以上のこのようなモノマーは無視することができ、TgはFlory-Fox式によって判定される。
【0060】
[059]
水分散性ポリマーとは別にエチレン性不飽和モノマー成分が重合される場合があることが想到されるが、好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマー成分は、その中に分散している水分散性ポリマーを含む水性組成物中で重合する。好ましくは、水分散性ポリマーは、エチレン性不飽和モノマー成分の乳化重合を支持するのを助ける「ポリマー界面活性剤」として機能する。したがって、いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和モノマー成分は、従来の非ポリマー界面活性剤(例えば、アミンで中和されたドデシルベンゼンスルホン酸などの低分子量界面活性剤、又は他のこのような従来の界面活性剤)を使用することなく、水分散性ポリマーの存在下で重合する。
【0061】
[060]
水分散性ポリマーは、例えば、1つ以上のアクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリシリコーンポリマー、ポリウレタンポリマー、又はこれらのコポリマー(例えば、ポリエーテル-アクリレートコポリマー、ポリエステル-アクリレートコポリマーなど)を含む、任意の好適なポリマー又はポリマーの組み合わせとすることができる。水分散性ポリマーは、任意の好適な水分散基(複数可)を有してもよい。典型的には、水分散性ポリマーは、1つ以上の塩の基(salt groups)(例えば、塩基で中和された酸又は無水物基などのアニオン性塩の基)及び/又は
塩形成基(例えば、塩基基及び/又は酸基若しくは無水物基)を含む。好ましい実施形態では、水分散性ポリマーは、好ましくは好適な量の酸又は無水物基が好適な塩基、より好ましくは不安定性塩基(fugitive base)(例えば、アンモニア又はアミンなどの窒素含
有塩基)で中和されている酸又は無水物官能性ポリマーである。
【0062】
[061]
いくつかの実施形態では、水分散性ポリマーは、フリーラジカル重合エチレン性不飽和モノマー成分(例えば、スチレンを含まないビニル付加成分)を含む。好ましいこのような実施形態では、スチレンを含まないビニル付加成分は、1つ以上の酸又は無水物官能性モノマー(例えば、メタクリル酸)及び典型的には1つ以上の(メタ)アクリレート、より典型的には1つ以上のメタクリレート、更により典型的には1つ以上のアルキルメタクリレート(例えば、エチルメタクリレート及び/又はブチルメタクリレート)を含むスチレンを含まないエチレン性不飽和モノマー混合物から、所望により1つ以上のアクリレート及び/又はアルキルアクリレート(例えば、エチルアクリレート)と組み合わせて形成され、当該モノマー混合物は、水分散性ポリマーの存在又は非存在下において有機溶媒中で重合する。いくつかの実施形態では、水分散性ポリマーは、ポリエーテル-アクリレートコポリマー、より好ましくは、スチレンに由来するいかなる構造単位も含まない芳香族ポリエーテル-アクリレートである。このような実施形態では、ポリエーテル-アクリレートコポリマーを形成するために用いられるポリエーテルポリマーは、好ましくは、ポリエーテル-アクリレートコポリマーの総重量に基づいて少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、更により好ましくは少なくとも60重量%以上のポリエーテル-アクリレートコポリマーを含む。典型的には、ポリエーテルポリマーは、ポリエーテル-アクリレートコポリマーの95重量%未満、より典型的には90重量%未満、更により典型的には85重量%未満を構成する。
【0063】
[062]
いくつかの実施形態では、水分散性ポリマーは、リン酸塩ポリマーであってよい。このような水分散性ポリマーの例としては、オキシラン基を有するポリマー、好ましくはオキシラン基を有する芳香族ポリエーテルポリマーと、リン酸又は関連化合物との反応生成物が挙げられる。このような水分散性ポリマーの具体例は、芳香族ポリエーテルリン酸エステルポリマーである。このようなリン酸化ポリマーは、所望の分子量及び水分散度特性を実現することができるようにするために1つ以上の他の塩の基を更に含んでいてもよい。
【0064】
[063]
水分散性ポリマーは、任意の好適な分子量を有することができる。典型的には、水分散性ポリマーの数平均分子量は、約1,500~約50,000、より典型的には約2,000~約20,000である。
【0065】
[064]
いくつかの実施形態では、ポリエステルポリマーのTgは、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約60℃、更により好ましくは少なくとも約70℃、又は少なくとも80℃である。典型的には、ポリエーテルポリマーのTgは、150℃未満、より典型的には130℃未満、更により典型的には110℃未満であることになる。この文脈では、Tgは、ポリエーテルポリマー単独のTg値を指す(例えば、ポリエーテル-アクリレートコポリマーを形成する前)。示差走査熱量測定法(DSC)は、ポリエーテルポリマーのTgを判定するために有用な方法の例であり、代表的なDSC方法論を本明細書において以下に提供する。
【0066】
[065]
水分散性ポリマーがポリエーテルポリマー又はポリエーテルポリマーを含む成分から形成されるポリエーテル-アクリレートコポリマーである実施形態では、ポリエーテルポリマーは、典型的には、少なくとも2,000、より典型的には少なくとも3,000、更により典型的には少なくとも4,000の数平均分子量(Mn)を有する。当該ポリエーテルポリマーの分子量は、所望の用途に必要とされる分子量と同様に高くてもよい。しかし、典型的には、ポリエーテルポリマーのMnは約11,000を超えない。一部の実施形態では、ポリエーテルポリマーのMnは約5,000~約8,000である。水分散性ポリマーがポリエーテル-アクリレートコポリマーである実施形態では、ポリマー全体の分子量は、上述のものよりも高い場合があるが、ポリエーテルポリマー部分の分子量は、典型的には上記のとおりである。しかし、典型的には、このようなポリエーテル-アクリレートコポリマーのMnは、約20,000未満である。
【0067】
[066]
水分散性ポリマーは、水性担体液中にポリマーが安定に分散させることができる任意の好適な基又は基の組み合わせを含むことができる。水性分散体のポリマーを、非イオン性水分散基、塩の基(例えば、アニオン性及び/又はカチオン性の塩の基)、又はこれらの組み合わせを組み込むことによって水分散性にすることができる。本明細書で使用するとき、「水分散基」という用語は、水可溶性基も包含する。
【0068】
[067]
塩の基は、好ましい水分散基である。好適な塩の基の例としては、中和された酸基又は中和された塩基基が挙げられ、中和された酸基がここでは好ましい。中和された酸基の例としては、好適な塩基で少なくとも部分的に中和されたカルボン酸基又は無水物基が挙げられる。不安定性塩基がここでは好ましく、窒素含有塩基が好ましく、アミン(例えば、一級、二級、及び/又は三級アミン)が特に好ましい。
【0069】
[068]
特定の実施形態では、アミンは三級アミンである。好ましくは、三級アミンは、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノールとしても知られている)、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルメチルエタノールアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチル3-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチル2-ヒドロキシ-1-プロピルアミン、ジエチルメチルアミン、ジメチル1-ヒドロキシ-2-プロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N-メチルモルホリン、及びこれらの混合物から選択される。
特定の好ましい実施形態では、酸又は無水物官能性ポリマーは、水中においてアミンで少なくとも25%中和される。
【0070】
[069]
様々な酸若しくは無水物官能性モノマー又はその塩を、水分散性ポリマーに組み込むことができ、これらの選択は、所望の最終的なポリマー特性に依存する。いくつかの実施形態では、このようなモノマーは、エチレン性不飽和、より好ましくはアルファ、ベータ-エチレン性不飽和である。本発明のために好適なエチレン性不飽和酸又は無水物官能性モノマーとしては、反応性炭素-炭素二重結合及び酸性若しくは無水物基を有するモノマー又はその塩が挙げられる。好ましいこのようなモノマーは、3~20個の炭素、少なくとも1部位の不飽和、及び少なくとも1個の酸若しくは無水物基、又はその塩を有する。
【0071】
[070]
好適な酸官能性モノマーとしては、ポリマーを調製するために使用される所望による他のモノマー(複数可)と共重合可能なエチレン性不飽和酸(例えば、一プロトン性又は二プロトン性)、二塩基酸の無水物又はモノエステルが挙げられる。例示的な一塩基酸は、構造CH=C(R)-COOH(式中、Rは水素又は1~6個の炭素原子のアルキル基である)によって表されるものである。好適な二塩基酸としては、式R(COOH)C=C(COOH)R及びR(R)C=C(COOH)RCOOH(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素、1~8個の炭素原子のアルキル基、ハロゲン、3~7個の炭素原子のシクロアルキル基、又はフェニル基であり、Rは、1~6個の炭素原子のアルキレン基である)によって表されるものが挙げられる。これら酸と1~8個の炭素原子のアルカノールとの半エステルも好適である。
【0072】
[071]
有用なエチレン性不飽和酸官能性モノマーの例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アルファ-クロロアクリル酸、アルファ-シアノアクリル酸、クロトン酸、アルファ-フェニルアクリル酸、ベータ-アクリルオキシプロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、ソルビン酸、アルファ-クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、p-クロロケイ皮酸、ベータ-ステアリルアクリル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、トリカルボキシエチレン、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、メチレングルタル酸、及びこれに類するものなどの酸、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルマレイン酸、イタコン酸、2-メチルイタコン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。より好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。最も好ましい不飽和酸官能性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
[072]
好適なエチレン性不飽和無水物モノマーの例としては、上記酸に由来する化合物が挙げられる(例えば、純粋な無水物又はこのような混合物として)。好ましい無水物としては、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、及びマレイン酸無水物が挙げられる。
【0074】
[073]
必要に応じて、上記酸の水性塩も使用してもよい。
[074]
水分散性ポリマーは、ポリマーが好ましくは水に安定に分散することができる限り、任意の好適な酸価を有していてよい。好ましい酸又は無水物官能性水分散性ポリマーは、ポリマー1gあたり少なくとも約40、より好ましくは少なくとも約55、更により好まし
くは少なくとも約70ミリグラム(mg)KOHの酸価を有する。好適な酸価の上限範囲は特に限定されないが、典型的には、酸価は、ポリマー1gあたり約400mgKOH未満、より典型的には約300mgKOH未満、更により典型的には約200mgKOH未満になることになる。本明細書で言及する酸価は、BS EN ISO 3682-1998標準に従って計算してもよく、あるいは反応物質モノマーに基づいて理論的に判定してもよい。
【0075】
[075]
ポリエーテルポリマーは、好ましい水分散性ポリマーであり、好ましくはBPA、BPF、及びBPS(これらのエポキシドを含む)のそれぞれを実質的に含まない芳香族ポリエーテルとともに特に好ましい。このようなポリエーテルポリマーとしては、典型的には、二級ヒドロキシル基が挙げられ、より典型的には主鎖-CH-CH(OH)-CHセグメント中に存在する二級ヒドロキシル基が挙げられる。好ましい実施形態では、ポリエーテルポリマーは、(i)脂肪族、脂環式及び/又は芳香族のジエポキシドと、(ii)ポリマーを形成するためにジエポキシドの分子量を構築することができる展延剤化合物とを含む成分に由来する。上記(i)及び(ii)は、例えば約1.1:1~約1:1.1の化学量論比などの適切な比で互いに反応する場合がある。
【0076】
[076]
