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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】給電コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/03 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
H01R13/03 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022542885
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2021029825
(87)【国際公開番号】W WO2022034925
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2020136705
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514038443
【氏名又は名称】株式会社ExH
(72)【発明者】
【氏名】原川 健一
(72)【発明者】
【氏名】和田 武尚
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-210724(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属電極と、
前記第1金属電極と離隔して対向配置された第2金属電極と、
を備え、
前記第1金属電極と前記第2金属電極とのうち少なくとも一方の対向面には、使用温度で軟化又は液化した状態が維持可能な低融点金属が固定されており、
前記第1金属電極と前記第2金属電極との間に押圧力が加えられて前記第1金属電極と前記第2金属電極が接することで通電可能とし、
前記第1金属電極と前記第2金属電極間の前記押圧が解けることで、前記第1金属電極と前記第2電極が離隔されることで非導通となる、
コネクタ
【請求項2】
前記第1金属電極、前記第2金属電極の面のうち少なくとも一つの面に、溶着又ハンダ付けにより固定された、織布状金属繊維又は焼結金属不織布と、
前記織布状金属繊維又は前記焼結金属不織布に前記低融点金属を含侵させて固定した層と、
を備える請求項1に記載のコネクタ
【請求項3】
前記第1金属電極、前記第2金属電極の面のうち少なくとも一つの面に、蒸着又はメッキにより固定され、前記低融点金属に対して濡れ性を有する金属層と、
前記金属層に低融点金属を濡らした層と、
を備える請求項1に記載のコネクタ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の代表的な送電用コネクタとして、家庭用プラグ、EV車への給電プラグ(Chademo等)がある。これらのプラグには、固有の接触抵抗(R)が存在している。
このため、流す電流量(I)が大きくなるとRI2の損失が発生する。流す電流の二乗で発熱があるため、大電流用途では接点抵抗が小さいことは極めて重要になる。
この点から、従来の接点は抵抗が大きく大電流用途では発熱の問題を抱えている。
このような状態で大電流を流すと、接点の部分が発熱し、その部分が溶けて電極どうしが結合して離れなくなったり、酸化が助長されたりする。
【0003】
一方、接点を用いることの煩わしさを改善すべく、磁界結合非接触給電技術、電界結合非接触給電技術が検討されてきた(例えば特許文献1参照)。
これらの方式は、設備規模が大きくなり、送電効率が上がらず、送電コストが高くなるとともに、送電電力にも限界がある。さらに、外部に電磁波が放射され、これが送電電力の限界を決める場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-16206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明を含む従来の技術は、設備規模を大きくしなければならないためコストが高くなってしまう。また、送電できる電力の量にも限界がある。また、給電技術により多少の差はあるものの、外部に電磁波が放射されることがあり、送電できる電力の限界に影響を及ぼすことがある。また、磁界結合非接触給電技術は、銅のコイルやフェライト磁性体を用いるため、重量が大きくなるとともに発熱を伴う。さらに、近年における全固体電池の登場により、急速充電可能な給電技術の確立が求められている状況にある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、従来からある接触方式の給電技術を見直し、接触方式により大電流を流して急速充電することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る給電コネクタは、
第1金属電極と、
前記第1金属の表面に、導電性を有して配設される粘弾性を有する導電層と、
給電の際に移動されることにより前記導電層を挟んで接触し、非給電時の際に移動されることにより離隔される第2金属電極と、
を備える。
また、前記導電層と前記第2金属電極の対向する面に、それぞれ導電性と固定手段を伴って配設した低融点金属を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来からある接触方式の給電技術を見直し、接触方式により大電流を流して急速充電することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一般的な剛体電極どうしの接触界面を示す図である。
