(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ワーク形状測定方法、及びワーク形状測定装置。
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/20 20060101AFI20231227BHJP
G01B 21/20 20060101ALI20231227BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B23Q17/20 A
G01B21/20 C
G01B11/24 A
(21)【出願番号】P 2023075513
(22)【出願日】2023-05-01
【審査請求日】2023-05-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】入野 成弘
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-094600(JP,A)
【文献】特開2015-135276(JP,A)
【文献】特開2014-163757(JP,A)
【文献】特開2016-064497(JP,A)
【文献】特開2015-093358(JP,A)
【文献】特開2012-045703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q17/20
B23Q17/24
G01B 21/20
G01B 11/24
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するワーク保持部、工具を保持する工具保持部、及び前記ワーク保持部と工具保持部とを少なくとも相互に直交する二つの送り軸方向に相対的に移動させる運動機構部を備えた工作機械の機内で、前記ワークの形状を測定する方法であって、
形状測定器により前記ワークの形状を測定し、
空間精度測定部により前記運動機構部の空間精度を測定するとともに、
前記空間精度測定部によって測定された前記運動機構部の空間精度に基づいて、前記形状測定器によって測定されたワーク形状に係るデータを補正するように
構成され、
前記空間精度測定部は、前記二つの送り軸から選定された一方の送り軸に沿って配設されるとともに、検出面として設定した表面に、空間精度を測定するための格子模様が形成された基準物体と、前記検出面と対向するように配設され、前記格子模様を読み取る読取器と、該読取器により読み取られた格子模様に係るデータに基づいて、前記運動機構部の空間精度を算出する算出部とを備えており、
前記形状測定器と前記読取器とを連結部材により連結した状態で前記工具保持部に保持させた後、前記一方の送り軸を用いて、前記ワーク保持部と工具保持部とを相対移動させながら、前記形状測定器によりワーク形状を測定するとともに、前記空間精度測定部により前記運動機構部の空間精度を測定し、得られた空間精度データに基づいて、前記ワーク形状に係る測定データを補正するようにしたことを特徴とするワーク形状測定方法。
【請求項2】
前記基準物体は、直方体形状を有し、その長手方向に沿った相互に直交する二つの表面が検出面に設定され、前記読取器は、二つの検出面にそれぞれ対向するように配設され、前記算出部は、各読取器により読み取られたデータに基づいて、前記運動機構部の空間精度を算出するように構成されていることを特徴とする請求項
1記載のワーク形状測定方法。
【請求項3】
ワークを保持するワーク保持部、工具を保持する工具保持部、及び前記ワーク保持部と工具保持部とを少なくとも相互に直交する二つの送り軸方向に相対的に移動させる運動機構部を備えた工作機械の機内で、前記ワークの形状を測定する方法であって、
形状測定器により前記ワークの形状を測定し、
空間精度測定部により前記運動機構部の空間精度を測定するとともに、
前記空間精度測定部によって測定された前記運動機構部の空間精度に基づいて、前記形状測定器によって測定されたワーク形状に係るデータを補正するように構成され、
前記空間精度測定部は、前記二つの送り軸から選定された一方の送り軸に沿って配設されるとともに、検出面として設定した表面に、空間精度を検出するための格子模様が形成された基準物体と、前記検出面と対向するように配設され、前記格子模様を読み取る読取器と、該読取器により読み取られた格子模様に係るデータに基づいて、前記運動機構部の空間精度を算出する算出部とを備えており、
前記二つの送り軸を用いて、前記ワーク保持部と工具保持部とをジグザグに相対移動させながら、前記形状測定器によりワーク形状を測定するとともに、前記空間精度測定部により前記運動機構部の空間精度を測定し、得られた空間精度データに基づいて、前記ワーク形状に係る測定データを補正するようにしたことを特徴とす
るワーク形状測定方法。
【請求項4】
前記形状測定器によって逐次測定されるワーク形状に係る測定データ、及び前記空間精度測定部によって逐次測定される前記運動機構部の空間精度データに基づいて、該ワーク形状に係る測定データ及び空間精度データを逐次処理することによって前記ワーク形状に係る測定データを補正するように構成されていることを特徴とする請求項
1から
3のいずれか1項に記載のワーク形状測定方法。
【請求項5】