好適な展延剤化合物の例としては、ジオール、二酸、及び酸とヒドロキシル基との両方を有する化合物が挙げられる。二価フェノールは好ましい展延剤であり、特定の実施形態では多価モノフェノールとともに好ましい。二価モノフェノール化合物の例としては、カテコール及び置換カテコール(例えば、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール、及びこれに類するもの);ヒドロキノン及び置換ヒドロキノン(例えば、メチルヒドロキノン、2,5-ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、テトラメチルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、2,5-ジエチルヒドロキノン、トリエチルヒドロキノン、テトラエチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、及びこれに類するもの);レゾルシノール及び置換レゾルシノール(例えば、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、2,5-ジメチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、4-ブチルレゾルシノール、4,6-ジ-tert-ブチルレゾルシノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルレゾルシノール、及びこれに類するもの);並びにこれらの変異体及び混合物が挙げられる。
【0077】
[077]
好適なジエポキシドの例としては、置換二価フェノール(例えば、テトラメチルビスフェノールF、ジ-tert-ブチルヒドロキノンなどのオルト置換二価フェノール、及びこれに類するもの)、芳香族ジオール(例えば、ベンゼンジメタノール、バニリルアルコール、フランジメタノール、及びこれに類するもの)、芳香族二酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれに類するもの)、脂肪族ジオール、脂肪族二酸、脂環式ジオール(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールなどのシクロブタンジオール)、脂環式二酸(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジカルボン酸などのシクロブタン二酸)、及びこれらの組み合わせのジエポキシド(例えば、これらのジグリシジルエーテル又はエステル)が挙げられる。
【0078】
[078]
いくつかの実施形態では、水分散性ポリマーは、(例えば、適切な比(例えば、約1.1:1~約1:1.1の化学量論比)で反応した)二価フェノール及び二価フェノールのジエポキシドを含む成分の反応生成物である。
【0079】
[079]
好適なポリエーテルポリマーの例は、米国特許第9,409,219号、米国特許出願公開第2013/0206756号、同第2015/0021323号、国際特許公開公報第2015/160788号、同第2015/164703号、同第2015/057932号、及び同第2015/179064号に開示されている。
【0080】
[080]
当業者に周知の技術を使用して、水中で還元できないポリマーを水分散性にすることができる。いくつかの実施形態では、ポリマー(例えば、芳香族ポリエーテルポリマー又は他のポリマー)は、1つ以上の水分散基(例えば、塩又は塩形成基)を有する1つ以上の物質(例えば、モノマー、オリゴマー、又はポリマー)に共有結合して、ポリマーを水分散性にする。塩、塩形成、又は水分散基を含有する物質は、例えば、(i)ポリマーの形成前、形成中、若しくは形成後にその場で形成されるか、又は(ii)予形成された若しくは新たに形成された(nascent)ポリマーと反応した予形成物質として提供されるオリ
ゴマー又はポリマーであってもよい。共有結合は、例えば、炭素-炭素二重結合、水素引き抜きを伴う反応を介して(例えば、米国特許第4,212,781号に記載されているものなどの、水素引き抜きを介した過酸化ベンゾイルにより媒介されるグラフト化を伴う反応を介して)、又は例えば、縮合反応において生じるものなどの相補的な反応性官能基の反応を含む、任意の好適な手段によって達成されてもよい。一実施形態では、連結化合物は、ポリマー及び塩又は塩形成基を含有する物質を共有結合させるために利用される。特定の好ましい実施形態では、塩又は塩形成基を有する1つ以上の物質は、ビニル付加成分(例えば、ビニル付加ポリマー)であり、これは、典型的にはアクリル物質(例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、及びこれに類するもののうちの1つ以上を含むエチレン性不飽和モノマー成分から形成される)であり、より好ましくは酸又は無水物官能性アクリル物質である。
【0081】
[081]
一実施形態では、水分散性ポリマーは、アミン、より好ましくは三級アミンの存在下で、予形成ポリマー(例えば、(a)例えば、オキシラン官能性ポリエーテルポリマーなどのオキシラン官能性ポリマーと、(b)例えば、酸官能性アクリルポリマーなどの酸官能性ポリマー)から形成されてもよい。必要に応じて、酸官能性ポリマーを、オキシラン官能性ポリマーとの反応前にアミン、より好ましくは三級アミンと組み合わせて、少なくとも部分的に中和することができる。
【0082】
[082]
別の実施形態では、水分散性ポリマーは、エチレン性不飽和モノマーと反応して酸官能性ポリマーを形成するオキシラン官能性ポリマー(より好ましくは本明細書に記載されるポリエーテルポリマー)から形成されてもよく、次いで、これを、例えば三級アミンなどの塩基で中和してもよい。したがって、例えば、一実施形態では、水分散性ポリマーは、酸官能性アクリル基を(例えば、過酸化ベンゾイルの使用を介して)オキシラン官能性ポリマーへとグラフトするための手法について記載している、米国特許第4,285,847号及び/又は同第4,212,781号のアクリルの重合の教示に従って形成されてもよい。別の実施形態では、アクリルの重合は、エチレン性不飽和モノマーのポリマー中に存在する不飽和物との反応を通して達成されてもよい。例えば、このような手法の例に関しては、米国特許第4,517,322号及び/又は米国特許出願公開第2005/0196629号を参照されたい。
【0083】
[083]
別の実施態様では、水分散性ポリマーは、構造E-L-A(式中、「E」は、ポリエーテルポリマーから形成されたポリマーのポリエーテル部分であり、「A」は、ポリマーの
重合アクリル部分であり、「L」は、EをAに共有結合させるポリマーの結合部分である)を有して形成されてもよい。このようなポリマーは、例えば、(a)好ましくは約2つのオキシラン基を有するポリエーテルポリマーと、(b)好ましくは(i)炭素-炭素二重結合、共役炭素-炭素二重結合、又は炭素-炭素三重結合及び(ii)オキシラン基と反応することができる官能基(例えば、カルボン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基など)を有する不飽和結合化合物とから調製されてもよい。好ましい連結化合物は、12個以下の炭素原子を含有し、ソルビン酸が、好ましいこのような連結化合物の一例である。アクリル部分は、好ましくは、1つ以上の塩の基又は塩形成基(例えば、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸モノマー中に存在するような酸基)を含む。このようなポリマーは、例えば、所望により米国特許第5,830,952号又は米国特許出願公開第2010/0068433号に開示されている物質及び手法と組み合わせて、米国特許第9,409,219号、米国特許出願公開第2013/0206756号、同第2015/0021323号、国際特許公開公報第2015/160788号、同第2015/057932号、又は同第2015/179064号に記載されているBPA及びBADGEを含まないポリエーテルポリマーを使用して形成されてもよい。
【0084】
[084]
アクリル成分を使用してポリマーを水分散性にする上記アプローチでは、アクリル成分は、典型的には、1つ以上のα,β-不飽和カルボン酸を含むエチレン性不飽和モノマー混合物から形成されるが、任意の好適な酸又は無水物官能性モノマーを使用してよい。1つ以上のα,β-不飽和カルボン酸は、好ましくは塩基による中和後にポリマーを水分散性にする。好適なα,β-不飽和カルボン酸モノマーとしては、本明細書において既に参照したもののうちのいずれかが挙げられる。
【0085】
[085]
水分散性ポリマー(「a」)及び乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分(「b」)は、互いに対して任意の好適な重量比で使用することができる。例えば、(a):(b)の重量比は10:1~1:10の範囲とすることができる。好ましい実施形態では、重量比(a):(b)は、40:60~90:10、より好ましくは50:50~80:20、更により好ましくは60:40~70:30である。
【0086】
[086]
乳化重合の条件に関して、エチレン性不飽和モノマー成分は、好ましくは、水分散性ポリマーの存在下において、水溶性フリーラジカル反応開始剤を用いて水性媒体中で重合する。ここでは好ましくないが、乳化重合エチレン性不飽和モノマーを別々に重合させ、次いで、後で水分散性ポリマーと混合することができることも想到される。
【0087】
[087]
重合の温度は、典型的には、0℃~100℃、好ましくは50℃~90℃、より好ましくは70℃~90℃、更により好ましくは80℃~85℃である。水性媒体のpHは、通常、5~12のpHに維持される。
【0088】
[088]
例えば、フリーラジカル反応開始剤として作用することが知られている1つ以上の水溶性ペルオキシドから、フリーラジカル反応開始剤を選択することができる。例としては、過酸化水素及びt-ブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。当該技術分野において周知のレドックス反応開始剤系(例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、エリソルビン酸、及び第一鉄錯体)も使用してもよい。いくつかの実施形態では、ベンゾインと過酸化水素との混合物が使用される。
【0089】
[089]
使用することができる重合開始剤の更なる例としては、重合温度で熱分解してフリーラジカルを発生する重合開始剤が挙げられる。例としては、水溶性の種と水不溶性の種との両方が挙げられる。使用することができるフリーラジカル反応開始剤の更なる例としては、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム又は過硫酸アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、又はリチウム)など);アゾ化合物(2,2’-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾ-ビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び1-t-ブチル-アゾシアノシクロヘキサンなど);ヒドロペルオキシド(t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素、t-アミルヒドロペルオキシド、メチルヒドロペルオキシド、及びクメンヒドロペルオキシドなど);過酸化物(過酸化ベンゾイル、過酸化カプリリル、ジ-t-ブチルペルオキシド、エチル3,3’-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、エチル3,3’-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、及びt-ブチルペルオキシピビレート(pivilate)など);過酸エステル(過酢酸t-ブチル、過フタル酸t-ブチル、及び過安息香酸t-ブチルなど);だけでなく、過炭酸塩(ジ(1-シアノ-1-メチルエチル)ペルオキシジカーボネートなど);過リン酸塩、及びこれに類するもの;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0090】
[090]
重合開始剤は、単独で又はレドックス系の酸化成分として用いることができ、これは、好ましくは、例えば、アスコルビン酸、リンゴ酸、グリコール酸、シュウ酸、乳酸、チオグリコール酸、又はアルカリ金属亜硫酸塩などの還元成分も含み、より具体的には、ヒドロ亜硫酸塩、次亜硫酸塩、又はメタ重亜硫酸塩(ヒドロ亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、及びメタ重亜硫酸カリウムなど)、又はホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、並びにこれらの組み合わせも含む。還元成分は、促進剤又は触媒活性化剤と称されることが多い。
【0091】
[091]
