(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】再生パルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/80 20220101AFI20231227BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20231227BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20231227BHJP
B09B 3/35 20220101ALI20231227BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20231227BHJP
B09B 101/67 20220101ALN20231227BHJP
【FI】
B09B3/80
A61F13/15 130
A61F13/53 300
B09B3/35 ZAB
B09B3/70
B09B101:67
(21)【出願番号】P 2022177370
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2018178740の分割
【原出願日】2018-09-25
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】300073414
【氏名又は名称】ケア・ルートサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】太田 義久
(72)【発明者】
【氏名】長 武志
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-017536(JP,A)
【文献】特開平09-249711(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190140(WO,A1)
【文献】特開2003-321574(JP,A)
【文献】米国特許第06534610(US,B1)
【文献】特開平06-269746(JP,A)
【文献】特開2005-336337(JP,A)
【文献】特開2012-219172(JP,A)
【文献】特開2003-225645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
B29B 17/00- 17/04
C08J 11/00- 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維および吸水性樹脂を含有する使用済み衛生用品の破砕物と、水と、アルカリ性処理剤とを混合して前記吸水性樹脂を可溶化させる可溶化工程と、
前記可溶化工程で得られた混合物から、衛生用品を構成するフィルムおよび不織布を除去し、パルプ繊維および可溶化された吸水性樹脂とを含有する液を得る工程と、
前記パルプ繊維と可溶化された吸水性樹脂を含有する液から、
スクリュープレスにより前記パルプ繊維を分離する工程と
分離されたパルプ繊維を洗浄する工程と、
前記洗浄後のパルプ繊維を成形する工程を有することを特徴とする再生パルプの製造方法。
【請求項2】
前記可溶化工程を、pHが10以上、温度が40℃~100℃の条件で行う請求項1に記載の
再生パルプの製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ性処理剤は、アルカリ金属水酸化物、モノアミン化合物から選択される少なくも1種である請求項1または2に記載の
再生パルプの製造方法。
【請求項4】
前記吸水性樹脂は、アクリル酸を主構成成分とする架橋重合体からなるものであって、そのカルボキシル基の少なくとも一部が中和されており、その架橋構造が、前記アルカリ性処理剤で加水分解する結合を有するものである請求項1~3のいずれか一項に記載の
再生パルプの製造方法。
【請求項5】
前記吸水性樹脂の架橋構造が、エステル結合を有するものである請求項4に記載の
再生パルプの製造方法。
【請求項6】
前記パルプ繊維の分離工程に先立って、前記パルプ繊維と可溶化された吸水性樹脂を含有する液を高速撹拌および/または超音波処理により処理する工程を有する請求項1~5のいずれか一項に記載の
再生パルプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み衛生用品の処理方法に関する。詳しくは、使用済み衛生用品からその構成成分(特にパルプ繊維)を再使用可能に分離回収する処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化により、介護用の大人用使い捨て紙おむつを使用する人が増加している。また、世界的にみても、子供用使い捨て紙おむつを使用する人口が増加している。近年、使い捨て紙おむつの使用量が急速に増大している。これらの使い捨て紙おむつをはじめとする衛生用品は、使用後、汚物でよごれているため、再利用することなく廃棄される。廃棄された使用済み衛生用品は、通常、焼却されている。しかし、使用済み衛生用品の廃棄量の増大にともなって、環境保護の観点から、使用済み衛生用品を再資源化する試みがなされている。使用済み衛生用品を再資源化するために、使用済み衛生用品からそのパルプ繊維などの構成成分を分離回収することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、使用済み衛生用品の処理方法であって、衛生用品を離解して水に分散させる工程と、衛生用品に含まれる繊維およびSAPを分離回収する工程とを少なくとも含み、前記衛生用品を離解して水に分散させる工程において、架橋剤である多価金属塩および酸性物質を加えることを特徴とする処理方法が開示されている。