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  • 特許-骨スクリュ 図1
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  • 特許-骨スクリュ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】骨スクリュ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/86 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A61B17/86
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022501456
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006385
(87)【国際公開番号】W WO2021166091
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304050912
【氏名又は名称】オリンパステルモバイオマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】新 真樹
(72)【発明者】
【氏名】高見 公彰
(72)【発明者】
【氏名】黒田 宏一
(72)【発明者】
【氏名】水戸 尚之
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-502298(JP,A)
【文献】特表2015-509435(JP,A)
【文献】特表2002-536048(JP,A)
【文献】特開平05-137739(JP,A)
【文献】特表2013-504342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨プレートを骨に固定するために使用される骨スクリュであって、
前記骨に挿入されるインプラント本体であって、該インプラント本体を貫通する中空部を有するインプラント本体と、
該インプラント本体の前記中空部に抗菌性を付与する抗菌性付与手段とを備え、
前記抗菌性付与手段が、前記インプラント本体の表面の抗菌処理によって形成された抗菌層であり、該抗菌層が、前記中空部の内面上のみを被覆し、
前記インプラント本体の外表面は、JIS Z 2801における抗菌活性値が2.0未満である、骨スクリュ。
【請求項2】
前記インプラント本体の前記外表面は、抗菌処理が施されていない、請求項1に記載の骨スクリュ。
【請求項3】
前記抗菌層が銀層である、請求項1または請求項2に記載の骨スクリュ。
【請求項4】
前記銀層の膜厚が、0.1μm以上10μm以下である、請求項3に記載の骨スクリュ。
【請求項5】
前記中空部の内面が、前記インプラント本体の外方に凹む凹部を有し、
前記抗菌層が、前記凹部内に形成されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の骨スクリュ。
【請求項6】
前記インプラント本体が、前記骨にねじこまれるスクリュ本体であり、前記中空部が、前記スクリュ本体を該スクリュ本体の長手軸に沿う方向に貫通する、請求項1から請求項のいずれかに記載の骨スクリュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントに関し、特に抗菌性を有する骨スクリュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、整形外科では、骨折等の治療法として骨プレートおよび骨スクリュを使用した骨接合術が行われている(例えば、特許文献1参照。)。骨接合術の臨床における不具合として、感染が大きな割合を占めており、感染率の低減が求められている。そこで、表面に抗菌処理が施されたインプラントが使用されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-167779号公報
【文献】特許第5590596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