(存在する場合)反応開始剤及び促進剤は、好ましくは、共重合するモノマーの重量に基づいて、それぞれ約0.001%~5%の割合で使用される。必要に応じて、コバルト、鉄、ニッケル、又は銅の塩化物及び硫酸塩等のプロモーターを少量用いることができる。レドックス触媒系の例としては、tert-ブチルヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム/Fe(II)、及び過硫酸アンモニウム/重亜硫酸ナトリウム/ヒドロ亜硫酸ナトリウム/Fe(II)が挙げられる。
【0092】
[092]
必要に応じて、連鎖移動剤を使用してポリマーの分子量を制御することができる。
[093]
水分散性ポリマーの水性分散物の存在下におけるエチレン性不飽和モノマー成分の重合反応は、バッチ、間欠、又は連続操作として実行されてもよい。
【0093】
[094]
典型的には、適切な量の水及び水分散性ポリマーを反応器に仕込む。典型的には、次いで、反応器をフリーラジカル反応開始温度に加熱し、次いで、エチレン性不飽和モノマー成分を仕込む。水混和性溶剤もいくらか存在していてもよい。この温度で、フリーラジカル反応開始剤を添加し、重合温度で一定期間反応させ、重合温度、使用される具体的な反応開始剤、並びに重合するモノマーの種類及び量に依存して変動する添加速度で、残りのエチレン性不飽和モノマー成分(存在する場合)を漸増式に添加する。全てのモノマー成分を仕込んだ後、最後の加熱を行って重合を完了させる。次いで、反応器を冷却し、ラテックスを回収する。上記方法論は単なる例示であり、他の好適なプロセスも使用してもよいことを理解すべきである。
【0094】
[095]
いくつかの実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分のMnは、少なくとも約100,000、少なくとも約200,000、又は少なくとも約300,000である。乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分のMnの上限範囲は、限定されず、1,000,000以上であってよい。しかし、特定の実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和成分のMnは、約1,000,000未満、又は約600,000未満である。
【0095】
[096]
既に議論したように、好ましい実施形態では、水分散性ポリマー及び乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、両方ともラテックス中に存在し(例えば、同じラテックス粒子及び/又はラテックスコポリマー中に両方とも存在し)、当該ラテックスは、好ましくは、水分散性ポリマーの存在下でエチレン性不飽和モノマー成分を乳化重合することによって形成される。水分散性ポリマー及び乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は、所望により、互いに共有結合してもよい。
【0096】
[097]
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、水分散性ポリマー及び乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分を含有する、本明細書に記載される樹脂系を少なくともフィルム形成量含む。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、コーティング組成物の全樹脂固形分重量に対する水分散性ポリマー及び乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の固形分重量に基づいて、少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約65重量%、更により好ましくは少なくとも約80重量%の樹脂系(好ましくはラテックス樹脂系)を含む。コーティング組成物は、コーティング組成物の全樹脂固形分重量に対する水分散性ポリマー及び乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の固形分重量に基づいて、約100重量%以下、より典型的には約99重量%未満、更により典型的には約95重量%未満の樹脂系(好ましくはラテックス樹脂系)を含む。樹脂系がラテックスベースの樹脂系である特定の好ましい実施態様では、水分散性ポリマー及び乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の固形分重量は、コーティング組成物の主なフィルム形成剤として機能するラテックスの固形分重量である。
【0097】
[098]
典型的には、樹脂固形分は、コーティング固形分の少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも50重量%以上を構成する。いくつかの実施形態では、樹脂固形分は、コーティング固形分の全て又は実質的に全て(例えば、90又は95重量%超)を構成する。
【0098】
[099]
コーティング組成物は、所望により1つ以上の添加剤を含みかつ/又は様々なコーティング用途のためにレオロジー改質する(例えば、スプレーコーティング用途のために希釈する)ことによって、ラテックスエマルションから処方してよい。コーティング組成物が1つ以上の添加剤を含む実施形態では、添加剤は、好ましくは、ラテックスエマルション、又はコーティング組成物から形成される硬化したコーティングに悪影響を与えない。例えば、このような所望による添加剤は、組成物の審美性を高めるため、組成物の製造、加工、取り扱い、及び塗布を容易にするため、並びにコーティング組成物又はそれから得られる硬化したコーティングの特定の機能特性を更に向上させるためにコーティング組成物中に含まれてもよい。
【0099】
[0100]
このような所望による添加剤としては、例えば、触媒、染料、顔料、トナー、展延剤、
充填剤、潤滑剤、防食剤、流動制御剤、チキソトロープ剤、分散剤、酸化防止剤、接着促進剤、光安定剤、硬化剤、補助樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。それぞれの所望による添加剤は、好ましくは、意図する目的を果たすのに十分な量であるが、コーティング組成物又はそれから得られる硬化したコーティングに悪影響を及ぼさない量で含まれる。
【0100】
[0101]
1つの好ましい所望による添加剤は、硬化速度を増大させるための触媒である。触媒の例としては、強酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA、CytecからCYCAT 600として入手可能)、メタンスルホン酸(MSA)、p-トルエンスルホン酸(pTSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNDSA)、及びトリフリン酸)、四級アンモニウム化合物、リン化合物、並びにスズ、チタン、及び亜鉛化合物が挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、テトラアルキル又はテトラアリールホスホスニウムヨウ化物又は酢酸塩、オクタン酸スズ、オクタン酸亜鉛、トリフェニルホスフィン、及び当業者に公知の類似の触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
[0102]
使用される場合、触媒は、好ましくは、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.1重量%の量で存在する。更に、使用される場合、触媒は、これも好ましくは、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、約3重量%以下、より好ましくは約1重量%以下の不揮発性量で存在する。
【0102】
[0103]
別の有用な所望による成分は、潤滑剤(例えば、ワックス)であり、これは、コーティングされた金属基材のシートに潤滑性を付与することによって、金属クロージャ及び他の製造されたコーティング物品の製造を容易にする。好ましい潤滑剤としては、例えば、カルナバワックス及びポリエチレン型潤滑剤が挙げられる。使用される場合、潤滑剤は、好ましくは、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも約0.1重量%で、かつ好ましくは約2重量%以下、より好ましくは約1重量%以下の量でコーティング組成物中に存在する。
【0103】
[0104]
別の有用な所望による成分はシロキサン系及び/又はポリシリコーン系物質などの、オルガノシリコン物質である。好適なこのような物質の代表例は、国際特許公開第2014/089410号及び同第2014/186285号に開示されている。
【0104】
[0105]
別の有用な所望による成分は、二酸化チタンなどの顔料である。使用される場合、顔料は、コーティング組成物の総固形分重量に基づいて、約70重量%以下、より好ましくは約50重量%以下、更により好ましくは約40重量%以下の量でコーティング組成物中に存在する。
【0105】
[0106]
また、コーティング組成物には、1つ以上の所望による硬化剤(例えば、時に「架橋剤」と称される架橋性樹脂)も組み込んでもよい。特定の架橋剤の選択は、典型的には、処方される具体的な生成物に依存する。例えば、いくつかのコーティングは、濃く着色される(例えば、金色のコーティング)。これらのコーティングは、典型的には、それ自体が黄色みを帯びた色を有する傾向がある架橋剤を使用して処方されてもよい。対照的に、白
色コーティングは、一般的に、非黄変架橋剤を使用して、又は黄変架橋剤を少量のみ使用して処方される。好ましい硬化剤は、BPA、BPF、BPS、これらのエポキシド(例えば、BADGE)、及びエポキシノボラックのそれぞれを実質的に含まない。
【0106】
[0107]
周知のヒドロキシル反応性硬化性樹脂のいずれを使用することができる。例えば、フェノプラスト、ブロックトイソシアネート、及びアミノプラスト硬化剤、並びにこれらの組合せを用いてもよい。更に又は別の方法としは、カルボキシル反応性硬化樹脂を使用してもよい。
【0107】
[0108]
フェノプラスト樹脂は、アルデヒドとフェノールとの縮合生成物を含む。ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドが、好ましいアルデヒドである。様々なフェノール、例えば、フェノール、クレゾール、p-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノ-ル、p-tert-アミルフェノール、及びシクロペンチルフェノールを使用することができる。
【0108】
[0109]
アミノプラスト樹脂は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、及びベンズアルデヒドなどのアルデヒドと、尿素、メラミン、及びベンゾグアナミンなどのアミノ又はアミド基含有物質との縮合生成物である。好適なアミノプラスト架橋性樹脂の例としては、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、エステル化メラミン-ホルムアルデヒド、及び尿素-ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。好適なアミノプラスト架橋剤の1つの具体例は、Cytec Industries,Inc.から商標名CYMEL 303として市販されている完全にアルキル化したメラミン-ホルムアルデヒド樹脂である。
【0109】
[0110]
他の一般的に好適な硬化剤の例は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、シクロヘキシル-1,4-ジイソシアネート、及びこれに類するものなどのブロックされているか又はブロックされていない脂肪族、脂環式、又は芳香族の、二価、三価、又は多価のイソシアネートである。一般的に好適なブロックイソシアネートの更なる例としては、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートの異性体、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも約300、より好ましくは少なくとも約650、更により好ましくは少なくとも約1,000の数平均分子量を有するブロックイソシアネートを使用する。
【0110】
[0111]
他の好適な硬化剤としては、例えば、ベンゾオキサジンベースのフェノール樹脂などのベンゾオキサジン硬化剤が挙げられ得る。ベンゾオキサジンベースの硬化剤の例は、米国特許出願公開第2016/0297994号に提供される。
【0111】
[0112]
アルカノールアミド型硬化剤も使用してもよい。好ましいこのような硬化剤としては、例えば、EMS-CHEMIE AGによって商標名PRIMID(例えば、PRIMID XL-552及びQM-1260製品)として販売されているものなどのベータ-ヒドロキシアルキル-アミド架橋剤が挙げられる。
【0112】
[0113]
コーティング組成物中の硬化剤(例えば、架橋剤)の濃度は、硬化剤の種類、焼成の時間及び温度、及びコポリマー粒子の分子量に依存する場合がある。使用される場合、架橋剤は、典型的には、約50重量%以下、好ましくは約30重量%以下、より好ましくは約15重量%以下の量で存在する。使用される場合、架橋剤は、典型的には、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約1重量、更により好ましくは少なくとも約1.5重量%の量で存在する。これらの重量%は、コーティング組成物の総樹脂固形分重量に基づく。
