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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/04 20060101AFI20231228BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20231228BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B60K17/04 Z
B60K17/12
B60K1/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020549339
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019037798
(87)【国際公開番号】W WO2020067260
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2018185575
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】村田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】水谷 真澄
(72)【発明者】
【氏名】福永 慶介
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/04
B60K 17/12
B60K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸を回転させる駆動装置であって、
モータ軸を中心として回転し軸方向両側に開口する中空のシャフトであるモータシャフトと前記モータシャフトに固定されるロータ本体とを有するモータと、
前記モータシャフトに固定されるモータドライブギヤを有し、前記モータシャフトに接続される減速装置と、
前記減速装置に接続され、前記車軸を差動軸回りに回転させる差動装置と、
前記モータを収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を収容するギヤ収容部とを有するハウジングと、
を備え、
前記差動軸は、前記モータ軸と一致し、
前記モータシャフトの内部には、前記車軸が通され、
前記モータシャフトの軸方向一方側の端部は、前記ギヤ収容部内に突出し、
前記モータシャフトは、
前記ロータ本体が固定される第1シャフト部材と、
前記モータドライブギヤが固定され、前記第1シャフト部材の軸方向一方側に連結される第2シャフト部材と、
を有し、
前記第1シャフト部材と前記第2シャフト部材とが連結された連結状態と、前記第1シャフト部材と前記第2シャフト部材との連結が解除された非連結状態と、を切り替えるクラッチ機構をさらに備える、
駆動装置。
【請求項2】
前記第1シャフト部材は、前記第2シャフト部材側に突出する複数の第1突出部を有し、
前記第2シャフト部材は、前記第1シャフト部材側に突出する複数の第2突出部を有し、
前記複数の第1突出部は、周方向に沿って間隔を空けて配置され、
前記複数の第2突出部は、周方向に沿って間隔を空けて配置され、前記連結状態においてそれぞれ周方向に隣り合う前記第1突出部同士の隙間に嵌め合わされ、
前記クラッチ機構は、前記第1シャフト部材と前記第2シャフト部材との少なくとも一方を軸方向に移動させて前記連結状態と前記非連結状態とを切り替える第1アクチュエータを有する、請求項に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1シャフト部材のうち前記第2シャフト部材側の端部における外周面には、複数の第1スプライン部が設けられ、
前記第2シャフト部材のうち前記第1シャフト部材側の端部における外周面には、複数の第2スプライン部が設けられ、
前記クラッチ機構は、
内周面に複数のスプライン溝を有する筒状の連結筒部材と、
前記連結筒部材を軸方向に移動させて前記連結状態と前記非連結状態とを切り替える第2アクチュエータと、
を有し、
前記連結状態において、前記連結筒部材の内部には、前記第1シャフト部材のうち前記第2シャフト部材側の端部と前記第2シャフト部材のうち前記第1シャフト部材側の端部とが挿入され、かつ、前記スプライン溝に前記第1スプライン部と前記第2スプライン部との両方が嵌め合わされる、請求項に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1シャフト部材のうち前記ロータ本体が固定される部分の軸方向両側に位置する
部分のそれぞれを回転可能に支持する一対の第1ベアリングと、
前記第2シャフト部材のうち前記モータドライブギヤが固定される部分の軸方向両側に位置する部分のそれぞれを回転可能に支持する一対の第2ベアリングと、
をさらに備え、
前記ハウジングは、前記モータ収容部と前記ギヤ収容部とを仕切る仕切壁部を有し、
前記モータシャフトは、前記仕切壁部を軸方向に貫通し、
前記第1ベアリングと前記第2ベアリングとは、転がり軸受であり、
前記一対の第1ベアリングのうち前記第2シャフト部材側に位置する第1ベアリングと前記一対の第2ベアリングのうち前記第1シャフト部材側に位置する第2ベアリングとは、前記仕切壁部に保持される、請求項1からのいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
車両の車軸を回転させる駆動装置であって、
モータ軸を中心として回転し軸方向両側に開口する中空のシャフトであるモータシャフトと前記モータシャフトに固定されるロータ本体とを有するモータと、
前記モータシャフトに固定されるモータドライブギヤを有し、前記モータシャフトに接続される減速装置と、
前記減速装置に接続され、前記車軸を差動軸回りに回転させる差動装置と、
前記モータを収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を収容するギヤ収容部とを有するハウジングと、
を備え、
前記差動軸は、前記モータ軸と一致し、
前記モータシャフトの内部には、前記車軸が通され、
前記モータシャフトの軸方向一方側の端部は、前記ギヤ収容部内に突出し、
前記モータシャフトは、
前記ロータ本体が固定される第1シャフト部材と、