骨スクリュとして、手術操作性の向上および患者への侵襲の低減のために、中空のスクリュが使用されることがある。このような中空のインプラントが骨等の体内の組織に挿入された後、組織の内部には、体外と連通する空間がインプラントの中空部によって形成される。この空間が、主な感染経路の1つとなり得る。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、感染を効果的に抑制することができる中空のインプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、生体組織に挿入されるインプラント本体であって、該インプラント本体を貫通する中空部を有するインプラント本体と、該インプラント本体の少なくとも前記中空部に抗菌性を付与する抗菌性付与手段とを備えるインプラントである。
【0007】
インプラント本体が生体内の組織に挿入された状態で、組織の内部には、体外と連通する空間が中空部によって形成される。この中空部によって形成された空間が、主な感染経路の1つとなり得る。本態様によれば、抗菌性付与手段によって中空部に抗菌性が付与される。さらに、中空部は組織と直接接触しないので、インプラント本体の組織との癒合およびインプラント本体の周囲の細胞への影響を増大することなく、中空部の抗菌性を高めることができる。これにより、感染を効果的に抑制することができる。
【0008】
上記態様において、前記抗菌性付与手段が、前記インプラント本体の外表面と比べて高い抗菌性を前記中空部に付与してもよい。
組織と直接接触するインプラント本体の外表面の抗菌性は、中空部の抗菌性とは異なり、組織との癒合および細胞に直接影響を与える。この構成によれば、外表面の抗菌性を低減することによって、組織との癒合および細胞への影響を効果的に抑制することができる。
【0009】
上記態様において、前記インプラント本体の前記外表面は、抗菌処理が施されていなくてもよい。
この構成によれば、組織と直接接触するインプラント本体の外表面の生体適合性を高め、組織との癒合および細胞への影響をさらに抑制することができる。
【0010】
上記態様において、前記抗菌性付与手段が、前記インプラント本体の表面の抗菌処理によって形成された抗菌層であり、該抗菌層が、少なくとも前記中空部の内面上に形成されていてもよい。
この構成によれば、インプラント本体自体に抗菌性を持たせることができる。
【0011】
上記態様において、前記抗菌層が銀層であってもよい。
銀は、高い抗菌性を有し、かつ、高い生体適合性が確認されている。したがって、抗菌層として銀層を採用することによって、インプラントの抗菌性および生体適合性を両立することができる。組織との癒合および細胞への銀層の影響を抑制するために、前記銀層は、前記インプラント本体の表面のうち、前記中空部の内面上のみに形成されていることが好ましい。
【0012】
上記態様において、前記銀層の膜厚が、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
インプラント本体を生体組織に挿入するときに、中空部内に挿入される器具が中空部の内面上の銀層に接触することによって銀層が剥がれる可能性がある。膜厚を10μm以下に制限することによって、銀層の剥離量を抑制することができる。また、銀層の膜厚を0.1μm以上とすることによって、銀層の抗菌性を担保することができる。
【0013】
上記態様において、前記中空部の内面が、前記インプラント本体の外方に凹む凹部を有し、前記抗菌層が、前記凹部内に形成されていてもよい。
凹部内の抗菌層は、中空部内の器具と接触し難い。したがって、器具との接触による抗菌層の剥離を防止することができる。
【0014】
上記態様において、前記抗菌性付与手段が、前記中空部に挿入される抗菌部材であってもよい。
この構成によれば、中空部に抗菌部材を挿入するだけの簡単な操作で中空部に抗菌性を付与することができる。また、インプラント本体として、中空部が抗菌性を有しないインプラント本体を使用することができる。
上記態様において、前記インプラントが、前記インプラント本体として骨にねじこまれるスクリュ本体を備える骨スクリュであり、前記中空部が、前記スクリュ本体を該スクリュ本体の長手軸に沿う方向に貫通していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、感染を効果的に抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るインプラントである骨スクリュの(a)側面図および(b)頭部側から見た平面図である。
図2図1の骨スクリュの縦断面図である。
図3A】中空部の内面の凹部内に形成された抗菌層の一例を示す図である。