図2A】送電側の剛体電極に配置したゴム裏打ち薄板電極を受電側の剛体電極に当接した様子を示す図である。
図2B図2Aの状態から矢印方向に押圧力を加えたときの押圧状態を示す図である。
図2C図2Bの押圧状態で送電側の剛体電極から受電側の剛体電極へ大電流BIを流した状態を示す図である。
図3】押圧及び電流印加によって変化する接触抵抗の変化を示す図(グラフ)である。
図4A】第2実施形態の接触式給電コネクタ(分割型の電極構造の例)を示す断面である。
図4B図4Aを底面側からの見た斜視図である。
図5図4Aの状態から送電側の剛体電極を矢印方向に押圧し導電層を挟持した状態を示す図である。
図6A】薄板電極及び受電側の剛体電極の夫々に低融点金属を塗布した例を示す断面図である。
図6B図6Aの状態から矢印方向に押圧力を加えたときの押圧状態を示す断面図である。
図6C図6Bの押圧状態で送電側の剛体電極から受電側の剛体電極へ大電流を流した状態を示す断面図である。
図7A】金属繊維に低融点金属を含侵させて電極表面に貼り付けた様子を示す図である。
図7B図7Aの断面図である。
図7C】剛体電極と金属繊維とを同一材料で製作し、抵抗溶接で固定する様子を示す図である。
図8A】送電用と受電用夫々の剛体電極に低融点金属含浸焼結金属繊維を配置した電極構造において低融点金属含浸焼結金属繊維どうしを離隔した状態を示す図である。
図8B図8Aの離隔状態から融点金属含浸焼結金属繊維どうしを接触させた状態を示す図である。
図9】一方の電極にゴム含侵焼結金属繊維と低融点金属含侵焼結金属を積層し、他方に低融点金属含侵焼結金属繊維を積層した構造を示す図である。
図10】一方の電極31にゴム含侵焼結金属繊維51と低融点金属層62を配置し、他方の電極32に低融点金属含侵焼結金属繊維52を配置した例を示す図である。
図11A】床送電における電極構造においてゴム含侵焼結金属繊維が一方の剛体電極から離隔した状態を示す図である。
図11B】上下の剛体電極によりゴム含侵焼結金属繊維が押圧された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
まず、図1を参照して一般的な剛体電極どうしの接触界面について説明する。図1は一般的な剛体電極どうしの接触界面を示す図である。
【0011】
図1に示すように、一般的な接触式給電コネクタは、送電側の剛体電極1と受電側の剛体電極2とを対向配置し、剛体電極1に矢印BF方向の押圧力を加えて剛体電極1と剛体電極2とを当接させる、一般的な電極構造のものである。剛体電極1と剛体電極2は、夫々金属を主材とする電極である。
【0012】
このような構成の接触式給電コネクタにおいて、剛体電極1に矢印BFのように押圧力を加えて剛体電極1と受電側の剛体電極2とを接触させた場合、互いの接触面は、金属面で平坦に見えるものの、拡大してみると、夫々の表面には多数の凹凸が存在する。
このように凹凸を有する電極どうしは、剛体のため、凹凸の部分で部分接触となり、電極間に大電流を流すと発熱する。
【0013】
発熱の原因は、剛体電極1、2を接触させた接点で、見た目には広い接触面積に見えるが(見かけの接触面積は大きいが)、接触部分を拡大してみると、接触部分は、複数の接触点から成り立っているため、真実の接触面積が小さいということに起因する。
さらに、互いの電極の接触界面SKは、空気中で使用するため自然に酸化膜SMができる。さらに、通電を継続すればするほど加熱により酸化膜SMが増えて抵抗を増大させる。また凹凸の隙間に粉塵等のゴミが入ることもあり得る。
また、このような電極構造の場合、矢印BF方向の押圧力をさらに加えて押し込んだとしても、電極自体が剛体であるため、接触点PSの面積はほんのわずか増大するに止まる。
【0014】
以下、図2を参照して上述の発熱による接点の高抵抗化の問題を解決する第1実施形態の接触式給電コネクタを説明する。
図2Aは、送電側の剛体電極に配置したゴム裏打ち薄板電極を受電側の剛体電極に当接した様子を示す図である。図2Bは、図2Aの状態から矢印BF方向に押圧力を加えたときの押圧状態を示す図である。図2Cは、図2Bの押圧状態で送電側の剛体電極から受電側の剛体電極へ大電流BIを流した状態を示す図である。
図2A乃至2Cは、受電側の剛体電極2の表面及び薄板電極5の凹凸の部分を拡大して示している。なお、送電側の剛体電極1にも凹凸はあるが、説明を分かり易くするために、図2A乃至2Cでは平面で示している。
【0015】
第1実施形態の接触式給電コネクタは、図2Aに示すように、送電側の剛体電極1と、受電側の剛体電極2と、ゴム4で裏打ちされた薄板電極5を含む導電層6とを備える。
受電側の剛体電極2は、固定されている。
送電側の剛体電極1は、図2Bに示す矢印BFの方向に印加される押圧力により剛体電極2に押し付けられるように移動される。
送電側の剛体電極1は、非給電の状態では、受電側の剛体電極2と所定の間隔を隔てて対向配置されている。
【0016】
図2Aのように、送信側の剛体電極1と受電側の剛体電極2とが接触した状態では、受電側の剛体電極2にも薄板電極5にも凹凸があるため、複数の点状接触ポイントで接触している。
【0017】
送電側の剛体電極1に設けられている薄板電極5は、図2Bに示すように受電側の剛体電極2に押し付けられると、剛体電極2の表面の凹凸に合わせて変形し、接触点の接触面積が増える。
