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特許7411106マンガン酸リチウム正極活性材料及びそれを含む正極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】マンガン酸リチウム正極活性材料及びそれを含む正極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20231227BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231227BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231227BHJP
   C01G 45/12 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M4/36 E
C01G45/12
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022548010
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 CN2021097631
(87)【国際公開番号】W WO2022252111
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】欧▲陽▼ 少▲聡▼
(72)【発明者】
【氏名】付 成▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ 庭▲禎▼
(72)【発明者】
【氏名】王 博
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225046(JP,A)
【文献】特表2020-513653(JP,A)
【文献】特表2008-536285(JP,A)
【文献】特開2009-043477(JP,A)
【文献】特開2014-032776(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111793824(CN,A)
【文献】特開2019-175630(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110808363(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガン酸リチウム基材と、マンガン酸リチウム基材表面に設置された内層、前記内層表面に設置された中間層及び前記中間層表面に設置された外層を備える被覆層と、を含むマンガン酸リチウム正極活性材料であって、
前記内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムを含むオキソ酸塩のうちの1種又は複数種を含み、
前記中間層は、有機結合剤層であり、
前記外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層である、
マンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項2】
前記アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムを含むオキソ酸塩は、アルミニウム酸カリウム、アルミニウム酸マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミニウム酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミニウム酸マグネシウムから選ばれる1種又は複数種である、
請求項1に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項3】
マンガン酸リチウム基材と、マンガン酸リチウム基材表面に設置された内層、前記内層表面に設置された中間層及び前記中間層表面に設置された外層を備える被覆層と、を含むマンガン酸リチウム正極活性材料であって、
前記内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのフッ化物のうちの1種又は複数種を含み、
前記中間層は、有機結合剤層であり、
前記外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層である、
マンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項4】
前記フッ化物は、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム及びフッ化マグネシウムのうちの1種又は複数種である、
請求項3に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項5】
前記有機結合剤は、カルボキシメチルセルロース塩、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩から選ばれる1種又は複数種であり、任意に、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸リチウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸アルミニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸マグネシウムのうちの1種又は複数種である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項6】
前記シュウ酸塩は、シュウ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩から選ばれ、任意に、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であり、更に任意に、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であり、
前記ケイ酸塩は、ケイ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩から選ばれ、任意に、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムのうちの1種又は複数種である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項7】
前記内層と前記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.01~3:100であり、任意に、1~2:100であり、
任意に、前記中間層と前記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.5~3:100であり、更に任意に、1~2:100であり、
任意に、前記外層と前記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.5~12:100であり、任意に、0.5~6:100である、
請求項1~6のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項8】
前記内層:中間層:外層の質量比は1~2:1~2:0.5~6である、
請求項1~7のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項9】
前記シュウ酸塩と前記ケイ酸塩との質量比は0.01~99:1であり、任意に、0.1~9:1であり、更に任意に、0.25~4:1である、
請求項1~8のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項10】
前記マンガン酸リチウム正極活性材料は多孔質構造であり、平均孔径は15~20nmであり、気孔率は10~20%である、
請求項1~9のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項11】
前記マンガン酸リチウム正極活性材料の体積平均粒径D50は12~14μmである、
請求項1~10のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項12】
前記被覆層の厚さは0.3~5.2μmであり、任意に、0.7~2.0μmであり、更に任意に、1.2~1.7μmである、
請求項1~11のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料。
【請求項13】
アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムを含むオキソ酸塩のうちの1種又は複数種をマンガン酸リチウム基材とともにボールミルし、表面に前記アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムを含むオキソ酸塩が被覆された前記マンガン酸リチウム基材をベースとする第1中間体を得ることと、
有機結合剤スラリーを調製し、前記第1中間体表面に前記有機結合剤スラリーをコーティングし、第2中間体を得ることと、
シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩スラリーを調製し、前記第2中間体表面に前記シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩スラリーをコーティングし、マンガン酸リチウム正極活性材料を得ることと、を含むマンガン酸リチウム正極活性材料の製造方法であって、
前記マンガン酸リチウム正極活性材料は、マンガン酸リチウム基材と、マンガン酸リチウム基材表面に設置された内層、前記内層表面に設置された中間層及び前記中間層表面に設置された外層を備える被覆層と、を含み、前記内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムを含むオキソ酸塩のうちの1種又は複数種を含み、前記中間層は、有機結合剤層であり、前記外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層である、方法。
【請求項14】
前記マンガン酸リチウム基材の重量に基づくとして、前記有機結合剤スラリーは1%~3%の孔形成剤を含み、前記孔形成剤は前記第2中間体に所定の温度を印加することで除去される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩を被覆する前、前記第2中間体を塩酸溶液に加え、40~120min撹拌し、濾過後に乾燥する、
請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料を含む、正極シート。
【請求項17】
前記正極シートは、ニッケルコバルトマンガン三元系材料を含み、前記ニッケルコバルトマンガン三元系材料と前記マンガン酸リチウム正極活性材料との質量比は0.01~0.99:1である、
請求項16に記載の正極シート。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか1項に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料、及び請求項16又は17に記載の正極シートのうちの1つ以上を含む、二次電池。
【請求項19】
請求項18に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項20】
請求項18に記載の二次電池又は請求項19に記載の電池モジュールのうちの1つ以上を含む、電池パック。
【請求項21】
請求項18に記載の二次電池、請求項19に記載の電池モジュール又は請求項20に記載の電池パックのうちの1つ以上を含む電気装置であって、
前記二次電池又は前記電池モジュール又は前記電池パックは、前記電気装置の電源又は前記電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用される、
電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学分野に関し、特にマンガン酸リチウム正極活性材料及びその製造方法、それを含む正極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー分野の急速な発展に伴い、リチウムイオン電池は、優れた電気化学特性、記憶効果がなく、環境汚染が少ない等の優位性により様々な大規模動力装置、エネルギー貯蔵システム及び様々な消費類製品に広く使用され、特に、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の新エネルギー自動車分野で広く使用されている。
【0003】
