(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ポリオレフィンを製造するためのシステムおよび気相反応器からの重合生成物の回収方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/01 20060101AFI20231227BHJP
C08F 2/34 20060101ALI20231227BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C08F2/01
C08F2/34
C08F10/00 510
(21)【出願番号】P 2022534652
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2020084405
(87)【国際公開番号】W WO2021115908
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン,パウリ
(72)【発明者】
【氏名】エロヴァイニオ,エルノ
(72)【発明者】
【氏名】キヴェラ,ヨウニ
(72)【発明者】
【氏名】ニュフォルス,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】コッコ,タピオ
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-512983(JP,A)
【文献】特開2008-143929(JP,A)
【文献】特開昭58-027629(JP,A)
【文献】米国特許第06472483(US,B1)
【文献】特表2021-512972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
B01J 8/00-8/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを製造するためのシステムであって、オレフィンを重合し重合生成物を得るための気相反応器(1)を含み、前記気相反応器(1)は、以下:
-前記気相反応器(1)内に配置されるガス分配板(11)、
-前記気相反応器(1)から重合生成物を第1生成物ストリームとして連続的に取り出すための第1出口(12)、前記第1出口(12)は前記ガス分配板(11)の上方に配置される、および、
-前記気相反応器(1)から重合生成物を第2生成物ストリームとして連続的に取り出すための第2出口(13)、前記第2出口(13)は前記ガス分配板(11)の上方に配置される、
を含み、
ここで、前記システムは、以下:
-第1通路(22)を介して前記第1出口(12)と流体連通している第1出口タンク(2)、ここで前記第1通路(22)は、前記第1通路(22)内の前記第1生成物ストリームの流れを制御するための第1バルブ手段(221)を含み、ここで前記第1出口タンク(2)は、前記第1生成物ストリームを受け入れ、前記第1生成物ストリームを濃縮するように配置される、
-第2通路(31)を介して前記第2出口(13)と流体連通している生成物受入タンク(3)、ここで、前記第2通路(31)は、前記第2通路(31)内の前記第2生成物ストリームの流れを制御するための第2バルブ手段(311)を含み、ここで前記生成物受入タンク(3)は前記第2生成物ストリームを受け入れるように配置される、および
-前記第1バルブ手段(221)および前記第2バルブ手段(311)と連通し、前記第1通路(22)および前記第2通路(31)の1つのみの流れが一度に許容されるように、前記第1バルブ手段(221)および前記第2バルブ手段(311)の動作を制御するように配置される制御手段、
をさらに含み、
ここで、
-前記気相反応器(1)は、前記気相反応器(1)から重合生成物を第3生成物ストリームとして連続的に取り出すための第3出口(14)を含み、前記第3出口(14)は前記第2出口(13)の上方に配置され、
-前記生成物受入タンク(3)は、第3通路(32)を介して前記第3出口(14)と流体連通し、前記第3生成物ストリームを受け入れるように配置され、
-前記第3通路(32)は、前記第3通路(32)内の前記第3生成物ストリームの流れを制御するための第3バルブ手段(321)を含み、
-前記制御手段は、前記第3バルブ手段(321)と連通し、かつ
-前記制御手段は、前記第1通路(22)、前記第2通路(31)および前記第3通路(32)のうちの1つのみの流れが一度に許容されるように、前記第1バルブ手段(221)、前記第2バルブ手段(311)および前記第3バルブ手段(321)の動作を制御するように配置される、
システム。
【請求項2】
