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特許7410999コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20231227BHJP
   E04G 21/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G06Q50/08
E04G21/00 ESW
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022054554
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2023147027
(43)【公開日】2023-10-12
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣中 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035626(JP,A)
【文献】特開2011-202383(JP,A)
【文献】特開2016-204894(JP,A)
【文献】特開2012-002036(JP,A)
【文献】特開2021-188419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
E04G 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックにおいてコンクリートが打設されていない未打設小ブロックのうち、次にコンクリートの打設対象となる打設対象小ブロックに隣接する隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了からの経過時間を、前記打設対象小ブロックの打設管理時間として計時する経過時間計時部と、
前記打設対象小ブロックを、前記打設管理時間に応じて、前記打設対象小ブロックに対するコンクリートの打設が終了するまで、前記3次元設計情報において識別可能に表示する表示制御部と、
を備え
前記経過時間計時部は、前記打設対象小ブロックが複数存在する場合、前記隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了時間として、複数の前記打設対象小ブロックのうち、前記隣接小ブロックに対するコンクリートの打設が終了してから、前記打設対象小ブロックにコンクリートが打設されるまでの時間が最長の前記打設対象小ブロックにコンクリートが打設された時間を記録するコンクリート打設管理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記3次元設計情報を平面上に表示した2次元表示において、前記打設対象小ブロックを識別可能に表示する請求項1に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記小ブロックをコンクリートの打設順に表示した一覧表において、前記打設対象小ブロックを識別可能に表示する請求項1に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記小ブロックのそれぞれに、前記経過時間に応じた色を付与することにより、前記打設対象小ブロックを識別可能に表示する請求項1~3のいずれか1項に記載のコンクリート打設管理装置。
【請求項5】
取得部、経過時間計時部および表示制御部を備えたコンクリート打設管理装置によるコンクリート打設管理方法であって、
前記取得部が、構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
前記経過時間計時部が、取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックにおいてコンクリートが打設されていない未打設小ブロックのうち、次にコンクリートの打設対象となる打設対象小ブロックに隣接する隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了からの経過時間を、前記打設対象小ブロックの打設管理時間として計時する経過時間計時ステップと、
前記表示制御部が、前記打設対象小ブロックを、前記打設管理時間に応じて、前記打設対象小ブロックに対するコンクリートの打設が終了するまで、前記3次元設計情報において識別可能に表示する表示制御ステップと、
を含み、
前記経過時間計時ステップにおいて、前記打設対象小ブロックが複数存在する場合、前記隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了時間として、複数の前記打設対象小ブロックのうち、前記隣接小ブロックに対するコンクリートの打設が終了してから、前記打設対象小ブロックにコンクリートが打設されるまでの時間が最長の前記打設対象小ブロックにコンクリートが打設された時間を記録するコンクリート打設管理方法。
【請求項6】
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックにおいてコンクリートが打設されていない未打設小ブロックのうち、次にコンクリートの打設対象となる打設対象小ブロックに隣接する隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了からの経過時間を、前記打設対象小ブロックの打設管理時間として計時する経過時間計時ステップと、
前記打設対象小ブロックを、前記打設管理時間に応じて、前記打設対象小ブロックに対するコンクリートの打設が終了するまで、前記3次元設計情報において識別可能に表示する表示制御ステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンクリート打設管理プログラムであって、