前記モータドライブギヤが固定され、前記第1シャフト部材の軸方向一方側に連結される第2シャフト部材と、
を有し、
前記第1シャフト部材のうち前記ロータ本体が固定される部分の軸方向両側に位置する
部分のそれぞれを回転可能に支持する一対の第1ベアリングと、
前記第2シャフト部材のうち前記モータドライブギヤが固定される部分の軸方向両側に位置する部分のそれぞれを回転可能に支持する一対の第2ベアリングと、
をさらに備え、
前記ハウジングは、前記モータ収容部と前記ギヤ収容部とを仕切る仕切壁部を有し、
前記モータシャフトは、前記仕切壁部を軸方向に貫通し、
前記第1ベアリングと前記第2ベアリングとは、転がり軸受であり、
前記一対の第1ベアリングのうち前記第2シャフト部材側に位置する第1ベアリングと前記一対の第2ベアリングのうち前記第1シャフト部材側に位置する第2ベアリングとは、前記仕切壁部に保持される、
駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を駆動する電気駆動装置が知られる。例えば、日本国公表公報:特表2017-534032号公報には、出力軸がモータの中空軸を貫通する構成が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公表公報:特表2017-534032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電気駆動装置において中空軸は、モータが収容されている第1のハウジング区分から、伝動機構ユニットが収容されている第2のハウジング区分に突出し、中空軸には第2のハウジング区分内において伝動機構ユニットの変速伝動機構が接続されている。ここで、中空軸を出力軸が貫通する場合、伝動機構ユニットのディファレンシャル伝動機構は、第2のハウジング区分内において中空軸の軸線上に配置される。そのため、第2のハウジング区分内において中空軸に変速伝動機構を接続する作業等を行いにくい場合があり、電気駆動装置を組み立てにくい場合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、車軸が通された中空のモータシャフトを備え、組み立てやすい構造を有する駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置の一つの態様は、車両の車軸を回転させる駆動装置であって、モータ軸を中心として回転し軸方向両側に開口する中空のシャフトであるモータシャフトと前記モータシャフトに固定されるロータ本体とを有するモータと、前記モータシャフトに固定されるモータドライブギヤを有し、前記モータシャフトに接続される減速装置と、前記減速装置に接続され、前記車軸を差動軸回りに回転させる差動装置と、前記モータを収容するモータ収容部と前記減速装置および前記差動装置を収容するギヤ収容部とを有するハウジングと、を備える。前記差動軸は、前記モータ軸と一致する。前記モータシャフトの内部には、前記車軸が通される。前記モータシャフトの軸方向一方側の端部は、前記ギヤ収容部内に突出する。前記モータシャフトは、前記ロータ本体が固定される第1シャフト部材と、前記モータドライブギヤが固定され、前記第1シャフト部材の軸方向一方側に連結される第2シャフト部材と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、車軸が通された中空のモータシャフトを備える駆動装置を組み立てやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の駆動装置を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態のモータシャフトの一部を示す斜視図である。
図3図3は、第2実施形態の駆動装置の一部を示す断面図である。
図4図4は、第2実施形態の駆動装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、各図に示す各実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。各実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向(車幅方向)である。各実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。各実施形態において右側は、軸方向一方側に相当し、左側は、軸方向他方側に相当する。
【0010】
なお、前後方向の位置関係は、以下の各実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。
【0011】
各図に適宜示すモータ軸J1は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。以下の説明においては、特に断りのない限り、モータ軸J1に平行な方向を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0012】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置10は、車両に搭載され、車両の車軸AXを回転させる。駆動装置10が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両である。図1に示すように、駆動装置10は、ハウジング11と、モータ軸J1を中心として回転するモータシャフト22を有するモータ20と、モータシャフト22に固定されるモータドライブギヤ31を有する減速装置30と、差動装置50と、クラッチ機構70と、一対の第1ベアリング27a,27bと、一対の第2ベアリング27c,27dと、を備える。
【0013】
ハウジング11は、モータ20、減速装置30、および差動装置50を収容する。ハウジング11は、モータ20を収容するモータ収容部12と、減速装置30および差動装置50を収容するギヤ収容部13と、を有する。ハウジング11の内部には、オイルOが収容される。より詳細には、モータ収容部12の内部およびギヤ収容部13の内部には、それぞれオイルOが収容される。モータ収容部12の内部のうち下側の領域には、オイルOが溜まる第1オイル溜りOR1が設けられる。ギヤ収容部13の内部のうち下側の領域には、オイルOが溜まる第2オイル溜りOR2が設けられる。モータ収容部12における第1オイル溜りOR1の油面は、例えば、ギヤ収容部13における第2オイル溜りOR2の油面よりも上側に位置する。第1オイル溜りOR1の油面は、例えば、モータ20の駆動
