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特許7411035調整可能な試料ホルダを備える温度パラメータ判定用装置
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  • 特許-調整可能な試料ホルダを備える温度パラメータ判定用装置 図1
  • 特許-調整可能な試料ホルダを備える温度パラメータ判定用装置 図2
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  • 特許-調整可能な試料ホルダを備える温度パラメータ判定用装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】調整可能な試料ホルダを備える温度パラメータ判定用装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
G01N25/18 H
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022132923
(22)【出願日】2022-08-24
(65)【公開番号】P2023048990
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】21199283.9
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】301077552
【氏名又は名称】ネッチ ゲレーテバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ラウターバッチ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ブルナー
(72)【発明者】
【氏名】アルテム ルネフ
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-050652(JP,A)
【文献】特開2003-039730(JP,A)
【文献】特開平07-063717(JP,A)
【文献】特開2013-076653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0274191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料試料の温度伝導率、熱容量及び/又は熱伝導率を判定するための装置(17)であって、
・前記試料(2)の前側(3)に光エネルギービームを照射するための発光体(1)と、
・前記試料(2)における前記前側(3)とは反対側の後側(4)から放出された放射を温度の関数として検出することにより、前記後側(4)の温度上昇を判定するための放射検出器(5)と、
・前記試料(2)を所定位置に保持するための試料ホルダ(8)とを備える装置において、
調整可能な第1開口(11)が、前記試料ホルダ(8)の前側に配置され、前記光エネルギービームが、前記試料(2)の前記前側(3)に当たる前に前記第1開口を通過し、調整可能な第2開口(12)が、前記試料ホルダ(8)の後側に配置され、
前記試料ホルダ(8)が、半径方向に変位可能な複数の支持体又はピン(10)を含み、
前記試料ホルダ(8)が、前記ピン(10)用の半径方向ガイド、及び調整可能な各開口(11,12)用の座面を形成する試料ホルダリング(9)を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記調整可能な開口(11,12)が、機構によって内側又は外側に一緒に回転可能なブレード(13)を有する虹彩であり、従って該ブレード(13)の間に、より小さいか又はより大きいアパーチャ開口を形成することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項に記載の装置であって、前記調整可能な開口(11,12)の少なくとも1つが、試料を設置するために、前記試料ホルダリング(9)から工具なしで取り外し可能であることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係る、温度伝導率、熱容量及び/又は熱伝導率、又は類似の熱指数を判定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係るタイプの装置は既知である。原則的に、これら装置は、図1に示すように、ライト・フラッシュ分析(LFA)の原理に従って動作する。
【0003】
通常は、垂直構造が採用される。
【0004】
光源1、通常はフラッシュランプ又はレーザーからのエネルギーパルスは、試料2の前側3を加熱する。通常はIRセンサの形態の検出器5は、照射方向に見て、試料の後方に配置されている。この検出器5は、試料から放出される放射に基づいて、試料の後側4における時間依存的な温度上昇を記録する。必要に応じて、検出器5で検出される放射を集束させるための光学系6を設けることができる。
【0005】
伝導率は温度に大きく依存するため、試料は通常、炉7で加熱される。この場合、測定自体は等温である。
【0006】
検出器5の信号から、例えば、熱伝導率を次式により算出することができる。
【数1】
ここに、