図3B】中空部の内面の凹部内に形成された抗菌層の他の例を示す図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る骨スクリュの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態に係るインプラントについて図面を参照して説明する。
本実施形態に係るインプラント1は、図1および図2に示されるように、骨スクリュであって、骨(生体組織)にねじ込まれる中空のスクリュ本体(インプラント本体)2と、スクリュ本体2に抗菌性を付与する抗菌性付与手段3とを備える。
スクリュ本体2は、長手軸Aに沿って延びる軸部2aと、軸部2aの基端に接続された頭部2bと、スクリュ本体2を長手軸Aに沿う方向に貫通する孔である中空部2cとを有する。
【0018】
軸部2aの外周面には、スクリュ本体2を骨に固定するための雄ねじが設けられ、頭部2bの外周面には、スクリュ本体2を後述する骨プレートに固定するための雄ねじが設けられている。中空部2cには、スクリュ本体2の骨へのねじ込み時に、スクリュ本体2を案内するためのガイドピンが挿入される。
【0019】
スクリュ本体2は、骨スクリュに一般に使用される生体適合性材料から形成される。例えば、スクリュ本体2は、チタン合金または純チタン等の金属、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の合成樹脂、あるいはセラミックスから形成される。
抗菌性付与手段3は、スクリュ本体2の表面の抗菌処理によって形成された、スクリュ本体2の表面を被覆する抗菌層である。抗菌層3は、体内で抗菌性を発揮する抗菌成分として、例えば、銀イオンまたは銅イオン等の金属イオン、窒化ケイ素等のセラミックス、ヨード、または周知の抗菌薬等を含む。抗菌層3は、2.0以上の抗菌活性値を有することが好ましい。抗菌活性値は、JIS Z 2801に従った抗菌性試験方法によって測定される。抗菌層3から中空部2c内の空間に抗菌成分が徐放されてもよい。
【0020】
抗菌層3は、スクリュ本体2の表面の内、中空部2cの内面2eのみに形成されている。外表面2dは、抗菌層3と比較して低い抗菌性、例えば、2.0未満の抗菌活性値を有する。例えば、外表面2dでは、スクリュ本体2を形成する生体適合性材料が露出している。
例えば、外表面2dをマスキング材料でマスクした状態でスクリュ本体2に後述の抗菌処理を行うことによって、中空部2cの内面2eに選択的に抗菌処理を施して抗菌層3を形成することができる。このような抗菌層3によって、中空部2cには、外表面2dと比較して高い抗菌性が付与される。抗菌層3は、内面2eの少なくとも一部分に形成され、好ましくは、内面2eの全体に形成される。
【0021】
抗菌処理は、スクリュ本体2の材料表面を改質することによってスクリュ本体2の表面に抗菌性を付加する表面処理である。表面処理として、ドライプロセスおよびウェットプロセスのいずれを使用してもよい。
ドライプロセスの例は、乾式めっき、スパッタ、溶射、または熱処理である。乾式めっきは、例えば、真空蒸着、物理蒸着(PVD)または化学蒸着(CVD)である。熱処理は、例えば、浸炭焼入れ、窒化、軟窒化、または高周波焼入れである。
ウェットプロセスの例は、湿式めっきである。湿式めっきは、例えば、電気めっき、無電解めっき、または化成処理である。
【0022】
好ましい例において、抗菌層3は、主として銀からなる銀層である。銀層は、銀の他に、銀層を形成する抗菌処理に応じた不純物をさらに含んでいてもよい。一例において、銀層は、蒸着またはめっきによって形成される。
蒸着の場合、中空部2c内に挿入された銀の細いフィラメントを加熱し銀を蒸散させることによって、内面2e上に銀層を形成することができる。
めっきの場合、スクリュ本体2の全体の表面上に銀層が形成され、その後、不要な銀層が除去される。あるいは、内面2eを除くスクリュ本体2の表面をマスクした状態でめっき処理が行われる。
【0023】
銀層3の膜厚は、0.01μm以上100μm以下であることが好ましい。
ガイドピンが内面2e上の銀層3と接触することによって、銀層3が内面2eから剥離し得る。内面2eから剥離した銀層3の剥離片は、中空部2cの外側へ移動し、スクリュ本体2の周囲の細胞に影響を与える可能性が有る。したがって、銀層3の剥離量は少ないことが好ましい。膜厚を100μm以下に制限することによって、仮に銀層3の剥離が生じたとしても、剥離量を抑制することができる。
