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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】空気環境計測システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20231227BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022124561
(22)【出願日】2022-08-04
【審査請求日】2022-09-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年11月8日に掲載された戸田建設株式会社のウェブサイト(https://www.toda.co.jp/news/2021/20211108_002989.html)にて発表。 令和4年3月1日に発行された建築設備と配管工事(2022年3月号、日本工業出版株式会社)にて発表。 令和4年5月27日に発行された2022年度第36回人工知能学会全国大会(令和4年6月16日、京都府京都市にて開催)の講演予稿集にて発表。 令和4年6月16日に開催された2022年度第36回人工知能学会全国大会(令和4年6月16日、京都府京都市にて開催)にて発表。 令和4年7月20日に販売された2022年度大会(北海道)学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集DVDにて発表。
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 旺樹
(72)【発明者】
【氏名】白山 晋
【審査官】深津 始
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-092049(JP,A)
【文献】木村駿,建設DX デジタルがもたらす建設産業のニューノーマル,初版,日経BP,2020年11月10日,第144-195ページ,ISBN: 978-4-296-10756-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -G06Q 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の所定の位置に設置され、前記建物内の空気環境の計測を行う第1のセンサと、
前記建物内を自律的に移動する自律走行ロボットに搭載され、前記建物内の空気環境の計測を行う第2のセンサと、
前記第1のセンサで計測された第1のセンサ情報と、前記第2のセンサで計測された第2のセンサ情報を収集することにより、前記建物内の空気環境を管理する環境管理装置と
を備え、
前記自律走行ロボットは、前記第2のセンサにより計測された前記第2のセンサ情報が、前記第1のセンサにより計測された前記第1のセンサ情報を補間するように、前記建物内を移動するように構成されている
空気環境計測システム。
【請求項2】
前記自律走行ロボットは、前記第1のセンサ情報が所定の閾値を超えている場合に、前記第1のセンサ情報が所定の閾値を超えている前記第1のセンサが設置されている所定のエリアに移動して、前記第2のセンサ情報を計測する
請求項1に記載の空気環境計測システム。
【請求項3】
前記自律走行ロボットは、前記環境管理装置から受信した前記第1のセンサ情報と、前記第2のセンサ情報の少なくとも何れかの計測結果に基づく所定のメッセージを表示する表示部と、前記第2のセンサ情報の計測結果に基づく所定の音声メッセージを出力する音声出力部を有する
請求項2に記載の空気環境計測システム。
【請求項4】
前記第2のセンサ情報が所定の閾値を超えている場合に、前記表示部は、前記空気環境の改善を促すメッセージを表示し、前記音声出力部は、前記空気環境の改善を促す音声メッセージを出力する
請求項3に記載の空気環境計測システム。
【請求項5】
前記自律走行ロボットは、前記自律走行ロボットの周囲の人間の存在を検出し、その検出結果に基づいて、前記音声メッセージを出力するかを決定する
請求項4に記載の空気環境計測システム。
【請求項6】
前記環境管理装置は、
前記第1センサ情報の時系列データを教師データとして、前記建物内の所定の位置における前記空気環境の時間的変化を学習し、
前記第2のセンサ情報と学習した前記時間的変化に基づいて、前記建物内の所定の位置の所定の時間帯における前記空気環境の計測結果を予測する