【0113】
[0114]
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、外部架橋剤を使用することなく(例えば、フェノール性架橋剤なしで)硬化されてもよい。更に、コーティング組成物は、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド含有物質を実質的に含んでいない場合があり、より好ましくはこれらの化合物を本質的に含んでいない場合があり、更により好ましくはこれらの化合物を本質的に完全に含んでいない場合があり、最も好ましくはこれらの化合物を完全に含んでいない場合がある。
【0114】
[0115]
好ましい実施形態では、コーティング組成物は、また、ビスフェノールA(「BPA」)、ビスフェノールF(「BPF」)、ビスフェノールS(「BPS」)(これらのエポキシド(例えば、BPAのジグリシジルエーテル(「BADGE」)などのこれらのジグリシジルエーテル)を含む)に由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか又は完全に含まない。更に、コーティング組成物は、好ましくは、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか又は完全に含まない。より好ましくは、コーティング組成物は、BPS以上のエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか又は完全に含まない。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、ビスフェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか又は完全に含まない。例として、ビスフェノールのエポキシドに由来する構造単位(例えば、ビスフェノールのジグリシジルエーテル)は、ビスフェノールに由来する構造単位であるとみなされる。
【0115】
[0116]
更により好ましくは、コーティング組成物は、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,6-ジブロモフェノール)を超えるエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか又は完全に含まない。最適には、コーティング組成物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸を超えるエストロゲンアゴニスト活性を有する二価フェノール又は他の多価フェノールに由来するいかなる構造単位も実質的に含まないか又は完全に含まない。好ましくは、コーティング組成物を含む組成物の任意の他の成分についても同じことが当てはまる。例えば、このような構造単位及び適用可能な試験方法の考察については、米国特許出願公開第2013/0316109号を参照されたい。
【0116】
[0117]
好ましい実施形態では、コーティング組成物は、塩素化ビニルモノマーなどのハロゲン化モノマーを(遊離していようと重合していようと)、実質的に含まないか又は完全に含まない。
【0117】
[0118]
コーティング組成物は、所望により、様々なコーティングの塗布のためにレオロジー改
質もまたされていてもよい。例えば、コーティング組成物中の総固形分含量を低減するために、コーティング組成物を追加量の水性担体で希釈してもよい。あるいは、コーティング組成物中の総固形分含量を増大させるために、水性担体の一部を除去して(例えば、蒸発させて)もよい。コーティング組成物中の最終的な総固形分含量は、用いられる具体的なコーティングの塗布(例えば、スプレーコーティング)、具体的なコーティングの使用(例えば、缶の内面用)、コーティング厚さ、及びこれに類するものに依存して変動してもよい。
【0118】
[0119]
特定のスプレーコーティングの塗布(例えば、アルミニウム飲料缶を含む、食品又は飲料缶のための内面スプレー)のためなどのいくつかの実施形態では、コーティング組成物の総固形分重量は、コーティング組成物の総重量に基づいて、約5%超、より好ましくは約10%超、更により好ましくは約15%超であってもよい。これらの実施形態では、コーティング組成物の総固形分重量は、コーティング組成物の総重量に基づいて、約40%未満、より好ましくは約30%未満、更により好ましくは約25%未満であってもまたよい。これらの実施形態のうちのいくつかでは、コーティング組成物は、約18%~約22%の範囲の総固形分重量を有してもよい。水性担体は、コーティング組成物の重量の残りを構成してもよい。
【0119】
[0120]
必要に応じて、コーティング組成物は、例えば、1つ以上のアクリルポリマー、アルキドポリマー、エポキシポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリシリコーンポリマー、ポリエステルポリマー、並びにこれらのコポリマー及び混合物などの1つ以上の他の所望によるポリマーもまた含んでもよい。
【0120】
[0121]
コーティング組成物の水性担体は、水を含み、更に1つ以上の所望による有機溶媒を更に含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、水は、水性担体の総重量の約20重量%超、より好ましくは約35重量%超、更により好ましくは約50重量%超を構成する。いくつかの実施形態では、水は、水性担体の総重量の100重量%以下、より好ましくは約95重量%未満、更により好ましくは約90重量%未満を構成する。
【0121】
[0122]
理論に縛られることを意図するものではないが、好適な量の有機溶媒を含むことは、いくつかの実施形態では有益である(例えば、ある特定のコイルコーティングの塗布に対して、コーティング組成物の流動及び平滑性を修正し、ふくれを制御し、コイルコーターのライン速度を最大化する)可能性がある。したがって、特定の実施形態では、有機溶媒は、水性担体の総重量に基づいて、水性担体の0重量%超、より好ましくは約5重量%超、更により好ましくは約10重量%超を構成してもよい。これらの実施形態では、有機溶媒は、水性担体の総重量に基づいて、水性担体の約80重量%未満、より好ましくは約65重量%未満、更により好ましくは約50重量%未満もまた構成してもよい。いくつかの実施形態では、有機溶媒は、水性担体の40重量%未満を構成する。
【0122】
[0123]
コーティング組成物の粘度は、好ましくは、所与のコーティングの塗布に好適である。いくつかの実施形態では、コーティング組成物の平均粘度は、以下に記載する粘度試験(25℃におけるFord Viscosity Cup #2)に基づいて、約20秒超、より好ましくは25秒超、更により好ましくは約30秒超であってもよい。いくつかの実施形態では、コーティング組成物の平均粘度は、以下に記載する粘度試験(25℃におけるFord Viscosity Cup #2)に基づいて、約80秒未満、より好
ましくは60秒未満、更により好ましくは約50秒未満であってもまたよい。
【0123】
[0124]
本発明のコーティング組成物は、様々な異なるコーティング技術(例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、洗浄コーティング、浸しなど)を用いて様々な異なる基材に塗布されてもよい。好ましい実施形態では、コーティング組成物は、内面スプレーコーティングとして塗布される。上に簡潔に記載したとおり、コーティング組成物から形成される硬化したコーティングは、金属の食品及び飲用缶(例えば、2ピース缶、3ピース缶、及びこれに類するもの)の上への使用に特に好適である。2ピース缶(例えば、2ピースビール又はソーダ缶、及び特定の食品缶)は、典型的には、絞り及びしごき(「D&I」)プロセスによって製造される。また、硬化したコーティングは、食品又は飲料と接触する状況(本明細書ではまとめて「食品接触」と称する)において用いるためにも好適であり、このような缶の内側の上に用いても又は外側の上に用いてもよい。
【0124】
[0125]
本発明の好ましいコーティング組成物は、アルミニウム又は鋼製の2ピース絞り及びしごき飲料又は食品缶上にスプレー塗布された内部コーティングを形成するうえで特に好適である。
【0125】
[0126]
本開示のコーティング組成物は、単層コーティング系の1つの層として存在してもよく、又は多層コーティング系の1つ以上の層として存在してもよい。当該コーティング組成物は、下塗り、中塗り、上塗り、又はこれらの組み合わせとして使用されてもよい。特定の層及びコーティング系全体のコーティング厚さは、使用されるコーティング材料、基材、コーティング塗布方法、及びコーティングされた物品の最終用途に応じて異なることになる。開示されるコーティング組成物から形成される1つ以上の層を含む単層又は多層コーティング系は、任意の好適な全体コーティング厚さを有してもよいが、典型的には、全体平均乾燥コーティング重量は約0.6グラム/平方メートル(「gsm」)~約13gsm、より典型的には約1.0gsm~約6.5gsmである。食品又は飲料容器用の密閉部(例えば、ねじ切り金属密閉部)上で使用するためのコーティング系の平均全コーティング重量は、約5.2gsm以下であってもよい。コーティング組成物をドラム(例えば、食品又は飲料製品と共に使用するドラム)上の内部コーティングとして使用する特定の実施形態では、全コーティング重量は約13gsmであってもよい。
【0126】
[0127]
剛性の食品若しくは飲料缶又はその一部を形成する際に使用される金属基材は、典型的には約125マイクロメートル~約635マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する。電気錫めっき鋼、冷延鋼板、及びアルミニウムが、食品若しくは飲料缶又はその一部用の金属基材として一般的に使用される。例えば包装物品の形成において金属箔基材が使用される実施形態では、当該金属箔基材の厚さを上記よりも更に薄くしてもよい。
【0127】
[0128]
本開示のコーティング組成物は、基材が、例えば、食品若しくは飲料用容器又はそれらの一部分などの物品へと成型される前又は後のいずれかで、基材に塗布されてもよい。一実施形態では、食品若しくは飲料缶又はその一部を形成する方法が提供され、この方法は本明細書に記載されるコーティング組成物を金属基材に塗布すること(例えば、当該組成物を、平面コイル又はシートの形態の金属基材に塗布すること)と、当該組成物を硬化させることと、当該基材を包装容器又はその一部(例えば、食品若しくは飲料缶又はその一部)へと成形する(例えば、スタンピングを介して)こととを含む。例えば、開示されるコーティング組成物の硬化したコーティングがその表面上に施されている2ピース若しく
は3ピース缶又はその一部、例えば、リベット接続された飲料缶の端部(例えば、ソーダ又はビール缶)は、このような方法で形成することができる。別の実施形態では、包装容器又はその一部(例えば、食品若しくは飲料缶又はその一部)を提供することと、本明細書に記載されるコーティング組成物を、(例えば、スプレー塗布、浸しなどを介して)このような包装容器の又はその一部の内側部分、外側部分、又は内側部分と外側部分との両方に塗布することと、当該組成物を硬化させることと、を含む食品又は飲料缶の形成方法が提供される。
【0128】
[0129]
コーティング組成物を基材上に塗布した後に、この組成物を、例えば、従来法若しくは対流法のいずれかによるオーブン焼成、又はコーティングを硬化させるために好適な高温をもたらす任意の他の方法を含む、様々なプロセスを使用して硬化することができる。硬化プロセスは、個別ステップ又は組み合わせステップのいずれかで実施可能である。例えば、コーティング組成物を大部分が架橋されていない状態のままにするために、基材を周囲温度で乾燥することができる。次いで、コーティングされた基材を加熱し、組成物を完全に硬化させる。ある特定の状況では、本開示のコーティング組成物は、1つの工程で乾燥及び硬化されてもよい。
【0129】
[0130]
硬化条件は、塗布の方法及び意図される最終用途に応じて異なる。硬化プロセスは、例えば、約100℃~約300℃、より典型的には約177℃~約250℃の範囲のオーブン温度を含む、任意の好適な温度において実施してもよい。コーティングされる基材が金属コイル(例えば、飲料缶の端部を形成するための金属コイル)である場合、例えば、コーティングされた金属基材を好適な期間にわたって、好ましくは約177℃超のピーク金属温度(「PMT」)に加熱することによって、塗布されたコーティング組成物の硬化を行ってもよい。より好ましくは、コーティングされた金属コイルは、少なくとも約218℃のPMTまで好適な期間(例えば、約5~900秒間)加熱される。
【0130】
[0131]
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、食品又は飲料缶(例えば、2ピース食品又は飲料缶)の内部上に効果的かつ均一にスプレー塗布され、基材をコーティングし、連続的な硬化したコーティング(すなわち、好適に低い初期金属露出値を呈し、それによって、当該基材が効果的にコーティングされていることを示すコーティング)を形成することができる内側スプレーコーティング組成物である。
【0131】
[0132]