ワークを保持するワーク保持部、工具を保持する工具保持部、及び前記ワーク保持部と工具保持部とを少なくとも相互に直交する二つの送り軸方向に相対的に移動させる運動機構部を備えた工作機械の機内で、前記ワークの形状を測定する装置であって、
前記ワークの形状を測定する形状測定器と、
前記運動機構部の空間精度を測定する空間精度測定部と、
前記空間精度測定部によって測定された前記運動機構部の空間精度に基づいて、前記形状測定器によって測定されたワーク形状に係る測定データを補正する形状データ補正部とを備え
、
前記空間精度測定部は、前記二つの送り軸から選定された一方の送り軸に沿って配設されるとともに、検出面として設定した表面に、空間精度を検出するための格子模様が形成された基準物体と、前記検出面と対向するように配設され、前記格子模様を読み取る読取器と、該読取器により読み取られた格子模様に係るデータに基づいて、前記運動機構部の空間精度を算出する算出部とを備え、
前記形状測定器と前記読取器とは連結部材により連結されるとともに、該連結部材は前記工具保持部によって保持可能に構成され、
前記形状測定器及び空間精度測定部は、前記工具保持部に前記形状測定器及び読取器を保持した状態で、前記一方の送り軸を用いて、前記ワーク保持部と工具保持部とを相対移動させる動作中に、それぞれ、ワーク形状及び空間精度を測定するように構成されていることを特徴とするワーク形状測定装置。
【請求項6】
前記基準物体は、直方体形状を有し、その長手方向に沿った相互に直交する二つの表面が検出面に設定され、前記読取器は、二つの検出面にそれぞれ対向するように配設され、前記算出部は、各読取器により読み取られたデータに基づいて、前記運動機構部の空間精度を算出するように構成されていることを特徴とする請求項
5記載のワーク形状測定装置。
【請求項7】
ワークを保持するワーク保持部、工具を保持する工具保持部、及び前記ワーク保持部と工具保持部とを少なくとも相互に直交する二つの送り軸方向に相対的に移動させる運動機構部を備えた工作機械の機内で、前記ワークの形状を測定する装置であって、
前記ワークの形状を測定する形状測定器と、
前記運動機構部の空間精度を測定する空間精度測定部と、
前記空間精度測定部によって測定された前記運動機構部の空間精度に基づいて、前記形状測定器によって測定されたワーク形状に係る測定データを補正する形状データ補正部とを備え、
前記空間精度測定部は、前記二つの送り軸から選定された一方の送り軸に沿って配設されるとともに、検出面として設定した表面に、空間精度を検出するための格子模様が形成された基準物体と、前記検出面と対向するように配設され、前記格子模様を読み取る読取器と、該読取器により読み取られた格子模様に係るデータに基づいて、前記運動機構部の空間精度を算出する算出部とを備え、
前記形状測定器と前記読取器とは連結部材により連結されるとともに、該連結部材は前記工具保持部によって保持可能に構成され、
前記形状測定器及び空間精度測定部は、前記工具保持部に前記形状測定器及び読取器を保持した状態で、前記二つの送り軸を用いて、前記ワーク保持部と工具保持部とをジグザグに相対移動させる動作中に、それぞれ、ワーク形状及び空間精度を測定するように構成されていることを特徴とす
るワーク形状測定装置。
【請求項8】
前記形状データ補正部は、前記形状測定器によって逐次測定されるワーク形状に係る測定データ、及び前記空間精度測定部によって逐次測定される前記運動機構部の空間精度データに基づいて、該ワーク形状に係る測定データ及び空間精度データを逐次処理することによって前記ワーク形状に係る測定データを補正するように構成されていることを特徴とする請求項
5から
7のいずれか1項に記載のワーク形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の機上でワーク形状を測定する方法、及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械により加工したワークの形状を機上でそのまま測定することができれば、仮に、予定通りの寸法にワークを加工できていない場合でも、直ちにその修正加工を行うことができて便利である。このような背景の下、従来から工作機械の機上でワーク形状を測定する測定装置が開発されており、例えば、特開2021-30315号公報に開示された測定装置が提案されている。
【0003】
この測定装置は、測定制御部と、工作機械を構成する回転板の前面に、工具取付部とともに配設されたプローブとを備えて構成される。測定制御部は、機上測定の際に、測定プログラムに基づいて、工作機械を構成するx軸移動機構及びy軸移動機構を駆動して、ワークが取り付けられたテーブルを水平面であるx軸-y軸平面内で移動させるとともに、z軸移動機構を駆動して、プローブが配設された回転板をz軸に沿った上下方向に移動させることにより、当該ワークの形状を測定する。
【0004】
