(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】コンクリート要素およびその生産方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20231227BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20231227BHJP
C04B 20/00 20060101ALI20231227BHJP
B28B 3/02 20060101ALI20231227BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20231227BHJP
C04B 41/68 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/10 Z
C04B20/00 B
B28B3/02 J
C04B18/08 Z
C04B41/68
(21)【出願番号】P 2022516409
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2020073347
(87)【国際公開番号】W WO2021047875
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】102019124726.8
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522099238
【氏名又は名称】メッテン テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】METTEN Technologies GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Hammermuehle 24,51491 Overath,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ギード フォルマー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル メッテン
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0035329(US,A1)
【文献】国際公開第2018/084858(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0129811(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0271876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 41/00-41/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアコンクリート層とフェイスコンクリート層とを含むコンクリート要素であって、前記フェイスコンクリート層は、潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材と、水と、顆粒状材料と混合物の総重量に基づいて3重量%~5重量%のアルカリ性硬化剤とを含む前記混合物を圧縮および硬化することによって得られ、前記顆粒状材料は、前記顆粒状材料の総重量にそれぞれ基づいて、2mmの篩穴幅での通過画分が35.5重量%~99.5重量%であり、0.25mmの篩穴幅での通過画分が2.5重量%~33.5重量%であり、前記アルカリ性硬化剤は、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩およびそれらの混合物からなる群より選択され
、前記混合物は、前記混合物の総重量に基づいて、20重量%~30重量%の潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材を含む、コンクリート要素。
【請求項2】
前記顆粒状材料は、前記顆粒状材料の総重量に基づいて、2mmの篩穴幅での通過画分が42.5重量%~99.5重量%であり、56.5重量%~98.5重量%であるのがより好ましく、72.5重量%~97.5重量%であるのが特に好ましく、0.25mmの篩穴幅での通過画分が2.5重量%~27.5重量%であり、2.5重量%~22.5重量%であるのがより好ましく、2.5重量%~21.5重量%であるのがなお好ましく、2.5重量%~8重量%または11.5重量%~21.5重量%であるのが特に好ましいことを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート要素。
【請求項3】
前記混合物は、前記混合物の総重量に基づいて、55重量%~80重量%、好ましくは60重量%~75重量%、より好ましくは60重量%~72重量%、特に好ましくは60重量%~65重量%、特に60重量%~64重量%、または67重量%~72重量%の前記顆粒状材料を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のコンクリート要素。
【請求項4】
前記混合物は、前記混合物の総重量に基づいて、1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~18重量%、なお好ましくは5重量%~15重量%、なお好ましくは5重量%~10重量%、特に好ましくは6重量%~8重量%のフィラーを含むことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のコンクリート要素。
【請求項5】
前記フィラーは、前記フィラーの総重量に基づいて、0.025mmの篩穴幅での通過画分が63重量%~99重量%であり、68重量%~99重量%であるのが好ましく、90重量%~99重量%であるのがより好ましく、95重量%~99重量%であるのが特に好ましく、0.015mmの篩穴幅での通過画分が38重量%~73重量%であり、58重量%~67重量%であるのが好ましく、61重量%~66重量%であるのが特に好ましいことを特徴とする、請求項4に記載のコンクリート要素。
【請求項6】
前記フィラーは、フライアッシュ、スラグ砂、岩石粉末、好ましくは分級岩石粉末、石灰石粉末、好ましくは分級石灰石粉末およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4または5に記載のコンクリート要素。
【請求項7】
前記潜在水硬性結合材は、スラグ、高炉スラグ、好ましくはスラグ砂、特に粉砕スラグ砂、電熱リンスラグ、鉄鋼スラグおよびそれらの混合物からなる群より選択されること、および/または前記潜在水硬性結合材中の(CaO+MgO):SiO
2のモル比は、0.8~2.5、好ましくは1.0~2.0の範囲であることを特徴とする、請求項1~
6の何れか一項に記載のコンクリート要素。
【請求項8】
前記ポゾラン結合材は、非晶質二酸化ケイ素、沈降二酸化ケイ素、発熱性二酸化ケイ素、マイクロシリカ、ガラス粉末、褐炭フライアッシュまたは無煙炭フライアッシュ等のフライアッシュ、メタカオリン、凝灰岩、トラスまたは火山灰等の天然ポゾラン、天然および合成ゼオライトならびにこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~
7の何れか一項に記載のコンクリート要素。
【請求項9】
前記アルカリ性硬化剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~
8の何れか一項に記載のコンクリート要素。
【請求項10】
前記混合物は、前記混合物の総重量に基づいて、3.15重量%~4.85重量%、より好ましくは3.25重量%~3.65重量%または4.0重量%~4.75重量%、なお好ましくは4.25重量%~4.75重量%、特に好ましくは4.35重量%~4.55重量%の前記アルカリ性硬化剤を含むことを特徴とする、請求項1~
9の何れか一項に記載のコンクリート要素。
【請求項11】
前記混合物は、前記混合物の総重量に基づいて、3重量%~7重量%、好ましくは3.5重量%~6.5重量%、より好ましくは4.0重量%~6.2重量%、なお好ましくは4.2重量%~4.9重量%または5.2重量%~6.2重量%、特に好ましくは4.2重量%~4.8重量%の水を含むことを特徴とする、請求項1~
10の何れか一項に記載のコンクリート要素。
【請求項12】
前記混合物は、硬化調節剤、特に凝結遅延剤および/または凝結促進剤を有することを特徴とする、請求項1~
11の何れか一項に記載のコンクリート要素。
【請求項13】
前記混合物は、セメント、および/または砂利、グリット、砂、パーライト、珪藻土もしくはバーミキュライト等の一つ以上の添加剤、および/または可塑剤、消泡剤、保水剤、分散剤、顔料、繊維、再分散性粉末、湿潤剤、含浸剤、錯化剤およびレオロジー添加剤からなる群より選択される一つ以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1~
12の何れか一項に記載のコンクリート要素。
【請求項14】
前記コンクリート要素は、コンクリートブロック、コンクリートスラブ、コンクリート壁要素またはコンクリートステップであることを特徴とする、請求項1~
13の何れか一項に記載のコンクリート要素。
【請求項15】
請求項1~
14の何れか一項に記載のコンクリート要素を生産するための方法であって、
a.
