(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】鼻部が上昇している格子ブロック
(51)【国際特許分類】
F23H 7/08 20060101AFI20231227BHJP
F23H 17/02 20060101ALN20231227BHJP
F23H 1/02 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
F23H7/08 A
F23H17/02
F23H1/02
(21)【出願番号】P 2023515334
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2021074785
(87)【国際公開番号】W WO2022053551
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-04-27
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516042103
【氏名又は名称】ヒタチ ゾウセン イノバ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】モーリス アンリ バルドナー
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー ブレンバルト
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-067453(JP,A)
【文献】米国特許第04078883(US,A)
【文献】米国特許第04515560(US,A)
【文献】特開平04-320713(JP,A)
【文献】特開平09-280520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23H 7/08
F23H 17/02
F23H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の熱処理のための火格子の一部である格子ブロック(1)であって、
前記格子ブロックは、階段状に互いに上下に配置され、燃焼中に焼却物を互いに相対的に実行可能な送り動作によって、焼却材が重ね直され、搬送方向Fに搬送されるように構成されており、
前記格子ブロック(1)は鋳物として形成されたブロック本体(3)を含み、該ブロック本体(3)は以下の構成要素、即ち
後端部(5)と、前記搬送方向Fで前記後端部(5)とは反対側の前端部(7)と、
前記ブロック本体(3)の長手方向軸Lに対して実質的に平行に延びる、被処理廃棄物のための後方載置面(11)を形成する上壁(4)であって、前記後方載置面(11)は実質的に水平面(23)を画定している、上壁(4)と、
前記前端部(7)の領域に配置された、前記水平面(23)に対して隆起した鼻部(13)と、
を備えている格子ブロック(1)において、
前記隆起した鼻部(13)は、前記搬送方向Fで頂点(17)に達するまで上昇する前方載置面(15)と、前記頂点(17)の後で前記前方載置面(15)に隣接する下降傾斜端部(19)と、を有し、
前記下降傾斜端部(19)は、前記搬送方向Fで実質的に弧状に下降する排出面(21)を備え、
前記前方載置面(15)は前記搬送方向Fに沿った縦断面で見てS字状である、ことを特徴とする、格子ブロック(1)。
【請求項2】
前記頂点(17)は水平面(23)から垂直方向に10~35mm
離間していることを特徴とする、請求項1に記載の格子ブロック(1)。
【請求項3】
前記前方載置面(15)は、傾斜路状に形成されていて、中央部(27)で平均勾配が10~35%
であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の格子ブロック(1)。
【請求項4】
弧状に下降する前記排出面(21)は、前記搬送方向Fで最前に位置する点(29)で
排出縁部(31)を有していることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
【請求項5】
前記下降傾斜端部(19)は、前記頂点(17)と前記搬送方向Fで最前に位置する点(29)との間の領域において、第1の弧状部(43)を有していることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
