(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ステータの製造装置及びステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H02K15/04 F
(21)【出願番号】P 2023571189
(86)(22)【出願日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2023028199
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022125057
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 幹之
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123755(JP,A)
【文献】特開2016-146727(JP,A)
【文献】特開2013-39001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のスロットを備えるステータコアと、前記スロットにそれぞれ挿入される複数本のセグメントコイルと、を備えるステータが載置される載置台と、
前記載置台を上昇及び下降させる昇降機構と、
前記載置台の上方に配設され、前記セグメントコイルの前記ステータコアの上部に露出した先端部が挿入可能な挿入部を備える捻り治具と、
前記捻り治具を回転させる捻り機構と、
前記載置台と前記捻り治具との間に配設され、前記挿入部内に前記先端部が挿入された状態で前記捻り機構が回転することにより前記セグメントコイルが捻り加工された前記ステータを、前記捻り治具から離れる方向に押圧して前記セグメントコイルと前記捻り治具とを分離させる、分離治具と、を備える、
ステータの製造装置。
【請求項2】
前記分離治具は、前記載置台と前記捻り治具との間に配設された分離治具本体と、前記分離治具本体を上下方向に移動させる治具移動機構と、を備え、前記治具移動機構が前記昇降機構の下降に合わせて前記分離治具本体を下降させることにより、前記分離治具本体が前記ステータコアを押圧して前記セグメントコイルと前記捻り治具とを分離させる、
請求項1に記載のステータの製造装置。
【請求項3】
前記分離治具は、前記載置台と前記捻り治具との間に配設された分離治具本体と、前記分離治具本体と前記載置台とを連結する連結機構と、を備え、前記昇降機構によって前記載置台が下降する前に前記連結機構が前記載置台に連結させ、前記昇降機構の下降に合わせて前記分離治具本体を下降させることにより、前記分離治具本体が前記ステータコアを押圧して前記セグメントコイルと前記捻り治具とを分離させる、
請求項1に記載のステータの製造装置。
【請求項4】
前記分離治具は、円環状のベース部材と、前記ベース部材に設けられ前記ステータコアの上部に露出したセグメントコイル間に挿入されて前記スロットに挿入された絶縁紙を支持するカフスサポータと、前記カフスサポータを前記ベース部材の軸心に近づく又は遠ざかる方向に進退させる進退機構と、を備えるカフスサポータユニットである、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のステータの製造装置。
【請求項5】
前記昇降機構により前記載置台上に載置された前記ステータが上昇した際、前記ベース部材の一部が前記ステータコアの上面に当接する、
請求項4に記載のステータの製造装置。
【請求項6】
前記捻り機構と前記分離治具との間に配設され、複数の前記捻り治具をそれぞれ支持可能な複数の支持部を備える、回転式の治具ホルダをさらに備える、
請求項1に記載のステータの製造装置。
【請求項7】
複数個のスロットを備えるステータコアと、前記スロットにそれぞれ挿入される複数本のセグメントコイルと、を備えるステータを載置台に載置する工程と、
前記載置台の上方に、前記載置台に載置された前記ステータの前記セグメントコイルの前記ステータコアの上部に露出した先端部が挿入可能な挿入部を備える捻り治具を配設する工程と、
前記載置台を上昇させて前記セグメントコイルの前記先端部の少なくとも一部を前記挿入部に挿入する工程と、
前記捻り治具を回転させて、前記セグメントコイルの前記先端部を捻る工程と、
前記載置台を下降させると共に前記載置台と前記捻り治具との間に配設された分離治具を動作させ、前記ステータを前記捻り治具から離れる方向に押圧して、前記セグメントコイルと前記捻り治具とを分離させる工程と、を備える、
ステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はステータの製造装置及びステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータや発電機等を含む回転電機のステータに用いられるコイルとして、ステータの周方向に沿って配設された複数のスロットに、直線状の線材を略U字状に加工してなる複数のセグメントコイルを挿入したものが知られている。このようなセグメントコイルを含むステータにおいては、セグメントコイルの自由端側の先端を捻り加工した後、それぞれを溶接等して電気的に接続することが従来から行われている(例えば国際公開第2019/093515号参照)。
【0003】
国際公開第2019/093515号には、テーブルに置かれたステータの上部に設けられたツイスト治具に形成された挿入孔あるいは挿入溝にセグメントコイルの先端部を挿入した後、ツイスト治具を左右に回転させる加工装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国際公開第2019/093515号に記載された加工装置のように、ステータの上部に設けられた捻り治具を用いて捻り加工を行う装置では、捻り動作時等にセグメントコイルの一部が捻り治具の挿入孔あるいは挿入溝、もしくは複数の捻り治具間の隙間等に噛み込まれる(あるいは食い込む)ことがある。このような噛み込みが生じると、捻り加工終了後にステータが置かれたテーブルを下降してもセグメントコイルと捻り治具とが分離されなくなるため、ステータが捻り治具に吊り下がった状態となる恐れがある。ステータが捻り治具に吊り下がった状態となると、ステータを以降の工程へ搬送することができないだけでなく、不意に噛み込み状態が解消された場合等にはステータが落下してステータ自体あるいは装置が破損する恐れがある。
【0005】