この際、低融点金属6aも柔らかいため、受電側の剛体電極2の凹凸に馴染む。矢印BF方向の押圧力を大きくしてゆくと、薄板電極5を含む導電層6がつぶれて接触点の接触面積が増大し、接触抵抗が低減してゆく。
【0018】
給電の際に、上記押圧力が印加されることで、送電側の剛体電極1と受電側の剛体電極2との間隔が狭められる。また、非給電時の際には、送電側の剛体電極1は、矢印BFの方向と逆方向に移動されることにより受電側の剛体電極2との間隔が離される。
【0019】
導電層6は、ゴムやラバー等の弾性部材と、弾性体を囲うように薄い柔軟な金属素材で成形された薄板電極(図4Aの断面コの字状に屈曲させた薄板電極5)とを有する。
導電層6は、剛体電極1、2の間に配置され、給電の際の移動により剛体電極1、2により挟持され、非給電の際の移動により剛体電極1、2のうちのいずれか一方と離隔される。
【0020】
この図2Aの例では、導電層6は、ゴム4で裏打ちされた薄板電極5とする。このため、図2Bのように押圧力が印加される矢印BFの方向やその逆方向に対して弾性(つぶれたり元に戻る)を有する。即ち、導電層6は、粘弾性を有するものである。粘弾性とは、弾性と粘性の少なくとも一方を含むことをいう。
【0021】
導電層6は、給電の際の送電側の剛体電極1の上記移動により剛体電極1、2により挟持される。非給電の際には送電側の剛体電極1が矢印BFの方向と逆方向に移動されることにより剛体電極1、2のうちのいずれか一方と離隔される。
【0022】
この例では、剛体電極1の側に導電層6が固定されているため、導電層6は、剛体電極2と離隔される。
具体的に、導電層6は、送電側の剛体電極1の底面に弾性接着層3で固定されたゴム4と、ゴム4の下面に弾性接着層3で固定された薄板電極5と、薄板電極5の表面に塗布された低融点金属6aとを有するものである。なお、低融点金属6aの代わりに液体金属を塗布してもよい。
【0023】
ここで、低融点金属6aと液体金属について説明する。
低融点金属6aは、常温では固体であるが、常温よりも少し高い温度(例えば)で溶け出す。ウッドメタル等多種の融点の異なる低融点金属が存在する。低融点金属6aは、柔らかい金属が多いため、電極どうしの押圧により、多少の接触面積の増加が見込まれる。この場合、大電流を流すと、接点に電流が流れて溶融するため接触面積が増大する。その結果、低抵抗化することができる。なお、低融点金属6aの場合には、カドミウム等の有害物質が含まれる場合があるため、人が接触できないところで使用する必要がある。
【0024】
液体金属は、GaInSn(Galinstan)の共晶合金等が用いられる。GaInSn(Galinstan)の共晶合金の融点は-19°Cであり、それよりも高い温度、例えば常温等では液化している。液化している状態の液体金属を薄板電極5に濡れ性が出るまで擦り付けるため剥離しない。
また、通常、液体金属を塗布した薄板電極5は酸化膜に覆われているため、酸化しない。送電側の剛体電極1を押圧すると、対向する受電側の剛体電極2にも液体金属の一部が転写されるが、接触している電極どうしが入れ違っても問題は生じない。従って、剛体電極1を押圧すると、電極どうしの隙間に液体金属が入り込むため、低接触抵抗が実現される。
【0025】
図2Aの電極構造の接触式給電コネクタにおいて、送電側の剛体電極1から受電側の剛体電極2へ電力を給電する際に、図2Bに示すように、送電側の剛体電極1に対して矢印BFの方向に押圧力が加えると、ゴム4、弾性接着層3及び薄板電極5等からなる導電層6が、受電側の剛体電極2の凹凸形状に合わせて形を変えて剛体電極2に接触するため、剛体電極2との間にできた隙間7が狭まり、接触抵抗が小さくなる。
導電層6に含まれる薄板電極5は、厚みが例えば50μm以上150μm以下と薄いため、剛体電極1、2間に介在させる小型の仲介電極として、下の受電側の剛体電極2に低抵抗で接続される。
【0026】
図2Bの押圧状態で、図2Cに示すように、送電側の剛体電極1から受電側の剛体電極2へ大電流BIを流した場合、接触点が加熱され、低融点金属6aの融点(融解温度)を超えると、低融点金属6aが溶けて液体金属となり、図2Cの部位9のように隙間7に流れ込み、隙間7が狭くなると共に剛体電極2との接触部位が広がる。このため、より広い接触面積でコンタクトができる。
【0027】
このような低融点金属6aは、通常の温度では固体であるが、温度の上昇によって液体金属6bになる。どちらの状態も酸化膜SMが低融点金属または液体金属自体の酸化を防止する。
【0028】
導電層6と受電側の剛体電極2とを何度も接触と離隔を繰り返すと、酸化膜SMが低融点金属6a又は液体金属内に拡散されて導電性能が低下する。このため、一定期間で剛体電極1の表面の低融点金属6aを交換することが望ましい。
離隔時には、受電側の剛体電極2の表面に低融点金属6aが残ることがあるが、これは受電側の剛体電極2の表面の凹凸として考えれば済む。または、剛体電極2の表面を研磨して除去すればよい。
【0029】
ここで、図3を参照してゴム裏打ち薄板電極5と低融点金属6bとを使用した実験結果について説明する。
図3は、押圧及び電流印加によって変化する接触抵抗の変化を示す図(グラフ)である。
まず初期条件として、表面に液体金属6b又は低融点金属6aを塗布した1平方センチメートルの銅板(薄板電極5)の7サンプルを用意し、2週間程度放置した。
【0030】
図3のグラフでは、これら7サンプルに対し1.1kg、3.0kg、4.9kg、6.8kgと押圧力を高めてゆくと、押圧力に応じて接触抵抗が低減してゆく。そして、10Aの電流を流すと抵抗値が大きく低減することが分かる。