前記第2通路(31)は、前記第2生成物ストリームを加熱するように配置される第1ヒーター(312)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第3通路(32)は、前記第3生成物ストリームを加熱するように配置される第2ヒーター(322)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1出口タンク(2)は、前記第1生成物ストリームから凝集物を除去するためのスクリーン(21)を含む、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
ポリオレフィンはポリプロピレンである、請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
ポリオレフィンはポリエチレンである、請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
-前記気相反応器(1)は、前記気相反応器(1)から重合生成物のバッチを取り出すための第4出口(15)を含み、前記第4出口(15)は、前記ガス分配板(11)の上方であり、前記第1出口(12)の下方に配置され、
-前記システムは、第4通路(51)を介し
て第2出口タンク(5)と流体連通し、重合生成物のバッチを受け入れるように配置される第2出口タンク(5)を含み、
-前記第4通路(51)は、前記第4通路(51)内のバッチの流れを制御するための第4バルブ手段(511)を含み、
-前記制御手段は、前記第4バルブ手段(511)と連通し、かつ
-前記制御手段は、前記第1通路(22)、前記第2通路(31)、前記第3通路(32)および前記第4通路(51)のうちの1つのみの流れが一度に許容されるように、前記第1バルブ手段(221)、前記第2バルブ手段(311)、前記第3バルブ手段(321)および前記第4バルブ手段(511)の動作を制御するように配置される、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
気相反応器(1)から重合生成物を回収するための方法であって、前記気相反応器(1)は、オレフィンを重合し重合生成物を得るのに適当であり、以下:
- 前記気相反応器(1)内に配置されるガス分配板(11)、
- 前記気相反応器(1)から重合生成物を連続的に取り出すための第1出口(12)、前記第1出口(12)は前記ガス分配板(11)の上方に配置される、および
- 前記気相反応器(1)から重合生成物を連続的に取り出すための第2出口(13)、前記第2出口(13)はガス分配板(11)の上方に配置される、
を含み、
ここで、前記方法は、以下:
- 前記気相反応器(1)から前記第1出口(12)を介して重合生成物を第1生成物ストリームとして取り出し、前記第1生成物ストリームを第1出口タンク(2)に供給し、前記第1出口タンク(2)において前記第1生成物ストリームを濃縮すること、または
- 前記気相反応器(1)から前記第2出口(13)を介して重合生成物を第2生成物ストリームとして取り出し、前記第2生成物ストリームを生成物受入タンク(3)に供給すること、
を選択的に含み、
ここで、
前記気相反応器(1)は、前記気相反応器(1)から重合生成物を連続的に取り出すための第3出口(14)を含み、前記第3出口(14)は前記第2出口(13)の上方に配置され、かつ
前記方法は、以下:
-前記気相反応器(1)から前記第1出口(12)を介して重合生成物を第1生成物ストリームとして取り出し、前記第1生成物ストリームを第1出口タンク(2)に供給し、前記第1出口タンク(2)において前記第1生成物ストリームを濃縮すること、
-前記気相反応器(1)から前記第2出口(13)を介して重合生成物を第2生成物ストリームとして取り出し、前記第2生成物ストリームを生成物受入タンク(3)に供給すること、または
-前記気相反応器(1)から前記第3出口(14)を介して重合生成物を第3生成物ストリームとして取り出し、前記第
3生成物ストリームを生成物受入タンク(3)へ供給すること、
を選択的に含む、方法。
【請求項9】