前記経過時間計時ステップにおいて、前記打設対象小ブロックが複数存在する場合、前記隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了時間として、複数の前記打設対象小ブロックのうち、前記隣接小ブロックに対するコンクリートの打設が終了してから、前記打設対象小ブロックにコンクリートが打設されるまでの時間が最長の前記打設対象小ブロックにコンクリートが打設された時間を記録するコンクリート打設管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設管理装置、コンクリート打設管理方法およびコンクリート打設管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、管理者が、リフト領域を指定し、指定されたリフト領域について、所定値以下であって、ほぼ均等分割となる位置を指定し、指定された高さ位置を境界面として、リフト領域を各層に分割して輪切りモデルを生成し、生成した輪切りモデルの上面図において、所定の個数となるように複数のブロックに分割し、他の各層についても、同様にブロックに分割することにより、領域分割処理を行うことが開示されている(同文献段落[0056]~[0059]、図4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-35626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、視覚的にコンクリートの打設時間の管理を行うことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理装置は、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得部と、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックにおいてコンクリートが打設されていない未打設小ブロックのうち、次にコンクリートの打設対象となる打設対象小ブロックに隣接する隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了からの経過時間を、前記打設対象小ブロックの打設管理時間として計時する経過時間計時部と、
前記打設対象小ブロックを、前記打設管理時間に応じて、前記打設対象小ブロックに対するコンクリートの打設が終了するまで、前記3次元設計情報において識別可能に表示する表示制御部と、
を備えた。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理方法は、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックにおいてコンクリートが打設されていない未打設小ブロックのうち、次にコンクリートの打設対象となる打設対象小ブロックに隣接する隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了からの経過時間を、前記打設対象小ブロックの打設管理時間として計時する経過時間計時ステップと、
前記打設対象小ブロックを、前記打設管理時間に応じて、前記打設対象小ブロックに対するコンクリートの打設が終了するまで、前記3次元設計情報において識別可能に表示する表示制御ステップと、
を含む。
【0007】
さらに、上記課題を解決するため、本発明に係るコンクリート打設管理プログラムは、
構造物の3次元設計情報であって、前記3次元設計情報を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された前記大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報を取得する取得ステップと、
取得した前記3次元設計情報に従ってコンクリートを打設している間において、前記小ブロックにおいてコンクリートが打設されていない未打設小ブロックのうち、次にコンクリートの打設対象となる打設対象小ブロックに隣接する隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了からの経過時間を、前記打設対象小ブロックの打設管理時間として計時する経過時間計時ステップと、
前記打設対象小ブロックを、前記打設管理時間に応じて、前記打設対象小ブロックに対するコンクリートの打設が終了するまで、前記3次元設計情報において識別可能に表示する表示制御ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、視覚的にコンクリートの打設時間の管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置の前提技術におけるコンクリート打設管理の概要を説明するための図である。
図1B】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割基準点設定の概要を説明するための図である。
図1C】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置による軸線設定の概要を説明するための図である。
図1D】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置による分割操作の概要を説明するための図である。
図1E】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置による複数モデルを含む場合の分割基準点設定の概要を説明するための図である。
図1F】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置による立体表示を用いた識別可能表示を説明するための図である。
図1G】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置による平面表示を用いた識別可能表示を説明するための図である。
図1H】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置による一覧表表示を用いた識別可能表示を説明するための図である。
図1I】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置による識別可能表示の遷移の一例を説明するための図である。
図1J】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置による複数の小ブロックが隣接する場合の識別可能表示の一例を説明するための平面図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
図3】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置が有する管理基準テーブル、アラートテーブルおよびカラーテーブルの一例を示す図である。
図4】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置のハードウェア構成を説明するための図である。