請求項1に記載の空気環境計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の空気環境を計測する空気環境計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物環境を向上させることを目的としてCO濃度等の空気環境に係るデータを計測し、その計測結果に応じて空調設備や換気設備を制御する技術が提案されている。最近では、感染症の流行の防止するために、人間の密集度を計測し、密集度の高い場所に対して警告を行うようなシステムも提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、人感センサにより人が検知された場合に、COセンサによりCO濃度を計測し、計測したCO濃度を換気システムに通知することにより、CO濃度の計測結果に応じて換気システムを制御するCO濃度計測システムが提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、室内のCO濃度や人間の数を計測し、CO濃度や人間の数が予め設定した閾値を超えた場合に、室内の換気や室内からの人の退室を促すためのメッセージを報知する密集度監視装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-99199号公報
【文献】特開2022-24584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2のCOセンサや人感センサ等のセンサは、建物内の所定の位置に固定されたCO濃度計測システムや密集度監視装置に内蔵されている。センサの設置位置が固定されている場合には、建物内に計測の空白地帯が発生する場合がある。また、建物内の天井にCOセンサが固定される場合もあるが、本来計測が必要な人間の頭の高さにおけるCO濃度と異なる場合が多く、建物内の気流の関係でCO濃度の高いエリアを誤認する場合もある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、建物内における計測の空白地帯を解消し、CO濃度等の空気環境を正確に計測することができる空気環境計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の空気環境計測システムは、建物内の所定の位置に設置され、前記建物内の空気環境の計測を行う第1のセンサと、前記建物内を自律的に移動する自律走行ロボットに搭載され、前記建物内の空気環境の計測を行う第2のセンサと、前記第1のセンサで計測された第1のセンサ情報と、前記第2のセンサで計測された第2のセンサ情報を収集することにより、前記建物内の空気環境を管理する環境管理装置とを備え、前記自律走行ロボットは、前記第2のセンサにより計測された前記第2のセンサ情報が、前記第1のセンサにより計測された前記第1のセンサ情報を補間するように、前記建物内を移動するように構成されている。
【0009】
また、前記自律走行ロボットは、前記第1のセンサ情報が所定の閾値を超えている場合に、前記所定のエリアに移動して、前記第2のセンサ情報を計測してもよい。
【0010】
また、前記自律走行ロボットは、前記環境管理装置から受信した前記第1のセンサ情報と、前記第2のセンサ情報の少なくとも何れかの計測結果に基づく所定のメッセージを表示する表示部と、前記第2のセンサ情報の計測結果に基づく所定の音声メッセージを出力する音声出力部を有してもよい。
【0011】
また、前記第2のセンサ情報が所定の閾値を超えている場合に、前記表示部は、前記空気環境の改善を促すメッセージを表示し、前記音声出力部は、前記空気環境の改善を促す音声メッセージを出力してもよい。
【0012】
また、前記自律走行ロボットは、前記自律走行ロボットの周囲の人間の存在を検出し、その検出結果に応じて、前記音声メッセージを出力するかを決定してもよい。
【0013】
また、前記環境管理装置は、前記第1センサ情報の時系列データを教師データとして、前記建物内の所定の位置における前記空気環境の時間的変化を学習し、前記第2のセンサ情報と学習した前記時間的変化に基づいて、前記建物内の所定の位置の所定の時間帯における前記空気環境の計測結果を予測してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建物内における計測の空白地帯を解消し、CO濃度等の空気環境を正確に計測することができる空気環境計測システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る空気環境計測システムの構成例である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る自律走行ロボットの動作を説明するための図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係るセンサ情報の表示形態の一例である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る計測結果の表示形態の一例である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る空気環境計測システムの自律走行ロボットの機能ブロック図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る空気環境計測システムの動作シーケンスの一例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る自律走行ロボットの動作フローの一例を示す図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る固定型センサによるCO濃度の計測結果の一例を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態に係る自律走行ロボットに搭載したセンサによるCO濃度の計測結果の一例を示す図である。