以上の実験結果から、図2に示した電極構造で接触抵抗を低減できるという仮説は正しいと言える。
【0031】
このように第1実施形態の接触式給電コネクタによれば、送電側の剛体電極1と、ゴム4で裏打ちされた薄板電極5を含む導電層6とを剛体電極1に配設し、給電の際に、送電側の剛体電極1を押圧して、剛体電極1と導電層6と剛体電極2を押圧することで、導電層6の弾性により導電層6が剛体電極2と密着することで、電気抵抗が減少し、大電流を流すことが可能になる。大電流を流すことによって、接触部を加熱して低融点金属を液化して馴染ませてさらなる低抵抗化を可能にする。この結果、急速充電に対応できる電極構造を提供することができる。
【0032】
次に、図4A図4B図5を参照して第2実施形態の接触式給電コネクタを説明する。
図4Aは、第2実施形態の接触式給電コネクタ(分割型の電極構造の例)を示す断面である。図4Bは、図4Aを底面側からの見た斜視図である。図5は、図4Aの状態から送電側の剛体電極を矢印BF方向に押圧し導電層6を挟持した状態を示す図である。
図4A図4Bに示すように、第2実施形態の接触式給電コネクタは、上記図2Aの剛体電極1と、ゴム4を裏打ちした薄板電極5を有する導電層6と、を含む電極構造の群をアレイ状に列設配置したものである。
【0033】
薄板電極5自体は薄く、面方向の抵抗は高い。このため、1つの剛体電極1に対して複数の導電層6を配置し、夫々の導電層6の幅を10mm程度としている。また、抵抗を少なくすべく、1つの導電層6毎に薄板電極5を両端で上方へ屈曲させて剛体電極1の側面に接続して電極全体としての抵抗を低減している。一実施例として図11に示すように、ハンダ付けして固定している。
【0034】
夫々の導電層6の間には、弾性絶縁材12が配置されている。この弾性絶縁材12により、押圧力が印加されたときに夫々の導電層6が横方向によれたり、ずれたりすることを許容するとともに、ゴミが残ることを防止する。
ゴム4は、例えば厚み0.5mm以上~2mm以下、辺長が5mm以上20mm以下の大きさの板状のラバー等である。ゴム4は、剛体電極1と薄板電極5の間に挟まれているる。
【0035】
導電層6に含まれるが5は、例えば厚み50μm以上150μm以下の電極である。薄板電極5は、送電側の剛体電極1に弾性接着層3及び板状のゴム4で固定されており、矢印BF方向の押圧力はこれらを介して受電側の剛体電極2に伝達される。
【0036】
具体的には、薄板電極5は、剛体電極1との導電性が得られると共に、ゴム4の厚さ方向の弾性変形を妨げないようにゴム4を弾性接着層3を用いて包含し、剛体電極2との間で必要な接触面積が得られるように、ゴム4を包含した単位で必要個数配列された電極であり、剛体電極1を剛体電極2に押圧したときに、ゴム4及び薄板電極5が共に変形して剛体電極2に対して密着性を高める弾性を有する電極である。
【0037】
このような電極構造の接点でも適切に放熱すれば、ゴム4として、例えばシリコンゴム等を使用した場合に、その実用可能温度内(例えば200°C等)で、1平方センチメートル当たり50A程度の大電流BIの送電が可能である。
さらに、薄板電極5の厚みは、例えば50μm以上150μm以下等が適している。
以上により、面積を増大させれば、さらなる大電流BI送電も可能である。但し、矢印BF方向の押圧力を面積に応じて増大させなければならない。
【0038】
図4Aに示した電極構造は、対向電極表面の微細な凹凸に対応可能であるが、図5に示すように、受電側の剛体電極2の表面に比較的大きなうねりが生じていた場合にも、そのうねりの形状に導電層6が変形するため対応できる。
さらに大きなうねりに対しては、送電側の剛体電極1及び受電側の剛体電極2の基部にばね性を持たせることで、対応することもできる。
【0039】
ここで、電極構造の改善について説明する。
上述した図2図4及び図5の電極構造では、送電側の剛体電極1と受電側の剛体電極2のうち一方の剛体電極1のみに低融点金属6a(温度によっては液体金属になる)を配置しているため、他方の剛体電極2の表面には接触界面SKが存在する。このため、受電側では十分に低い接触抵抗が得られないと同時に、これを補うために高い接触圧力と薄板電極5とゴム4との組み合わせを必要とする。
【0040】
そこで、剛体電極1と対向する受電側の剛体電極2にも低融点金属6aが配置することにより、接触後に大電流BIを流すことで点接触部が解け、低融点金属6aは液化して混合するため、接触抵抗をより低減できると共に、押圧力BFも低減することができる。
【0041】
以下、図6A図6B図6Cを参照して第3実施形態の接触式給電コネクタを説明する。図6Aは、薄板電極及び受電側の剛体電極の夫々に低融点金属を塗布した例を示す断面図である。図6Bは、図6Aの状態から矢印BF方向に押圧力を加えたときの押圧状態を示す断面図である。図6Cは、図6Bの押圧状態で送電側の剛体電極から受電側の剛体電極へ大電流BIを流した状態を示す断面図である。
図6A乃至6Cは、受電側の剛体電極2の表面及び薄板電極5の凹凸の部分を拡大して示している。なお、送電側の剛体電極1にも凹凸はあるが、説明を分かり易くするために、図6A乃至6Cでは送電側の剛体電極1の面を平面で示している。
【0042】
この第3実施形態では、図6A乃至6Cに示すように、送電側の剛体電極1の低融点金属6aだけでなく、受電側の剛体電極2にも低融点金属6bを配置している。