消費類電子製品及び新エネルギー車の普及に伴い、消費者はリチウムイオン電池の耐用年数と使用寿命に対して、より高い要件を求めている。しかし、現在のリチウムイオン電池は、人々の高まる需要に応えることが難しいため、低い製造コストを保証する前提下で、サイクル特性と倍率特性の両方を備えるリチウムイオン電池の設計は、主要な研究方向の1つとなっている。
【0004】
リチウムイオン電池によく使用される正極活性材料の中で、マンガン酸リチウムは、原材料が豊富で、製造が簡単で、安価で、安全性が高いことから、リチウムイオン電池に広く使用される正極活性材料となっている。しかし、リチウムイオン電池の深充放電プロセスにおいて、マンガン酸リチウム材料は格子歪みを起こしやすく、且つ電解液中のフッ化水素酸によって腐食されやすいため、遷移金属の溶出が起こりやすく、電池のサイクル特性と倍率特性が劣る。従って、遷移金属マンガンの析出を低減するマンガン酸リチウム材料の開発は非常に有意義である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は上記課題に鑑みてなされたものであり、電池の容量維持率を向上させ、電池のインピーダンスを低下させ、倍率特性を改善するマンガン酸リチウム正極活性材料、それを含む正極シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を提供することを目的とする。本願のマンガン酸リチウム正極活性材料は、低いコストの優位性を有する前提下で、リチウムイオン電池の耐用年数と使用寿命を顕著に改善することができる。
【0006】
本願の1つの目的は、遷移金属マンガンの析出を改善するマンガン酸リチウム正極活性材料を提供することである。
【0007】
本願の別の目的は、顕著に改善された電池の容量維持率を有すると同時に、倍率特性を向上させるマンガン酸リチウム正極活性材料を提供することである。
【0008】
発明者らは、本願の技術的解決手段を用いることによって、1つ又は複数の上記目的を実現できることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第1態様は、マンガン酸リチウム基材と、マンガン酸リチウム基材表面に設置された内層、上記内層表面に設置された中間層及び上記中間層表面に設置された外層を備える被覆層とを含み、上記内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩のうちの1種又は複数種を含み、上記中間層は、有機結合剤層であり、上記外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層である、マンガン酸リチウム正極活性材料を提供する。
【0010】
任意の実施形態において、上記アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩は、アルミニウム酸カリウム、アルミニウム酸マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミニウム酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミニウム酸マグネシウムから選ばれる1種又は複数種である。
【0011】
本願の第2態様は、マンガン酸リチウム基材と、マンガン酸リチウム基材表面に設置された内層、上記内層表面に設置された中間層及び上記中間層表面に設置された外層を備える被覆層とを含み、上記内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのフッ化物のうちの1種又は複数種を含み、上記中間層は、有機結合剤層であり、上記外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層である、マンガン酸リチウム正極活性材料を提供する。
【0012】
任意の実施形態において、上記フッ化物は、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム及びフッ化マグネシウムのうちの1種又は複数種である。
【0013】
任意の実施形態において、上記有機結合剤は、カルボキシメチルセルロース塩、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩から選ばれる1種又は複数種であり、任意に、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸リチウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸アルミニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸マグネシウムのうちの1種又は複数種である。
【0014】
任意の実施形態において、上記シュウ酸塩は、シュウ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩から選ばれ、任意に、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であり、更に任意に、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であり、上記ケイ酸塩は、ケイ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩から選ばれ、任意に、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムのうちの1種又は複数種である。
【0015】
任意の実施形態において、上記内層と上記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.01~3:100であり、任意に、1~2:100である。
【0016】
任意の実施形態において、上記中間層と上記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.5~3:100であり、更に任意に、1~2:100である。
【0017】
任意の実施形態において、上記外層と上記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.5~12:100であり、任意に、0.5~6:100である。
【0018】
任意の実施形態において、上記内層:中間層:外層の質量比は1~2:1~2:0.5~6である。
【0019】
任意の実施形態において、上記シュウ酸塩と上記ケイ酸塩との質量比は0.01~99:1であり、任意に、0.1~9:1であり、更に任意に、0.25~4:1である。
【0020】
任意の実施形態において、上記マンガン酸リチウム正極活性材料は多孔質構造であり、平均孔径は15~20nmであり、気孔率は10~20%である。
【0021】
任意の実施形態において、上記中間層は、塩酸エッチングで得られた荒い表面を有する。
【0022】
任意の実施形態において、上記マンガン酸リチウム正極活性材料の体積平均粒径D50は12~14μmである。
【0023】
任意の実施形態において、上記被覆層の厚さは0.3~5.2μmであり、任意に、0.7~2.0μmであり、更に任意に、1.2~1.7μmである。
【0024】
本願の第3態様は、
アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩のうちの1種又は複数種をマンガン酸リチウム基材とともにボールミルし、表面に上記アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩が被覆された上記マンガン酸リチウム基材をベースとする第1中間体を得ることと、
有機結合剤スラリーを調製し、上記第1中間体表面に上記有機結合剤スラリーをコーティングし、第2中間体を得ることと、
シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩スラリーを調製し、上記第2中間体表面に上記シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩スラリーをコーティングし、マンガン酸リチウム正極活性材料を得ることと、を含み、
上記マンガン酸リチウム正極活性材料は、マンガン酸リチウム基材と、マンガン酸リチウム基材表面に設置された内層、上記内層表面に設置された中間層及び上記中間層表面に設置された外層を備える被覆層とを含み、上記内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩のうちの1種又は複数種を含み、上記中間層は、有機結合剤層であり、上記外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層である、マンガン酸リチウム正極活性材料の製造方法を提供する。
【0025】
本願のマンガン酸リチウムの変性方法は、プロセスが簡単で、コストが低く、大規模な工業化に役立つ。
【0026】
任意の実施形態において、上記マンガン酸リチウム基材の重量に基づくとして、上記有機結合剤スラリーは、1~3wt%の孔形成剤を更に含み、上記孔形成剤は上記第2中間体に所定の温度を印加することで除去される。
【0027】
任意の実施形態において、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩を被覆する前、上記第2中間体を塩酸溶液に加え、40~120min撹拌し、濾過後に乾燥する。
【0028】
本願の第4態様は、本願の第1態様又は第2態様のマンガン酸リチウム正極活性材料又は本願の第3態様の方法によって製造されたマンガン酸リチウム正極活性材料を含む、正極シートを提供する。
【0029】
任意の実施形態において、任意に、上記正極シートは、ニッケルコバルトマンガン三元系材料を更に含み、上記ニッケルコバルトマンガン三元系材料と上記マンガン酸リチウム正極活性材料との質量比は0.01~0.99:1である。正極シートの製造は、従来の技術で既知されている正極シートを製造するための方法を用いることができる。ニッケルコバルトマンガン三元系材料は、従来の技術で既知されている正極シートを製造するためのニッケルコバルトマンガン三元系材料を用いることができる。
【0030】
本願の第5態様は、本願の第1態様又は第2態様に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料、本願の第3態様の方法によって製造されたマンガン酸リチウム正極活性材料、及び本願の第4態様の正極シートのうちの1つ以上を含む二次電池を提供する。二次電池の製造は、従来の技術で既知されている二次電池を製造するための方法を用いることができる。
【0031】
本願の第6態様は、本願の第5態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。電池モジュールの製造は、従来の技術で既知されている電池モジュールを製造するための方法を用いることができる。
【0032】
本願の第7態様は、本願の第5態様の二次電池又は本願の第6態様の電池モジュールのうちの1つ以上を含む電池パックを提供する。電池パックの製造は、従来の技術で既知されている用電池パックを製造するための方法を用いることができる。
【0033】
本願の第8態様は、本願の第5態様の二次電池、本願の第6態様の電池モジュール、又は本願の第7態様の電池パックのうちの1つ以上を含む電気装置であって、上記リチウムイオン電池又は上記電池モジュール又は上記電池パックが電気装置の電源又は電気装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用される電気装置を提供する。電気装置の製造は、従来の技術で既知されている電気装置を製造するための方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0034】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料は被覆構造であり、被覆層にマンガン酸リチウム基材が被覆され、「バリア層」及び「機能層」として従来のマンガン酸リチウム材料が持っていない有益な効果を有する。充放電プロセスにおいて、被覆層は、マンガン酸リチウム基材によって産生された遷移金属マンガンイオンが電解液中に直接「流れ込む」ことを「バリア」することができるだけでなく、電解液におけるフッ化水素酸がマンガン酸リチウム基材と直接接触することを「バリア」することができ、更に、電解液中のフッ化水素酸の腐食によってマンガン酸リチウム基材からより多くの遷移金属マンガンイオンを溶出することを防止する。また、被覆層は「機能層」として、被覆層内部には様々な有効成分(アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩又はフッ化物、有機結合剤、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩)が含まれ、これらの有効成分は、化学反応又は吸着効果によって電池内部にすでに存在する遷移金属マンガンイオンを減少させるため、遷移金属マンガンの産生及びSEI膜(solid electrolyte interphase、固体電解質界面膜)の触媒分解を遅くし、それにより電池のサイクル容量維持率を改善する。