i.顆粒状材料
ii.任意の顔料、
iii.任意のフィラー、
iv.水、
v.潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材、ならびに
vi.アルカリ性硬化剤であって、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩およびそれらの混合物からなる群より選択されるアルカリ性硬化剤
を成分として含む組成物を調製するステップ、
b.前記組成物を混合して、前記混合物の総重量に基づいて3重量%~5重量%のアルカリ性硬化剤を含む混合物を得るステップ、
c.前記混合物をコアコンクリート層の上の少なくとも一つの型に充填するステップ、または前記混合物を少なくとも一つの型に充填し、続いてその上にコアコンクリート層を充填するステップ、
d.前記混合物を圧縮して少なくとも一つのグリーンコンクリート要素を得るステップ
を含
み、
前記混合物は、前記混合物の総重量に基づいて、20重量%~30重量%の潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材を含む、方法。
【請求項16】
前記組成物の前記成分は、定められた順序で計量されることを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
粒状材料の全組成に基づいて(a)65~95重量%の量の平均粒径が0.1~5mmの散乱成分、および(b)5~35重量%の量の結合材を含む前記粒状材料の一部分が、前記少なくとも一つの型内での前記混合物の圧縮の前に前記混合物に加えられることを特徴とする、請求項
15または
16に記載の方法。
【請求項18】
前記粒状材料に含まれる前記結合材は、セメント、水硬性石灰、石膏または水ガラス等の無機結合材であり、または前記粒状材料に含まれる前記結合材は、プラスチック分散物、アクリレート樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、SolGel樹脂またはシリコーン樹脂エマルジョン等の有機結合材であること、および/または平均粒径0.1~1.8mmまたは1.2~5mmの散乱成分が、前記散乱成分として使用されること、および/または前記散乱成分は岩石混合物であるかまたは岩石混合物を含むこと、または前記散乱成分は、少なくとも半貴石、貴石、雲母、金属チップ、ガラスおよびプラスチック粒子の群より選択される材料を含むことを特徴とする、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも一つのグリーンコンクリート要素の表面および/または縁は、ブラシで処理されることを特徴とする、請求項
15~
18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
シーリング剤および/または防水剤が、前記少なくとも一つのグリーンコンクリート要素の表面に施されることを特徴とする、請求項
15~
19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記グリーンコンクリート要素は、硬化されてコンクリート要素が得られ、前記コンクリート要素は、硬化した後に前記コンクリート要素を研磨、ブラスティング、および/またはブラッシングすることによって処理されることを特徴とする、請求項
15~
20の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアコンクリート層とフェイスコンクリート層とを含むコンクリート要素であって、フェイスコンクリート層は、潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材と、水と、顆粒状材料とアルカリ性硬化剤とを含む混合物を圧縮および硬化することによって得られる、コンクリート要素に関する。本発明は、本発明によるコンクリート要素を生産するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートブロック、コンクリートスラブ、コンクリート壁要素またはコンクリートステップ等のコンクリート要素は、その耐久性と、天然石で作製された石材、プレート、またはステップと比較した低価格のために使用されることが多い。コンクリート要素は通常、セメントを結合材として使用して生産される。
【0003】
コンクリート要素を装飾的に見せるために、様々な方法が開発されている。この目的のために、とりわけ顔料および/または天然石の骨材および/または砂がコンクリート要素に色を提供するために通常加えられる。
【0004】
セメントを含むコンクリート要素は、時間がたつと表面上に白っぽい斑点が生じる問題がある場合がある。着色されたコンクリートブロックの色も退色しうる。いずれの影響も石灰の形成によって引き起こされると思われる。表面上の白っぽい斑点は、表面に輸送された水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応によって形成される石灰の白華に起因する。退色は、とりわけ色を提供するためにセメント粒子上に堆積している顔料が、形成された炭酸カルシウムで徐々に被覆されることによって引き起こされると考えられる。このようにして、顔料の色印象が徐々に失われる。
【0005】
セメントの代替となる結合材が知られている。このような代替結合材の例は、Al2O3と組み合わせた化学的ビルディングブロックSiO2に基づく。このような結合材の例は、潜在水硬性結合材およびポゾラン結合材である。これらは「ジオポリマー」と呼ばれることが多い。特許文献1は、例えば水ガラスと潜在水硬性結合材とを含む建築材料混合物を記載する。特許文献1は、この建築材料混合物をモルタルまたはフィラーとして使用することを提案する。
【0006】
特許文献2も、耐薬品性モルタルの生産のための建築材料混合物であって、水ガラス粉末、少なくとも一つの可溶性水ガラス硬化剤、無機フィラーおよび少なくとも10重量%の潜在水硬性結合材を含む建築材料混合物を記載する。
【0007】
特許文献3は、アルカリ性物質によって活性化されるアルミノケイ酸塩結合材を開示する。特許文献3によれば、このアルミノケイ酸塩結合材は、フレッシュコンクリート、コンクリート部、吹き付けコンクリート、建築用接着剤およびその他の用途に適する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第1 236 702(A1)号
【文献】欧州特許出願公開第1 081 114(A1)号
【文献】国際公開第2014/067721(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
