(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】内部ゼロ点調整方法を伴うコンパクトプリズム式光学視野
(51)【国際特許分類】
G02B 23/02 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
G02B23/02
(21)【出願番号】P 2022529042
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 CA2020000109
(87)【国際公開番号】W WO2021097553
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-13
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520130661
【氏名又は名称】レイセオン カナダ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,グレゴリー,マーク
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0002856(US,A1)
【文献】米国特許第09494787(US,B1)
【文献】特開平01-150111(JP,A)
【文献】米国特許第10429150(US,B1)
【文献】実開平02-003512(JP,U)
【文献】中国実用新案第208421404(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/00 - 23/22
F41G 1/00 - 11/00
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系であって:
当該光学系を通して光を方向付けるように構成された開口絞り;
前記開口絞りからの光を受け、当該光学系を通して光を方向付けるように構成された反転プリズムアセンブリ;
前記反転プリズムアセンブリからの光を受け、当該光学系を通して当該光学系のオペレータへと光を方向付けるように構成された視野絞り;
物体からの光を受け、前記開口絞りを通して前記反転プリズムアセンブリに光を方向付けるように構成された少なくとも1つの第1レンズであり、前記開口絞りの前方に配置された入射レンズと、前記開口絞りの後方に配置されたレンズとを含む第1レンズ;及び
前記反転プリズムアセンブリを移動させるように構成された機構であり、前記開口絞りに位置する回転点の周りに前記反転プリズムアセンブリを移動させるための前方回転アクチュエータと後方回転アクチュエータとをさらに含み、前記前方回転アクチュエータと前記後方回転アクチュエータとが前記開口絞りに回転中心を有する同心の球形表面である、機構;
を含み、
物体空間において衝撃点が識別され、当該光学系のアフォーカル空間において照準点が識別され、
前記アフォーカル空間において前記衝撃点と前記照準点が整合し、前記照準点が光軸と一致するように、前記反転プリズムアセンブリは前記開口絞りの中心の周りに旋回するように構成され、
前記反転プリズムアセンブリは、エアギャップによって分離された2つのプリズムを含む、
光学系。
【請求項2】
前記視野絞りから光を受け、当該光学系の前記オペレータへと光を方向付けるように構成された少なくとも1つの第2レンズをさらに備える、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2レンズは、前記視野絞りの後方に配置されたアイピースレンズを含む、請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記開口絞り、前記少なくとも1つの第1レンズ、前記反転プリズムアセンブリ、前記視野絞り及び前記少なくとも1つの第2レンズを支持するように構成された支持ハウジングをさらに備える、請求項2に記載の光学系。
【請求項5】
前記機構は、前記反転プリズムアセンブリの表面に係合するように構成された表面を有するプリズムマウントセルを含む、請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記プリズムマウントセルは、支持ハウジングに対して回転するように構成されている、請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記支持ハウジングは略円筒構造を含む、請求項4に記載の光学系。
【請求項8】
光学系の衝撃点と照準点とを整合させる方法であって:
入射レンズを通して開口絞りへと光を方向付けるステップ;
前記開口絞りからの光を反転プリズムアセンブリへと方向付けるステップ;