本開示は、上述した課題に鑑み、セグメントコイルと捻り治具とを確実に分離させることが可能なステータの製造装置及びステータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係るステータの製造装置は、複数個のスロットを備えるステータコアと、前記スロットにそれぞれ挿入される複数本のセグメントコイルと、を含むステータが載置される載置台と、前記載置台を上昇及び下降させる昇降機構と、前記載置台の上方に配設され、前記セグメントコイルの前記ステータコアの上部に露出した先端部が挿入可能な挿入部を備える捻り治具と、前記捻り治具を回転させる捻り機構と、前記載置台と前記捻り治具との間に配設され、前記挿入部内に前記先端部が挿入された状態で前記捻り機構が回転することにより前記セグメントコイルが捻り加工された前記ステータを、前記捻り治具から離れる方向に押圧して前記セグメントコイルと前記捻り治具とを分離させる分離治具と、を含むものである。
【0007】
上記のようなステータの製造装置においては、分離治具がステータを捻り治具から離れる方向に押圧することで、セグメントコイルが捻り治具の挿入部等に噛み込まれた場合にも両部材を確実に分離させることができる。
【0008】
本開示の第2の態様に係るステータの製造装置は、上記本開示の第1の態様に係るステータの製造装置において、前記分離治具は、前記載置台と前記捻り治具との間に配設された分離治具本体と、前記分離治具本体を上下方向に移動させる治具移動機構と、を含み、前記治具移動機構が前記昇降機構の下降に合わせて前記分離治具本体を下降させることにより、前記分離治具本体が前記ステータコアを押圧して前記セグメントコイルと前記捻り治具とを分離させる。
【0009】
上記のようなステータの製造装置においては、分離治具が単独で下降可能なため、簡単にステータを捻り治具から離れる方向に押圧することができる。また、分離治具がステータコアを押圧する力を比較的簡単に可変することができる。
【0010】
本開示の第3の態様に係るステータの製造装置は、上記本開示の第1の態様に係るステータの製造装置において、前記分離治具は、前記載置台と前記捻り治具との間に配設された分離治具本体と、前記分離治具本体と前記載置台とを連結する連結機構と、を含み、前記昇降機構によって前記載置台が下降する前に前記連結機構が前記載置台に連結させ、前記昇降機構の下降に合わせて前記分離治具本体を下降させることにより、前記分離治具本体が前記ステータコアを押圧して前記セグメントコイルと前記捻り治具とを分離させる。
【0011】
上記のようなステータの製造装置においては、分離治具が載置台と連動して動作されるため、載置台の下降に合わせてステータを捻り治具から離れる方向に押圧することができる。
【0012】
本開示の第4の態様に係るステータの製造装置は、上記本開示の第1乃至第3のいずれかの態様に係るステータの製造装置において、前記分離治具は、円環状のベース部材と、前記ベース部材に設けられ前記ステータコアの上部に露出したセグメントコイル間に挿入されて前記スロットに挿入された絶縁紙を支持するカフスサポータと、前記カフスサポータを前記ベース部材の軸心に近づく又は遠ざかる方向に進退させる進退機構と、を含むカフスサポータユニットである。
【0013】
上記のようなステータの製造装置においては、絶縁紙を保護するためのカフスサポータユニットを分離治具として利用することができるため、装置の部品点数を削減することができる。
【0014】
本開示の第5の態様に係るステータの製造装置は、上記本開示の第4の態様に係るステータの製造装置において、前記昇降機構により前記載置台上に載置された前記ステータが上昇した際、前記ベース部材の一部が前記ステータコアの上面に当接する。
【0015】
上記のようなステータの製造装置においては、カフスサポータに対する特に上下方向の応力を抑制することができる。
【0016】
本開示の第6の態様に係るステータの製造装置は、上記本開示の第1乃至第5のいずれかの態様に係るステータの製造装置において、前記捻り機構と前記分離治具との間に配設され、複数の前記捻り治具をそれぞれ支持可能な複数の支持部を含む、回転式の治具ホルダをさらに含む。
【0017】
上記のようなステータの製造装置においては、支持部に種々の捻り治具を支持しておくことで、治具ホルダを回転させることで簡単に捻り機構に連結される捻り治具を変更することができるようになる。
【0018】
本開示の第7の態様に係るステータの製造方法は、複数個のスロットを備えるステータコアと、前記スロットにそれぞれ挿入される複数本のセグメントコイルと、を含むステータを載置台に載置する工程と、前記載置台の上方に、前記載置台に載置された前記ステータの前記セグメントコイルの前記ステータコアの上部に露出した先端部が挿入可能な挿入部を備える捻り治具を配設する工程と、前記載置台を上昇させて前記セグメントコイルの前記先端部の少なくとも一部を前記挿入部に挿入する工程と、前記捻り治具を回転させて、前記セグメントコイルの前記先端部を捻る工程と、前記載置台を下降させると共に前記載置台と前記捻り治具との間に配設された分離治具を動作させ、前記ステータを前記捻り治具から離れる方向に押圧して、前記セグメントコイルと前記捻り治具とを分離させる工程と、を含むものである。
【0019】
上記のようなステータの製造方法においては、分離治具を用いてステータを捻り治具から離れる方向に押圧することで、セグメントコイルが捻り治具の挿入部に噛み込まれた場合にも両部材を確実に分離させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示のステータの製造装置及びステータの製造方法によれば、セグメントコイルと捻り治具とを確実に分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】捻り加工前のステータの一例を示した平面図である。
【
図3】本開示の一実施の形態に係るステータの製造装置の一例を示した概略説明図である。
【
図4】
図3に示すステータの製造装置に採用される捻り治具の一例を、その一部を断面で示した要部拡大図である。
【
図5】
図3に示すステータの製造装置に採用される治具ホルダの一例を示した平面図である。
【
図6A】
図3に示すステータの製造装置に採用されるカフスサポータユニットの一例を示した平面図である。
【
図7】カフスサポータとセグメントコイルとの関係を示した図であって、
図2のA-A線に対応する箇所で切断した要部断面図である。
【
図8】本開示の一実施の形態に係るステータの製造装置の変形例を示した概略説明図である。