前記気相反応器(1)から前記第2生成物ストリームを取り出した後であって、前記第2生成物ストリームを前記生成物受入タンク(3)に供給する前に、第2生成物ストリームを加熱することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記気相反応器(1)から前記第3生成物ストリームを取り出した後であって、前記第3生成物ストリームを前記生成物受入タンク(3)に供給する前に、前記第3生成物ストリームを加熱することを含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1出口タンク(2)において、前記第1生成物ストリームから凝集物を除去することを含む、請求項8~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ポリオレフィンはポリプロピレンである、請求項8~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ポリオレフィンはポリエチレンである、請求項8~11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記気相反応器(1)は、前記気相反応器(1)から重合生成物のバッチを取り出すための第4出口(15)を含み、前記第4出口(15)は、前記ガス分配板(11)の上方であって、前記第1出口(12)の下方に配置され、かつ
前記方法は、以下:
-前記気相反応器(1)から前記第1出口(12)を介して重合生成物を第1生成物ストリームとして取り出し、前記第1生成物ストリームを第1出口タンク(2)に供給し、前記第1出口タンク(2)において前記第1生成物ストリームを濃縮すること、
-前記気相反応器(1)から前記第2出口(13)を介して重合生成物を第2生成物ストリームとして取り出し、前記第2生成物ストリームを生成物受入タンク(3)に供給すること、
-前記気相反応器(1)から前記第3出口(14)を介して重合生成物を第3生成物ストリームとして取り出し、前記第
3生成物ストリームを生成物受入タンク(3)に供給すること、または
-前記気相反応器(1)から前記第4出口(15)を介して重合生成物のバッチを取り出し、前記バッチを第2出口タンク(5)に供給すること、
を選択的に含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンの製造、特にポリオレフィンを製造するためのシステムに関する。本発明は、気相反応器から重合生成物を回収するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
気相反応器(GPR)からのポリマー生成物出口は、プラント運転性の観点から非常に不可欠かつ重要な場所である。出口システムの不具合または詰まりは、通常、プラント全体の停止を意味し、これは莫大な生産性の損失および起こりうる安全上のリスクをもたらす。
【0003】
文献WO 00/29452では、連続的に運転される気相反応器からポリマーを排出する方法および装置を開示しており、少なくとも1つのモノマーが、流体中に浮遊する触媒およびポリマー粒子によって形成された活性触媒を含む層(bed)内で重合され、該層は前記反応器内の流動層(fluidized bed)レベルを定義している。本方法は、反応器からポリマー粉末を連続的に取り出し、ポリマー粉末の排出速度を調整し、重合中に層レベルを一定に保つことを含む。
【0004】
文献EP 2 330 135 A1は、オレフィン重合触媒の存在下、気相中、2つの連続する反応器において、少なくとも1つのオレフィンポリマーを製造する方法を開示し、ここで、第1重合反応器において、オレフィン重合触媒および第1反応ガス混合物の存在下で、オレフィンを重合し、オレフィンポリマーおよび前記第1反応ガス混合物を含む流動層を形成する。第1反応ガス混合物はオレフィンポリマーと共に、第1重合反応器から連続的または断続的に取り出され、分離容器中へと導かれ、前記分離容器内にポリマーの層が形成される。前記第1反応ガス混合物の一部は、前記分離容器から取り出され、圧力が分離容器内よりも低い位置まで第1重合反応器内に戻される。オレフィンポリマーは、前記分離容器から取り出され、第2生成物ストリームを形成し、第2生成物ストリームは、第2重合反応器内へ導かれる。第1重合段階から第2重合段階への反応物のキャリーオーバーを回避するために、第2ガスを分離容器の底部に導入してもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際出願公開第00/29452号
【文献】欧州特許出願公開第2 330 135号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記文献に記載された解決策の問題点は、連続してよい1つの出口のみを含むことである。その1つの出口は、リスクを最小化する努力にもかかわらず、詰まりやすい。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を克服するシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、独立請求項に記載されていることを特徴とするシステムおよび方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0009】