時において後述するロータ21よりも下側に位置する。これにより、ロータ21の回転が第1オイル溜りOR1のオイルOによって阻害されることを抑制できる。
【0014】
モータ収容部12は、モータ軸J1を中心として軸方向に延びる筒状である。モータ収容部12を構成する壁部のうち左側の壁部である左側壁部16は、左側壁部16を軸方向に貫通する孔部16aを有する。孔部16aには、車軸AXが通される。左側壁部16の右側の面には、保持部16bが設けられる。左側壁部16の右側の面は、モータ収容部12の内部に面する。保持部16bは、左側に窪む凹部である。保持部16bは、孔部16aの一部である。より詳細には、保持部16bは、孔部16aのうちの右側部分である。保持部16bの内径は、孔部16aのうち保持部16bよりも左側に位置する部分の内径よりも大きい。保持部16bには、車軸AXを回転可能に支持するベアリング81が右側から嵌め込まれて保持される。
【0015】
ギヤ収容部13は、モータ収容部12の右側に位置する。ギヤ収容部13の下端部は、モータ収容部12の下端部よりも下側に位置する。ギヤ収容部13の内側面のうち下側の底面は、モータ収容部12の内側面のうち下側の底面よりも下側に位置する。ギヤ収容部13を構成する壁部のうち右側の壁部である右側壁部18は、右側壁部18を軸方向に貫通する孔部18aを有する。孔部18aには、車軸AXが通される。
【0016】
右側壁部18の左側の面には、保持部18bと、保持部18cと、が設けられる。右側壁部18の左側の面は、ギヤ収容部13の内部に面する。保持部18bおよび保持部18cは、右側に窪む凹部である。保持部18bは、孔部18aの一部である。より詳細には、保持部18bは、孔部18aのうちの左側部分である。保持部18bの内径は、孔部18aのうち保持部18bよりも右側に位置する部分の内径よりも大きい。保持部18bには、車軸AXを回転可能に支持するベアリング82が左側から嵌め込まれて保持される。
【0017】
保持部18cは、保持部18bの上側に離れて位置する。保持部18cには、減速装置30における後述するカウンタシャフト34を回転可能に支持するベアリング35bが左側から嵌め込まれて保持される。
【0018】
ハウジング11は、仕切壁部14と、ベアリング保持壁部15,17と、をさらに有する。仕切壁部14は、モータ収容部12とギヤ収容部13とを仕切る。仕切壁部14は、モータ収容部12の右側の壁部を構成する。仕切壁部14は、ギヤ収容部13の左側の壁部を構成する。仕切壁部14は、仕切壁部14を軸方向に貫通する孔部14aを有する。孔部14aには、車軸AXおよびモータシャフト22が通される。
【0019】
仕切壁部14の左側の面には、左側に突出する突出筒部14eが設けられる。突出筒部14eは、モータ軸J1を中心とする円筒状である。孔部14aは、突出筒部14eを軸方向に貫通する。突出筒部14eの内部は、孔部14aの内部の一部を構成する。突出筒部14eは、モータ収容部12内に位置する。突出筒部14eの左側の端部には、保持部14fが設けられる。保持部14fは、右側に窪む凹部である。保持部14fは、孔部14aの一部である。より詳細には、保持部14fは、孔部14aの左側の端部である。保持部14fの内径は、孔部14aのうち保持部14fの右側に隣り合う部分の内径よりも大きい。保持部14fには、モータシャフト22を回転可能に支持する第1ベアリング27bが左側から嵌め込まれて保持される。
【0020】
仕切壁部14は、モータ収容部12の内部とギヤ収容部13の内部とを繋ぐ油路14bを有する。油路14bは、仕切壁部14を軸方向に貫通する。本実施形態において油路14bは、軸方向に沿って直線状に延びる。油路14bは、孔部14aよりも下側に位置する。モータ収容部12内のオイルOは、油路14bを介してギヤ収容部13の内部に移動可能である。すなわち、第1オイル溜りOR1のオイルOは、油路14bを介して第2オイル溜りOR2に移動可能である。
【0021】
仕切壁部14のギヤ収容部13側の面には、保持部14cと、保持部14dと、が設けられる。本実施形態において仕切壁部14のギヤ収容部13側の面は、仕切壁部14の右側の面である。保持部14cおよび保持部14dは、左側に窪む凹部である。保持部14cは、孔部14aの一部である。より詳細には、保持部14cは、孔部14aの右側の端部である。保持部14cの内径は、孔部14aのうち保持部14cの左側に隣り合う部分の内径よりも大きい。保持部14cには、モータシャフト22を回転可能に支持する第2ベアリング27cが右側から嵌め込まれて保持される。
【0022】
保持部14dは、左側に窪む凹部である。保持部14dは、保持部14cの上側に離れて位置する。保持部14dには、減速装置30における後述するカウンタシャフト34を回転可能に支持するベアリング35aが右側から嵌め込まれて保持される。
【0023】
ベアリング保持壁部15は、モータ収容部12の内周面から径方向内側に拡がる。ベアリング保持壁部15は、後述するステータ24の左側に位置する。ベアリング保持壁部15によってモータ収容部12の内部は、軸方向に仕切られる。ベアリング保持壁部15は、ベアリング保持壁部15を軸方向に貫通する孔部15aを有する。孔部15aには、車軸AXおよびモータシャフト22が通される。
【0024】
ベアリング保持壁部15は、下側の端部に貫通部15bを有する。貫通部15bは、モータ収容部12の内部のうちベアリング保持壁部15によって軸方向に仕切られた部分同士を繋ぐ。貫通部15bが設けられるため、第1オイル溜りOR1は、モータ収容部12の内部のうちベアリング保持壁部15の軸方向両側の部分に跨って設けられる。
【0025】
ベアリング保持壁部15の右側の面には、保持部15cが設けられる。ベアリング保持壁部15の右側の面は、軸方向に仕切られたモータ収容部12のうち後述するステータ24が収容される側の内部に面する。保持部15cは、左側に窪む凹部である。保持部15cは、孔部15aの一部である。より詳細には、保持部15cは、孔部15aの右側部分である。保持部15cの内径は、孔部15aのうち保持部15cよりも左側に位置する部分の内径よりも大きい。保持部15cには、モータシャフト22を回転可能に支持する第1ベアリング27aが右側から嵌め込まれて保持される。