【
図9】本開示の一実施の形態に係るステータの製造方法の一例を示したフローチャートである。
【
図10A】
図3に示すステータの製造装置の作動状態を示した説明図である。
【
図10B】
図3に示すステータの製造装置の作動状態を示した説明図である。
【
図10C】
図3に示すステータの製造装置の作動状態を示した説明図である。
【
図11A】
図3に示すステータの製造装置の作動状態を示した説明図である。
【
図11B】
図3に示すステータの製造装置の作動状態を示した説明図である。
【
図11C】
図3に示すステータの製造装置の作動状態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この出願は、日本国で2022年8月4日に出願された特願2022-125057号に基づいており、その内容は本出願の内容としてその一部を形成する。
また、本開示は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本願のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実例は、本開示の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本開示の精神と範囲内で、当業者にとって明らかであるからである。
出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、開示された改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0023】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。また、図中の互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。さらに、単一の図中の同一の部材については、その一部にのみ符号を付し、他の同一の部材への符号の付与を省略することがある。
【0024】
先ず、本実施の形態に係るステータの製造装置及び製造方法を説明する前に、本実施の形態にて捻り加工がなされるステータ1について簡単に説明を行う。
【0025】
図1は、捻り加工前のステータの一例を示した平面図である。また、
図2は、
図1に示すステータの概略正面図である。なお、
図2では、構成の理解を容易にするために、いくつかのセグメントコイル4の先端部分の図示を省略している。本実施の形態に係るステータの製造装置及び製造方法において用いられるステータ1は、
図1及び
図2に示すように、複数個のスロット3を含むステータコア2と、スロット3に挿入されるセグメントコイル4とを含むものである。なお、ここではステータ1としてインナーロータ型のモータのステータを例示しているが、これに代えて、アウターロータ型のモータのステータとすることもできる。
【0026】
ステータコア2は、環状、より具体的にはその中央部に中央穴2Aが形成された略円筒状の導体で構成することができる。このステータコア2は、円環状のヨークと、ヨークの内周面から突出したティースとを含む、磁性体、具体的には電磁鋼板で構成することができる。ステータコア2としては、例えば0.2~0.5mm程度の比較的薄い板状体からなる円盤状のコア片が、その中心軸CAに沿って複数枚(例えば数十~数百枚程度)積層されることで構成されたものとすることができる。また、このステータコア2としては、周方向に複数に分割されたいわゆる分割コアを組み合わせてなるものであってもよい。なお、以下では中心軸CAに沿った方向を単に「軸方向」ということがある。また、
図2におけるステータコア2の上側の端面を上面2Bと、同じく下側の端面を下面2Cとそれぞれ呼ぶものとする。
【0027】
スロット3は、ステータコア2の内周面に、その周方向に所定の間隔を空けて軸方向に延びるように形成された溝で構成することができる。このスロット3内には、複数本のセグメントコイル4が挿入され、且つ挿入された複数本のセグメントコイル4とスロット3の内壁とを絶縁するための絶縁紙5が配設されていてよい。なお、この絶縁紙5に代えて、インシュレータやワニス等の他の絶縁部材が採用されてもよい。また、スロット3は軸方向に平行に延在している必要はなく、スキューが形成されていてもよい。
【0028】
セグメントコイル4は、間隔を空けて略平行に延びる一対の脚部4A、4Aと、一対の脚部4A、4Aの隣接する一方の端部同士を連結する湾曲部4Bと、を有する略U字状の金属線材で構成することができる。このセグメントコイル4は、一対の脚部4A、4Aの湾曲部4Bに連結していない側の端部に、他のセグメントコイル4の端部等に電気的に接続される接続部4Cを有していてよい。この接続部4Cは溶接等によって他の接続部4Cと接合されるものであってよい。また、セグメントコイル4に用いられる線材には平角線が採用されたものを例示しているが、丸線等であってもよい。
【0029】
上述の構成を備えるセグメントコイル4は、ヘアピンと呼ばれることがある。また、本開示におけるセグメントコイルは、それらを複数個電気的に接続することでステータコア2に巻装されるコイルを形成するものであれば、上述の構成に何ら限定されない。さらに、セグメントコイル4の表面はエナメル等の絶縁被膜で覆われていてもよい。また、本実施の形態においては、各スロット3内に6本の脚部4Aが軸方向に交差する方向に沿って一列に挿入されたステータ1が例示的に示されている。
【0030】
セグメントコイル4は、その一対の脚部4A、4Aの大部分がスロット3内に収容されるように、スロット3内へ下面2C側の開口から軸方向に沿って挿入され得る。
図1及び
図2に示したステータ1においては、一のスロットに6本の脚部4Aが挿入されるものが例示されている。このように挿入されたセグメントコイル4の接続部4Cと接続部4Cに隣接する脚部4Aの一部は、ステータコア2の上面2B側の開口からスロット3外に露出する。本実施の形態に係るステータの製造装置10及びステータの製造方法では、セグメントコイル4の上述したステータコア2の上面2B側の開口からスロット3外に露出した部分(以下、この部分を「先端部4D」という)を捻り加工する。なお、このセグメントコイル4の先端部4Dは、捻り加工を容易に実施するために、共通のスロット3内に挿入されているセグメントコイル4の先端部4D同士の間隔を広げる処理が事前に実施されていると好ましい。
【0031】
<ステータの製造装置>