図10図10は、本発明の実施の形態に係るCO濃度の予測結果の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、様々な実施の形態で実施することが可能であり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<空気環境計測システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る空気環境計測システムの構成例である。本実施システムは、建物内の所定の位置に設置されている固定型センサ10(第1のセンサ)と、自律走行ロボット20に搭載したセンサ(第2のセンサ)の計測結果を収集し、実態に即した正確な建物内の環境情報を建物管理者に提供するとともに、建物内の従業員や来訪者にセンサの計測結果に基づく環境情報を通知し、空気環境を改善するための行動を促す システムである。
【0018】
以下の実施の形態では、空気環境に関わるデータとしてCO濃度を測定する場合を説明するが、本発明の適用対象は、CO濃度の計測に限定されるものではない。本発明は、温度や湿度等の建築物衛生法に定められている空気環境測定の項目に対応可能である。
【0019】
空気環境計測システム1は、建物内のエリアBDの所定の位置に設置された複数の固定型のCOセンサ10と、COセンサを搭載した自律走行ロボット20と、建物内のエリアBDにおける所定の位置に設置され、自律走行ロボット20から計測されたセンサ情報を受信する無線基地局30と、複数の固定型センサ10、無線基地局30および通信網50を経由して接続され、複数の固定型COセンサ10の計測結果(第1のセンサ情報)と自律走行ロボット20のCOセンサの計測結果(第2のセンサ情報)を一元的に管理する環境管理装置40を備える。
【0020】
本実施の形態の空気環境計測システムの特徴は、以下の通りである。
(1)自律走行ロボットによる計測:COセンサを自律走行ロボットに搭載し、建物内を移動させてCO濃度を計測する機能
(2)センサ情報の一元管理:建物内のCOセンサの計測結果をクラウドシステム上で一元管理する機能
(3)自律走行ロボットからの通知:自律走行ロボットから建物内の従業員や来訪者に対して環境情報を通知する機能
【0021】
<自律走行ロボットの動作>
図2は、本発明の実施の形態に係る自律走行ロボットの動作を説明するための図である。本実施の形態では、COセンサを搭載した自律走行ロボットが建物内を巡回しながらCO濃度を計測する。
【0022】
自律走行ロボット20の巡回ルートは、主に固定型COセンサ10の設置されていない場所を巡回するように設定する。これにより、固定型COセンサ10だけでは十分な計測結果を得られないエリアを自律走行ロボット20に搭載したCOセンサで補間して、「計測の空白地帯」を解消することができる。
【0023】
自律走行ロボット20は、無線基地局30と無線通信を行う機能を有しており、COセンサ26で計測したセンサ情報を、無線基地局30に送信する。無線基地局30は、COセンサ26で計測したセンサ情報を、通信網50を介して環境管理装置40に送信する。
【0024】
自律走行ロボット20は、カメラによる撮影された画像やセンサによる測定等により、障害物を回避しながら建物内を自律的に移動できる機能と、建物内の所定のエリアにおける自己の位置を測定できる機能を有している。自律走行ロボット20の位置情報は、センサ26で計測したセンサ情報とともに、無線基地局30に送信される。これにより、環境管理装置40は、自律走行ロボット20のエリア内における位置とその位置におけるセンサ26のセンサ情報を表示することができる。
【0025】
自律走行ロボット20は、COセンサの測定結果を報知するための表示部25を有してもよい。表示部25に、CO濃度の測定結果や測定結果に基づく注意喚起を自律走行ロボット20の周囲にいる従業員や来訪者に通知することができるので、換気装置や空調装置の動作や人の移動等の空気環境の改善のための行動を促すことができる。ここで、COセンサの測定結果や注意喚起を表示部25に表示するとともに、音声出力部29により音声メッセージを出力してもよい。これにより、CO濃度が高い等の空気環境の悪化を周囲にいる従業員や来訪者に確実に通知することができる。
【0026】
自律走行ロボット20にカメラやセンサを設けて、自律走行ロボット20の周囲の人間の存在を検出し、その検出結果に応じて、CO濃度の測定結果の表示や音声メッセージの出力を行うかを決定するように構成してもよい。これにより、自律走行ロボット20の周囲に人がいるときにのみ、測定結果の表示や音声メッセージの出力を行うことが可能となり、無駄な測定結果の表示や音声メッセージの出力を回避することができる。