コンクリートブロック、コンクリートスラブ、コンクリート壁要素またはコンクリートステップ等のコンクリート要素の生産は、特にフレッシュコンクリートと比較して、使用されるコンクリートミックスに特別な要求を課す。コンクリート要素を生産する際には、できるだけ早く梱包されうるように、まだ硬化されていないコンクリートブロックの可能な限り高い安定性をできるだけ短時間で達成することが望ましい。フェイスコンクリート層とコアコンクリートとを含む製品の追加要件は、荷重下でフェイスコンクリート層がコアから剥離するのを防ぐための高い接着強度である。コンクリート要素のコアコンクリートからの剥離に対するフェイスコンクリート層の抵抗を測定するために、接着引張強度が使用されうる。コンクリート要素の接着引張強度が十分に高くない場合には、型枠が除去されたときにフェイスコンクリート層とコアコンクリートとが荷重下で分離(剥離)または分裂しうる。これは、コンクリート要素が十分に高い接着引張強度で設計されれば、より短いサイクル時間で、したがってより経済的に生産されうることを意味する。
【0010】
本発明の開発の過程で、潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材を含むコンクリート要素またはコンクリート要素の層は、セメントを結合材として含むコンクリート要素よりも、他の点では同等の生産条件および成分の下で低い接着引張強度を有することが分かった。
【0011】
したがって本発明の目的は、経時的な外観の変化がより少なく経済的に生産できる美的に洗練されたコンクリート要素を提供することであった。特に、表面上の汚染および/または汚損がより少なく、および/または退色がより少なく、および/または十分に高い接着引張強度を有するコンクリートブロックが提供される。本発明の別の目的は、CO2フットプリントが低減されたコンクリート要素を提供することである。
【0012】
以下の説明から、以下に一部が列挙されるさらなる課題が生じる。
【0013】
本発明は、請求項1に記載のコンクリート要素および請求項15に記載の方法を用いて、これらの課題の全部または一部を解決する。
【0014】
本発明の有利な実施形態が従属請求項に明記され、以下で詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、コアコンクリート層とフェイスコンクリート層とを含むコンクリート要素であって、フェイスコンクリート層は、潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材と、水と、顆粒状材料とアルカリ性硬化剤とを含む混合物を圧縮および硬化することによって得られ、顆粒状材料は、顆粒状材料の総重量にそれぞれ基づいて、2mmの篩穴幅での通過画分が35.5重量%~99.5重量%であり、0.25mmの篩穴幅での通過画分が2.5重量%~33.5重量%である、コンクリート要素を提供する。
【0016】
驚くべきことに、コアコンクリート層とフェイスコンクリート層とを含むコンクリート要素であって、フェイスコンクリート層は、潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材と、水と、顆粒状材料とアルカリ性硬化剤とを含む混合物を圧縮および硬化することによって得られ、顆粒状材料は、顆粒状材料の総重量にそれぞれ基づいて、2mmの篩穴幅での通過画分が35.5重量%~99.5重量%であり、0.25mmの篩穴幅での通過画分が2.5重量%~33.5重量%である、コンクリート要素は、装飾性の変化があるとしても非常に遅く、費用効果の高い様式で生産できることが分かった。前述のコンクリート要素は、特に接着引張強度が十分に高い。これにより、未硬化のコンクリートブロックを引き裂かずに型から速やかに除去することが可能になる。さらに、これらのコンクリートブロックは、最低でも退色が遅く、表面上の汚染がほとんどまたは全く見られない。
【0017】
いかなる特定の科学的理論に拘束されることも望むものではないが、これは、潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材の存在が、コンクリートブロックがその装飾性を失わないか、または失いうるとしても徐々にしか失わないことを意味することに起因するように思われる。これは、本発明によるコンクリート要素が、多量のセメントを通常含むコンクリート要素よりも少ないCaOを含むことによって引き起こされるように思われる。また、潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材を使用するときには、2mmの篩穴幅での通過画分が35.5重量%~99.5重量%であり、0.25mmの篩穴幅での通過画分が2.5重量%~33.5重量%である顆粒状材料を使用することにより、良好な接着引張強度を達成できることも分かっている。より大きな直径の顆粒状材料でコンクリート要素を生産することが可能であったが、その接着引張強度はそれほど良好ではなかった。いかなる科学理論に拘束されることも望むものではないが、接着引張強度の改善は、直径がかなり小さい顆粒状材料の成分は互いの平均距離がより小さいことに起因するものでありうる。これは、潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材のより短い鎖が顆粒状材料の成分を互いに連結することができ、それによって未硬化のコンクリート要素の機械的特性および特に接着引張強度が改善されることを意味する。
【0018】
顆粒状材料は、骨材とも呼称されうる。
【0019】
未硬化のコンクリート要素は、グリーンコンクリート要素とも呼称されうる。
【0020】
接着引張強度は、ある試験材齢、例えば56日のコンクリートブロックで特定されうる。本発明によるコンクリート要素は、接着引張強度が1MPa以上であるのが好ましい。
【0021】
顆粒状材料は、顆粒状材料の総重量に基づいて、2mmの篩穴幅での通過画分が42.5重量%~99.5重量%であるのが好ましく、56.5重量%~98.5重量%であるのがより好ましく、72.5重量%~97.5重量%であるのが特に好ましく、0.25mmの篩穴幅での通過画分が2.5重量%~27.5重量%であるのが好ましく、2.5重量%~22.5重量%であるのがより好ましく、2.5重量%~21.5重量%であるのがなお好ましく、2.5重量%~8重量%または11.5重量%~21.5重量%であるのが特に好ましい。言及された篩穴幅での上記の通過画分の顆粒状材料により、良好な接着引張強度のコンクリート要素がもたらされうることが分かっている。
【0022】
二つの篩穴幅での上記の通過画分は、必要に応じて互いに組み合わせられうる。
【0023】
顆粒状材料はまた、粒度番号が1.59~3.62、好ましくは1.61~3.17、特に好ましくは1.61~2.55でありうる。
【0024】