また、特許文献1には、前記衛生用品に含まれる繊維およびSAPを分離回収する工程において、スクリーンやクリーナーを用いて処理し、まずSAP分を回収し、続いて繊維を含む分散液から繊維を回収することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法であって、該方法が、使用済み吸収性物品をpHが2.5以下の有機酸水溶液で80℃以上の温度で処理し、高吸水性ポリマーを不活化する工程と、有機酸水溶液で処理した後の使用済み吸収性物品から、パルプ繊維および不活化した高吸水性ポリマーを分離する工程と、分離したパルプ繊維および不活化した高吸水性ポリマーを含む混合物を酸化剤(オゾンなど)で処理し、不活化した高吸水性ポリマーを分解し、低分子量化し、可溶化する工程と、酸化剤で処理した混合物からパルプ繊維を分離する工程とを含む方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、酸化剤として過ヨウ素酸塩を含む分解剤を、吸水性ポリマーに接触させて、該吸水性ポリマーを分解することを特徴とする分解方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、吸水性ポリマーもしくはこれを含有する吸水用材における吸水性ポリマーの分解方法であって、前記吸水性ポリマーに対して、アルカリ化合物の少なくとも1種と、酸化剤である過硫酸塩化合物の少なくとも1種を含む分解剤を加え、水の存在下に前記吸水性ポリマーを分解処理することを特徴とする吸水性ポリマーの分解方法が開示されている。
【0007】
特許文献5には、使用済み紙おむつを破砕した後、ポリマー分解剤が水に混入され且つ攪拌されるポリマー分解槽中に破砕した使用済み紙おむつを投入し、ポリマー分解槽内で紙おむつに含まれる吸水ポリマーをモノマーに分解してから紙おむつに含まれるパルプ成分を分離回収することを特徴とする使用済み紙おむつの使用材料の再生処理方法が開示されている。ポリマー分解剤としては、例えば、塩化カルシウムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-150976号公報
【文献】特開2018-021283号公報
【文献】特開2001-316519号公報
【文献】特開2003-321574号公報
【文献】特開2000-84533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
吸水性樹脂は、水不溶性であり、従来の使用済み衛生用品の処理方法では、吸水性樹脂とパルプ繊維とが凝集状態で存在している。そのため、吸水性樹脂をパルプ繊維から完全に除去することが困難であり、分離後のパルプ繊維には、吸水性樹脂がある程度の割合で残存していた。吸水性樹脂が一定割合で残存しているパルプ繊維は、高品質が要求される用途には、使用できないという問題があった。また、吸水性樹脂を酸化分解させる方法は、前記酸化剤が、パルプ繊維のヒドロキシル基にも作用し、パルプ繊維のヒドロキシル基をカルボキシル基に酸化させてしまうという問題があった。この酸化剤により劣化されたパルプ繊維は、品質が低下する。
【0010】
そのため、使用済み衛生用品から、吸水性樹脂の残存率を低減し、劣化が少ない高品質のパルプ繊維を効率的に分離回収する方法が求められている。
【0011】
特許文献5には、吸水性ポリマーの分解剤として、塩化カルシウムが開示されている。しかしながら、塩化カルシウムは、脱水剤であって、吸水性ポリマーを可溶化することはできない。
【0012】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、使用済み衛生用品からその構成成分、特にパルプ繊維を再使用可能に分離回収する処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決する本発明の使用済み衛生用品の処理方法は、パルプ繊維および吸水性樹脂を含有する使用済み衛生用品の破砕物と、水と、アルカリ性処理剤とを混合して前記吸水性樹脂を可溶化させる可溶化工程と、前記パルプ繊維と可溶化された吸水性樹脂とを含有する液から、前記パルプ繊維を分離する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明では、パルプ繊維および吸水性樹脂を含有する使用済み衛生用品の破砕物と、水と、アルカリ性処理剤とを用いて吸水性樹脂を可溶化させることにより、パルプ繊維と吸水性樹脂とを容易に分離できるようにした点に要旨がある。一般に、衛生用品に使用される吸水性樹脂は、架橋重合体であり高吸水性であるが、水不溶性である。本発明では、この架橋重合体として、架橋構造(架橋部分)がアルカリ性処理剤で加水分解する結合を有しているものを使用する。このような吸水性樹脂をアルカリ性処理剤で処理すると、架橋構造に存在する結合が加水分解して吸水性樹脂が可溶化する。本発明によれば、吸水性樹脂を可溶化させることにより、パルプ繊維を可溶化された吸水性樹脂から容易に分離することができる。従って、再生されるパルプ繊維に残存する吸水性樹脂の残存率を低下させることができ、再生パルプの品質を高めることができる。
【0015】
図1は、アルカリ性処理剤による処理前後の架橋重合体の状態を模式的に示す説明図である。架橋重合体100は、アルカリ性処理剤による処理前の状態である。架橋重合体100は、ポリマー主鎖110が、架橋鎖120により架橋されている三次元網目状構造を有している。架橋重合体100は、この三次元網目状構造により、体液を吸収して高吸水性を示すが、水に不溶である。この架橋鎖120(架橋構造)には、アルカリ性処理剤により加水分解する結合130が存在している。そして、架橋重合体100をアルカリ性処理剤で処理すると、架橋重合体100の架橋鎖120は、加水分解によりポリマー主鎖110から開裂し、開裂鎖120’となる。その結果、架橋重合体100の三次元網目状構造がなくなり、その架橋されていたポリマー主鎖110は、直鎖状のポリマー110’となる。この直鎖状ポリマー110’は、水溶性を有するものである。よって、使用済み衛生用品の破砕物をアルカリ性処理剤で処理すると、それに含まれる吸水性樹脂が可溶化する。