前記反転プリズムアセンブリからの光を、当該光学系のオペレータに光を向けるように構成された視野絞りへと方向付けるステップ;
アフォーカル空間で衝撃点と照準点とを整合させ、前記照準点が光軸と一致するように、前記開口絞りの中心の周りに前記反転プリズムアセンブリを旋回させるステップ;
を含み、
前記光学系が、物体からの光を受け、前記開口絞りを通して前記反転プリズムアセンブリに光を方向付けるように構成された少なくとも1つの第1レンズであり、前記開口絞りの前方に配置された入射レンズと、前記開口絞りの後方に配置されたレンズとを含む第1レンズを含み;
前記反転プリズムアセンブリは、エアギャップによって分離された2つのプリズムを含み、
前記反転プリズムアセンブリを旋回させるステップは、前記反転プリズムアセンブリを移動させるように構成された機構によって達成され、
前記機構は、前記開口絞りに位置する回転点の周りに前記反転プリズムアセンブリを移動させるための前方回転アクチュエータと後方回転アクチュエータとをさらに含み、前記前方回転アクチュエータと前記後方回転アクチュエータとが前記開口絞りに回転中心を有する同心の球形表面である、
方法。
【請求項9】
物体空間において前記衝撃点が認識され、当該光学系のアフォーカル空間において前記照準点が認識される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
物体からの光を前記開口絞りを通して前記反転プリズムアセンブリへと方向付けるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記視野絞りからの光を当該光学系の前記オペレータへと方向付けるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記機構が、前記反転プリズムアセンブリの表面に係合するように構成された表面を有するプリズムマウントセルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記プリズムマウントセルが支持ハウジングに対して回転するように構成されている、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般に、火器に使用される視野拡大器などの、武器に使用される付属品に関し、より詳細には、内部ゼロ点調整方法を有するコンパクトなプリズム式光学視野付属品に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
銃器には、スコープ、電子照準器、拡大デバイス、暗視デバイスなどの付属品が装備されていることが多い。これらのタイプの付属品は、典型的には、火器に取り付けられる。
【0003】
ボアサイトゼロ点調整(Boresight zeroing)は、兵器システムの衝撃点(point-of-impact)を照準装置の照準点(point-of-arm)に整合させるために必要な光照準装置の高さと方位角(windage)を確立する。外部ゼロ点調整とは、光学的照準装置の光学系の外部で、光学的照準の縦軸又は光軸を傾けることによって所要の整合を達成する機械的手段をいう。内部ゼロ点調整とは、対物レンズの焦点面に配置されたレチクルパターンに対して視野を走査することにより必要な整合を達成するために、光照準装置の内部で1つ以上の光学素子を移動させることをいう。1つの既知のアプローチでは、光学的照準装置は、ゼロ点調整を達成するために対物レンズの焦点面についてプリズムを傾けるように構成された画像反転プリズムを有する。或いは、光学照準装置は、レンズ群を傾斜させてゼロ点調整を達成することにより、画像反転レンズ群を組み込む。別のアプローチでは、ゼロ点調整を達成するために、対物レンズの節点(nodal point)について1つの対物レンズに続く光学的列の傾斜を指定する。さらに別のアプローチでは、対物レンズの傾斜又は変位を必要とする。要約すると、従来の解決法は、視野内の光学素子又は素子群の傾斜又は変位によって、或いは外部手段により視野の光軸を傾斜させることによって、照準ゼロ点調整を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様は、光学系を通して光を方向付けるように構成された開口絞りと、開口絞りからの光を受け、光学系を通して光を方向付けるように構成された反転プリズムアセンブリと、反転プリズムアセンブリからの光を受け、光学系を通して光を光学系のオペレータに方向付けるように構成された視野絞りとを含む光学系に関する。衝撃点が物体空間で識別され、照準点が光学系のアフォーカル空間で識別される。反転プリズムアセンブリは、アフォーカル空間内の衝撃点及び照準点の位置合わせを行うために、開口絞りの中心を中心として旋回されるように構成され、照準点が光軸と一致するようにする。