図5】本発明の好ましい実施形態に係るコンクリート打設管理装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0011】
本発明の第1実施形態としてのコンクリート打設管理装置100について、図1A図5を用いて説明する。コンクリート打設管理装置100は、コンクリートの打設計画に合わせて構造物を所定サイズの小ブロックに分割して、コンクリートの打設計画等を立て、効率的なコンクリート打込みを管理するための装置である。
【0012】
通常、構造物のコンクリート打設を行う場合、アジテータ車(コンクリート運搬車)で未硬化のコンクリートを運搬し、例えば、1日の施工領域に組み立てられた型枠内に、順次、未硬化のコンクリートを打ち込む。そして、先に打ち込まれたコンクリートが硬化する前に、次のコンクリートを打ち重ね、バイブレータなどによりコンクリートを締め固め、打ち重ねたコンクリートと打ち重ねられたコンクリートとの両方のコンクリートを一体化させる。この打ち込みから一体化までの作業を繰り返すことで、施工領域へのコンクリート打込みが完了する。コンクリートの打込み完了後は、一定期間養生して硬化させ、組み立てた型枠の脱型を行う。
【0013】
この場合、例えば、図1Aに示したような構造物のコンクリートを打設する場合に、コンクリートを順次打ち込むときに、先行して打込んだコンクリートが硬化する前に、打ち重ねられたコンクリートと打ち重ねたコンクリートとをバイブレータなどによって一体化させる必要がある。このとき、コンクリートの打重ね時間が管理時間(例えば、コンクリート標準示方書に準ずる管理時間)を超過すると、コンクリートの打継ぎ部分にコールドジョイントなどが発生し、弱部となるおそれがある。そのため、構造物のコンクリート打設においては、材料練り混ぜからの時間管理や、コンクリートの打設順序、コンクリートの打ち重ね時間の管理などが重要となる。
【0014】
ここで、コンクリートの施工領域の規模が大きくなると、多量のコンクリートが必要となり、コンクリートを運搬するために必要となるアジテータ車の台数が多くなる。さらに、大規模構造物のコンクリートを打ち込むためには、アジテータ車の運搬可能量などに応じて、当該構造物を複数の層に分けるなどして、順序立ててコンクリートを打ち込まなければならず、コンクリートの層数も多くなる傾向にある。そのため、打ち継ぎ部も多くなるので、コールドジョイント150などの弱部が発生することがないように、コンクリートの打重ね時間などを考慮した上で、打込み順序や打込み層厚などを決めてコンクリートの打設計画160を立てる必要があった。
【0015】
しかしながら、コンクリートの打設計画160を立てるために、構造物をいくつかの層へ分割したり、所定サイズの小ブロックへ分割したりする作業は、構造物の2次元設計図を用いて、現場において現場作業者の手作業で行われていた。そのため、層分割や小ブロック分割を行って厳密な打設計画を立てることは困難な場合が多く、現場作業者の負担になっていた。そこで、ユーザは、コンクリート打設管理装置100を用いることにより、層分割や小ブロック分割、各小ブロックの打込み順序の設定を容易に行えるようになる。
【0016】
次に、図1B図1Eを参照して、コンクリート打設管理装置100を用いた、打設計画の管理について説明する。まず、図1Bに示したように、3次元CAD(Computer-Aided Design)などを用いて設計した構造物の3次元データ等を含む3次元設計情報120が、コンクリート打設管理装置100に接続されたモニターやディスプレイ、ユーザが所持するタブレットやスマートフォンなどの携帯端末等のディスプレイ140などに表示される。なお、3次元設計情報120には、例えば、工区や工期などの情報も含まれている。また、3次元設計情報120は、予め3次元CADなどを用いて作成されている。
【0017】
3次元設計情報120は、所定期間に打設可能なコンクリートの量に応じて設定された施工領域を示す複数の大ブロック123,124,125,126に分けられている。例えば、大ブロック123に着目して、この大ブロック123を所定サイズの小ブロックに分割する場合を考える。
【0018】
まず、図1Bに示したように、ユーザは、小ブロックへの分割対象として着目する大ブロック123(着目大ブロック)において、小ブロックへの分割の基準となる分割基準点121を指定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが指定した位置に分割基準点121を設定する。ここで、分割基準点121は、大ブロック123を、どの位置を基準にどの方向へ分割するかの基準となる点である。
【0019】
図1Bに示した例では、大ブロック123の頂点部分(底面左下)に、分割基準点121を設定している。なお、分割基準点121は、頂点部分以外にも設定することが可能であり、例えば、頂点と頂点との間の辺の部分や、側面部分(表面部分)の任意の位置、大ブロック123の内部の任意の位置などに設定することができる。ユーザは、他の大ブロック124,125,126についても、大ブロック123と同様の操作を行って、分割基準点を設定することができる。
【0020】
次に、図1Cに示したように、軸線の設定を行う。すなわち、分割基準点121を原点と考えて、コンクリート打設管理装置100は、ユーザが、指定した位置にX軸方向の端点122を設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、端点122を通過する線分として、X軸127を生成させる。生成された軸線(X軸127)は、図示したように、例えば、大ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。
【0021】
また、Y軸、Z軸についても同様に、ユーザが、指定した各軸線の端点の位置に基づいて、コンクリート打設管理装置100は、分割基準点121から、指定した各端点を通過する線分として、Y軸、Z軸を生成させる。そして、生成された各軸線(Y軸、Z軸)は、大ブロック123の傍に表示しても、3次元設計情報120から離れた位置に表示してもよい。各軸線(X軸127、Y軸、Z軸)は、大ブロック123の縦横高さ方向に平行な線分となっている。
【0022】