【0035】
本願の電池モジュール、電池パック及び電気装置は、本願により提供されるリチウムイオン電池を含むため、少なくとも上記リチウムイオン電池と同じ優位性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本願の一実施形態のマンガン酸リチウム正極活性材料の構造及び動作モードの模式図である。
図2】本願の比較例1のマンガン酸リチウム正極活性材料のSEM写真である。
図3】本願の実施例38のマンガン酸リチウム正極活性材料のSEM写真である。
図4】本願の実施例1及び比較例1のマンガン酸リチウム正極活性材料に対応する電池の容量維持率とサイクル回数の曲線図である。
図5】本願の実施例1及び比較例1のマンガン酸リチウム正極活性材料に対応する電池の充電倍率と充電状態(SOC)の曲線図である。
図6】本願の一実施形態のリチウムイオン電池の模式図である。
図7図6に示される本願の一実施形態のリチウムイオン電池の分解図である。
図8】本願の一実施形態の電池モジュールの模式図である。
図9】本願の一実施形態の電池パックの模式図である。
図10図9に示される本願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図11】本願の一実施形態の電気装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して詳しく説明する。具体的には、本願のマンガン酸リチウム正極活性材料及びその製造方法、それを含む正極シート、リチウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電気装置を開示するが、不要な詳細説明が省略される場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細説明、実際の同一構造に対する繰り返し説明が省略される場合があり、その理由は、以下の説明が不必要に長くなるのを防ぎ、当業者の理解を容易にすることである。また、図面及び下記説明は、当業者に本願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されている主旨を限定するものではない。
【0038】
簡潔化するために、本願は具体的に幾つかの値の範囲を開示し、様々な値の範囲を互いに組み合わせて、対応する実施形態を形成することができる。任意の下限と任意の上限を組み合わせて明確に記述されていない範囲を形成してもよいが、更に、任意の下限と他の下限を組み合わせて明確に記述されていない範囲を形成してもよく、同様に任意の上限と任意の他の上限を組み合わせて明確に記述されていない範囲を形成してもよい。また、個別に開示された各ポイント又は単一の値は、それ自体が下限又は上限として任意の他のポイント又は単一の値と組み合わせるか又は他の下限又は上限と組み合わせることで明確に記述されていない範囲を形成してもよい。
【0039】
別途説明がない限り、本願で使用される用語は当業者に一般的に理解される公知の意味を有する。本願において、別途説明がない限り、「以上」、「以下」はその数自体を含み、例えば「aとbのうちの1つ以上」とは、a、b又はaとb等、aとbのうちの少なくとも1つを指す。同様に、「1種又は複数種」とは、少なくとも1つを含むことを指す。本明細書の説明において、別途説明がない限り、「又は(or)」という用語は包括的なものであり、即ち、「A又は(or)B」は「A、B又はAとBの両者」を表す。
【0040】
なお、「被覆層」という用語とは、マンガン酸リチウム基材に被覆された部分であり、上記部分はマンガン酸リチウム基材を被覆することができるが、必ずしも完全に被覆するのではなく、「被覆層」の使用は説明上の便宜に過ぎず、本願を制限することを意図しない。同様に、「被覆層の厚さ」という用語とは、マンガン酸リチウム基材の法線方向に沿ったマンガン酸リチウム基材に被覆された上記部分の厚さを指す。本願において、「内層」、「中間層」及び「外層」という用語は、説明しやすくするものに過ぎず、本願を制限することを意図しない。上記「被覆層全体の厚さ」とは、内層、中間層及び外層を含む、マンガン酸リチウム基材の法線方向に沿ってマンガン酸リチウム基材に被覆された全ての被覆層の厚さであり、上記「内層の厚さ」とは、マンガン酸リチウム基材の法線方向に沿ってマンガン酸リチウム基材に被覆された内層の厚さであり、上記「中間層の厚さ」とは、マンガン酸リチウム基材の法線方向に沿って内層表面に被覆された中間層の厚さであり、上記「外層の厚さ」とは、マンガン酸リチウム基材の法線方向に沿った中間層表面に被覆された外層の厚さである。
【0041】
なお、本明細書で使用される「多孔質構造」という用語は、マンガン酸リチウム正極活性材料の被覆層における有する可能性のある様々なサイズの孔径を説明しやすいものに過ぎない。電池の倍率特性を改善するために、本願は、マンガン酸リチウム正極活性材料の孔形成を実施している。孔のサイズは、マンガン酸リチウム基材自体の孔構造及び本願の中間層の有機結合剤層に対する孔形成処理によって決定される。
【0042】
発明者らは、複数の実験により、遷移金属を含むマンガン酸リチウム材料において、深充放電プロセスにおいて、その構造は格子歪みを起こしやすく、その構造に含浸される電解液による腐食(特に電解液の分解によって生成されるフッ化水素酸の腐食)を受けやすく、それにより元の構造におけるMn3+及び/又はMn4+はマンガン酸リチウムの格子構造から溶出し、更にMn2+に不均化される。生成されたこれらのMn2+は、電位差の作用により徐々に負極の表面に移動し、更に金属マンガンに還元され、生成されたこれらの金属マンガンは「触媒」に相当し、負極の表面SEI膜の分解を加速するため、大面積の破損や完全な損失が発生することを発見した。
【0043】
損失したSEI膜を補充するために、新しいSEI膜を形成するように電池内部の活性リチウム、溶媒等が連続的に消費される。このように、実際に充放電に寄与する活性リチウムの含有量が低下し、電池の容量維持率に不可逆的な影響を与える。次に、金属マンガンのSEI膜に対する触媒分解プロセスは一連の副生成物の生成に伴い、これらの副生成物は負極の表面に堆積し、リチウムイオンが負極に出入りする経路を妨げ、更に電池の内部抵抗を増加させ、電池の充放電倍率を低下される。同時に、電解液中の電解質の連続的な消費は、電解液の導電性を低下するとともに、リチウムイオンの正極と負極の間での移動抵抗を増加させ、最終的に電池のサイクル特性と倍率特性を劣化させる。
【0044】
大量の実験及び研究の結果、発明者らは、遷移金属マンガンの電池への悪影響を低減するために、次の2つの側面から行うことができることを発見した。第1側面は、マンガン酸リチウム材料によって生成されたMn2+の数を減らし、例えば、マンガン酸リチウム材料とフッ化水素酸を含む電解液とのバリアなしの直接接触を防止することで、フッ化水素酸によるマンガン酸リチウムの分解を抑制することである。第2側面は、マンガン酸リチウム材料によって生成されたMn2+の負極への移動を抑制することである。上記の2つの方式はいずれも、SEI膜を分解する金属マンガンの生成を減少することができる。従って、発明者らは、上記の2つの側面から、マンガン酸リチウム材料を変性させることにより、電池のサイクル特性を顕著に改善できる材料を得た。
【0045】
しかし、このようなマンガン酸リチウム材料に対するいくつかの変性手段は、不可避的に電池の倍率特性を低下させるため、発明者らは、大量の実験を経て、被覆層を設置し、被覆層の各層の含有量の配合比を改善し、被覆層の構造を改善する(特に、中間層の表面粗度及び孔形成処理を追加する)ことで、できる限り本願のリチウムイオン電池を良好なサイクル倍率と良好な倍率特性の両方を有させることを発見した。
【0046】
[マンガン酸リチウム正極活性材料]
図1を参照する。本願の第1態様は、マンガン酸リチウム基材と、マンガン酸リチウム基材表面に設置された内層、上記内層表面に設置された中間層及び上記中間層表面に設置された外層を備える被覆層と、を含み、上記内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩のうちの1種又は複数種を含み、上記中間層は、有機結合剤層であり、上記外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層であるマンガン酸リチウム正極活性材料を提供する。
【0047】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料は被覆構造であり、被覆層にマンガン酸リチウム基材が被覆され、「バリア層」及び「機能層」として、従来のマンガン酸リチウム材料が持っていない有益な効果を有する。充放電プロセスにおいて、被覆層は、マンガン酸リチウム基材によって産生された遷移金属マンガンイオンが電解液中に直接「流れ込む」ことを「バリア」することができるだけでなく、電解液におけるフッ化水素酸がマンガン酸リチウム基材と直接接触することを「バリア」することができ、更に、電解液中のフッ化水素酸の腐食によってより多くの遷移金属マンガンイオンを溶出することを防止する。また、被覆層は「機能層」として、被覆層内部には様々な有効成分(アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩、有機結合剤、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩)が含まれ、これらの有効成分は、化学反応又は吸着効果によって電池内部にすでに存在する遷移金属マンガンイオンを減少させることができるため、遷移金属マンガンの産生及びSEI膜の触媒分解を遅くし、それにより電池のサイクル容量維持率を改善する。
【0048】
幾つかの実施形態において、任意に、マンガン酸リチウム正極活性材料の内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩のうちの1種又は複数種を含む。
【0049】
幾つかの実施形態において、任意に、上記アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩は、アルミニウム酸カリウム、アルミニウム酸マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミニウム酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミニウム酸マグネシウムから選ばれる1種又は複数種である。
【0050】
本願の正極活性材料の内層における上記有効成分は、電解液におけるフッ化水素酸を消費することができる。電池の複数回の充放電プロセスにおいて、一部のフッ化水素酸が外層及び中間層を通過した後に内層に到達し、内層における有効成分は内層表面に到達したフッ化水素酸と反応する。例えば、炭酸アルミニウムとフッ化水素酸が反応してフッ化アルミニウム、水及び二酸化炭素を生成する。また、例えば、アルミニウム酸カリウムとフッ化水素酸が複雑な化学反応を発生し、最終的にフッ化アルミニウム及びその他の生成物を生成する。反応によって生成されたフッ化アルミニウムは内層表面に被覆し、反応していないフッ化水素酸とマンガン酸リチウム基材との接触を妨げるため、フッ化水素酸によるマンガン酸リチウム基材の腐食を避ける。
【0051】
本願は、内層を設置することによってマンガン酸リチウム正極活性材料内部に入ったフッ化水素酸を消費することにより、一方では、フッ化水素酸によるマンガン酸リチウム基材の腐食を避け、マンガン酸リチウム基材からのより多くのマンガンイオンの溶出を避けることができ、更に負極に移動したマンガンイオンを減少させ、更にSEI膜の分解を減少させ、更に活性リチウム及び電解液の消費を減少させることで、電池のサイクル容量維持率と倍率特性を向上させる。一方では、反応によって生成された金属フッ化物は、フッ化水素酸とマンガン酸リチウム基材との接触を妨げ、マンガン酸リチウム基材とフッ化水素酸との接触をバリアすることができ、また、金属フッ化物の導電性に優れるため、マンガン酸リチウム正極活物質内部全体のリチウムイオン伝送を加速することができ、それにより電池のサイクル特性と倍率特性を総合的に向上させる。
【0052】
本願の第2態様は、マンガン酸リチウム基材と、マンガン酸リチウム基材表面に設置された内層、上記内層表面に設置された中間層及び上記中間層表面に設置された外層を備える被覆層と、を含み、上記内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのフッ化物のうちの1種又は複数種を含み、上記中間層は、有機結合剤層であり、上記外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層であるマンガン酸リチウム正極活性材料を提供する。
