(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】触媒活性粒子フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 53/94 20060101AFI20231227BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20231227BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20231227BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20231227BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B01D53/94 245
B01J23/63 A ZAB
B01J35/04 301E
B01D53/94 222
B01D53/94 280
F01N3/022 C
F01N3/035 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022166906
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2019548699の分割
【原出願日】2018-03-20
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナイナ・ダイベル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー・シュピース
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・レッシュ
(72)【発明者】
【氏名】イェルク-ミヒャエル・リヒター
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・シェーンハーバー
(72)【発明者】
【氏名】スザンネ・クーネルト
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0304623(US,A1)
【文献】特表2010-505607(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3045226(EP,A1)
【文献】仏国特許出願公開第3020091(FR,A1)
【文献】特表2014-528350(JP,A)
【文献】特表2015-521245(JP,A)
【文献】特開2011-092933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
F01N 3/00
3/02
3/04-3/38
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学量論的空燃比で運転される内燃機関の排出ガスから微粒子、一酸化炭素、炭化水素、及び酸化窒素を除去する微粒子フィルタであって、長さLのウォールフローフィルタ、並びに互いに異なる3つのコーティングX、Y及びZを備え、前記コーティングX、Y及びZは、互いに異なる種類の成分、又は、互いに異なる量の成分を有し、前記ウォールフローフィルタは、表面O
E及びO
Aを形成する多孔質壁によってそれぞれ分離されているチャネルE及びAを備え、前記チャネルE及びAは、前記ウォールフローフィルタの第1の端部と第2の端部との間で平行に延在しており、前記チャネルEは前記第2の端部において気密状態で封止されており、前記チャネルAは前記第1の端部において気密状態で封止されている、微粒子フィルタにおいて、コーティングXは前記多孔性壁内に配置されており、コーティングYは前記表面O
E上の前記チャネルE内に配置されており、コーティングZは前記表面O
A上の前記チャネルA内に配置されており、
前記ウォールフローフィルタの容積に基づいて、前記コーティングXの添加量は25~150g/lであり、前記コーティングYの添加量は50~70g/lであり、前記コーティングZの添加量は50~70g/lであり、
コーティングXに含まれる貴金属はパラジウム及びロジウムを含み、コーティングYに含まれる貴金属はパラジウムを含み、コーティングZに含まれる貴金属はパラジウム及びロジウムを含むことを特徴とする、微粒子フィルタ。
【請求項2】
前記コーティングXは、前記ウォールフローフィルタの前記長さLにわたり延在することを特徴とする、請求項1に記載の微粒子フィルタ。
【請求項3】
前記コーティングYは、前記ウォールフローフィルタの前記第1の端部から前記ウォールフローフィルタの長さLの20~70%にわたり延在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の微粒子フィルタ。
【請求項4】
前記コーティングZは、前記ウォールフローフィルタの第2の端部から前記ウォールフローフィルタの長さLの20~70%にわたり延在することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の微粒子フィルタ。
【請求項5】
前記コーティングY及び前記コーティングZの前記長さの合計は、前記長さL未満であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の微粒子フィルタ。
