(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】流出カニューレのための回転防止機構を含む埋込型血液ポンプアセンブリ、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/859 20210101AFI20231227BHJP
A61M 60/178 20210101ALI20231227BHJP
A61M 60/232 20210101ALI20231227BHJP
A61M 60/422 20210101ALI20231227BHJP
A61M 60/82 20210101ALI20231227BHJP
A61M 60/546 20210101ALI20231227BHJP
【FI】
A61M60/859
A61M60/178
A61M60/232
A61M60/422
A61M60/82
A61M60/546
(21)【出願番号】P 2022518823
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2020070228
(87)【国際公開番号】W WO2021062429
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-21
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダスティン セス ウェスト
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512687(JP,A)
【文献】特表2014-502524(JP,A)
【文献】特開2019-054971(JP,A)
【文献】特表2005-536243(JP,A)
【文献】特開2007-321916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込型血液ポンプアセンブリであって、
入口と、出口と、前記入口から前記出口まで延在する流路と、を画定するハウジングであって、出口カプラを備える前記ハウジングと、
前記流路内に位置すると共に、前記入口から前記出口に血液を送り出すように動作可能なロータと、
前記ハウジング内に位置すると共に、前記ロータを駆動するように動作可能なステータと、
前記出口カプラとの取外し可能な機械的接続のために構成されたカプラアセンブリを備える流出カニューレと、を備え、
前記カプラアセンブリは、回転防止機構の第1のコンポーネントと、軸方向ロックの第1のコンポーネントと、を備え、
前記出口カプラは、前記回転防止機構の第2のコンポーネントと、前記軸方向ロックの第2のコンポーネントと、を備え、
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、前記流出カニューレを前記ハウジングの前記出口に挿入する間に前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネント及び第2のコンポーネント
が互いに結合するよりも前に、互いに結合
して、前記出口カプラと前記流出カニューレとの相対的な回転を抑制するように位置する、埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項2】
前記回転防止機構の前記第2のコンポーネントは、前記出口カプラの半径方向内面に位置する、長手方向に沿って延在する複数のスプラインを備え、
前記複数のスプラインは、前記出口カプラの前記半径方向内面に間隔をあけて配置される、 請求項1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項3】
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントは、前記カプラアセンブリのスリーブの半径方向外面に画定された、長手方向に沿って延在する複数の溝を備え、
前記複数の溝は、前記複数のスプラインの円周方向の間隔に対応する距離で、前記スリーブの前記半径方向外面に間隔をあけて配置される、請求項2に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項4】
前記複数の溝は、スパナレンチに結合するように構成されたスパナナット溝である、請求項3に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項5】
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、結合後に、前記出口カプラに対する前記流出カニューレの制限された回転を許容する、請求項1から4のいずれか一項に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項6】
前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、相補的なねじ山を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項7】
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントが軸方向に整列していない場合に、前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントの結合を禁止する、請求項1から6のいずれか一項に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項8】
前記流出カニューレがいくつかの別個の向きのうちの1つで前記出口カプラに選択的に連結可能であるように、前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントは互いに対して配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項9】
前記いくつかの別個の向きは、少なくとも4個である、請求項8に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項10】
前記カプラアセンブリは、環状のシールをさらに備え、
前記出口カプラは、前記流出カニューレを前記ハウジングの前記出口に挿入する間に前記シールに密封結合するシール面を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項11】
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントが互いに結合した後に、前記シールが前記シール面に結合するように、前記シールは位置する、請求項10に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項12】
前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントが互いに結合する前に、前記シールが前記シール面に結合するように、前記シールは位置する、請求項11に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項13】
前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントが互いに結合した後に、前記シールが前記シール面に結合するように、前記シールは位置する、請求項11に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項14】
前記流出カニューレは、流入端と流出端とを有すると共に、前記流入端と前記流出端との間に延在する可撓性の流体導管を備え、
前記カプラアセンブリは、前記流出カニューレの前記流入端において、前記流体導管に連結される、請求項1から13のいずれか一項に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項15】
前記カプラアセンブリは、
前記ハウジングの前記出口に受け入れられるサイズの第1の端部と、前記流出カニューレの流体導管内に配置される第2の端部と、を有するアダプタスリーブであって、前記アダプタスリーブの前記第1の端部は、前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントを含む、前記アダプタスリーブと、
前記アダプタスリーブに回転可能に連結されると共に、前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントを含むスクリューリングと、
を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項16】
埋込型血液ポンプアセンブリであって、
入口と、出口と、前記入口から前記出口まで延在する流路と、を画定するハウジングであって、出口カプラを備える前記ハウジングと、
前記流路内に位置すると共に、前記入口から前記出口に血液を送り出すように動作可能なロータと、
前記ハウジング内に位置すると共に、前記ロータを駆動するように動作可能なステータと、
前記出口カプラとの取外し可能な機械的接続のために構成されたカプラアセンブリを備える流出カニューレと、を備え、
前記カプラアセンブリは、
(i)長手方向に沿って延在する複数の溝と(ii)前記長手方向に沿って延在する複数のスプラインとのうちの一方を備えるアダプタスリーブと、
前記アダプタスリーブに回転可能に連結されると共に、第1のねじ山を備えるスクリューリングと、を備え、
前記出口カプラは、
(i)前記長手方向に沿って延在する前記複数の溝と(ii)前記長手方向に沿って延在する前記複数のスプラインとのうちの他方と、
前記第1のねじ山にねじ結合するように構成された第2のねじ山と、を備え、
前記複数のスプラインは、前記流出カニューレと前記ハウジングとの相対回転を禁止するために、前記複数の溝に嵌合結合するように構成され、
前記複数の溝と前記複数のスプラインとは、前記流出カニューレを前記ハウジングの前記出口に挿入する間に前記第1のねじ山と前記第2のねじ山
とが互いに結合するよりも前に、互いに結合
して、前記出口カプラと前記流出カニューレとの相対的な回転を抑制するように位置する、埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項17】