【0053】
幾つかの実施形態において、任意に、上記フッ化物は、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム及びフッ化マグネシウムのうちの1種又は複数種である。
【0054】
本願の第2態様のマンガン酸リチウム正極活性材料は、内層の有効成分としてアルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩をアルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのフッ化物で置き換える以外、残りの部分は本願の第1態様に記載のマンガン酸リチウム正極活性材料と同じであり、本願の第2態様のマンガン酸リチウム正極活性材料は第1態様のマンガン酸リチウム正極活性材料と比べて、その被覆層は同様に「バリア層」及び「機能層」の作用を有し、それにより電池のサイクル容量維持率と倍率特性を改善する。
【0055】
幾つかの実施形態において、任意に、上記有機結合剤は、カルボキシメチルセルロース塩、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩から選ばれる1種又は複数種であり、任意に、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸リチウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸アルミニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸マグネシウムのうちの1種又は複数種である。
【0056】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料の中間層は有機結合剤層である。リチウムイオン電池において、その電解液は一般的に、有機溶媒に電池特性の発揮に役立つ様々な電解質が溶解されてなる。有機系において、シュウ酸塩とケイ酸塩は一般的に、電解液に溶解しないか又は溶解しにくいため、シュウ酸塩、ケイ酸塩を電解液に直接加えるか又は有機溶媒が溶解された正極スラリーに直接加えることの両方とも、混合が不均一で、遷移金属イオン及びフッ素イオンとの接触が不完全且つ不均一であることによって有益な効果が顕著に低下するという問題があるため、実際の工業化生産過程において、シュウ酸塩、ケイ酸塩を電池システムに添加することは難しい。従って、本願は、電解液中のマンガンイオンをキャプチャできるシュウ酸塩及びフッ化水素酸を消費できるケイ酸塩を正極活性材料に創造的に添加し、電解液に溶解しない上記の問題を回避した。
【0057】
本願の有機結合剤層(即ち中間層)は、一方では、接着の役割を果たし、内層(アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのフッ化物)に粘着して外層に接着する(シュウ酸塩及びケイ酸塩を有機結合剤層に接着する)ことで、本願に記載されているマンガン酸リチウム正極活性材料の三層被覆構造を安定させる。一方では、カルボキシメチルセルロース塩、アルギン酸塩、ポリアクリル酸塩等、一部の有機結合剤にはMn2+に結合するための官能基も含まれているため、電池システムにおけるMn2+を減少させる役割も果たしている。
【0058】
幾つかの実施形態において、任意に、上記シュウ酸塩は、シュウ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩から選ばれ、任意に、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であり、更に任意に、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウムのうちの1種又は複数種である。
【0059】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料の外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層である。ケイ酸塩は電解液によって産生されたフッ素イオンをキャプチャできるため、フッ化水素酸の量を低減し、フッ化水素酸によるマンガン酸リチウムの腐食分解を遅くし、電池システムに存在するMn2+の数を減少させる。
【0060】
発明者らは、大量の実験及び研究により、ケイ酸塩がフッ化水素酸を消費することでマンガンイオンの生成を回避する作用メカニズムは次の2種類がある。1つ目は、ケイ酸塩が電解液と分解してケイ酸が生成され、ケイ酸がフッ化水素酸とHSiO+4HF→SiF+3HOのような反応が発生することである。2つ目は、ケイ酸基内の(-O-Si)=O基が電解液におけるフッ素イオンを吸着することができることである。従って、被覆層におけるケイ酸塩は、電解液に含まれるフッ化水素酸の含有量を減少させ、フッ化水素酸によるマンガン酸リチウム基材の腐食によって引き起こされた遷移金属マンガンイオンの産生を回避することができる。
【0061】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料の外層はシュウ酸塩を更に含む。遷移金属Mn2+を含む電池内部において、電解液に溶解されたシュウ酸塩からC 2-基が電離され、Na、K等のアルカリ金属イオンと比べて、電離したC 2-基は電解液中の遊離Mn2+と優先的に結合するため、Mn2+を減少させ、更に除去する。
【0062】
以上から分かるように、本願の被覆層は内層、中間層及び外層と組み合わせた共同作用によって、電池内部の遷移金属Mn2+の含有量を顕著に低減し、更にSEI膜を「触媒」分解する金属マンガンの生成量を顕著に低減するため、遷移金属マンガンによる負極の表面SEI膜の分解消費を遅くし、更に新しいSEI膜の形成による活性リチウムの消費を減少させ、実際に充放電に寄与する活性リチウムの含有量を増加させ、最終的に電池の複数回の充放電サイクル後の電池の容量維持率を向上させる。次に、上記変性マンガン酸リチウム正極活性材料の作用下で、遷移金属によるSEI膜の分解を顕著に緩和するため、SEI膜の分解によって産生された副生成物も顕著に減少し、よって、負極の表面での大量の副生成物の堆積を回避し、リチウムイオンが負極に出入りする抵抗を抑制し、それにより電池のインピーダンスを低減し、よって電池の倍率特性の向上に役立つ。同時に、上記変性マンガン酸リチウム材料の作用下で、SEI膜の分解速率が顕著に低下するため、電解液中の電解質の消費量も顕著に低下し、よって電解液の導電性の維持効果がより優れる。要するに、従来のマンガン酸リチウム材料と比べて、本願のマンガン酸リチウム正極活性材料は、電池のサイクル容量維持率と倍率特性を総合的に向上させることができる。
【0063】
幾つかの実施形態において、任意に、上記内層は、上記マンガン酸リチウム基材を完全に被覆してもよく、上記マンガン酸リチウム基材の一部を被覆してもよく、具体的には、内層における物質の使用量に関連する。類似的に、上記中間層が内層を完全に被覆するかどうかは、有機結合剤の使用量に大きく依存する。有機結合剤とマンガン酸リチウム基材との質量比が1:100以上である場合、基本的に完全に被覆することができる。類似的に、上記外層が中間層を完全に被覆するかどうかは、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩の使用量に大きく依存する。適切な被覆は被覆層全体の効果の最適化に役立つが、過度な被覆はリチウムイオン電池の倍率特性に影響を与える可能性がある。
【0064】
幾つかの実施形態において、任意に、上記内層と上記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.01~3:100であり、任意に、1~2:100である。
【0065】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料において、内層とマンガン酸リチウム基材との適切な質量比は、一方では、内層がマンガン酸リチウム基材を緊密且つ均一に被覆することに役立ち、フッ化水素酸がマンガン酸リチウム基材に入ることを十分にバリアし、更にこれによる電池のサイクル特性の低下を回避し、一方では、内層にはフッ化水素酸を消費する適量な有効成分(アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩又はフッ化物)が含まれることで電池のサイクル特性を向上させると同時に、内層が厚すぎるため電池の倍率特性を劣化させることがないように維持する。
【0066】
任意に、上記内層と上記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.01:100、0.5:100、1:100、1.5:100、2:100、3:100であり、又はその値が上記任意の2つの値を組み合わせて得られた範囲内に含まれる。
【0067】
幾つかの実施形態において、任意に、上記中間層と上記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.5~3:100であり、更に任意に、1~2:100である。
【0068】
前述のとおり、有機結合剤の適切な量は、本願のマンガン酸リチウムの有益な機能の確立にとって非常に重要である。また、発明者らは大量の実験により、以下のことを発見した。
【0069】
被覆層の有機結合剤の含有量が低すぎる場合、十分な接着効果を果たすことができない。一方では、内層の有効成分をマンガン酸リチウム基材の表面に安定させることができず、一方では、外層の有効成分に緊密に接着することができない。これにより、有機結合剤の接着機能が低下し、更に被覆層が機能できなくなる。逆に、被覆層の有機結合剤の含有量が高すぎる場合、被覆層が厚すぎて、マンガン酸リチウム正極活性材料でのリチウムイオンの伝送を妨げて、リチウムイオンの放出又は挿入が困難となり、それにより電池の充電倍率が低くなる。適量な有機結合剤は、一方では、被覆層の三層被覆構造を十分に安定させ、電池の複数回の充放電プロセスにおける構造の安定性を確保し、もう一方では、被覆層内の有効成分(アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩又はフッ化物、有機結合剤、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩)のマンガンイオン又はフッ化水素酸へのキャプチャ効果を十分に発揮させることを確保し、更に一方では、優れる充電倍率を確保することもできる。
【0070】
任意に、上記中間層と上記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.5:100、1:100、1.5:100、2:100、3:100であってもよく、又はその値が上記任意の2つの値を組み合わせて得られた範囲内に含まれる。
【0071】
幾つかの実施形態において、任意に、上記外層と上記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.5~12:100であり、任意に、0.5~6:100である。
【0072】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料において、外層とマンガン酸リチウム基材との適切な質量比は、電池内部の遷移金属イオン及び電解液におけるフッ素イオンを十分にキャプチャすることに役立ち、それによりマンガンイオンの産生を減少させ、マンガンイオンの負極への移動を回避し、更に遷移金属マンガンによるSEI膜の消費を減少させ、更に活性リチウム及び電解液の消費を顕著に減少させ、電池のサイクル容量維持率と倍率特性を向上させる。
【0073】
被覆層のシュウ酸塩及び/又はケイ酸塩の含有量が低すぎる場合、外層は、フッ素イオン及び遷移金属イオンをキャプチャする十分な基を提供することができず、電池の電気特性の改善はわずかである。逆に、被覆層のシュウ酸塩及び/又はケイ酸塩の含有量が高すぎる場合、外層には活性リチウムイオンが含まれないため、マンガン酸リチウム正極活性材料のグラム容量が低下し、即ち同じ質量のマンガン酸リチウム正極活性材料に占める有効なマンガン酸リチウムの質量比が低下し、それによりその理論的なグラム容量を損失し、逆にサイクル特性を低下させる。
【0074】
任意に、上記外層と上記マンガン酸リチウム基材との質量比は0.5:100、1:100、3:100、6:100、12:100であってもよく、又はその値が上記任意の2つの値を組み合わせて得られた範囲内に含まれる。
【0075】
幾つかの実施形態において、任意に、上記内層:中間層:外層の質量比は0.01~3:0.5~3:0.5~12であり、任意に、1~2:1~2:0.5~6であり、即ち1:0.5~2:0.25~6である。