顆粒状材料は、粒調組成物を有するのが好ましい。粒調組成物は、特に様々な粒度の成分を含む。
【0025】
顆粒状材料は、様々な量で混合物に含まれうる。混合物は、混合物の総重量に基づいて、好ましくは55重量%~80重量%、好ましくは60重量%~75重量%、より好ましくは60重量%~72重量%の顆粒状材料を含む。混合物は、混合物の総重量に基づいて、特に好ましくは60重量%~65重量%、特に60重量%~64重量%の顆粒状材料を含みうる。混合物は、混合物の総重量に基づいて、特に好ましくは67重量%~72重量%の顆粒状材料を含むこともできる。
【0026】
上記の成分に加えて、混合物は、他の成分、例えばフィラーも含みうる。混合物は、混合物の総重量に基づいて、好ましくは1重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~18重量%、なお好ましくは5重量%~15重量%、なお好ましくは5重量%~10重量%、特に好ましくは6重量%~8重量%のフィラーを含む。
【0027】
フィラーは、フィラーの総重量に基づいて、0.025mmの篩穴幅での通過画分が63重量%~99重量%であるのが好ましく、68重量%~99重量%であるのが好ましく、90重量%~99重量%であるのがより好ましく、95重量%~99重量%であるのが特に好ましく、0.015mmの篩穴幅での通過画分が38重量%~73重量%であるのが好ましく、58重量%~67重量%であるのが好ましく、61重量%~66重量%であるのが特に好ましい。フィラーが、フィラーの総重量に基づいて、0.025mmの篩穴幅での通過画分が68重量%~77重量%であり、0.015mmの篩穴幅での通過画分が38重量%~47重量%である場合にも良好な結果が得られる。
【0028】
二つの篩穴幅での上記の通過画分は、必要に応じて互いに組み合わせられうる。
【0029】
上に列挙された篩穴幅での通過画分のフィラーを使用すると、接着引張強度、特に未硬化のコンクリート要素の強度をさらに改善できることが分かっている。特に前述の篩穴幅での上記の通過画分の顆粒状材料とフィラーとの組み合わせた使用を通して、接着引張強度に関して最適な結果を達成できる。その結果、コンクリート要素の装飾性がほとんどまたは全く変化しないように混合物が調整されることもできる。
【0030】
様々な材料がフィラーとして使用されうる。フィラーは、フライアッシュ、スラグ砂、岩石粉末、好ましくは分級岩石粉末、石灰石粉末、好ましくは分級石灰石粉末およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。フィラーは、フライアッシュまたはスラグ砂であるのがより好ましい。
【0031】
上記のフィラーを用いて、装飾性が低下しないかまたはゆっくりとしか低下しない装飾コンクリート要素を経済的に生産することが可能である。
【0032】
潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材は、様々な量で混合物に含まれうる。混合物は、混合物の総重量に基づいて、好ましくは15重量%~40重量%、好ましくは20重量%~30重量%、より好ましくは20重量%~24重量%、特に好ましくは22重量%~24重量%の潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材を含む。混合物が、混合物の総重量に基づいて、26重量%~29重量%の潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材を含む場合にも良好な結果が得られる。
【0033】
したがって、混合物は、混合物の総重量に基づいて、15重量%~40重量%、好ましくは20重量%~30重量%、より好ましくは20重量%~24重量%または26重量%~29重量%、特に好ましくは22重量%~24重量%の潜在水硬性結合材だけを含み、ポゾラン結合材を含まないこともできる。混合物は、混合物の総重量に基づいて、15重量%~40重量%、好ましくは20重量%~30重量%、より好ましくは20重量%~24重量%または26重量%~29重量%、特に好ましくは22重量%~24重量%のポゾラン結合材だけを含み、潜在水硬性結合材を含まないこともできる。
【0034】
15重量%未満の潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材を使用すると、得られるコンクリート要素は十分な強度がないことが分かっている。対照的に、40重量%を超える潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材の使用は非経済的である。
【0035】
潜在水硬性結合材として様々な材料が使用されうる。潜在水硬性結合材中の(CaO+MgO):SiO2のモル比は、0.8~2.5であるのが好ましく、1.0~2.0であるのがより好ましい。前述の範囲の(CaO+MgO):SiO2のモル比の潜在水硬性結合材は良好に硬化する。
【0036】
潜在水硬性結合材は、スラグ、高炉スラグ、好ましくはスラグ砂、特に粉砕スラグ砂、電熱リンスラグ、鉄鋼スラグおよびそれらの混合物からなる群より選択されるのが有利である。潜在水硬性結合材は、スラグ砂、特に粉砕スラグ砂であるのがより好ましい。
【0037】
スラグは、工業スラグ、すなわち工業プロセスからの廃棄物、または合成的に生産されたスラグのいずれかでありうる。工業スラグは常に一定の量およびグレードで入手できるとは限らないため、後者が好ましい。高炉スラグ、特にスラグ砂はスラグの一例である。
【0038】
粉砕スラグ砂は、その由来および処理のタイプに応じて細かさおよび粒子サイズ分布の点で様々である。細かさは反応性に影響する。特にブレーン値が、細かさの尺度として使用されうる。粉砕スラグ砂は、ブレーン値が200~1000m2kg-1であるのが好ましく、450~650m2kg-1であるのがより好ましい。
【0039】
電熱リンスラグは、電熱リン生産からの廃棄物である。電熱リンスラグは高炉スラグよりも反応性が低く、約45~50重量%のCaO、約0.5~3重量%のMgO、約38~43重量%のSiO2、約2~5重量%のAl2O3および約0.2~3重量%のFe2O3ならびにフッ化物およびリン酸塩を含む。
【0040】
鉄鋼スラグは製鋼からの廃棄物であり、その組成が大きく変動しうる。
【0041】
潜在水硬性結合材中の(CaO+MgO):SiO2のモル比は0.8~2.5であり、潜在水硬性結合材は上記の材料から選択されるのが特に好ましい。
【0042】
様々な材料がポゾラン結合材として考えられうる。ポゾラン結合材は、非晶質二酸化ケイ素、沈降二酸化ケイ素、発熱性二酸化ケイ素、マイクロシリカ、ガラス粉末、褐炭フライアッシュまたは無煙炭フライアッシュ等のフライアッシュ、メタカオリン、凝灰岩、トラスまたは火山灰等の天然ポゾラン、天然および合成ゼオライトならびにこれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。特に、ポゾラン結合材は非晶質二酸化ケイ素であるのが好ましくい。