【0027】
<環境管理装置におけるセンサ情報の表示>
本実施の形態の環境管理装置40では、自律走行ロボット20のCOセンサ26で計測されたセンサ情報を、建物内に設置されている固定型COセンサ10で計測されたセンサ情報とクラウドシステム上で統合して、一元的に管理している。この一元的に管理されたセンサ情報は、WEBサイトに集約され、建物管理者がブラウザより確認することができる。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態に係るセンサ情報の表示形態の一例である。図3の例では、固定型COセンサ10からのセンサ情報はヒートマップHMとして表示し、自律走行ロボット20に搭載されたCOセンサ26から得られたセンサ情報は、固定型COセンサ10のヒートマップHMに重ねたバルーンBLとして表示されている。自律走行ロボット20は、建物内の所定のエリアにおける自己の位置を測定できる機能を有しており、環境管理装置40は、自律走行ロボット20から受信した位置情報を用いて、ヒートマップHM上にCOセンサ26で計測されたセンサ情報を表示することができる。
【0029】
<自律走行ロボットにおけるセンサ情報の表示>
本実施の形態の自律走行ロボット20は、CO濃度の測定結果や測定結果に基づく注意喚起を表示部25に表示するとともに、音声出力部29による音声メッセージにより周囲にいる従業員や来訪者に通知することができる。図4は、本発明の実施の形態に係る計測結果の表示形態の一例である。
【0030】
表示部25に表示される内容としては、例えば、図4(a)-(c)に示すような、換気の要否やCO濃度の測定結果である。(a)は、換気不要の場合の表示の例であり、(b)は、 換気要の場合の表示の例、(c)は、固定型センサ10および自律走行ロボット20のセンサ26におけるCO濃度の測定結果の表示の例である。表示部25には、定型センサ10および自律走行ロボット20のセンサ26におけるCO濃度の測定結果の少なくとも何れかに基づくメッセージを表示することができる。
【0031】
図4(a)-(c)のそれぞれの表示は、デジタルサイネージのように、数秒毎に入れ替わるように構成してもよい。例えば、換気が不要な場合は、(a)と(c)が繰り返して表示され、換気が必要な場合は、(b)と(c)が繰り返して表示されるとなる。
【0032】
固定型COセンサ10による計測結果において、CO濃度が所定の閾値を超えて高濃度であると判断された場合に、自律走行ロボット20は、このCO濃度が高いと判断された建物内のエリアに移動し、自律走行ロボット20に搭載されたCOセンサ26によりCO濃度の計測を行うようにしてもよい。
【0033】
これにより、固定型COセンサ10による計測結果が誤認識ではないか確認することができるので、CO濃度のデータを正確に計測することができる空気環境計測システムを提供することができる。建物内の固定センサのCO濃度と、人間の頭の高さにおけるCO濃度とが乖離するという問題や、建物内の気流の関係でCO濃度の高いエリアを誤認する等の問題を解決するのに有効である。
【0034】
自律走行ロボット20が、CO濃度が高いと判断されたエリアに移動し、搭載されたCOセンサ26による計測によりCO濃度が高濃度であると再度判定された場合には、自律走行ロボットの周囲にいる従業員や来訪者に「COが高濃度です。換気をしてください」などの表示や音声メッセージの出力により、換気装置や空調装置の動作や人の移動等の空気環境の改善のための行動を促すことができる。これらの表示や出力は、感染症の感染拡大防止のための行動を張り紙などで注意喚起するよりも、より効果的な注意喚起を可能とするものである。
【0035】
<自律走行ロボットの構成>
図5は、本発明の実施の形態に係る空気環境計測システムの自律走行ロボットの機能ブロック図である。自律走行ロボット20は、COを測定するCO測定部21、周囲の人体を検出する人体検出部22、自律走行ロボット20の位置を測定する位置測定部23、センサの計測結果や音声メッセージを通知する情報通知部24、センサの計測結果を表示する表示部25、CO濃度を測定するセンサ部26、人の存在を検出するために周囲の画像を取得するカメラ部27、センサの計測結果を無線基地局30に送信する無線部28、音声メッセージを出力する音声出力部29を備える。自律走行ロボット20は、メモリ、入出力インタフェース、通信インタフェースを備えたコンピュータにより実現することができる。
【0036】
図5では記載を省略するが、自律走行ロボット20は、モータ等による駆動により建物内を移動する機能と、カメラによる撮影された画像やセンサによる測定等により、障害物を回避しながら建物内を自律的に移動できる機能を有している。
【0037】
<自律走行ロボットの動作シーケンス>
図6は、本発明の実施の形態に係る空気環境計測システムの動作シーケンスの一例を示す図である。以下の動作シーケンスでは、自律走行ロボット20が、固定型センサ10の計測結果に基づいて、移動を開始する動作シーケンスを説明するが、本発明は、そのような場合に限定されるものではない。例えば、自律走行ロボット20が、環境管理装置40の管理者の指示により、移動を開始するようにしてもよい。