【請求項6】
前記第1の弧状部(43)は、長さが60~120mm
の第1の曲率半径R1を有することを特徴とする、請求項5に記載の格子ブロック(1)。
【請求項7】
前記第1の弧状部(43)は、縦断面で見て、中心角αが60°~72°
の扇形面に広がっていることを特徴とする、請求項5又は6に記載の格子ブロック(1)。
【請求項8】
前記下降傾斜端部(19)は
第2の弧状部(45)を有していることを特徴とする、請求項5~7の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
【請求項9】
前記第2の弧状部(45)は、縦断面で見て、長さが10~30mm
の第2の曲率半径R2を有することを特徴とする、請求項8に記載の格子ブロック(1)。
【請求項10】
前記第2の弧状部(45)は、縦断面で見て、中心角βが70°~120°
の扇形面に広がっていることを特徴とする、請求項9に記載の格子ブロック(1)。
【請求項11】
前記ブロック本体(3)は、前記下降傾斜端部(19)の最前点(29)に対して前記搬送方向Fとは反対方向に後退した前壁(33)を有して、アンダーカット部(35)が形成されていることを特徴とする、請求項4~10の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
【請求項12】
前記アンダーカット部(35)の前記前壁(33)の領域に通気口(41)がある、請求項11に記載の格子ブロック(1)。
【請求項13】
前記後方載置面(11)に
窪み(25)が形成されていることを特徴とする、請求項1~12の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載の、複数の格子ブロック(1)を含む火格子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ごみ焼却設備で使用することを意図された火格子に関するものである。廃棄物の工業的規模の焼却に用いる火格子は、当業者には長い間知られている。それらは通常、相応の火格子に組み合わされる多数の個々の火格子棒からなる。この構造により、火格子の個々の領域が損傷した場合に、個々の火格子棒を簡単に交換することができる。
【背景技術】
【0002】
このようなごみ焼却設備では、通常、焼却物が火格子の入口側端部から出口側端部まで(即ち搬送方向に)搬送され、この間に焼却される。焼却物中に一次空気とも呼ばれる燃焼用空気を供給するために、火格子棒又は火格子は下側から空気流が送り込まれ、流入した燃焼用空気が焼却物に到達できる出口開口部を有している。このような火格子又は火格子棒は、例えば特許文献1から知られている。
【0003】
よく使われる火格子は、いわゆる階段火格子である。これは互いに並置されてそれぞれ火格子列を形成する格子ブロックを含んでいる。この場合、格子ブロック列は階段状に互いに上下に配置されており、いわゆる送り火格子の場合は送り方向(又は焼却物の搬送方向)に見て第1の格子ブロックの前端部が、送り方向にずれて第1の格子ブロックの下に配置された第2の格子ブロックの載置面に載り、相応の送り動作によりこの載置面上で移動する。
【0004】
格子ブロックは、それらの上を搬送される焼却物によって、一般的に比較的高い摩損を被る。焼却物は、それぞれの格子ブロックの前部領域(鼻部とも呼ぶ)で、載置面から対応する排出縁部を通って後続の格子ブロックの載置面上に排出される。そのため、特にこの載置面の前端部領域(送り部とも呼ぶ)で摩耗又は損耗が激しい。
【0005】
格子ブロックは、更に、燃焼時に又は火室内で高温になるために、非常に強い熱負荷に暴露されている。火格子の通常運転においては、格子ブロック上にある焼却物がある程度まで断熱効果を及ぼすものの、この熱負荷は特に載置面の領域で高くなる。しかし、負荷ピークが発生するのは、特に焼却物が火格子上に不均一に分布し、そのために所々で薄い断熱層しか形成しない場合か、又はこの断熱層が全くない場合である。この熱負荷は、磨耗による浸食や、載置面で発生する化学反応を促進して、載置面を更に損傷する。これらの現象は、最終的に格子ブロックの寿命の短縮につながる。
【0006】
熱負荷を軽減するため、格子ブロックは通常、下から、即ち火格子の燃焼とは反対の側で冷却剤によって冷却される。冷却剤として通常、空気又は水が使用される。しかし、前述したように、焼却物が火格子上に均一に分布することによっても、熱負荷を軽減することができる。