【0016】
前記可溶化工程は、pHが10以上、温度が40℃~100℃の条件で行うことが好ましい。また、前記アルカリ性処理剤は、アルカリ金属水酸化物、モノアミン化合物から選択される少なくも1種であることが好ましい。
【0017】
前記吸水性樹脂として、アクリル酸を主構成成分とする架橋重合体からなるものであって、そのカルボキシル基の少なくとも一部が中和されており、その架橋構造が、前記アルカリ性処理剤で加水分解する結合を有するものが好ましく、その加水分解性結合がエステル結合であるものがより好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、使用済み衛生用品から、吸水性樹脂粉末の残存率が低減され、劣化が少ないパルプ繊維を効率的に分離回収する処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】アルカリ性処理剤による処理前後の架橋重合体の状態を示す図。
【
図3】使用済み衛生用品を破砕する破砕機の一例を説明する説明図。
【
図4】本発明の可溶化工程を説明するための説明図。
【
図5】本発明のフィルム除去工程を説明するための説明図。
【
図6】本発明で使用する分離機構の一例を説明する説明図。
【
図8】本発明のパルプ洗浄工程を説明するための説明図。
【
図9】本発明のパルプ成形工程を説明するための説明図。
【
図10】本発明のパルプ成形工程を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の使用済み衛生用品の処理方法は、パルプ繊維および吸水性樹脂を含有する使用済み衛生用品の破砕物と、水と、アルカリ性処理剤とを混合して前記吸水性樹脂を可溶化させる可溶化工程と、前記パルプ繊維と前記可溶化された吸水性樹脂とを含有する液から、前記パルプ繊維を分離する工程とを有することを特徴とする。
【0021】
図2は、本発明の使用済み衛生用品の処理方法、本発明の再生パルプの製造方法、および、本発明の再生吸水性樹脂の製造方法の概略を説明するフローチャートである。
より好ましい態様では、本発明の使用済み衛生用品の処理方法は、
1)パルプ繊維および吸水性樹脂を含有する使用済み衛生用品の破砕物と、水と、アルカリ性処理剤とを混合して、前記吸水性樹脂を可溶化させる可溶化工程Aと、
2)前記混合物から、衛生用品を構成するフィルムおよび不織布を除去し、パルプ繊維および可溶化された吸水性樹脂とを含有する液を得る工程(フィルム除去工程B)、
3)前記液からパルプ繊維を分離して、可溶化された吸水性樹脂を含有する液を得る工程(分離工程C)とを有する。
【0022】
また、本発明の再生パルプの製造方法は、
4)前記処理方法により分離されたパルプ繊維を洗浄する工程(パルプ洗浄工程D)、および、
5)洗浄後のパルプ繊維を成形する工程(パルプ成形工程E)とを有する。
【0023】
本発明の再生吸水性樹脂の製造方法は、
6)前記処理方法により得られた可溶化された吸水性樹脂を多価金属塩で架橋する工程を有することを特徴とする。
【0024】
本発明の処理対象となる使用済み衛生用品は、パルプ繊維と吸水性樹脂とを含有するものであれば特に限定されず、例えば、使い捨て紙おむつ、失禁パッド、軽失禁パッド、生理用ナプキン、母乳パッド、ペットパッドなどの吸収性物品を挙げることができる。これらの中でも、パルプ繊維の使用量が多い使い捨て紙おむつに、本発明を好適に適用できる。
【0025】
1)パルプ繊維および吸水性樹脂を含有する使用済み衛生用品の破砕物と、水と、アルカリ性処理剤とを混合して前記吸水性樹脂を可溶化させる可溶化工程Aについて
【0026】
使用済み衛生用品は、破砕機で破砕することが好ましく、例えば、一軸破砕機、または、二軸破砕機で破砕することがより好ましい。破砕機の具体例としては、例えば、(株)御池鐵工所製のロータリープレスクラッシャー、あるいは、日本シーム(株)製の洗浄粉砕機などを挙げることができる。破砕物の大きさは、50mm~100mm四方程度の大きさが好ましい。
【0027】
図3は、ロータリープレスクラッシャー1を用いて、使用済み衛生用品を破砕する態様を説明するための説明図である。投入口3から使用済み衛生用品を破砕室5に投入する。ロータリープレスクラッシャー1は、破砕室5に投入された使用済みの衛生用品を、水平プッシャー7で回転刃15を有するローター11に押し付けることにより破砕する。上部プッシャー9は、上から使用済み衛生用品を押さえつける。使用済み衛生用品は、ローター11に取り付けられた回転刃15と本体に取り付けられた固定刃17とにより破砕される。スクリーン13を通過するサイズまで破砕されたのちに、破砕物は、排出口19から排出される。
【0028】
この破砕により、使用済み衛生用品を構成するフィルム、不織布、パルプ繊維などが裁断される。また、この破砕により、使用済み衛生用品が含有する吸水性樹脂の主鎖が物理的に切断される。その結果、後述する本発明の可溶化工程によって、吸水性樹脂を可溶化させて得られる溶液の粘度が高くなることを抑制することができる。
【0029】
使用済み衛生用品が含有する吸水性樹脂としては、特に限定されないが、アクリル酸を主構成成分とする架橋重合体からなるものであって、そのカルボキシル基の少なくとも一部が中和されているものを挙げることができる。
【0030】
架橋重合体を構成するアクリル酸成分の含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