より具体的には、前記測定制御部は、測定プログラムに従い、前記テーブルをx軸-y軸平面内で移動させて、順次定められた位置に位置決めしながら、位置決めした各位置において、前記回転板をz軸に沿って下方に移動させて、前記プローブをワークに接触させた後、前記回転板をz軸に沿って上方に移動させる動作をそれぞれ実行する。そして、x軸,y軸及びz軸で定義される三次元空間内において、前記プローブがワークに接触したときの位置(xi,yi,zi)を、x軸エンコーダ,y軸エンコーダ及びz軸エンコーダからの出力値に基づいて算出し、算出したプローブの位置からワークの形状(寸法)を算出する。尚、前記iは、1からnの整数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来から広く知られているように、前記工作機械を構成するx軸移動機構、y軸移動機構及びz軸移動機構には、それぞれ運動誤差が存在している。したがって、上記従来の測定装置において、その測定制御部により位置決めした際の前記三次元空間内における前記テーブルの位置、及び前記プローブの位置は、制御上の目標位置に対して所定の誤差を含んだものとなっており、これを基に算出されたワーク形状データには、測定の際に生じた工作機械の運動誤差が含まれたものとなっている。
【0007】
このように、従来の機上測定装置では、その測定データに工作機機械の運動誤差が含まれるため、正確なワーク形状を測定することができないという問題があった。近年、工作機械の前記x軸移動機構、y軸移動機構及びz軸移動機構は高精度化が実現され、その運動誤差は極僅かなものとなっているが、同様に、ワークの加工精度も高い精度が求められており、測定上含まれる運動誤差は依然として看過できないものである。
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、工作機械の機上でワークを測定する際に、当該工作機械の運動誤差を取り除いた正確な形状データを得ることができるワーク形状の測定方法、及び測定装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、ワークを保持するワーク保持部、工具を保持する工具保持部、及び前記ワーク保持部と工具保持部とを少なくとも相互に直交する二つの送り軸方向に相対的に移動させる運動機構部を備えた工作機械の機内で、前記ワークの形状を測定する方法であって、
形状測定器により前記ワークの形状を測定し、
空間精度測定部により前記運動機構部の空間精度を測定するとともに、
前記空間精度測定部によって測定された前記運動機構部の空間精度に基づいて、前記形状測定器によって測定されたワーク形状に係るデータを補正するようにしたワーク形状測定方法に係る。
【0010】
また、本発明は、ワークを保持するワーク保持部、工具を保持する工具保持部、及び前記ワーク保持部と工具保持部とを少なくとも相互に直交する二つの送り軸方向に相対的に移動させる運動機構部を備えた工作機械の機内で、前記ワークの形状を測定する装置であって、
前記ワークの形状を測定する形状測定器と、
前記運動機構部の空間精度を測定する空間精度測定部と、
前記空間精度測定部によって測定された前記運動機構部の空間精度に基づいて、前記形状測定器によって測定されたワーク形状に係る測定データを補正する形状データ補正部とを備えたワーク形状測定装置に係る。
【0011】
本発明によれば、ワークを保持するワーク保持部、工具を保持する工具保持部、及びワーク保持部と工具保持部とを少なくとも相互に直交する二つの送り軸方向に相対的に移動させる運動機構部を備えた工作機械の機内(機上)において、前記ワークの形状が測定される。
【0012】
即ち、前記形状測定器によりワークの形状が測定されるとともに、前記空間精度測定部により運動機構部の空間精度が測定され、ついで、形状データ補正部により、形状測定器によって測定されたワーク形状に係るデータが、空間精度測定部によって測定された運動機構部の空間精度に基づいて補正される。尚、当然のことながら、形状データには、所謂寸法に係るデータが含まれる。
【0013】
斯くして、本発明によれば、形状測定器によって測定されたワーク形状に係るデータが、空間精度測定部によって測定された運動機構部の空間精度に基づいて補正されるので、運動機構部の運動誤差を取り除いた正確なワーク形状データを得ることができる。
【0014】
本発明において、前記空間精度測定部は、前記二つの送り軸から選定された一方の送り軸に沿って配設されるとともに、検出面として設定した表面に、空間精度を検出するための格子模様が形成された基準物体と、前記検出面と対向するように配設され、前記格子模様を読み取る読取器と、該読取器により読み取られた格子模様に係るデータ基づいて、前記運動機構部の空間精度を算出する算出部とを備え、
前記形状測定器と前記読取器とは連結部材により連結されるとともに、該連結部材は前記工具保持部によって保持可能に構成され、
前記形状測定器及び空間精度測定部は、前記工具保持部に前記形状測定器及び読取器を保持した状態で、前記一方の送り軸を用いて、前記ワーク保持部と工具保持部とを相対移動させる動作中に、それぞれ、ワーク形状及び空間精度を測定するように構成された態様を採ることができる。
【0015】
この態様によれば、形状測定器と読取器とを連結部材により連結した状態で、これらを工具保持部に保持させ、前記一方の送り軸を用いて、前記ワーク保持部と工具保持部とを相対移動させながら、形状測定器によりワーク形状を測定するとともに、空間精度測定部により運動機構部の空間精度を測定する。即ち、前記一方の送り軸に沿ったワーク形状が形状測定器によって測定されるとともに、当該送り軸に関する空間精度が空間精度測定部によって測定される。