【0005】
光学系の実施形態は、物体から光を受け取り、開口絞りを通って、反転プリズムアセンブリに光を向けるように構成された少なくとも1つの第1レンズをさらに含んでもよい。少なくとも1つの第1レンズは、開口絞りの前方に位置決めされた入射レンズと、開口絞りの後方に位置決めされたレンズとをさらに含んでもよい。光学系はさらに、視野絞りから光を受け取り、光学系のオペレータに光を向けるように構成された少なくとも1つの第2レンズを含んでもよい。少なくとも1つの第2レンズは、視野絞りの後ろに配置されたアイピースレンズを含んでもよい。光学系はさらに、開口絞り、少なくとも1つの第1レンズ、反転プリズムアセンブリ、視野絞り及び少なくとも1つの第2レンズを支持するように構成された支持ハウジングを含んでもよい。光学系は、反転プリズムアセンブリを移動させるように構成された機構をさらに含んでもよい。その機構は、反転プリズムアセンブリの表面に係合するように構成された表面を有するプリズムマウントセルを含んでもよい。プリズムマウントセルは、ハウジングに対して旋回するように構成することができる。この機構は、さらに、前方回転アクチュエータ及び後方回転アクチュエータを含み、開口絞りに位置する回転点を中心として反転プリズムアセンブリを移動させることができる。反転プリズムアセンブリは、エアギャップによって分離された2つのプリズムを含んでもよい。支持ハウジングは、ほぼ円筒形の構造を含むことができる。
【0006】
本開示の別の態様は、光学系の衝撃点と照準点とを位置合わせする方法に関する。一実施形態では、この方法は、光を開口絞りを通して方向付けるステップと、開口絞りからの光を反転プリズムアセンブリに方向づけるステップと、光を光学系のオペレータに方向づけるように構成された視野絞りを通して、反転プリズムアセンブリからの光を方向づけるステップと、反転プリズムアセンブリを開口絞りの中心の周りで旋回させて、光軸と一致するように、衝撃点及び照準点の位置合わせを行うステップとを含む。
【0007】
本方法の実施形態は、さらに、物体空間における衝撃点及び光学系のアフォーカル空間における照準点を認識することを含んでもよい。この方法はさらに、物体からの光を開口絞りを通して反転プリズムアセンブリに方向づけるステップを含んでもよい。この方法はさらに、視野絞りからの光を光学系のオペレータに方向づけるステップを含んでもよい。反転プリズムアセンブリを旋回させることは、反転プリズムアセンブリを移動させるように構成された機構によって達成することができる。その機構は、反転プリズムアセンブリの表面に係合するように構成された表面を有するプリズムマウントセルを含んでもよい。プリズムマウントセルは、ハウジングに対して回転するように構成することができる。この機構は、さらに、前方回転アクチュエータ及び後方回転アクチュエータを含み、開口絞りに位置する回転点を中心として反転プリズムアセンブリを移動させることができる。
【0008】
少なくとも1つの実施形態の種々の態様は、添付の図面を参照して後述されるが、これらは、縮尺通りに描かれることを意図されていない。図面、詳細な説明又はクレームの技術的特徴の後に引用符号が付されている場合、引用符号は、図面、詳細な説明及びクレームの理解を容易にすることのみを目的として含まれている。したがって、引用符号も引用符号の不存在も、クレーム要素の範囲に限定的な効果を及ぼすことを意図したものではない。図において、種々の図に示されている同一又はほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表されている。明瞭にするために、全ての構成要素が全ての図においてラベル付けされているわけではない。図面は、説明及び説明のために提供されるものであり、本発明の限界の定義として意図されたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】中立位置における反転プリズムを示す、本開示の実施形態の光学系の概略図である。
【
図2】開口絞りの中心について旋回された反転プリズムを示す、
図1の光学系の概略図である。
【
図3】中立位置における反転プリズムを示す、本開示の別の実施形態の光学系の概略図である。
【
図4】開口絞りの中心について旋回された反転プリズムを示す、
図3の光学系の概略図である。
【
図5】本開示の別の実施形態の光学系の概略図である。
【
図6】変調伝達関数(0.5サイクル/arcmin)対焦点シフト(ジオプトリー)を示すグラフである。
【
図7】中立位置における反転プリズムを示す、本開示の実施形態の光学アセンブリの断面図である。
【
図8】開口絞りの中心について旋回された反転プリズムを示す、