本発明は、オレフィンを重合して重合生成物を得るための気相反応器を含む、ポリオレフィンを製造するためのシステムを提供するという考えに基づき、前記気相反応器は、以下:
-前記気相反応器内に配置されるガス分配板、
-前記気相反応器から重合生成物を第1生成物ストリームとして連続的に取り出すための第1出口、前記第1出口は前記ガス分配板の上方に配置される、および、
-前記気相反応器から重合生成物を第2生成物ストリームとして連続的に取り出すための第2出口、前記第2出口は前記ガス分配板の上方に配置される、
を含み、
ここで、前記システムは、以下:
-第1通路を介して前記第1出口と流体連通している第1出口タンク、ここで前記第1通路は、前記第1通路内の前記第1生成物ストリームの流れを制御するための第1バルブ手段を含み、ここで前記第1出口タンクは、前記第1生成物ストリームを受け入れ、前記第1生成物ストリームを濃縮するように配置される、
-第2通路を介して前記第2出口と流体連通している生成物受入タンク、ここで、前記第2通路は、前記第2通路内の前記第2生成物ストリームの流れを制御するための第2バルブ手段を含み、ここで前記生成物受入タンクは前記第2生成物ストリームを受け入れるように配置される、および
-前記第1バルブ手段および前記第2バルブ手段と連通し、前記第1通路および前記第2通路の1つのみの流れが一度に許容されるように、前記第1バルブ手段および前記第2バルブ手段の動作を制御するように配置される制御手段、
をさらに含み、ならびに、
気相反応器から重合生成物を回収するための方法も提供し、前記気相反応器は、オレフィンを重合し重合生成物を得るのに適当であり、以下:
- 前記気相反応器内に配置されるガス分配板、
- 前記気相反応器から重合生成物を連続的に取り出すための第1出口、前記第1出口は前記ガス分配板の上方に配置される、および
- 前記気相反応器から重合生成物を連続的に取り出すための第2出口、前記第2出口はガス分配板の上方に配置される、
を含み、
ここで、前記方法は、以下:
- 前記気相反応器から前記第1出口を介して重合生成物を第1生成物ストリームとして取り出し、前記第1生成物ストリームを第1出口タンクに供給し、前記第1出口タンクにおいて前記第1生成物ストリームを濃縮すること、または
- 前記気相反応器から前記第2出口を介して重合生成物を第2生成物ストリームとして取り出し、前記第2生成物ストリームを生成物受入タンクに供給すること、
を選択的に含む。
【0010】
本発明のシステムおよび方法の利点は、2つの連続した出口が存在することにより、良好な操作性および信頼性の高い動作を可能にすることである。これにより、1つの出口を稼働させ、もう1つの出口を予備として持つことができる。1つの出口プラグが詰まった場合、もう一方の連続した出口をすぐに使用できる。また、本発明のシステムおよび方法は、ポリマー出口の正確な制御とGPRの安定した層レベル制御も可能とする。
【0011】
以下において、本発明は、添付の図面を参照し、好ましい実施形態を用いて、詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるシステムおよび方法の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態によるシステムおよび方法の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態によるシステムおよび方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリオレフィンを製造するためのシステムに関する。本発明は、気相反応器から重合生成物を回収するための方法にも関する。本発明の一実施形態によると、オレフィンはエチレンであり、したがってポリオレフィンはポリエチレンである。本発明の代替的な一実施形態によると、オレフィンはプロピレンであり、したがってポリオレフィンはポリプロピレンである。
【0014】
システムは、気相反応器1を含む。気相反応器1は、オレフィンを重合し重合生成物を得るのに適当である。好ましくは、気相反応器1は連続的に運転される。好ましくは、気相反応器1は流動層気相反応器である。例えば、気相反応器1は2.9~5.5mの直径を有する。好ましくは、気相反応器1は円形の断面を有する。より好ましくは、気相反応器1は本質的に円筒形の形状を有する。
【0015】
気相反応器1は、気相反応器1内に配置されるガス分配板11を含む。流動層気相反応器において、オレフィンは、上向きに移動するガスストリーム中、重合触媒の存在下で重合される。反応器は、典型的には、分配板の上方に位置する活性触媒を含む成長するポリマー粒子を含む流動層を含む。
【0016】