次に、上述したステータ1のセグメントコイル4の先端部4Dを捻り加工することが可能な、本実施の形態に係るステータの製造装置10について説明を行う。なお、以下の説明においては、加工を行う対象を上述したステータ1とした場合を例示的するが、加工対象となるステータ1の構造は上述のものに限定されない。
【0032】
図3は、本開示の一実施の形態に係るステータの製造装置の一例を示した概略説明図である。本実施の形態に係るステータの製造装置10は、
図3に示すように、載置台20と、昇降機構30と、捻り治具40と、捻り機構50と、分離治具の一例としてのカフスサポータユニット60とを含む。これらの構成要素は筐体11内に配設されていてよい。なお、以下の説明においては、
図3に示したX方向を左右方向とし、同じくY方向を前後方向、Z方向を上下方向と仮に規定して説明を行うものとする。また、
図3では、一部の構造を簡略化して示している。
【0033】
加えて、本実施の形態に係るステータの製造装置10は、上述の構成要素を含む装置全体制御するための制御装置12をさらに含んでいてよい。この制御装置12は、後述するステータの製造装置10の各種の構成要素の動作を制御するための装置であってよい。制御装置12には、シーケンサやコンピュータ等を採用することができる。制御装置12を構成するコンピュータとしては、少なくともプロセッサと、揮発性及び不揮発性のメモリと、通信インタフェースとを含むものを採用することができる。
【0034】
載置台20は、ステータ1が載置可能な台である。この載置台20は、具体的には、平板状の載置台本体21と、載置台本体21上に載置されたステータ1の位置決めを行う位置決め部材22と、載置台本体21の下面を支持し載置台本体21を一方向(例えば前後方向)に搬送可能とする搬送ローラ23と、を含んでいてよい。載置台本体21は、ステータ1を製造する際に各装置への移動に用いられるいわゆるパレットであってよい。この載置台本体21は搬送ローラ23によって任意の位置に搬送できる。よって、ステータ1の交換等が容易となる。また、ステータ1は、
図3に示すように、セグメントコイル4の先端部4Dが上方に位置するように載置台本体21上に載置される。
【0035】
上述した構成のうち、位置決め部材22は、ステータ1が載置台本体21上に載置されたときに、ステータ1の水平方向における位置決めを行う部材であってよい。具体的には、この位置決め部材22は、載置台本体21上に載置されたステータ1の、セグメントコイル4の湾曲部4B及びステータコア2の下面2C付近の少なくとも一部を包囲するように配設されているとよい。
【0036】
ここで、載置台20に載置されるステータ1は、上述した通り、水平方向に位置決めされているものの、載置台20に固定されないことは特に留意すべき事項である。ステータ1を載置台20上に固定せず、上述の通り単純に載置する構成を採用すれば、ステータ1を載置台20に固定する場合に比してステータ1の交換作業等が容易となり、製造効率等を向上させることができる。
【0037】
昇降機構30は、載置台20を上昇あるいは下降させるための機構である。この昇降機構30は、具体的には、上下方向に動作する昇降用アクチュエータ31と、昇降用アクチュエータ31の上側端部に連結され、昇降用アクチュエータ31の動作時に載置台本体21の下面に接触する押し台32と、押し台32の上下方向の移動をガイドするガイドロッド33と、を含んでいてよい。
【0038】
昇降用アクチュエータ31は、載置台20をステータ1と共に上下に移動させることが可能な作動機構であってよい。この昇降用アクチュエータ31には種々のアクチュエータを採用することができる。具体的には、サーボモータにより駆動されるボールねじ機構や、リニアモータ、単軸ロボット、あるいはポンプに接続された油圧シリンダ等を採用できる。
【0039】
押し台32は、昇降用アクチュエータ31が上昇することで載置台本体21の下面に接触し、ステータ1を捻り加工を行う位置へ移動させるものであってよい。また、筐体11に支持されたガイドロッド33の端部が、この押し台32の適所、例えば各隅部に接続されていることにより、押し台32は水平方向に傾斜することなく上下に移動できる。
【0040】
捻り治具40は、載置台20の上方に配設され、セグメントコイル4の先端部4Dを捻り加工するための治具である。本実施の形態においては、各スロット3内に6本の脚部4Aが挿入されたステータ1に対して上述した捻り加工を実施するために、3つの捻り治具40-1、40-2、40-3を選択的に用いるものを例示する。すなわち、3つの捻り治具40-1、40-2、40-3を用いて、各スロット3内の6本のセグメントコイル4(脚部4A)の先端部4Dを2本ずつ、時計方向及び反時計方向に捻り加工するものを例示する。なお、一のステータに対して使用する捻り治具の数やその形状は、適宜変更することができる。
【0041】
3つの捻り治具40-1、40-2、40-3は、治具ホルダ70によって移動可能に支持されていてよい。すなわち、治具ホルダ70に支持された捻り治具40-1、40-2、40-3を選択的に捻り機構50に接続させることで、複数の先端部4Dを順に捻り加工することができる。なお、治具ホルダ70による支持構造や使用する捻り治具40-1、40-2、40-3の変更方法等については後述する。
【0042】
図4は、
図3に示すステータの製造装置に採用される捻り治具の一例を、その一部を断面で示した要部拡大図である。なお、上述した捻り治具40-1、40-2、40-3はその寸法等を除き、大部分が共通の構成を備えているものであるため、以下の説明はこれらの一例としての捻り治具40について、説明を行うものとする。
【0043】
捻り治具40は、
図3及び
図4に示すように、円筒状あるいは円柱状の部材で構成することができる。この捻り治具40は、上述した通り、各スロット3内に挿入された6本の脚部4Aのうち、2本のセグメントコイル4の先端部4Dを捻り加工することができる。捻り治具40は、その下部のステータ1に対向し得る位置にセグメントコイル4の先端部4Dが挿入可能な溝状あるいは切欠き状の挿入部43、44が設けられた略円筒状、すなわちその形状が略王冠状の外側クラウン41及び内側クラウン42を含んでいてよい。挿入部43、44は、捻り加工を施す先端部4Dの数及び位置に合わせて形成されていてよく、その肉厚は、捻り加工を施す先端部4Dの、軸方向に対して交差する方向に沿った肉厚よりも僅かに厚くなるように調整されていてよい。なお、
図4では捻り治具40として2つのクラウンを含むものを例示したが、一の捻り治具が有するクラウンの数は適宜変更され得る。