【0038】
固定型COセンサ10で計測されたセンサ情報は、通信網50を経由して、環境管理装置40に送信される。環境管理装置40では、固定型COセンサ10で計測されたセンサ情報を表示する。固定型COセンサで計測されたセンサ情報は、通信網50と無線基地局30を経由して、自律走行ロボット20に送信される。
【0039】
自律走行ロボット20は、固定型COセンサ10のセンサ情報において、CO濃度が所定の閾値を超えて高濃度であり、人が密集している可能性があると判断された場合には、CO濃度が高いと判断されたエリアに移動し、自律走行ロボット20に搭載されたCOセンサによりCO濃度の計測を行う。
【0040】
自律走行ロボット20のCOセンサ26で測定されたセンサ情報は、自律走行ロボット20の位置情報とともに、無線基地局30を経由して、環境管理装置40に送信され、固定型COセンサ10による計測結果とともに、環境管理装置40において表示される。
【0041】
自律走行ロボット20は、CO濃度の計測結果や計測結果に基づく注意喚起のためのメッセージを表示部25に表示するとともに、自律走行ロボット20の周囲に人間の存在が検出された場合には、周囲にいる従業員や来訪者に対して注意喚起のための音声メッセージを音声出力する。
【0042】
<自律走行ロボットの動作フロー>
図7は、本発明の実施の形態に係る自律走行ロボットの動作フローの一例を示す図である。図7の動作フローは、図6で説明した動作シーケンスにおける自律走行ロボットの動作フローである。
【0043】
自律走行ロボット20は、固定型COセンサによる計測結果において、CO濃度が所定の閾値を超えて高濃度であり、人が密集している可能性があると検知された場合には、CO濃度の高いと判断されたエリアに移動し、自律走行ロボット20に搭載されたCOセンサによるCO濃度の計測を行う(S1-1)。
【0044】
自律走行ロボット20は、測定したCO濃度のセンサ情報を、自律走行ロボット20の位置情報とともに、無線基地局30を経由して、環境管理装置40に送信する(S1-2)。
【0045】
自律走行ロボット20は、CO濃度が所定の閾値を超えているかを判定し(S1-3)、CO濃度が所定の閾値を超えている場合には(S1-3:YES)、周囲の人間の存在を検出し(S1-4)、周囲に人間の存在が検出された場合には(S1-4:YES)、周囲にいる従業員や来訪者に換気指示等の注意喚起のための音声メッセージを音声出力するとともに(S1-5)、図4(b)のような、換気指示等のメッセージを表示する(S1-6)。
【0046】
CO濃度を計測した結果、CO濃度が所定の閾値を超えていない場合(ステップS1-3:NO)、CO濃度が所定の閾値を超えているが、周囲に人間の存在が検出されなかった場合(ステップS1-4:NO)には、図4(a)のような換気不要のメッセージを表示する(S1-7)。この場合は、音声メッセージは出力されない。
【0047】
以上述べたように、本実施の形態の空気環境計測システムでは、建物内の所定の位置に設置されている固定型センサに加えて、自律走行ロボット20に搭載したセンサによりCOを測定するように構成したので、固定型COセンサ10だけでは十分な計測結果を得られないエリアを自律走行ロボット20に搭載したCOセンサで補間して、「計測の空白地帯」を解消することができる。
【0048】
また、固定型COセンサによる計測結果において、COが高濃度であると判断された場合には、自律走行ロボット20をCO濃度の高いエリアに移動させて、自律走行ロボット20に搭載されたCOセンサ26によりCO濃度の計測を行うことにより、固定型COセンサ10による計測結果が誤認識ではないか確認することができるので、CO濃度のデータを正確に計測することができる空気環境計測システムを提供することができる。
【0049】
また、自律走行ロボット20に搭載されたCOセンサ26による計測によりCO濃度が高濃度であると再度判定された場合には、自律走行ロボットの周囲にいる従業員や来訪者に「COが高濃度です。換気をしてください」などの表示や音声メッセージにより、換気装置や空調装置の動作や人の移動を促すことで、より効果的に注意喚起することができる。
【0050】
また、自律走行ロボット20の周囲の人間の存在を検出し、その結果に応じて、測定結果の表示や音声メッセージによる通知を行うかを決定するように構成することで、自律走行ロボット20の周囲に人間がいるときにのみ、測定結果の表示や音声メッセージによる通知を行うことが可能となり、無駄のない効率のよい注意喚起を行うことができる。
【0051】
<実施の形態の変形>
以上、本発明の計測装置における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【0052】
上記実施の形態で説明したように、建物内の所定の位置に設置した固定型COセンサ10と自律走行ロボット20に搭載したCOセンサ26を用いて、建物内におけるCO濃度の空間的な変動を把握できる。