図7の光学アセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態は、火器に取り付けるように構成された付属品に関する。付属品には、スコープ、アイアンサイト、戦術ライト、レーザ照準モジュール、暗視装置、反射照準器、フォアグリップ、バイポッド、スリング及び銃剣が含まれるが、これらに限定されない。現在、付属品拡大鏡及び類似の光学装置は、拡大されていない視野が他の方法では使用できない距離で目標物を観察及び係合する射撃手の能力を高めるために使用されている。これらの光学デバイスは、それらの使用に関連する問題を導入する。
【0011】
本明細書に開示された光学系の実施形態は、内部プリズム式照準ゼロ化調整機構を有する光学照準装置の光学設計を対象とする。光学系は、光学的性能を維持しつつ、光学的照準装置の機械的長さ及び直径を最小化する。光学的照準装置をゼロ化する機構は、1)射出瞳を光軸から変位させて、それにより視野に対するオペレータの眼の位置を安定させるように、2)光学的にビニエット(vignetting)をかけることなく視野の変化に適応するのに必要な透明な開口を最小限にするように、そして3)像反転プリズムの軸方向位置に柔軟性を与えるように、支持される。
【0012】
例えば、ライフル銃の射撃において、一定の精度は、オペレータが一定の頬部密接、即ち、ライフルストック上の射撃者の顔の一定の位置、及び、その結果、射出瞳に対する射撃者の目の位置を維持することを必要とする。射出瞳は、頬部密接及び目の位置を維持するようにゼロ化調整の下で固定されたままであることが望ましい。本明細書で提案されているもの以外の手段によるプリズム又はレンズ群の調整は、対物レンズとアイピースレンズとの間の結像空間における光線の角度変位を生じ、その結果、射出瞳を画定する開口絞り共役の線形変位を生じる。この変位は、照準に対して横方向又は横断方向であり、2又は3ミリメートルを超えてもよく、これは、視界の倍率に依存して、射出瞳サイズのかなりの部分である。外部ゼロ化の方法は、同様に、外部ゼロ化が、射出瞳位置から長手方向に移動される傾斜軸を中心として、視界全体を機械的に回転させるので、外部ゼロ化の方法は、射出瞳を移動させることに留意されたい。
【0013】
結像空間における光線の角度変位は、アイピースレンズの開口部上の光線束の直線的な横方向変位をもたらす。従って、アイピースレンズのクリアアパーチャは、この変位を収容するのに十分な大きさでなければならない。そうでなければ、いくつかの光線は、透明な開口部を越えて物理的に停止することがある。これは、ビニエットと呼ばれる現象である。ビニエッティングは、オペレータの視野にわたってオペレータによって観察される輝度の変動を生じさせ、望ましくない。本明細書で提案された以外の手段による照準ゼロ化は、20%を超えるビニエット形成をもたらす可能性がある。この大きさのビニエットなしで光線束の変位に適応するために、クリアアパーチャ直径を少なくとも32%増加させた。これは、レンズの質量を著しく増加させ、射撃者に提示される半径方向のフットプリントを増加させる可能性がある。そして、設計のトレードオフが、様々な制限の間で行われる。
【0014】
画像反転プリズムが対物レンズの焦点面に位置決めされるという要件は、照明ゼロ化のために焦点面の周りのプリズム旋回を指定するような設計において、プリズムの軸方向位置に関する設計上の制約を導入する。より具体的には、画像反転プリズムの一方の反射面にレチクルパターン又は視野絞りを組み込んだ設計は、レチクル面を対物レンズの焦点面と一致させなければならないため、軸方向に制約される。プリズムの軸方向位置に柔軟性を持たせることは、例えば、他の機能要素を収容し、プリズムの反射面上の光線のフットプリントを含むプリズムを通る光路を考慮してプリズムの大きさを最小化し、また、強制されたゼロ化調整の関数としてどのように変化するかを考慮して、プリズムの大きさを最小化するために望ましい。
【0015】
上述したように、従来の解決策は、光学素子、光学素子群、又は視界自体の傾斜又は変位によって、照準ゼロ化を達成する。これらの解決策は、結果的に生じる、上述の問題の1つ以上によって限界がある。
【0016】
本明細書に開示されている光学設計及びゼロ点調整機構は、光軸上の開口絞りの位置と一致する点を中心として画像反転プリズムを旋回させることによって、上述の問題を解決する。この概念は、
図1及び
図2に示すように、光学的に減少された(空気等価モデル)において簡略化されている。図示のように、光学系は、一般に、光軸Aに沿って延在する100で示されている。光は、衝撃点104を含む複数の視野角に沿って、開口絞り(aperture stop)102を介して光学系100に入射する。その後、光は反転プリズム106に入り、反転プリズム106によって操作され、視野絞り(field stop)110に向かって伝搬する。一実施形態では、単純化されたモデルは、一般化された数学的に等価な画像反転プリズム106を組み込む。すなわち、光線は、光軸Aに対する光線の変位及び角度が符号反転されるように、反転プリズム106を通ってトレースされる。このような光線変換は、一般に行列ベースの線形代数式で数学的に扱われ、光学設計ソフトウェアによってモデル化することができる。