製造工程は、図6A図6Bまでは図2A図2Bと変わりはないが、図6Cの部位10では、低融点金属6a、6bどうしが解けて融合し、接触界面SK(図1参照)のないコンタクトが実現できている。
【0043】
当初は、低融点金属6aには、酸化膜SMができており、新たな酸化を防止している。溶融後、酸化膜SMは、融合した低融点金属6a、6bに混合されてしまい、接触界面SKのない接合となる。これにより、接触圧力をあまり上げなくとも低接触抵抗を実現することができる。
【0044】
この第3実施形態によれば、薄板電極及び受電側の剛体電極の夫々に低融点金属を塗布することで、図2の例に比べて接触抵抗をより低減させることができる。
【0045】
ここで、図7A図7B図7Cを参照して第4実施形態の接触式給電コネクタを説明する。
図7Aは、金属繊維に低融点金属を含侵させて電極表面に貼り付けた様子を示す図である。図7Aは、金属線を縦横の方向に織り込んで形成した平織の金属繊維を示す平面図である(織り方は、平織に限定されるものではない)。図7Bは、図7Aの断面図である(二層の繊維層になっているが、これに限定されるものではない)。図7Cは、剛体電極と金属繊維とを同一材料で製作し、抵抗溶接、レーザー溶接で溶融固定する様子を示す図であるが、ロウ付け、はんだ付け等を用いてもよい。
【0046】
この第4実施形態では、どのようにして薄板電極5の表面や送電側の剛体電極1の表面に低融点金属6aを定位させられるのかを説明する。
低融点金属6aを剛体電極31に固定する簡単な方法としては、低融点金属を溶融して液体金属にし、金属繊維21内に含侵させる。
【0047】
他の方法として、付着力の高い金属(例えば金等)を予め付着させる方法が考えられる(境界面金属層61)。薄板電極5や送電側の剛体電極31に銅を使用する場合、銅と金の密着度は高く、金と低融点金属の濡れ性(親和性)も高いため、境界面金属層61を介在させることで、低融点金属6aと銅電極は剥離し難いものになり、導電率も改善される。
【0048】
接触式給電コネクタにおいて、電極の接離を何度も繰り返す場合、同じ電極の特定の部位(凸部)に何度も当たることが考えられる。これにより、特定部位の低融点金属が相手側電極に移ることも考えられる。送電側と受電側が入れ替わり、常に異なる電極どうしで接離することを考えると、その点は変化するが、凸部が当たる確率は高い。
【0049】
低融点金属6aが他へ移ることを想定して低融点金属6aの量を増大させることが必要である。このためには、次の第1の方法と第2の方法が考えられる。
第1の方法は、電極表面に、境界面金属層61を配設し、その上に低融点金属を配設する方法である。
第2の方法は、電極表面に金属製の織物を貼り付け、その中に低融点金属6aを含侵させておく方法である。
【0050】
ここでは、第2の方法について説明する。
この場合、金属線を縦横の方向に織り込むことで、図7Aに示すように、平織の金属繊維21を形成する。そして、形成して平織の金属繊維21に低融点金属6aを含侵させて低融点金属含浸金属繊維を形成する。
最後に、図7Bに示すように、形成した低融点金属含浸金属繊維を電極31の表面に固定する。
【0051】
低融点金属6aを電極31の表面に固定する方法は、例えば図7Cに示すように、電極31の表面の接点動作に影響しない部位に溶接ポイント34を設けて、溶接圧着電極33により低融点金属含浸金属繊維21をスポット溶接して固定する。スポット溶接は抵抗溶接の一つである。
この例では、抵抗溶接としたが、これ以外の溶接方法としては、例えばハンダ付け、ろう付け、アーク放電溶接、レーザー溶接等でもよく、さらに金属板で金属繊維を挟んでネジで固定する方法でもよい。但し、ネジで固定する場合は、接触面にネジ頭等が出ないようにする。
【0052】
次に、図8A図8Bを参照して第5実施形態の接触式給電コネクタを説明する。
図8Aは、送電用と受電用夫々の剛体電極に低融点金属含浸焼結金属繊維を配置した電極構造において低融点金属含浸焼結金属繊維どうしを離隔した状態を示す図である。
図8Bは、図8Aの離隔状態から融点金属含浸焼結金属繊維どうしを接触させた状態を示す図である。
【0053】
図8Aに示すように、送電側の剛体電極31及び受電側の剛体電極32には、ゴム4等を介さずに低融点金属含浸焼結金属繊維41を配置する。
低融点金属含浸焼結金属繊維41は、焼結させた金属繊維に低融点金属6aを含侵させたものである。金属繊維としては、織布や不織布のうち何れかを選択して使用する。金属繊維は、剛体電極31、32に対して溶融固定されている。
【0054】
金属繊維に低融点金属6aを含侵させる場合、低融点金属6aは融点以下では固体であるため、融点以上の温度で液化させてから金属繊維内に含侵させ、その後、融点以下に冷却して固化し一体化する。
金属繊維として、例えば銅等を使用した場合には、その繊維を織る元となる金属線(糸)に金等の金属をメッキしておくことにより、糸と低融点金属6a間の抵抗を低下させることができる。剛体電極31、32表面に金等の金属をメッキする方法も採用することができる。
【0055】
低融点金属6aは、融点以下の温度では固体であるため、固体内の流動性が無いとともに表面酸化膜SMが内部の酸化を防止している。このため、長期間放置して使用することができる。低融点金属6aを使用する環境の最高温度を低融点金属6aの融点以下に設定しておけば、使用前に液体になることはない。
【0056】
夫々の剛体電極1,2の低融点金属含浸焼結金属繊維41どうしが何度も接離して、低融点金属6a表面の酸化膜SMを内部に取り込んだ際には、溶かした低融点金属6bに漬けることで金属の交換・再生を行うことができる。