架橋重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオンなどを挙げることができる。これらの中でも、架橋重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が、ナトリウムイオンで中和されていることが好ましい。なお、架橋重合体のカルボキシル基の中和は、重合して得られる架橋重合体のカルボキシル基を中和するようにしてもよいし、予め、中和された単量体を用いて架橋重合体を形成するようにしてもよい。
【0032】
架橋重合体のカルボキシル基の中和度は、50モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。また、中和度の上限は、特に限定されず、カルボキシル基のすべてが中和されていてもよい。なお、中和度は、下記式で求められる。
中和度(モル%)=100×「架橋重合体の中和されているカルボキシル基のモル数」/「架橋重合体が有するカルボキシル基の総モル数(中和、未中和を含む)」
【0033】
架橋重合体の架橋構造(架橋鎖部分)は、アルカリ性処理剤で加水分解する結合を有することが好ましい。アルカリ性処理剤で加水分解する結合としては、例えば、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合などを挙げることができる。本発明では、架橋構造(架橋鎖部分)にエステル結合を有する吸水性樹脂を含有する使用済み衛生用品を対象とすることが好ましい。
【0034】
前記架橋重合体として、例えば、
1)アクリル酸と、前記アクリル酸のカルボキシル基と反応して、エステル結合やアミド結合などの加水分解性結合を形成し得る架橋剤とを含有する不飽和単量体組成物を重合して得られるもの、
2)アクリル酸を含有する不飽和単量体組成物を重合して得られる重合体の表面を、アクリル酸のカルボキシル基と反応して、エステル結合やアミド結合などの加水分解性結合を形成し得る架橋剤で表面処理して得られるもの、
3)アクリル酸と、前記アクリル酸のカルボキシル基と反応して、エステル結合やアミド結合などの加水分解性結合を形成し得る架橋剤とを含有する不飽和単量体組成物を重合して得られる重合体の表面を、さらに前記架橋剤で表面処理して得られるものなどを挙げることができる。
【0035】
アクリル酸のカルボキシル基と反応して、エステル結合、アミド結合、あるいはウレタン結合などの加水分解性結合を形成し得る架橋剤としては、例えば、多価アルコール、多価グリシジル、多価アミン、多価アジリジン及び多価イソシアネートなどを挙げることができる。多価グリシジル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。多価アミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびポリエチレンイミンなどが挙げられる。多価アジリジン化合物としては、日本触媒化学工業社製のケミタイトPZ-33{2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス(3-(1-アジリジニル)プロピネート)}、ケミタイトHZ-22{1,6-ヘキサメチレンジエチレンウレア}およびケミタイトDZ-22{ジフェニルメタン-ビス-4、4’-N、N’-ジエチレンウレア}などが挙げられる。多価イソシアネート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの架橋剤は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0036】
使用済み衛生用品が含有する吸水性樹脂は、アクリル酸を主構成成分とする架橋重合体からなるものであって、架橋構造(架橋鎖部分)が、アクリル酸のカルボキシル基と多価グリシジル化合物との架橋反応により形成されたエステル結合を有するものが好ましい。
【0037】
吸水性樹脂の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状などの粉末状が挙げられる。これらのうち、不定形破砕状が好ましい。
【0038】
本発明の分離回収対象となるパルプ繊維は、特に限定されることなく、例えば、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維が挙げられる。パルプ繊維の原料パルプとしては、針葉樹クラフトパルプ或いは広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ或いはワラパルプ等の非木材パルプが挙げられる。
【0039】
本発明の可溶化工程において使用されるアルカリ性処理剤は、破砕物と、水と、アルカリ性処理剤とが混合された混合物(以下、「水性処理液」と称する場合がある)において、破砕物が含有する吸水性樹脂の架橋構造(架橋鎖部分)が有する加水分解性結合を分解するものであれば、特に限定されない。前記アルカリ性処理剤は、水性処理液中で使用する観点から、水溶性であることが好ましい。また、アルカリ性処理剤は、塩基であり、水性処理液中でアルカリ性を示すものが好ましい。前記アルカリ性処理剤としては、例えば、pKaが、4以上のものが好ましく、4.2以上のものがより好ましく、4.5以上のものがさらに好ましい。なお、塩基の場合、pKaは、共役酸のpKaである。
【0040】
前記アルカリ性処理剤の具体例としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および、アミン化合物を挙げることができる。
【0041】