【請求項6】
前記コーティングX、Y、及びZのそれぞれは、1つ以上の基材物質及び1つ以上の酸素貯蔵成分に固定された1つ以上の貴金属類を含有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の微粒子フィルタ。
【請求項7】
前記貴金属類のための前記基材物質は、30~250m
2/gの(DIN 66132により判定される)BET表面積を有する金属酸化物であることを特徴とする、請求項6に記載の微粒子フィルタ。
【請求項8】
前記貴金属類のための前記基材物質は、酸化アルミニウム、ドープされた酸化アルミニウム、酸化ケイ素、二酸化チタン、及びこれらの1つ以上が混合された酸化物からなる系列から選択されていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の微粒子フィルタ。
【請求項9】
前記コーティングX、Y、及びZは、セリウム/ジルコニウム/希土類金属混合酸化物を酸素貯蔵成分として含有することを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の微粒子フィルタ。
【請求項10】
前記セリウム/ジルコニウム/希土類金属混合酸化物は、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム及び/又は酸化サマリウムを希土類金属酸化物として含有することを特徴とする、請求項9に記載の微粒子フィルタ。
【請求項11】
前記セリウム/ジルコニウム/希土類金属混合酸化物は、酸化ランタン及び酸化イットリウム、酸化イットリウム及び酸化プラセオジム、又は、酸化ランタン及び酸化プラセオジム、を希土類金属酸化物として含有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の微粒子フィルタ。
【請求項12】
前記コーティングXは、ランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム及びロジウムと、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを含む第1の酸素貯蔵成分と、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを含む第2の酸素貯蔵成分と、を含有していることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の微粒子フィルタ。
【請求項13】
前記コーティングYは、ランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウムと、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを含む酸素貯蔵成分と、を含有していることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の微粒子フィルタ。
【請求項14】
前記コーティングZは、ランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム及びロジウムと、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを含む酸素貯蔵成分と、を含有することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の微粒子フィルタ。
【請求項15】
前記コーティングXは、前記多孔質壁内に位置しており、前記ウォールフローフィルタの前記長さLにわたって延在しており、前記コーティングXの前記総重量に基づいて、25~30重量%の量のランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム及びロジウムと、前記コーティングXの前記総重量に基づいて、25~35重量%の量の酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを含む第1の酸素貯蔵成分と、を含有し、
前記コーティングYは、前記表面O
E上の前記チャネルE内に位置しており、前記ウォールフローフィルタの前記第1の端部からその長さLの25~75%まで延在しており、前記コーティングYの総重量に基づいて、40~50重量%の量のランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウムと、前記コーティングYの前記総重量に基づいて、40~50重量%の量で酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを含む酸素貯蔵成分と、を含有し、
前記コーティングZは、前記表面O