【0007】
廃棄物をある格子ブロックから次の(その下にある)格子ブロックに搬送する間に粉砕及び/又は多かれ少なかれ攪拌するために、従来技術では、特殊な鼻形を有する格子ブロックが提案された。
【0008】
特許文献2は、可動火格子要素と固定火格子要素(可動ラムと固定プレート)を備えた送り火格子を開示している。固定火格子要素は前端部に隆起部を有しており、隆起部の内縁は焼却される廃棄物の組成に応じて、傾斜がより平ら又はより急に構成されている。廃棄物をより多く搬送するためには、より平らな内縁が選択されるのに対し、廃棄物をより多く攪拌するためには急な内縁が選択される。
【0009】
この火格子構造の短所は、隆起部の内縁の傾斜を運転中に変えることができないので、廃棄物の組成が大きく変化する場合には適さないことである。更に、2種類(ラムとプレート)の火格子本体が使用されており、火格子の構造及び火格子本体の交換が複雑になっている。
【0010】
特許文献3及び4は、それぞれの送り部に鋭角のピラミッド状の突起を備えた火格子棒を開示している。これらの突起は、焼却される廃棄物を攪拌動作によって粉砕するために利用される。
【0011】
更に特許文献5には、鼻部の領域にピラミッド状の突起を持つ格子ブロックが開示されている。具体的に開示されているのは、移送鼻部を備えた交換可能なヘッドを有する火格子棒である。移送鼻部は断面が三角形で、交換可能なヘッドの傾斜面に組み付けられている。更に、この交換可能なヘッドは、ヘッドの水平面上に組み付けられて、同様にピラミッド形を有する攪拌鼻部を含んでいる。移送鼻部は、火格子上の廃棄物の後方動作と循環を支援するのに対し、攪拌鼻部は、火格子上の廃棄物の前方動作及び下方動作を支援する。
【0012】
これまで知られている送り火格子における格子ブロックの短所は、被処理廃棄物が通常の送り動作の際に前進ごと又は一括してその下にある格子ブロック上に落下する点である。この場合、廃棄物を第1の格子ブロックから第2の格子ブロックに移行させることは、2通りの方法で行うことができる。即ち、一方で、第1の格子ブロックが搬送方向への送り動作を行い、それによって廃棄物を第1の格子ブロック下に配置された第2の格子ブロックに押し付けることができる。他方で、廃棄物は第1の格子ブロックを引き戻すことによっても、その下に配置された第2の格子ブロックの上に廃棄物を落下させることもできる。格子ブロックが(移送方向又は搬送方向とは反対に)引き戻されると、格子ブロックの上にある廃棄物は、その慣性のために遅れて動き出す。廃棄物は格子ブロック上に層として載っているため、その後方動作は追加的に妨げられ、それにより格子ブロックは、その上に載っている破棄物よりも大きく後方動作を行う。その結果として、格子ブロックを引き戻すたびに、移送方向に見て廃棄物層の最前部は、その下に配置された格子ブロック上に落下する。
【0013】
上述したように、廃棄物層は断熱効果を持ち、格子ブロックを過度の熱負荷から保護している。この点で、廃棄物は規則的に分布していることが望ましい。しかしながら、上記のような前進のたびに、又は一括して廃棄物を「落下」させることで、「受け」火格子ブロック上に厚さが不均一な廃棄物層ができ、温度ピークの発生を助長することがしばしばある。更に、廃棄物が「落下」することによって、下側の格子ブロック上に形成された廃棄物層に空気孔が生じ、これによっても火炎形成が点状に強められ、それに伴って格子ブロックの熱負荷が増大する。
【0014】
特許文献3及び特許文献4に記載されているような、ピラミッド状の突起を持つ格子ブロックは、格子ブロックが動くと廃棄物も一緒に動くように作用するが、廃棄物はこれまでと同様にその下に位置する格子ブロックに前進のたびに、又は一括して移行し、そのために廃棄物層の分布又は厚さが不規則になる。
【0015】
火格子内の格子ブロックの位置が異なると、その摩耗も異なる。一般に、熱負荷が高くなるほど、載置面の摩耗も強くなる。縦断面で測定すると、格子ブロックの磨耗は1年後に平均5mmである。熱負荷の高いゾーンでは、1年後に摩耗が最大10mmになることがあり、これは格子ブロックの2~3年の寿命に相当する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】独国実用新案第20111804(Ul)号明細書