続いて、図1Dに示したように、ユーザは、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割するために必要なパラメータの設定を行う。ユーザが設定するパラメータは、例えば、等幅分割(分割の間隔)、均等分割(分割数及び丸め幅)、層厚などである。これらのパラメータは、例えば、ディスプレイ140の右側に表示されたパラメータ設定用ウィンドウの所定のボックスに数値を入力することにより設定される。
【0023】
ここで、等幅分割は、所定幅(所定の分割間隔)で構造物を分割して、所定サイズの小ブロックを得る場合をいう。この場合、例えば、分割基準点121から、800mm間隔で構造物の分割線が生成され、表示されるようになる(図1D参照)。
【0024】
また、均等分割は、所定の分割数の小ブロックが生成されるように構造物を分割する場合をいう。丸め幅は、例えば、均等分割する際の、分割により生成される各小ブロックの大きさの単位を決めるものである。例えば、丸め幅を100mmと設定すると、生成される小ブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、100mm刻みの単位である、600mm、700mm、800mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。同様に、例えば、丸め幅を10mmと設定すると、生成されるブロックの大きさの単位(1辺の長さの単位)が、10mm刻みの単位である、810mm、820mm、830mmなどのサイズの小ブロックが生成されるようになる。
【0025】
このように、丸め幅を設定して、小ブロックのサイズの端数を調整することにより、各小ブロックの体積等の管理が容易になるため、コンクリートの打設管理を容易に行えるようになる。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定されたパラメータに従って、3次元設計情報120を所定サイズの小ブロックに分割する。所定サイズの小ブロックに分割したら、小ブロックのそれぞれに、打込み順を設定することにより、コンクリートの打設を適切に管理することができる。打込み順の設定は、例えば、層毎に行われるが、これには限定されない。
【0026】
図1Eに示したように、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物が含まれている場合には、例えば、それぞれの構造物に対して分割基準点を設定することにより、構造物全体として、小ブロックに分割する。なお、このような、1つの構造物として、複雑な形状を有している構造物と考えられる場合には、複数の異なる形状を有する構造物同士が結合したものと考えることが可能である。
【0027】
そして、構造物全体として、複数の異なる形状を有する構造物を含む場合、それぞれの構造物の接続部分は、Z軸方向から、構造物全体を見た場合、断面変化が不連続となる位置である断面変化面となっている。
【0028】
そして、このような断面変化面が存在するときに、例えば、1つの分割基準点131を基準に、構造物を分割する場合、断面変化面を跨る部分で連続してコンクリートを打ち込むことになり、断面変化面が弱部となってしまう。そのため、この断面変化面に境界を設けて管理する必要がある。したがって、断面変化面が出現するたびに、分割基準点131の設定が必要となる。例えば、断面変化面を跨いでコンクリートを打ち込んだ場合、未硬化のコンクリートからの水分上昇(ブリーディング)等が発生し、断面変化面にブリーディングが集中して、弱部となる恐れがある。よって、断面変化面が存在する場合には、断面変化面が境界面となるように、分割基準点131を設定することが好ましい。このように、断面変化面に分割基準点131を設定することで(断面変化面を境界面とすることで)、断面変化面を跨ぐ小ブロックが生成されることを抑制することができる。
【0029】
以上のように、ユーザは、3次元設計情報120に対して、分割基準点131を複数設定し、設定した分割基準点131のそれぞれについて、分割幅や分割数などのパラメータを設定する。そして、コンクリート打設管理装置100は、設定された分割基準点131やパラメータに基づいて、構造物を所定サイズの小ブロックに分割する。
【0030】
図1Fには、3次元設計情報120が表示された画面170が示されている。同図には、3次元設計情報120の例として、ボックスカルバート175の一部が示されており、図示した太矢印の向きにコンクリートの打設が進んでいるものとする。つまり、ボックスカルバート175の手前側の壁部分(B5~B8)は、図中左奥から右手前に向かって打設が進み、ボックスカルバート175の奥側の壁部分(A5~A8)は、図中右手前から左奥に向かって打設が進む。
【0031】
図示した例では、ボックスカルバート175の下から3層分の層に属する小ブロックは既にコンクリート打込みが完了したため、図示したようなハッチングにより、他の小ブロックと識別可能に表示されている。つまり、打設済小ブロック171を含む打設層は、図示したようなハッチングを施して表示することにより、他の小ブロックと識別することができるようになっている。なお、ここでは、図示の都合上、図示したようなハッチングを用いて表示しているが、実際の表示においては、打設済みであることを表すために、例えば、灰色などを着色した表示としてもよい。
【0032】
そして、ちょうど今、コンクリートの打重ねが終了した小ブロックである打設済小ブロック172は、図示したように、細かい幅のハッチングを用いて表示されている。これらの打設済小ブロック172(A5、B5)も、ハッチングを用いて表示する代わりに、例えば、打設済みであることを示すために、灰色などを着色した表示としてもよい。
【0033】
次に、打設済小ブロック172と隣り合う小ブロックは、コンクリートの打設はされていないが、次にコンクリート打設の対象となる未打設の打設対象小ブロック173(A6、B6)である。これについても、打設済小ブロック172の次にコンクリートが打設されることを示すようなハッチングを施して表示されている。これらの打設対象小ブロック173も、例えば、次にコンクリートが打設されることを示すために、ハッチングを用いて表示する代わりに、例えば、緑色や黄色、橙色などを着色して表示してもよい。また、例えば、打設対象小ブロック173は、打設済小ブロック172の打設終了からの経過時間に応じて、着色表示が変化するようにしてもよい。例えば、緑色→黄色→橙色のように経過時間が長くなるにつれて、着色表示が変化するようにしてもよい。なお、打設済小ブロック172は、打設対象小ブロック173に隣接する隣接小ブロックともなっている。
【0034】