・αは温度伝導率であり、
・dは試料厚さであり、
・t1/2はハーフタイムである。
【0007】
最適な試験条件は、均質な材料、試料表面全体への均一なエネルギー入力、並びに短いエネルギーパルス、好適にはデルタ関数の形式である。
【0008】
原則として、これら要件は、本発明に係る装置によっても満たされるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明に係る装置においては、極めて多様な試料を測定することが意図されている。
【0010】
試料ホルダにより測定結果に歪曲が生じることがないように、試料は所定位置に保持されることが重要である。
【0011】
本出願人は、この点に関して、特に2つの領域で潜在的な問題を特定した。
【0012】
歪曲は、光源1のエネルギーパルスが部分的に試料ホルダにも当たり、その試料ホルダから非制御状態で反射されることによって生じる可能性がある。この場合、光源のエネルギーパルスは、検出器に、試料を介して間接的にのみならず直接的にも当たり、従って歪曲が生じる恐れがある。
【0013】
歪曲が生じるもう1つの潜在的な原因は、試料から既に放出された放射の非制御状態での反射である。この場合、試料から既に放出された放射が試料に戻るよう反射する可能性があり、これも測定結果の歪曲をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するため、本発明に従って、請求項1に記載の装置が提供される。
【0015】
通常、伝導率の温度係数、熱容量及び/又は熱伝導率(又は材料試料における同様のパラメータ)を判定するための装置には、光エネルギービームを試料の前側に照射するための発光体が設けられている。更に、放射検出器が設けられている。放射検出器は、試料における前側とは反対側の後側の温度上昇を判定するために使用される。この目的のために、後側から放出される通常は熱放射の形態の放射が検出される。本発明に係る装置は、試料を所定位置に保持/支持するための試料ホルダを備える。本発明に係る装置は、照射方向に見て、調整可能な第1開口が試料ホルダの前側に配置されていることを特徴とする。光エネルギービームは、試料の前側に当たる前にその開口を通過する。更に、調整可能な第2開口が試料ホルダの後側に配置されている。
【0016】
本発明の文脈における調整可能な開口とは、可変サイズを有する開口であると理解される。従って、開口を形成する装置を取り外して同じタイプの他の装置を取り付けることなく開口を変更することができる。
【0017】
このように、本発明に係る装置の第1開口は、試料ホルダの干渉部分を遮蔽するよう、常に調整することができる。例えば、測定すべき試料の形状に起因して使用されることはないが、試料の横に自由に横たわる試料ホルダの部分が光エネルギービームに当たらないよう、及び/又は、試料の下に到達すると共に、試料を保持する試料ホルダの部分も光エネルギービームに当たらないよう、常に調整することができる。
【0018】
同時に、本発明に係る装置において、第2開口は、試料の後側における無関係な端部領域、即ち測定すべき領域によって既に放出されると共に、反射によって戻ってくる放射を受けることに起因して測定を歪曲し得る端部領域を遮蔽するよう、常に調整することができる。
【0019】
多少換言すれば、本発明に係る構造は、好適には、2つの調整可能な開口が、試料をそれらの間にサンドウィッチ状に収容することに特徴付けられていると言える。即ち、調整可能な開口のそれぞれは、試料の照射面又は検出面から好適には10 cm以下のみ、より好適には5 cmのみ離れ、従って妨害を特に効果的に遮蔽又はフェードアウトする。
【0020】
理想的には、調整可能な開口は、虹彩又は虹彩シェードとして好適には以下のとおり設計されている。即ち、虹彩は、複数の可動ブレード、通常は少なくとも6個のブレード、好適には少なくとも10個のブレードを有する。各ブレードは、固定された回転軸上に保持されている。各ブレードは、回転リング内の対応するガイドと一緒にスライドする。回転リングを回転させる方向に応じて、各ブレードは、内側に一緒に旋回し、これにより開口が小さくなり、又は外側に旋回し、これにより開口が大きくなる。
【0021】
試料ホルダが調整可能な支持体を提供すれば、特に好適である。
【0022】
この場合、調整可能な支持体は、その比較的小さな部分のみが測定すべき特定試料の下に到達して試料を静止位置に保持するよう、配置することができる。理想的には、試料ホルダは、半径方向において前後に移動可能な複数の、好適には3個又は場合によっては4個のピンを含む。直径の小さな試料を保持する場合、ピンは、半径方向に接近するよう押し付けられる。比較的大きな直径の試料を保持する場合、ピンは、半径方向に引き離される。
【0023】
試料ホルダは、試料ホルダリング、即ちピン用の半径方向ガイドを形成すると共に、理想的には調整可能な各開口又はこれら開口を形成する装置のための座を提供する試料ホルダリングを有するのが特に有利であり、これにより各開口の正しい位置決めも可能である。このようにして、対応する装置内に容易に配置可能な試料ホルダユニットを得ることができる。
【0024】
好適には、調整可能な開口の少なくとも1つ又はこれら開口を形成する装置は、試料ホルダの支持体又はピン上に試料を容易に配置するために、試料ホルダリングから工具なしで取り外し可能である。