【0044】
外側クラウン41と内側クラウン42とは、同軸状に配設されていてよく、且つこの共通する軸心に沿って別々に回転させることが可能であってよい。詳しくは、外側クラウン41と内側クラウン42の捻り加工時には、両者は逆方向に回転されるものであってよい。このようにして捻り加工が施された後のセグメントコイル4の先端部4Dは、隣接する内側又は外側の先端部4Dの捻り方向(例えば時計方向)とは反対の方向(例えば反時計方向)に捻り加工が施されるように調整されることとなる。
【0045】
外側クラウン41の外側部分及び内側クラウン42の内側部分には、ガイドリング45、46がそれぞれ設けられていると好ましい。このガイドリング45、46により、先端部4Dの捻り加工時に挿入部43、44の側面と先端部4Dとの係合状態が不用意に解除されたり、捻り加工時に隣接する捻り加工前あるいは捻り加工後の他の先端部4Dに接触したりすることを抑制することができる。
【0046】
図5は、
図3に示すステータの製造装置に採用される治具ホルダの一例を示した平面図である。治具ホルダ70は、その上下方向位置が捻り機構50とカフスサポータユニット60との間であって、複数の捻り治具40-1、40-2、40-3を支持することが可能な部材で構成することができる。治具ホルダ70は、水平方向に沿って延在する略円盤状のホルダ本体71と、種々の形状の捻り治具(例えば捻り治具40-1、40-2、40-3)を支持可能な支持部の一例としての支持爪72と、を主に含んでいてよい。
【0047】
ホルダ本体71は、上下方向に延びる回転中心71Aに沿って回転可能とすることができる。そして、このホルダ本体71の周囲に所定の間隔を空けて複数個、例えば5個配設された支持爪72は、それぞれが一の捻り治具40を支持可能なものであってよい。ホルダ本体71の回転に伴って回転移動される支持爪72は、支持した捻り治具40が載置台20に載置されたステータ1に対向する使用位置P1と、作業員等によって任意の捻り治具40が設置される設置位置P2との間を移動可能とすることができる。
【0048】
上述した治具ホルダ70は、支持爪72に、捻り加工を施すステータ1のセグメントコイル4の本数や配置等を考慮した1乃至複数の捻り治具40を設置位置P2にて予め設置し、当該捻り治具40を順次使用位置P1に移動させるように動作させるとよい。これにより、治具ホルダ70を回転させることで所望の捻り治具40を捻り機構50と連結及び連結解除することができ、作業員は設置位置P2の支持爪72に任意の捻り治具を設置するだけでよくなる。換言すれば、捻り機構50に連結する捻り治具の交換作業の大部分を自動化することができる。なお、上述の例では治具ホルダ70として回転中心71Aを有する回転式のものを例示したが、本実施の形態はこれに限定されない。例えば、上述のものに代えて支持爪が水平に移動する水平搬送式の治具ホルダを採用することもできる。
【0049】
また、
図5においては、治具ホルダ70が備える5個の支持爪72のうち3個の支持爪72に捻り治具40-1、40-2、40-3をそれぞれ支持したものを例示したが、どの支持爪72にどのような形状の捻り治具40を支持するかは適宜変更できる。したがって、例えば上述したステータ1のセグメントコイル4の全てを捻り加工可能な、6個のクラウンを含む一の捻り治具を支持爪72の一つに支持させるようにしてもよい。
【0050】
捻り機構50は、捻り治具40、具体的には治具ホルダ70により使用位置P1に配設された一の捻り治具40に連結してこれを回転させるものである。この捻り機構50は、使用位置P1に配設された捻り治具40を把持する把持アーム51と、捻り治具40に含まれる1乃至複数のクラウンを回転動作させる回転機構52と、を主に含むものであってよい。
【0051】
把持アーム51は、捻り治具40の任意の位置、例えば捻り治具40の外周囲に形成されたフランジ部47を把持するものであってよい。また、回転機構52は、モータ等で形成することができ、捻り治具40の外側クラウン41及び内側クラウン42のそれぞれに回転力を伝達可能な任意の接続構造を有していてよい。なお、本実施の形態においては、捻り機構50は上下方向には移動しないものを例示しているが、例えば捻り機構50を回転させる際などに捻り機構50を上下に移動させることが可能な構造を更に採用してもよい。
【0052】
図6は、
図3に示すステータの製造装置に採用されるカフスサポータユニットの一例を示したものであって、
図6(A)は平面図、
図6(B)は
図6(A)のB-B線で切断した拡大断面図である。なお、
図6(A)はカフスサポータ62が突出した突出状態を示し、
図6(B)はカフスサポータ62が収納された収納状態を実線で、突出状態を点線でそれぞれ示している。また、
図6(B)では、カフスサポータ62の動作が理解しやすいようにその一部を端面図として示している。
【0053】
分離治具の一例としてのカフスサポータユニット60は、
図3及び
図6に示すように、載置台20と捻り治具40との間に配設される。このカフスサポータユニット60は、分離治具本体の一例としての略円環状のベース部材61と、このベース部材61に設けられたカフスサポータ62と、カフスサポータ62をベース部材61の軸心に近づく又は遠ざかる方向に進退させる進退機構63と、を含むものであってよい。
【0054】
ベース部材61は、カフスサポータ62が設置されたカフスサポータ支持部64と、カフスサポータ支持部64の下方に所定の間隔を空けて配設されたベース本体65とを含んでいてよい。カフスサポータ支持部64は、カフスサポータ62をそれぞれ支持するように複数個がベース本体65上に略円形に配列されたものであってよい。また、ベース本体65には、その略中央部にステータ1のセグメントコイル4が通過可能な貫通穴65Aが形成されていてよい。さらに、ベース本体65には、ベース部材61の上下方向の移動をガイドするガイドシリンダ66の一端が連結されていてよい。
【0055】
各カフスサポータ支持部64の内周面側の端部には、載置台20に載置されたステータ1が上昇した際にステータコア2の上面2Aに当接する当接突起64Aが設けられているとよい。特に、当接突起64Aのステータコア2との当接面は、カフスサポータ62の下面よりも距離H1だけ下に位置していると好ましい。これにより、カフスサポータ62に捻り加工時やステータ1の動作時に発生する応力、特に上下方向の応力が作用しにくくなり、カフスサポータ62の損傷を抑制することができる。
【0056】