ポリマー層は、オレフィンモノマー、最終的なコモノマー、最終的な鎖成長制御剤または連鎖移動剤、例えば水素、および最終的な不活性ガスを含む流動化ガスの助けにより流動化される。流動化ガスは、反応器の底部にある入口チャンバーに導入される。ガス流れが入口チャンバーの断面表面領域にわたり均一に分配されるようにするために、入口パイプは、例えばUS 4933149 AおよびEP 684871 Aのような当技術分野で既知の流れ分割要素を備えてもよい。とりわけ反応または生成物の取り出しによって生じる損失を補償するために、上記成分の1つ以上を流動化ガス中に継続的に添加してもよい。
【0017】
入口チャンバーから、ガス流れはガス分配板11を通って流動層内へと上向きに流される。分配板の目的は、ガス流れを層の断面領域を通じて均等に分配することである。WO 2005/087361 Aに開示されているように、分配板は、反応器壁に沿って押し流されるガスストリームを確立するように配置されてもよい。他のタイプの分配板は、特にUS 4578879 A、EP 600414およびEP 721798 Aに開示されている。概要はGeldart and Bayens:The Design of Distributors for Gas-fluidized Beds、Powder Technology、Vol.42、1985に記載されている。
【0018】
流動化ガスは流動層を通過する。流動化ガスの空塔速度は、流動層に含まれる粒子の最小流動化速度より速くなければならず、そうでなければ流動化は起こらないだろう。一方、ガスの速度は空気輸送の開始速度より遅くなければならず、そうでなければ層全体が流動化ガスに巻き込まれることになるであろう。粒子の特性がわかっている場合、最小流動化速度および空気輸送の開始速度は、一般的な工学的手法を用いて計算され得る。その概要は、特にGeldart:Gas Fluidization Technology、J.Wiley&Sons、1986に記載されている。
【0019】
流動化ガスが活性触媒を含む層と接触すると、モノマーおよび連鎖移動剤などのガスの反応性成分が触媒の存在下で反応し、ポリマー生成物を製造する。同時に、ガスは反応熱により加熱される。
【0020】
未反応の流動化ガスは反応器の上部から取り除かれ、熱交換器内で冷却され反応熱が除去される。該ガスは層の温度より低い温度に冷却され、反応により層が加熱されるのを防ぐ。ガスの一部が凝縮する温度に冷却することも可能である。液滴が反応ゾーンに入ると、液滴は気化する。そして、その気化熱が反応熱の除去に寄与する。このような操作は凝縮モードと呼ばれ、そのバリエーションはとりわけ、WO 2007/025640 A、US 4543399 A、EP 699213 AおよびWO 94/25495 Aに開示されている。また、EP 696293 Aに開示されているように、リサイクルガスストリーム中に凝縮剤を加えることも可能である。凝縮剤は非重合性成分、例えばn-ペンタン、イソペンタン、n-ブタンまたはイソブタンであり、冷却器内で少なくとも一部は凝縮される。
【0021】
その後、ガスは圧縮され、反応器の入口チャンバー内へリサイクルされる。反応器内へ入る前に、新しい反応物質が流動化ガスストリーム内へ導入され、反応および生成物の取出しによって生じる損失を補う。一般に、流動化ガスの組成を分析し、組成を一定に保つようにガス成分を導入することが知られている。実際の組成は、生成物の所望の特性および重合に使用する触媒によって決定される。
【0022】
触媒を、様々な方法で反応器内へ導入してよく、連続的または断続的に導入してよい。とりわけ、WO 01/05845 AおよびEP 499759 Aは、そのような方法を開示している。気相反応器が反応器カスケードの一部である場合、触媒は通常、先行する重合段階からのポリマー粒子中に分散される。EP 1415999 AおよびWO 00/26258 Aに開示されているように、ポリマー粒子は気相反応器内に導入されてもよい。特に、先行反応器がスラリー反応器である場合、EP 887379 A、EP 887380 A、EP 887381 AおよびEP 991684 Aに開示されているように、スラリーを気相反応器の流動層内に直接供給することが有利である。
【0023】
気相反応器の上部は、いわゆる解放ゾーンを含んでもよい。そのようなゾーンでは、反応器の直径を大きくしてガス速度を低下させ、流動化ガスと共に層から運ばれた粒子を層へと沈めることが可能である。
【0024】
層レベルは、当技術分野で既知の様々な技術によって観察してよい。例えば、反応器の底部と層の特定の高さとの間の圧力差を反応器の全長にわたって記録し、圧力差の値に基づき層レベルを算出してもよい。そのような計算により、時間平均されたレベルが得られる。また、超音波センサーまたは放射性センサーを使用することも可能である。これらの方法では、瞬間的なレベルを得てもよく、もちろん、これを時間経過で平均して、時間平均された層レベルを得てもよい。