【0076】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料において、内層、中間層及び外層の適切な質量比は被覆層全体が作用をよく発揮し、被覆層の構造を最適化することを確保することができる。三層の相乗作用によって、一方では、被覆層の「バリア」作用をよく発揮することができ、一方では、化学反応又は吸着効果によって電池内部に産生された遷移金属マンガンイオンを減少することができる。また、内層、中間層及び外層の適切な質量比は、被覆層の機能を保証すると同時に、被覆層の厚すぎによる電池のインピーダンス特性への悪影響を回避することもできる。
【0077】
幾つかの実施形態において、任意に、上記シュウ酸塩と上記ケイ酸塩との質量比は0.01~99:1であり、任意に、0.1~9:1であり、更に任意に、0.25~4:1である。
【0078】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料において、ケイ酸塩は電解液におけるフッ素イオンのキャプチャに使用され、フッ化水素酸のマンガン酸リチウム基材への腐食による遷移金属マンガンイオンの析出を遅くし、シュウ酸塩は電池内部の遷移金属マンガンイオンへの直接キャプチャに使用される。シュウ酸塩とケイ酸塩を併用すると効果が最適である。シュウ酸塩の質量とケイ酸塩の質量との比が低すぎる場合、外層におけるシュウ酸塩の質量が少なくすぎることを表し、被覆層の電池内部の遷移金属マンガンイオンに対するキャプチャ率が低下する。逆に、シュウ酸塩の質量とケイ酸塩の質量との比が高すぎる場合、外層におけるケイ酸塩量が少なくすぎることを表し、電解液におけるフッ素イオンが十分にキャプチャされず、マンガン酸リチウム正極活性材料表面への侵食が激しくなる。従って、上記の比が高すぎる又は低すぎる両方とも、多くの遷移金属マンガンイオンが負極に移動して金属マンガンに還元され、最終的に電池のサイクル容量維持率と倍率特性に影響を与える。
【0079】
任意に、上記シュウ酸塩の質量と上記ケイ酸塩の質量との比は0.01:1、0.1:1、0.25:1、0.43:1、0.67:1、2.3:1、4:1、9:1、99:1であってもよく、又はその値が上記任意の2つの値を組み合わせて得られた範囲内に含まれる。
【0080】
幾つかの実施形態において、任意に、上記マンガン酸リチウム正極活性材料は多孔質構造であり、平均孔径は15~20nmであり、気孔率は10~20%である。
【0081】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料は多孔質構造を有し、該多孔質構造は、マンガン酸リチウム基材自体の孔構造及び本願の中間層の有機結合剤層に対する孔形成処理によって決定される。多孔質構造を有するマンガン酸リチウム正極活性材料は、正極活性材料内部でのリチウムイオンの伝送経路の短縮に役たち、それによりフッ化水素酸に耐性があり、マンガンイオンをキャプチャすると同時に、電池のインピーダンスの低下及び高速充電特性を向上させることを保証する。
【0082】
任意に、上記マンガン酸リチウム正極活性材料の平均孔径は15nm、18nm、19nm又は20nmであってもよく、気孔率は13%、18%、19%又は20%であってもよい。
【0083】
幾つかの実施形態において、任意に、上記中間層は塩酸でエッチングされて得られた荒い表面を有する。
【0084】
本願の正極活性材料において、中間層の荒い表面は、一方では、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩の付着面積を増加させ、その付着のためのより大きなスペースを提供し、より多くの数のシュウ酸塩及びケイ酸塩が完全に付着し、付着の難しさを軽減し、それにより外層が中間層の表面に緊密に粘着することに役立つ。
【0085】
幾つかの実施形態において、任意に、上記マンガン酸リチウム正極活性材料の体積平均粒径D50は12~14μmである。
【0086】
本願のマンガン酸リチウム正極活性材料は、粒径が大すぎる場合、正極活性材料粒子でのリチウムイオンの伝送経路を長くし、電池のインピーダンスを増加させ、シートの加工に役立たない。実験に検証された結果、その粒径が12~14μmの範囲内である場合、対応する電池の電気特性が優れる。
【0087】
マンガン酸リチウム基材自体は独立して存在する粒子として、一次粒子であってもよく、二次粒子(即ち一次粒子の凝集によるもの)であってもよい。
【0088】
幾つかの実施形態において、任意に、上記被覆層の厚さは0.3~5.2μmであり、任意に、0.7~2.0μmであり、更に任意に、1.2~1.7μmである。
【0089】
被覆層全体の適切な厚さは、十分な接着作用を果たすことができ、十分な量の内層、中間層及び外層を接着し、マンガン酸リチウム基材の表面と緊密に接着する。被覆層の厚さが低すぎる場合、被覆層内の各物質、特に結合剤の含有量が少なくすぎることを表し、一方では、内層と緊密に接着できず、一方では、十分な量のシュウ酸塩とケイ酸塩に粘着することができず、それにより被覆層が機能できなくなる。逆に、被覆層全体が厚すぎる場合、マンガン酸リチウム正極活性材料でのリチウムイオンの伝送を妨げて、リチウムイオンの放出又は挿入が困難となり、一方では、電池のサイクル容量維持率が低下し、一方では、電池の倍率特性に影響を与える。
【0090】
発明者らは、研究により、各層の厚さが各層物質の使用量と基本的に正の相関関係があることを発見した。各層に共同作用を発揮させるために、幾つかの実施形態において、任意に、上記内層の厚さは0.02~0.2μmであり、上記中間層の厚さは0.1~3μmであり、上記外層の厚さは0.02~2μmである。
【0091】
本願に記載されているマンガン酸リチウム正極活性材料は、優れる機械的特性を有し、正極シート又はリチウムイオン電池に製造した後、マンガン酸リチウム正極活性材料の構造が良好に維持され、被覆層の厚さに顕著な変化が発生せず、基本的に内層又は中間層又は外層の脱落も発生しない。
【0092】
本願の一実施形態において、
アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩のうちの1種又は複数種をマンガン酸リチウム基材とともにボールミルし、表面に上記アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩が被覆された上記マンガン酸リチウム基材をベースとする第1中間体を得ることと、
有機結合剤スラリーを調製し、上記第1中間体表面に上記有機結合剤スラリーをコーティングし、第2中間体を得ることと、
シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩スラリーを調製し、上記第2中間体表面に上記シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩をコーティングし、マンガン酸リチウム正極活性材料を得ることと、を含み、
上記マンガン酸リチウム正極活性材料は、マンガン酸リチウム基材と、マンガン酸リチウム基材表面に設置された内層、上記内層表面に設置された中間層及び上記中間層表面に設置された外層を備える被覆層とを含み、上記内層は、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩のうちの1種又は複数種を含み、上記中間層は、有機結合剤層であり、上記外層は、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩層である、マンガン酸リチウム正極活性材料の製造方法を提供する。
【0093】
具体的には、マンガン酸リチウム基材の表面に内層(即ちアルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩)を被覆する場合、100質量部のマンガン酸リチウムを基準として、アルミニウム、カルシウム及び/又はマグネシウムのオキソ酸塩の使用量は0.01~3質量部であり、任意に、0.5~2質量部であり、更に任意に、0.5~1.5質量部である。
【0094】
有機結合剤層を被覆する場合、100質量部のマンガン酸リチウムを基準として、0.01~5質量部の有機結合剤と1~500質量部の脱イオン水(有機結合剤と脱イオン水との比率は1:100)を撹拌して混合し、有機結合剤スラリーを得る。
【0095】
外層(即ちシュウ酸塩、ケイ酸塩)を被覆する場合、100質量部のマンガン酸リチウムを基準として、0.01~3質量部のシュウ酸塩及び/又はケイ酸塩と1~300質量部の脱イオン水(シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩の合計と脱イオン水との比率は1:100)を撹拌して混合し、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩のコーティングスラリーを得る。但し、シュウ酸塩とケイ酸塩との質量比は0.01~99:1であり、任意に、0.1~9:1であり、更に任意に、0.25~4:1である。
【0096】
具体的には、上記ステップにおいて、撹拌温度は20~40℃であり、撹拌回転速度は100~1500rpmであり、撹拌時間は30~60minである。
【0097】
具体的には、上記ステップにおいて、撹拌しながら乾燥するという乾燥方式が選択でき、乾燥温度は50~230℃であり、乾燥時間は1~6hである。乾燥温度と時間は、本願の目的の達成に十分であることが好ましい。例えば、孔形成剤が使用されていない場合、乾燥温度と時間は、材料に含まれる水分を除去するのに十分であることが好ましい。孔形成剤が使用される場合、乾燥温度と時間は、材料に含まれる孔形成剤を除去するのにも十分であることが好ましい。それにより中間層に多孔質構造を設置する目的を達成する。
【0098】
幾つかの実施形態において、任意に、上記マンガン酸リチウム基材の重量に基づくとして、上記有機結合剤スラリーは1~3wt%の孔形成剤を更に含み、上記孔形成剤は上記第2中間体に所定の温度を印加することで除去される。ここでの「所定の温度」は、孔形成剤を完全に除去できるが材料に悪影響を与えない温度であり、具体的な温度は様々な孔形成剤の揮発温度によって決定される。
【0099】
本願において、シュウ酸塩とケイ酸塩を中間層表面に容易に付着するために、任意選択に中間層の表面に多孔質構造を設置することができる。当業者に既知されている孔形成の方法を使用して多孔質構造を設置することができる。例えば、テンプレート法、ナノエッチング法、孔形成剤法、自己組立法等が使用できる。本願は、好ましくは孔形成剤法を使用して孔形成を行う。上記孔形成剤は、当該分野で既知されている孔形成に使用される物質であってもよい。例えば、ポリビニルピロリドン、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等であってもよく、好ましくは炭酸アンモニウムである。
【0100】
また、発明者らは、研究により、中間層表面に多孔質構造を設置することで、マンガン酸リチウム基材の表面を被覆することによる電池の倍率特性の低下を緩和できることを発見した。その理由は、多孔質構造によって正極活性材料の表面張力を低減し、リチウムイオンが正極材料に出入りする通路を短くし、リチウムイオンの伝送により役立ち、それによりリチウムイオンの正極材料での脱着により役立つことである。
【0101】
適量な孔形成剤は本願の上記目的の達成に役立つ。孔形成剤の使用量が少ない場合、中間層の孔構造が不十分であり、孔構造の優位性を効果的に発揮することができない。孔形成剤の使用量が多すぎる場合、中間層の基本的な構造を破壊する可能性があり、中間層が内層と外層に緊密に接着するという有益な効果を発揮することができない。
【0102】
幾つかの実施形態において、任意に、シュウ酸塩及び/又はケイ酸塩を被覆する前、上記中間層(即ち有機結合剤層)を被覆する生成物を塩酸溶液に加え、40~120min撹拌し、濾過後に乾燥する。
【0103】
シュウ酸塩とケイ酸塩を中間層により容易に付着するために、中間層の一部を粗化処理する必要がある。当該分野で一般的に既知されている方法を用いて中間層表面を粗化処理することができる。例として、化学方法を用いて中間層表面を処理することができる。例えば、一定の濃度の酸溶液を使用して中間層表面をエッチングすることができる。例として、本願では、濃度が0.001mol/Lの塩酸溶液を用いて中間層表面をエッチングする。
【0104】
粗化処理により、中間層の比表面と凹凸面が増加し、次の有益な効果がある。1、シュウ酸塩とケイ酸塩は中間層により容易に粘着し、それによりマンガンイオンのキャプチャ及びフッ化水素酸の消費の作用をより良く発揮する。2、マンガン酸リチウム基材と電解液の接触面積が増加し、リチウムイオンの脱着のためにより多くの活性ポイントを提供する。上記有益な効果は電池のサイクル特性と倍率特性を総合的に向上することができる。
【0105】