【0017】
光学系では、それぞれの場角の一次光線又は主光線は、入射瞳の中心に向けられ、開口絞りの中心を通るトレースとなる。
図1において、線群は主光線を表し、これは開口絞り102の中心から、画像反転プリズム106を通って、視野絞り110に向かってトレースされる。
図1に示す実線は、光軸A及び照準点108に一致する視野角を表し、点線は視野限界を表し、一点鎖線は、視野絞り110で終端する視野角を表す。
図1は、極端な照準点/衝撃点非整合の例示的な例であり、衝撃点104は視野の端部に存在し、一方、照準点108は、視野絞り110の中心に位置するレチクルパターンと一致する光軸A上に存在する。
【0018】
本開示の実施形態では、画像反転プリズム106は、
図2に示すように、照準ゼロ点調整を行うために、開口絞り102の中心について旋回される。上述の旋回の結果として、主光線は、それらが視野絞り110に近づく際に角度がシフトされる。その効果は、視野絞りを横切って視野角度を走査し、衝撃点104を照準点108に整合させる。その方法は、両方のフィールド角度が光軸Aと一致する。
図3及び
図4を参照すると、光学系は、一般に、光軸Bに沿って延在する300で示されている。
図3及び
図4は、対物レンズ301及びアイピースレンズ309をそれぞれ表す近軸レンズを用いて、説明のために誇張され簡略化された、アフォーカル(afocal)光学設計における提案されたゼロ点調整方法の概念的表現を示す。物体から反射された光は、対物レンズ301と開口絞り302を通って、複数の視野角に沿って光学系300に入射する。開口絞り302からの光は、反転プリズム304に入り、反転プリズム304によって操作され、視野絞り306に向かって伝搬する。衝撃点308を表す主光線を含む視野絞り306からの光は、アイピースレンズ309を伝播する。アイピースレンズ309は、射出瞳312に向かってそれぞれの視野角度の光をコリメート(平行に)する。
図3は、
図1に示される公称構成に対応する。
図4は、
図2に示されている場合を示しており、開口絞り302の中心について画像反転プリズム304を旋回させると、必要な照準ゼロ点補正が行われる。
【0019】
図3及び
図4において、光線は、一次光線又は主光線と、二次光線又は周辺光線とを含み、後者は、入射瞳(図示せず)の限界に向けられ、対物レンズ301に続き、開口絞り302の限界を通過する。4つの視野角が表されている。開口絞り302は、出口瞳312においてアイピースレンズ309によって結像され、このことは、主光線及び周辺光線の収束によって明瞭に示される。射出瞳312は、オペレータが目を置いてダウンレンジオブジェクトの拡大虚像を見る位置である。視野絞り306は、レチクルパターンが配置され得る、対物レンズ301の結像面に配置される。レチクルパターンの中心は、オペレータの視野の中心に位置し、照準点310に関連する視野角を画定する。なお、照準装置の光学系は、固定されたレチクルを含んでも含まなくてもよい。別の構成では、仮想的なレチクルパターンが、外部照明装置(例えば、反射照明装置)の手段によって照明装置によって受信されてもよく、それによって、衝撃点と照準点は、別々に、かつ、事前に整合されている。この場合、像反転プリズムの上述した旋回は、オペレータの視野内で、共に整合された衝撃点と照準点との中心に作用する。
【0020】
図3において、衝撃点308と照準点310の視野角に関連する示された主光線は、アイピースレンズ309のアフォーカル(afocal)空間に一致しない。すなわち、視界は、オペレータによって観察される見かけの視野内の照明に対しては正しくない。
図4では、上述した旋回方法に従い、外部シーンに関連する視野角及びその画像点が、視野絞り306を横切って走査され、その結果、衝撃点308が照準点310と一致し、必要な照準整合が得られる。この調整により、レチクルパターンは、オペレータの視野の中心に固定されたままとなる。仮想レチクルが使用される場合、上述の照準ゼロ点調整方法は、観察された外部シーン内に明らかに固定された照準点310を、オペレータの視野の中心に整合させるように働く。全ての場合において、このようなオフセットに関連する眼の歪みを避けるために、照準点310をオペレータの視野内に中心づけることが望ましい。
【0021】