また、次に打設が予定されている打設対象小ブロック173については、打設開始時刻までの残り時間に応じて、打設対象小ブロック173を着色表示するとともに、点滅させて表示させてもよい。
【0035】
さらに、打設対象小ブロック173の次に、打設が予定されている未打設小ブロック174(A7~A8、B7~B8)は、打設が開始されるまで時間の猶予があるので、これを示すようなハッチングが施されて表示されている。これらの未打設小ブロック174も、打設が開始されるまで余裕があるので、ハッチングを用いて表示する代わりに、例えば、白色などで表示してもよい。なお、上述した小ブロックの着色については、例示に過ぎず、ここに示した着色例には限定されず、様々な着色を行ってもよい。
【0036】
以上のように、コンクリート打設管理装置100においては、各小ブロックについて、コンクリートの打設前(未打設)、打設対象(次にコンクリートの打設が行われる)、打設後(打設済)を判断し、次にコンクリートの打設対象となる小ブロックについては、打設順が1つ前の隣接する小ブロックの打設終了からの経過時間などを計時する。そして、コンクリート打設管理装置100は、計時した経過時間に応じて、次に打設対象となる小ブロックについて、どのような状態(打設を終了させなければならない時間(打設管理時間)までの残り時間等)にあるかを識別可能に表示する。なお、コンクリート打設管理装置100は、上述したように、各小ブロックについて、着色表示やハッチング表示を施す他に、経過時間をデジタル表示してもよい。また、コンクリート打設管理装置100は、経過時間の管理を細かく設定して、各小ブロックの表示が小刻みに変化するようにしてもよい。
【0037】
次に、図1Gに示したように、コンクリート打設管理装置100は、上述した3次元表示の他に、2次元表示(平面表示)においても、小ブロックのそれぞれを識別可能に表示することができる。3次元設計情報120は、最下層の第1層から最上層の第4層までを含んで構成されており、コンクリート打設管理装置100においては、打設層ごとにコンクリートの打設状況を識別可能に表示することが可能となっている。図示した例では、最上層の第4層(第4打設層)が、コンクリート打設中の層であり、このうち、打設済小ブロック172は、現在コンクリートの打設が終了した小ブロックである。また、未打設小ブロック173は、打設中小ブロック172の次にコンクリートの打設が予定されている小ブロックであり、未打設小ブロック174は、例えば、未打設小ブロック173の打設完了後にコンクリートの打設が予定されている小ブロックである。このように、コンクリート打設管理装置100においては、平面表示であっても、小ブロックのそれぞれが、どのような状態にあるかを識別可能に表示することが可能となっている。また、コンクリート打設管理装置100は、平面表示と立体表示とを切り替えながら表示させることもできる。
【0038】
さらに、図1Hに示したように、コンクリート打設管理装置100は、小ブロックのそれぞれをコンクリートの打込み順に表示した一覧表180(リスト形式の表示)を表示することもできる。そして、コンクリート打設管理装置100は、一覧表180において、打設済小ブロック171,172の次に打設が予定されている打設対象小ブロック173、未打設小ブロック174を識別可能に表示することができる。
【0039】
次に図1Iを参照して、打設対象小ブロック173の識別可能表示の遷移について説明する。同図には、打設対象小ブロック173の識別可能表示の全体遷移図180が示されており、同図上左から右へ時間が進むものとする。遷移図181は、打設対象小ブロック173に隣接し、打設対象小ブロック173の1つ前にコンクリートが打ち込まれ、打込みが終了した打設済小ブロック172の表示遷移を示している。遷移図182は、これからコンクリートが打ち重ねられる小ブロックである打設対象小ブロック173の表示遷移図を示している。遷移図183は、打設対象小ブロック173の次にコンクリートの打重ねが予定されている未打設小ブロック174の表示遷移図を示している。なお、打設済小ブロック172、打設対象小ブロック173および未打設小ブロック174については、表示画面上において、着色されて表示されるが、同図では、着色する代わりにハッチングを用いて表示している。
【0040】
図示したように、遷移図181において、打設済小ブロック172に対するコンクリートの打込みが終了すると、打設済小ブロック172は、表示画面上において、例えば、コンクリートの打込みが終了したことを示す色(灰色)で表示される。このように、コンクリートの打込みが終了した小ブロックを灰色等の暗色で表示することにより、作業者が、一目で、小ブロックの状態を確認することができるようになっている。
【0041】
打設済小ブロック172のコンクリートの打込みが終了すると、所定時間以内に、次にコンクリートの打込みが予定されている小ブロックである、打設対象小ブロック173に対してコンクリートが打ち込まれなければならない。ここで、大規模構造物のコンクリートの打込みにおいては、構造物全体に対して複数台のアジテータ車により、コンクリートの打込み、打重ねを繰り返すため、コンクリートを打ち込むにあたり、当該構造物を複数の小ブロックに分割し、小ブロック単位で進められる。各小ブロックのコンクリート打設においては、隣接する小ブロックのコンクリートが打設され、硬化するまでに、隣接する小ブロックのコンクリートの打設を行わなければ、当該小ブロックが接する面が、コールドジョイントなどの弱部となるため、このような、大規模構造物においては、各小ブロックのコンクリートの打設は、連続的に行われなければならない。
【0042】
そのため、各小ブロックに対して、隣接小ブロックが存在する場合には、隣り合う小ブロックのうち、先に打設された小ブロックの打設終了から所定時間以内に隣接する次の小ブロックのコンクリートが打設されなければならい。このような場合、施工現場の作業者は、隣接小ブロック(打設済小ブロック172)のコンクリート打込み終了からの経過時間を常に把握していなければならない。
【0043】
すなわち、作業者は、隣接する小ブロックが存在する場合には、先行してコンクリートが打設される小ブロックの打設終了からの経過時間を、次にコンクリートが打設される小ブロックのコンクリートを打設するまでの管理時間として管理する必要が生じる。しかしながら、大規模構造物の場合、一度に複数の小ブロックに対してコンクリートが打ち込まれることもあり、このような状態を、作業者が、常に把握し続けるのは困難である。
【0044】