【0053】
一方で、建物内におけるCO濃度は、時間帯によっては、急激に変動する場合もある。例えば、ある場所における自律走行ロボット20に搭載したCOセンサ26の計測結果が所定の閾値を下回る場合であっても、自律走行ロボット20が他の場所に移動した後に、その場所におけるCO濃度が急激に上昇する可能性もある。このCO濃度の時間的変動を把握することは、感染症等の感染リスクを評価するために重要である。
【0054】
この計測における時間的な空白の問題を解消するために、上記実施の形態における固定型COセンサ10と自律走行ロボット20に搭載したCOセンサ26の計測結果を用いて、建物内の所定の位置におけるCO濃度の時間的変動を予測するようにしてもよい。
【0055】
なお、以下の説明では、空気環境に関わるデータとしてCO濃度を予測する場合を説明するが、本発明の適用対象は、CO濃度の計測に限定されるものではなく、温度や湿度等の建築物衛生法に定められている空気環境測定の項目に対応可能であることは上述した実施形態と同様である。
【0056】
例えば、固定型COセンサ10の計測結果の時系列データを教師データとして、建物内の所定の位置におけるCO濃度の時間的変化を学習し、自律走行ロボット20に搭載したCOセンサ26の計測結果と、学習したCO濃度の時間的変化に基づいて、CO濃度の計測結果を予測するように構成することもできる。
【0057】
具体的には、自律走行ロボット20が建物内の所定の位置、例えば、測定対象の部屋の入口に到着し、自律走行ロボット20に搭載したセンサ26が計測を始める時刻を[td]として、計測終了時刻を[td+m△t]とし、予測対象時刻を[td+n△t](m<n)とする。教師データとしては、測定対象の部屋の入口付近において固定型センサ10により計測したCO濃度の時系列データを用いる。予測に用いるテストデータとしては、時刻[td]から[td+m△t]の間に、自律走行ロボット20に搭載したセンサ26を測定対象の部屋の入口付近に停留させて計測したデータを用いる。
【0058】
このテストデータと、固定型COセンサ10の時系列データを教師データとする学習結果を用いて、予測対象時刻[td+n△t]における測定対象の部屋の入口付近における自律走行ロボッ ト20に搭載したセンサ26によって計測されるCO濃度を予測する。
【0059】
教師データとして用いる、所定の時間における固定型COセンサ10のCO濃度の時系列データの一例を図8に示す。また、テストデータとして用いる、測定対象の部屋の入口付近において自律走行ロボット20に搭載したセンサ26により計測したCO濃度の計測データの一例を図9に示す。
【0060】
予測結果の一例を図10に示す。図10の例は、テスト期間の5分間の計測データをテストデータとして、テスト開始から6分後のCO濃度を予測した結果である(td=13:43から13:55、△t=1分、m=5、n=6)。
【0061】
なお、図10では、予測モデルとして、FFNN(Feedforward Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short Term Memory)の3種類を用いた。図10に示したように、予測したCO濃度は、CO濃度の実測値から所定の誤差範囲(例えば、50ppm以内)に収まっており、良好な予測結果が得られていることがわかる。
【0062】
このように、固定型COセンサ10と自律走行ロボット20に搭載したCOセンサ26の計測結果を用いて、建物内の所定の位置におけるCO濃度の時間的変動を予測することにより、自律走行ロボット20に搭載したCOセンサ26が計測できない時間帯におけるCO濃度を予測し、計測における時間的な空白の問題を解消することが可能となる。また、この予測結果を、自律走行ロボットの周囲にいる従業員や来訪者に通知することにより、換気装置や空調装置の動作や人の移動等の行動を促し、空気環境の悪化を事前に防ぐことも可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1…空気環境計測システム、2…人体、10…固定型センサ、20…自律走行ロボット、30…無線基地局、40…環境管理装置、50…通信網。
【要約】
【課題】建物内における計測の空白地帯を解消し、CO濃度等の空気環境を正確に計測することができる空気環境計測システムを提供する。
【解決手段】本発明の空気環境計測システム(1)は、建物内の所定の位置に設置された固定型のCOセンサ(10)と、建物内を自律的に移動する自律走行ロボット(20)に搭載されたCOセンサ(26)とを備え、固定型のCOセンサ(10)で計測されたCO濃度の計測結果と、自律走行ロボット(20)に搭載されたCOセンサ(26)で計測されたCO濃度の計測結果を一元管理し、自律走行ロボット(20)に搭載されたCOセンサ(26)で計測された測定結果が、固定型のCOセンサ(10)で計測された計測結果を補間するように構成されている。
【選択図】 図1
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