A上の前記チャネルA内に位置しており、前記ウォールフローフィルタの前記第2の端部からその長さLの25~75%まで延在しており、前記コーティングZの前記総重量に基づいて、50~60重量%の量のランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム及びロジウムと、前記コーティングZの前記総重量に基づいて、40~50重量%の量で酸化ジルコニウム及び酸化セリウムを含む酸素貯蔵成分と、を含有することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の微粒子フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学量論的空燃混合物によって燃料供給される内燃機関の排出ガスからの粒子、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物の除去に特に好適な触媒活性粒子フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
化学量論的空燃混合物によって燃料供給される燃焼機関、すなわちガソリンエンジンからの排出ガスは、三元触媒コンバータを用いた従来の方法で浄化されている。これらはエンジンの3つの基本的な気体状汚染物質、すなわち、炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物を同時に無害成分に転化することができる。
【0003】
このような気体状汚染物質に加えて、ガソリンエンジンからの排出ガスはまた、極微小粒子(PM)も含有しており、これは燃料の不完全燃焼から生じ、本質的に煤で構成されている。ディーゼルエンジンの粒子排出とは対照的に、化学量論的に運転されるガソリンエンジンの排出ガス中の粒子は非常に小さく、1μm未満の平均粒径を有している。典型的な粒径は、10~200nmの範囲である。更に、排出される粒子量は非常に少なく、2~4mgの範囲である。
【0004】
欧州排出ガス規制EU-6cは、粒子質量限界値から、より厳格な粒子数限界値である6×1011/km(WorldwideHarmonized Light Vehicles Test Cycle-WLTP)へというように、このような粒子に対する限界値の変換に関連している。このことが、粒子を除去するために効果的に動作する装置を含む、化学量論的に運転される内燃機関のための排出ガス浄化概念を必要なものとしている。
【0005】
炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、及びコージライトなどのセラミック材料から作製されたウォールフローフィルタは、リーンバーンエンジン、すなわち、特にディーゼルエンジンからの排出ガスの浄化分野において証明されている。これらのウォールフローフィルタは、多孔性壁によって形成された多数の並列チャネルで構成されている。これらチャネルは、フィルタの2つの端部のうちの一方において気密状態で交互に封止されており、フィルタの第1の側部で開放され、フィルタの第2の側部で封止されたチャネルA、及びフィルタの第1の側部で封止され、フィルタの第2の側部で開放されたチャネルBが形成されている。例えば、チャネルAに流入する排出ガスは、チャネルBを介してのみフィルタを離れることができ、この目的のために、チャネルAとチャネルBとの間の多孔質壁を通って流れなければならない。排出ガスが壁を通過すると、粒子は留保され、排出ガスが浄化される。
【0006】
このように留保された粒子は、次いでフィルタの目詰まり、又は排気システムの背圧の許容不可能な増加を防止するために、燃焼されるか、又は酸化されなければならない。この目的のために、ウォールフローフィルタには、例えば、煤の着火温度を低下させる触媒活性コーティングが設けられている。
【0007】
このようなコーティングを、チャネル間の多孔質壁(いわゆる「オンウォールコーティング」)に塗布するか、又はこれらを多孔質壁内に導入すること(いわゆる「インウォールコーティング」)が既知である。欧州特許出願公開第1657410号はまた、両方のコーティング種類の組み合わせを既に説明しており、つまり、触媒活性材料の一部は多孔質壁内に存在し、別の部分は多孔質壁上に存在している。
【0008】
ウォールフローフィルタを使用して排出ガスから粒子を除去する概念は、化学量論的空燃混合物で運転されるガソリンエンジンからの排出ガスの浄化に既に応用されており、例えば、欧州特許出願公開第2042226号を参照されたい。その教示によれば、ウォールフローフィルタは、一方が他方の上に配置された2つの層を含んでおり、一方が多孔質壁内に配置されることができ、他方が多孔質壁上に配置されることができる。
【0009】
独国特許出願公開第102011050788号は、同様の概念を追求している。多孔性フィルタ壁は、三元触媒コンバータの触媒材料を含有し、一方、隔壁は、流入側及び流出側の両方で、それぞれの端部に三元触媒コンバータの触媒材料を追加的に含んでいる。
【0010】
仏国特許出願公開第3020091号は、入口チャネル及び出口チャネルの表面上のコーティングと共に多孔質壁内にコーティングを含む粒子フィルタを開示している。後者は、フィルタ長の部分的領域にわたって、排出ガスが流入するフィルタの側部の入口表面及び出口表面の両方に延在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