よって、コンクリート打設管理装置100においては、図示したように、先行してコンクリートが打ち込まれた打設済小ブロック172の打込み終了時間からの経過時間を計時し、当該経過時間に応じて、打設対象小ブロック173を識別可能に表示する。
【0045】
つまり、図示したように、打設対象小ブロック173は、打重ねの基準時間以内にコンクリートの打重ねを開始しなければならないので、打重ね開始までの間においては、打設対象小ブロック173は、コンクリートが未打設の小ブロックとなっている。そして、打設対象小ブロック173は、表示画面上において、打設済小ブロック172の打設終了からの時間経過に応じて、着色表示が変化するので、作業者に対して、速やかにコンクリートの打重ねを開始するように促すことができる。
【0046】
そして、打設対象小ブロック173に対して、コンクリートが打ち重ねられていない状態(未打設状態)における、打設対象小ブロック173の識別可能表示は、打重ねを開始しなければならない時間までの残り時間に応じて遷移すようになっている。つまり、打重ねを開始しなければならない時間までの残り時間に余裕がある場合には、緑色などで着色表示される。そして、残り時間が少なくなってくるにしたがって、打設対象小ブロック173の着色表示が、黄色→橙色→赤色のように遷移するようになっている。なお、ここに示した、着色表示の遷移は、一例に過ぎず、これには限定されない。
【0047】
打設対象小ブロック173に対して、コンクリートが打ち重ねられ、打設対象小ブロック173が、コンクリート打設中の小ブロックとなった場合、遷移図183は、打設中の表示へと移行する。ここでは、打設対象小ブロック173に対して、設定される打込み完了までの残り時間等に応じて、着色表示が遷移するようになっている。また、打設対象小ブロック173に対するコンクリートの打込み開始からの経過時間等により、様々なアラートが報知されるようになっていてもよい。そして、打設対象小ブロック173に対するコンクリートの打込みが完了すると、打設対象小ブロック173も、表示画面上において、灰色等で表示され、コンクリートの打込みが終了したことが分かるような表示がなされる。
【0048】
打設対象小ブロック173に対するコンクリートの打込みが終了すると、その次にコンクリートの打込みが予定されている未打設小ブロック174の遷移図183へと全体遷移図180が移行する。このような、着色表示の遷移を繰り返すことにより、コンクリート打設管理装置100においては、各小ブロックの状態に応じて、識別可能に表示している。なお、コンクリート打設管理装置100は、上述したような、着色表示の遷移を、小ブロックごとに記録しておいてもよい。
【0049】
次に図1Jを参照して、打設済小ブロック191に隣接する未打設小ブロック(打設対象小ブロック192,193)が、複数(2つ)存在する場合について説明する。この場合、コンクリート打設管理装置100は、打設済小ブロック191の打設対象小ブロック192,193と接する2つの面(境界面)の打設時間を管理しなければならない。例えば、打設対象小ブロック192と、打設対象小ブロック193とに対して、同時にコンクリートが打ち重ねられる場合には、打設対象小ブロック192,193の着表示の遷移の様子は同じものとなる。
【0050】
しかしながら、打設対象小ブロック193に先行して打設対象小ブロック192に対してコンクリートが打ち重ねられた場合、打設対象小ブロック192については、コンクリートの打重ね終了のタイミングで、着色表示が、灰色等で表示されることとなる。これに対し、打設対象小ブロック193は、コンクリートが打ち重ねられていないため、図1Iに示した未打設の状態の着色表示がなされる。そして、打設対象小ブロック193にコンクリートが打ち重ねられ、打重ねが終了すると、打設対象小ブロック193も、着色表示が、灰色等で表示されるようになる。
【0051】
なお、ここで、打設済小ブロック191については、コンクリート打設管理装置100は、いつ、隣接小ブロック(打設対象小ブロック192,193)にコンクリートが打ち重ねられたかを管理している。つまり、打設済小ブロック191については、所定の打設管理時間以内に、隣接小ブロックに対してコンクリートが打ち重ねられなければ、打設済小ブロック191に打ち込まれたコンクリートが硬化し始める。
【0052】
そのため、コンクリート打設管理装置100は、この打設管理時間よりも前に隣接小ブロックにコンクリートが打ち重ねられていることを記録する。しかしながら、この場合、2つの境界面のうち、より遅くコンクリートが打ち重ねられた時間を、打設済小ブロック191の打重ね終了時間として、記録する。このように、コンクリート打設管理装置100においては、安全面を考慮して、複数の隣接小ブロックが存在する場合、コンクリートの打重ねまでの時間が最長のものを打設済小ブロック191の打重ね終了時間として記録している。
【0053】
例えば、打設対象小ブロック192が、打設済小ブロック191の打込み終了時間から50分後に打重ねられ、打設対象小ブロック192が、打設済小ブロック191の打込み終了から60分後に打重ねられた場合を考える。つまり、打設対象小ブロック192の打重ね時間が、50分で、打設対象小ブロック193の打重ね時間が60分である場合を考える。この場合、コンクリートの打重ねが開始されるまでの時間が最も長い、最長打重ね時間の小ブロックである打設対象小ブロック193の打重ね時間60分が、打重ねられる小ブロックである打設済小ブロック191の情報として記録される。コンクリート打設管理装置100は、他の小ブロックについての同様の情報を記録する。
【0054】
次に図2を参照して、コンクリート打設管理装置100の構成について説明する。コンクリート打設管理装置100は、取得部201、経過時間計時部202および表示制御部203を有する。
【0055】
取得部201は、コンクリートを打設する構造物の3次元設計情報120であって、3次元設計情報120を所定サイズの大ブロックに区分して、区分された大ブロックのそれぞれを、所定サイズの小ブロックに分割した分割データを有する3次元設計情報120を取得する。
【0056】
3次元設計情報120が、コンクリート打設管理装置100とは異なる装置で生成された場合、取得部201は、3次元設計情報120を有線接続または無線接続により当該装置から取得する。また、取得部201は、3次元設計情報120が記録された記録媒体等を介して3次元設計情報120を取得してもよい。
【0057】