前記アルカリ金属化合物として、アルカリ金属の水酸化物または弱酸塩が挙げられる。アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。アルカリ金属弱酸塩として、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのアルカリ金属酢酸塩;シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウムなどのアルカリ金属シュウ酸塩;コハク酸-ナトリウムなどのアルカリ金属コハク酸塩などが挙げられる。
【0042】
前記水溶性のアルカリ土類金属化合物として、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。
【0043】
前記アミン化合物として、例えば、アンモニアおよびその誘導体;脂肪族アミン;脂環式アミン;ベンゼン環を有するアミン;ピロリジン、ピペリジン、モルフォリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、インドールなどの含窒素ヘテロ環化合物およびその誘導体を挙げることができる。
【0044】
前記アンモニアの誘導体としては、例えば、炭酸アンモニウムを挙げることができる。
【0045】
前記脂肪族アミンとしては、モノアミン、ジアミン、および、ポリアミンなどが挙げられる。前記モノアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどのアミノアルコール;4級アンモニウムヒドロキシド(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなど)などを挙げることができる。
【0046】
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを挙げることができる。また、ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどを挙げることができる。
【0047】
脂環式アミンとしては、例えば、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミンおよびこれらの誘導体を挙げることができる。
【0048】
ベンゼン環を有するアミンとしては、例えば、アミノ基がベンゼン環に直接結合している芳香族アミン、および、アミノ基がアルキレン基などを介してベンゼン環に結合しているフェニルアルキルアミンなどを挙げることができる。前記芳香族アミンの具体例としては、アニリン、ベンジルアニリン、メトキシアニリン、ジフェニルアミン、ビフェニルアミン、トルイジンを挙げることができる。また、フェニルアルキルアミンの具体例としては、ベンジルアミン、フェニルエチルアミンなどを挙げることができる。
【0049】
ピリジン誘導体としては、例えば、ピリジン、および、メチルピリジン、エチルピリジン、フェニルピリジン、ベンジルピリジンなどを挙げることができる。
【0050】
また、前記アミノ化合物は、そのアミノ基をケトンでブロックしたケチミンとして用いてもよい。ケチミンは、水分と反応し、ブロック剤のケトンが遊離してアミノ基を再生する。前記ケトンとしては、例えば、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトンなどを挙げることができる。
【0051】
これらのアルカリ性処理剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
アルカリ土類金属化合物や、ジアミン化合物、ポリアミン化合物のように、水溶液中で、多価カチオンを生成するアルカリ性処理剤を用いると、可溶化している吸水性樹脂が、多価カチオンにより再度架橋され、不溶化するおそれがある。多価カチオンによる吸水性樹脂の架橋を防止する観点から、前記アルカリ性処理剤が、水性中で生成するカチオン成分は、1価のカチオンであることが好ましい。これらの点から、本発明で使用するアルカリ性処理剤は、アルカリ金属水酸化物、または、モノアミン化合物が特に好ましい。
【0053】
前記アルカリ性処理剤は、固体、水溶液などとして用いることができる。固体として用いる場合は、例えば、使用済み衛生用品の破砕物にアルカリ性処理剤を添加した後、これらの混合物に水を添加するか、使用済み衛生用品の破砕物を水に分散させた後、この分散物にアルカリ性処理剤を添加することができる。また、水溶液として用いる場合は、例えば、アルカリ性処理剤を水(純水の他、アルコールやアセトンなどの水溶性有機溶媒を含有する水性溶剤も含む)に溶かして所定濃度の水溶液を調製した後、この水溶液を使用済み衛生用品の破砕物と混合することができる。
【0054】
前記アルカリ性処理剤の使用量は、使用済み衛生用品に含まれる吸水性樹脂を加水分解する量であれば特に限定されず、加水分解反応を容易に進行させる観点から、使用済み衛生用品の破砕物と水とアルカリ性処理剤とを含有する水性処理液のpHが10以上となるようにすることが好ましい。また、前記可溶化工程は、温度が40℃~100℃の条件で行うことが好ましい。
【0055】
前記可溶化工程における水性処理液のpHは、10以上であることが好ましく、より好ましくは10.5以上、さらに好ましくは11以上であり、19以下であることが好ましく、より好ましくは17以下、さらに好ましくは14以下である。可溶化工程を行う際のpHを前記範囲とすることで、可溶化工程を効率的に行うことができる。
【0056】
前記可溶化工程は、常圧あるいは加圧下のいずれにおいても行うことができる。
【0057】
前記可溶化工程を行う温度(可溶化工程を常圧で行う際の水性処理液の温度)は、40℃以上であることが好ましく、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、100℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。可溶化工程を行う際の温度を前記範囲とすることで、可溶化工程を効率的に行うことができる。
【0058】