【0016】
尚、空間精度測定部は、基準物体に形成された格子模様を前記読取器によって読み取り、算出部において、読み取った格子模様に係るデータ基づいて運動機構部の空間精度を算出する。
【0017】
また、上記の態様において、前記基準物体は、直方体形状を有し、その長手方向に沿った相互に直交する二つの表面が検出面に設定され、前記読取器は、二つの検出面にそれぞれ対向するように配設され、前記算出部は、各読取器により読み取られたデータに基づいて、前記運動機構部の空間精度を算出するように構成された態様を採ることができる。
【0018】
また、本発明において、前記空間精度測定部は、前記二つの送り軸から選定された一方の送り軸に沿って配設されるとともに、検出面として設定した表面に、空間精度を検出するための格子模様が形成された基準物体と、前記検出面と対向するように配設され、前記格子模様を読み取る読取器と、該読取器により読み取られた格子模様に係るデータに基づいて、前記運動機構部の空間精度を算出する算出部とを備え、
前記形状測定器と前記読取器とは連結部材により連結されるとともに、該連結部材は前記工具保持部によって保持可能に構成され、
前記形状測定器及び空間精度測定部は、前記工具保持部に前記形状測定器及び読取器を保持した状態で、前記二つの送り軸を用いて、前記ワーク保持部と工具保持部とをジグザグに相対移動させる動作中に、それぞれ、ワーク形状及び空間精度を測定するように構成された態様を採ることができる。
【0019】
この態様によれば、形状測定器と読取器とを連結部材により連結した状態で、これらを工具保持部に保持させ、前記二つの送り軸を用いて、前記ワーク保持部と工具保持部とをジグザグに相対移動させながら、形状測定器によりワーク形状を測定するとともに、空間精度測定部により運動機構部の空間精度を測定する。即ち、前記一方の送り軸に沿ったワーク形状が形状測定器によって測定されるとともに、当該一方の送り軸に関する空間精度が空間精度測定部によって測定される。
【0020】
尚、この態様においても、前記空間精度測定部は、基準物体に形成された格子模様を前記読取器によって読み取り、算出部において、読み取った格子模様に係るデータ基づき、運動機構部の空間精度を算出する。
【0021】
また、本発明において、前記形状データ補正部は、前記形状測定器によって逐次測定されるワーク形状に係る測定データ、及び前記空間精度測定部によって逐次測定される前記運動機構部の空間精度データに基づいて、該ワーク形状に係る測定データ及び空間精度データを逐次処理することによって前記ワーク形状に係る測定データを補正するように構成された態様を採ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、形状測定器によって測定されたワーク形状に係るデータが、空間精度測定部によって測定された運動機構部の空間精度に基づいて補正されるので、工作機械の機内(機上)において、運動機構部の運動誤差を取り除いた正確なワーク形状データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械を示した斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るワーク測定装置の概略構成を示したブロック図である。
【
図3】工作機械の運動誤差に係る誤差パラメータを示した説明図である。
【
図4】本実施形態に係るワーク測定装置の基準ブロック、第1読取カメラ対及び第2読取カメラ対を示した斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る基準ブロックに形成された格子模様、及び第1及び第2読取カメラ対による読み取りを説明するための説明図である。
【
図6】本実施形態に係る形状測定器を示した正面図である。
【
図7】本実施形態に係る形状測定器によるワーク形状の測定について説明するための説明図である。
【
図8】本実施形態に係る形状測定器によるワーク形状の測定について説明するための説明図である。
【
図9】本実施形態に係る形状データ記憶部に格納されるデータテーブルを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本例の工作機械1は、上面にワークWが載置される載置面を有するベッド2と、運動機構部10、この運動機構部10を数値制御する数値制御装置15、及びベッド2上に載置されたワークWの形状を測定するためのワーク形状測定装置20を備えている。
【0025】
前記運動機構部10は、ベッド2に係合して水平なY軸方向に移動するフレーム11、このフレーム11に載置された状態で当該フレーム11に係合して前記Y軸と水平面内で直交するX軸方向に移動するサドル12、このサドル12に保持されて、前記X軸及びY軸と直交するZ軸方向(鉛直方向)に移動する主軸13、前記フレーム11を駆動するY軸送り機構(図示せず)、前記サドル12を駆動するX軸送り機構(図示せず)、及び前記主軸13を駆動するZ軸送り機構(図示せず)などを備えている。
【0026】