前記複数の溝と前記複数のスプラインが軸方向に整列していない場合に、前記複数の溝及び前記複数のスプラインは、前記第1のねじ山と前記第2のねじ山の結合を禁止する、請求項16に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項18】
前記流出カニューレがいくつかの別個の向きのうちの1つで前記出口カプラに選択的に連結可能であるように、前記複数の溝と前記複数のスプラインは互いに対して配置される、請求項16又は17に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項19】
前記複数の溝は、スパナレンチに結合するように構成されたスパナナット溝である、請求項16から18のいずれか一項に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
【請求項20】
埋込型血液ポンプを製造する方法であって、
回転防止機構の第1のコンポーネントと軸方向ロックの第1のコンポーネントとを含む、カプラアセンブリを含む流出カニューレを提供することと、
入口と、出口と、前記入口から前記出口まで延在する流路と、を画定するハウジングを含む血液ポンプを提供することであって、前記ハウジングは、前記回転防止機構の第2のコンポーネントと前記軸方向ロックの第2のコンポーネントとを含む、出口カプラを含む、前記血液ポンプを提供することと、
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントを前記回転防止機構の前記第2のコンポーネントに整列させることと、
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントが、前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネント
が互いに結合するよりも前に、互いに結合
して、前記出口カプラと前記流出カニューレとの相対的な回転を抑制するように、前記流出カニューレを前記ハウジングの前記出口に挿入することであって、前記回転防止機構は、前記ハウジングに対する前記流出カニューレの回転を制限する、前記挿入することと、
前記軸方向ロックが前記ハウジングに対する前記流出カニューレの軸方向の移動を禁止するように、前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントを前記軸方向ロックの前記第2のコンポーネントに結合させることと、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、令和元年9月24日に出願された米国仮特許出願第62/904,950号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、機械的循環サポートシステムに関し、より具体的には、流出カニューレを埋込型血液ポンプに接続するための連結機構に関する。
【背景技術】
【0003】
患者の心臓が、心不全又はうっ血性心不全と呼ばれる適切な循環を提供することができない状況において、VADとして知られる心室補助装置は、短期(すなわち、数日、数ヶ月)及び長期(すなわち、数年又は生涯)の両方の用途に使用される埋込型血液ポンプである。心不全を患っている患者は、心臓移植を待つ間又は長期のDT療法としてVADを使用する場合がある。別の例では、患者は、心臓手術から回復している間にVADを使用する場合がある。このように、VADは、弱い心臓を補う(即ち部分的にサポートする)ことができ、あるいは、自然な心臓の機能に効果的に取って代わることができる。VADは、患者の体内に埋め込むことができ、患者の体内又は体外の電源から電力を得ることができる。
【0004】
従来のVADでは、流出カニューレは、ポンプハウジングに接続され、血液をポンプから患者の上行又は下行大動脈に導く。少なくともいくつかの公知のVADでは、流出カニューレは、埋め込み処置中にポンプハウジングに接続される。さらに、少なくともいくつかの公知のVADは、組立後(すなわち手術後)に、流出カニューレがポンプハウジングに対して回転することを許容する。さらに、いくつかの公知のVADは、組み立て中にポンプハウジングに対する流出カニューレの回転量を制限しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、公知のVADは、埋め込み処置中及び/又は術後に流出カニューレが過度の回転及び/又はねじれを受けてしまうことを許容し得る。従って、流出カニューレを埋込型血液ポンプに接続するための改善された連結機構が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、入口と、出口と、入口から出口まで延在する流路と、を画定するハウジングと、流路内に位置すると共に、入口から出口に血液を送り出すように動作可能なロータと、ハウジング内に位置すると共に、ロータを駆動するように動作可能なステータと、流出カニューレと、を含む埋込型血液ポンプアセンブリを対象とする。流出カニューレは、出口カプラとの取外し可能な機械的接続のために構成されたカプラアセンブリを含み、回転防止機構の第1のコンポーネントと、軸方向ロックの第1のコンポーネントと、を含む。ハウジングは、回転防止機構の第2のコンポーネントと、軸方向ロックの第2のコンポーネントと、を含む出口カプラを含む。回転防止機構の第1及び第2のコンポーネントは、流出カニューレをハウジングの出口に挿入する間、軸方向ロックの第1及び第2のコンポーネントよりも前に互いに結合するように位置する。
【0007】
本開示は、さらに、入口と、出口と、入口から出口まで延在する流路と、を画定するハウジングと、流路内に位置すると共に、入口から出口に血液を送り出すように動作可能なロータと、ハウジング内に位置すると共に、ロータを駆動するように動作可能なステータと、流出カニューレと、を含む埋込型血液ポンプアセンブリを対象とする。流出カニューレは、出口カプラとの取外し可能な機械的接続のために構成されたカプラアセンブリを含み、アダプタスリーブと、アダプタスリーブに回転可能に連結されるスクリューリングと、を含む。アダプタスリーブは、(i)長手方向に沿って延在する複数の溝と、(ii)長手方向に沿って延在する複数のスプラインと、のうちの一方を含む。スクリューリングは、第1のねじ山を含む。複数のスプラインは、流出カニューレとポンプハウジングとの相対回転を禁止するために、複数の溝に嵌合結合するように構成される。複数の溝と複数のスプラインは、流出カニューレをハウジングの出口に挿入する間、第1及び第2のねじ山よりも前に互いに結合するように位置する。
【0008】
本開示は、さらに、埋込型血液ポンプを製造する方法を対象とする。この方法は、回転防止機構の第1のコンポーネントと軸方向ロックの第1のコンポーネントとを含むカプラアセンブリを含む流出カニューレを提供することを含む。この方法は、さらに、入口と、出口と、入口から出口まで延在する流路と、を画定するハウジングを含む血液ポンプを提供することを含み、ハウジングは、回転防止機構の第2のコンポーネントと軸方向ロックの第2のコンポーネントとを含む出口カプラを含む。本方法は、さらに、回転防止機構の第1のコンポーネントを回転防止機構の第2のコンポーネントに整列させることと、回転防止機構の第1及び第2のコンポーネントが、軸方向ロックの第1及び第2のコンポーネントよりも前に互いに結合するように、流出カニューレをハウジングの出口に挿入することと、を含む。回転防止機構は、ハウジングに対する流出カニューレの回転を制限する。この方法は、さらに、軸方向ロックがハウジングに対する流出カニューレの軸方向の動きを禁止するように、軸方向ロックの第1のコンポーネントを軸方向ロックの第2のコンポーネントに結合させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】患者の体内に埋め込まれた機械的循環サポートシステムを示す。
【
図2】
図1の循環サポートシステムのあるコンポーネントの分解図を示す。
【
図3】
図1の機械的循環サポートシステムに使用するのに適した血液ポンプアセンブリを示し、血液ポンプアセンブリは、患者の体内に埋め込まれた動作位置で示されている。
【
図4】
図3の血液ポンプアセンブリの概略断面図である。
【
図5】
図3及び
図4の血液ポンプアセンブリに使用するのに適した、流出カニューレとポンプハウジングの一部との斜視図である。
【
図7】
図5のポンプハウジングの一部の斜視図である。
【
図8】
図5の流出カニューレのカプラアセンブリの斜視図である。
【
図10】
図5のポンプハウジングの出口カプラの断面図である。
【
図14】
図5のポンプハウジングの一部に接続された流出カニューレの斜視図である。
【
図15】
図14の15-15線に沿って切り取られた
図14の流出カニューレ及びポンプハウジングの断面図である。
【
図16】
図5の16-16線に沿って切り取られた
図5の流出カニューレ及びポンプハウジングの断面図である。
【
図17】
図16の流出カニューレ及びポンプハウジングの別の断面図であり、整列状態にある流出カニューレ及びポンプハウジングを示す。
【
図18】組み立ての第1のステップ中における
図15の流出カニューレ及びポンプハウジングの別の断面図である。
【
図19】組み立ての第2のステップ中における
図18の流出カニューレ及びポンプハウジングの別の断面図である。
【
図20】血液ポンプアセンブリを組み立てる方法の一実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、埋込型血液ポンプアセンブリに関し、より具体的には、流出カニューレを埋込型血液ポンプに接続するための連結機構に関する。
【0011】
図面を参照すると、
図1は、患者の身体12に埋め込まれた機械的循環サポートシステム10の図である。機械的循環サポートシステム10は、血液ポンプ16と心室カフ18と流出カニューレ20とを含む埋込型血液ポンプアセンブリ14を含む。
機械的循環サポートシステム10は、外部システムコントローラ22及び1個又は複数個の電源24も含む。
【0012】