前記可溶化工程を加圧下で行う際の圧力は、3気圧以下が好ましく、2.5気圧以下がより好ましく、2気圧以下がさらに好ましく、1.1気圧以上が好ましく、1.3気圧以上がより好ましく、1.5気圧以上がさらに好ましい。また、この際の水性処理液の温度は、130℃未満が好ましく、125℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましく、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。可溶化工程を行う際の温度を前記範囲とすることで、可溶化工程を促進することができる。
【0059】
前記可溶化工程を行う時間は、反応温度、pH、および、吸水性樹脂の処理量などに応じて適宜調整すればよいが、通常、1分間以上が好ましく、3分間以上がより好ましく、5分間以上がさらに好ましく、240時間以内が好ましく、120時間以内がより好ましく、72時間以内がさらに好ましい。
【0060】
前記可溶化工程を行う際、水性処理液におけるアルカリ性処理剤の濃度は、水性処理液における吸水性樹脂の濃度などに応じて適宜調整すればよいが、通常、0.001モル/L以上が好ましく、0.005モル/L以上がより好ましく、0.01モル/L以上がさらに好ましく、50モル/L以下が好ましく、40モル/L以下が好ましく、30モル/L以下がさらに好ましい。
【0061】
本発明における可溶化工程では、オゾン、過ヨウ素酸塩、過硫酸塩のような酸化剤を使用しないため、劣化が少ないパルプ繊維を低コストで得ることができる。また、本発明では、吸水性樹脂を予め塩化カルシウムなどの脱水剤で脱水処理をする必要がない。
【0062】
本発明における可溶化工程Aは、例えば、
図4に示すように、裁断された使用済み紙おむつの破砕物と、アルカリ性処理剤と水とを加えて混合する反応槽21と、前記反応槽にアルカリ性処理剤を供給するアルカリ性処理剤槽23とを設備している。破砕機(ロータリープレスクラッシャー1)により裁断された使用済み紙おむつの破砕物は、例えば、ベルトコンベア25により移送され、反応槽21に投入される。
【0063】
反応槽21は、温度調節ができるようにジャケット27、および、混合物28を撹拌するための撹拌装置29備えているものが好ましい。反応槽21の下部には、可溶化工程を終えた混合物28をフィルム除去工程Bへと移送する配管と、配管への流路を開閉する開閉弁が設けられている。
【0064】
2)前記混合物から、衛生用品を構成するフィルムおよび不織布を除去し、パルプ繊維および可溶化された吸水性樹脂とを含有する液を得る工程(フィルム除去工程B)
【0065】
可溶化工程Aにおいて、使用済み衛生用品の破砕物と、水と、アルカリ性処理剤とを混合して得られた混合物(水性処理液)には、衛生用品を構成するフィルムおよび不織布の破砕物が存在する。フィルム除去工程Bでは、これらの混合物から、フィルムおよび不織布の破砕物を除去して、パルプ繊維および可溶化された吸水性樹脂とを含有する液を得る。
【0066】
フィルム除去工程Bは、例えば、孔を複数設けた多孔板を備える分離機構を用いることが好ましく、直径が3mm~7mmの孔を複数設けた多孔板を備える分離機構を用いることがより好ましい。直径が3mm~7mm程度の孔を複数設けた多孔板を備える分離機構としては、例えば、パルパー、回転ドラム式分離機、業務用洗濯脱水機などを挙げることができる。中規模設備としては、パルパーまたは回転ドラム式分離機を採用することが好ましく、小規模設備としては、業務用洗濯脱水機を採用することが好ましい。
【0067】
直径が、3mm~7mm程度の孔を複数設けた多孔板を備える分離機構では、可溶化された吸水性樹脂とパルプ繊維は、直径が3mm~7mmの孔を透過するが、裁断されたフィルム及び不織布は、これらの孔を透過しない。直径が3mm~7mm程度の孔を複数設けた多孔板としては、例えば、パンチングメタルを好適に使用することができる。
【0068】
前記分離機構として好適に採用し得るパルパーとしては、公知のものを使用することができる。パルパー30は、例えば、
図5に示したように、使用済み衛生用品の破砕物と、水と、アルカリ性処理剤とを混合して得られた混合物28を収容する収容槽33と、収容槽33の底部に設けられた多孔板37と、多孔板37の上部に回転可能に設けられたローター39とを備えるものが好ましい。収容槽33は、円筒状の形状であり、底部の中央に円形の多孔板37が設けられている。
【0069】
多孔板37には、直径が3mm~7mmの孔が複数設けられている。多孔板37の下方には、多孔板37を透過する透過物の排出口41が設けられている。ローター39を回転することにより、混合物28は収容槽内を回流する。可溶化された吸水性樹脂とパルプ繊維は、多孔板37の孔を透過して、排出口41から排出される。
【0070】
収容槽33の底部には、フィルムおよび不織布の裁断物を排出するための排出口43が設けられている。フィルムおよび不織布の裁断物を排出するための排出口43は、底部中央に設けられた円形の多孔板37の外周の外側であって、収容槽33の外壁に近い位置に配置されていることが好ましい。排出口43には、排出口43を開閉するためのゲート弁(図示しない)が接続されている。
【0071】
分離機構として採用し得る回転ドラム式分離機としては、例えば、特開2012-81433号公報の
図2~
図6に開示されている使用済み紙おむつ分離装置を挙げることができる。
【0072】
業務用洗濯脱水機としては、例えば、複数の孔が設けられた回転ドラムを有するものが挙げられる。混合物を回転ドラム内に投入し、ドラムを回転させて脱水することにより、フィルムおよび不織布を除去することができる。可溶化された吸水性樹脂およびパルプ繊維は、遠心力により回転ドラムの周壁に設けられた孔を透過して、業務用洗濯脱水機から排水として排出される。一方、フィルム及び不織布の破砕物は、回転ドラムに設けられた孔を透過することができず、回転ドラム内に残留する。なお、乾燥機能を備えたものを使用することにより、業務用洗濯脱水機により、フィルムおよび不織布の破砕物を乾燥することも好ましい態様である。