前記フレーム11は、水平部11a及びその両端にそれぞれ接続された2つの垂直部11bから構成される門形をしたフレームであり、前記水平部11aがベッド2の上方に位置するように配設されるとともに、前記垂直部11bがそれぞれベッド2の側部に係合している。そして、前記水平部11a上に前記サドル12が載置されている。また、前記主軸13は、その下端面に開口する工具保持穴(工具保持部)を有しており、図示しない主軸駆動機構によって、前記Z軸と平行な軸線を中心として回転する。
【0027】
そして、前記X軸送り機構(図示せず)、Y軸送り機構(図示せず)、Z軸送り機構(図示せず)及び主軸駆動機構(図示せず)は、それぞれ前記数値制御装置15によってその作動が制御される。斯くして、この工作機械1では、主軸13に所定の工具を装着し、ベッド2上にワークWを載置した状態で、前記数値制御装置15により所定の加工プログラムに従って、前記X軸送り機構(図示せず)、Y軸送り機構(図示せず)、Z軸送り機構(図示せず)及び主軸駆動機構(図示せず)が駆動され、これにより主軸13に保持された工具が、前記X軸、Y軸及びZ軸によって定義される三次元空間内で移動し、ベッド2上に載置されたワークWが当該工具によって加工される。
【0028】
前記ワーク形状測定装置20は、
図1及び
図2に示すように、前記ワークWの形状を測定する形状測定器21、第1読取カメラ対27、第2読取カメラ対28、連結部材26及び基準物体としての基準ブロック30、並びに演算装置35から構成され、更に、演算装置35は、形状データ記憶部36、算出部37及び形状データ補正部38から構成される。
【0029】
尚、前記演算装置35は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記算出部37及び形状データ補正部38は、コンピュータプログラムによってその機能が実現され、後述する処理を実行する。また、形状データ記憶部36はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。また、前記第1読取カメラ対27、第2読取カメラ対28、連結部材26、基準ブロック30及び算出部37は、前記運動機構部10の空間精度を測定する空間精度測定部25を構成する。
【0030】
前記基準ブロック30は、
図1に示すように、長尺の直方体状をした部材であり、ベッド2上の前記X軸方向における左側の側縁部に、その長手方向が前記Y軸と平行になるように固設されている。また、
図5に示すように、基準ブロック30の上面30aには、その長手方向(Y軸方向)及びこれと直交する方向(X軸方向)に沿って所定間隔で形成されたグリッド線からなる格子模様31aが形成されている。また、基準ブロック30の右側の側面30bには、それぞれ、その長手方向(Y軸方向)及びこれと直交する方向(Z軸方向)に沿って所定間隔で形成されたグリッド線からなる格子模様31bが形成されている。これらの格子模様31a,31bは、その間隔が高精度に形成されており、スケールとしての基準模様の役割を担うものである。
【0031】
図1に示すように、前記連結部材26は、前記主軸13の工具保持部に装着可能に設けられた装着部26a、この装着部26aの下端部に設けられた水平部26b、水平部26bの左側の端部に設けられたブラケット26cから構成される。前記水平部26bは、前記装着部26aが主軸13に装着されたとき、その長手方向が前記X軸に沿うように設けられており、装着部26aとは反対側の下面に前記形状測定器21が取り付けられている。
【0032】
また、前記ブラケット26cは、正面から視て、水平部及び垂直部を有する鉤状をした部材であり、当該水平部の下面が前記基準ブロック30の上面30aに対向し、垂直部の左側面が基準ブロック30の側面30bに対向している。そして、
図4に示すように、前記第1読取カメラ対27は、その各受光部が前記基準ブロック30の上面30aと対向して、当該上面30aを撮像できるように前記ブラケット26cの水平部に保持されている。同様に、前記第2読取カメラ対28は、その各受光部が前記基準ブロック30の側面30bと対向して、当該側面30bを撮像できるように前記ブラケット26cの垂直部に保持されている。
【0033】
尚、第1読取カメラ対27及び第2読取カメラ対28は、それぞれ、多行多列に配置された光電変換素子を備えており、各素子から出力される受光量に応じた出力値に基づいて、各素子がそれぞれ一つの画素を構成する撮像画像を生成する。また、
図5に示すように、これら第1読取カメラ対27及び第2読取カメラ対28は、それぞれ、Y軸に沿って所定間隔で配設され、対応した前記格子模様31a,31bを撮像する。
【0034】
前記形状測定器21は、
図6に示すように、レーザ光22aを鉛直方向に照射する発光部21aと、その反射光22bを受光する受光部21bとを備えている。発光部21aは、
図7に示すように、帯状のレーザ光22aをワークWに照射するように構成され、その反射光22bが受光部21bに受光される。受光部21bは多行多列に配置された光電変換素子を備えており、各素子から出力される受光量に応じた出力値に基づいて、各素子がそれぞれ一つの画素を構成する撮像画像が生成される。
【0035】
例えば、