血液ポンプアセンブリ14は、図示されるように心臓26の左心室の頂点、又は、右心室、又は、両方の心室に取り付けられる心室補助デバイス(VAD)として実装されてもよいし、あるいはそのような心室補助デバイス(VAD)を含んでもよい。さらに
図2を参照すると、血液ポンプアセンブリ14は、本明細書でさらに説明するように、心臓26に縫い付けられ、血液ポンプアセンブリ14に連結された心室カフ18を介して、心臓26に取り付けることができる。血液ポンプアセンブリ14の他端は、流出カニューレ20を介して上行大動脈又は下行大動脈に接続し、その結果、血液ポンプアセンブリ14は、弱くなった心室から血液を効果的にそらして大動脈に送り、患者の血管系の残りの部分に循環させる。VADは、本明細書でさらに詳細に説明されるように、肺循環から左心室に送られる出力全体(即ち10リットル/分まで)を送ることができる遠心ポンプ(図示)又は軸流ポンプを含んでよい。
【0013】
図1は、バッテリ駆動動作中の機械的循環サポートシステム10を示す。通信ライン28は、埋め込まれた血液ポンプアセンブリ14を、システム10の動作を監視する外部システムコントローラ22に接続する。図示された実施形態では、通信ライン28が患者の腹部30を通って出るドライブラインとして示されるが、血液ポンプアセンブリ14は、有線及び/又は無線通信を含む任意の適切な通信ラインを介して外部システムコントローラ22に接続されてもよいことが理解されるべきである。システムは、1個、2個、又は、3個以上のバッテリ24のいずれかによって電力を供給されてよい。システムコントローラ22及び電源24は、患者の体の外部/外側に示されているが、通信ライン28、システムコントローラ22、及び/又は、電源24は、別個のコンポーネントとして、又は、血液ポンプアセンブリ14と一体化されて、患者内に部分的に又は完全に埋め込み可能であってよいことが理解されるであろう。
【0014】
図3は、
図1の機械的循環サポートシステム10に使用するのに適した埋込型血液ポンプアセンブリ100であり、血液ポンプアセンブリ100は、患者の体内に埋め込まれた動作位置で示されている。
図4は、
図3の血液ポンプアセンブリ100の概略断面図である。図示の実施形態では、血液ポンプアセンブリ100は、心臓Hの左心室LVに接続された左心室補助血液ポンプアセンブリである。
【0015】
血液ポンプアセンブリ100は、第1の外面又は外壁106及び第2の外面又は外壁108を有する円形ハウジング104を含む血液ポンプ102を含む。血液ポンプアセンブリ100は、図示の実施形態では、ポンプハウジング104の第1の外壁106から延びる流入カニューレ110(一般に入口導管)をさらに含む。血液ポンプアセンブリ100が
図3に示されるように患者の体内に埋め込まれる場合、ハウジング104の第1の外壁106は、患者の心臓Hに接して配置され、ハウジング104の第2の外壁108は、心臓Hとは反対側を向く。流入カニューレ110は、心臓Hの左心室LV内に延びて、血液ポンプアセンブリ100を心臓Hに接続する。ハウジング104の第2の外壁108は、患者の横隔膜などの血液ポンプアセンブリ100と接触し得る他の組織を刺激することを回避するために、面取りされた縁部109を有する。
【0016】
血液ポンプアセンブリ100は、ステータ112とロータ114とオンボードコントローラ116とをさらに含み、これらはすべてポンプハウジング104内に収容されている。図示の実施形態では、ステータ112及びオンボードコントローラ116は、第1の外壁106に向かってポンプハウジング104の流入側に配置され、ロータ114は、第2の外壁108に沿って配置される。他の実施形態では、ステータ112、ロータ114、及び、オンボードコントローラ116は、ポンプハウジング104内において、血液ポンプアセンブリ100が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な位置に配置されてもよい。電力は、電力供給ケーブル120を介して遠隔電源から血液ポンプアセンブリ100の動作コンポーネント(例えばステータ112及びオンボードコントローラ116)に供給される。
【0017】
さらに
図4を参照すると、ポンプハウジング104は、心臓の心室(例えば左心室LV)から血液を受け入れるための入口122と、血液を循環系に戻すための出口124と、入口122から出口124まで延びる流路126と、を画定する。ポンプハウジング104は、例えば、1個又は複数個の分割壁130によって流路126から分離された内部区画128をさらに画定する。また、ポンプハウジング104は、第1の外壁106と第2の外壁108との間に位置する中間壁132と、第1の外壁106と中間壁132との間に延在する周壁134と、を含む。第1の外壁106、分割壁130、中間壁132、及び、周壁134は共に、ステータ112及びオンボードコントローラ116が収容される内部区画128を画定する。
【0018】
図示の実施形態では、ポンプハウジング104は、中間壁132に沿ってポンプハウジング104に取り外し可能に取り付けられたキャップ136も含む。キャップ136は、図示の実施形態では、ポンプハウジング104に螺合可能に接続されるが、他の実施形態では、血液ポンプアセンブリ100が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の好適な接続手段を使用して、キャップ136がポンプハウジング104に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、キャップ136は、例えば溶接によって、ポンプハウジング104に取り外し不能に接続される。
取り外し可能なキャップ136は、第2の外壁108、面取りされた縁部109を含み、出口124を画定する。キャップ136は、また、出口124と流体連通している渦巻部138と、ロータ114が配置されるロータ室140と、を画定する。キャップ136は、任意の適切な接続構造を用いてポンプハウジング104に取り付けられてよい。例えば、キャップ136は、周壁134とねじ山を介して結合され、周壁134と結合した状態でキャップ136をシールしてよい。
【0019】
ロータ114は、血液流路126内、具体的にはロータ室140内に配置され、ステータ112によって生成された電磁界に応じて回転して、血液を入口122から出口124に送り出すように動作可能である。ロータは、血液ポンプ102の動作中に血液が流れる中央開口142を画定する。ロータ114は、血液流路126の渦巻部138内に配置されたインペラブレード144と、第2の外壁108に面するインペラブレード144の端部を覆って血液流を渦巻部138内に導くのを助けるシュラウド146と、を含む。
【0020】
図示の実施形態では、ロータ114は、中央開口142を画定する永久磁石148を含む。永久磁石148は、ロータ114の能動及び受動磁気浮場の組み合わせ、及び、ロータ114の回転のために、永久磁極N極と永久磁極S極とを有する。
動作中、ステータ112は、永久磁石148の永久磁極S極及びN極と相互作用する電磁場を生成することによって、ロータを駆動し(即ち回転させ)、ロータ114を半径方向に浮揚させるように制御される。
【0021】
ロータ114を回転させるために、任意の適切なステータ112を採用してよい。ステータ112は、一般に、ロータ114を回転させ浮揚させるためにロータ114と相互作用する適切な電磁場を生成する複数の巻線構造を含む。図示の実施形態では、ステータ112は、分割壁130の周囲に間隔をおいて円周方向に配置された複数の磁極片150を含む。例示の血液ポンプアセンブリ100は、6個の磁極片150を含み、そのうちの2個が
図4に示される。他の実施形態では、血液ポンプアセンブリ100は、4個の磁極片、8個の磁極片、又は、血液ポンプアセンブリ100が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の他の適切な数の磁極片等の、6個より多い又は少ない磁極片を含んでもよい。図示の実施形態では、磁極片150のそれぞれは、ロータ114を回転させるための電磁場を生成するための駆動コイル152と、ロータ114の半径方向位置を制御するための電磁場を生成するための浮揚コイル154と、を含む。
【0022】
ステータ112を制御してロータ114を回転させ半径方向に浮揚させるための電磁場を生成するための適切な方法は、例えば、米国特許第9,849,224号に記載されており、その全内容は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。図示の実施形態では、駆動コイル152と浮揚コイル154は、別個のコイルとして示されているが、ロータ114を回転及び半径方向に浮揚させる両方のために電磁場を生成するように構成された単一のコイルとして実現されてもよいことを理解されたい。
【0023】
流入カニューレ110は、入口122においてポンプハウジング104に取り付けられている。ポンプハウジング104は、流入カニューレ110をポンプハウジング104に接続するための適切な接続構造を入口122に含む。いくつかの実施形態では、例えば、ポンプハウジング104は、流入カニューレ110をポンプハウジング104に接続するために、流入カニューレ110の下流端又は近位端上のねじ山に螺合可能に結合するねじ付きスリーブを含む。
【0024】
オンボードコントローラ116は、ステータ112に動作可能に接続され、ステータ112への電流の供給を制御し、それによってロータ114の回転を制御することによって、ポンプ102の動作を制御するように構成される。いくつかの実施形態では、オンボードコントローラ116は、血液ポンプアセンブリ100内に含まれる1個または複数個のセンサ(例えば、圧力センサ、流量センサ、加速度センサ等)から受信されるフィードバックに基づいて、ポンプロータ114の閉ループ速度制御を実行するように構成される。オンボードコントローラ116は、連続フロー動作及び/又は拍動フロー動作でロータ114を制御するように構成されてもよい。
【0025】