【0025】
更なる設計の可能性、動作モード、並びに利点は、図面に基づく具体的で例示的な実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一般的な測定器の基本構造を示す説明図である。
図2】本発明に係る測定装置を示す縦断面図である。
図3】本発明における試料ホルダ領域を示す詳細図である。
図4】間に試料を収容する調整可能な2つの開口(アパーチャ)を有する本発明に係る試料ホルダユニットを示す軸線方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図2は、本発明に係る好適な測定装置の全体構造を示す。
【0028】
図示の最下部領域においては、試料2の前側3に向けて上方に放射する光源1が表されている。この場合、試料2は、試料ホルダ8と一緒に炉7内に配置されている。試料の後側の上方には、検出器5が配置されている。
【0029】
図3は、その詳細を示す。図示の実際の試料ホルダ8は、試料ホルダリング9、試料を保持するためのピン10、調整可能な第1開口11、並びに調整可能な第2開口12で構成されている。これらは、事前に組み立てられたユニットを形成することができる。
【0030】
図示の2つの調整可能な開口は、虹彩として設計され、虹彩絞りに典型的であると共に、広義には三日月状の旋回スラット13を有することが明示されている。
【0031】
図示のように、ピン10は、特殊設計されている。
【0032】
これらピンは、半径方向内側端において、試料2の下を把持するための小さな突起15を有する。
【0033】
ピン10は、試料ホルダリング9の半径方向孔14内において、移動可能かつ固定可能にガイドされる。ガイドは通常、ピンが試料ホルダリング9内の所定回転位置に保持され、その結果ピンの小さな突起15が常に底部の最下点にあるよう設計されている。
【0034】
従って、ピン10は、その小さな延長部15のみが試料2の下に到達するよう、半径方向に極めて容易に調整することができる。試料に隣接すると共に、試料スペース内に大きく突入するピン10の領域は、開口11,12を適切に調整することにより、容易に覆う(ブランクアウトする)ことができる。
【0035】
調整可能な第1開口11、より正確にはこの開口を形成する装置は、試料を装填するために取り外す必要がないため、試料ホルダリング9にねじ止め、プレス、又は接着できることに留意されたい(図4も参照)。
【0036】
一方、調整可能な第2開口12は、試料ホルダリング9の上部に単に載置され、その上部にて試料ホルダリング9に関連する座面によって中心に置かれると共に保持される。これにより、調整可能な第2開口12は、試料2をピン10上に配置するために装置に上方から装填するときに、工具を使用せずに手で容易に取り外すことができる。後者は、いわば「挟まれた」状態で調整可能な開口11,12の間に配置されている。
【0037】
図4に明示されているように、2つの調整可能な開口11,12、より正確にはこれら開口を形成する装置は、互いに非常に近接して配置されるか又は互いに重ねて配置されることが極めて有利であり得る。図4に示す解決策において、2つの調整可能な開口は、試料の一方の側及び他方の側を保持する支持体又はピンに直接的に隣接している。図4においては、ピン10又は支持体上の突起15の利点を見て取ることができる。即ち、試料は、ピン10のスペースを占める固体又は「分厚い」領域上に載っておらず、従って試料厚さ及びピン厚さ又はピン全直径が照射方向に加算されない。その代わりに、照射方向に見て、試料は、実質的に又は少なくとも大部分がピン又は支持体の間に配置されている。基本的に、2つの調整可能な開口の間の距離は、照射方向において、最大で試料厚さの4倍、より好適には最大で試料厚さの2.5倍である。
【0038】
最後に一般的性質について述べる必要がある。
【0039】
材料試料の温度伝導率、熱容量及び/又は熱伝導率を判定するための装置17についても、適切な時期に保護が求められるであろう。この装置17は、試料2の前側3に光エネルギービームを照射するための発光体1と、試料2における前側3とは反対側の後側4から放出された放射を温度の関数として検出することにより、後側4の温度上昇を判定するための放射検出器5と、試料2を所定位置に保持するための試料ホルダ8とを備え、実際の旋回位置に応じて、より小さいか又はより大きい開口を画定する可動ブレードによって虹彩状に設計された少なくとも1つの調整可能な開口が、試料の一部を遮蔽するために設けられていることを特徴とする。
【0040】
好適には、虹彩状の開口を形成する上記装置は、試料ホルダに直接的に隣接して配置されている。
【符号の説明】
【0041】
1 光源/発光体
2 試料
3 試料の前側
4 試料の後側
5 検出器又は放射検出器
6 光学系
7 炉
8 試料ホルダ
9 試料ホルダリング
10 試料を保持するためのピン
11 調整可能な第1開口
12 調整可能な第2開口
13 オリフィス板における鎌状薄板
14 半径方向孔
15 試料を保持するためのピン延長部
16 オリフィスを試料ホルダリングに固定するためのオリフィスリングにおける孔
17 材料試料の温度伝導率、熱容量及び/又は熱伝導率を判定するための装置
図1
図2
図3
図4