【0025】
必要に応じて、帯電防止剤を気相反応器内に導入してもよい。適当な帯電防止剤およびその使用方法は、とりわけUS 5026795 A、US 4803251 A、US 4532311 A、US 4855370 AおよびEP 560035 Aに開示されている。これらは通常極性化合物であり、中でも水、ケトン、アルデヒドおよびアルコールを含む。
【0026】
反応器はまた、流動層内の混合を促進するための機械的撹拌器を含んでもよい。適当な撹拌機の設計例は、EP 707513 Aに示されている。
【0027】
典型的には、気相反応器1は、50~100℃、好ましくは65~90℃の範囲内の温度で運転される。圧力は、適当には10~40bar、好ましくは15~30barである。
【0028】
気相反応器1は、第1出口12を含む。第1出口12の目的は、気相反応器1から重合生成物を第1生成物ストリームとして連続的に取り出すことである。第1出口12は、ガス分配板11の上方に配置される。ポリオレフィンがポリエチレンである場合、第1出口12とガス分配板11との間の距離は、第1出口12の高さにおける気相反応器1の直径の好ましくは55~345%、例えば100~185%であるか、または3~10mである。ポリオレフィンがポリプロピレンである場合、第1出口12とガス分配板11との間の距離は、第1出口12の高さにおける気相反応器1の直径の好ましくは1~17%、例えば2~10%であるか、または0.05~0.5mである。好ましくは、第1出口は10~40cm、より好ましくは15~26cmの直径を有する。本明細書において、出口の位置は、出口の中心から測定される。
【0029】
気相反応器1は、第2出口13を含む。第2出口13の目的は、気相反応器1から重合生成物を第2生成物ストリームとして連続的に取り出すことである。第2出口13は、ガス分配板11の上方に配置される。ポリオレフィンがポリエチレンである場合、第2出口13とガス分配板11との間の距離は、第2出口13の高さにおける気相反応器1の直径の好ましくは55~345%、例えば100~185%であるか、または3~10mである。ポリオレフィンがポリプロピレンである場合、第2出口13とガス分配板11との間の距離は、第2出口13の高さにおける気相反応器1の直径の好ましくは1~17%、例えば2~10%であるか、または0.05~0.5mである。好ましくは、第2出口13は3~15cm、より好ましくは5~12cmの直径を有する。
【0030】
通常の運転では、ポリマー生成物は、第1出口12を通して気相反応器1から取り出される。したがって、第2出口は通常は予備である。
【0031】
本システムは、第1出口タンク2を含む。第1出口タンク2は、第1通路22を介して第1出口12と流体連通している。第1通路22は、第1通路22内の第1生成物ストリームの流れを制御するための第1バルブ手段221を含む。例えば、第1バルブ手段221は、第1通路22内の第1生成物ストリームの流れを許容する開位置と、第1通路22内の第1生成物ストリームの流れを阻止する閉位置とにのみ設定されるように配置される。あるいは、第1バルブ手段221は、第1通路22内の第1生成物ストリームの流れをより正確に制御するために、開位置、閉位置、または開位置と閉位置との間の任意の位置に設定されるように配置される。第1出口タンク2は、気相反応器1から取り出された第1生成物ストリームを受け入れ、第1生成物ストリームを濃縮するように配置される。本発明の一実施形態によると、第1出口タンク2は、第1生成物ストリームから凝集物を除去するためのスクリーン21を含む。一実施形態によると、第1出口タンク2は、さらなる気相反応器などのダウンストリーム処理装置と流体連通する。
【0032】
本システムは、生成物受入タンク3を含む。生成物受入タンク3は、第2通路31を介して第2出口13と流体連通している。第2通路は、第2通路31内の第2生成物ストリームの流れを制御するための第2バルブ手段311を含む。例えば、第2バルブ手段311は、第2通路31内の第2生成物ストリームの流れを許容する開位置と、第2通路31内の第2生成物ストリームの流れを阻止する閉位置とにのみ設定されるように配置される。あるいは、第2バルブ手段311は、第2通路31内の第2生成物ストリームの流れをより正確に制御するために、開位置、閉位置、または開位置と閉位置の間の任意の位置に設定されるように配置される。生成物受入タンク3は、気相反応器1から取り出された第2生成物ストリームを受け入れるように配置される。一実施形態によると、生成物受入タンク3は、場合によりスクリーンされた第1生成物ストリームを第1出口タンク2から受け入れるために、例えばライン33を介して、第1出口タンク2と流体連通している。一実施形態によると、生成物受入タンク3は、さらなる気相反応器などのダウンストリーム処理装置と流体連通する。