オンボードコントローラ116は、ポンプハウジング104内に収容される1個又は複数個のモジュール又はデバイスを含んでよい。オンボードコントローラ116は、一般に、互いに通信可能に連結され得るコンピュータ、処理ユニット、及び/又は、同様のもの等の任意の適切な組み合わせを含む、任意の適切なコンピュータ及び/又は他の処理ユニットを含んでもよい(例えば、オンボードコントローラ116は、コントローラネットワークのすべて又は一部を形成してよい)。従って、オンボードコントローラ116は、様々なコンピュータ実装機能を実行する(例えば、本明細書で開示される方法、ステップ、計算、及び/又は、同様のものを実行する)ように構成された1個又は複数個のプロセッサ及び関連する1個又は複数個のメモリデバイスを含んでよい。本明細書で使用される「プロセッサ」という用語は、当技術分野でコンピュータに含まれると言われる集積回路を指すだけでなく、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブル論理コントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び、他のプログラマブル回路も指す。さらに、オンボードコントローラ116のメモリデバイスは、一般に、非一時的なコンピュータ可読媒体(例えばランダムアクセスメモリ(RAM))、コンピュータ可読不揮発性媒体(例えばフラッシュメモリ)、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク-リードオンリメモリ(CD-ROM)、光磁気ディスク(MOD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、及び/又は、他の適切なメモリ要素を含んでよいが、これらに限定されない。そのようなメモリデバイスは、一般に、プロセッサによって実行されると、ステータ112への電流の供給の制御、ロータ114の速度の調整、及び、様々な他の適切なコンピュータ実装機能を含むが、それらに限定されない様々な機能を実行するようにオンボードコントローラ116を構成する適切なコンピュータ可読命令を記憶するように構成されてよい。
【0026】
図示の実施形態では、オンボードコントローラ116は、ステータ112への電力供給を制御することによってポンプ102の動作を制御するために、1個又は複数個の回路基板156及び回路基板上に担持された様々な要素(例えば、プロセッサ及びメモリデバイス)として実装される。
【0027】
通信ライン(例えば通信ライン28)は、血液ポンプアセンブリ100及びオンボードコントローラ116を、種々のソフトウェアアプリケーションを介してシステム動作を監視する外部システムコントローラ22に連結する。動作中にポンプアセンブリ100のロータ114の半径方向浮揚及び/又は駆動を制御するなどの様々な機能のために、血液ポンプアセンブリ100自体が、オンボードコントローラ116によって実行可能ないくつかのソフトウェアアプリケーションを含んでもよい。外部システムコントローラ22は、バッテリ24又はAC電源コンセントに接続する電源モジュール(図示せず)に連結されてよい。外部システムコントローラ22はまた、(例えばバッテリ24が消耗したときに)システムに電力を供給するための緊急バックアップバッテリ(EBB)と、無線データ通信のためのBluetooth(登録商標)機能を含む膜オーバレイと、を含んでもよい。外部システムコントローラ22、埋め込まれた血液ポンプアセンブリ100、及び/又は、患者固有パラメータを構成し、外部システムコントローラ22及び/又は埋め込まれた血液ポンプアセンブリ100のソフトウェアを更新し、システム動作を監視するため、及び/又は、システム入力又は出力のためのルートとして、臨床医又は患者等のオペレータによって構成可能な外部コンピュータが、循環サポートシステム10にさらに接続されてよい。
【0028】
図5は、
図1~4の血液ポンプアセンブリ14,100での使用に適した流出カニューレ200と、ポンプハウジング300の一部と、の斜視図である。
図6は、流出カニューレ200の断面図であり、
図7は、
図5のポンプハウジング300の一部の斜視図である。
【0029】
図5及び
図7に示されるポンプハウジング300の一部は、ポンプハウジング300の出口302(例えば出口124)を画定し、出口302に位置する出口カプラ304を含む。出口カプラ304は、流出カニューレ200に選択的に連結可能であり、本明細書でさらに説明するように、流出カニューレ200と協働して結合し、流出カニューレ200とポンプハウジング300の相対回転及び軸方向移動をそれぞれ禁止又は制限する回転防止機構400及び軸方向ロック500(
図15に示す)を形成する。
図5及び
図7に示されるポンプハウジング300の一部は、ポンプハウジング300のキャップ306であり、キャップ306は、
図4を参照して示されかつ上述されたキャップ136と実質的に同じ構成を有し、実質的に同じ方法で、ポンプハウジング300の残りの部分に連結されてよい。他の実施形態では、ポンプハウジング300の出口カプラ304及び出口302は、キャップ306以外のポンプハウジング300の一部に位置してもよい。
【0030】
流出カニューレ200は、流入端202及び流出端(
図5及び
図6には図示せず)を有し、流出カニューレ200を通って延びる流体通路204を画定する。流入端202は、ポンプハウジング300の出口302に接続し、出口302からポンプハウジング300によって送り出される流体を受け入れる。流体は、流体通路204を通って移動し、上行大動脈又は下行大動脈に接続され得る流出端から出る。
【0031】
流出カニューレ200は、流入端202と流出端との間に延在し、流体通路204を少なくとも部分的に画定する可撓性流体導管206を含む。流体導管206は、流出カニューレ200がオペレータ(例えば外科医)によって操作可能であり、患者の胸腔に適合できるように、適切な可撓性の材料から構築される。さらに
図8及び
図9を参照すると、流出カニューレ200は、また、流出カニューレ200の流入端202で流体導管206に連結されるカプラアセンブリ208を含む。カプラアセンブリ208は、例えば、埋込型血液ポンプアセンブリ100が患者に埋め込まれる時に、出口カプラ304に選択的かつ取外し可能に接続されるように構成される。
【0032】
図示の実施形態では、カプラアセンブリ208は、アダプタスリーブ210と、アダプタスリーブ210に回転可能に連結されたスクリューリング212と、を含む。
アダプタスリーブ210及びスクリューリング212は互いに同軸であり、スクリューリング212は、アダプタスリーブ210に対して流出カニューレ200の長手方向軸214を中心に回転するように構成され、カプラアセンブリ208の出口カプラ304への連結を容易にする。
【0033】
アダプタスリーブ210は、ポンプハウジング300の出口302内に受け入れられる大きさの第1の端部216と、流体導管206によって画定された流体通路204内に配置された第2の端部218と、を有する。アダプタスリーブ210は、適切な剛性の構造を有し、流体導管206よりも剛性が高く、ポンプハウジング300との確実な機械的接続を提供する。アダプタスリーブ210は、カプラアセンブリ208が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な材料から構築されてもよく、当該任意の適切な材料は、例えば、滅菌及び長期埋込可能な適切な強度のチタン、チタン合金、ステンレス鋼、及びプラスチックを含むが、これらに限定されない。図示の実施形態では、アダプタスリーブ210は、流体導管206の端部に圧着されたねじカプラ220によって流体導管206に連結される。
【0034】
アダプタスリーブ210は、また、アダプタスリーブ210の第1の端部216において、アダプタスリーブの半径方向外面224に画定された環状溝222を有する。環状シール226は、環状溝222内に配置され、本明細書でさらに説明するように、カプラアセンブリ208が出口カプラ304に接続されるときに出口カプラ304の一部と密封結合するように構成される。
【0035】
スクリューリング212は、半径方向外面230及び半径方向内面232を有する円筒状スリーブ228を含む。スクリューリング212は、第1の自由端234から、第1の端234の下流に位置する第2の端236まで(すなわち流出カニューレ200の流出端に向かって)延びる。
図9に示すように、スクリューリング212は、アダプタスリーブ210の第1の端部216を通過して軸方向に延びている。
【0036】
円筒状スリーブ228は、アダプタスリーブ210の外径よりも大きい内径を有し、アダプタスリーブ210の第1の端部216の周囲に延在し、第1の端部216を包囲する。環状フランジ238は、スクリューリングスリーブ228の半径方向内面232からアダプタスリーブ210の半径方向外面224まで半径方向内方に延び、スクリューリング212をアダプタスリーブ210に回転可能に連結する。ロックリング240は、環状フランジ238の上流(即ち流出カニューレ200の流入端202側)のアダプタスリーブ210の半径方向外面224に連結され、アダプタスリーブ210に対するスクリューリング212の軸方向の動きを禁止する。
【0037】
スクリューリングスリーブ228の半径方向内面232は、出口カプラ304への流出カニューレ200の接続を容易にするために、その軸方向部分に沿ってねじ山242を含む。スクリューリングスリーブ228の半径方向外面230は、スクリューリング212の把持又は担持を容易にするために、半径方向外面230に円周方向に配置された複数の指溝又はくぼみ244(
図8に示す)を含む。図示の実施形態では、スクリューリング212は、また、その第1の端部234に配置された一対の戻り止めタブ246(
図8に示す)を含む。戻り止めタブ246は、互いに直径方向で対向するように配置され、出口カプラ304と協働して結合するように構成され、流出カニューレ200をポンプハウジング300に接続する間、オペレータに触覚フィードバックを提供する。
【0038】
スクリューリング212は、カプラアセンブリ208が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な材料から構築されてよく、当該任意の適切な材料は、例えば、滅菌及び長期埋込可能な適切な強度のチタン、チタン合金、ステンレス鋼、及び、プラスチックを含むが、これらに限定されるものではない。
【0039】