図7に示すように、ワークWが2段の階段状の形状を有する場合、レーザ光22aはワークWの高さの高い面(高位面W
1)及び高さの低い面(低位面W
2)にそれぞれ照射され、その反射光22bが受光部21bに受光される。そして、各光電変換素子からその受光量に応じた電圧値が出力され、この電圧値に基づいて、例えば、
図8に示すような撮像画像が生成される。
図8に示した撮像画像は、X軸-Z軸平面に対応する画像であり、撮像画像の各画素位置から、三角測量の原理に基づいて、ワークWをレーザ光22aで垂直方向に切断したときの高位面W
1と低位面W
2の高さ位置(Z軸方向の位置)を検出することができる。
【0036】
斯くして、前記主軸13がX軸方向における任意の位置Xa、及びZ軸方向における任意の位置Zaにあるときに、前記数値制御装置15による制御の下で、レーザ光22aをワークWに照射した状態で、当該主軸13、言い換えれば、連結部材26を介して当該主軸13に保持された形状測定器21を所定のピッチ間隔でY軸方向に移動させて、当該レーザ光22aによりワークWをスキャニングすることにより、前記主軸13のY軸に沿った各位置(Yj)ごとに、ワークWの高位面W1及び低位面W2の全体の高さ位置、即ち、X軸方向の所定間隔ごとの高さ位置(Z軸方向の位置)(Xi,Zi)を検出することができる。そして、このようにして、X軸,Y軸及びZ軸で定義される三次元空間内におけるワークW表面の位置(Xj,i,Yj,i,Zj,i)が測定され、測定された位置データ(形状データ)が後述する形状データ記憶部36に実測形状データとして逐次格納される。但し、jは1からmの整数であり、iは1からnの整数である。
また、本例では、Yj,1=Yj,2=・・・=Yj,i=・・・=Yj,nである。
【0037】
前記算出部37は、前記連結部材26を介して前記主軸13に保持された前記第1読取カメラ対27及び第2読取カメラ対28によって撮像される画像を解析することにより、前記主軸13の前記三次元空間内における空間精度(運動誤差)を算出する。
【0038】
具体的には、前記算出部37は、前記主軸13がX軸方向における任意の位置Xa、及びZ軸方向における任意の位置Zaにあるときに、前記数値制御装置15による制御の下で、当該主軸13を前記ピッチ間隔でY軸方向に移動させた際に、前記第1読取カメラ対27及び第2読取カメラ対28によって撮像された画像を解析することにより、Y軸に沿って前記ピッチ間隔で位置決めされる各指令位置(目標位置)(Yj)ごとに、そのY軸-Z軸平面内における位置誤差(運動誤差)(Δpj=ΔYj,ΔZj)を以下の数式1に基づいて算出する。
【0039】
(数式1)
但し、前記E
YY(Y
j)、E
ZY(Y
j)、E
AY(Y
j)及びE
A(0Y)Zは、それぞれ前記三次元空間内における空間精度(空間誤差)であり、
E
YY(Y
j)は、Y軸に沿った直線送り軸(Y軸送り機構)のY軸方向における位置決め誤差、
E
ZY(Y
j)は、Y軸送り機構のY軸-Z軸平面における真直誤差(Z軸方向)、
E
AY(Y
j)は、Y軸送り機構における、Y軸及びZ軸に直交する軸まわりの角度誤差、
E
A(0Y)Zは、理想のY軸に対するZ軸送り機構の直角誤差であり、X軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構の幾何学モデルから設定される誤差である。
【0040】
そして、前記EYY(Yj)は、第1読取カメラ対27によって撮像される移動前後の画像を解析して、格子模様31aのY軸方向の変化量から算出することができ、また、前記EZY(Yj)及びEAY(Yj)は、第2読取カメラ対28によって撮像される移動前後の画像を解析することによって算出することができ、EZY(Yj)は格子模様31bのZ軸方向の変化量から算出することができ、EAY(Yj)は格子模様31bのX軸回りの回転量から算出することができる。また、EA(0Y)Zは、幾何学モデルから予め取得される。
ここで、位置Yjにおいて算出される前記位置決誤差Δpj、並びに各空間精度EYY(Yj)、EZY(Yj)、EAY(Yj)、EA(0Y)Zを含めて誤差Ejと総称する。
【0041】
尚、前記EYY(Yj)は、第2読取カメラ対28によって撮像される移動前後の画像を解析して、格子模様31bのY軸方向の変化量を算出することよっても得ることができるが、本例では、第1読取カメラ対27によって撮像される画像から算出するようにしている。
【0042】
斯くして、前記算出部37は、以上のようにして算出される誤差Ejを逐次前記形状データ補正部38に送信する。
【0043】
尚、上記の空間誤差E
YY(Y
j)、E
ZY(Y
j)、E
AY(Y
j)及びE
A(0Y)Zは、
図3に示すようなものとして図示される(
図3のY軸を参照)。
図3は、相互に直交する送り軸であるX軸送り機構、Y軸送り機構及びZ軸送り機構によって駆動される主軸13のX軸、Y軸、Z軸を基準軸とした三次元空間内における空間誤差に係る誤差パラメータを示したものである。
因みに、他の誤差パラメータは、以下のように定義される。
E
XXは、X軸送り機構のX軸方向における位置決め誤差、
E
ZZは、Z軸送り機構のZ軸方向における位置決め誤差、
E
YXは、X軸送り機構のX軸-Y軸平面における真直誤差(Y軸方向)、