【0026】
ベアリング保持壁部17は、ギヤ収容部13の内側面のうち下側の底面から上側に延びる。ベアリング保持壁部17は、ギヤ収容部13内において、差動装置50とモータドライブギヤ31との軸方向の間に位置する。ベアリング保持壁部17は、ベアリング保持壁部17を軸方向に貫通する孔部17aを有する。孔部17aには、車軸AXおよびモータシャフト22が通される。
【0027】
ベアリング保持壁部17は、下側の端部に貫通部17bを有する。貫通部17bは、ギヤ収容部13の内部のうちベアリング保持壁部17の軸方向両側に位置する部分同士を繋ぐ。貫通部17bが設けられるため、第2オイル溜りOR2は、ギヤ収容部13の内部のうちベアリング保持壁部17の軸方向両側の部分に跨って設けられる。
【0028】
ベアリング保持壁部17の左側の面には、保持部17cが設けられる。保持部17cは、右側に窪む凹部である。保持部17cは、孔部17aの一部である。より詳細には、保持部17cは、孔部17aの左側部分である。保持部17cの内径は、孔部17aのうち保持部17cよりも右側に位置する部分の内径よりも大きい。保持部17cには、モータシャフト22を回転可能に支持する第2ベアリング27dが左側から嵌め込まれて保持される。
【0029】
なお、図1では簡略化してハウジング11が単一の部材のように示しているが、ハウジング11は、複数の別部材が連結されて構成される。例えば、モータ収容部12とギヤ収容部13とは、互いに別部材であり、仕切壁部14を介して互いに固定される構成であってもよい。この場合、仕切壁部14は、モータ収容部12およびギヤ収容部13と別部材であってもよいし、モータ収容部12と一体成形されていてもよいし、ギヤ収容部13と一体成形されていてもよい。また、モータ収容部12に一体成形された部分とギヤ収容部13に一体成形された部分とが軸方向に連結されて仕切壁部14を構成してもよい。
【0030】
モータ20は、車軸AXを回転させるトルクを出力する。モータ20のトルクは、減速装置30および差動装置50を介して車軸AXに伝達される。本実施形態においてモータ20は、発電機としての機能も兼ね備える。モータ20は、例えば、回生時には発電機として機能する。
【0031】
モータ20は、ロータ21と、ステータ24と、を有する。ロータ21は、モータシャフト22と、ロータ本体23と、を有する。ロータ本体23は、モータシャフト22の外周面に固定される。図示は省略するが、ロータ本体23は、ロータコアと、ロータマグネットと、を有する。
【0032】
モータシャフト22は、モータ軸J1を中心として軸方向に延びる。モータシャフト22は、軸方向両側に開口する中空のシャフトである。図2に示すように、モータシャフト22は、モータ軸J1を中心とする円筒状である。図1に示すように、モータシャフト22は、孔部14aを介して、仕切壁部14を軸方向に貫通する。モータシャフト22の右側の端部は、ギヤ収容部13内に突出する。
【0033】
モータシャフト22は、第1シャフト部材22aと、第2シャフト部材22bと、を有する。第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとは、互いに別部材である。第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとは、互いに連結されてモータシャフト22を構成する。第2シャフト部材22bは、第1シャフト部材22aの右側に連結される。
【0034】
第1シャフト部材22aは、モータ収容部12の内部に位置する。第1シャフト部材22aには、ロータ本体23が固定される。第1シャフト部材22aは、一対の第1ベアリング27a,27bによってモータ軸J1回りに回転可能に支持される。一対の第1ベアリング27a,27bは、転がり軸受である。一対の第1ベアリング27a,27bは、例えば、ボールベアリングである。
【0035】
一対の第1ベアリング27a,27bは、第1シャフト部材22aのうちロータ本体23が固定される部分の軸方向両側に位置する部分のそれぞれを回転可能に支持する。第1ベアリング27aは、ベアリング保持壁部15の保持部15cに保持され、第1シャフト部材22aのうちロータ本体23よりも左側に位置する部分を支持する。第1ベアリング27aの右側の端部は、例えば、ベアリング保持壁部15の右側の面と軸方向において同じ位置に配置される。
【0036】
第1ベアリング27bは、突出筒部14eの保持部14fに保持され、第1シャフト部材22aのうちロータ本体23よりも右側に位置する部分を支持する。すなわち、一対の第1ベアリング27bのうち第2シャフト部材22b側(右側)に位置する第1ベアリング27bは、仕切壁部14に保持される。第1ベアリング27bの左側の端部は、例えば、突出筒部14eの左側の面と軸方向において同じ位置に配置される。
【0037】
第1シャフト部材22aの右側の端部は、突出筒部14eの内部、すなわち孔部14aの内部に挿入される。第1シャフト部材22aの左側の端部は、孔部15aを通ってモータ収容部12の内部のうちベアリング保持壁部15よりも左側の部分に突出する。第1シャフト部材22aの左側の端部は、モータシャフト22の左側の端部である。
【0038】
図2に示すように、第1シャフト部材22aは、第1シャフト部材本体22hと、複数の第1突出部22iと、を有する。第1シャフト部材本体22hは、モータ軸J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。複数の第1突出部22iは、第1シャフト部材本体22hの右側の端部から右側に突出する。すなわち、複数の第1突出部22iは、第2シャフト部材22b側に突出する。複数の第1突出部22iは、周方向に沿って間隔を空けて配置される。本実施形態において複数の第1突出部22iは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。
【0039】
図1に示すように、第2シャフト部材22bは、ギヤ収容部13の内部に位置する。第2シャフト部材22bには、モータドライブギヤ31が固定される。これにより、モータシャフト22には、減速装置30が接続される。第2シャフト部材22bは、一対の第2ベアリング27c,27dによってモータ軸J1回りに回転可能に支持される。一対の第2ベアリング27c,27dは、転がり軸受である。一対の第2ベアリング27c,27dは、例えば、ボールベアリングである。