図示の実施形態では、流出カニューレ200は、また、流出カニューレ200の流入端202において流体導管206に連結され、流出端に向かって延びる補強スリーブ250(
図5及び
図9に示す)を含む。補強スリーブ250は、流体導管206よりも硬い構造を有し、流入端202における流体導管206の過度の撓みを抑制し、流体導管206に歪み緩和を提供するように構成される。図示の実施形態の補強スリーブ250は、スリーブ254に連結された螺旋ばね252を含み、その両方が流体導管206を取り囲んでいる。他の実施形態では、補強スリーブ250は、流出カニューレ200が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な構造を有してもよい。さらに他の実施形態では、補強スリーブ250は、流出カニューレ200から省略されてもよい。
【0040】
図10及び
図11をさらに参照すると、出口カプラ304は、カラー308と、カラー308から自由端312へ(すなわち、ポンプハウジング300から離れるように)軸方向外方及び下流へ延在するスリーブ310と、を含む。カラー308は、ポンプハウジング300から(具体的にはキャップ306から)半径方向外側に延在し、複数のくぼみ又は溝316を画定する半径方向外面314を含む。出口カプラスリーブ310は、半径方向外面318と、ポンプハウジング300の出口302を画定する半径方向内面320と、を含む。
【0041】
出口カプラスリーブ310の半径方向内面320は、第1の軸方向部分322及び第2の軸方向部分324(
図11でラベルされている)を含む。第1の軸方向部分322は、カラー308から延在し、第2の軸方向部分324の上流(即ちポンプハウジング300によって画定される流路により近い側)に位置する。第2の軸方向部分324は、第1の軸方向部分322からスリーブ310の自由端312まで延在し、ハウジング出口302に流出カニューレ200を挿入中に環状シール226と密封結合するシール面326を画定する。
図11に示すように、第2の軸方向部分324は、スリーブ310の自由端312において面取りされた縁部328を含み、これにより環状シール226の挿入及び結合が容易になる。
【0042】
図示の実施形態では、スリーブ310の半径方向外面318は、スクリューリング212のねじ山242と協働して結合し、カプラアセンブリ208を出口カプラ304に固定するねじ山330を含む。また、図示の実施態様では、環状溝332が、カラー308によって画定され、半径方向内面320の第1の軸方向部分322から半径方向外側に延在する。ワッシャ334は、環状溝332内に配置され、流出カニューレ200が出口302内に挿入されると、アダプタスリーブ210の第1の端部216と密封結合する。
【0043】
出口カプラ304は、出口カプラが本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な材料で構成されてもよい。いくつかの実施形態では、出口カプラ304は、ポンプハウジング300(例えばキャップ306)と同じ又は類似の材料から構成される。出口カプラ304を構成するのに適した材料としては、例えば、滅菌及び長期埋込み可能な適切な強度のチタン、チタン合金、ステンレス鋼、及びプラスチックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
図12は、流出カニューレ200の端面図であり、
図13は、流出カプラ304の端面図である。
図14は、ポンプハウジング300に接続された流出カニューレ200の斜視図であり、
図15は、
図14の15-15線に沿った断面図である。
図12~15をさらに参照すると、カプラアセンブリ208は、回転防止機構400の第1のコンポーネント402と、軸方向ロック500の第1のコンポーネント502と、を含み、出口カプラ304は、回転防止機構400の第2のコンポーネント404と、軸方向ロック500の第2のコンポーネント504と、を含む。回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、互いに嵌合結合するように構成され、結合するとポンプハウジング300に対する流出カニューレ200の回転を禁止又は制限する。軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502,504は、互いに嵌合結合するように構成され、結合するとポンプハウジング300に対する流出カニューレ200の軸方向移動を禁止する。
【0045】
さらに、
図15に示されるように、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、流出カニューレ200をハウジング出口302に挿入中に、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404が、軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502,504よりも前に互いに結合するように、軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502,504に対して配置されている。換言すれば、回転防止機構400及び軸方向ロック500の構成の結果として、組み立て中、流出カニューレ200は、ポンプハウジング300に軸方向に固定又はロックされる前に、ポンプハウジング300に対して回転的にロックされる。結果として、流出カニューレ200は、血液ポンプアセンブリ100の埋込中に、ポンプハウジング300に軸方向にロック又は固定される前に回転的にロック又は固定されるので、手術後の回転が禁止される。したがって、回転防止機構400及び軸方向ロック500は、流出カニューレ200の術後の過剰な回転及びねじれ、ならびにこのような術後の回転及びねじれから生じる流出カニューレ200の流体導管206の狭窄又は潰れの危険性を防止することを容易にする。
【0046】
さらに、図示の実施形態では、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404が軸方向に整列していない場合に、軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502,504の結合を禁止する。例えば、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404が
図16に示されるように軸方向に整列していない場合には、第1及び第2のコンポーネント402,404が、流出カニューレ200のハウジング出口302への挿入を防止するので、軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502,504が互いに結合できない。回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、
図17に示すように回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404が互いに軸方向に整列した場合にのみ、流出カニューレ200のハウジング出口302への挿入を許容する。このようにして、回転防止機構400は、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404が軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502,504よりも前に結合されることを確実にし、それによって、回転防止機構400が結合されずに嵌合コンポーネントが噛みつくリスクを低減する。
【0047】
さらに、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、流出カニューレ200が別個の限定された数の向きのうちの1つで出口カプラ304に選択的に連結可能であるように、互いに対して配置される。いくつかの実施形態では、例えば、回転防止機構400は、カプラアセンブリ208の出口カプラ304への接続を、少なくとも2個の向き、少なくとも4個の向き、少なくとも10個の向き、1~100個の向き、1~50個の向き、1~40個の向き、1~30個の向き、1~20個の向き、1~10個の向き、1~5個の向き、2~20個の向き、2~10個の向き、及び、2~5個の向きで許容する。図示の実施形態では、回転防止機構400は、カプラアセンブリ208を4個の個別の向きのうちの1つで出口カプラ304に接続することを許容する。他の実施形態では、回転防止機構400は、カプラアセンブリ208と出口カプラ304との連結を任意の他の数の向きで許容してもよい。カプラアセンブリ208を出口カプラ304に接続することができる向きの数を制限することによって、回転防止機構400は、流出カニューレ200がポンプハウジング300に対して回転され、依然として接続されることができる程度を制限することによって、特に血液ポンプアセンブリ100の埋め込み中に、流出カニューレ200の過剰な回転及びねじれを防止することをさらに容易にする。
【0048】
図示の実施形態では、アダプタスリーブ210の第1の端部216は、回転防止機構400の第1のコンポーネント402を含み、出口カプラ304は、回転防止機構400の第2のコンポーネント404を含む。より具体的には、図示の実施形態では、回転防止機構400の第1のコンポーネント402は、複数の長手方向延在溝256を含み、回転防止機構400の第2のコンポーネントは、複数の長手方向延在スプライン336を含む。
【0049】