【文献】独国特許第568164号明細書
【文献】独国特許第1301421号明細書
【文献】独国特許第969643号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0167762(Al)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の課題は、従来技術の短所を取り除き、温度ピーク及びそれに伴う熱負荷ピークを回避するために、格子ブロック上で搬送される焼却物が格子ブロックの載置面上に均一に分布することを可能にする火格子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題は、本発明によれば、請求項1に記載の格子ブロックと、請求項10に記載の火格子によって解決される。本発明の好適な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0019】
本発明による格子ブロックは火格子の一部であり、火格子は複数のそのような格子ブロックからなり、格子ブロックが階段状に互いに上下に配置されている。この火格子は、廃棄物の熱処理設備で使用することが意図されておりる。この場合、格子ブロックは、燃焼中に焼却物を互いに相対的に実行可能な送り動作によって重ね直して、搬送方向に搬送するように構成されている。
【0020】
本発明による格子ブロックは、後端部と、搬送方向で後端部とは反対側の前端部とを有する、鋳物として形成されたブロック本体を含んでいる。ブロック本体は、更に、ブロック本体の長手方向軸Lに対して少なくとも部分的に平行に延びる、被処理廃棄物のための外側後方載置面を形成する上壁を含んでいる。この場合、後方載置面は、実質的に水平面を画定している。
【0021】
更に、本発明による格子ブロックは、前端部の領域に配置された、水平面に対して隆起した鼻部を含んでいる。この隆起した鼻部は、搬送方向で頂点に達するまで上昇する前方載置面と、この頂点の後で前方載置面に隣接する下降傾斜端部を含んでいる。この下降傾斜端部は、搬送方向で実質的に弧状に下降する排出面を含んでいる。
【0022】
本発明の意味において、階段状に互いに上下する格子ブロックを、上昇又は下降する階段のように配置された火格子上の格子ブロックと定義する。
【0023】
「互いに相対的に実行可能な送り動作」という用語は、焼却物の搬送方向又はその反対の方向に実施される送り動作と理解される。したがって階段状火格子では、焼却物の搬送方向は火格子の傾斜又は勾配と平行に延びている。
【0024】
「ブロック本体又は格子ブロックの長手方向軸」とは、階段状火格子の全体の傾斜と平行に延びる、したがって被処理廃棄物の搬送方向と平行に走る軸を意味する。
【0025】
本出願の意味において、「載置面」は、格子ブロックの外側上面に配置され、その上に熱処理を意図する廃棄物が載っている面と理解される。冒頭で述べたように、この載置面は焼却設備では、高い機械負荷及び熱負荷を受け、燃焼生成物の付着が発生しやすいことが知られている。
【0026】
一般に、ブロック本体の搬送方向最前部は「鼻」と呼ばれている。本出願の意味において、「隆起した鼻部」は、最高点が垂直方向で後方載置面より上方にある鼻と理解される。
【0027】
「頂点」は、一般に最高点を意味し、本出願においては隆起した鼻部の最高点と定義される。頂点は、例えばピラミッドの尖端や、曲線又は弧の最上点など、特異点として形成されてよい。しかしまた、頂点は水平面として形成することもできる。この場合は、平面全体が頂面という意味での頂点として定義されよう。
【0028】
「下降傾斜端部」とは、搬送方向でブロック本体の前端部にあって、頂点を起点として下降する面をいう。本発明によれば、下降傾斜端部は垂直方向に下降している。これは、下降傾斜端部が負の勾配を有することを意味する。
【0029】
「実質的に弧状」という用語は、下降する排出面が弧状又は好ましくは円弧状に形成されていることと定義される。このような弧状面は、短い直線状の面部分を多数連ねて形成することもできるが、全体として弧状に推移している。
【0030】