硬化したコーティングの好ましいTgとしては、約50℃超、より好ましくは約60℃超、更により好ましくは約70℃超、そしていくつかの実施形態では約80℃超のものが挙げられる。硬化したコーティングの好ましいTgとしては、約120℃未満、より好ましくは約115℃未満、更により好ましくは約110℃未満、いくつかの実施形態では約100℃未満のものが挙げられる。好適なDSC方法論の例を以下に提供する。
【0132】
[0133]
更に、意図する食品又は飲料製品によるコーティング透過を防ぐか又は別の方法で低減するために、硬化したコーティングは、好ましくは、好適に疎水性である。例えば、硬化したコーティングは、周囲条件下で試験したとき、約80超、より好ましくは約85超、更により好ましくは約90超の脱イオン水との接触角を有することができる。
【0133】
[0134]
いくつかの実施形態では、硬化したコーティングは、好ましくは、食品及び飲料容器用
の内部食品接触コーティング(例えば、内側スプレーコーティング)として用いるのに望ましい特性を呈する。例えば、硬化したコーティングは、好ましくは、以下のグローバル抽出試験に従って、約25百万分率(ppm)未満、より好ましくは約10ppm未満、更により好ましくは約1ppm未満のグローバル抽出を与える。更に、硬化したコーティングは、好ましくは、以下の初期金属露出試験に従って、約5ミリアンペア(mA)未満、より好ましくは約2mA未満、更により好ましくは約1mA未満の金属露出を呈する。
【0134】
[0135]
硬化後の加工工程(例えば、ネッキング及びドーム再形成)中、及び輸送又は使用中に合理的な高さから缶を落とした場合、コーティングが金属基材と共にたわむことができるように、内側スプレーコーティング並びに他の食品又は飲料缶コーティングにとって可撓性もまた重要である。いくつかの好ましい実施形態では、硬化したコーティングは、好ましくは、以下の落下損傷後金属露出試験に従って、約10mA未満、より好ましくは約3.5mA未満、更により好ましくは約2.5mA未満、最適には約1.5mA未満の金属露出を呈する。
【0135】
[0136]
また、本開示のコーティング組成物は、他のコーティング塗布においても用途を与える。これらの追加の塗布としては、洗浄コーティング、シートコーティング、及びサイドシームコーティング(例えば、食品用缶のサイドシームコーティング)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、電着塗装、押出コーティング、積層、粉末コーティング、及びこれに類するものなどの他の商業的コーティング塗布及び硬化法も想到される。また、コーティング組成物は、例えば、薬物接触表面上を含む定量吸入器(「MDI」)の表面上を含む、医薬品又は化粧品の包装用途においても有用である場合がある。実施例に記載されるものなどのポリマー及びコーティング組成物は、以下を含む様々な試験を使用して評価されてもよい。
【0136】
1.粘度試験
[0137]
この試験は、スプレー性及び他のコーティング塗布特性などのレオロジー的目的のために、ラテックスエマルション又はコーティング組成物の粘度を測定する。25℃でFord Viscosity Cup #2を使用し、ASTM D1200-88に従って試験を実施した。結果は秒単位で測定された。
【0137】
2.硬化条件
[0138]
飲料内部スプレーの焼成については、硬化条件は、180℃~225℃で60秒間、缶ドームで測定された温度を維持することを伴う。飲料端コイルの焼成については、硬化条件は、指定された時間内にピーク金属温度を提供するのに十分な温度の使用を伴う(例えば、204℃で10秒間とは、例えば、オーブン内で10秒間であり、ピーク金属温度が204℃に達することを意味する)。引用された構造体は以下のような試験によって評価された。
【0138】
3.初期金属露出
[0139]
この試験方法は、スプレーされたコーティングによって効果的にコーティングされなかった缶の内面の量を判定するものである。この判定は、導電性溶液(脱イオン水中1%NaCl)の使用を通してなされる。内部の「内側スプレー」コーティングは、典型的には、高圧エアレススプレーを用いて塗布される。典型的には、以下の最低フィルム重量:ビール缶については0.6グラム/平方メートル(gsm)、ソーダ缶については1.0g
sm、「保持が困難な(hard-to-hold)」製品の包装における使用を意図する缶については1.6gsm、が用いられる。
【0139】
[0140]
コーティングされた缶にこの室温伝導性溶液を充填し、電気プローブを缶の外側(コーティングされていない、導電性の)に接触させて取り付ける。缶の内側の中央において、第2のプローブを導電性溶液中に浸漬する。
【0140】
[0141]
缶の内側に何らかのコーティングされていない金属が存在する場合、これら2つのプローブの間に電流が流れ、好適な測定装置のLEDディスプレイ上に値として検知される。LEDは、伝達された電流をミリアンペア(mA)で表示する。流れた電流は、コーティングによって効果的に覆われなかった金属の量に正比例する。目標は、缶の内側上の100%コーティング被覆を達成することであり、これによって結果として0mAのLEDの読み取り値がもたらされることになる。好ましいコーティングは、3mA未満の金属露出値、より好ましくは2mA未満の値、更により好まくは1mA未満値を与える。商業的に容認可能な金属露出値は、典型的には、平均して2mA未満である。
【0141】
4.落下損傷後金属露出
[0142]
落下損傷耐性は、充填済み缶の落下をシミュレートする条件に供した後に、亀裂に対する耐性を有するコーティングされた容器の能力を測定するものである。亀裂の存在は、初期金属露出の項で既に記載したとおり、電解質溶液を介する電流の通過によって測定される。コーティングされた容器に電解質溶液(脱イオン水中1%NaCl)を充填し、初期金属露出を記録する。電解質溶液を除去し、次いで、缶に室温の水道水を充填する。2ピース「内側スプレー」飲料缶では、初期金属露出試験で記載したフィルム重量を使用することができる。
【0142】
[0143]
缶の底端が側壁と接触する縁領域(典型的には、飲料缶の「出縁(chime)」と称され
る)にへこみが形成されるように、衝撃用楔をチューブに対して位置決めする。水を充填した缶を24インチ(61センチメートル)の高さ(缶の底部と衝撃用楔上の衝撃点との間で測定)からチューブを通して斜面板の上へと落下させて、出縁領域にへこみを生じさせる。次いで、缶を180度回転させ、このプロセスを繰り返す。
【0143】
[0144]
次いで、缶から水を除去し、金属露出を再度上記のとおり測定する。損傷がない場合、初期金属露出値に対して電流(mA)の変化は観察されないことになる。典型的には、6個又は12個の容器の試験の平均を記録する。落下前及び落下後の金属露出結果を絶対値として報告する。ミリアンペア値が低いほど、落下損傷に対するコーティングの耐性がより良好である。好ましいコーティングは、10mA未満、より好ましい値は3.5mA未満、更により好ましい値は2.5mA未満、最適値は1.5mA未満の落下損傷後の金属露出値を与える。
【0144】
5.接着性
[0145]
コーティングされる基材にコーティングが接着するかどうかを評価するために、接着性試験を実施する。3M Company(Saint Paul,Minn.)から入手可能なSCOTCH610テープを用いて、ASTM D 3359-Test Method Bにより接着試験を実施した。一般的に、接着性は0~10の尺度を用いて評点
付けされ、ここで評点「10」は、接着不良がないことを示し(最良)、評点「9」は、コーティングの90%が接着したままであることを示し、評点「8」は、コーティングの80%が接着したままであることを示し、以下同様である。商業的に実現可能なコーティングについては、典型的には、評点10の接着が望ましい。
【0145】
6.白化耐性
[0146]
白化耐性は、様々な溶液による攻撃に対する耐性を示すコーティングの能力を測定する。典型的には、白化は、コーティングされたフィルムに吸収される溶液(例えば、水)の量によって測定される。フィルムが水を吸収する場合、一般的に、曇ったようになるか又は白く見える。白化は、一般的に0~10の尺度を用いて視覚的に測定され、ここで評点「10」は白化がないことを示し(最良)、評点「0」はフィルムの完全に白くなっていることを示す(最悪)。商業的に実現可能なコーティングについては、典型的には、白化の評点は7以上のが望ましく、9~10が最適である。
【0146】
7.耐食性
[0147]
これらの試験は、異なるレベルの攻撃性の溶液による攻撃に対する耐性を示すコーティングの能力を測定する。簡潔に述べると、所与のコーティングを下記のとおり特定の溶液に曝し、次いで、これもそれぞれ以下に記載するとおり接着性及び白化耐性について測定する。それぞれの試験について、結果は、接着耐性、白化耐性、及び/又は白化接着耐性に基づいて0~10の尺度を用いて与えられ、評点「10」が最良であり、評点「0」が最悪である。
【0147】
A.脱イオン水
[0148]
脱イオン水を82℃に加熱する。コーティングされたパネルを加熱した溶液に30分間浸漬し、次いで、取り出し、すすぎ、乾燥させる。次いで、サンプルを、既に記載したとおり、接着性及び白化について評価する。
【0148】
B.酢酸溶液
[0149]
酢酸(C)の3%脱イオン水溶液を調製し、100℃に加熱する。コーティングされたパネルを加熱した溶液に30分間浸漬し、次いで、取り出し、すすぎ、乾燥させる。次いで、サンプルを、既に記載したとおり、接着性及び白化について評価する。
【0149】
C.クエン酸溶液
[0150]
クエン酸(C6H807)の2%脱イオン水溶液を調製し、溶液温度が121℃に達するのに十分な圧力に供しながら加熱する。コーティングされたパネルを加熱した溶液に30分間浸漬し、次いで、取り出し、すすぎ、乾燥させる。次いで、サンプルを、既に記載したとおり、接着性及び白化について評価する。
【0150】
8.低温殺菌
[0151]
低温殺菌試験は、容器に包装された様々な種類の食品製品の加工条件にコーティングがどのように耐えているかを判定する。典型的には、コーティングされた基材を水浴に浸漬し、65℃~100℃の範囲の温度で5~60分間加熱する。本評価については、コーティングされた基材を85℃で45分間脱イオン水浴、又は30分間100℃にした脱イオン水中3%酢酸(C)溶液のいずれかに浸漬した。コーティングされたパネル
を、この加熱された溶液に30分間浸漬する。次いで、コーティングされた基材を当該浴から取り出し、上記のとおりコーティングの接着及び白化について試験する。商業的に実現可能なコーティングは、好ましくは、完全(評点10)な接着性及び5以上、最適には9~10の白化評点を有する適切な低温殺菌耐性をもたらす。
【0151】
9.ガラス転移温度(「Tg」)
[0152]
示差走査熱量測定(「DSC」)試験用のサンプルは、最初に液体樹脂組成物をアルミニウムシートパネル上へと塗布することによって調製されてもよい。次いで、このパネルを、Fisher Isotemp電気オーブン内にて149℃(300°F)で20分間焼成して、揮発性物質を除去する。室温まで冷却した後、サンプルをパネルからかき取り、計量して標準的なサンプルパンの中へ入れ、標準的なDSC加熱/冷却/加熱法を用いて分析する。サンプルを-60℃で平衡化し、次いで、毎分20℃で200℃まで加熱し、-60℃まで冷却し、次いで、再度毎分20℃で200℃まで加熱した。最後の加熱サイクルのサーモグラムからガラス転移を計算する。ガラス転移を転移の変曲点において測定する。
【0152】
10.グローバル抽出
[0153]
グローバル抽出試験は、コーティングから出て、コーティングされた缶の中に包装された食品内へと潜在的に移行する可能性のある遊離物質の総量を見積もるように設計されている。典型的には、コーティングされた基材を、様々な条件下で水又は溶媒ブレンドに曝して、所与の最終用途をシミュレートする。容認可能な抽出条件及び媒体は、連邦規則第21条175.300項(d)及び(e)に見出すことができる。FDA規制によって規定される許容可能なグローバル抽出限度は、50百万分率(ppm)である。
【0153】
[0154]
本発明で用いられる抽出手順は、連邦規則第21条175.300項(e)(4)(xv)に記載されており、最悪の事態の性能を確保するために、(1)アルコール(エタノール)含有量を10重量%に増加させ、かつ(2)充填された容器を10日間の平衡化期間にわたって37.8℃(100°F)で保持するという修正を施した。これらの条件は、食品接触物質の届出(Food Contact Notifications)準備に関するFDA刊行物「Guidelines for Industry」に準ずる。
【0154】
[0155]
コーティングされた飲料缶に10重量%のエタノール水溶液を充填し、2時間の間低温殺菌条件(65.6℃、150°F)に曝し、続いて、37.8℃(100°F)で10日間平衡化期間に供した。抽出物の量の判定は、連邦規則第21条175.300項(e)(5)の記載に従って判定し、355ミリリットルの容積を有する、缶の端部を含まない(no end)表面積44平方インチに基づいてppm値を計算した。好ましいコーティングは、50ppm未満、より好ましい値は10ppm未満、更により好ましい結果は1ppm未満のグローバル抽出結果を与える。最も好ましくは、グローバル抽出結果は、最適には検出不可能である。