また、銀層3の十分な抗菌性を担保するために、膜厚は0.01μm以上であることが好ましい。膜厚を0.01μm未満のオーダで制御することは技術的に難しい。
銀層3の剥離量の抑制と高い抗菌性との観点から、膜厚は、0.1μm以上10μm以下であることがより好ましい。銀層3の剥離量をより抑制するために、膜厚は1μm以下であってもよい。
【0024】
次に、骨スクリュ1の作用について説明する。
骨スクリュ1の用途の一例において、骨スクリュ1は、患者の骨折部位に配置された骨プレートを骨に固定するために使用される。骨プレートは、頭部2bと締結される雌ねじを有する。
まず、スクリュ本体2をねじ込むべき経路に沿って骨にガイドピンが挿入され、ガイドピンが雌ねじを貫通するように骨プレートが骨の表面に配置される。次に、中空部2c内に挿入されたガイドピンに沿って、スクリュ本体2の軸部2aが骨にねじ込まれる。そして、頭部2bを骨プレートの雌ねじに締結することによって、骨プレートが骨に固定される。
【0025】
スクリュ本体2が骨にねじ込まれた状態において、骨の内部には、患者の体外と連通する空間が中空部2cによって形成される。すなわち、中空部2cが、主な感染経路の1つとなり得る。また、手術中、中空部2cにはガイドピン等の器具が挿入されるので、器具から中空部2c内の空気および内面2eに菌が移りやすい。したがって、中空の骨スクリュ1の場合、中空部2cを経由した感染を防止することが重要である。
本実施形態によれば、内面2eを被覆する抗菌層3によって中空部2cに抗菌性が付与される。これにより、手術中に発生し得る感染を効果的に防止することができる。
【0026】
また、高い抗菌性を有する抗菌層は、スクリュ本体2の骨との骨癒合およびスクリュ本体2の周囲の細胞への影響の観点から、骨と直接接触するスクリュ本体2の外表面2dに設けることが難しい。これに対し、中空部2cは骨と直接接触しないので、骨癒合および細胞への影響を増大することなく抗菌層3の抗菌性を高めることができる。例えば、強い抗菌成分を含む抗菌層3、または抗菌成分の濃度の高い抗菌層3を、骨癒合および細胞への影響を抑制しながら中空部2cの内面2eに設けることができる。このような高い抗菌性を有する抗菌層3によって、感染をより効果的に防止することができる。
【0027】
また、仮に、外表面2dが抗菌層で被覆されていた場合、外表面2dの抗菌層の抗菌性が、前述したように、骨癒合および細胞に影響を与える可能性が有る。本実施形態によれば、骨に対して露出するスクリュ本体2の外表面2dは、低い抗菌性を有するか、または抗菌性を有しない。したがって、骨癒合および骨への影響を抑制しながら、感染を効果的に抑制することができる。
【0028】
さらに、スクリュ本体2を骨にねじ込む過程で外表面2dが骨と擦れることによって、外表面2d上の抗菌層は剥がれ易い。これに対し、中空部2cの内面2eは骨と接触しないので抗菌層3の剥がれは発生し難く、スクリュ本体2を骨にねじ込んだ後も、抗菌層3は内面2eに存在し続ける。したがって、スクリュ本体2が骨にねじ込まれた後、抗菌層3による中空部2cの抗菌性を確実に発揮することができる。
【0029】
また、スクリュ本体2が骨にねじ込まれた後、中空部2cと骨との間を移動する血液等の体液によって抗菌層3に含まれる抗菌成分がスクリュ本体2の周囲に運ばれる。これにより、中空部2cのみならずスクリュ本体2の外側においても感染の抑制を期待することができる。
【0030】
本実施形態において、中空部2cの先端側の内径が、中空部2cの基端側の内径よりも大きくてもよい。例えば、中空部2cの内径が、基端側から先端側に向かって漸次大きくなっていてもよい。先端側の内径と基端側の内径との差は、0.01mm以上1mm以下であることが好ましい。
この構成によれば、中空部2cの先端側において内面2e上の抗菌層3とのガイドピンの接触を減らし、抗菌層3の剥離をさらに低減することができる。
【0031】
本実施形態において、抗菌層3の膜厚は、均一であってもよく、不均一であってもよい。例えば、中空部2cの先端側での抗菌層3の剥離量を抑制するために、膜厚が、基端側から先端側に向かって漸次薄くなっていてもよい。
【0032】
また、抗菌層3は、内面2eの一部分にのみ形成されていてもよい。内面2eの一部分にのみ抗菌層3が形成される場合、中空部2cの全長において抗菌性を得るために、抗菌層3が中空部2cの全長にわたって分布していてもよい。例えば、滑らかな円筒状の内面2eの周方向の一部分にのみ抗菌層3が形成されていてもよい。