溝256は、アダプタスリーブ210の第1の端部216において半径方向外面224に画定されている。溝256は、第1の端部216から環状シール226が配置された環状溝222へと下流へ(即ちアダプタスリーブ210の第2の端部218に向かって)延在する。複数の溝256は、複数のスプライン336の円周方向間隔に対応する距離で、アダプタスリーブ210の半径方向外面224に円周方向に間隔をあけて配置される。図示の実施形態は、隣接する溝256に対して90°の間隔で離間した4個の溝256を含む。他の実施形態では、カプラアセンブリ208は、例えば、少なくとも1個の溝、少なくとも2個の溝、少なくとも4個の溝、少なくとも10個の溝、1~100個の範囲の溝、1~50個の範囲の溝、1~40個の範囲の溝、1~30個の範囲の溝、1~20個の範囲の溝、1~10個の範囲の溝、1~5個の範囲の溝、2~20個の範囲の溝、2~10個の範囲の溝、及び、2~5個の範囲の溝を含む、4個より多い又は少ない溝を含んでもよいが、これらに限定されない。さらに、溝256は、アダプタスリーブ210の半径方向外面224の周りに等間隔で配置されているように図示及び説明されているが、他の実施形態では、溝256は、等しくない間隔で配置されてもよい。例えば、4個の溝が、各溝256が一方の隣接する溝256から60°、他方の隣接する溝256から120°離間するように配置されてもよい。これによって、カプラアセンブリ208が出口カプラ304に接続され得る向きの数をさらに制限する効果を有することができる。
【0050】
加えて、図示の実施形態では、溝256は、スパナレンチと係合するように構成されたスパナナット溝である。特に、各溝256は、流出カニューレ200の組み立て中にアダプタスリーブ210にトルクを加えるためのスパナレンチの脚又はスプラインを受け入れるように寸法決めされ、形状が決められている。このようにして、溝256は、血液ポンプアセンブリ100の組み立てにおいて、複数の機能を提供し、これらの機能を果たす追加のコンポーネントの必要性を低減し、それによって、流出カニューレ200の部品のサイズ、数、及び、コストを低減する。他の実施態様において、溝256は、スパナナット溝以外の溝として構成されてもよい。
【0051】
複数のスプライン336は、出口カプラスリーブ310の半径方向内面320上、具体的には半径方向内面320の第1の軸方向部分322に沿って位置し、複数の溝256と嵌合結合するように構成されている。
図13に示すように、各スプライン336は、半径方向内面320から半径方向内方に突出し、半径方向内面320の第2の軸方向部分324よりもさらに半径方向内方に延びている。
【0052】
溝256と同様に、複数のスプライン336は、複数の溝256の円周方向間隔に対応する距離で、スリーブ310の半径方向内面320に円周方向に間隔をあけて配置される。図示の実施形態は、隣接するスプライン336に対して90°の間隔で離間した4個のスプライン336を含む。他の実施形態では、出口カプラ304は、例えば、少なくとも1個のスプライン、少なくとも2個のスプライン、少なくとも4個のスプライン、少なくとも10個のスプライン、1~100個の範囲のスプライン、1~50個の範囲のスプライン、1~40個の範囲のスプライン、1~30個の範囲のスプライン、1~20個の範囲のスプライン、1~10個の範囲のスプライン、1~5個の範囲のスプライン、2~20個の範囲のスプライン、2~10個の範囲のスプライン、及び、2~5個の範囲のスプラインを含む、4個のスプラインより多い又は少ないスプラインを含んでよいが、これらに限定されない。さらに、スプライン336は、出口カプラスリーブ310の半径方向内面320に等間隔で配置されていると図示及び説明されているが、他の実施形態では、スプライン336は、等しくない間隔で配置されてもよい。例えば、4個のスプラインは、各スプライン336が一方の隣接するスプライン336から60°、他方の隣接するスプライン336から120°離間するように配置されてもよい。これによって、カプラアセンブリ208が出口カプラ304に接続され得る向きの数をさらに制限する効果を有することができる。
【0053】
各スプライン336は、溝256の1個と相補的な大きさ及び形状を有する。図示の実施態様において、各スプライン336は、弓形又は丸みを帯びた断面を有し、各溝256は、相補的な弓形又は丸みを帯びた断面を有する。スプライン336及び溝256の弓形形状は、血液ポンプアセンブリ100の組み立て中及び/又は組み立て後(即ち手術後)に部品に与えられる回転力に起因する部品間(例えばアダプタスリーブ210と出口カプラ304の間)の剪断力を低減することを容易にする。加えて、スプライン336及び溝256が円周方向に間隔を置いて配置されるため、血液ポンプアセンブリ100の部品に与えられる回転力は、アダプタスリーブ210及び出口カプラ304を再センタリング又は再整列させる効果を有する。
【0054】
複数のスプライン336は、出口カプラ304と一体に構成されてよい。つまり、スプライン336は、出口カプラ304の製造中に(例えば、成形、機械加工、フライス加工などによって)、出口カプラ304と一体的に製造及び形成されてもよい。あるいは、複数のスプライン336は、出口カプラスリーブ310内に受け入れられるような寸法及び形状のインサート(例えばリング状インサート)上に形成されてもよい。
【0055】
図示の実施形態では、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、ポンプハウジング300に対する流出カニューレ200の長手方向軸214を中心とするいかなる回転も実質的に禁止するように構成される。例えば、溝256が、スプライン336が溝256に挿入されるのに十分なだけのクリアランスを提供するように、各溝256は、各スプライン336の円弧長又は円周幅と実質的に等しいが、それより僅かに大きい円弧長又は円周幅を有する。スプライン336が溝256に挿入されると、スプライン336が溝256と横方向に結合するため、ポンプハウジング300に対する流出カニューレ200の回転が実質的に禁止される。例えば、図示の実施形態におけるスプライン336及び溝256は、流出カニューレ200とポンプハウジング300の相対回転を2°未満、1°未満、又は更には0.5°未満に制限してよい。他の実施形態では、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、ポンプハウジング300に対する流出カニューレ200の制限された回転を許容するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、ポンプハウジング300に対する流出カニューレ200(具体的にはアダプタスリーブ210及び流体導管206)の回転を、最大10°(中心から±5°)、最大20°(中心から±10°)、最大30°(中心から±15°)、最大40°(中心から±20°)、最大50°(中心から±25°)、最大60°(中心から±30°)、さらには、最大90°(中心から±45°)まで許容するように構成されてもよい。
例として、ポンプハウジング300に対する流出カニューレ200の所望の制御された回転量を達成するために、溝256の円弧長又は円周幅は、適切な量だけ、スプライン336の円弧長又は円周幅よりも大きいサイズにされてもよい。このような実施形態では、スクリューリング212は、出口カプラ304に対して軸方向及び回転方向に固定されたままであり、一方、アダプタスリーブ210及び流体導管206は、限られた量だけ回転することが許容される。ポンプハウジング300に対する流出カニューレ200の制限された回転を可能にすることによって、例えば、患者の動きに適応するために、流出カニューレ200に対してさらなる術後の歪み緩和を提供することができる。
【0056】
この実施形態では、軸方向ロックの第1及び第2のコンポーネント502,504は、相補的なねじ山を含む。具体的には、軸方向ロック500の第1のコンポーネント502は、スクリューリングスリーブ228の半径方向内面232上にねじ山242を含み、軸方向ロック500の第2のコンポーネント504は、出口カプラスリーブ310の半径方向外面318上にねじ山330を含む。
【0057】
上述のように、回転防止機構400及び軸方向ロック500のコンポーネントは、流出カニューレ200をハウジング出口302に挿入中に、軸方向ロック500のコンポーネントが互いに結合するよりも前に回転防止機構400のコンポーネントが互いに結合するように構成される。これは、図示の実施形態では、溝256、スプライン336、及び、ねじ山242,330の位置決めに基づいて実現される。即ち、出口カプラスリーブ310の半径方向外面318上のねじ山330に対するスプライン336の軸方向の間隔、及び、スクリューリングスリーブ228の半径方向内面232上のねじ山242に対する溝256の軸方向の間隔によって、スプライン336と溝256が、互いに結合し、ねじ山242,330が互いに結合する前に回転防止機構400を形成することが可能になる。例えば、
図18及び
図19に示すように、流出カニューレ200がハウジング出口302に挿入される際、出口カプラ304のスプライン336は、ねじ山242,330が互いに結合する前に、最初にアダプタスリーブ210の溝256に結合する。さらに、スプライン336と溝256が軸方向に整列していない場合(例えば、
図16に示されるように)には、スプライン336は、アダプタスリーブ210の第1の端部216に結合し、流出カニューレ200のハウジング出口302へのさらなる挿入を禁止する。アダプタスリーブ210の第1の端部216と出口カプラ304のスプライン336との間のこの結合は、例えば、アダプタスリーブ210が出口カプラ304に部分的に挿入され、スプライン336及び溝256が軸方向に整列していないことを示すことによって、オペレータに有用な触覚フィードバックを提供することができる。
【0058】
スプライン336が溝256と軸方向に整列されると(例えば
図17に示されるように)、流出カニューレ200がハウジング出口302へさらに挿入され、スプライン336が溝256内に受け入れられ、溝256に結合する。
図19に示すように、スプライン336は、ねじ山242,330が互いに係合する前に、溝256に結合する。ハウジング出口302内へ流出カニューレ200を挿入し続けることによって、ねじ山242,330が互いに結合する。ねじ山242,330が最初に互いに結合すると、ねじ山242,330は、ポンプハウジング300に対して流出カニューレ200が軸方向移動し続けることを禁止する。ねじ山242,330のこの最初の結合は、例えば、流出カニューレ200とポンプハウジング300との相対的な軸方向位置の指標を提供し、スクリューリング212を回転させることができるようにねじ山242,330が結合されていることを示すことによって、オペレータに有用な触覚フィードバックを提供する。スクリューリング212を回転させることにより、ねじ山242,330が互いに結合でき、流出カニューレ200をハウジング出口302内にさらに挿入し、環状シール226をシール面326と結合させる機械的利点が提供される。図示の実施例では、スクリューリング212を回転させ続けると、スクリューリング212上の戻り止めタブ246と出口カプラ304のカラー308の溝316とが結合する。戻り止めタブ246とカラー308の溝との結合は、流出カニューレ200がハウジング出口302内に十分な深さまで挿入されたことを示す触覚フィードバックをオペレータに提供する。