【0057】
低融点金属6aとして、例えばガリウム(以下「Ga」と称す)等の金属を使用した場合には、その融点は、約30°Cであり、夏場には液体金属になる。
低融点金属6aが液体金属になったとしても、低融点金属含浸焼結金属繊維41は、液体金属に対する保持力を有しており、表面酸化膜SMで、さらなる酸化も防止するため、液体化したとしても劣化や流れ出る等の問題が生じない。
【0058】
図8Bに示すように、矢印BFの方向の押圧力が剛体電極1に印加されて、剛体電極1が剛体電極2に接近し、互いの低融点金属含浸焼結金属繊維41どうしが密着する際に、低融点金属含浸焼結金属繊維41に含まれる低融点金属6aは、軟質の固体であるため、低融点金属含浸焼結金属繊維41がつぶされることはない。
但し、剛体電極1、2により互いの低融点金属含浸焼結金属繊維41が接触した部位42においては、低融点金属6aどうしが接触している。このような状況で大電流を流して温度が上がれば、Gaは液化し接触界面はなくなり、良好な接点となる。
【0059】
低融点金属6aが液化した状態でも、図8Bの挟持状態では、低融点金属含浸焼結金属繊維41を構成する糸が圧力を受けるが、糸の太さに対応する隙間を保持する。
押圧されて隙間が少なくなった場合には、低融点金属含浸焼結金属繊維41に含まれる液化した低融点金属6a(液体金属)が染み出て、互いの低融点金属含浸焼結金属繊維41の境目がなくなるように、さらに良好な金属繊維どうしの接触状態になる。
【0060】
ここで、図8Bのように、夫々の低融点金属含浸焼結金属繊維41が接触された状態から、図8Aのように離隔する場合を考える。
Gaが液体である場合には、夫々の低融点金属含浸焼結金属繊維41を引き離すと、容易に離隔する。
【0061】
一方、Gaが低融点金属6aとして固体化した場合には、Ga自体のヤング率は9.8GPa、モース硬度は1.5と機械的強度が極めて弱いため、剥離時に液体の場合と同様に容易に分断することができる。
この際、低融点金属含浸焼結金属繊維41は、送電側と受電側で夫々固定されているため、離隔時に、低融点金属含浸焼結金属繊維41が剛体電極31、32から剥離することはなく、互いのGaが接触している部分のみに応力が集中しこの部分で分離する。
Gaは、資源価格は比較的安く、さらに無害であることも使用用途としてメリットがある。
【0062】
次に、図9を参照して第6実施形態の接触式給電コネクタについて説明する。
図9は、一方の電極にゴム含侵焼結金属繊維51と低融点金属含侵焼結金属繊維52を積層し、他方に低融点金属含侵焼結金属繊維52を積層した構造を示す図である。
図8A図8Bの電極構造は、単純ではあるが、対向する剛体電極どうしの凹凸に対応関係が無い。
そこで、この第6実施形態では、低融点金属含侵焼結金属繊維52を用いたままで、図4A乃至図4Cに例示したような柔軟性を持たせた電極構造としている。
【0063】
この第6実施形態の場合、図9に示すように、電極31に焼結金属繊維を予め溶着しておき、液体ゴム4(シリコンゴム等)に漬け、真空中で焼結金属繊維内の空気を抜くことにより液体ゴム4を焼結金属繊維に含侵させることで、ゴム含侵焼結金属繊維51を形成する。液体ゴム4には、一定の時間後に硬化する硬化剤を混ぜており、十分に空気が抜けた後に硬化させる。
【0064】
ゴム4が硬化した後、ゴム含侵焼結金属繊維51から余分なゴムを取り除くと共に、焼結金属繊維表面の金属面を露出させる。そして、その露出部分に金属を蒸着して境界面金属層61を形成する。この境界面金属層61は、焼結金属繊維に低融点金属を含侵させた低融点金属含侵焼結金属繊維52を張り付けた後に、濡れさせる層である。
【0065】
その後、境界面金属層61の底面に、低融点金属含侵焼結金属繊維52を配置し固定する。その際、一度低融点金属を液化させて境界面金属層に濡らす。
なお、電極32の側についても電極31と同様に境界面金属層62を形成し、境界面金属層62の上面に、低融点金属含侵焼結金属繊維52を配置し固定する。
低融点金属含侵焼結金属繊維52の固定方法としては、電極31、32の夫々の面の弾性的挙動を阻害しない位置に、図7Cのように溶着ポイント34を設けて溶着するものとする。
【0066】
焼結金属繊維だけでは、外部から矢印BF方向の押圧力をかけると凹んでしまうが(塑性変形)、液体ゴムを含侵させたゴム含侵焼結金属繊維51とすることにより、弾性を確保でき、対向面の凹凸に対して馴染ませ、何度も使用可能になる。
さらに、図4A図4B図4Cの電極構造に比べて、電極31,32間に焼結金属繊維を介在させるだけなので、製作が容易であるという利点がある。
【0067】
次に、図10を参照して第7実施形態の接触式給電コネクタについて説明する。
図10は、一方の電極31にゴム含侵焼結金属繊維51と境界面金属層62を配置し、低融点金属を濡らしたものである。他方の電極32に低融点金属含侵焼結金属繊維52を配置した例を示す図である。
即ち、この図10の例は、図9の電極構造をさらに簡素化させた応用例であり、図9と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0068】
この第7実施形態の場合の製造方法は、図9の例と同様に、電極31に形成したゴム含侵焼結金属繊維51から余分なゴムを取り除くと共に、焼結金属繊維の表面の金属面を露出させる。そして、その露出部分に図9の例とは異なる金属を蒸着して境界面金属層61を形成する。この金属として、焼結金属繊維に馴染むとともに、低融点金属との濡れ性の良い金属材料を用いる。