従来の光学系に関する問題に取り組む際、ここで提案した解決策は、既知の解決策よりも有利である。上述の方法で反転プリズム304を旋回させることにより、照準点310と光軸Bとの一致を維持するように、衝撃点308を照準点310に整合させる。それにより、射出瞳312は光軸Bから横方向に変位されない。さらに、視野は、アイピースレンズ309上の光束を変位させることなく視野絞り306を横切って走査される。その結果、アイピースの透明な開口部が、ビニエット(vignetting)なしで正確に維持される。従って、ビニエットの欠如により、光学系又は光学システム300は、オペレータへの半径方向フットプリント及び照準装置の質量の両方を低減する、最小アイピース直径で動作することができる。
【0022】
図3及び
図4において、反転プリズム304は、開口絞り302と視野絞り306との間の任意の位置に自由に配置される。但し、以下を条件とする。反転プリズム304が開口絞り302に近づくにつれて必要とされる傾斜角度が増加し、かつ反転プリズム304の外部にレチクルを有することを条件とする。提案されたゼロ化調整によって課される傾斜角に対する実用的な上限は、反転プリズム304によって受け入れられる視野であり、これは、その表面が、典型的に必要とされるような全内部反射(全反射)の条件下で機能することを目的としている。
【0023】
上記の観点から、また、そのような妥協を取り除くことにより、可能な付随的利益は、提案した方法が与えることのできるゼロ点調整の有効範囲の増加である。
【0024】
旋回点(pivot point)が開口絞り302と正確に一致するという要件は、
図1~4に詳述されているように、光学的に減少された(空気等価)プリズムモデルにおいて厳密に生じる。ガラスから作製された画像反転プリズムを有する実際の光学設計では、プリズムの屈折率を考慮しなければならないので、理想的なプリズムの旋回点は、開口絞りとは異なる、軸位置にあってもよい。一般に、旋回位置と開口絞り位置は、提案された照準法において固定距離関係を有しており、例えば、それらは、開口絞り位置の関数として一定の間隔を維持する。理想的なプリズム旋回点の位置は、一般に、開口絞りの近くに位置するが、この点に関しては、正確には制約されない。
【0025】
一つの設計構成において、望遠鏡対物レンズの使用に対する屈折率補償機構は、あらゆる実際的な目的のために、旋回点を正確に開口絞り位置に配置する。正のパワーを与えられたレンズ要素と、それに続く負のパワーを与えられたレンズ要素とを備える望遠レンズ構成が用いられて、前記対物レンズと焦点面との距離の機械的長さを短くし、コンパクトな光学設計を説明するために本仕様と一致する。
【0026】
図5は、例えば1°の照準誤差に対して補正される望遠構成における光学的レイアウトを示している。図示のように、光学系は、光軸Cに沿って500で概示されている。物体から反射された光が、光軸から1°オフセットされた衝撃点502を含む複数の視野角に沿って、対物レンズアセンブリ504を通って光学系500に入射する。対物レンズアセンブリ504は、開口絞り506を通って光を導くように構成される。開口絞り506からの光は、別のレンズ508を通って、画像反転プリズムアセンブリ510に入射し、プリズムアセンブリ510によって操作され、視野絞り512に向かって伝搬する。視野絞り512からの光は、アイピースレンズアセンブリ514を伝播する。アイピースレンズアセンブリ514は、射出瞳518に向かってそれぞれの視野角の光をコリメート(平行に)する。
【0027】
2つの視野角のそれぞれについて、辺縁光線と主光線が示されている。視野角は、それぞれ、衝撃点502及び視野のエッジに対応する。衝撃点502に関連する主光線は、物体空間内で識別され、一方、照準点516の主光線は、アイピースのアフォーカル空間内で識別される。レンズ、絞り及び瞳の位置は、
図3及び
図4の説明に従う。望遠鏡の対物レンズ、例えば、シュミット・ペチャン型(Schmidt-Pechan type)画像反転プリズム、及びアイピース設計の形態は、当業者によく知られている。知られているように、シュミット・ペチャン型プリズムは、画像を反転させる、すなわち、画像を180°回転させるように構成される。シュミット・ペチャン型プリズムは、エアギャップで隔てられた2つのプリズムを具現化している。2つのプリズムの設計は、入射ビームと出射ビームを同軸にすることを可能にする。
【0028】
図5において、反転プリズムアセンブリ510は、開口絞り506の中心について旋回し、アイピースのアフォーカル空間において衝撃点502及び照準点516を整合させる効果がある。それにより、照準点は光軸Cに一致する。破線は、反転プリズムアセンブリ510が旋回する、画像反転プリズムアセンブリ510の位置及び曲率半径を示す。同様に、直交面における照準誤差を補正するためには、横方向の旋回が必要である。
【0029】