【0073】
3)前記パルプ繊維と前記可溶化された吸水性樹脂とを含有する液から、前記パルプ繊維を分離する工程(分離工程C)
【0074】
本発明の処理方法は、前記フィルム除去工程により得られた処理液から、固液分離手段により、固形分であるパルプ繊維を分離し、可溶化された吸水性樹脂を含有する液を得る。前記フィルム除去工程により得られた処理液には、処理液に溶解している吸水性樹脂と固形分のパルプ繊維などが含まれる。従って、固液分離手段により、固形分であるパルプ繊維を分離することにより、吸水性樹脂が溶解した液を得る。
【0075】
前記固液分離手段として、特に限定されることなく、例えば、濾過分離、遠心分離、沈降分離、ベルトプレス、または、スクリュープレスなどの公知手段が挙げられる。これらの固液分離手段は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明において、前記固液分離手段としては、たとえば、スクリュープレスを好適に採用することができる。スクリュープレス40は、例えば、
図6に示すように、円筒状のスクリーン43と、前記円筒状スクリーン43の内部に回転自在に配置されたスクリュー軸45と、円筒状スクリーン43の外方を覆う外筒51とを有する。円筒状スクリーン43の一方の端部には、パルプ繊維と可溶化された吸水性樹脂とを含有する液を投入する投入口42が設けられ、他方の端部には、パルプ繊維を排出する排出口47が設けられている。スクリュー軸45の表面には、スクリュー羽根49が巻回されており、このスクリュー羽根49のピッチは、投入口42から排出口47に進むにつれて、小さくなっている。スクリュー軸45は、軸受け55を介して支持台57によって、回転自在に支持されている。スクリュー軸45の一方端には、スプロケット53が設けられ、駆動モータにチェーンを介して連結されている(図示せず)。
【0077】
パルプ繊維と可溶化された吸水性樹脂とを含有する液は、投入口42から円筒状スクリーン43の内部に投入される。スクリュー軸、スクリュー羽根、円筒状のスクリーンによって囲まれた空間の体積は、投入口から排出口に向かって徐々に小さくなっている。スクリュー軸45を回転することにより、パルプ繊維は、投入口42から排出口47側に移動する。この際、パルプ繊維は圧搾されて、パルプ繊維から可溶化された吸水性樹脂を含有する液が搾り出される。搾り出された可溶化された吸水性樹脂を含有する液は、円筒状スクリーン43を透過して円筒状スクリーン43の外側に排出される。円筒状スクリーン43の外側に排出された可溶化された吸水性樹脂を含有する液は、外筒51によって回収され、排出口59から排出される。可溶化された吸水性樹脂を含有する液を絞り出したパルプ繊維は、排出口47へと移動し排出口47から排出される。
【0078】
分離工程Cは、例えば、
図7に示すように、パルプ繊維及び可溶化した吸水性樹脂を含有する処理液からパルプ繊維を分離するスクリュープレス40と、吸水性樹脂が溶解している液を排出するポリマー中継槽60とスクリュープレス40で分離されたパルプ繊維に水を混合して貯溜するパルプ中継槽62とを設備している。スクリュープレス40は、処理液から固形分であるパルプ繊維を分離し、吸水性樹脂が可溶化している液をポリマー中継槽60に排出する。ポリマー中継槽60では、吸水性樹脂が可溶化している液に次亜塩素酸ソーダを混合して殺菌する。スクリュープレス40により分離されたパルプ繊維は、パルプ中継槽62に移送される。
【0079】
本発明の処理方法は、前記パルプ繊維の分離工程に先立って、パルプ繊維と可溶化された吸水性樹脂とを含有する処理液の流動性を調整することが好ましい。吸水性樹脂が可溶化することによって、処理液の粘度が高くなっている場合があるからである。処理液の流動性を調整する方法としては、例えば、処理液の濃度を調整する方法、処理液を高速撹拌および/または超音波処理により処理して、処理液に含まれる吸水性樹脂の主鎖を切断する工程を有することが好ましい。この主鎖切断工程により、吸水性樹脂が低分子量化するため、パルプ繊維と可溶化された吸水性樹脂とを含有する処理液の粘度が低下する。よって、この主鎖切断工程を設けることで、パルプ繊維の分離工程において、パルプ繊維の分離作業が容易になる。その結果、吸水性樹脂の残存率が一層低下したパルプ繊維を得ることができる。流動性の調整は、例えば、反応槽で行われることが好ましい。
【0080】
前記高速撹拌は、吸水性樹脂に機械的せん断力を与えることにより、吸水性樹脂の主鎖を切断する方法であり、ホモジナイザーなどの高速撹拌機を用いて行うことができる。高速撹拌の速度は、吸水性樹脂の主鎖を切断できる速度であれば特に限定されないが、切断効率の点から、10rpm以上であることが好ましく、より好ましくは20rpm以上、さらに好ましくは30rpm以上である。また、切断効率とエネルギー消耗のバランスの点から、高速撹拌の速度は、30000rpm以下であることが好ましく、より好ましくは25000rpm以下、さらに好ましくは20000rpm以下である。
【0081】
前記超音波処理は、吸水性樹脂に超音波振動によるせん断力を与えることにより吸水性樹脂の主鎖を切断する方法であり、超音波発生機を用いて行うことができる。超音波処理の周波数は、吸水性樹脂の主鎖を切断できる周波数であれば特に限定されないが、切断効率の点から、20Hz以上であることが好ましく、より好ましくは50Hz以上、さらに好ましくは100Hz以上である。また、切断効率とエネルギー消耗のバランスの点から、超音波処理の周波数は、20KHz以下であることが好ましく、より好ましくは15KHz以下、さらに好ましくは10KHz以下である。