カフスサポータ62は、カフスサポータ支持部64に設けられ、ステータコア2の上面Bに露出したスロット3内に挿入される絶縁紙5の端部(この部分をカフス部と呼ぶことがある)を支持することが可能な部材であってよい。このカフスサポータ62は、ステータコア2の上部、より詳しくはステータコア2の上面2Bからスロット3外に露出したセグメントコイル4間に挿入されるものであってよい。これに関連して、ベース部材61には、セグメントコイル4間の隙間の数、換言すれば、ステータコア2のティースの数と同数のカフスサポータ62が、ティースの延在方向に沿って、貫通穴65Aが設けられた方向に向かって突出可能な状態で略円形に配設されているとよい。このカフスサポータ62に絶縁紙5が支持されることで、捻り加工の際等に絶縁紙5が破損することが抑制できる。なお、このカフスサポータ62は、後述する捻り加工を行う際の起点としても機能し得る。
【0057】
進退機構63は、カフスサポータ62をベース部材61の軸心に近づく又は遠ざかる方向に進退させるための機構であってよい。この進退機構63は、主に一端部がカフスサポータ62の基端側に回転可能に固定された揺動カム67と、揺動カム67を回転可能に支持する支軸68と、を含むものとすることができる。この揺動カム67を動作させることにより、カフスサポータ62はその先端がセグメントコイル4間に挿入される突出状態と、カフスサポータ支持部64側に収納される収納状態との間を進退させることができる。なお、上述した進退機構63の構造は一例であって、プランジャやモータ等の他の駆動機構を採用することもできる。
【0058】
図7は、カフスサポータとセグメントコイルとの関係を示した図であって、
図2のA-A線に対応する箇所で切断した要部断面図である。載置台20に載置されたステータ1が上昇してカフスサポータユニット60が配設された位置に到達し、ステータコア2の上面2Aとベース部材61の当接突起64Aとが当接すると、カフスサポータ62の突出動作が実施される。カフスサポータ62は、その先端がセグメントコイル4間の隙間に挿入されることで隣接するセグメントコイル4の周方向の一面を支持する。
【0059】
上述の構成を備えるカフスサポータユニット60は、ステータ1の上昇によってステータコア2の上面2Bとベース部材61の当接突起64Aとが当接し、それ以降はステータ1の動作に追従して上昇あるいは下降し得る。そのため、カフスサポータユニット60が上下方向に移動させる移動機構を別途有していなくとも、ステータ1の製造は可能である。しかしながら、本実施の形態に係るカフスサポータユニット60は、分離治具としての機能を実現するための具体的な一手段として、上述した構成に加えて、ベース部材61を上下方向(あるいは下方向のみ)に移動させることが可能な治具移動機構80を別途採用している。この治具移動機構80は、カフスサポータユニット60を単独で上下方向に移動させることができるものであればどのような構造のものであってもよい。本実施の形態においては、
図3に示すように、ガイドシリンダ66に接続されてガイドシリンダ66のピストンロッドの動作を制御可能な機構を採用した場合を例示している。
【0060】
治具移動機構80は、上述したとおり、カフスサポータユニット60が分離治具としての機能を実現するための構成の一例である。したがって、治具移動機構80は、捻り治具40等の作動によってセグメントコイル4が捻り加工されたステータ1を、捻り治具40から離れる方向、具体的には下方向に押圧するために機能し得る。具体的には、捻り加工後に昇降機構30が下降するのに合わせて治具移動機構80を動作させ、ベース部材61を下降させることにより、ベース部材61の当接突起64Aでステータコア2の上面2Bを押圧する。
【0061】
このように、本実施の形態に係るステータの製造装置10においては、分離治具として機能するカフスサポータユニット60を採用したことにより、捻り加工が完了した後のセグメントコイル4と捻り治具40とを分離させることができるようになる。これにより、捻り加工の際にセグメントコイル4の一部が捻り治具40の挿入部あるいは挿入部に隣接する隙間等に噛み込まれたとしても、載置台20を下降させるタイミングで、セグメントコイル4と捻り治具40とを確実に分離させることができる。
【0062】
また、上述した治具移動機構80を採用したことで、カフスサポータユニット60がステータ1を捻り治具40から離れる方向に押圧する力を、治具移動機構80の出力を調整することで簡単に変更することができる。また、治具移動機構80の出力を監視することで、セグメントコイル4の捻り治具40の隙間への噛み込みの発生の有無を推測することもできる。
【0063】
上述した本実施の形態に係るステータの製造装置10においては、治具移動機構80を用いてベース部材61を下降させることで、セグメントコイル4と捻り治具40とを分離させたものを例示した。しかし、当該分離の方法は治具移動機構80を用いたものに限定されない。そこで、以下には上述したステータの製造装置10の変形例としてのステータの製造装置10Aについて説明する。
【0064】
<変形例>
図8は、本開示の一実施の形態に係るステータの製造装置の変形例を示した概略説明図である。本変形例に係るステータの製造装置10Aは、
図8に示すように、分離治具の一例としてのカフスサポータユニット60Aの一部構成以外は、上述したステータの製造装置10と同様である。そこで、以下には本変形例に係るステータの製造装置10Aのうち、ステータの製造装置10と異なる点のみ説明を行い、ステータの製造装置10と同様の構成については上記ステータの製造装置10についての記載を流用するものとしてその説明を省略する。
【0065】
ステータの製造装置10Aのカフスサポータユニット60Aは、ベース部材61と、カフスサポータ62と、進退機構63とを有する点は上述したカフスサポータユニット60と同様である。他方、このカフスサポータユニット60Aには、治具移動機構80が接続されることに代えて、ベース部材61の下面に載置台20に向かって延びる連結機構90が形成されている。これに関連して、カフスサポータユニット60Aにおけるガイドシリンダ66は、その移動を別途制御されるものではなく、単にベース部材61の上下方向の移動をガイドするものとすることができる。
【0066】
連結機構90は、ベース部材61の下面の複数箇所から載置台20に向かって延びるアーム91と、各アーム91の先端に設けられ載置台20に連結可能な連結フック92とを含むものとすることができる。アーム91の長さは、ステータコア2の軸方向長さ等を考慮して調整されると好ましい。また、連結フック92は、載置台20の一部に任意のタイミングで連結及び連結解除できるものであれば、その具体的な構造は特に限定されず、フック以外の連結構造であってもよい。