【実施例
【0155】
[0156]
本開示は、例示のみを意図する以下の実施例により具体的に記載されるが、その理由は、本開示の範囲内の多くの修正及び変更が当業者に明らかになることになるためである。特に指示しない限り、全ての部及び割合は重量基準である。
【0156】
実施例1:BPAを含まず、スチレンも含まない水分散性ポリエーテル-アクリレートコポリマー
[0157]
撹拌棒、還流冷却器、熱電対、加熱及び冷却能力、並びに不活性ガスブランケットを装備した反応容器に、477.4部のテトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテルと114.2部のハイドロキノンとを添加した。次いで、0.59部のエチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物と13.9部のカルビトールとを添加した。不活性雰囲気下で系を130℃に加熱した。発熱活動が観察され、ピークに達したら、温度を165℃へと75分間、又は標的エポキシ値が0.039当量/100グラム(固体樹脂)に達するまでに設定した。エポキシ値において、156.8部の2-ブトキシエタノール、続いて90.6部のn-ブタノール及び65.9部のアミルアルコールをゆっくりと添加した。温度を110℃の設定点へとゆっくりと変化させた。反応容器に、117.4部のメタクリル酸、41.8部のn-ブチルメタクリレート、62.7部のエチルメタクリレート、31.2部のエチルアクリレート、6.4部のアゾビスイソブチルニトリル及び6.4部のtert-ブチルペルオクトエートのプレミックスを90分間かけて添加して、温度を115℃未満に維持した。添加が完了したら、66.4部の2-ブトキシエタノールと1.7部のtert-ブチルペルオクトエートとを添加し、温度を110℃で50分間保持した。保持時間の終了時に、追加の0.6部のtert-ブチルペルオクトエートを添加し、温度を40分間分保持した。保持時間が完了したら、反応器の設定点を95℃に設定し、撹拌を増大させ、10分間かけて89.4部の脱イオン水と同時に温度を110℃から95℃へとゆっくりと変化させた。この温度で、56.4部のジメチルエタノールアミンを5分間かけて添加し、続いて、30分間保持した。分散工程については、加熱を除去し、温度をゆっくりとし低下させながら、782.6部の脱イオン水を50分間かけて容器に添加した。水を仕込んだ後、30分間かけて1230.9部の脱イオン水の2回目を仕込んだ。
【0157】
実施例2:BPAを含まず、スチレンも含まないラテックス及びコーティング組成物
[0158]
実施例1の上記工程が完了した直後、実施例1で得られた物質を提供し、75℃の設定点への加熱を再度開始し、この温度で、148.1部のn-ブチルメタクリレート、185.2部のエチルメタクリレート、及び37.0部のn-ブチルアクリレートのプレミックスを20分間かけて添加した。添加したら、温度を82℃の設定点まで上昇させた。この温度で、2.9部のベンゾイン、2.9部の過酸化水素、及び4.6部の脱イオン水を添加し、温度を120分間保持した。追加の0.8部のベンゾイン、0.8部の過酸化水素、及び4.3部の脱イオン水を添加し、温度を60分間保持した。このプロセスによって、固形分31.5%、ブルックフィールド粘度2032センチポアズ(cps)、酸価58.9、pH6.7、及び粒径0.19マイクロメートルの物質が得られた。
【0158】
[0159]
完成コーティング組成物を生成するために、159.3部の2-ブトキシエタノール、200.3部のアミルアルコール、及び1.7部のn-ブタノールを容器に仕込んだ。このプロセスによって、固形分約19.2%及び#2 Ford Cup粘度39.0秒の物質が得られた。
【0159】
比較例A:BPAを含まず、スチレンを含有するラテックス
[0160]
撹拌棒、還流冷却器、熱電対、加熱及び冷却能力、並びに不活性ガスブランケットを装備した反応容器に、499.5部のテトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテルと118.6部のハイドロキノンとを添加した。次いで、0.96部のエチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物と40.1部の2-ブトキシエタノールとを添加した。不活性
雰囲気下で系を130℃に加熱した。発熱活動が観察され、ピークに達したら、温度を165℃へと60分間、又は標的エポキシ値が0.039当量/100グラム(固体樹脂)に達するまでに設定した。エポキシ値において、14.8部の2-ヘキソキシエタノール、続いて、60.6部のn-ブタノールをゆっくりと添加した。反応容器に、68.2部のアクリル酸、43.9部のメタクリル酸、87.8部のスチレン、50.0部のエチルアクリレート、19.1部の脱イオン水、26.1部のn-ブタノール、194.3部のn-アミルアルコール、及び8.9部の2-ヘキソキシエタノールで構成された予反応溶液アクリルを60分間かけて添加し、温度を110℃に維持した。全ての予反応溶液アクリルを添加したら、当該溶液を最低20分間混合した。保持した後、38.2部のジメチルエタノールアミンを3~5分間かけて添加し、続いて、60分間保持した。保持の最後に、18.2部のジメチルエタノールアミンを添加し、15分間保持した。分散工程については、温度を80℃にゆっくりと変化させながら、2,111.7部の脱イオン水を90分間かけて容器に添加した。80℃の設定点への加熱を再度開始した。この温度で、147.6部のスチレン、146.7部のn-ブチルアクリレート、及び3.0部のベンゾインのプレミックスを分散物に添加した。添加したら、温度を84℃の設定点まで上昇させた。この温度で、3.0部の過酸化水素及び4.5部の脱イオン水を添加し、温度を120分間保持した。保持後、追加の73.7部のスチレン、0.7部のベンゾイン、0.7部の過酸化水素、及び4.3部の脱イオン水を添加し、温度を180分間保持した。このプロセスによって、固形分32.7%、ブルックフィールド粘度1068cps、pH6.7、及び粒径0.14マイクロメートルの物質が得られた。
【0160】
[0161]
完成コーティング組成物を調製するために、159.3部の2-ブトキシエタノール、200.3部のアミルアルコール、及び1.7部のn-ブタノールを容器に仕込んだ。このプロセスによって、固形分20.0%、#2 Ford Cup粘度36秒の物質が得られた。
【0161】
比較例B:BPA及びスチレンを含有するラテックス
[0162]
市販のBPA及びスチレンを含有する水ベースの飲料内側スプレー組成物を提供した。当該組成物は、ラテックスが、かなりの量のスチレンを含むエチレン性不飽和モノマー成分と過重合(すなわち、乳化重合)した水分散性BPA及びスチレン含有芳香族ポリエーテル-アクリレートコポリマーを含むラテックスベースのコーティング組成物であった。
【0162】
実施例3:エチレン性不飽和モノマー成分中に高レベルのメチルメタクリレートを含む、BPAを含まず、スチレンも含まないラテックス
[0163]
撹拌棒、還流冷却器、熱電対、加熱及び冷却能力、並びに不活性ガスブランケットを装備した反応容器に、125.6部のテトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテルと30.0部のハイドロキノンとを添加した。次いで、0.15部のエチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物と3.7部のカルビトールとを添加した。不活性雰囲気下で系を130℃に加熱した。発熱活動が観察され、ピークに達したら、温度を165℃に75分間、又は標的エポキシ値が0.039当量/100グラム(固体樹脂)に達するまでに設定した。エポキシ値において、41.1部の2-ブトキシエタノール、続いて、34.5部のn-ブタノール及び6.7部の2-ヘキソキシエタノールをゆっくりと添加した。温度を110℃の設定点へとゆっくりと変化させた。反応容器に、11.7部のメタクリル酸、18.7部のアクリル酸、23.4部のメチルメタクリレート、13.3部のエチルアクリレート、1.7部のアゾビスイソブチルニトリル、及び1.7部のtert-ブチルペルオテートのプレミックスを90分間かけて添加して、温度を115℃未満に維持した。添加が完了したら、17.5部の2-ブトキシエタノールと0.4部のtert-ブ
チルペルオクトエートとを添加し、温度を110℃で50分間保持した。保持時間の終了時に、追加の0.2部のtert-ブチルペルオクトエートを添加し、温度を40分間分保持した。保持時間が終了したら、反応器の設定点を95℃に設定し、撹拌を増大させ、10分間かけて23.5部の脱イオン水を添加しながら、温度を110℃から95℃にゆっくりと変化させた。この温度で、14.8部のジメチルエタノールアミンを5分間かけて添加し、続いて、30分間保持した。分散工程については、温度をゆっくりと低下させ、加熱を除去しながら、206.0部の脱イオン水を50分間かけて容器に添加した。水を仕込んだ後、30分間かけて323.9部の脱イオン水の2回目を仕込んだ。55℃の設定点への加熱を再度開始し、この温度で、68.2部のメチルメタクリレート及び29.2部のn-ブチルアクリレートのプレミックスを20分間かけて添加した。この温度で、0.5部のtert-アミルヒドロペルオキシド(水中85%)及び反応を5分間保持した。短時間保持した後、0.3部のエリソルビン酸、3.1部の脱イオン水、0.3部のジメチルエタノールアミン、及び0.03部の硫酸第一鉄溶液のプレミックスを30分間かけて添加した。供給後、の相分離がいくらか観察され、均質になるまで系を撹拌した。このプロセスによって、固形分31.6%、ブルックフィールド粘度19,500cps、及び粒径0.25マイクロメートルの物質が得られた。
【0163】
[0164]
完成コーティング組成物を調製するために、10.1部の2-ブトキシエタノール、50.3部のアミルアルコール、及び0.4部のn-ブタノールを容器に仕込んだ。このプロセスによって、固形分約17.8%、#2 Ford Cup粘度60秒の物質が得られた。
【0164】
コーティング性能データ
[0165]
様々な系のコーティング性能特性を評価するために、以下の表1~3に参照されるコーティング組成物を、115ミリグラム/缶の乾燥フィルム重量で標準的な12オンスの2ピースアルミニウム製D&I飲料缶の内面上へとスプレー塗布した。当該缶を、少なくとも370°F(188℃)のオーブン温度で少なくとも50秒間焼成して、少なくとも390°F(199℃)のドームピーク金属温度に到達させた。次いで、コーティングされた缶を、表1~3に参照される様々な試験に供した。
【0165】
[0166]
データから分かるように、実施例2のコーティング組成物は、比較例Bの市販のBPA及びスチレンを含有する内側スプレー製品と類似した性能を発揮した。また、比較例AのBPAを含まず、スチレンを含有するラテックスとも類似した性能を発揮した。実施例2のコーティング組成物は、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分中に30重量パーセント超のモノマーAを含まない実施例3よりも顕著に良好な性能を発揮した。したがって、本明細書全体を通して論じたように、好ましい実施形態では、乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分は30重量パーセント超の1つ以上のモノマーAを含む。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
[0167]
実施例2のものと類似のBPAを含まず、スチレンも含まないラテックス及びコーティング組成物も作製し、この場合、実施例1のようにその場で重合したアクリルの代わりに予形成された有機溶液重合酸官能性アクリルを使用して水分散性ポリエーテル-アクリレートを作製した。予形成アクリル及び芳香族ポリエーテルポリマーを、三級アミンの存在下で互いに反応させ、次いで水の中へと分散させた。コーティング組成物は、食品又は飲料缶コーティングの最終用途において実施例2と比べて遜色ないコーティング性能特性を呈した。
【0170】
[0168]
全ての特許、特許出願、及び刊行物(実施例において使用される原材料及び成分の化学物質安全データシート、テクニカルデータシート、並びに製品パンフレットを含む)及び本明細書に引用される電子的に利用可能な文書の完全な開示は、あたかも個々に組み込まれているかのように参照により本明細書に組み込まれる。上記の詳細な説明及び実施例は、あくまで理解を助けるためにのみ与えられものである。これらによって不要な限定をするものと理解されるべきではない。本発明は、示され記載された厳密な詳細事項に限定されるべきではなく、当業者に対して明らかな変形は特許請求の範囲において規定される本発明の範囲に含まれることになる。いくつかの実施形態では、本明細書に例示的に開示された本発明は、本明細書に具体的に開示されていないいずれかの要素の不在下で好適に実行されてもよい。
[1]
金属製の食品又は飲料缶の食品接触コーティングの形成において使用するために好適な水性食品又は飲料缶コーティング組成物であって、
水性担体と、
前記水性担体に分散している樹脂系であって、スチレンを実質的に含まず、かつ
水分散性ポリマー、及び
乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分であって、