任意に、エッチング時間は40~120minである。エッチング時間が短すぎると、粗化処理の効果が顕著ではない。エッチング時間が長すぎると、中間層の構造を破壊し、更に内層の有効成分を損失する可能性がある。
【0106】
[正極シート]
本願は、本願の第1態様のマンガン酸リチウム正極活性材料を含む正極シートを提供する。
【0107】
幾つかの実施形態において、任意に、上記正極シートは、NCM(ニッケルコバルトマンガン)三元系材料を更に含み、上記NCM(ニッケルコバルトマンガン)三元系材料と上記マンガン酸リチウム正極活性材料との質量比は0.01~99:1である。
【0108】
現在、純マンガン酸リチウムをリチウムイオン電池の正極活物質として使用する場合、対応するリチウムイオン電池の電気特性、特にエネルギー密度が低いため、一般的にNCM(ニッケルコバルトマンガン)三元系材料と組み合わせて使用される。マンガン酸リチウムとNCMの三元系材料を組み合わせて使用すると、次の有益な効果がある。NCM(ニッケルコバルトマンガン)三元系材料を単独で使用するコストを削減し、電池の安定性及び安全性を向上させ、マンガン酸リチウムとNCMの三元系材料の電圧プラットフォームの不一致によるBMS(Battery Management System、電池管理システム)プラットフォームを管理しにくいという問題を解決し、また、NCM(ニッケルコバルトマンガン)三元系材料の表面に塩基性の残留リチウムが含まれ、電解液における一部のフッ化水素酸を中和することができる。
【0109】
正極シートは、正極集電体及び正極集電体の少なくとも1つの表面に設置された正極材料を含む。例として、正極集電体はそれ自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、正極材料は正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設置されている。
【0110】
本願のリチウムイオン二次電池において、上記正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。例えば、金属箔として、アルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基層及び高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属層を含むことができる。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、1,3-プロパンスルトン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)に形成することで形成できるが、本願はこれらの材料に限定されない。
【0111】
上記正極材料は、選択可能に導電剤を更に含んでもよい。しかし、導電剤の種類を具体的に限定せず、当業者は、実際のニーズに応じて選択することができる。例として、正極材料として使用される導電剤は、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及カーボンナノ繊維から選ばれる1つ以上であってもよい。
【0112】
本願において、当該分野で既知されている方法を用いて正極シートを製造することができる。例として、本願の正極活性材料、導電剤及び接着剤を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン(NMP))に分散し、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体にコーティングし、乾燥、冷間圧延等のプロセスを経た後に正極シートを得る。
【0113】
[負極シート]
負極シートは、負極集電体及び負極集電体の少なくとも1つの表面に設置された負極膜層を含み、上記負極膜層は負極活性材料を含む。
【0114】
例として、負極集電体はそれ自体の厚さ方向に対向する2つの表面を有し、負極膜層は負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設置されている。
【0115】
本願のリチウムイオン二次電池において、上記負極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。例えば、金属箔として、銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基層及び高分子材料基層の少なくとも1つの表面に形成された金属層を含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)に形成することで形成できるが、本願はこれらの材料に限定されない。
【0116】
本願の負極シートにおいて、上記負極膜層は一般的に負極活性材料及び選択可能な接着剤、選択可能な導電剤及び他の選択可能な助剤を含み、一般的に負極スラリーがコーティングして乾燥してなる。負極スラリーは一般的に、負極活性材料及び選択可能な導電剤と接着剤等を溶媒に分散し、均一に撹拌して形成されてなる。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。
【0117】
例として、導電剤は、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及カーボンナノ繊維から選ばれる1つ以上であってもよい。
【0118】
本願の負極シートにおいて、上記負極膜層は負極活性材料を含む以外、選択可能に、よく使用される他の負極活性材料を更に含む。例えば、よく使用される他の負極活性材料として、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素基材材料、錫基材材料及びチタン酸リチウム等が挙げられる。上記ケイ素基材材料は、ケイ素単体、酸化ケイ素化合物、ケイ素-炭素複合物、ケイ素-窒素複合物及びケイ素合金から選ばれる1つ以上であってもよい。上記錫基材材料は、錫単体、酸化スズ化合物及び錫合金から選ばれる1つ以上であってもよい。
【0119】
[電解質]
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝達する作用を果たしている。本願は、電解質の種類を具体的に限定せず、ニーズに応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0120】
幾つかの実施形態において、上記電解質は電解液を用いる。上記電解液は電解質塩と溶媒を含む。
【0121】
幾つかの実施形態において、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ素酸リチウム(LiAsF)、リチウムビスフルオロスルホンイミド(LiFSI)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムトリフレート(LiTFS)、ホウ酸ジフルオロシュウ酸リチウム(LiDFOB)、ホウ酸ジシュウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ジフルオロビスオキサレートリン酸リチウム(LiDFOP)及テトラフルオロビスオキサレートリン酸リチウム(LiTFOP)から選ばれる1つ以上であってもよい。
【0122】
幾つかの実施形態において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)から選ばれる1つ以上であってもよい。
【0123】
幾つかの実施形態において、上記電解液には、選択可能に添加剤を更に含む。例えば、添加剤は負極膜形成添加剤を含んでもよく、正極膜形成添加剤を含んでもよく、また、電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温特性を改善する添加剤、及び電池の低温特性を改善する添加剤等、電池の特定の特性を改善できる添加剤を含んでもよい。
【0124】
[セパレータ]
電解液を用いたリチウムイオン二次電池、及び固体電解質を用いた幾つかのリチウムイオン二次電池には、セパレータを更に含む。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、隔離の作用を果たしている。本願は、セパレータの種類を特に制限せず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。幾つかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選ばれる1つ以上であってもよい。セパレータは単層薄膜であってもよく、多層複合薄膜であってもよいが、特に限定されていない。セパレータが多層複合薄膜である場合、各層の材料は同じ又は異なるであってもよいが、特に限定されていない。
【0125】
[リチウムイオン二次電池]
幾つかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又はラミネーションプロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0126】
幾つかの実施形態において、本願の二次電池はリチウムイオン二次電池である。
【0127】
幾つかの実施形態において、リチウムイオン二次電池は外装を含むことができる。該外装は上記電極アセンブリ及び電解質のパッケージに用いることができる。
【0128】
幾つかの実施形態において、リチウムイオン二次電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケース等のハードケースであってもよい。リチウムイオン二次電池の外装は、ソフトバッグ等のソフトパッケージであってもよい。ソフトパッケージの材質はプラスチックであってもよい。プラスチックとして、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンサクシネート(PBS)等が挙げられる。
【0129】
本願は、リチウムイオン二次電池の形状を特に制限せず、円筒形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図6は、例とする四角形構造のリチウムイオン電池5である。
【0130】
幾つかの実施形態において、図7図6に示される本願の一実施形態のリチウムイオン電池の分解図である。外装はケース51とカバープレート53を含むことができる。そのうち、ケース51はボトムプレート及びボトムプレートに接続されたサイドプレートを含み、ボトムプレートとサイドプレートが取り囲んで収容キャビティが形成される。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、上記収容キャビティを密閉するように、上記開口を覆設することができる。正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又はラミネーションプロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、上記収容キャビティ内に封入される。電解液は電極アセンブリ52に含浸される。リチウムイオン電池5に含まれている電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、当業者は具体的なニーズに応じて選択することができる。
【0131】
[電池モジュール]
幾つかの実施形態において、リチウムイオン二次電池は、電池モジュールに組み立てることができる。電池モジュールに含まれているリチウムイオン電池の数は1つ又は複数であってもよく、当業者は、電池モジュールの適用及び容量に応じて具体的な数を選択することができる。
【0132】
図8は例とする電池モジュール4である。図8を参照し、電池モジュール4において、複数のリチウムイオン電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置することができる。当然ながら、他の任意の方式により配置することもできる。更に、締結部品によって、この複数のリチウムイオン電池5を固定することができる。
【0133】
任意に、電池モジュール4は、収容スペースを有するハウジングを含んでもよく、複数のリチウムイオン電池5はこの収容スペースに収容される。
【0134】
[電池パック]
幾つかの実施形態において、上記電池モジュールは、電池パックに組み立てることもできる。当業者は、電池パックの適用及び容量に応じて、電池パックに含まれている電池モジュールの数を選択することができる。
【0135】
図9及び図10は例とする電池パック1である。図9及び図10を参照し、電池パック1には、電池ボックス及び電池ボックス内に設置された複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ボックスは上筐体2と下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3に覆設可能であり、電池モジュール4を収容するための密閉スペースを形成する。複数の電池モジュール4は任意の方式によって電池ボックス内に配置することができる。