【0040】
一対の第2ベアリング27c,27dは、第2シャフト部材22bのうち、モータドライブギヤ31が固定される部分の軸方向両側に位置する部分のそれぞれを、回転可能に支持する。第2ベアリング27cは、仕切壁部14の保持部14cに保持され、第2シャフト部材22bのうちモータドライブギヤ31よりも左側に位置する部分を支持する。すなわち、一対の第2ベアリング27c,27dのうち第1シャフト部材22a側(左側)に位置する第2ベアリング27cは、仕切壁部14に保持される。第2ベアリング27cの右側の端部は、例えば、仕切壁部14の右側の面と軸方向において同じ位置に配置される。
【0041】
第2ベアリング27dは、ベアリング保持壁部17の保持部17cに保持され、第2シャフト部材22bのうちモータドライブギヤ31よりも右側に位置する部分を支持する。第2ベアリング27dの左側の端部は、例えば、ベアリング保持壁部17の左側の面と軸方向において同じ位置に配置される。
【0042】
第2シャフト部材22bの左側の端部は、孔部14aの内部に挿入される。第2シャフト部材22bの右側の端部は、孔部17aを通ってベアリング保持壁部17を貫通し、ベアリング保持壁部17よりも右側に突出する。第2シャフト部材22bの右側の端部は、モータシャフト22の右側の端部である。第2シャフト部材22bの軸方向の寸法は、第1シャフト部材22aの軸方向の寸法よりも小さい。第2シャフト部材22bの内径は、第1シャフト部材22aの内径と同じである。第2シャフト部材22bの外径は、第1シャフト部材22aの外径と同じである。
【0043】
図2に示すように、第2シャフト部材22bは、第2シャフト部材本体22jと、複数の第2突出部22kと、を有する。第2シャフト部材本体22jは、モータ軸J1を中心として軸方向に延びる円筒状である。複数の第2突出部22kは、第2シャフト部材本体22jの左側の端部から左側に突出する。すなわち、複数の第2突出部22kは、第1シャフト部材22a側に突出する。複数の第2突出部22kは、周方向に沿って間隔を空けて配置される。本実施形態において複数の第2突出部22kは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。
【0044】
複数の第2突出部22kは、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとが連結された連結状態において、それぞれ周方向に隣り合う第1突出部22i同士の隙間に嵌め合わされる。これにより、複数の第1突出部22iと複数の第2突出部22kとが周方向に噛み合って、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとの相対回転が阻止される。このようにして、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとが連結される。
【0045】
図1に示すように、本実施形態においてモータシャフト22は、モータシャフト22の内部とモータシャフト22の外周面とを繋ぐシャフト貫通孔22c,22d,22e,22f,22gを有する。本実施形態において各シャフト貫通孔22c,22d,22e,22f,22gは、周方向に沿って複数設けられる。シャフト貫通孔22c,22d,22e,22fは、第1シャフト部材22aに設けられる。シャフト貫通孔22gは、第2シャフト部材22bに設けられる。
【0046】
シャフト貫通孔22e,22fは、第1シャフト部材22aのうち仕切壁部14とベアリング保持壁部15との軸方向の間に位置する部分に設けられる。シャフト貫通孔22eは、第1シャフト部材22aのうちロータ本体23よりも左側の部分に設けられる。シャフト貫通孔22fは、第1シャフト部材22aのうちロータ本体23よりも右側の部分に設けられる。シャフト貫通孔22e,22fは、後述するコイル26と径方向に隙間を介して対向する。
【0047】
シャフト貫通孔22cは、第1シャフト部材22aのうち孔部15aに位置する部分に設けられる。シャフト貫通孔22cは、孔部15aの内部に開口する。シャフト貫通孔22dは、第1シャフト部材22aのうち孔部14aに位置する部分に設けられる。シャフト貫通孔22dは、孔部14aの内部に開口する。シャフト貫通孔22gは、第2シャフト部材22bのうち孔部17aに位置する部分に設けられる。シャフト貫通孔22gは、孔部17aの内部に開口する。
【0048】
ステータ24は、ロータ21と隙間を介して径方向に対向する。ステータ24は、ロータ21の径方向外側に位置する。ステータ24は、ステータコア25と、図示しないインシュレータと、複数のコイル26と、を有する。複数のコイル26は、図示しないインシュレータを介してステータコア25に装着される。ステータ24は、モータ収容部12の内部に固定される。ステータ24の下側の端部は、第1オイル溜りOR1に浸漬される。
【0049】
減速装置30は、モータ20の回転速度を減じて、モータ20から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置30は、モータ20から出力されるトルクを差動装置50へ伝達する。減速装置30は、モータドライブギヤ31と、カウンタギヤ32と、ドライブギヤ33と、カウンタシャフト34と、を有する。モータドライブギヤ31は、モータシャフト22のうちギヤ収容部13内に位置する第2シャフト部材22bに固定される。本実施形態においてモータドライブギヤ31は、第2シャフト部材22bの軸方向の中央部分に固定される。
【0050】
カウンタギヤ32は、モータ軸J1と平行なカウンタ軸J2を中心として回転する。カウンタ軸J2は、モータ軸J1の径方向外側に位置する。本実施形態においてカウンタ軸J2は、モータ軸J1の上側に位置する。
【0051】
カウンタギヤ32は、モータドライブギヤ31と噛み合う。カウンタギヤ32は、モータドライブギヤ31の上側に位置する。ドライブギヤ33は、カウンタギヤ32の右側に位置する。ドライブギヤ33は、カウンタギヤ32と共に、カウンタ軸J2を中心として回転する。ドライブギヤ33の外径は、カウンタギヤ32の外径よりも小さい。
【0052】