境界面金属層61を形成した後、低融点金属を液体化して境界面金属層61の表面に塗布して低融点金属層63を形成する。
【0069】
焼結金属繊維と低融点金属と蒸着する金属の組み合わせの一例として、焼結金属繊維に例えば銅線を用い、低融点金属に例えばGa等を用いるならば、銅に対して密着力及び導通性の得られる金属として、例えば金があり、これを用いる。金は、液体のGaに対しても濡れ性が良い。このような金属を用いて境界面金属層61を形成することにより、付着力と導電性とを両立させた電極間の仲介層(導電層6)を形成することが可能になる。
【0070】
次に、図11A図11Bを参照して第8実施形態の接触式給電コネクタについて説明する。図11Aは、床送電における電極構造においてゴム含侵焼結金属繊維が一方の剛体電極から離隔した状態を示す図である。図11Bは、ゴム含侵焼結金属繊維が上下の剛体電極と接触された状態を示す図である。
【0071】
図11A図11Bの例は、ゴム含侵焼結金属繊維81自体が電極になる例であり、具体的には、給電設備側の床に配置された電極72(SUS又はニッケルメッキ電極等)から送電される電力を、例えばロボットやAGV(Automated Guided Vehicle)等の移動体に配置された電極71が受電する場合を想定している。
【0072】
図11A図11Bに示すように、この第8実施形態の接触式給電コネクタは、電極71と電極72との間にゴム含侵焼結金属繊維81を配置して構成される。
具体的には、電極71の底面にゴム含侵焼結金属繊維81が固定されており、給電の際に電極71が下方に移動されることで、電極71と電極72との間にゴム含侵焼結金属繊維81が挟まれて、電極71により押圧された状態で電極72に接触する。
これにより、電極71と電極72とがゴム含侵焼結金属繊維81を通じて低抵抗状態で導通するので、電極71と電極72との間に大電流を通電したときに発熱の少ない給電が可能になる。
【0073】
電極71は、移動体に配置される受電側の電極である。電極72は、床と一体的に設けられた送電側の電極である。電極72の表面には、突起鋲82が設けられている。電極72は、床材としての強度、耐摩耗性、耐酸性、耐アルカリ性、意匠性を有していると共に、滑り防止鋲、点字ブロックとしても使用可能である。
【0074】
電極72の上部には、給電のために移動してきたロボットやAGV等の移動体に配置された電極71が対向配置される。つまり、電極71は、移動体が停止したときに、上方から押圧されて下方に移動し、ゴム含侵焼結金属繊維81を介して電極72と導通して受電可能になり、電極72側の突起鋲82とにより横に滑ることがない。
【0075】
電極71の底面には、ゴム含侵焼結金属繊維81が固定されている。
ゴム含侵焼結金属繊維81は、導電層として機能する。ゴム含侵焼結金属繊維81は、織布又は不織布の焼結金属内に、ゴム4を含侵させ、焼結金属の表裏の金属繊維を露出させた電極であり、剛体電極1に固定されている。
【0076】
ゴム含侵焼結金属繊維81は、電極71を電極72に押圧したときに、弾性変形して電極72に対して密着性を高めるための粘弾性を有する電極である。
ゴム含侵焼結金属繊維81には、例えばSUS、クロムメッキ銅線、ニッケルメッキ銅線等を編み込んだ金属繊維が用いられている。
【0077】
このような電極構造の接触式給電コネクタでは、電極71を下げて、ゴム含侵焼結金属繊維81で電極72を押圧するように電極71、72を接触させた後、床側の電極72から電極71へ給電することで、電極71を通じてロボットやAGVに受電される。
【0078】
この第8実施形態において、突起鋲82がゴム含侵焼結金属繊維81に刺さると、ゴム含侵焼結金属繊維81を構成する金属線が押しのけられると共に、その押しのけられた金属線が突起鋲82の表面をなめて良好な接触状態が得られる。
【0079】
この例では、ゴム含侵焼結金属繊維81を使用し、前述の低融点金属6a(図2図7A参照)を使用しないため、床表面が汚れることがない。
【0080】
さらに、ゴム含侵焼結金属繊維81をロボットの足の裏に配置した場合には、押圧時にゴムが床面と接触するため、滑り防止機能も果たせる。焼結金属の金属繊維21も、床等に食い込み、滑り防止手段として機能する。この電極は、急速充電用ではなく、逐次給電用途に使用されるものである。
【0081】
このように上述した第8実施形態によれば、全固体電池が登場し、急速充電が安全かつ日常的に行えるようになる。このようになれば、ロボットやAGVだけでなく、EV車、ドローン、電動農機具、電動工具等の電動装置への給電が極めて早くなり、機器の使い勝手を向上することができる。
【0082】
充電速度が早ければ、移動体の活動量も増大する。このためには、大電流送電時に発熱のない接触電極が求められる。
さらに、移動体に対する逐次給電方法も考慮される必要がある。このような用途には、ゴム含侵焼結金属繊維81が有効である。このような電極の社会的ニーズは極めて大きいと推測される。
【0083】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0084】
例えば上述し第1実施形態では、受電側の剛体電極2を固定位置とし、送電側の剛体電極1を移動させるものとして説明したが、これらの関係は逆であってもよく、剛体電極1,2は共に送電側又は受電側のいずれにもなり得る。
【0085】