E
ZXは、X軸送り機構のX軸-Z軸平面における真直誤差(Z軸方向)、
E
XYは、Y軸送り機構のY軸-X軸平面における真直誤差(X軸方向)、
E
XZは、Z軸送り機構のZ軸-X軸平面における真直誤差(X軸方向)、
E
YZは、Z軸送り機構のZ軸-Y軸平面における真直誤差(Y軸方向)、
E
AXは、X軸送り機構におけるX軸まわりの角度誤差、
E
AZは、Z軸送り機構におけるX軸まわりの角度誤差、
E
BXは、X軸送り機構におけるY軸まわりの角度誤差、
E
BYは、Y軸送り機構におけるY軸まわりの角度誤差、
E
BZは、Z軸送り機構におけるY軸まわりの角度誤差、
E
CXは、X軸送り機構におけるZ軸まわりの角度誤差、
E
CYは、Y軸送り機構におけるZ軸まわりの角度誤差、
E
CZは、Z軸送り機構におけるZ軸まわりの角度誤差、
E
B(0Z)Xは、X軸送り機構と理想のZ軸との直角誤差、
E
C(0X)Yは、Y軸送り機構と理想のX軸との直角誤差である。
ここで、前記E
XY及びE
CYは、第1読取カメラ対27によって撮像される移動前後の画像を解析することによって算出することができる。具体的には、E
XXは格子模様31aのX軸方向の変化量から算出することができ、E
CYは格子模様31aのZ軸回りの回転量から算出することができる。
【0044】
前記形状データ補正部38は、前記算出部37から前記誤差E
jを受信すると、受信した誤差E
jに係るデータを前記形状データ記憶部36に格納するとともに、前記形状測定器21によって測定されたワークWの実測形状データ(X
j,i,Y
j,i,Z
j,i)を読み出して、前記誤差E
jに含まれる位置決誤差Δp
jに基づき、前記実測形状データ(X
j,i,Y
j,i,Z
j,i)を以下の数式2に従って補正し、補正した形状データを補正形状データ(x
j,i,y
j,i,z
j,i)として前記形状データ記憶部36に格納する処理を行う。
(数式2)
(x
j,i,y
j,i,z
j,i)=(X
j,i,Y
j,i,Z
j,i)-Δp
j
即ち、
=
但し、jは1からmの整数であり、iは1からnの整数である。
【0045】
尚、上記のようにして前記形状データ記憶部36に格納される各データは、
図9に示すようなデータテーブルとして当該形状データ記憶部36に格納される。
【0046】
以上の構成を備えた本例のワーク形状測定装置20によれば、例えば、工作機械1で加工されたワークWの形状を以下のようにして測定することができる。
【0047】
即ち、まず、
図1に示すように、加工後のワークWがベッド2上に載置された状態で、工作機械1の主軸13に、形状測定器21、第1読取カメラ対27及び第2読取カメラ対28が設けられた連結部材26を装着する。ついで、形状測定器21による測定が可能な状態にするとともに、第1読取カメラ対27及び第2読取カメラ対28による基準ブロック30の格子模様31a,31bの撮像を可能な状態にして、数値制御装置15による制御の下で、主軸13を、Y軸方向に前記所定のピッチ間隔で移動させて位置決めする。尚、このとき、主軸13は、X軸方向の任意の位置Xaに位置決めされ、且つZ軸方向の任意の位置Zaに位置決めされているものとする。
【0048】
そして、Y軸方向の各位置決位置、即ち、指令位置(目標位置)(Yj)において、形状測定器21によりワークWの形状を逐次測定するとともに、前記第1読取カメラ対27及び第2読取カメラ対28により対応した格子模様31a,31bを逐次撮像し、得られた画像に基づいて、算出部37により、前記主軸13の前記三次元空間内における誤差Ejを算出し、算出された誤差Ejに基づいて、形状測定器21によって測定されたワークWの実測形状データ(Xj,i,Yj,i,Zj,i)を形状データ補正部38によって逐次補正する。
【0049】
その際、形状測定器21によって測定されたワークWの実測形状データ(Xj,i,Yj,i,Zj,i)は当該形状測定器21から形状データ記憶部36に直接格納され、算出部37により算出された誤差Ejは形状データ補正部38を介して前記形状データ記憶部36に格納され、形状データ補正部38によって補正された補正形状データ(xj,i,yj,i,zj,i)は当該形状データ補正部38から形状データ記憶部36に直接格納される。
【0050】
このように、本例のワーク形状測定装置20によれば、形状測定器21によって測定したワーク形状に係るデータ(Xj,i,Yj,i,Zj,i)を、空間精度測定部25により測定された運動機構部10の誤差(空間精度)Ejに基づいて、形状データ補正部38によって補正されるので、工作機械1の機上(ベッド2上)でワークWの形状を測定する際に、運動機構部10の運動誤差を取り除いた正確な形状データを得ることができる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【0052】
例えば、上例では、主軸13を、Y軸方向に前記所定のピッチ間隔で移動させて位置決めし、各位置決位置、即ち、指令位置(目標位置)(Yj)において、形状測定器21によるワークWの形状測定、算出部37による主軸13の三次元空間内における誤差Ejの算出、及び形状データ補正部38における実測形状データ(Xj,i,Yj,i,Zj,i)の補正を行うようにしたが、このような態様に限られるものではない。