【0136】
[電気装置]
また、本願は、本願により提供されるリチウムイオン電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの1つ以上を含む電気装置を更に提供する。上記リチウムイオン電池、電池モジュール、又は電池パックは、上記装置の電源として使用されてもよいが、上記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。上記装置は、モバイルデバイス(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電気自転車、電気スクーター、電気ゴルフカート、電気トラック等)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0137】
上記電気装置として、その使用のニーズに応じて、リチウムイオン電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0138】
図11は例とする装置である。該装置は電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該装置のリチウムイオン電池の高パワーと高エネルギー密度に対するニーズを満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0139】
別の例の装置として、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコン等であってもよい。該装置は一般的に軽質化が要求され、電源としてリチウムイオン電池を用いることができる。
【実施例
【0140】
以下、本願の実施例を説明する。以下に説明する実施例は例示的であり、本願を解釈するものに過ぎず、本願を制限するものと理解できない。実施例には具体的な技術又は条件が明記されていない場合、当該分野内の文献に記載されている技術又は条件、或いは、製品の説明書に従って実施される。製造メーカーが明記されていない試薬又は機器は、いずれも当該分野でよく使用され、市販されている従来の製品である。本願の実施例における各成分の含有量は、別途説明がない限り、いずれも結晶水を含まない乾燥重量に基づくとする。
【0141】
本願の実施例に関する原材料の供給源は以下のとおりである。
【0142】
マンガン酸リチウム(LiMn、天津国安盟固利テクマテリアルテクノロジー株式会社)
ニッケルコバルトマンガン(LiMO、MはNi-Co-Mn固溶体、その質量比は55:12:33である)
テトラフルオロアルミン酸カリウム(KAlF、CAS:13775-52-5、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
アルミニウム酸カリウム(KAl、CAS:12003-63-3、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
フッ化アルミニウム(AlF、CAS:7784-18-1、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC、CAS:9004-65-03、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
アルギン酸ナトリウム(SA、CAS:9005-38-3、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS、CAS:9003-04-7、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
ケイ酸カリウム(KSiO、CAS:1312-76-1、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
シュウ酸カリウム(K、CAS:6487-48-5、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
ポリビニルピロリドン(PVP、CAS:9003-39-8、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
塩酸(CAS:7647-01-0、仕様≧31%、南京聯特化工有限公司)
導電剤カーボンブラック(CAS:1333-86-4、カーボンドット、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
線状カーボンブラック(CAS:308068-56-6、多層カーボンナノチューブ、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
ポリフッ化ビニリデン(PVDF、CAS:24937-79-9、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
N-メチルピロリドン(NMP、CAS:872-50-4、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
スチレンブタジエンゴム(SBR、CAS:9003-55-8、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
エチレンカーボネート(EC、CAS:96-49-1、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
ジメチルカーボネート(DMC、CAS:616-38-6、上海マクリーンバイオテクノロジー有限公司)
【0143】
実施例1
[マンガン酸リチウム正極活性材料の製造]
1)被覆内層:100gのマンガン酸リチウム基材材料(LiMnとして、以下は同様)及び1gのテトラフルオロアルミン酸カリウム(KAlFとして)を秤量してボールミルし、テトラフルオロアルミン酸カリウムでマンガン酸リチウム基材を均一に被覆し、第1中間体を得た。ボールミルパラメータ:配合比15:1、回転速度800rpm、ボールミル時間120minであった。
【0144】
2)被覆中間層:0.5gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを秤量し、50gの脱イオン水に加え、25℃下で800rpmの回転速度で30min撹拌し、均一なコロイド溶液を得た。次に上記コロイド溶液にステップ1)の第1中間体を加え、25℃下で800rpmの回転速度で120min撹拌し、上記材料をカルボキシメチルセルロースナトリウムで均一に被覆することを確保した。次に、水分を除去するために、得られた材料を80℃下で1h乾燥し、カルボキシメチルセルロースナトリウムが上記材料表面を緊密に被覆することを確保し、第2中間体を得た。
【0145】
3)被覆外層:250gの脱イオン水を秤量し、2.5gのシュウ酸カリウム(Kとして)及び2.5gのケイ酸カリウム(KSiOとして)を加え、25℃下で800rpmの回転速度で30min撹拌し、均一な被覆スラリーを得た。次に、上記被覆スラリーにステップ2)の第2中間体を加え、25℃下で800rpmの回転速度で180min撹拌した。次に、水分を除去するために、得られた材料を80℃下で1h乾燥し、シュウ酸カリウムとケイ酸カリウムが上記材料表面を緊密に被覆することを確保し、本願のマンガン酸リチウム正極活性材料を得た。
【0146】
[正極シートの製造]
製造されたマンガン酸リチウム正極活性材料、ニッケルコバルトマンガン(NCM)三元系材料、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、N-メチルピロリドン(NMP)を重量比67.34:28.86:2.7:1.1:30で撹拌して均一に混合し、正極スラリーを得た。次に、正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔に均一にコーティングし、乾燥、巻き取り、圧延によって正極シートを得た。
【0147】
[負極シートの製造]
人造黒鉛、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及び脱イオン水を重量比96.2:0.8:0.8:1.2:50で混合し、均一に混合した後に負極スラリーを得て、負極スラリーを負極集電体の銅箔に均一にコーティングし、乾燥、巻取り、圧延によって、負極シートを得た。
【0148】
[電解液の調製]
アルゴンガス雰囲気のグローブボックス(HO<0.1ppm、O<0.1ppm)において、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比3/7で均一に混合し、12.5%のLiPFリチウム塩を加えて有機溶媒に溶解し、均一に撹拌し、実施例1の電解液を得た。
【0149】
[セパレータ]
ポリプロピレン膜をセパレータとした。
【0150】
[リチウムイオン電池の製造]
実施例1の正極シート、セパレータ、負極シートを順に積み重ね、セパレータが正極シートと負極シートとの間に位置することで隔離の役割を果たし、次に巻回して裸セルを得て、裸セルにタブを溶接し、裸セルをアルミニウムケース内に入れ、80℃下で乾燥して水分を除去し、続いて電解液を注入して密封し、充電されていない電池を得た。充電されていない電池は、順に静置、熱間と冷間圧延、化学的形成、成形、容量テスト等のプロセスを経て、実施例1のリチウムイオン電池製品を得た。
【0151】
実施例2~7
カルボキシメチルセルロースナトリウムの使用量がそれぞれ1g、1.5g、2g、3g、0.007g、5gであったことを除いて、他のステップは実施例1と同じであった。
【0152】
実施例8~14
アルミニウム酸カリウムでテトラフルオロアルミン酸カリウムを代替し、アルギン酸ナトリウムでカルボキシメチルセルロースナトリウムを代替し、外層物質の総質量が0.005g、0.5g、1g、3g、6g、12g、15gであったことを除いて、他のステップは実施例1と同じであった。
【0153】
実施例15~25
アルミニウム酸カリウムでテトラフルオロアルミン酸カリウムを代替し、ポリアクリル酸ナトリウムでカルボキシメチルセルロースナトリウムを代替し、外層におけるシュウ酸カリウムの使用量(対応するケイ酸カリウムの使用量)が0g(5g)、0.05g(4.95g)、0.45g(4.55g)、1g(4g)、1.5g(3.5g)、2g(3g)、3.48g(1.52g)、4g(1g)、4.5g(0.5g)、4.95g(0.05g)及び4.955g(0.045g)であったことを除いて、他のステップは実施例1と同じであった。
【0154】
実施例26~33
アルミニウム酸カリウムでテトラフルオロアルミン酸カリウムを代替し、ポリアクリル酸ナトリウムでカルボキシメチルセルロースナトリウムを代替し、アルミニウム酸カリウムの使用量がそれぞれ0.004g、0.01g、0.5g、1g、1.5g、2g、3g、5gであったことを除いて、他のステップは実施例1と同じであった。
【0155】
実施例34
フッ化アルミニウムでテトラフルオロアルミン酸カリウムを代替することを除いて、他のステップは実施例1と同じであった。
【0156】
実施例35
フッ化アルミニウムでテトラフルオロアルミン酸カリウムを代替し、ポリアクリル酸ナトリウムでカルボキシメチルセルロースナトリウムを代替することを除いて、他のステップは実施例1と同じであった。
【0157】
実施例36
ポリアクリル酸ナトリウムでカルボキシメチルセルロースナトリウムを代替することを除いて、他のステップは実施例1と同じであった。
【0158】
実施例37
1)被覆内層:100gのマンガン酸リチウム基材材料(LiMnとして、以下は同様)及び1gのアルミニウム酸カリウム(KAlFとして)を秤量してボールミルし、アルミニウム酸カリウムでマンガン酸リチウム基材を均一に被覆し、第1中間体を得た。ボールミルパラメータ:配合比15:1、回転速度800rpm、ボールミル時間120minであった。
【0159】
2)被覆中間層:0.5gのポリアクリル酸ナトリウム及び1gの炭酸アンモニウムを秤量し、50gの脱イオン水に加え、25℃下で800rpmの回転速度で30min撹拌し、均一なコロイド溶液を得た。次に、上記コロイド溶液にステップ1)の第1中間体を加え、25℃下で800rpmの回転速度で120min撹拌し、上記材料をポリアクリル酸ナトリウム及び炭酸アンモニウムで均一に被覆することを確保した。次に、水分と炭酸アンモニウムを除去するために、得られた材料を80℃下で1h乾燥し、第2中間体を得た。
【0160】
3)被覆外層:250gの脱イオン水を秤量し、2.5gのシュウ酸カリウム(Kとして)と2.5gのケイ酸カリウム(KSiOとして)を加え、25℃下で800rpmの回転速度で30min撹拌し、均一な被覆スラリーを得た。次に、上記被覆スラリーにステップ2)の第2中間体を加え、25℃下で800rpmの回転速度で180min撹拌した。次に、水分を除去するために、得られた材料を80℃下で1h乾燥し、シュウ酸カリウムとケイ酸カリウムが上記材料表面を緊密に被覆することを確保し、本願の実施例37のマンガン酸リチウム正極活性材料を得た。