照準誤差補正は、その動作範囲にわたる照準調整に応答して線形であることが望ましい。ここで記述した旋回法は、この点に関して正確に線形である。さらに、観察された衝撃点502に関連する光学性能は、照準ゼロ調整に続いて維持されることが望ましい。
【0030】
光学系500の衝撃点502及び照準点516を整合させる方法が、開口絞り506を通して光を方向付けることと、開口絞り506から反転プリズムアセンブリ510に光を方向付けることと、反転プリズムアセンブリ510からの光を、光学系500のオペレータに光を方向付けるように構成された視野絞り512を通して方向付けることと、反転プリズムアセンブリ510を開口絞り506の中心の周りに旋回させて、アフォーカル空間において衝撃点502及び照準点516の整合を達成することとを含むことに留意されたい。
図5を参照すると、光が、物体から開口絞り506を通って反転プリズムアセンブリ510に向けられ、光は、視野絞り512から光学系500のオペレータに向けられている。
【0031】
図6は、公称設計(nominal design)0°のスルーフォーカス変調伝達関数(modulation transfer function, MTF)と、視力の限界に対応する0.5 cycles/arcminのアフォーカル空間周波数で分析された1°の照準誤差補正された構成とを示し、典型的には1 arcmin分解された細部として引用される。
図6において、「Tan」及び「Sag」ラベルは、それぞれ分析の接線面(tangential plane)及び矢状面(sagittal plane)を指す。MTFは、変調伝達関数を指し、BSEは、照準誤差補正(boresight error correction)変調伝達関数値によって示される照準誤差補正に続くコントラストの損失は、公称設計における閾値視覚コントラストに対する大きなマージンを考慮すると無視できる。これは、0.5 cycles/arcminで約0.2である。さらに、照準誤差補正後の衝撃点に対する最適焦点に対する眼の必要な調節は、0.05ジオプトリー未満であり、Tan及びSagピーク応答の差によって特徴付けられる乱視は、0.1ジオプトリー未満である。両方の値は、高性能視覚光学系に対する要求を考慮すると無視できる。
【0032】
図7及び
図8を参照すると、光学アセンブリが、700で概示されている。図示のように、光学アセンブリ700は、光学アセンブリ700の構成要素を支持するように設計された支持ハウジング702を含む。支持ハウジング702は、概ね、円筒形構造であり、光軸Dに沿って延在する。一実施形態では、光学アセンブリの支持ハウジング702は、
図5に示す光学系500の構成要素を支持するように設計される。具体的には、光学アセンブリ700は、第1レンズアセンブリ704、レンズ706、反転プリズムアセンブリ708及び第2レンズアセンブリ710を含む。この構成は、ダウンレンジ(downrange)物体から反射された光が、第1レンズアセンブリ704を通って、複数の視野角に沿って光学アセンブリ700に入射するようになっている。第1レンズアセンブリ704は、開口絞り714を通って光を導くように構成されている。開口絞り714からの光は、レンズ706を通って反転プリズムアセンブリ708に入り、反転プリズムアセンブリ708は、光を操作して、光を視野絞り716に向けるように構成されている。図示のように、反転プリズムアセンブリ708は、エアギャップによって分離された2つのプリズムを含む。視野絞り716に入射する光は、第2レンズアセンブリ710へと向けられる。第2レンズアセンブリ710は、それぞれの視野角に沿って光を平行にし、射出瞳(exit pupil)(図示せず)に向ける。射出瞳は、光軸Dに沿って配置され、支持ハウジング702から分離されている。支持ハウジング702から、眼が位置決めされる射出瞳位置までの機械的距離は、射出瞳距離(eye relief)として知られている。
【0033】
光学アセンブリ700は、反転プリズムアセンブリ708を移動させるように構成された、718で概示される機構をさらに含む。具体的には、機構718は、画像反転プリズムアセンブリ708のプリズムの表面に係合するように構成された表面を有するプリズムマウントセル720を含む。プリズムアセンブリ708は、プリズムマウントセル720内に収容及び固定される。プリズムマウントセル720は、機構718の手段により、ハウジング702に対して回転可能である。機構718は、さらに、前方回転アクチュエータ722と後方回転アクチュエータ724とを含み、光軸D上の開口絞り714の中心に位置する回転点の周りでプリズムマウントセル720を移動させる。一実施形態では、前方回転アクチュエータ722と後方回転アクチュエータ724は、開口絞りに回転中心を有する同心の球形表面である。前方回転アクチュエータ722及び後方回転アクチュエータ724は、反転プリズムアセンブリ708を所望のセット位置に移動させ、安定させるように構成される。