経過時間計時部202は、取得した3次元設計情報120に従ってコンクリートを打設している間において、小ブロックにおいてコンクリートが打設されていない未打設小ブロックのうち、次にコンクリートの打設対象となる打設対象小ブロックに隣接する隣接小ブロックに対するコンクリートの打設終了からの経過時間を、打設対象小ブロックの打設管理時間として計時する。経過時間の計時は、例えば、現場の作業者が、打設対象の小ブロックに隣接する小ブロックへのコンクリートの打設終了にともない、携帯端末等を操作したタイミングで行ってもよい。すなわち、例えば、作業者が、携帯端末等を操作することにより、経過時間計時部202が、打設対象の小ブロックに隣接する小ブロックへのコンクリートの打設終了を知らせる信号を受信したタイミングで計時を開始してもよいが、これには限定されない。また、経過時間計時部202が、打設対象の小ブロックに隣接する小ブロックへのコンクリートの打設が終了したことを検知してから、経過時間の計時を行うようにしてもよい。
【0058】
例えば、経過時間計時部202は、コンクリートの打設が終了した打設済小ブロック172と隣接する未打設小ブロック173について、打設済小ブロック172の打設完了からの経過時間を計時する。ここで、打設済小ブロック172は、たった今コンクリートの打設が終了した小ブロックである。また、打設済小ブロック172に隣接する打設対象小ブロック173は、打設中小ブロック172の次にコンクリートの打設が予定されている未打設の小ブロックである。打設対象小ブロック173は、打設済小ブロック172に打設したコンクリートが硬化するまでの間に、コンクリートの打設を開始しなければならない小ブロックでもある。そのため、経過時間計時部202は、打設済小ブロック172に隣接し、次に打設が予定されている打設対象小ブロック173について、打設管理時間内にコンクリートの打設が開始されれば、経過時間の計時を停止する。
【0059】
ここで、打設管理時間は、日本産業規格(JIS)やコンクリート標準示方書などにより定められた、コンクリートの練り混ぜから打設終了までの時間が、この打設管理時間に収まらなければならない時間である。打設管理時間は、例えば、90分~150分と定められており、この時間を超えて打設されたコンクリートは、強度や品質が低下するため、この時間を超えて打設されるコンクリートは、製造工場へ返却され、構造物の打設に使用することはできない。
【0060】
なお、コンクリート打設においては、コンクリートの打設後に、コンクリートの締固めが行われるが、本実施形態においては、経過時間計時部202は、コンクリートの打設終了からの経過時間を打設管理時間として計時している。これは、コンクリートが打設されるとすぐに、打設されたコンクリートの硬化が始まるため、より正確に打設対象小ブロック173の打設管理時間を計時するためである。
【0061】
よって、経過時間計時部202は、次にコンクリートの打設対象となる打設対象小ブロックに隣接する隣接小ブロック(打設済小ブロック172)の打設終了からの経過時間を計時して、打設対象小ブロック173の打設管理時間として、管理することにより、コールドジョイントなどの弱部が、小ブロック同士の境界面(接触面)において発生しないように、コンクリート打設を管理する。
【0062】
表示制御部203は、打設対象小ブロック173を、経過時間計時部202による経過時間に応じて、3次元設計情報120において識別可能に表示する。すなわち、打設対象小ブロック173は、打設管理時間内にコンクリートの打設を終了させなければならない小ブロックであり、作業者が、最も注意すべき小ブロックである。そのため、打設対象小ブロック173については、打設済小ブロック172の打設終了からの経過時間である打設管理時間に応じて
【0063】
なお、表示制御部203は、例えば、打設済小ブロックをグレーで表示する。すなわち、コンクリートの打設が完了した小ブロックについては、例えば、現場の作業者にとっては、注意を払う必要のない小ブロックであり、携帯端末の画面表示等において、目立たない表示とすることができる。このように、打設済小ブロックを目立たない表示とすることにより、作業者は、注目すべき小ブロックを瞬時に見分けることができるようになり、コンクリートの打設管理を確実に行うことが可能となる。
【0064】
また、表示制御部203は、例えば、打設対象小ブロック173に対して、コンクリートの打込みが開始されたら打設対象小ブロック173を表示画面上で、青色などで表示するようにしてもよい。さらに、表示制御部203は、打設対象小ブロック173を着色表示するとともに、現在コンクリートを打設している小ブロックであることが一目で分かるように、点滅表示してもよい。
【0065】
さらに、表示制御部203は、例えば、コンクリートが打設されていない未打設小ブロック174を白色などの目立たない色で表示するようにしてもよい。すなわち、未打設小ブロック174は、近い将来にコンクリートの打設が行われる予定の小ブロックである。そのため、表示制御部203は、作業者等に対して、打込が予定されていることを示す表示として、上述のように表示する。
【0066】
また、表示制御部203は、打設対象小ブロック173を着色表示するとともに、打設開始時刻までの残り時間等に応じて点滅速度を変えつつ表示するようにしてもよい。このように、表示制御部203は、小ブロックの状態に応じて、着色表示と点滅表示とを組み合わせて表示することもできるので、点滅速度等を変化させることにより、アラート表示として機能させることも可能となっている。
【0067】
ここで、例えば、打設済小ブロック172の次に打設が予定されている打設対象小ブロック173の打設開始の予定時刻までの残り時間については、経過時間計時部202により計時された経過時間より導出できる。つまり、3次元設計情報120には、生成した各小ブロックの打込み順や打設開始時刻、打設終了時刻などに関する情報も含まれているので、例えば、これらの時刻と、経過時間計時部202により計時された経過時間などとを組み合わせることにより、残り時間などを導出することができる。そして、表示制御部203は、計時された経過時間や導出された残り時間などに応じて、各小ブロックを識別可能に表示する。
【0068】
また、表示制御部203は、例えば、打設対象小ブロック173に対して、打設開始からの経過時間や打設開始までの残り時間などを、当該小ブロックの近傍に表示するようにしてもよい。これにより、作業者に対して、次に打設すべき打設対象小ブロック173や、打設開始時間が迫っている打設対象小ブロック173などを視覚的に目立つ形で表示することが可能となり、作業者が、コンクリート打設の管理を容易に行えるようになる。