【0067】
上述の構成を含む連結機構90は、ステータ1が載置された載置台20が昇降機構30によって上方に移動され、ステータコア2の上面2Bがカフスサポータユニット60Aの当接突起64Aに当接した際、載置台20に連結できる。具体的には、連結フック92を動作させることにより載置台20の縁部に連結フック92を係止させて載置台20とカフスサポータユニット60Aを連結するものであってよい。
【0068】
連結機構90によって載置台20とカフスサポータユニット60Aとが連結されると、カフスサポータユニット60Aは、載置台20の移動に追従して上下方向に移動することとなる。したがって、捻り治具40による捻り加工の後、昇降機構30の下降動作を開始した際には、カフスサポータユニット60Aは、載置台20と共に下降する。これによりカフスサポータユニット60Aのベース部材61がステータコア2の上面2Bを押圧する。したがって、本変形例に係るステータの製造装置10Aにおいても、セグメントコイル4と捻り治具40とを確実に分離させることができる。
【0069】
また、上述した連結機構90を採用した場合には、分離治具としてのカフスサポータユニット60の下降タイミングを別途制御する必要がないため、簡単な構成で分離治具を実現することができる。
【0070】
上述のステータの製造装置10、10Aにおいては、ステータ1の捻り加工の後に分離治具(具体的には、カフスサポータユニット60、60A)が載置台20と共に下降することで、セグメントコイル4と捻り治具40とを確実に分離することができる。他方、本開示の分離治具としては、捻り加工後にステータ1を押圧可能なものであれば、上述のものに限定されない。具体的には、分離治具として、例えばカフスサポータユニット60と捻り治具40の間や、カフスサポータユニット60とステータコア2との間に、互いに離間する方向に押圧するよう機能するカム部材を設け、当該カム部材を載置台20が下降するタイミングに合わせて動作させてもよい。また、本実施の形態及び変形例では、分離治具をいずれもカフスサポータユニット60、60Aで構成したものを例示したが、分離治具はカフスサポータユニット60とは別の部材として設けられていてもよい。
【0071】
<ステータの製造方法>
次に、本開示の一実施の形態に係るステータの製造方法について説明する。本実施の形態においては、当該ステータの製造方法を実行する装置として、上述したステータの製造装置10を採用し、上述したステータ1を製造する方法を例示的に説明する。しかしながら、本開示の製造方法は上述の製造装置10による実施には限定されず、また上述したステータ1とは異なる構造のステータも製造可能であることは、明確に理解されるべきである。なお、以下に示す効果等の説明は、本実施の形態に係るステータの製造装置10の効果の説明を兼ねている。
【0072】
また、以下に説明するステータの製造方法は、例えばステータの製造装置10に含まれる制御装置12を構成するコンピュータからの所定の指示に基づいて、ステータの製造装置10の各種構成要素が動作することにより実施することができる。したがって、本実施の形態に係るステータの製造方法は、上述した制御装置12を構成するコンピュータのプロセッサに所定の動作を実行させるための指令を含むソフトウェア等のプログラムの形態で、このプログラムが格納された非一時的な記録媒体の形態で、あるいはネットワーク等を介して提供されるアプリケーションプログラムの形態で、提供され得るものである。
【0073】
図9は、本開示の一実施の形態に係るステータの製造方法の一例を示したフローチャートである。また、
図10及び
図11は、
図3に示すステータの製造装置の作動状態を示した説明図である。なお、
図10及び
図11においては、その作動状態が理解しやすいように、筐体11やガイドロッド33といった、主要な作動部品以外の構成要素の図示を省略している。
【0074】
本実施の形態に係るステータの製造方法は、
図9に示すように、先ず、載置台20上に捻り加工を実施するステータ1を載置する(工程S1)。載置台20上に載置されたステータ1は、その中心軸CAが捻り機構50の軸心及びカフスサポータユニット60の中心と同一軸線上に位置するように、位置決め部材22によって位置決めされる(
図10A参照)。
【0075】
載置台20上にステータ1が載置されると、当該ステータ1を捻り加工するための一の捻り治具40が選定され、捻り機構50に連結される(工程S2。
図10B参照)。選定された捻り治具40は、治具ホルダ70(なお、
図10Bでは図示が省略されている)により使用位置P1へ搬送されることで、捻り機構50と連結可能な位置へ配設される。なお、工程S1と工程S2の順序は上述のものに限定されない。
【0076】
捻り機構50に捻り治具40が連結されると、次いで昇降機構30を動作させ、
図10Bの矢印A1に示すように、載置台20の上昇を開始し(工程S3)、載置台20上のステータ1のステータコア2の上面2Bと、カフスサポータユニット60のベース部材61の当接突起64Aとを当接させる(工程S4。
図10C参照)。
【0077】
ステータコア2の上面2Bとベース部材61の当接突起64Aとが当接した状態で、進退機構63を動作させることにより、カフスサポータ62を収納状態から突出状態に変位させる(工程S5)。突出したカフスサポータ62は、セグメントコイル4の先端部4Dの周囲を絶縁紙5と共に支持するため、このカフスサポータ62によって支持された部分が、後述する捻り加工時の起点(あるいは支点)となり得る。
【0078】
ステータコア2の上面2Bとベース部材61の当接突起64Aとが当接すると、治具移動機構80が作動し、カフスサポータユニット60は、載置台20の移動に合わせて移動、詳しくは
図10Cの矢印A2に示すように、上昇するよう制御される。昇降機構30及び治具移動機構80の上昇に伴ってステータ1がさらに上昇すると、セグメントコイ
ル4の先端部4Dの少なくともいくつかが、捻り治具40の挿入部に挿入される(工程S6)。捻り治具40の挿入部内にセグメントコイル4の先端部4Dが挿入されると、昇降機構30及び治具移動機構80は一時的に停止する。
【0079】