【0053】
例えば、各指令位置(Yj)において、主軸13を更にX軸方向に所定ピッチで所定距離だけ移動させて、全体として、主軸13をジグザグに移動させるようにしても良い。主軸13をX軸方向に所定ピッチで移動させる際に得られる第1読取カメラ対27の撮像画像を算出部37により解析して、X軸方向の各位置において得られる誤差Ejの平均値を用いて、主軸の13の位置誤差(運動誤差)(Δpj=ΔYj,ΔZj)を算出するようにしても良い。このようにすれば、精度の良い位置誤差Δpjをことができ、精度の良いワーク形状データ(即ち、補正形状データ(xj,i,yj,i,zj,i))を得ることができる。
【0054】
また、上例では、基準ブロック30の上面30aに格子模様31aを形成するとともに、第1読取カメラ対27を設けたが、このような態様に限られるものではなく、基準ブロック30の上面30aに設ける格子模様31a、及び第1読取カメラ対27を省略した態様としても良い。この場合、上述したように、基準ブロック30の側面30bに設けた格子模様31bを第2読取カメラ対28によって撮像して得られた画像から、EYY(Yj)を算出することができる。
【0055】
また、上例では、基準ブロック30の側面30bに格子模様を形成するとともに、第2読取カメラ対28を設けて、この第2読取カメラ対28によって撮像された画像を解析することにより、空間誤差EZY(Yj)及びEAY(Yj)を算出し、この空間誤差EZY(Yj)及びEAY(Yj)を用いて主軸13の位置誤差Δpjを算出し、この位置誤差Δpjを用いて実測形状データ(Xj,i,Yj,i,Zj,i)の補正するようにしたが、このような態様に限られるものではない。多少精度が劣ることが許容される場合には、基準ブロック30の側面30bに設ける格子模様、及び第2読取カメラ対28を省略した態様としても良い。この場合、上記の数式1において、EZY(Yj)及びEAY(Yj)は無視、即ち、「0」として取り扱われる。
【0056】
また、上例では、形状データ補正部38は、前記形状測定器21によって逐次測定されるワークW形状に係る実測形状データ(Xj,i,Yj,i,Zj,i)、及び前記算出部37によって逐次算出される誤差Ejに基づいて、逐次補正形状データ(xj,i,yj,i,zj,i)を算出するようにしたが、このような態様に限られるものではなく、形状データ補正部38は、ワークWの全ての実測形状データ(Xj,i,Yj,i,Zj,i)、及び全ての誤差Ejが得られた後に、これらに基づいて補正形状データ(xj,i,yj,i,zj,i)を算出するように構成されていても良い。
【0057】
基準物体として、基準ブロックを例示したが、これに限られるものでは無く、例えば、これを板材としても良い。また、直交する2面に格子模様を設ける場合には、2枚の板材を相互に直交するように直角に連結した態様としても良い。この場合、各板材の表面に格子模様が形成される。
【0058】
また、上例では、ワークWの形状データとして、位置データを例示したが、これに限られるものでは無く、形状データには、この位置データから算出される寸法データも含まれる。
【0059】
また、本例のワーク形状測定装置20は、工作機械1で加工されたワークWをそのまま機上(ベッド2上)でその形状を測定する場合に、好適に用いることができるが、他の工作機械で加工されたワークWを、当該工作機械1の機上で測定する際にも、好適に用いることができる。
【0060】
また、上例で用いた形状測定器21はあくまでも一例であり、当然のことながらワークの形状を測定することができるものであれば、他の態様の形状測定器を用いることができる。
【0061】
また、上例の空間精度測定部25の構成もこれに限られるものではなく、運動機構部10の空間精度を測定することができれば、他の態様のものであっても良い。
【0062】
また、工作機械1の構成も、何ら上例のものに限られるものではない。
【0063】
繰返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 工作機械
2 ベッド
10 運動機構部
11 フレーム
12 サドル
13 主軸
15 数値制御装置
20 ワーク形状測定装置
21 形状測定器
25 空間精度測定部
26 連結部材
27 第1読取カメラ対
28 第2読取カメラ対
30 基準ブロック
35 演算装置
36 形状データ記憶部
37 算出部
38 形状データ補正部
【要約】
【課題】工作機械の機上で、その運動誤差を取り除いた正確な形状データを得ることができるワーク形状測定装置等を提供する。
【解決手段】ワークWを保持するワーク保持部、工具を保持する工具保持部、及びワーク保持部と工具保持部とを少なくとも相互に直交する二つの送り軸方向に相対的に移動させる運動機構部とを備えた工作機械に設けられる。ワーク形状測定装置20は、ワークの形状を測定する形状測定器21と、運動機構部の空間精度を測定する空間精度測定部25と、空間精度測定部25によって測定された運動機構部10の空間精度に基づいて、形状測定器21によって測定されたワーク形状に係る測定データを補正する形状データ補正部38とを備える。
【選択図】
図2