【0082】
本発明には、再生パルプの製造方法が含まれる。本発明の再生パルプの製造方法は、4)本発明の処理方法により分離されたパルプ繊維を洗浄する工程(パルプ洗浄工程D)、および、5)洗浄後のパルプ繊維を成形する工程(パルプ成形工程E)とを有する。
【0083】
パルプ洗浄工程Dは、
図8に示すように、パルプ中継槽62内のパルプ含有液に水を混合して大き目の異物を除去する分離スクリーン64と、分離スクリーン64で大き目の異物が除去されたパルプ含有液を0.15~0.20mm幅の縦スリットを備えた円筒状のスクリーンに通過させて微細な異物を除去する第1ドラムスクリーン66(異物除去装置)と、分離スクリーン64から排出された異物を含む水を貯留する異物回収槽68と、第1ドラムスクリーン66で異物が除去されたパルプ含有液に水を混合して洗浄するパルプ洗浄槽70と、パルプ洗浄槽70で洗浄されたパルプ含有液を送り出すまで貯溜するパルプ中継槽72と、パルプ中継槽72内のパルプ含有液に水を混合して微細な異物をさらに除去する第2ドラムスクリーン74(異物除去装置)と、第2ドラムスクリーン74で異物が除去されたパルプ含有液を脱水する脱水機76と、第2ドラムスクリーン74から排出された異物を含む水を貯溜してパルプ洗浄槽70に供給する循環水槽78を設備している。第2ドラムスクリーン74は第1ドラムスクリーン66と同じ構造である。
【0084】
分離スクリーン64では、パルプ含有液から、大き目のフィルム片が異物として除去され、異物を含む水が異物回収槽68に排出される。異物回収槽68に貯留された異物を含む水は、次いで、脱水・乾燥処理がなされて、小さなフィルム片が回収される。
【0085】
パルプ成形工程Eは、
図9に示すように、脱水機76で脱水されたパルプ繊維を計量して1バッチ分を作液する作液槽80と、作液槽80で作液された1バッチ分のパルプ含有液を送り出すまで貯溜する貯溜槽82と、貯溜槽82内のパルプ含有液を加圧して矩形状のパルプシート85に成形した後に熱圧乾燥する成形乾燥機84と、成形乾燥機84で成形されたパルプシート85を空冷する風乾コンベヤ86と、風乾コンベヤ86で空冷されたパルプシート85を積層して結束する自動結束機88と、成形乾燥機84から排出された水を貯溜して作液槽80に返送する循環槽90を設備している。
【0086】
成形乾燥機84は、
図10に示すように、搬送先側の側壁が幅70cmほどに開放されたオーバーフロー槽84aの上方位置に攪拌機84bを取り付け、そのオーバーフロー槽84aの先方位置にメッシュコンベヤ84cを設置し、そのメッシュコンベヤ84cの始端位置に成形ローラー84dを軸支している。成形ローラー84dの先方位置には押え板84eを上下動可能に設け、その押え板84eの先方位置に2組の脱水ローラー84fを軸支し、メッシュコンベヤ84cの下方位置に漏水受84gを取り付けている。脱水ローラー84fの先方位置には非駆動の第1ローラーコンベヤ84hを下向きに傾斜させて設置し、その第1ローラーコンベヤ84hの先方位置にプレス機84iを下向きに傾斜させて設置し、そのプレス機84iの先方位置に非駆動の第2ローラーコンベヤ84jを下向きに傾斜させて設置している。プレス機84iは約250℃に加熱される。押え板84eは、メッシュコンベヤ84cのコンベヤ面が約80cm進む毎にコンベヤ面と接する位置まで降下し、その後直ぐに上昇するように動作する。
【0087】
本発明で得られるパルプ繊維は、品質が高く、再利用用途の制限が少ない。そのため、様々な分野への応用が期待できる。再利用用途として、例えば、衛生用品、紙製品、建築資材などが挙げられる。
【0088】
6)本発明は、再生吸水性樹脂の製造方法を含む。本発明の再生吸水性樹脂の製造方法は、本発明の処理方法により分離された吸水性樹脂(SAP)を回収する工程を有することが好ましい。吸水性樹脂を回収する方法は、特に限定されないが、前記パルプ繊維を分離した後の水性液に溶解している吸水性樹脂を、多価金属塩で処理して凝集物として回収することが好ましい。この水溶性吸水性樹脂は、多価金属塩で処理することによって、そのカルボキシル基が多価金属塩の多価金属イオンによって架橋され凝集する。この凝集物(ゲル状物)は、上記した固液分離手段などにより、処理液から容易に分離することができる。
【0089】
前記多価金属塩としては、2価金属塩または3価金属が好適に使用される。前記2価金属塩としては、例えば、塩化カルシウムを挙げることができ、前記3価金属塩としては、例えば、硫酸アルミニウムを挙げることができる。
【0090】
前記脱水処理の条件は、特に限定されないが、通常、0℃~100℃、1分間~10日間行うことが好ましい。また、前記多価金属塩の使用量は、水溶性ポリマーの量などに応じて適宜調整すればよい。
【0091】
前記分離回収した吸水性樹脂は、乾燥して、再生吸水性樹脂や、土壌改良剤、固形燃料などとして再利用することが好ましい。
【0092】
(本発明の効果)
従来法による再生パルプには、約7~14%の吸水性樹脂が残存していることが確認される。本願発明により得られた再生パルプでは、吸水性樹脂の残存が確認できないことから、残存率は1%未満であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の処理方法は、人体から排出される体液を吸収するのに用いられていた使用済み衛生用品、特に使い捨て紙おむつ、失禁パッド、軽失禁パッド、生理用ナプキン、母乳パッド、ベッドパッドなどの使用済み吸収性物品に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0094】
100:アルカリ性処理剤による処理を施されていない架橋重合体、100’:アルカリ性処理剤による処理を施された可溶化重合体、110:架橋されているポリマー主鎖、110’:直鎖状のポリマー、120:架橋鎖、120’:開裂鎖