本発明による格子ブロックは従来技術と比べて、隆起した鼻部のために、廃棄物が第1の格子ブロックからその下に位置する第2の格子ブロックに連続的で規則的に、いわば流れるように移送され、それにより廃棄物の前進のたびの排出、又は廃棄物の一括した排出が防がれるという利点を有している。この場合、隆起した鼻部が障害物となり、廃棄物を引き戻すときに一括に落下するのを妨げる。同様に、第1の格子ブロックから第2の格子ブロックに移送された廃棄物は、第1の格子ブロックの送り動作において第2の格子ブロックから第3の格子ブロックに搬送される。この制御された送り動作は、廃棄物が一括に落下することを防ぎ、廃棄物を連続的な流れ動作において搬送することを可能にし、最終的には格子ブロックの載置面上に規則的な廃棄物層が形成されることにつながる。この規則的な廃棄物層は均一な断熱効果を有し、それにより格子ブロックに熱負荷ピークを防止する。
【0031】
格子ブロックの好適な実施形態では、頂点の位置は水平面から垂直方向に10~35mm、好ましくは15~30mm、特に好ましくは、18~25mm、最も好ましくは20~21mm離間している。
【0032】
水平面における間隔(内法幅又は内法距離ともいう)が上記の値を持つ格子ブロックは、その下に位置する格子ブロック上に規則的な廃棄物層を作り出すのに特に適していることが示されている。
【0033】
上昇する前方載置面は、傾斜路状に形成されていて、中央部で正の平均勾配が10~35%、好ましくは15~32%、特に好ましくは20~30%、最も好ましくは26~28%であることが好適である。
【0034】
本発明の意味において、「傾斜路」又は「傾斜路状」は、水平面に続いて正の勾配を有する、それゆえ水平面より高くされた点につながる面をいう。この場合、傾斜路は任意の形状(例えば凸形状又はS字状)。
【0035】
上記の数値による平均勾配を持つ傾斜路状の載置面は、その下に位置する格子ブロック上に規則的な廃棄物層を作り出すのに特に適していることが示されている。
【0036】
格子ブロックの好適な実施形態では、前方載置面が搬送方向に沿った縦断面で見てS字状に形成されている。
【0037】
(縦断面で見て)「S字状」に形成された前方載置面は、本発明の意味において、載置面が、水平面に隣接する第1の領域では連続的に増加する正の勾配を有し、搬送方向で第1の領域に直接的又は間接的に隣接する第2の領域では連続的に減少する正の勾配を有することと理解される。好ましくは、第1の領域と第2の領域との間に配置された第3の領域で、正の勾配は一定とすることができる。「S字状」曲線の別名は、シグモイド関数、グースネック関数、又はフェルミ関数である。S字状曲線の例を表す方程式は、次の通りである。
【数1】
【0038】
縦断面で見てS字状の前方載置面を持つ格子ブロックは、焼却される廃棄物を非常に規則的に移送することを可能にし、その際にその下に位置する格子ブロック上に規則的な廃棄物層を作り出すことが示されている。
【0039】
弧状に下降する排出面は、搬送方向で最前に位置する点で、好ましくは丸みを帯びた排出縁部を含んでいることが好適である。
【0040】
丸みを帯びた排出縁部は、鼻部のこの領域で材料摩耗が減少するという利点がある。更に、廃棄物を隣接して下に位置する格子ブロックへ流れるように移送することが可能になり、それによって規則的な廃棄物層が形成されて、局所的なカッティングトーチ効果が防がれる。
【0041】
格子ブロックの好適な実施形態において、下降傾斜端部は、頂点と搬送方向で最前に位置する点との間の領域において、第1の弧状部を含んでいる。
【0042】
上記の第1の弧状部は、弧状排出面の一部であってよく、又は頂点と弧状排出面との間の接続部を形成できる。第1の弧状部の弧状輪郭は、前方載置面上で焼却される廃棄物の均一な流れを可能にし、それによって格子ブロックにおける摩擦又は摩耗が減少し、その下に位置する格子ブロック上に規則的な廃棄物層が作り出される。
【0043】
第1の弧状部は、長さが60~120mm、好ましくは70~110mm、特に好ましくは80~100mm、最も好ましくは90mmの第1の曲率半径R1を有することが好適である。
【0044】
「第1の曲率半径R1」は、第1の弧状部の平均半径と定義される。この場合、第1の弧状部は、小さな直線部分を組み合わせて全体として弧状部を構成することが十分考えられる。好ましくは、弧状部の外面は、縦断面で見て扇形の円弧を形成している。このため、第1の弧状部の面は、縦断面で見て、円弧と2つの円の半径によって制限される。第1の弧状部上で廃棄物を均一に搬送することに関して、先に定義した値の曲率半径が特に有利であることが分かった。