微粒子フィルタ及び三元触媒コンバータの機能性を組み合わせ、同時に将来的に適用される制限に準拠する触媒活性微粒子フィルタに対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、長さLのウォールフローフィルタ、並びに互いに異なる3つのコーティングX、Y及びZを備える粒子フィルタに関し、ウォールフローフィルタは、表面OE及びOAを形成する多孔質壁によって分離されているチャネルE及びAを備えており、チャネルE及びAは、ウォールフローフィルタの第1の端部と第2の端部との間で平行に延在しており、チャネルEは第2の端部において気密状態で封止されており、チャネルAは第1の端部において気密状態で封止されており、コーティングXは多孔性壁内に配置されており、コーティングYは表面OE上のチャネルE内に配置されており、コーティングZは表面OA上のチャネルA内に配置されていることを特徴としている。
【0013】
コーティングX、Y及びZは、触媒活性であり、特に250~1100℃の動作温度での触媒活性である。これらは互いに異なっているが、3つ全てが、通常、1つ以上の基材材料及び1つ以上の酸素貯蔵構成要素に固定された1つ以上の貴金属を含有している。
【0014】
コーティングX、Y、及びZは、これらが含有する成分において異なることができる。例えば、これらの成分は、これらが含有する貴金属又はこれらが含有する酸素貯蔵成分に関して異なることができる。
【0015】
しかし、これらの成分はまた、同一の構成成分を含むこともできるが、そのような構成成分は、結果として、異なる量で存在しなければならない。
【0016】
コーティングX、Y及びZは、好ましくは、SCR触媒を含有せず、特に金属交換されたモレキュラーシーブを含まない。
【0017】
白金、パラジウム、及びロジウムは、貴金属類として特に好適であり、パラジウム、ロジウム又はパラジウム、及びロジウムが好ましい。
【0018】
貴金属類は、通常、ウォールフローフィルタの容積に基づいて0.4~4g/lの量で使用される。
【0019】
貴金属類用の基材材料として、当業者に周知の全ての材料が、この目的のために考慮されることができる。そのような材料は、特に、30~250m2/g、好ましくは100~200m2/gの(DIN 66132により判定される)BET表面積を有する金属酸化物である。
【0020】
貴金属類用に特に好適な基材材料は、酸化アルミニウム、ドープされた酸化アルミニウム、酸化ケイ素、二酸化チタン、及びこれらの1つ以上の混合した酸化物からなる系列から選択される。
【0021】
ドープされた酸化アルミニウムは、例えば、酸化ランタン、酸化ジルコニウム及び/又は酸化チタンがドープされた酸化アルミニウムである。ランタンで安定化された酸化アルミニウムが有利にも使用されており、ランタンは、1~10重量%、好ましくは3~6重量%の量で使用され、いずれの場合にもLa2O3として算出され、かつ安定化された酸化アルミニウムの重量に基づいている。
【0022】
セリウム/ジルコニウム/希土類金属混合酸化物は、酸素貯蔵成分として特に好適である。用語「セリウム/ジルコニウム/希土類金属混合酸化物」は、本発明で意味する範囲内では、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、及び希土類酸化物の物理的混合物を含まない。むしろ、「セリウム/ジルコニウム/希土類金属混合酸化物」は、ほぼ均一な、三次元結晶構造のものとして特徴付けられており、理想的には純粋な酸化セリウム、酸化ジルコニウム、又は希土類酸化物の相を含まない。製造プロセスに応じて、完全に均一でない生成物を得られることがあるが、一般的に全く不都合なく用いることができる。
【0023】
他の全ての点において、本発明での意味の中での用語「希土類金属」又は「希土類金属酸化物」は、セリウム又は酸化セリウムを含んでいない。
【0024】
酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム及び/又は酸化サマリウムは、例えば、混合セリウム/ジルコニウム/希土類金属混合酸化物中の希土類金属酸化物とみなされることができる。
【0025】
酸化ランタン、酸化イットリウム及び/又は酸化プラセオジムが好ましい。酸化ランタン及び/又は酸化イットリウムが特に好ましく、酸化ランタン及び酸化イットリウム、酸化イットリウム及び酸化プラセオジム、並びに酸化ランタン及び酸化プラセオジムが特により好ましい。
【0026】
本発明によると、セリウム/ジルコニウム/希土類金属混合酸化物中の酸化セリウムの酸化ジルコニウムに対する比は、広い限界内で変化し得る。その比は、例えば、0.1~1.0、好ましくは0.2~0.7、更により好ましくは0.3~0.5となる。
【0027】
酸素貯蔵成分は、通常、ウォールフローフィルタの容積に基づいて50~120g/lの量で使用されている。
【0028】
本発明の実施形態では、コーティングX、Y、及びZのうちの1つ以上は、酸化バリウム又は硫酸バリウムなどのアルカリ土類化合物を含有している。好ましい実施形態は、コーティングX及びY中に硫酸バリウムを含有する。コーティング当たりの硫酸バリウムの量は、ウォールフローフィルタの容積の5~20g/lの量である。
【0029】
本発明の更なる実施形態において、コーティングX、Y、及びZのうち1つ以上は、酸化ランタンのような希土類系化合物などの添加剤、及び/又はアルミニウム化合物などの結合剤を含有している。これらの添加剤は、広範な限度内で変更できる量で、特定の場合に簡単な方法で当業者が判定できる量で用いられる。
【0030】