さらに、低融点金属と液体金属の変化は環境温度によって決定されているが、電極部にヒーター、熱交換器、ペルチェ素子を設けることにより、意図的に液相にしたり、固相にしたりすることも可能である。特に、極寒冷地では液体金属同士の接触が得難いが、ヒーターを用いることで容易に液相または液相に近い状態にすることができる。各図には記していないが、このような機能は付けられるものとしている。
【0086】
以上を換言すると、本発明が適用される給電コネクタは、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
【0087】
即ち、本発明が適用される給電コネクタ(例えば図2の接触式給電コネクタ等)は、
送電側又は受電側になり得る第1金属電極(例えば図2の受電側の剛体電極2等)と、
前記第1金属電極(例えば図2の剛体電極2等)と所定の間隔を隔てて対向配置され、給電の際に前記第1金属電極(例えば図2の剛体電極2等)との間隔が狭まる方向に移動され、非給電時の際に前記間隔が離される方向に移動される第2金属電極(例えば図2の送電側の剛体電極1等)と、
前記第1金属電極と前記第2金属電極との間に配置され、前記給電の際の前記移動により前記第1金属電極と前記第2金属電極とにより挟持され、前記非給電の際の前記移動により前記第1金属電極と前記第2金属電極のうちのいずれか一方と離隔される粘弾性を有する導電層(例えば図2の導電層6等)と、
を備える。
全固体電池の登場により、世の中が大きく変貌する可能性があるが、そのためには、全固体電池に急速充電することが可能な給電コネクタを開発する必要がある。
このように、急速充電のために大電流を流すことが可能な接点構造を備えることで、急速充電を可能にすることができる。
【0088】
本発明が適用される給電コネクタ(例えば図4A図4B図5の接触式給電コネクタ等)は、
剛体電極からなる送電電極(例えば図5の送電側の剛体電極1等)と、受電電極(例えば図5の受電側の剛体電極2等)との間における電力の給電を行う接触式給電コネクタにおいて、
前記送電電極は、
剛体電極(例えば図5の送電側の剛体電極1等)からなる第1の層と、弾性部材(例えば図5のゴム4等)からなる第2の層と、屈曲性を有する薄板電極(例えば図5の薄板電極5等)とからなる第3の層が、その順番で積層されるとともに、隣接する層の間に配置された柔軟性を有する接着層(例えば図2の弾性接着層3等)により互いに接着され、
前記第3の層(例えば図5の薄板電極5等)は、
所定サイズに分割された前記薄板電極5がアレイ状に配置されることで形成され、
前記所定サイズに分割された薄板電極5の夫々の端部と、前記第1の層とが、押圧により変形可能な導体(薄い金属板)により接続され、
押圧により前記受電電極(例えば図5の受電側の剛体電極2等)に接触することで、前記送電電極(例えば図5の剛体電極1等)からの電力を、前記導体(薄い金属板)を介して前記受電電極(例えば図5の受電側の剛体電極2等)へ送電する。
【0089】
電源からの直流電流を、急速充電する送電コネクタにおいて、
剛体電極(例えば図5の剛体電極1等)と柔軟性を有するゴム及び接着剤を介して接合された50μm以上150μm以下の厚みの薄板金属電極(例えば図5の薄板電極5等)が有り、柔軟性を有する弾性部材と薄板金属電極が5mm以上20mm以下の矩形に区切られ、区切られた境界部で薄板金属電極が立ち上がって剛体電極(例えば図5の剛体電極1等)と接続されるとともに、立ち上がり部分が弾性変形する屈曲部を有する小電極(例えば導電層等)を有しており、
前記小電極(例えば導電層6等)は、アレイ状に多数配列されて柔軟接触電極(例えば薄板電極5等)を形成し、
前記柔軟接触電極(例えば薄板電極5等)は、薄板電極5の表面に低融点金属6a又は液体金属が塗布されている。
このような構成によれば、対面する剛体電極(例えば図5の剛体電極2等)により柔軟接触電極(例えば薄板電極5等)が挟持されたとき、柔軟接触電極(例えば薄板電極5等)が剛体電極(例えば図5の剛体電極2等)の凹凸形状に合わせて変形して柔軟に接触するので、柔軟接触電極(例えば薄板電極5等)と剛体電極2との接触面積が広がり低接触抵抗を実現することができる。
このとき、薄板電極5表面の低融点金属6aも、押圧により変形して接触面積を増大させ、接触抵抗が低くなるも、点接触状態を維持している。
さらに、押圧下における大電力送電という行為によって点接触部が発熱し、低融点金属が液体金属に変化し、薄板電極5と剛体電極2間に広がって、電気的接触部位が広がり、より低い接触抵抗が実現できる。
もともと、薄板電極5表面の低融点金属が液体化している場合には、剛体電極と柔軟接触電極との接触面積の広がりの際に、隙間を埋めるようにして液体金属が広がり、低接触抵抗が実現できる。
【符号の説明】
【0090】
1・・・送電側の剛体電極、2・・・受電側の剛体電極、3・・・弾性接着層、4・・ゴム、5、32・・・薄板電極、6a、6b・・・低融点金属、11・・・ハンダ付けの部位、12・・・弾性絶縁体、31・・・剛体電極、33・・・溶接圧着電極、41、51・・・低融点金属含浸焼結金属繊維、51、81・・・ゴム含浸焼結金属繊維、52・・・低融点金属含浸焼結金属繊維、61・・・境界面金属層、62・・・低融点金属塗布層、71・・・移動体側の受電電極、72・・・床側の送電電極、82・・・突起鋲、PS・・・接触点、BF・・・矢印(押圧力の方向)、SK・・・接触界面、SM・・・酸化膜、BI・・・大電流
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B