【0059】
図示の実施形態では、環状シール226は、スプライン336が溝256に結合した後に(即ち回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404が互いに結合した後に)、環状シール226がシール面326に結合するように、溝256及びスプライン336に対して配置されている。さらに、図示の実施形態では、環状シール226は、ねじ山242,330が互いに結合する前に(即ち軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502,504が互いに結合する前に)、環状シール226がシール面326に結合するように、ねじ山242,330及びシール面326に対して配置されている。他の実施形態では、環状シール226は、ねじ山242,330が互いに結合した後(即ち軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502、504が互いに結合した後)にのみ、環状シール226がシール面326に結合するように、ねじ山242,330及びシール面326に対して配置されてもよい。
【0060】
回転防止機構400のコンポーネントは、スプライン及び溝として図示され説明されるが、本明細書に記載されるスプライン及び溝に限定されないことを理解されたい。
特に、回転防止機構400のコンポーネントは、回転防止機構400が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切な要素を含んでよく、当該任意の適切な要素は、例えば、タブ、スロット、突起、キー付き、バヨネット式接続、戻り止め、鋸歯、凹凸、細溝、歯(例えば、ハース(Hirth)ジョイント)、クラッチ機構、及び、これらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用されるように、用語「クラッチ機構」は、例えば、アダプタスリーブ210及び出口カプラ304の一方又は両方に対する引張荷重の結果として、アダプタスリーブ210及び出口カプラ304の一方又は両方に半径方向圧縮力を生じさせる要素(例えばプッシュツーコネクトフィッティング)と、軸方向ロック500の結合の結果として、アダプタスリーブ210及び出口カプラ304の一方又は両方に半径方向圧縮力及び/又は軸方向圧縮力を生じさせる要素(例えば嵌合界面における十分な摩擦を伴うボルト締め接続)と、を含むが、これらに限定されない。
【0061】
同様に、軸方向ロック500のコンポーネントは、相補的なねじ山として図示され説明されるが、軸方向ロック500のコンポーネントは、本明細書で説明されるねじ山に限定されないことを理解されたい。特に、軸方向ロック500のコンポーネントは、本明細書に記載されるように軸方向ロック500が機能することを可能にする任意の適切な要素を含んでもよく、当該任意の適切な要素は、例えば、スナップ嵌め要素、圧入要素、バヨネット式接続、戻り止め、カム及び溝接続、爪及びフランジ接続、プッシュツーコネクトフィッティング、及び、これらの組み合わせを含むが、これに限定されない。
【0062】
さらに、回転防止機構400の第1のコンポーネント402は、アダプタスリーブ210の一部として図示され説明されており、回転防止機構400の第2のコンポーネント404は、出口カプラ304の一部として図示され説明されているが、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、他の実施形態では逆にされてもよいことを理解されたい。即ち、アダプタスリーブ210は、回転防止機構400の第2のコンポーネント404を含んでもよく、出口カプラ304は、回転防止機構400の第1のコンポーネント402を含んでもよい。さらに、他の実施形態では、回転防止機構400の第1及び第2のコンポーネント402,404は、アダプタスリーブ210及び出口カプラ304以外の流出カニューレ200及びポンプハウジング300の部品上に配置されてもよい。同様に、軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502,504は、他の実施形態では逆にされてもよい。即ち、スクリューリング212は、軸方向ロック500の第2のコンポーネント504を含んでもよく、出口カプラ304は、軸方向ロックの第1のコンポーネント502を含んでもよい。さらに他の実施形態では、軸方向ロック500の第1及び第2のコンポーネント502,504は、スクリューリング212及び出口カプラ304以外の流出カニューレ200及びポンプハウジング300の部品上に配置されてもよい。
【0063】
図20は、埋込型血液ポンプ(例えば血液ポンプアセンブリ100)を組み立てる方法2000の一実施形態を示すフロー図である。図示の実施形態では、方法2000は、回転防止機構の第1のコンポーネント(例えば回転防止機構400の第1のコンポーネント402)と、軸方向ロックの第1のコンポーネント(例えば軸方向ロック500の第1のコンポーネント502)と、を含むカプラアセンブリ(例えばカプラアセンブリ208)を含む流出カニューレ(例えば流出カニューレ200)を提供するステップ2002を含む。方法2000は、また、入口と、出口と、入口から出口まで延在する流路と、を画定するハウジング(例えば血液ポンプハウジング300)を含む血液ポンプ(例えば血液ポンプ102)を提供するステップ2004を含み、ハウジングは、回転防止機構の第2のコンポーネント(例えば回転防止機構400の第2のコンポーネント402)と、軸方向ロックの第2のコンポーネント(例えば軸方向ロック500の第2のコンポーネント504)と、を含む出口カプラ(例えば出口カプラ304)を含む。方法2000は、さらに、回転防止機構の第1のコンポーネントを回転防止機構の第2のコンポーネントに整列させるステップ2006と、回転防止機構の第1及び第2のコンポーネントが軸方向ロックの第1及び第2のコンポーネントよりも前に互いに結合するように、流出カニューレをハウジングの出口に挿入するステップ2008と、を含む。回転防止機構は、ポンプハウジングに対する流出カニューレの回転を制限する。方法2000は、さらに、軸方向ロックがポンプハウジングに対する流出カニューレの軸方向移動を禁止するように、軸方向ロックの第1のコンポーネントを軸方向ロックの第2のコンポーネントと結合させるステップ2010を含む。
【0064】
実施例の方法の特定のステップには番号が付されているが、そのような番号付けはそのステップが列挙された順序で実行されなければならないことを示すものではない。従って、そのような順序が必要であるという記載がない限り、特定のステップは、提示される順序どおりに実行される必要はない。ステップは、列挙された順序で実行されてもよいし、又は別の適切な順序で実行されてもよい。
【0065】
本明細書に記載されるように、本開示の埋込型血液ポンプアセンブリは、従来のVAD設計と比較していくつかの利点を提供する。例えば、本明細書に開示される埋込型血液ポンプアセンブリの実施形態は、回転防止機構及び軸方向ロックを協働して形成する出口カプラ及び流出カニューレを含む。回転防止機構及び軸方向ロックのそれぞれのコンポーネントは、血液ポンプアセンブリの配置中、及び、血液ポンプアセンブリの配置後(即ち手術後)に、流出カニューレが過剰な回転又はねじれを受ける危険性を低減する特定の順序での血液ポンプアセンブリの組み立てを可能にするように、配置される。例えば、回転防止機構のコンポーネントは、軸方向ロックのコンポーネントよりも前に互いに結合するように構成されており、それによって、確実に、軸方向ロックが結合される前に回転防止機構のコンポーネントが結合される(及びそれによって回転が禁止される)。さらに、いくつかの実施形態では、回転防止機構は、流出アセンブリと出口カプラの接続を別個の数の向きにおいてのみ許容し、それによって、組立て中におけるポンプハウジングに対する流出カニューレの回転量を制限する。さらに、いくつかの実施形態では、回転防止機構は、回転防止機能を提供するために、他の目的のために使用される流出カニューレの既存の構造的特徴(例えば流出カニューレの組み立てに使用されるスパナレンチ溝)を利用し、それによって、流出カニューレの追加の又は余分な部品の必要性を低減し、流出カニューレのサイズ及びコストを低減する。
【0066】
本明細書に開示された実施形態及び例は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態及び例は本開示の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。従って、例示的な実施形態及び例に対して多数の変更を行うことができ、特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の構成を考案することができることを理解されたい。従って、本出願は、これらの実施形態及びそれらの均等物の変更及び変形を包含することが意図される。
【0067】
本開示の特許範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に想起される他の例を含むことができる。このような他の例が、特許請求の範囲に記載のものと文言的に相違ない構造的要素を有する場合、又は、特許請求の範囲に記載のものと文言的にそれほど相違ない同等の構造的要素を含む場合には、他の例は特許請求の範囲内であるものとする。
本特許出願時の特許請求の範囲に記載の内容を以下に列挙しておく。
(項目1)
埋込型血液ポンプアセンブリであって、
入口と、出口と、前記入口から前記出口まで延在する流路と、を画定するハウジングであって、出口カプラを備える前記ハウジングと、