本発明の実施形態では、コーティングXは、ランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム、又はパラジウム及びロジウムと、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、及び酸化ランタンを含む第1の酸素貯蔵成分と、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、及び酸化プラセオジム酸化物を含む第2の酸素貯蔵成分と、を含む。
【0031】
コーティングXは、コーティングXの総重量に基づいて、好ましくは、20~40重量%の、より好ましくは、25~30重量%の量のランタン安定化酸化アルミニウムを含む。
【0032】
コーティングXは、コーティングXの総重量に基づいて、好ましくは、25~35重量%の量で2つの酸素貯蔵成分のそれぞれを含む。
【0033】
本発明の実施形態では、コーティングXは、ウォールフローフィルタの全長Lにわたって延在する。ウォールフローフィルタのコーティングXの添加量は、ウォールフローフィルタの容積に基づいて、好ましくは25~150g/lの量である。
【0034】
本発明の実施形態では、コーティングYは、ランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム、又はパラジウム及びロジウムと、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、及びプラセオジム酸化物を含む酸素貯蔵成分と、を含む。
【0035】
コーティングXは、好ましくは、コーティングYの総重量に基づいて、30~60重量%の、より好ましくは40~50重量%の量のランタン安定化酸化アルミニウムを含む。
【0036】
コーティングYは、好ましくは、触媒活性コーティングYの総重量に基づいて、30~60重量%の、より好ましくは40~50重量%の量の酸素貯蔵成分を含む。
【0037】
本発明の実施形態では、コーティングYは、ウォールフローフィルタの第1の端部から、ウォールフローフィルタの長さLの20~70%にわたり、好ましくは25~61%にわたって延在している。ウォールフローフィルタのコーティングYの添加量は、ウォールフローフィルタの容積に基づいて、好ましくは50~70g/lの量である。
【0038】
本発明の実施形態では、コーティングZは、ランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム、又はパラジウム及びロジウムと、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、及び酸化イットリウムを含む酸素貯蔵成分と、を含む。
【0039】
コーティングZは、コーティングZの総重量に基づいて、好ましくは40~65重量%の、より好ましくは50~60重量%の量のランタン安定化酸化アルミニウムを含む。
【0040】
コーティングZは、コーティングZの総重量に基づいて、好ましくは30~60重量%の、より好ましくは40~50重量%の量の酸素貯蔵成分を含む。
【0041】
本発明の実施形態では、コーティングZは、ウォールフローフィルタの第2の端部から、その長さLの20~70%にわたり、好ましくは25~61%にわたって延在している。ウォールフローフィルタのコーティングZの添加量は、ウォールフローフィルタの容積に基づいて、好ましくは50~70g/lの量である。
【0042】
本発明の実施形態では、コーティングY及びZの長さの合計は、全フィルタ長Lよりも短く、好ましくは全フィルタ長Lの90%以下であり、より好ましくは80%以下である。
【0043】
本発明の一実施形態では、本発明は、長さLのウォールフローフィルタ、並びに3つの相互に異なるコーティングX、Y及びZを含む微粒子フィルタに関し、ここで、ウォールフローフィルタは、チャネルE及びAを備え、それらチャネルE及びAはウォールフローフィルタの第1の端部と第2の端部との間で平行に延在し、表面OE及びOAをそれぞれ形成する多孔質壁によって分離されており、チャネルEは、第2の端部において気密に封止されており、チャネルAは、第1の端部において気密に封止されており、
コーティングXは、多孔質壁内に位置しており、ウォールフローフィルタの全長Lにわたって延在しており、コーティングXの総重量に基づいて、25~30重量%の量のランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム、又はパラジウム及びロジウムと、コーティングXの総重量に基づいて、25~35重量%の量の酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム及び酸化ランタンを含む第1の酸素貯蔵成分と、コーティングXの総重量に基づいて、25~35重量%の量の酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、及び酸化プラセオジムを含む第2酸素貯蔵成分と、を含有し、
コーティングYは、表面OE上のチャネルE内に位置しており、ウォールフローフィルタの第1の端部からその長さLの25~75%まで延在しており、コーティングYの総重量に基づいて、40~50重量%の量のランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム、又はパラジウム及びロジウムと、コーティングYの総重量に基づいて、40~50重量%の量で酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、及び酸化プラセオジムを含む酸素貯蔵成分と、を含有し、