【0043】
非晶質二酸化ケイ素は、粉末ディフラクトグラムにおいて結晶性を示さないのが好ましい。ガラス粉末も、非晶質二酸化ケイ素と考えられるのが好ましい。非晶質二酸化ケイ素は、SiO2含有量が少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%であるのが有利である。沈降二酸化ケイ素は、水ガラスを沈殿させることによって工業的に得られるのが好ましい。生産のタイプに応じて、沈降二酸化ケイ素はシリカゲルとも呼称されうる。発熱性二酸化ケイ素は、酸水素炎中で四塩化ケイ素等のクロロシランを反応させることによって生産される。発熱性二酸化ケイ素は、粒子直径が5~50nm、比表面積が50~600m2g-1の非晶質SiO2粉末である。
【0044】
マイクロシリカは、シリコンまたはフェロシリコン生産の副産物であり、大量の非晶質SiO2粉末を含む。粒子の直径は約0.1μmである。比表面積は15~30m2g-1の範囲である。
【0045】
フライアッシュは、例えば石炭火力発電所での燃焼中に形成される。国際公開第2008/012438(A2)号によれば、Fクラスのフライアッシュは8重量%未満、好ましくは5重量%未満のCaOを含む。
【0046】
メタカオリンは、カオリンを脱水することによって形成される。100~200℃の範囲の温度でカオリンが物理的に結合した水を放出し、500~800℃の範囲で格子構造の崩壊およびメタカオリン(Al2Si2O7)の形成が生じる。純粋なメタカオリンは、約54重量%のSiO2および約46重量%のAl2O3を含むのが好ましい。
【0047】
前述の潜在水硬性結合材およびポゾラン結合材を使用して、装飾性が低下しないかまたは非常にゆっくりとしか低下しないコンクリート要素を生産できることが分かっている。
【0048】
様々な材料がアルカリ性硬化剤として使用されうる。アルカリ性硬化剤は、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。アルカリ性硬化剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩およびそれらの混合物からなる群より選択されるのがより好ましい。
【0049】
アルカリ金属酸化物の例は、Li2O、Na2O、K2O、(NH4)2Oおよびそれらの混合物である。アルカリ金属水酸化物の例は、LiOH、NaOH、KOH、NH4OHおよびそれらの混合物である。アルカリ金属炭酸塩の例は、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、(NH4)2CO3およびそれらの混合物である。アルカリ金属イオンとの類似性により、アンモニウムイオンも挙げられる。
【0050】
アルカリ金属ケイ酸塩は、実験式m SiO2・n M2Oの化合物より好都合に選択され、式中MはLi、Na、KもしくはNH4またはそれらの混合物、好ましくはNaまたはKである。m:nのモル比の範囲は0.5~3.6であり、0.6~3.0であるのが好ましく、0.7~2.0であるのが特に好ましい。水ガラス、特に液体水ガラス、より好ましくは液体ケイ酸ナトリウムおよび/またはカリウムは、特に有用なアルカリ金属ケイ酸塩であることが証明されている。ケイ酸、特に水性ケイ酸は、別の有用なアルカリ金属ケイ酸塩である。
【0051】
前述のアルカリ性硬化剤は、水溶液として使用されるのが好ましい。これにより、計量が容易になる。
【0052】
本発明によるコンクリート要素、特にフェイスコンクリート層の硬化は、前述のアルカリ性硬化剤を用いて容易に調整されうる。さらに、これらのアルカリ性硬化剤は、混合物中の他の成分との良好な適合性を示す。
【0053】
アルカリ性硬化剤は、様々な量で混合物に含まれうる。混合物は、混合物の総重量に基づいて、好ましくは3重量%~5重量%、好ましくは3.15重量%~4.85重量%、より好ましくは4.0重量%~4.75重量%、なお好ましくは4.25重量%~4.75重量%、特に好ましくは4.35重量%~4.55重量%のアルカリ性硬化剤を含む。混合物が、混合物の総重量に基づいて、3.25重量%~3.65重量%のアルカリ性硬化剤を含む場合にも良好な結果が得られる。3重量%未満のアルカリ性硬化剤を使用したときには、コンクリート要素、特にフェイスコンクリート層の硬化が遅すぎることが分かった。5重量%を超えるアルカリ性硬化剤を使用すると、硬化の開始が早すぎて、得られるコンクリート要素、特にフェイスコンクリート層を適切に圧縮できなくなる。
【0054】
本発明によれば、混合物は水を含む。混合物は、混合物の総重量に基づいて、好ましくは3重量%~7重量%、好ましくは3.5重量%~6.5重量%、より好ましくは4.0重量%~6.2重量%、なお好ましくは4.2重量%~4.9重量%、特に好ましくは4.2重量%~4.8重量%の水を含む。混合物が、混合物の総重量に基づいて、5.2重量%~6.2重量%の水を含む場合にも良好な結果が得られる。
【0055】
混合物は、結合材、水、顆粒状材料およびアルカリ性硬化剤の成分に加えて他の成分も含みうる。混合物は、例えば砂利、グリット、砂、パーライト、珪藻土またはバーミキュライト等の一つ以上の添加剤も含みうる。混合物は、セメント、および/または砂利、グリット、砂、パーライト、珪藻土もしくはバーミキュライト等の一つ以上の添加剤、および/または可塑剤、消泡剤、保水剤、分散剤、顔料、繊維、再分散性粉末、湿潤剤、含浸剤、錯化剤およびレオロジー添加剤からなる群より選択される一つ以上の添加剤を含むのが好ましい。
【0056】
あるいは、混合物はセメントを含まないのが好ましい。その結果、特に、有利な二酸化炭素フットプリントを有するコンクリート要素が生産されうる。
【0057】
混合物は、硬化調節剤を含むのが有利である。特に、凝結遅延剤および/または凝結促進剤が硬化調節剤と考えられうる。
【0058】
混合物の特性は、上記の添加剤により良好に制御されうる。特に、前述の添加剤により硬化挙動が良好に制御されうる。
【0059】
混合物は、混合物の総重量に基づいて、好ましくは0.1重量%~2重量%、より好ましくは0.4重量%~1.5重量%の添加剤を含む。混合物は、0.025重量%~0.097重量%または1.5重量%~2重量%の凝結遅延剤および/または凝結促進剤を好都合に含む。
【0060】
本発明によるコンクリート要素は、DIN1045-2C0またはC01規格に準拠した圧縮クラスを有するのが好ましい。コンクリート要素は、コンクリートブロック、コンクリートスラブ、コンクリート壁要素またはコンクリートステップであるのが好ましい。
【0061】
本発明は、以下のステップ:
a.