(i)少なくとも30重量%の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレート、及び
(ii)30重量%超の、脂環式基又は少なくとも4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマー
を含む乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分
を含む樹脂系と
を含むコーティング組成物。
[2]
前記樹脂系が、置換スチレン化合物も実質的に含まない、[1]に記載のコーティング組成物。
[3]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、少なくとも20重量%の、直鎖状の4炭素以上の炭化水素鎖を含む炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含む、[1]又は2]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[4]
前記水分散性ポリマーが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS(これらのエポキシドを含む)のそれぞれを実質的に含まない芳香族ポリエーテルポリマーである、[1]~[3]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[5]
前記樹脂系が、前記水分散性ポリマーの水性分散物の存在下で乳化重合した前記エチレン性不飽和モノマー成分の反応生成物を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[6]
前記水分散性ポリマーと前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分との全総合重量が、前記コーティング組成物中に存在する全樹脂固形分の少なくとも50重量%である、[1]~[5]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[7]
水分散性ポリマーと乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分との重量比が、40:60~90:10、50:50~80:20、又は60:40~70:30である、[1]~[6]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[8]
前記水分散性ポリマーが、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー、ポリオレフィンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタン、又はこれらの混合物若しくはコポリマーを含む、[1]~[7]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[9]
前記水分散性ポリマーが、1つ以上の中和された酸性基又は塩基性基を含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[10]
前記水分散性ポリマーが、1つ以上のアンモニアで中和された又はアミンで中和された酸性基若しくは無水物基を含む、[9]に記載のコーティング組成物。
[11]
前記水分散性ポリマーが、芳香族ポリエーテルポリマーを含む、[1]~[10]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[12]
前記水分散性ポリマーが、ガラス転移温度が少なくとも30℃又は少なくとも60℃であり、かつ数平均分子量が少なくとも2,000である芳香族ポリエーテルポリマーを含む、[1]~[11]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[13]
前記水分散性ポリマーが、展延剤及びジエポキシドを含む反応物質から形成された芳香族ポリエーテルポリマーを含む、[1]~[12]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[14]
前記ジエポキシドが、オルト置換ジフェノールのジエポキシドを含む、[13]に記載のコーティング組成物。
[15]
前記オルト置換ジフェノールのジエポキシドが、テトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテルを含む、[14]に記載のコーティング組成物。
[16]
前記ジエポキシドが、芳香族ジオール(例えば、ベンゼンジメタノール、バニリルアルコール、フランジメタノールなど)、芳香族二酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)、脂肪族ジオール、脂肪族二酸、脂環式ジオール(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールなどのシクロブタンジオール)、脂環式二酸(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジカルボン酸などのシクロブタン二酸)、又はこれらの組み合わせのジエポキシドを含む、[13]に記載のコーティング組成物。
[17]
前記展延剤が、ジフェノールを含む、[13]~[16]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[18]
前記展延剤が、二価モノフェノールを含む、[17]に記載のコーティング組成物。
[19]
前記二価モノフェノールが、ヒドロキノンを含む、[18]に記載のコーティング組成物。
[20]
前記芳香族ポリエーテルポリマーが、ビスフェノールに由来する任意の構造単位を実質的に含まない、[13]、[14]、及び[16]~[19]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[21]
前記水分散性ポリマーが、ポリエーテルポリマー及びビニル付加成分の両方を含むコポリマーを含む、[1]~[20]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[22]
前記水分散性ポリマーが、ポリエーテル-アクリレートコポリマーを含む、[21]に記載のコーティング組成物。
[23]
前記ビニル付加成分が、(i)(メタ)アクリル酸及び(ii)(メタ)アクリレートの両方を含むモノマー混合物から形成される、[21]又は[22]に記載のコーティング組成物。
[24]
前記ポリエーテル-アクリレートコポリマーが、三級アミンの存在下で酸官能性アクリレートポリマー又は無水物官能性アクリレートポリマーと反応したオキシラン官能性ポリエーテルポリマーの反応生成物を含む、[22]又は[23]に記載のコーティング組成物。
[25]
前記ポリエーテル-アクリレートコポリマーを形成するために使用されるポリエーテルポリマーが、前記ポリエーテル-アクリレートポリマーの30~95重量%を構成する、[22]~[24]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[26]
前記水分散性ポリマーが、1グラムあたり40~400mgKOHの酸価を有する、[1]~[25]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[27]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%が、1つ以上のメタクリレートから選択される、[1]~[26]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[28]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%が、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートから選択される、[1]~[27]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[29]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%が、1つ以上のアルキルメタクリレートから選択される、[1]~[28]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[30]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分の少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%が、脂環式基又は少なくとも4個の炭素原子を含む直鎖若しくは分枝鎖炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含む、[1]~[29]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[31]
前記乳化重合エチレン性不飽和成分が、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、又は少なくとも35重量%の、少なくとも4個の炭素原子を含みかつ少なくとも3個の炭素原子の最長鎖長を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマーを含む、[1]~[30]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[32]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、1つ以上のC1~C3アルキル(メタ)アクリレートを含む、[1]~[31]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[33]
前記1つ以上のC1~C3アルキル(メタ)アクリレートが、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、又はこれらの組み合わせを含む、[32]に記載のコーティング組成物。
[34]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、少なくとも80重量%の、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート(例えば、n-ブチルアクリレート)、及びブチルメタクリレート(例えば、n-ブチルメタクリレート)のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ)を含む、[1]~[33]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[35]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、メチルメタクリレートが存在する場合、40重量%未満のメチルメタクリレートを含む、[1]~[34]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[36]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分のTgが、少なくとも0℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、又は少なくとも40℃である、[1]~[35]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[37]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、ブチルメタクリレートを含む、[1]~[36]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[38]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、n-ブチルメタクリレート及びエチルメタクリレートの両方を含む、[37]に記載のコーティング組成物。
[39]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、エチルアクリレート、メチルアクリレート、又はn-ブチルアクリレートのうちの1つ以上を更に含む、[38]に記載のコーティング組成物。
[40]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、ブチルアクリレートを含む、[1]~[39]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[41]
スチレンを実質的に含まず、所望により、置換スチレン化合物も実質的に含まない、[1]~[40]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[42]
前記樹脂系が、ビニル芳香族を実質的に含まない、[1]~[41]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[43]