【0033】
本システムは、第1バルブ手段221および第2バルブ手段311と連通する制御手段(図示せず)を含む。制御手段は、第1通路22および第2通路31の1つのみの流れが一度に許容されるように、第1バルブ手段221および第2バルブ手段311の動作を制御するように配置される。つまり、制御手段は、第1バルブ手段221および第2バルブ手段311の一方のみが一度に開位置にあり、第1バルブ手段221および第2バルブ手段311の他方は閉位置にあることを保証する。制御手段の目的は、生成物ストリームが一度に1つの出口のみを通して取り出されることを保証することである。
【0034】
本方法は、以下:
- 前記気相反応器1から前記第1出口12を介して重合生成物を第1生成物ストリームとして取り出し、前記第1生成物ストリームを第1出口タンク2に供給し、前記第1出口タンク2において前記第1生成物ストリームを濃縮すること、または
- 前記気相反応器1から前記第2出口13を介して重合生成物を第2生成物ストリームとして取り出し、前記第2生成物ストリームを生成物受入タンク3に供給すること、
を選択的に含む。
【0035】
第1出口12または第2出口13を介した重合生成物の選択的な取り出しは、制御手段によって可能になる。
【0036】
気相反応器1は、第3出口14を含む。第3出口14の目的は、気相反応器1から重合生成物を第3生成物ストリームとして連続的に取り出すことである。第3出口14は、他の出口の1つがふさがれた場合に、気相反応器1から重合生成物を取り出すためのさらなる選択肢を許容する。第3出口14は、第2出口13の上方に配置される。ポリオレフィンがポリエチレンである場合、第3出口14とガス分配板11との間の距離は、第3の出口14の高さにおける気相反応器1の直径の好ましくは105~485%、例えば205~255%であるか、または6~14mである。ポリオレフィンがポリプロピレンである場合、第3出口14とガス分配板11との間の距離は、第3出口14の高さにおける気相反応器1の直径の好ましくは9~105%、例えば15~55%であるか、または0.5~3mである。生成物受入タンク3は第3通路32を介して第3出口14と流体連通しており、第3生成物ストリームを受け入れるように配置される。
【0037】
第3通路32は、第3通路32内の第3生成物ストリームの流れを制御するための第3バルブ手段321を含む。該制御手段は、第3バルブ手段321と連通する。該制御手段は、第1通路22、第2通路31および第3通路32のうちの1つのみの流れが一度に許容されるように、第1バルブ手段221、第2バルブ手段311および第3バルブ手段321の動作を制御するように配置される。言い換えれば、制御手段は、第1バルブ手段221、第2バルブ手段311および第3バルブ手段321のうちの1つのみが開位置にあると同時に、第1バルブ手段221、第2バルブ手段311および第3バルブ手段321のうちの他方が閉位置にあることを保証する。また、この実施形態において、制御手段の目的は、生成物ストリームが一度に1つの出口のみを通じて取り出されることを保証することである。好ましくは、第3出口14は、7~8cmの直径を有する。
【0038】
本方法は、以下:
-気相反応器(1)から第1出口(12)を介して重合生成物を第1生成物ストリームとして取り出し、前記第1生成物ストリームを第1出口タンク(2)に供給し、前記第1出口タンク(2)において前記第1生成物ストリームを濃縮すること、
-気相反応器(1)から第2出口(13)を介して重合生成物を第2生成物ストリームとして取り出し、前記第2生成物ストリームを生成物受入タンク(3)に供給すること、または
-気相反応器(1)から第3出口(14)を介して重合生成物を第3生成物ストリームとして取り出し、前記第2生成物ストリームを生成物受入タンク(3)へ供給すること、
を選択的に含む。
【0039】
第1出口12、第2出口13または第3出口14を介した重合生成物の選択的な取り出しは、制御手段によって可能になる。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、第2通路31は、第1ヒーター312を含む。第1ヒーター312は、気相反応器1から第2生成物ストリームを取り出した後、第2生成物ストリームを生成物受入タンク3に導入する前に、第2生成物ストリームを加熱するように配置される。例えば、第1ヒーター312は、熱交換器である。第1ヒーター312の目的は、後段階で第2生成物ストリームから炭化水素分離を高めることである。第1ヒーター312は、第2生成物ストリームを110℃の温度まで加熱することができる。この実施形態を