【0161】
実施例38
ステップ2)の第2中間体を0.001mol/L塩酸で40分間エッチングしたことを除いて、他のステップは実施例36と同じであった。
【0162】
実施例39
エッチング時間を40分間から120分間に変更したことを除いて、他のステップは実施例38と同じであった。
【0163】
比較例1
変性されていないマンガン酸リチウムをそのまま正極活性材料として、マンガン酸リチウム、NCM(ニッケルコバルトマンガン)三元系材料、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を重量比67.34:28.86:2.7:1.1:30で十分に撹拌し、均一に混合した後、正極スラリーを得た。次に、正極スラリーを正極集電体に均一にコーティングし、乾燥、巻取り、圧延によって、正極シートを得た。
【0164】
一、マンガン酸リチウム正極活性材料の関連パラメータテスト
本願の実施例と比較例のマンガン酸リチウム正極活性材料の関連パラメータテストプロセスは以下のとおりであった。
【0165】
1、体積平均粒径D50テスト
機器型式:マルバーン2000(MasterSizer 2000)レーザー粒子径分析装置、参照標準プロセス:GB/T19077-2016/ISO 13320:2009、具体的なテストプロセス:適量な測定されるサンプルを取り(サンプル濃度:8~12%の遮光度を保証すればよい)、20mlの脱イオン水を加えると同時に、外部超音波(超音波処理)を5min(53KHz/120W)行い、サンプルが完全に分散することを保証し、次にGB/T19077-2016/ISO 13320:2009標準に従ってサンプルを測定した。
【0166】
2、形態テスト
全ての実施例と比較例のマンガン酸リチウム正極活性材料をZEISS sigma 300走査型電子顕微鏡でテストし、次に標準JY/T010-1996に従ってテストし、サンプルの形態を観察した。
【0167】
ここで指摘すべきことは、本願で使用されるマンガン酸リチウム基材の形状は必ずしも球形ではなく、不規則な場合もあり、一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。実施例で使用されるマンガン酸リチウム基材のD50は12μmであった。また、指摘すべきことは、本願により製造される変性マンガン酸リチウム正極活性材料の形状は必ずしも球形ではなく、不規則な場合もある。
【0168】
3、被覆層の厚さのテスト
はさみで冷間圧延前のシートをサイズ6cm*6cmのサンプルに切断し、更にIB-19500CPイオン断面研磨機で研磨処理を行い、研磨後の切断面付きのサンプルを得た。次に標準JY/T010-1996を参照してZEISS sigma 300機器でサンプルをテストした。上記テストサンプルから10個の異なる位置をランダムに選択してテストし、平均値を取って被覆層の厚さを得た。
【0169】
4、中間層(有機結合剤層)の平均孔径と気孔率のテスト
SSA-4000シリーズBETテスト機器を使用し、窒素ガス低温吸着法で多孔質材料の孔径分布を測定した。具体的なステップは以下のとおりであった。測定されるサンプル30mgを、サンプルチューブに入れ、サンプルチューブを脱気ステーションに入れ、サンプルチューブを取り付ける時、シールの安全性を確保するために、サンプルチューブをポートに合わせ、ねじを締めた。次に、材料の表面に吸着したガスを除去するために、加熱パックでサンプルチューブを外嵌し、脱気温度を調整し、真空ポンプを開放し、材料の加熱と真空脱気処理を開始した。脱気終了後、加熱電源をオフにして、サンプルが室温に冷却した後、ヘリウムガスを埋め戻し、常圧になるまでヘリウムガスを充填した後、サンプルチューブを取り外してすぐにゴム栓で覆い、0.1mgまで秤量し、該ヘリウムガスで充填したサンプルチューブ、栓、フィラーロッドの重量を記録した。秤量後のサンプルを分析ステーションに入れ、デュワー瓶に液体窒素を注入し、サンプルの質量を分析ファイルに入力し、テストパラメータを設計し、吸着と脱着テストを実施した。
【0170】
二、電池特性テスト
1、電池の容量維持率テスト
実施例1を例にすると、電池の容量維持率のテストプロセスは以下のとおりであった。25℃下で、実施例1に対応する電池を、1/3Cの定電流で4.3Vに充電し、更に4.3Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置し、更に1/3Cで2.8Vに放電し、得られた容量を初期容量C0と記した。上記同じ電池に対して上記のステップを繰り返し、同時にn回目サイクル後の電池の放電容量Cnを記録し、毎回サイクル後の電池の容量維持率Pn=Cn/C0*100%であり、P、P……P100の100個のポイント値を縦座標にし、対応するサイクル回数を横座標にすると、図4に示される実施例1のマンガン酸リチウム正極活性材料に対応する電池の容量維持率とサイクル回数の曲線図を得た。
【0171】
このテストプロセスにおいて、1回目サイクルはn=1に対応し、2回目サイクルはn=2に対応し、……100回目サイクルはn=100に対応する。表1の実施例1に対応する電池の容量維持率データは上記のテスト条件下で100回サイクル後に測定されたデータ、即ちP100の値であった。比較例1と2及び他の実施例のテストプロセスは上記と同じであった。
【0172】
2、充電倍率テスト
負極とセパレータとの間に銅糸(第3電極)を配置し、正極、セパレータ、負極、電解液を積層電池に製造した。化学的形成によって電池を活性化し、充電倍率テストを実施した。具体的なテスト方法は以下のとおりであった。1)定格容量:1/3Cの定電流で2.8Vに放電し、10min放置後、1/3Cの定電流で4.3Vに充電し、更に4.3Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置し、更に1/3Cで2.8Vに放電し、この時の電池容量を初期容量C0に記した。2)リチウム析出ウィンドウテスト:0%のSOCから充電し、2.5Cから初期倍率とし、負極の電位変化を検出して負極の電位が0mVに達した後、自動的に次のより小さい倍率テストへ進み、倍率の間隔は0.1Cであり、毎回充電倍率下の容量値Cn(n=1、2、3……の整数)を記録し、SOCn=Cn/C0、SOCnを横座標にし、対応するCnを縦座標にすると、図5に示される充電倍率曲線を作成した。上記曲線から、60%のSOCに対応する充電倍率を本願の実施例1の電池充電倍率として選択した。比較例及びその他の実施例のテストプロセスは上記と同じであった。
【0173】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表2】
【0174】
表1の全ての実施例と比較例1を総合すると、全ての実施例は、倍率特性が不可避的に比較例1より低いにもかかわらず、電池サイクル容量維持率はいずれも比較例1より顕著に高かった。
【0175】
表1の実施例1~7は、中間層とマンガン酸リチウム基材との質量比の電池特性に与える影響を反映した。中間層とマンガン酸リチウム基材との質量比が0.5~3:100の範囲内である場合、電池は、良好なサイクル容量維持率(95%以上)と相対的に高い充電倍率(0.85C以上)の両方を備えた。更に、中間層とマンガン酸リチウム基材との質量比が1~2:100の範囲内である場合、電池のサイクル容量維持率はいずれも99.2%以上に維持されたと同時に、高い充電倍率(0.9C以上)を備えた。しかし、中間層とマンガン酸リチウム基材との質量比が0.5:100より低く(実施例6、比率が0.007:100である)又は3:100より高い(実施例7、比率が5:100である)場合、電池のサイクル容量維持率はわずか94.1%と95.1%であり、且つ中間層とマンガン酸リチウム基材との質量比が5:100である場合、電池の充電倍率はわずか0.8Cであった。
【0176】
表1の実施例8~14は、外層とマンガン酸リチウム基材との質量比の電池特性に与える影響を反映した。外層とマンガン酸リチウム基材との質量比が0.5~12:100の範囲内である場合、電池は、良好なサイクル容量維持率(97%以上)と相対的に高い充電倍率(0.95C以上)の両方を備えた。更に、外層とマンガン酸リチウム基材との質量比が0.5~6:100の範囲内である場合、電池のサイクル容量維持率はいずれも98%以上に維持されたと同時に、高い充電倍率(1C以上)を備えた。しかし、外層とマンガン酸リチウム基材との質量比が0.5:100より低く(実施例8、比率が0.005:100である)又は12:100より高い(実施例14、比率が15:100である)場合、電池のサイクル容量維持率はわずか95.5%と96%であり、且つ外層とマンガン酸リチウム基材との質量比が15:100である場合、電池の充電倍率はわずか0.9Cであった。
【0177】
表1の実施例15~25は、外層におけるシュウ酸塩とケイ酸塩との質量比の電池特性に与える影響を反映した。シュウ酸塩とケイ酸塩との質量比が0.01~99:1の範囲内である場合、電池は、良好なサイクル容量維持率(94.5%以上)と相対的に高い充電倍率(0.95C以上)の両方を備えた。更に、シュウ酸塩とケイ酸塩との質量比が0.1~9:1の範囲内である場合、電池のサイクル容量維持率はいずれも96%以上に維持されたと同時に、高い充電倍率(0.96C以上)を有し、更に、シュウ酸塩とケイ酸塩との質量比が0.25~4:100の範囲内である場合、電池のサイクル容量維持率はいずれも98%以上に維持されたと同時に、高い充電倍率(0.96C以上)を備えた。しかし、外層とマンガン酸リチウム基材との質量比が0.01:1より低く(実施例15、比率が0:1である)又は99:1より高い(実施例25、比率が110:1である)場合、電池のサイクル容量維持率はわずか94%と94.5%であり、且つ外層とマンガン酸リチウム基材との質量比が0:1である場合、電池の充電倍率はわずか0.95Cであった。
【0178】
表1の実施例26~33は、内層とマンガン酸リチウム基材との質量比の電池特性に与える影響を反映した。内層とマンガン酸リチウム基材との質量比が0.01~3:100の範囲内である場合、電池は、良好なサイクル容量維持率(95%を超える)と相対的に高い充電倍率(0.95Cを超える)の両方を備えた。更に、内層とマンガン酸リチウム基材との質量比が1~2:100の範囲内である場合、電池のサイクル容量維持率はいずれも98%以上に維持されたと同時に、高い充電倍率(0.98C以上)を備えた。しかし、内層とマンガン酸リチウム基材との質量比が0.001:100より低く(実施例26、比率が0.004:100である)又は3:100より高い(実施例33、比率が5:100である)場合、電池のサイクル容量維持率はわずか95%であり、且つ内層とマンガン酸リチウム基材との質量比が5:100である場合、電池の充電倍率はわずか0.95Cであった。
【0179】
表1の実施例34と実施例35は更に、内層がフッ化アルミニウムである場合、電池のサイクル容量維持率がいずれも97%以上であると同時に、充電倍率がいずれも1C以上であることが示されている。
【0180】
表2の実施例37~39は、マンガン酸リチウム正極活性材料に対する孔形成及びエッチングを行う時に電池特性に与える影響を反映した。実施例36~37に示されるように、孔形成処理は、マンガン酸リチウム正極活性材料の孔構造を効果的に改善し(平均孔径が15%から18%に増加し、気孔率が13%から18%に増加する)、対応する電池のサイクル容量維持率と充電倍率(0.9Cから1.12Cに増加する)も顕著に改善された。実施例36と実施例38~39に示されるように、エッチング処理は、電池の充電倍率を効果的に改善し(0.9Cから1.07C、1.10Cに増加する)、適量なエッチング処理時間も電池のサイクル容量維持率を改善することに役立った(実施例38)。
【0181】
なお、本願は、上記の実施形態に限定されない。上記の実施形態は例示的なものに過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内において、技術的思想と実質的に同じである構成を有し、同じ作用効果を奏する実施形態は、いずれも本願の技術範囲内に含まれる。また、本願の主旨を逸脱しない範囲内で、実施形態に対して、当業者の想到できる様々な変形、及び実施形態の一部の構成要素を組み合わせて構築した他の形態も本願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0182】
1 電池パック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 リチウムイオン電池
51 ケース
52 電極アセンブリ
53 カバープレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11