i.顆粒状材料、
ii.任意の顔料、
iii.任意のフィラー、
iv.水、
v.潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材、ならびに
vi.アルカリ性硬化剤
を成分として含む組成物を調製するステップ、
b.組成物を混合して混合物を得るステップ、
c.混合物をコアコンクリート層の上の少なくとも一つの型に充填するステップ、または混合物を少なくとも一つの型に充填し、続いてその上にコアコンクリート層を充填するステップ、
d.混合物を圧縮して少なくとも一つのグリーンコンクリート要素を得るステップ
を含む、本発明によるコンクリート要素を生産するための方法も提供する。
【0062】
混合物は、少なくとも一つの型内で圧縮されるのが好ましい。圧縮は、突き固めおよび/または振動によって行われうる。
【0063】
方法ステップは、上に指定された順序で実行されるのが好ましい。
【0064】
さらに、組成物の成分は、定められた順序で計量されるのが有利である。成分が上に定められた順序で加えられると、混合物の処理が容易であることが分かっている。組成物の成分が計量中に既に混合されても好都合であることが証明されている。
【0065】
本発明によるコンクリート要素に関して顆粒状材料、フィラー、水、潜在水硬性結合材および/またはポゾラン結合材ならびにアルカリ性硬化剤について上に述べたことは、特に使用される成分の量に関して適宜当てはまる。
【0066】
さらに、組成物は、骨材、添加剤、凝結遅延剤および/または凝結促進剤等の上に列挙された追加の成分も含みうる。骨材、添加剤、凝結遅延剤および/または凝結促進剤は、水または任意の顔料とともに、好ましくは水とともに量り入れられるのが有利である。
【0067】
本発明による方法を使用して、コンクリート要素の表面を設計することが可能である。一実施形態によれば、粒状材料の全組成に基づいて(a)65~95重量%、好ましくは75~85重量%の量の平均粒径が0.1~5mmの散乱成分、および(b)5~35重量%、好ましくは15~25重量%の量の結合材を含む粒状材料の一部分が、少なくとも一つの型内での混合物の圧縮の前に混合物に加えられる。
【0068】
これらの濃度範囲内で散乱成分および結合材を使用することにより、粒状材料がコンクリート要素の表面上に良好に固定されうる。
【0069】
平均粒径は、より大きな直径およびより小さな直径の粒が同数存在する直径を指すものと当業者によって理解される。平均粒径は、例えば篩分けによって特定されうる。
【0070】
本発明による方法の本実施形態により特に美的に魅力的なコンクリート要素を生産するために、フェイスコンクリート層が色または光沢度等の光学特性を有し、粒状材料がそこから逸脱する光学特性を有していれば有利であることが証明されている。これにより、例えば天然石の自然の構造に類似して見える火炎仕上げ、縞または斑点模様の表面を生み出すことが可能になる。
【0071】
本実施形態によれば、粒状材料は、アプリケーションデバイスによって混合物に加えられるのが好ましい。アプリケーションデバイスは、少なくとも一つの滴下デバイス、遠心ディスク、パドルホイール、リムおよび/またはカタパルトを有することができ、そこに粒状材料の少なくとも一部分が供給される。これらのデバイスは、型の上または型の隣を移動することができ、様々な部分が様々な間隔で供給されることもできる。このようにして、粒状材料が混合物に均一に加えられうる。本発明による方法は、このようにして特に経済的に実行されうることも分かっている。
【0072】
アプリケーションデバイスは、粒状材料を含む少なくとも一つの計量容器と計量ストリップとを有し、計量容器が均一または不均一な速度で型の上を案内されるのが有利である。
【0073】
均一および/または不規則および/または断続的に実行される振動または振動衝撃が計量ストリップに与えられるのが好ましい。
【0074】
異なる仕上げ材料および/または仕上げ材料の異なる部分が、計量ストリップにその延長部に沿って補給されうるのが好ましい。
【0075】
さらに、コンクリート、好ましくはフェイスコンクリートのための計量キャリッジの前縁に計量容器が取り付けられても有利であることが証明されている。
【0076】
計量ストリップを備えた少なくとも一つの計量容器を備えたアプリケーションデバイスの可能な構成が、例えば欧州特許出願公開第2 910 354(A1)号に記載される。計量ストリップを備えた少なくとも一つの計量容器を備えたアプリケーションデバイスの例は、少なくとも一つのチャンバを備えた充填キャリッジである。粒状材料は、このチャンバに含まれうる。充填キャリッジは、仕切りによって分離された二つ以上のチャンバを有してもよい。その場合、本発明による混合物は、充填キャリッジの第一チャンバに含まれるのが有利である。粒状材料は、第二チャンバに含まれるのが好ましい。さらなるチャンバは、異なる特性、例えば異なる色の他の粒状材料を含みうる。充填キャリッジは、ガイドレールに沿って型の上を移動されうる。
【0077】
粒状材料を含むチャンバは、アプリケーション要素を有しうる。アプリケーション要素はチャンバから除去されうる。チャンバは、一つ以上のアプリケーション要素を有しうる。
【0078】
アプリケーション要素は、少なくとも一つ、好ましくはいくつかの穴を備えた有孔計量プレートと計量要素とを有するのが好ましい。穴は、計量プレートに均一にまたはパターンで設けられうる。穴は同じまたは異なる直径を有しうる。計量プレートは平坦または曲線状でありうる。計量プレートは円筒状とすることもできる。計量プレートは、特に計量ストリップを形成しうる。
【0079】
計量要素は異なって設計されうる。計量要素は、例えばシャフトを含むことができ、これにブレードが取り付けられ、シャフトの長手方向軸の周りで回転させられうる。粒状材料は、シャフトの二つのブレードと計量プレートの関連するセクションとによって形成される空間に位置するのが好ましい。シャフトをその長手方向軸の周りで回転させることにより、ブレードが粒状材料を計量プレートの穴に押し通し、それによって混合物に加える。このような計量要素は、曲線状計量プレートと併せて使用されるのが好ましい。
【0080】