前記流路内に位置すると共に、前記入口から前記出口に血液を送り出すように動作可能なロータと、
前記ハウジング内に位置すると共に、前記ロータを駆動するように動作可能なステータと、
前記出口カプラとの取外し可能な機械的接続のために構成されたカプラアセンブリを備える流出カニューレと、を備え、
前記カプラアセンブリは、回転防止機構の第1のコンポーネントと、軸方向ロックの第1のコンポーネントと、を備え、
前記出口カプラは、前記回転防止機構の第2のコンポーネントと、前記軸方向ロックの第2のコンポーネントと、を備え、
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、前記流出カニューレを前記ハウジングの前記出口に挿入する間に前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントよりも前に、互いに結合するように位置する、埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目2)
前記回転防止機構の前記第2のコンポーネントは、前記出口カプラの半径方向内面に位置する、長手方向に沿って延在する複数のスプラインを備え、
前記複数のスプラインは、前記出口カプラの前記半径方向内面に間隔をあけて配置される、項目1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目3)
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントは、前記カプラアセンブリのスリーブの半径方向外面に画定された、長手方向に沿って延在する複数の溝を備え、
前記複数の溝は、前記複数のスプラインの円周方向の間隔に対応する距離で、前記スリーブの前記半径方向外面に間隔をあけて配置される、項目2に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目4)
前記複数の溝は、スパナレンチに結合するように構成されたスパナナット溝である、項目3に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目5)
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、結合後に、前記出口カプラに対する前記流出カニューレの制限された回転を許容する、項目1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目6)
前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、相補的なねじ山を備える、項目1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目7)
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントが軸方向に整列していない場合に、前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントは、前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントの結合を禁止する、項目1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目8)
前記流出カニューレがいくつかの別個の向きのうちの1つで前記出口カプラに選択的に連結可能であるように、前記回転防止機構の前記第1のコンポーネント及び第2のコンポーネントは互いに対して配置される、項目1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目9)
前記いくつかの別個の向きは、少なくとも4個である、項目1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目10)
前記カプラアセンブリは、環状のシールをさらに備え、
前記出口カプラは、前記流出カニューレを前記ハウジングの前記出口に挿入する間に前記シールに密封結合するシール面を含む、項目1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目11)
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントが互いに結合した後に、前記シールが前記シール面に結合するように、前記シールは位置する、項目10に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目12)
前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントが互いに結合する前に、前記シールが前記シール面に結合するように、前記シールは位置する、項目11に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目13)
前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントが互いに結合した後に、前記シールが前記シール面に結合するように、前記シールは位置する、項目11に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目14)
前記流出カニューレは、流入端と流出端とを有すると共に、前記流入端と前記流出端との間に延在する可撓性の流体導管を備え、
前記カプラアセンブリは、前記流出カニューレの前記流入端において、前記流体導管に連結される、項目1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目15)
前記カプラアセンブリは、
前記ハウジングの前記出口に受け入れられるサイズの第1の端部と、前記流出カニューレの流体導管内に配置される第2の端部と、を有するアダプタスリーブであって、前記アダプタスリーブの前記第1の端部は、前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントを含む、前記アダプタスリーブと、
前記アダプタスリーブに回転可能に連結されると共に、前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントを含むスクリューリングと、
を備える、項目1に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目16)
埋込型血液ポンプアセンブリであって、
入口と、出口と、前記入口から前記出口まで延在する流路と、を画定するハウジングであって、出口カプラを備える前記ハウジングと、
前記流路内に位置すると共に、前記入口から前記出口に血液を送り出すように動作可能なロータと、
前記ハウジング内に位置すると共に、前記ロータを駆動するように動作可能なステータと、
前記出口カプラとの取外し可能な機械的接続のために構成されたカプラアセンブリを備える流出カニューレと、を備え、
前記カプラアセンブリは、
(i)長手方向に沿って延在する複数の溝と(ii)前記長手方向に沿って延在する複数のスプラインとのうちの一方を備えるアダプタスリーブと、
前記アダプタスリーブに回転可能に連結されると共に、第1のねじ山を備えるスクリューリングと、を備え、
前記出口カプラは、
(i)前記長手方向に沿って延在する前記複数の溝と(ii)前記長手方向に沿って延在する前記複数のスプラインとのうちの他方と、
前記第1のねじ山にねじ結合するように構成された第2のねじ山と、を備え、
前記複数のスプラインは、前記流出カニューレと前記ハウジングとの相対回転を禁止するために、前記複数の溝に嵌合結合するように構成され、
前記複数の溝と前記複数のスプラインとは、前記流出カニューレを前記ハウジングの前記出口に挿入する間に前記第1のねじ山と前記第2のねじ山よりも前に、互いに結合するように位置する、埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目17)
前記複数の溝と前記複数のスプラインが軸方向に整列していない場合に、前記複数の溝及び前記複数のスプラインは、前記第1のねじ山と前記第2のねじ山の結合を禁止する、項目16に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目18)
前記流出カニューレがいくつかの別個の向きのうちの1つで前記出口カプラに選択的に連結可能であるように、前記複数の溝と前記複数のスプラインは互いに対して配置される、項目16に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目19)
前記複数の溝は、スパナレンチに結合するように構成されたスパナナット溝である、項目16に記載の埋込型血液ポンプアセンブリ。
(項目20)
埋込型血液ポンプを製造する方法であって、
回転防止機構の第1のコンポーネントと軸方向ロックの第1のコンポーネントとを含む、カプラアセンブリを含む流出カニューレを提供することと、
入口と、出口と、前記入口から前記出口まで延在する流路と、を画定するハウジングを含む血液ポンプを提供することであって、前記ハウジングは、前記回転防止機構の第2のコンポーネントと前記軸方向ロックの第2のコンポーネントとを含む、出口カプラを含む、前記血液ポンプを提供することと、
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントを前記回転防止機構の前記第2のコンポーネントに整列させることと、
前記回転防止機構の前記第1のコンポーネントと前記第2のコンポーネントが、前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネント及び前記第2のコンポーネントよりも前に、互いに結合するように、前記流出カニューレを前記ハウジングの前記出口に挿入することであって、前記回転防止機構は、前記ハウジングに対する前記流出カニューレの回転を制限する、前記挿入することと、
前記軸方向ロックが前記ハウジングに対する前記流出カニューレの軸方向の移動を禁止するように、前記軸方向ロックの前記第1のコンポーネントを前記軸方向ロックの前記第2のコンポーネントに結合させることと、
を備える、方法。