カウンタシャフト34は、カウンタ軸J2を中心として、モータシャフト22の軸方向に沿って延びる。カウンタシャフト34は、モータドライブギヤ31の上側に位置する。カウンタシャフト34の外周面には、カウンタギヤ32とドライブギヤ33とが固定される。これにより、カウンタシャフト34を介して、カウンタギヤ32とドライブギヤ33とが連結される。カウンタシャフト34は、ベアリング35a,35bによってカウンタ軸J2回りに回転可能に支持される。
【0053】
ベアリング35a,35bは、転がり軸受である。ベアリング35a,35bは、例えば、ボールベアリングである。ベアリング35a,35bは、ギヤ収容部13の軸方向両側の壁部にそれぞれ保持される。ベアリング35aは、ギヤ収容部13の左側の壁部である仕切壁部14の保持部14dに保持され、カウンタシャフト34の左側の端部を支持する。ベアリング35aの右側の端部は、例えば、仕切壁部14の右側の面と軸方向において同じ位置に配置される。ベアリング35bは、ギヤ収容部13の右側壁部18に設けられた保持部18cに保持され、カウンタシャフト34の右側の端部を支持する。ベアリング35bの左側の端部は、例えば、右側壁部18の左側の面と軸方向において同じ位置に配置される。
【0054】
モータ20のモータシャフト22から出力されるトルクは、モータドライブギヤ31、カウンタギヤ32およびドライブギヤ33をこの順に介して差動装置50に伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。本実施形態において減速装置30は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0055】
差動装置50は、減速装置30に接続される。差動装置50は、モータ20から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置50は、車軸AXにトルクを伝達し、車軸AXを差動軸回りに回転させる。差動装置50の差動軸は、モータ軸J1と一致する。車軸AXは、差動装置50を軸方向に挟んで一対設けられる。一対の車軸AXは、軸方向に延びる。車軸AXは、モータ軸J1を中心とする円柱状である。一対の車軸AXのうち左側の車軸AXは、左側壁部16の保持部16bに保持されたベアリング81によって支持される。一対の車軸AXのうち右側の車軸AXは、右側壁部18の保持部18bに保持されたベアリング82によって支持される。ベアリング81,82は、転がり軸受である。ベアリング81,82は、例えば、ボールベアリングである。
【0056】
一対の車軸AXのうち左側の車軸AXは、中空シャフトであるモータシャフト22の内部に通される。そのため、モータ軸J1と差動軸とが同軸に配置されない場合に比べて、駆動装置10を径方向に小型化しやすい。したがって、本実施形態によれば、駆動装置10を小型化できる。一対の車軸AXのうち左側の車軸AXは、モータシャフト22を軸方向に貫通する。
【0057】
一対の車軸AXのそれぞれにおいて、車軸AXの軸方向端部のうち差動装置50と接続される側と逆側の軸方向端部は、ハウジング11から軸方向に突出する。図示は省略するが、一対の車軸AXのそれぞれにおいて、車軸AXのうちハウジング11から突出する軸方向端部には、それぞれ車輪が取り付けられる。
【0058】
なお、本明細書において「差動装置の差動軸が、モータ軸と一致する」とは、差動軸がモータ軸と厳密に一致する場合に加えて、差動軸がモータ軸と略一致する場合も含む。本明細書において「差動軸が、モータ軸と略一致する」とは、モータシャフトの内部に車軸を通すことが可能な範囲で、差動軸がモータ軸に対してずれる、または傾くことを含む。
【0059】
差動装置50は、リングギヤ51と、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。本実施形態においてリングギヤ51は、モータシャフト22およびモータドライブギヤ31の右側に位置する。リングギヤ51は、差動軸(モータ軸J1)を中心として回転する。リングギヤ51は、ドライブギヤ33と噛み合う。これにより、リングギヤ51には、モータ20から出力されるトルクが減速装置30を介して伝えられる。リングギヤ51の下側の端部は、ギヤ収容部13内の第2オイル溜りOR2に浸漬される。すなわち、リングギヤ51の下側の端部は、ハウジング11内のオイルOに浸漬される。これにより、リングギヤ51が回転することで、オイルOが掻き上げられる。掻き上げられたオイルOは、霧状になり、ギヤ収容部13の内部に散布される。これにより、ギヤ収容部13の内部に配置された各部にオイルOを供給することができる。また、モータシャフト22の右側の端部における開口から、モータシャフト22と車軸AXとの隙間にオイルOを供給することもできる。
【0060】
本実施形態によれば、モータシャフト22は、ロータ本体23が固定される第1シャフト部材22aと、モータドライブギヤ31が固定される第2シャフト部材22bと、を有する。そのため、例えば、ロータ本体23が固定された第1シャフト部材22aをモータ収容部12内に配置し、かつ、第2シャフト部材22bをギヤ収容部13内に配置して減速装置30と接続した後に、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとを連結させてモータシャフト22を作製する組み立て方法を採用できる。これにより、モータシャフト22が単一の部材である場合に比べて、モータシャフト22に対する減速装置30の接続作業等を容易にできる。したがって、モータシャフト22に車軸AXが通されて、モータシャフト22の軸線上に差動装置50が配置される構成であっても、駆動装置10の組み立てを容易にできる。
【0061】
また、本実施形態によれば、第1シャフト部材22aを回転可能に支持する一対の第1ベアリング27a,27bと、第2シャフト部材22bを回転可能に支持する一対の第2ベアリング27c,27dと、が設けられている。そのため、モータシャフト22を4つのベアリングによって支持することができる。これにより、モータシャフト22を2つのベアリングで支持する場合に比べて、各ベアリングを小さくしてもモータシャフト22を安定して支持できる。
【0062】