コーティングZは、表面OA上のチャネルA内に位置しており、ウォールフローフィルタの第2の端部からその長さLの25~75%まで延在しており、コーティングZの総重量に基づいて、50~60重量%の量のランタン安定化酸化アルミニウムと、パラジウム、又はパラジウム及びロジウムと、コーティングZの総重量に基づいて、40~50重量%の量で酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、及び酸化イットリウムを含む酸素貯蔵成分と、を含有する。
【0044】
本発明に従って使用することができるウォールフローフィルタは、周知であり、市場で入手可能である。それらは、例えば、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、又はコージライトからなり、例えば、1インチ当たり200~400個のセルのセル密度を有し、通常、6~12mil、又は0.1524~0.305mmの壁厚を有する。
【0045】
未コーティング状態では、ウォールフローフィルタは、例えば、50~80%の、具体的には、55~75%の多孔率を有する。未コーティング状態の平均孔径は、例えば、10~25マイクロメートルである。
【0046】
通例、ウォールフローフィルタの細孔は、いわゆる「開気孔」であり、すなわち、それらは、チャネルへの接続を有している。更に、細孔は、通常、互いに相互接続されている。このことは、一方で、内側細孔表面の容易なコーティングを可能にし、他方で、ウォールフローフィルタの多孔性壁を通る排出ガスの容易な通過を可能にする。
【0047】
本発明による微粒子フィルタは、当業者に既知の方法に従って、例えば、通常ウォッシュコートと呼ばれる、コーティング懸濁液を通常のディップコーティング法又はポンプ吸引コーティング法のうちの1つを用いてウォールフローフィルタに塗布することによって製造することができる。熱後処理又は焼成が、通常、続いて行われる。
【0048】
コーティングX、Y、及びZは、別個の後続のコーティング工程で得られる。
【0049】
オンウォールコーティング又はインウォールコーティングを達成するために、ウォールフローフィルタの平均細孔サイズとSCR触媒活性材料の平均粒子サイズとは、互いに適合していなければならないことは、当業者には公知である。インウォールコーティングの場合、触媒活性材料の平均粒径は、ウォールフローフィルタの細孔の中へ入り込むために十分に小さい必要がある。対照的に、オンウォールコーティングの場合、触媒活性材料の平均粒径は、ウォールフローフィルタの細孔を貫通しないように十分に大きい必要がある。
【0050】
本発明の実施形態では、コーティングXの製造のためのコーティング懸濁液は、d50=1~3μm及びd99=9~5μmの粒径分布まで粉砕される。
【0051】
本発明の実施形態では、コーティングYの製造のためのコーティング懸濁液は、d50=4~8μm及びd99=22~16μmの粒径分布まで粉砕される。
【0052】
本発明の実施形態では、コーティングZの製造のためのコーティング懸濁液は、d50=4~8μm及びd99=22~16μmの粒径分布まで粉砕される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、本発明による微粒子フィルタを示しており、これはウォールフローフィルタの第1の端部(4)と第2の端部(5)との間に平行で延びるチャネルEおよびAであって、表面O
E(7)及びO
A(8)をそれぞれ形成する多孔質壁(6)で分離されたチャネルE(2)及びチャネルA(3)を有する長さL(1)のウォールフローフィルタを含み、チャネルE(2)は、第2端部(5)で気密に封止されており、チャネルA(3)は、第1の端部(4)で気密に封止されている。コーティングXは、多孔質壁(6)内に配置されており、コーティングY(9)は、表面O
E(7)上のチャネルE(2)内に配置されており、コーティングZ(10)は、表面O
A(8)上のチャネルA(3)内に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明を、以下の実施例において、より詳細に説明する。
【0055】
比較例1
4重量%の酸化ランタン、及び40重量%の酸化セリウム含有量を有する酸化セリウム/ジルコニウム混合酸化物で安定化された酸化アルミニウムを水に懸濁させた。このようにして得られた懸濁液を、次いで硝酸パラジウム溶液及び硝酸ロジウム溶液と一定の撹拌下で混合した。得られたコーティング懸濁液を直接使用して、市販のウォールフローフィルタ基材をコーティングした。この場合、コーティング懸濁液を基材のフィルタ壁に導入した。このようにして得られたコーティングされたフィルタを乾燥させ、次いで焼成した。
【0056】
このようにして得られたフィルタVGPF1の全負荷は、125g/lに達し、全貴金属負荷は、5.1:1のパラジウム対ロジウムの比で2.58g/lに達した。
【0057】
比較例2