図7は、中立位置にある、光学アセンブリ700の反転プリズムアセンブリ708を示す。
図8は、回転された軸外位置にある、光学アセンブリ700の反転プリズムアセンブリ708を示す。機構718は、開口絞り714の中心の周りでプリズムセルマウント720を固定された所望の角度に回転させるように構成することができる。
【0034】
一実施形態では、回転量は、全体で約+/-0.75度又は1.5度である。視野の合計は約5度である。したがって、調整範囲は、全視野の約30%~40%である。
【0035】
かくして、本開示のいくつかの実施形態では、衝撃点と照準点を光軸と共線にするような手段によって照準誤差補正を行うために、光軸上に位置する点のまわりに旋回される画像反転プリズムを有する視覚ターゲット照準装置のための光学設計を提供することが理解される。
【0036】
いくつかの実施形態では、開口絞り位置に関して一定の固定された関係を有する光軸上の点のまわりに旋回される画像反転プリズムを有する視覚ターゲット照準装置の光学設計が提供される。
【0037】
いくつかの実施形態では、画像反転プリズムを有する視覚ターゲット照準装置の光学設計では、画像反転プリズムは、開口絞りに関して固定されたオフセットを有する光軸上の点を中心に旋回され、望遠鏡対物レンズ配置を使用して、旋回点を開口絞りの一般的位置に位置決めする。
【0038】
いくつかの実施態様において、対物レンズの焦点面に位置する反転プリズムの外部にレチクルパターンを有する画像反転プリズムを有する視覚目標照準装置の光学設計を提供する。
【0039】
いくつかの実施態様において、対物レンズの焦点面に配置された反転プリズムの外部に視野絞りを有する画像反転プリズムを有する視覚ターゲット照準装置の光学設計を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、射出瞳を変位させない視覚照準装置において照準誤差補正を行う手段が提供される。
【0041】
いくつかの実施形態では、ビニエットを導入しない視覚照準装置において照準誤差補正を行う手段が提供される。
【0042】
いくつかの実施形態では、視覚照準装置における照準誤差補正を行う手段であって、公称設計を収容するために必要とされるものから、透明開口部への増加を必要としないものが提供される。
【0043】
いくつかの実施態様において、対物レンズの焦点面に対してその位置に拘束されていない画像反転プリズムを使用して、視覚照準装置において照準誤差補正を行う手段が提供される。
【0044】
また、本明細書中で使用される表現及び用語は制限的に理解されるべきではない。本明細書中で単数形で言及されるシステム及び方法の実施形態又は要素又は行為への言及はまた、複数のこれらの要素を含む実施形態を包含してもよく、また、本明細書中で任意の実施形態又は要素又は行為への複数の言及は、単一の要素のみを含む実施形態を包含してもよい。単数形又は複数形の引例は、現在開示されているシステム又は方法、それらの構成要素、作用又は要素を限定することを意図していない。本明細書における「含む」、「から構成される」、「有する」、「包含する」、「含有する」及びそれらの派生語の使用は、その後にリストされた項目及びそれらの等価物ならびに追加の項目を包含することを意味する。「又は」への言及は、「又は」を使用して記載される用語が、記載される用語の単一の、複数の、及び全てを示すことができるように、包括的であると解釈することができる。前後、左右、頂部底部、上下、垂直及び水平への言及は、説明の便宜のために意図されたものであり、本システム及び方法又はそれらの構成要素を、いずれか1つの位置又は空間方向に限定するものではない。
【0045】
本明細書で使用する場合、「前方」又は「前」という用語は、拡大鏡アセンブリの方向に対応し、「後方」又は「後」又は「背部」という用語は、拡大鏡アセンブリの方向と反対の方向に対応し、「長手方向」は、基部の長手方向軸に沿った又は平行な方向を意味し、「横方向」は、長手方向に垂直な方向を意味する。
【0046】
少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明してきたが、当業者には、種々の変更、修正及び改良が容易に生じることが理解されるであろう。このような変更、修正及び改良は、本開示の一部であることが意図されており、本発明の範囲内であることが意図されている。したがって、前述の説明及び図面は、単なる例示であり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の適切な構成から決定されるべきである。