【0069】
さらに、表示制御部203は、小ブロックのそれぞれをコンクリートの打込み順に表示した一覧表180において、打設済小ブロック171,172、打設対象小ブロック173および未打設小ブロック174を識別可能に表示することもできる(図1H等参照)。
【0070】
図3は、コンクリート打設管理装置100が有する管理基準テーブル301、アラートテーブル302およびカラーテーブル303の一例を示す図である。管理基準テーブル301は、各状態におけるコンクリートを管理するための基準となる時間やその他の条件を管理するテーブルである。アラートテーブル302は、管理基準テーブル301の基準値に基づいて決定されたアラートを報知するための条件を管理するテーブルである。カラーテーブル303は、各色について、赤(R)、緑(G)および青(B)の各要素がどのくらい含まれているかで表したカラーモデルを管理するテーブルである。そして、コンクリート打設管理装置100は、これらのテーブルを参照して、小ブロックの状態に合わせて、表示する色などを決定する。
【0071】
図4を参照して、コンクリート打設管理装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0072】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。3次元設計情報データ441は、コンクリートの打設対象となる構造物の3次元CADデータなどを含むデータである。経過時間データ442は、コンクリート打設中の小ブロックのコンクリートの打設開始からの経過時間のデータである。打設済データ443は、コンクリートの打設が完了した小ブロックについてのデータである。識別可能表示データ444は、各小ブロックを、その状態に応じて識別可能に表示させるためのデータである。
【0073】
送受信データ445は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域446を有する。
【0074】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、管理基準テーブル301、アラートテーブル302およびカラーテーブル303を格納する。管理基準テーブル301は、管理項目と管理基準などとの関係を管理するテーブルである。アラートテーブル302は、管理すべき時間とアラート内容などとの関係を管理するテーブルである。カラーテーブル303は、色とそれを表す数値との関係を管理するテーブルである。管理基準テーブル301、アラートテーブル302およびカラーテーブル303は、いずれも図3に示したテーブルである。
【0075】
ストレージ450は、さらに、取得モジュール451、経過時間計時モジュール452および表示制御モジュール453を格納する。取得モジュール451は、分割データを有する3次元設計情報120における中ブロックの高さ方向に垂直な平面で分割された各層のうち所定層における第1小ブロック群に対して、コンクリートの打設順を示すブロック番号が当該小ブロック群に属する小ブロックのそれぞれに付与された3次元設計情報120を取得するモジュールである。経過時間計時モジュール452は、コンクリート打設対象の小ブロックに隣接する小ブロックのコンクリートの打設終了からの経過時間を計時するモジュールである。表示制御モジュール453は、打設済小ブロック、打設中小ブロックおよび未打設小ブロックを、経過時間計時部202により計時された経過時間に応じて、3次元設計情報において識別可能に表示するモジュールである。これらのモジュール451~453は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム454は、コンクリート打設管理装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0076】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、図4に示したRAM440やストレージ450には、コンクリート打設管理装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0077】
次に図5に示したフローチャートを参照して、コンクリート打設管理装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、図2のコンクリート打設管理装置100の各機能構成を実現する。
【0078】
ステップS501において、取得部201は、3次元設計情報120を取得する。ステップS503において、コンクリート打設管理装置100は、取得した3次元設計情報120に従って、コンクリートの打設の管理を開始する。ステップS505において、経過時間計時部202は、打設対象小ブロック173に隣接する隣接小ブロック(打設済小ブロック172)に対するコンクリートの打設終了からの経過時間を打設対象小ブロック173の打設管理時間として計時する。ステップS507において、表示制御部204は、経過時間計時部202により計時された経過時間に応じて、3次元設計情報120において、打設済小ブロック、打設中小ブロック、未打設小ブロックを識別可能に表示する。ステップS509において、コンクリート打設管理装置100は、全ての小ブロックへのコンクリートの打設が終了したか否かを判定する。打設が終了していないと判定した場合(ステップS509のNO)、コンクリート打設管理装置100は、ステップS505へ戻る。打設が終了したと判定した場合(ステップS509のYES)、コンクリート打設管理装置100は、処理を終了する。
【0079】
本実施形態によれば、3次元設計情報に含まれる小ブロックのそれぞれについて、各小ブロックの状態に応じて識別可能に表示するので、視覚的にコンクリートの打設時間の管理を行うことができる。また、打設開始からの経過時間や打設開始までの残り時間などに応じて、小ブロックのそれぞれを点滅表示させるなどするので、作業者は、各小ブロックの状態を視覚的に、瞬時に把握することが可能となり、コンクリートの打設管理を容易に行うことが可能となる。
【0080】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0081】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図2
図3
図4
図5