【0033】
図3Aに示されるように、中空部2cの内面2eが、スクリュ本体2の径方向外方に凹む凹部2fを有し、凹部2f内にのみ抗菌層3が形成されていてもよい。例えば、凹部2fは、らせん状、ねじ状または直線状の溝である。凹部2fの深さは、0.1mm以上1mm以下であることが好ましい。凹部2f内の抗菌層3は、中空部2c内に挿入されるガイドピンと接触し難いので、抗菌層3の剥離を防止することができる。
図3Bに示されるように、凹部2fの外側においても内面2e上に抗菌層3が形成されていてもよい。この場合には、凹部2f内の抗菌層3は厚く、凹部2f外の抗菌層3は薄くなる。
【0034】
中空部2cは、頭部2b側および軸部2aの先端側の一方の開口から注入された液体を受け入れ、中空部2cを通過した液体を他方の開口に放出することも可能である。また、中空部2cの内周面と軸部2aの外周面とを連通する穴またはスリットを設けることによって、注入された液体が軸部2aの外周面からも放出されるように構成されていてもよい。
【0035】
骨に留置された骨スクリュ1の中空部2cに、抗菌性の薬液、骨形成を促進する成長因子、自己組織由来成分(PRP、骨髄)、骨セメント等が経皮的に注入されてもよい。このような術後の経皮的な液体の注入は複数回にわたる場合もあり、中空部2cに新たな菌が侵入する可能性がある。本実施形態によれば、中空部2cの内面2eの抗菌層3によって、菌の増殖および感染を防止することができる。
【0036】
中空部2cに液体を注入するための注入器具の先端部は、中空部2cの入口から液体が漏れないように中空部2cの入口をシールすることができる構造であることが好ましい。例えば、注入器具の先端部は、中空部2cの内部に形成されたねじ部、または、中空部2c内に配置される部品のねじ部、または、ねじ構造以外の圧迫力によって、中空部2cの入口と密着可能である構造であってもよい。術後の注入時の手間の削減のため、注入器具の先端部は、留置針または留置可能なパイプであってもよい。また、注入器具は、骨スクリュ1と同様に、抗菌処理されていることが望ましい。
【0037】
本実施形態において、抗菌性付与手段が、抗菌層3であることとしたが、これに代えて、他の手段であってもよい。
図4は、本発明の他の実施形態に係る骨スクリュ11を示している。骨スクリュ11は、抗菌性付与手段として、抗菌性を有し中空部2cに挿入される抗菌部材4を備える。例えば、抗菌部材4は、抗菌成分を含む抗菌層によって表面が被覆された部材である。骨スクリュ11は、抗菌部材4に加えて抗菌層3を備えていてもよい。
【0038】
図4の抗菌部材4は、中空部2cの長手方向の略全長にわたって配置され、中空部2cの略全部を塞ぐ長尺の柱状の部材である。抗菌部材4は、中空部2cの頭部2b側の端部のみに配置され、中空部2cの端部のみを塞ぐ蓋状の部材であってもよい。
中空部2cに抗菌部材4を挿入することによって、感染の原因となる中空部2cの体外との連通を遮断することができると共に簡単な操作で中空部2cに抗菌性を付与することができる。また、スクリュ本体2として、内面2eに抗菌処理が施されていない、または、内面2eの抗菌性が低いスクリュを使用することができる。
【0039】
本実施形態において、スクリュ本体2の外表面2dには抗菌層が形成されていないこととしたが、中空部2cが外表面2dと比較して高い抗菌性を有する限りにおいて、外表面2dに抗菌層が形成されていてもよい。すなわち、中空部2cの抗菌層よりも低い抗菌性を有する抗菌層が、外表面2dの一部分または全体に形成されていてもよい。
【0040】
上記実施形態において、骨スクリュ1,11について説明したが、本実施形態の抗菌性付与手段3,4は、中空部を有する他の種類の整形外科インプラントにも適用することができる。すなわち、本発明のインプラントは、骨スクリュに限定されず、中空部を有する他の種類の整形外科インプラントであってもよい。例えば、インプラントは、骨またはその他の生体組織に挿入される中空のピン、または一部分が雄ねじであるねじ付きの中空のピンであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,11 骨スクリュ、インプラント
2 スクリュ本体、インプラント本体
2a 軸部
2b 頭部
2c 中空部
2d 外表面
2e 内面
2f 凹部
3 銀層、抗菌層、抗菌性付与手段
4 抗菌部材、抗菌性付与手段
図1
図2
図3A
図3B
図4