ここで、転がり軸受である各ベアリングの許容回転数は、各ベアリングの内径および外径が大きくなるほど、小さくなる。そのため、各ベアリングを小さくできることで、各ベアリングの許容回転数を大きくすることができ、各ベアリングによって支持されるモータシャフト22の回転数を向上させることができる。これにより、モータ20の出力を向上でき、モータ20を小型化しても必要な出力を得ることができる。したがって、モータ20を小型化することができ、駆動装置10を小型化できる。
【0063】
また、一対の第1ベアリング27a,27bのうち一方の第1ベアリング27bと、一対の第2ベアリング27c,27dのうち一方の第2ベアリング27cとは、仕切壁部14に保持される。ここで、例えば、モータシャフトが単一の部材である場合、仕切壁部14を貫通するモータシャフトの軸方向両側の部分にロータ本体23とモータドライブギヤ31とを固定しつつ、仕切壁部14にモータシャフトを支持するベアリングを配置することは、組み立て上、困難である。そのため、モータシャフトを軸方向両端部に配置された2つのベアリングのみで支持する構造となり、ベアリングを大きくする必要が生じる。
【0064】
これに対して、本実施形態によれば、モータシャフト22は、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとが連結されて構成されている。そのため、上述したように、各シャフト部材を個別に配置した後に連結させる組み立て方法が採用できる。これにより、各シャフト部材を支持する各一対のベアリングの一方を仕切壁部14に保持させることが容易となる。したがって、モータシャフト22が第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとに分割されていることで、仕切壁部14を貫通するモータシャフト22を4つのベアリングによって容易に支持できる。そのため、各ベアリングを小型化して、駆動装置10を小型化することができる。
【0065】
また、本実施形態のように、モータシャフト22の内部に車軸AXが通される場合、モータシャフト22の内径および外径が大きくなりやすい。そのため、モータシャフト22を支持する各ベアリングも大きくなりやすい。したがって、上述したようにして各ベアリングを小型化できる効果は、モータシャフト22の内部に車軸AXが通される構成において特に有用である。
【0066】
クラッチ機構70は、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとが連結された連結状態と、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとの連結が解除された非連結状態と、を切り替える。そのため、クラッチ機構70によって、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとの連結を外して非連結状態とすることで、モータ20の出力が減速装置30および差動装置50に伝達されない状態にできる。これにより、例えば、駆動装置10が停止した状態で車両が駆動装置10以外の他の動力によって走行する場合に、駆動装置10に連結された車輪が回転してもモータシャフト22が回転することを抑制できる。したがって、停止した駆動装置10のモータ20が他の動力の負荷となることを抑制できる。
【0067】
なお、他の動力とは、駆動装置10と同様の駆動装置であってもよいし、エンジンであってもよい。他の動力が駆動装置10と同様の駆動装置である場合、これらの駆動装置は、例えば、車両の前輪を回転させる駆動装置と、車両の後輪を回転させる駆動装置と、を含む。
【0068】
図1および図2においては、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとが連結された連結状態を示す。本実施形態においてクラッチ機構70は、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとの少なくとも一方を軸方向に移動させて連結状態と非連結状態とを切り替える第1アクチュエータ71を有する。本実施形態において第1アクチュエータ71は、例えば、第2シャフト部材22bを軸方向に移動させる。第1アクチュエータ71は、図1および図2に示す連結状態から第2シャフト部材22bを右側に移動させて第1シャフト部材22aから軸方向に離すことで、第1突出部22iと第2突出部22kとの噛み合いを外す。これにより、駆動装置10は、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとの連結が解除された非連結状態となる。このように本実施形態によれば、第2シャフト部材22bを直接的に軸方向に移動させることで第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとの連結を外せるため、クラッチ機構70の部品点数を少なくできる。
【0069】
第1アクチュエータ71は、例えば、リニアアクチュエータである。図1では、第1アクチュエータ71を模式的に示している。図示は省略するが、第1アクチュエータ71は、例えば、ギヤ収容部13に固定される。第1アクチュエータ71は、図示しない電子制御装置によって制御される。
【0070】
駆動装置10は、図示しない電動オイルポンプをさらに備える。電動オイルポンプは、ハウジング11内のオイルOを送る電動式のポンプである。電動オイルポンプは、ハウジング11に固定される。電動オイルポンプは、モータシャフト22と車軸AXとの径方向の隙間にオイルOを供給する。そのため、中空のモータシャフト22に車軸AXが通された構成であっても、電動オイルポンプを駆動させることで、モータシャフト22内へのオイルOの供給量を向上させることができる。これにより、モータ20を好適に冷却することができる。モータシャフト22内に供給されたオイルOは、各シャフト貫通孔22c,22d,22e,22f,22gからモータシャフト22の外部に噴出され、ステータ24および各ベアリングに供給される。
【0071】
駆動装置10は、図示しないインバータをさらに備える。図示しないインバータは、モータ20のステータ24と電気的に接続される。インバータによって、ステータ24に供給される電力を調整可能である。インバータは、例えば、インバータを収容するインバータケースに収容される。インバータケースは、ハウジング11の外側面に固定される。インバータは、図示しない電子制御装置によって制御される。
【0072】
<第2実施形態>