工程S2において選定された捻り治具40は、例えばステータ1の各スロット3内に挿入された6本のセグメントコイル4の全てを捻り加工することが可能な治具であってよい。この場合、当該捻り治具40は、同心円状にそれぞれ回転可能な6つのクラウンを有していてよく、各クラウンにセグメントコイル4の先端部4Dの一部を挿入可能な挿入部が形成されているとよい。ここで、セグメントコイル4の先端部4Dは、当該先端部4Dのうち接続部4Cとなる部分が挿入部内に挿入されればよい。これに合わせて、捻り治具40の挿入部の長さ、あるいは載置台20の上昇位置が調整されているとよい。
【0080】
捻り治具40の挿入部へのセグメントコイル4の先端部4Dの挿入が完了すると、捻り機構50が回転することにより、捻り治具40の各クラウンが時計方向及び反時計方向に回転させる(工程S7。
図11A参照)。各クラウンの挿入部にその端部が挿入されたセグメントコイルの先端部4Dは、各クラウンの回転によって捻り加工が施される。このとき、
図11Aに矢印A3、A4で示したように、昇降機構30及び治具移動機構80を、各クラウンの捻り動作に合わせてさらに上昇させると、セグメントコイル4に伸びや破断等が生じることを抑えることができ好ましい。
【0081】
捻り治具40の各クラウンの回転動作が完了すると、挿入部内からセグメントコイル4の先端部4Dを離脱させることで、両者を分離する。このとき、本実施の形態に係るステータの製造方法においては、捻り治具40とセグメントコイル4とを確実に分離させるために、
図11Bの矢印A5、A6で示したように、載置台20とカフスサポータユニット60の両方を下降させる(工程S8)。載置台20の下降は昇降機構30によって実現でき、カフスサポータユニット60の下降は治具移動機構80によって実現できる。
【0082】
上述のように、載置台20の下降に合わせてカフスサポータユニット60が下降すると、カフスサポータユニット60のベース部材61が下降するため、ベース部材61の当接突起64Aが、ステータコア2の上面2Bを下方向に押圧する。これにより、ステータ1の自重とカフスサポータユニット60からの押圧力とがセグメントコイル4と捻り治具40とを分離するように作用する。そのため、例えばセグメントコイル4の一部が捻り治具40の隙間に噛みこんでいたとしても、セグメントコイル4と捻り治具40との分離を確実に実施することができる。
【0083】
載置台20及びカフスサポータユニット60Aの下降によりセグメントコイル4と捻り治具40が分離されると、捻り加工が完了したか否かが判断される(工程S9)。例えばステータ1に捻り加工が完了していないセグメントコイル4が残っている場合(工程S9でNo)には、捻り機構50に連結される捻り治具40を、捻り加工が完了していないセグメントコイル4の捻り加工が可能なものに交換した後(工程S10)、工程S2に戻る。捻り加工が完了している場合(工程S10でYes)には、カフスサポータ62を収納状態としてカフスサポータユニット60とステータ1とを分離し、載置台20を搬送ローラ23上まで下降させた後、ステータ1を次工程(例えば接続部4Cの溶接工程)へ搬送する。
【0084】
上述したステータの製造方法では、ステータの製造装置10を用いて当該方法を実施した例を説明したが、他の装置、例えばステータの製造装置10Aを用いて当該方法を実施することも可能である。その場合は、治具移動機構80によるカフスサポータユニット60の下降動作に代えて、連結機構90を用いてカフスサポータユニット60を載置台20へ固定する工程を(例えば工程S4の後に)採用するとよい。
【0085】
以上説明した通り、本実施の形態に係るステータの製造装置及び製造方法においては、捻り加工が実施された後のステータを捻り治具40から離れる方向に押圧する分離治具を採用したことにより、セグメントコイル4と捻り治具40とを確実に分離させることができる。また、分離治具を採用したことでステータ1を載置台20に固定することなく、一連の捻り加工を実施できるため、製造歩留まりの高い製造装置及び製造方法を提供することができる。
【0086】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。また、本開示において、各構成要素は、矛盾が生じない限りは1つのみ存在しても2つ以上存在してもよい。
【0087】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願及び特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ限度で、ここで参照して組み込む。
【0088】
本開示の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」及び「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「~を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本開示をよりよく説明することだけを意図し、本開示の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本開示の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0089】
本明細書中では、本開示を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本開示の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本開示が実施されることを予定している。したがって本開示は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正及び均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本開示に包含される。
【要約】
本開示のステータの製造装置は、複数個のスロットを備えるステータコアと、前記スロットにそれぞれ挿入される複数本のセグメントコイルと、を備えるステータが載置される載置台と、前記載置台を上昇及び下降させる昇降機構と、前記載置台の上方に配設され、前記セグメントコイルの前記ステータコアの上部に露出した先端部が挿入可能な挿入部を備える捻り治具と、前記捻り治具を回転させる捻り機構と、前記載置台と前記捻り治具との間に配設され、前記挿入部内に前記先端部が挿入された状態で前記捻り機構が回転することにより前記セグメントコイルが捻り加工された前記ステータを、前記捻り治具から離れる方向に押圧して前記セグメントコイルと前記捻り治具とを分離させる、分離治具と、を含むものである。