a)4重量%の酸化ランタン、及び33重量%の酸化セリウム含有量を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物で安定化された酸化アルミニウムを水に懸濁させた。このようにして得られた懸濁液を、次いで硝酸パラジウム溶液及び硝酸ロジウム溶液と一定の撹拌下で混合した。得られたコーティング懸濁液を直接使用して、市販のウォールフローフィルタ基材をコーティングした。この場合、コーティング懸濁液を基材のフィルタ壁に導入した。このようにして得られたコーティングされたフィルタを乾燥させて、次いで焼成した。
【0058】
この層の全負荷は、100g/lに達し、全貴金属負荷は、3.9:1のパラジウム対ロジウムの比で2.05g/lに達した。
【0059】
b)4重量%の酸化ランタン、及び40重量%の酸化セリウム含有量を有する酸化セリウム/ジルコニウム混合酸化物で安定化された酸化アルミニウムを水に懸濁させた。次いで、このようにして得られた懸濁液を硝酸パラジウム溶液と一定の撹拌下で混合した。得られたコーティング懸濁液を直接使用して、上記のa)で得られたウォールフローフィルタ基板をコーティングした。この場合、コーティング懸濁液を、流入チャネル内のみに全長の25%の長さにわたって、57g/lの負荷で壁表面に塗布した。このようにして得られたコーティングされたフィルタを乾燥させて、次いで焼成した。
【0060】
このようにして得られたフィルタVGPF2の全貴金属負荷は、5:1のパラジウム対ロジウムの比で2.58g/lに達した。
【0061】
実施例1
a)4重量%の酸化ランタン、及び33重量%の酸化セリウム含有量を有する酸化セリウム/ジルコニウム混合酸化物で安定化された酸化アルミニウムを水に懸濁させた。このようにして得られた懸濁液を、次いで硝酸パラジウム溶液及び硝酸ロジウム溶液と一定の撹拌下で混合した。得られたコーティング懸濁液を直接使用して、市販のウォールフローフィルタ基材をコーティングした。この場合、コーティング懸濁液を基材のフィルタ壁に導入した。このようにして得られたコーティングされたフィルタを乾燥させて、次いで焼成した。
【0062】
この層の全負荷は、100g/lに達し、全貴金属負荷は、4.7:1のパラジウム対ロジウムの比で1.93g/lに達した。
【0063】
b)a)により得られたコーティングされたウォールフローフィルタには、比較例2の工程b)で規定される第2のコーティングが設けられていた。
【0064】
c)4重量%の酸化ランタン、及び24重量%の酸化セリウム含有量を有する酸化セリウム/ジルコニウム混合酸化物で安定化された酸化アルミニウムを水に懸濁させた。このようにして得られた懸濁液を、次いで硝酸パラジウム溶液と、次いで硝酸ロジウム溶液と一定の撹拌下で混合した。得られたコーティング懸濁液を直接使用して、工程b)で得られたウォールフローフィルタ基板をコーティングした。この場合、コーティング懸濁液を、基材の依然としてコーティングされていない流出チャネル内のみで全長の25%の長さにわたって、54g/lの負荷で壁表面に塗布した。このようにして得られたコーティングされたフィルタを乾燥させて、次いで焼成した。
【0065】
このようにして得られたフィルタGPF1の全貴金属負荷は、5:1のパラジウム対ロジウムの比で2.58g/lに達した。
【0066】
実施例2
工程b)においてセリウム/ジルコニウム混合酸化物を使用しないことが異なる形で実施例1を繰り返した。
【0067】
このようにして得られたフィルタGPF2の全貴金属負荷は、5:1.のパラジウム対ロジウムの比で2.58g/lに達した。
【0068】
触媒の特性評価
触媒活性微粒子フィルタVGPF1、VGPF2、GPF1、及びGPF2をそれぞれ、「ラムダスイープ試験」において新規状態と経時状態で試験した。
【0069】
エンジン試験ベンチでのエージング工程において、微粒子フィルタを共にエージングした。このエージング工程は、触媒入口の前に950℃の排出ガス温度(1030℃の最大層温度)を有するオーバーランカットオフエージング工程で構成されている。エージング時間は76時間とした。
【0070】
エージングに続いて、微粒子フィルタVGPF1、VGPF2、GPF1、及びGPF2のそれぞれの一部に、エンジン試験ベンチ上で5g/lの煤で負荷をかけた。
【0071】
続いて、エンジン試験ベンチを使用して、一定の平均空気比λで開始挙動を試験し、λへの変化時の動的変換を調べた。
【0072】
以下の表は、考慮されている成分の50%が変換される温度T50を含んでいる。この場合、化学量論的排出ガス組成物(±3.4%振幅のλ=0.999)による開始挙動が判定された。
【0073】
表1は、新規微粒子フィルタのデータを含み、表2は、経時劣化した微粒子フィルタのデータを含み、表3は、煤で負荷をかけた微粒子フィルタのデータを含んでいる。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
微粒子フィルタの動的変換挙動を、λが0.99~1.01の範囲で、510℃の一定温度で判定した。この場合のλの振幅は、±3.4%に達した。表4は、CO及びNOxの変換曲線の交点における変換を、エージングされた粒子フィルタの関連するHC変換と共に示している。表5は、煤を負荷したフィルタの対応する点を示している。
【0078】
【0079】
【0080】
VGPF1及びVGPF2と比較して、本発明による微粒子フィルタGPF1及びGPF2は、追加的に適用された煤がある場合もない場合も、新規状態及びエージングされた状態の両方で開始挙動及び動的CO/NOx変換における明確な改善を示している。