【0045】
格子ブロックの好適な実施形態では、第1の弧状部は、縦断面で中心角αが60°~72°、好ましくは約66°の扇形面に広がっている。
【0046】
下降傾斜端部は、好ましくは搬送方向で第1の弧状部に隣接し、特に非常に好ましくは直接的に隣接する第2の弧状部を含んでいることが好適である。
【0047】
第1の弧状部と第2の弧状部は、互いに直接接続されても、中間部分を介して接続されてもよい。中間部分は直線状の面として形成されても、弧状部として形成されてもよい。
【0048】
格子ブロックの好適な実施形態では、第2の弧状部は、縦断面で見て、長さが10~30mm、好ましくは15~25mm、特に好ましくは18~22mm、特に非常に好ましくは20mmの第2の曲率半径R2を有する。
【0049】
ここで、「第2の曲率半径R2」は、(縦断面で見て)第2の弧状部の平均半径と定義される。この場合、第2の弧状部は、小さい直線部分を組み合わせて全体として弧状部を形成することも十分に考えられる。
【0050】
第1の曲率半径と第2の曲率半径の長さが異なっていることが好ましい。これはまた、第1の弧状部と第2の弧状部が、好ましくは異なる曲率を有することを意味する。異なる円弧曲率、特に上記の好適な曲率半径R1及びR2は、排出縁部を介する連続したごみ排出に関して特に有効であることが示されている。
【0051】
第2の弧状部は、縦断面で見て、中心角βが70°~120°、好ましくは約90°の扇形面を画定することが好適である。
【0052】
好適な実施形態の格子ブロックでは、ブロック本体は、(搬送方向に見て)下降傾斜端部の最前点に対して搬送方向とは反対方向に後退した前壁を有して、アンダーカット部が形成される。それにより、この好適な実施形態で格子ブロックは、突出した鼻部を有する。特に好ましくは、格子ブロックはアンダーカット部の領域で前壁に空気開口部を含んでいる。このことは、一次空気又は二次空気を供給するための通気口を排出縁部の下方に配置することができ、そのためこれらは落下する廃棄物によって塞がれたり詰まったりすることがないという利点がある。排出縁部からアンダーカット部への好ましくは弧状の移行部は、均一な廃棄物排出動作の点で有利である。
【0053】
好適な実施形態では、頂点と排出縁部との間の縦断面で測定した距離は、60~100mm、好ましくは70~90mm、特に好ましくは80~82mmである。
【0054】
鼻部は、長手方向軸に沿って測定した長さが170mmであることが好ましい。この場合、鼻部の長さは、上昇する傾斜路状の前方載置面の始点から排出縁部との間の内法距離と定義される。
【0055】
頂点と排出縁部との間の距離、及び鼻部の長さに関する上記の好適な寸法は、特に格子ブロックをごみ焼却設備で使用する観点で有利である。
【0056】
好適な実施形態では、格子ブロックは後方載置面に、好ましくは前方載置面に隣接して窪みを有する。この窪みの領域に通気口が配置されていることが好適である。上記の通気口は、火山型の外郭を有する隆起部を通るエアダクトの出口を画定することが好ましい。エアダクトは、好ましくは通気口を起点としてブロック本体の内部に向かって連続的に拡大する。これにより、廃棄物粒子による給気口の閉塞を効果的に防止することができる。
【0057】
本発明は、更に、本発明による複数の格子ブロックを含む火格子に関する。
【0058】
個々の格子ブロックは、火格子内を好ましくは0~5mm/sの速度で150~250mm、特に好ましくは200mmの送り距離にわたって移動する。比較可能な既知の設備では、最大350~450mmの送り距離が一般的である。本発明によれば送り距離が好ましくは比較的短いため、格子ブロックは1時間に最大45回、初期位置から終了位置まで移動し、再び初期位置に戻る。送り距離を短くすることは、焼却物の均一な搬送に有利であることが示されている。
【0059】
格子ブロックは、火格子の主燃焼ゾーンでは好ましくは2~3mm/sで、火格子の後燃焼ゾーンでは好ましくは1mm/sで移動する。個々のブロック本体の速度は、通常、焼却される廃棄物の組成に応じて調整される。
【0060】
以下に、本発明を図に示す幾つかの実施形態例を参照して、より詳細に説明する。代替実施形態が個々の特徴においてのみ異なる場合、同じ特徴については、それぞれ同じ参照符号を使用した。図は、純粋に図式的な性質のものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は本発明による格子ブロックの実施形態の斜視図である。