粘度が20~80秒(Ford Cup#2、25℃)であり、食品又は飲料缶用の内側スプレーコーティング組成物である、[1]~[42]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[44]
金属製の食品又は飲料缶用の食品接触コーティングの形成において使用するために好適な水性食品又は飲料缶コーティング組成物であって、
水性担体と、
前記水性担体に分散している樹脂系であって、
スチレンを実質的に含まず、かつ
水分散性ポリマー、及び
少なくとも80重量%の、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート(例えば、n-ブチルアクリレート)、及びブチルメタクリレート(例えば、n-ブチルメタクリレート)のうちの1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ)を含むエチレン性不飽和モノマー成分
を含む樹脂系と
を含むコーティング組成物。
[45]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、少なくとも80重量%の、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、及びn-ブチルメタクリレートのうちの1つ以上(すなわち、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ)を含む、[44]に記載のコーティング組成物。
[46]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、少なくとも80重量%の、(i)メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートのうちの1つ以上と、(ii)n-ブチルアクリレート及びn-ブチルメタクリレートのうちの1つ以上とを含み、
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、メチルメタクリレートが存在する場合、40重量%未満のメチルメタクリレートを含む、[45]に記載のコーティング組成物。
[47]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、及びn-ブチルメタクリレートのうちの2つ以上(好ましくは3つ以上)から本質的になる、[44]~[46]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[48]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分のTgが、少なくとも0℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、又は少なくとも40℃である、[44]~[47]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[49]
前記水分散性ポリマーが、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS(これらのエポキシドを含む)のそれぞれを実質的に含まない芳香族ポリエーテルポリマーである、[44]~[48]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[50]
前記水分散性ポリマーが、ガラス転移温度が少なくとも30℃又は少なくとも60℃であり、かつ数平均分子量が少なくとも2,000である芳香族ポリエーテルポリマーを含み、前記エチレン性不飽和モノマー成分が、前記水分散性ポリマーの存在下で乳化重合した、[44]~[49]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[51]
前記水分散性ポリマーが、展延剤及びジエポキシドを含む反応物質から形成された芳香族ポリエーテルポリマーを含む、[44]~[50]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[52]
前記ジエポキシドが、オルト置換ジフェノールのジエポキシドを含む、[51]に記載のコーティング組成物。
[53]
前記オルト置換ジフェノールのジエポキシドが、テトラメチルビスフェノールFのジグリシジルエーテルを含む、[52]に記載のコーティング組成物。
[54]
前記ジエポキシドが、芳香族ジオール(例えば、ベンゼンジメタノール、バニリルアルコール、フランジメタノールなど)、芳香族二酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)、脂肪族ジオール、脂肪族二酸、脂環式ジオール(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールなどのシクロブタンジオール、)、脂環式二酸(例えば、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジカルボン酸などのシクロブタン二酸)、又はこれらの組み合わせのジエポキシドを含む、[51]に記載のコーティング組成物。
[55]
前記展延剤が、ジフェノールを含む、[51]~[54]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[56]
前記展延剤が、二価モノフェノールを含む、[55]に記載のコーティング組成物。
[57]
前記二価モノフェノールが、ヒドロキノンを含む、[56]に記載のコーティング組成物。
[58]
前記水分散性ポリマーが、ポリエーテルポリマー及びビニル付加成分の両方を含むコポリマーを含む、[44]~[57]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[59]
前記水分散性ポリマーが、ポリエーテル-アクリレートコポリマーを含む、[58]に記載のコーティング組成物。
[60]
前記ビニル付加成分が、(i)(メタ)アクリル酸及び(ii)(メタ)アクリレートの両方を含むモノマー混合物から形成される、[58]又は[59]に記載のコーティング組成物。
[61]
前記水分散性ポリマーと前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分との全総合重量が、前記コーティング組成物中に存在する全樹脂固形分の少なくとも50重量%である、[44]~[60]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[62]
金属製の食品又は飲料缶用の食品接触コーティングの形成において使用するために好適な水性食品又は飲料缶コーティング組成物であって、
水性担体と、
前記水性担体に分散している樹脂系であって、スチレンを実質的に含まず、かつ
ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS(これらのエポキシドを含む)のそれぞれを実質的に含まない水分散性芳香族ポリエーテルポリマー、並びに
前記水分散性芳香族ポリエーテルポリマーの存在下で重合し、かつ
(i)少なくとも50重量%の1つ以上のアルキル又は脂環式(メタ)アクリレート、及び
(ii)30重量%超の、少なくとも4個の炭素原子を含みかつ少なくとも3個の炭素原子の鎖長を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマー
を含む乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分を含み、かつ
前記水分散性ポリマーと前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分との全総合重量が、前記コーティング組成物中に存在する全樹脂固形分の少なくとも50重量%である樹脂系と
を含むコーティング組成物。
[63]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分が、ビニル芳香族化合物が存在する場合、10重量パーセント未満のビニル芳香族化合物を含む、[1]~[62]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[64]
前記コーティング組成物が、1缶あたり115ミリグラムの乾燥フィルム重量で標準的な12オンスのアルミニウム製絞りしごき飲料缶の内部の上へとスプレー塗布され、少なくとも199℃のドームピーク金属温度を実現するために少なくとも188℃のオーブン温度で少なくとも50秒間焼成されたとき、121℃で加圧下にて2%クエン酸中でレトルトし、3M Company(Saint Paul,Minn.)から入手可能なSCOTCH 610テープを使用して、ASTM D 3359-Test Method Bに従って試験した後に9又は10の下側壁接着採点値を呈する、[1]~[63]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[65]
前記コーティング組成物が、1缶あたり115ミリグラムの乾燥フィルム重量で標準的な12オンスのアルミニウム製絞りしごき飲料缶の内部の上へとスプレー塗布され、かつ少なくとも199℃のドームピーク金属温度を実現するために少なくとも188℃のオーブン温度で少なくとも50秒間焼成されたとき、約80超、より好ましくは約85超、更により好ましくは約90超の脱イオン水との接触角を呈する、[1]~[64]のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
[66]
金属基材の少なくとも一部分の上に位置する[1]~[65]のいずれか1項に記載のコーティング組成物から形成された硬化したコーティングを有する、食品若しくは飲料缶、又はその一部。
[67]
全体平均乾燥合計コーティングフィルム重量が、1.0~6.5グラム/平方メートルである、[66]に記載の食品若しくは飲料缶、又はその一部。
[68]
前記硬化したコーティングが、125~635マイクロメートルの平均厚さを有する金属基材の少なくとも一部分の上に存在する、[66]又は[67]に記載の食品若しくは飲料缶、又はその一部。
[69]
前記コーティングが、アルミニウム飲料缶の内部食品接触コーティングである、[66]~[69]のいずれか1項に記載の食品若しくは飲料缶、又はその一部。
[70]
前記硬化したコーティングが、約80超、より好ましくは約85超、更により好ましくは約90超の脱イオン水との接触角を呈する、[66]~[69]のいずれか1項に記載の食品又は飲料缶。
[71]
包装された食品又は飲料製品を収容している、[66]~[70]のいずれか1項に記載の食品又は飲料缶。
[72]
金属基材を食品若しくは飲料缶又はその一部へと成形する前又は後に、前記金属基材の表面に[1]~[65]のいずれか1項に記載のコーティング組成物を塗布することを含む、食品又は飲料缶をコーティングする方法。
[73]
前記コーティング組成物が、側壁本体部分及び端部分を含む缶の内面上へとスプレー塗布される、[72]に記載の方法。
[74]
前記缶が、アルミニウム飲料缶である、[73]に記載の方法。
[75]
スチレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS(これらのエポキシドを含む)のそれぞれを実質的に含まず、また、所望により置換スチレン化合物も実質的に含まないラテックス分散物を作製する方法であって、
[1]~[74]のいずれか1項に記載の水分散性ポリマーの水性分散物を提供することと、
前記水分散性ポリマーの前記水性分散物の存在下でエチレン性不飽和モノマー成分を乳化重合することであって、
前記エチレン性不飽和モノマー成分が、
30重量%超の、脂環式基又は4炭素以上の長さの炭化水素基を有する1つ以上のエチレン性不飽和モノマー、及び
所望により、1つ以上のC1~C3アルキル(メタ)アクリレート
を含むモノマーの混合物を含む、ことと、を含み、
少なくとも1つのアルキルメタクリレートが、前記エチレン性不飽和モノマー成分中に存在し、
アルキル(メタ)アクリレートが、前記エチレン性不飽和モノマー成分の少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも95重量%、又は更には99重量%以上を構成する方法。
[76]
前記乳化重合エチレン性不飽和モノマー成分のTgが、少なくとも0℃、少なくとも20℃、少なくとも30℃、又は少なくとも40℃である、[75]に記載の方法。
[77]
前記水分散性ポリマーが、塩基で中和された酸性基、酸で中和された塩基性基、又はこれらの組み合わせを有する芳香族ポリエーテルポリマーを含む、[75]又は[76]に記載の方法。
[78]
[75]~[77]のいずれか1項に記載の方法から得られるラテックス分散物。
[79]
前記コーティング組成物(又は[75]~[78]についてはラテックス分散物)が、ビスフェノール及びビスフェノールに由来する任意の構造単位を実質的に含まない、[1]~[14]、[16]~[52]、及び[54]~[78]のいずれか1項に記載のコーティング組成物、食品若しくは飲料缶又はその一部、あるいは方法。
[80]
前記水分散性ポリマーが、テトラメチルビスフェノールF又はテトラメチルビスフェノールFのジエポキシドのうちの一方又は両方を含む成分から形成されるポリエーテルポリマーである、[1]~[19]及び[21]~[78]のいずれか1項に記載のコーティング組成物、食品若しくは飲料缶又はその一部、あるいは方法。