計量要素は、櫛のように設計されることもできる。その場合、櫛状の計量要素は、平坦な計量プレート上に移動可能に載っているのが好ましい。粒状材料は、計量プレート上の櫛の歯の間に位置するのが好ましい。計量プレート上で櫛を移動させることにより、粒状材料が計量プレートの穴に押し通され、それにより混合物に加えられる。
【0081】
計量要素は、有孔プレートとすることもできる。有孔プレートは、平坦な計量プレート上に載っているのが好ましい。粒状材料は、計量プレート上の有孔プレートの穴内に位置するのが好ましい。計量プレート上で有孔プレートを移動させることにより、粒状材料が計量プレートの穴に押し通され、それにより混合物に加えられる。
【0082】
最後に、計量要素は、円筒状の計量プレートの内側に設けられるのが好ましい自由に移動可能な要素とすることもできる。粒状材料も、円筒状の計量プレートの内側に設けられるのが好ましい。自由に移動可能な要素は、その重量のために、粒状材料を計量プレートの穴に押し通すことができる。円筒状の計量プレートを移動、特に回転させることにより、粒状材料が計量プレートの穴に押し通され、それにより混合物に加えられる。
【0083】
アプリケーション要素は、計量要素を移動させることができるアクチュエータ等のさらなる構成要素も含むのが有利である。アクチュエータは、電気モータに接続されることができ、電気モータは、電子制御手段によって制御されうるのが好ましい。アプリケーション要素は、アクチュエータロッド、カムと係合するカムフォロア、および/またはギアも有しうる。
【0084】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、アプリケーションデバイスは、少なくとも一つのパイプソケットを含み、これに粒状材料の一つ以上の部分が供給され、これを通してフェイスコンクリート層上に散乱、投下、発射、および/または滴下される。パイプソケットの端がノズルの様式で設計されれば、特に良好な型全体の分配が生じる。
【0085】
実地試験により、材料が投じられうるようにロックが突然解除されるプレストレスバネ式ピストンによって排出が行われる場合に、本発明による方法によって良好な分配がもたらされることが示されている。
【0086】
アプリケーションデバイスは、型の上方および/または型の隣を移動されうるのが好ましい。アプリケーションデバイスは、様々な移動速度を有するかまたは達成することができ、ぎくしゃくした移動も有利である。型のサイズおよびアプリケーションデバイス内の粒状材料の色に応じて、粒状材料のより均一な添加または特徴のある添加パターンを達成するために、一つの型に対して複数の異なってもいるデバイスが使用されうる。
【0087】
バッフルプレートは、そのようなディスクホイールまたはリム、さらにはパイプソケットで散乱がより広くなりうることからアプリケーションデバイスで使用されるのが好ましい。
【0088】
上記のように、異なる粒状材料でありうる粒状材料のいくつかの部分がアプリケーションデバイスによって次々に排出されうる。
【0089】
粒状材料に含まれる結合材は、セメント、水硬性石灰、石膏または水ガラス等の無機結合材であるのが好ましく、または粒状材料に含まれる結合材は、プラスチック分散物、アクリレート樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、SolGel樹脂またはシリコーン樹脂エマルジョン等の有機結合材である。このような結合材は、コンクリート要素に関連して特に扱いやすい。加えて、これらによる方法の追加要件はない。さらに、このような結合材は、粒状材料がコンクリート要素上に良好に固定されることを可能にする。
【0090】
コンクリート要素の望ましい視覚的外観に応じて、異なる平均粒径の散乱成分が使用されうる。平均粒径0.1~1.8mmの散乱成分が、散乱成分として使用されうる。あるいは、平均粒径1.2~5mmの散乱成分が使用されうる。
【0091】
平均粒径0.1~1.2mmの散乱成分が、散乱成分として使用されるのが好ましい。
【0092】
粒状材料は、半貴石、貴石、雲母、金属チップ、プラスチック粒子またはガラス粒子の顆粒を含む様々な色の様々な種類の材料が表面またはフェイスコンクリート層に組み込まれうるように、小さな骨材も含みうる。粒状材料は、任意の岩石混合物とすることもできる。
【0093】
散乱成分が岩石混合物であるかまたは岩石混合物を含んでいれば、本発明による方法にとって特に実用的であることが証明されている。これにより、天然石の外観に非常に近いコンクリート要素を生産することが可能になる。
【0094】
本発明による方法において、散乱成分は、少なくとも半貴石、貴石、雲母、金属チップ、ガラスおよびプラスチック粒子の群より選択される材料を含むのが好ましい。これらの材料の使用により、非常に経済的な方法が可能になる。
【0095】
本発明による方法において、粒状材料は、特に粒径2mm以下の粒調組成物を有しうる。
【0096】
少なくとも一つのグリーンコンクリート要素の表面および/または縁は、本発明による方法においてブラシで処理され、それによって縁で構造化および/または粗面化および/または平滑化され、および/または突起が減少させられうる。これにより、装飾的な視覚的外観がさらに強化されうる。
【0097】
圧縮前、しかし好ましくは圧縮後に、好ましくは無色である有機または無機薬剤が硬化前または後のコンクリート要素の表面に施されうる。これは、コンクリート要素を防水、シール、または被覆するために行われる。特に、シーリング剤および/または防水剤が、少なくとも一つのグリーンコンクリート要素の表面に施されうる。このような手順により、コンクリート要素にさらなる保護層が追加され、コンクリート要素の耐久性および耐用年数がさらに向上する。この層は、汚染保護体としても働き、さらに石灰の白華を防ぐことができる。
【0098】
グリーンコンクリート要素は、コンクリート要素を得るために本発明による方法において硬化されるのが好ましい。硬化した後、コンクリート要素は、コンクリート要素を研磨、ブラスティング、ブラッシング、および/または構造化することによって処理されるのが好ましい。
【0099】
さらなる説明のために、非限定的な例を以下に挙げる。
【実施例】
【0100】
<材料>
結合材混合物:潜在水硬性結合材およびポゾラン結合材を主に含む。
顆粒状材料:2mmの篩穴幅での通過画分が72.5重量%、0.25mmの篩穴幅での通過画分が7.5重量%の骨材。