【
図2】
図2は
図1のブロック本体を通る長手方向軸Lに沿った縦断面である。
【
図3】
図3は
図1のブロック本体の前方領域を通る長手方向軸Lに沿った縦断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1及び
図2に示す格子ブロック1は、鋳物として形成され、搬送方向Fに後端部5から前端部7まで延びる上壁4を備えたブロック本体3を有している。後端部
5の領域では、ブロック本体は固定装置9を含み、これによってブロック本体3は火格子内で駆動システム(図示せず)に連結されており、駆動システムは搬送方向F又はその反対方向の動作を開始させる。更に、ブロック本体3は、後端部5の領域に、焼却される廃棄物の熱処理のための外側の後方載置面11を含んでいる。前端部7の領域で、ブロック本体3は隆起した鼻部13を有する。鼻部13は、搬送方向Fに見て、頂点17に達するまで上昇する外側の前方載置面15と、頂点17に隣接し、実質的に弧状に下降した排出面21を備える下降傾斜端部19とを含む。後方載置面11は、窪み25を有する実質的に水平面23を画定している。この水平面23に、搬送方向Fで外側の前方載置面15が続いている。上昇する外側の前方載置面15は傾斜路状であり、縦断面で見て実質的にS字状に形成されている。そのために、図示の実施形態では、前方載置面15の勾配は水平面23に続いて連続的に増加し、中央部27で一定となり、次いで頂点17に向かって減少して、勾配は頂点17の方向でゼロに近づく。頂点17は、ここでは前方載置面15と下降傾斜端部19との間の特異点として形成されているが、代替的に「頂面」として形成することも可能であろう。隆起した鼻部13の下降傾斜端部19は、搬送方向Fに見て最前に位置する点29で、丸みを帯びた排出縁部31を有する。
【0063】
ブロック本体3は、更に、下降傾斜端部19の最前点29から搬送方向Fと反対の方向に後退した前壁33を有し、下降傾斜端部19とアンダーカット部35を形成している。ブロック本体3の前壁33には下側での下部に摺動面37が続いており、これによりブロック本体3はその下に位置する第2の格子ブロック(図示せず)の外側の後方載置面11上を摺動する。前壁33は通気口39を有しており、これらの通気口39はアンダーカット部35の領域に位置することにより落下する廃棄物から保護されていて、通気口39の閉塞を防止することができる。上壁4は更に水平面23の領域に別の通気口41を有しており、エアダクトの出口はピラミッド型又は火山型の隆起部によって表されている。エアダクトの直径は、通気口41を起点としてブロック本体の内部に向かって同心円状に広がっており、そのため通気口41を通ってエアダクトに入った廃棄物は、直径が拡大しているために通気口41を詰まらせることなく下方に落下する。通気口39、41は、効率的な燃焼を可能にするために、一次空気又は二次空気を供給する役割を果たす。
【0064】
図3は、
図1の格子ブロックの隆起した鼻部13と前端部7の拡大図である。破線で示す垂直軸Vは、頂点17を通っている。頂点17を起点として、下降傾斜端部19の外郭は搬送方向Fに下降して、第1の弧状部43を形成している。第1の弧状部43は、平均曲率半径R1を有し、垂直軸Vと第1のセグメント軸A1との間の角度αに広がっている。第1の弧状部43に、第2の弧状部45が続いている。第2の弧状部45は、平均曲率半径R2を有し、第1のセグメント軸A1と第2のセグメント軸A2との間で角度βに広がっている。第1の弧状部43と第2の弧状部45は、互いに直接に、又は中間部分(図示せず)を介して接続できる。この場合、中間部分は直面として、又は同様に弧状部として形成することができる。丸みを帯びた排出縁部31を有する最前点29は、角度α及びβの大きさに応じて、第1の弧状部43又は第2の弧状部45に配置することができる。
[構成1]
廃棄物の熱処理のための火格子の一部である格子ブロック(1)であって、
前記格子ブロックは、階段状に互いに上下に配置され、燃焼中に焼却物を互いに相対的に実行可能な送り動作によって、焼却材が重ね直され、搬送方向Fに搬送されるように構成されており、
前記格子ブロック(1)は鋳物として形成されたブロック本体(3)を含み、該ブロック本体(3)は以下の構成要素、即ち