図3および図4に示す本実施形態の駆動装置110のモータシャフト122において、第1シャフト部材122aのうち第2シャフト部材122b側(右側)の端部における外周面には、複数の第1スプライン部122mが設けられる。図示は省略するが、複数の第1スプライン部122mは、径方向外側に突出して軸方向に延び、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。第2シャフト部材122bのうち第1シャフト部材122a側(左側)の端部における外周面には、複数の第2スプライン部122nが設けられる。図示は省略するが、複数の第2スプライン部122nは、径方向外側に突出して軸方向に延び、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。第1シャフト部材122aと第2シャフト部材122bとは、軸方向に隙間を空けて対向して配置される。
【0073】
本実施形態においてクラッチ機構170は、連結筒部材172と、第2アクチュエータ171と、を有する。連結筒部材172は、軸方向両側に開口する筒状である。連結筒部材172は、モータ軸J1を中心とする円筒状である。連結筒部材172は、第1シャフト部材122aおよび第2シャフト部材122bよりも径方向外側に位置する。連結筒部材172は、孔部14a内に配置される。連結筒部材172は、内周面に複数のスプライン溝172aを有する。図示は省略するが、スプライン溝172aは、径方向外側に窪んで軸方向に延び、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。スプライン溝172aは、軸方向両側に開口する。
【0074】
第2アクチュエータ171は、連結筒部材172を軸方向に移動させて、第1シャフト部材122aと第2シャフト部材122bとが連結された連結状態と、第1シャフト部材122aと第2シャフト部材122bとの連結が解除された非連結状態と、を切り替える。図3は、非連結状態を示しており、図4は、連結状態を示している。
【0075】
図3に示すように、非連結状態において、連結筒部材172は、第1シャフト部材122aよりも右側において第2シャフト部材122bの径方向外側に位置し、第2シャフト部材122bを囲んでいる。このとき、スプライン溝172aには、第2スプライン部122nが噛み合っている。非連結状態において、第2シャフト部材122bの左側の端部は、連結筒部材172の内部に挿入され、第1シャフト部材122aの右側の端部は、連結筒部材172の外部に位置する。
【0076】
一方、図4に示すように、連結状態において、連結筒部材172は、第1シャフト部材122aの右側の端部と第2シャフト部材122bの左側の端部との径方向外側に位置し、第1シャフト部材122aおよび第2シャフト部材122bを囲んでいる。連結状態において、連結筒部材172の内部には、第1シャフト部材122aのうち第2シャフト部材122b側(右側)の端部と第2シャフト部材122bのうち第1シャフト部材122a側(左側)の端部とが挿入される。このとき、スプライン溝172aには、第1スプライン部122mと第2スプライン部122nとの両方が嵌め合わされる。これにより、連結筒部材172を介して、第1シャフト部材122aと第2シャフト部材122bとの相対回転が阻止され、第1シャフト部材122aと第2シャフト部材122bとが連結される。第2アクチュエータ171は、図3に示す非連結状態から、連結筒部材172を左側に移動させることで、駆動装置110を図4に示す連結状態にすることができる。第2アクチュエータ171は、例えば、リニアアクチュエータである。
【0077】
本実施形態によれば、第1シャフト部材122aと第2シャフト部材122bとを軸方向に移動させることなく、連結筒部材172を介して、駆動装置110を連結状態と非連結状態との間で切り替えることができる。そのため、第1シャフト部材122aと第2シャフト部材122bとの少なくとも一方を軸方向に移動させる場合に比べて、駆動装置110の状態の切り替えが容易である。
【0078】
また、本実施形態によれば、連結筒部材172によって第1シャフト部材122aと第2シャフト部材122bとの軸方向の隙間を径方向外側から覆うことができる。そのため、モータシャフト122内に供給されたオイルOが第1シャフト部材122aと第2シャフト部材122bとの隙間から外部に漏れることを抑制できる。
【0079】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。第1シャフト部材と第2シャフト部材とは、どのように連結されてもよい。例えば、第1シャフト部材の内径が第2シャフト部材の外径よりも大きく、第2シャフト部材の端部が第1シャフト部材の内部に挿入されて、第1シャフト部材と第2シャフト部材とが連結されてもよい。また、第1シャフト部材と第2シャフト部材とは、解除不能に連結されてもよい。第1シャフト部材と第2シャフト部材とは、それぞれ1つのベアリングで支持されてもよい。この場合、仕切壁部にモータシャフトを支持するベアリングが保持されなくてもよい。
【0080】
クラッチ機構は、第1シャフト部材と第2シャフト部材との連結状態と非連結状態とを切り替えられるならば、特に限定されない。例えば、第1実施形態においてクラッチ機構70の第1アクチュエータ71は、第1シャフト部材22aを移動させて状態を切り替えてもよいし、第1シャフト部材22aと第2シャフト部材22bとの両方を移動させて状態を切り替えてもよい。クラッチ機構は、設けられなくてもよい。本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0081】
10,110…駆動装置、11…ハウジング、12…モータ収容部、13…ギヤ収容部、14…仕切壁部、20…モータ、21…ロータ、22,122…モータシャフト、22a,122a…第1シャフト部材、22b,122b…第2シャフト部材、22i…第1突出部、22k…第2突出部、23…ロータ本体、27a,27b…第1ベアリング、27c,27d…第2ベアリング、30…減速装置、31…モータドライブギヤ、33…ドライブギヤ、50…差動装置、70,170…クラッチ機構、71…第1アクチュエータ、122m…第1スプライン部、122n…第2スプライン部、171…第2アクチュエータ、172…連結筒部材、172a…スプライン溝、AX…車軸、J1…モータ軸
図1
図2
図3
図4