フィラー:0.025mmの篩穴幅での通過画分が97重量%、0.015mmの篩穴幅での通過画分が63重量%の石粉、フライアッシュおよび/または粉砕スラグ砂の混合物。
アルカリ性硬化剤:75%シリカ。
顔料:金属酸化物顔料。
添加剤:凝結遅延剤/凝結促進剤。
粒状材料:80重量%の平均粒径0.7mmの小さな骨材および20重量%の無機結合材を含む。
【0101】
接着引張強度は、DAfStガイドライン「コンクリート部品の保護および修復(独:Schutz und Instandsetzungen von Betonbauteilen,英:Protection and repair of concrete components)」、第4部、セクション5.5.11にしたがって特定される。これから逸脱して、50mmの穿孔深さが選択される。
【0102】
<実施例1>
61重量%の顆粒状材料、1.1重量%の顔料、6.8重量%のフィラー、4.4重量%の水、22.3重量%の結合材混合物、4.36重量%のアルカリ性硬化剤、および0.04重量%の添加剤を混合容器に連続して加えて組成物を得、上記のデータは組成物の総重量に関するものであった。次に、組成物を混合容器内で混合して混合物を得た。このようにして得られた混合物を、生コンクリートが既に存在するモールディングボードの形でフェイスコンクリート層として注いだ。フェイスコンクリート層は基本色であった。次に、混合物を型内で突き固めによって圧縮し、それによってグリーンコンクリート要素を得た。型を除去したときの観察に基づけば、グリーンコンクリート要素は分裂しなかった。型からの除去後、グリーンコンクリート要素の接着引張強度は1.5MPa超であった(試験材齢56日)。硬化した後、得られたコンクリート要素は視覚的に魅力的であった。コンクリート要素は、6か月間の期間を経て装飾性に識別可能な減退または他の劣化は一切見られなかった。
【0103】
<実施例2>
67重量%の顆粒状材料、1.1重量%の顔料、4.4重量%の水、23.1重量%の結合材混合物、4.36重量%のアルカリ性硬化剤、および0.04重量%の添加剤を混合容器に連続して加えて組成物を得、上記の情報は組成物の総重量に基づいた。次に、組成物を混合容器内で混合して混合物を得た。このようにして得られた混合物を、生コンクリートが既に存在するモールディングボードの形でフェイスコンクリート層として注いだ。フェイスコンクリート層は基本色であった。次に、混合物を型内で突き固めによって圧縮し、それによってグリーンコンクリート要素を得た。型を除去したときの観察に基づけば、グリーンコンクリート要素は分裂しなかった。型からの除去後、コンクリート要素の接着引張強度は1MPa超であった(試験材齢56日)。硬化した後、得られたコンクリート要素は視覚的に魅力的であった。コンクリート要素は、6か月間の期間を経て装飾性に識別可能な減退または他の劣化は一切見られなかった。
【0104】
<実施例3>
実施例3は実施例1と同一であるが、突き固めステップの前に遠心ディスクを用いて粒状材料がフェイスコンクリート層に加えられた点が異なる。遠心ディスクの平面は、モールディングボードの表面に対して少し離れてほぼ平行に向けられた。アプリケーションデバイスは、型内の全てのフェイスコンクリート層に必要に応じて到達できるようにモールドボードを横断して移動することができた。粒状材料が充填された漏斗を遠心ディスクの上方に置いた。下側漏斗開口部に設けられた開閉デバイスによって、粒状材料の任意の部分を遠心ディスク上に導くことができた。基本的に、異なる用量の異なる粒状材料をフェイスコンクリート層の表面上に投じることができるように、異なる粒状材料を含むいくつかの漏斗を遠心ディスクの上方に設けることができる。遠心ディスクの速度およびモールディングボードに対するその高さも、型に沿った移動速度と同様に、投下運動中であっても必要に応じて調整および変動されうる。型を除去したときの観察に基づけば、グリーンコンクリート要素は分裂しなかった。型からの除去後、グリーンコンクリート要素の接着引張強度は1.5MPa超であった。硬化した後、斑点模様の表面の視覚的に魅力的なコンクリート要素が得られた。コンクリート要素は、6か月間の期間を経て装飾性に識別可能な減退または他の劣化は一切見られなかった。
【0105】
<実施例4:(比較例)>
実施例4は実施例1と同一であるが、顆粒状材料は2.0mmの篩穴幅での通過画分が100%であり、0.25mmの篩穴幅での通過画分が31.5%である点が異なる。
次に、組成物を混合容器内で混合して混合物を得た。このようにして得られた混合物を、生コンクリートが既に存在するモールディングボードの形でフェイスコンクリート層として注いだ。フェイスコンクリート層は基本色であった。次に、混合物を型内で突き固めによって圧縮し、それによってグリーンコンクリート要素を得た。しかし、型を除去するとコンクリート要素の表面および/または表層の一部が剥がれ落ち、その結果損傷した表面が生じた。これらのコンクリート要素は使用できなくなった。コンクリート要素の損傷していない部分での接着引張強度の特定により、コンクリート要素の接着引張強度が1MPaよりかなり低いことが示された。
【0106】
<実施例5>
実施例5は実施例1と同一であるが、添加剤(凝結促進剤/凝結遅延剤)を使用しなかった点が異なる。
次に、組成物を混合容器内で混合して混合物を得た。このようにして得られた混合物は、ポットライフ、すなわち混合物を混合容器から型にまだ充填できる期間が非常に短かった。
【0107】
<実施例6>
63.5重量%の顆粒状材料、1.1重量%の顔料、4.01重量%の水、27.2重量%の結合材混合物、4.15重量%のアルカリ性硬化剤および0.04重量%の添加剤を混合容器に連続して加えて組成物を得、上記の情報は組成物の総重量に関するものであった。次に、組成物を混合容器内で混合して混合物を得た。このようにして得られた混合物を、生コンクリートが既に存在するモールディングボードの形でフェイスコンクリート層として注いだ。フェイスコンクリート層は基本色であった。次に、混合物を型内で突き固めによって圧縮し、それによってグリーンコンクリート要素を得た。型を除去したときの観察に基づけば、グリーンコンクリート要素は分裂しなかった。型からの除去後、コンクリート要素の接着引張強度は1MPaよりやや低かった(試験材齢56日)。