図1に示す。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、気相反応器1から第2生成物ストリームを取り出した後、第2生成物ストリームを生成物受入タンク3に供給する前に、第2生成物ストリームを加熱することを含む。例えば、第2生成物ストリームの加熱は、第1ヒーター312によって行われる。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、第3通路32は、第2ヒーター322を含む。第2ヒーター322は、気相反応器1から第3生成物ストリームを取り出した後、第3生成物ストリームを生成物受入タンク3に導入する前に、第3生成物ストリームを加熱するように配置される。例えば、第2ヒーター322は、熱交換器である。第2ヒーター322の目的は、後段階で第3生成物ストリームから炭化水素分離を高めることである。第2ヒーター322は、第3生成物ストリームを110℃の温度まで加熱することができる。この実施形態を
図2に示す。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、気相反応器1から第3生成物ストリームを取り出した後、第3生成物ストリームを生成物受入タンク3に供給する前に、第3生成物ストリームを加熱することを含む。例えば、第3生成物ストリームの加熱は、第2ヒーター322によって行われる。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、ポリオレフィンはポリエチレンであり、気相反応器1は、気相反応器1から重合生成物のバッチを取り出すための第4出口15を含む。これは、気相反応器1からチャンクを除去するためである。第4出口15は、ガス分配板11の上方であり、第1出口12の下方に配置される。第4出口15とガス分配板11との間の距離は、第4出口15の高さにおける気相反応器1の直径の好ましくは1~17%、例えば2~10%であるか、または0.05~0.5mである。この実施形態によれば、該システムは第2出口タンク5を含む。第4出口15は、第4通路51を介して第2出口タンク5と流体連通する。第2出口タンク5は、重合生成物のバッチを受け入れるように配置される。
【0045】
第4通路51は、第4通路51内のバッチの流れを制御するための第4バルブ手段511を含む。制御手段は、第4バルブ手段511と連通する。制御手段は、第1通路22、第2通路31、第3通路32および第4通路51のうちの1つのみの流れが一度に許容されるように、第1バルブ手段221、第2バルブ手段311、第3バルブ手段321および第4バルブ手段511の動作を制御するように配置される。言い換えれば、制御手段は、第1バルブ手段221、第2バルブ手段311、第3バルブ手段321および第4バルブ手段511のうちの1つのみが開位置にあると同時に、第1バルブ手段221、第2バルブ手段311、第3バルブ手段321および第4バルブ手段511のうちの他方が閉位置にあることを保証する。また、この実施形態では、制御手段の目的は、生成物ストリームまたはバッチが一度に1つの出口のみを通じて取り出されることを保証することである。一実施形態によれば、制御手段は、第4バルブ手段511が所定期間のみ開位置にあるように、第4バルブ手段511の動作を制御するように配置される。好ましくは、所定期間は約500kgのポリマー生成物が重合反応器1から取り出されるような期間である。一実施形態によれば、第4出口15または第4通路51は、気相反応器1から取り出された任意の塊を粉砕するための塊粉砕機を備える。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、該方法は、以下:
-気相反応器1から第1出口12を介して重合生成物を第1生成物ストリームとして取り出し、前記第1生成物ストリームを第1出口タンク2に供給し、前記第1出口タンク2において前記第1生成物ストリームを濃縮すること、
-気相反応器1から第2出口13を介して重合生成物を第2生成物ストリームとして取り出し、前記第2生成物ストリームを生成物受入タンク3に供給すること、
-気相反応器1から第3出口14を介して重合生成物を第3生成物ストリームとして取り出し、前記第2生成物ストリームを生成物受入タンク3に供給すること、または
-気相反応器1から第4出口15を介して重合生成物のバッチを取り出し、前記バッチを第2出口タンク5に供給すること、
を選択的に含む。
【0047】
第1出口12、第2出口13、第3出口14または第4出口15を介した重合生成物の選択的な取り出しは、制御手段によって可能となる。