後端部(5)と、前記搬送方向Fで前記後端部(5)とは反対側の前端部(7)と、
前記ブロック本体(3)の長手方向軸Lに対して実質的に平行に延びる、被処理廃棄物のための後方載置面(11)を形成する上壁(4)であって、前記後方載置面(11)は実質的に水平面(23)を画定している、上壁(4)と、
前記前端部(7)の領域に配置された、前記水平面(23)に対して隆起した鼻部(13)と、
を備えている格子ブロック(1)において、
前記隆起した鼻部(13)は、前記搬送方向Fで頂点(17)に達するまで上昇する前方載置面(15)と、前記頂点(17)の後で前記前方載置面(15)に隣接する下降傾斜端部(19)と、を有し、
前記下降傾斜端部(19)は、前記搬送方向Fで実質的に弧状に下降する排出面(21)を備えていることを特徴とする、格子ブロック(1)。
[構成2]
前記頂点(17)は水平面(23)から垂直方向に10~35mm、好ましくは15~30mm、特に好ましくは18~25mm、最も好ましくは20~21mm離間していることを特徴とする、構成1に記載の格子ブロック(1)。
[構成3]
前記前方載置面(15)は、傾斜路状に形成されていて、中央部(27)で平均勾配が10~35%、好ましくは15~32%、特に好ましくは20~30%、最も好ましくは26~28%であることを特徴とする、構成1又は2に記載の格子ブロック(1)。
[構成4]
前記前方載置面(15)は、前記搬送方向Fに沿った縦断面で見て、S字状であることを特徴とする、構成1~3の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
[構成5]
弧状に下降する前記排出面(21)は、前記搬送方向Fで最前に位置する点(29)で、好ましくは丸みを帯びた排出縁部(31)を有していることを特徴とする、構成1~4の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
[構成6]
前記下降傾斜端部(19)は、前記頂点(17)と前記搬送方向Fで最前に位置する点(29)との間の領域において、第1の弧状部(43)を有していることを特徴とする、構成1~4の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
[構成7]
前記第1の弧状部(43)は、長さが60~120mm、好ましくは70~110mm、特に好ましくは80~100mm、最も好ましくは90mmの第1の曲率半径R1を有することを特徴とする、構成6に記載の格子ブロック(1)。
[構成8]
前記第1の弧状部(43)は、縦断面で見て、中心角αが60°~72°、好ましくは約66°の扇形面に広がっていることを特徴とする、構成6又は7に記載の格子ブロック(1)。
[構成9]
前記下降傾斜端部(19)は、好ましくは前記搬送方向Fで前記第1の弧状部(43)に隣接する、特に好ましくは直接に隣接する第2の弧状部(45)を有していることを特徴とする、構成6~8の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
[構成10]
前記第2の弧状部(45)は、縦断面で見て、長さが10~30mm、好ましくは15~25mm、特に好ましくは18~22mm、最も好ましくは20mmの第2の曲率半径R2を有することを特徴とする、構成9に記載の格子ブロック(1)。
[構成11]
前記第2の弧状部(45)は、縦断面で見て、中心角βが70°~120°、好ましくは約90°の扇形面に広がっていることを特徴とする、構成10に記載の格子ブロック(1)。
[構成12]
前記ブロック本体(3)は、前記下降傾斜端部(19)の最前点(29)に対して前記搬送方向Fとは反対方向に後退した前壁(33)を有して、アンダーカット部(35)が形成されていることを特徴とする、構成5~11の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
[構成13]
前記アンダーカット部(35)の前記前壁(33)の領域に通気口(41)がある、構成12に記載の格子ブロック(1)。
[構成14]
前記後方載置面(11)に、好ましくは前記前方載置面(15)に隣接して、窪み(25)が形成されていることを特徴とする、構成1~13の何れか一項に記載の格子ブロック(1)。
[構成15]
構成1~14の何れか一項に記載の、複数の格子ブロック(1)を含む火格子。