(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】水性フレキソインキ及び印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/107 20140101AFI20231228BHJP
C09D 11/102 20140101ALI20231228BHJP
B41M 1/04 20060101ALI20231228BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C09D11/107
C09D11/102
B41M1/04
B41M1/30 D
(21)【出願番号】P 2022136994
(22)【出願日】2022-08-30
【審査請求日】2023-04-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村上 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】高位 博明
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101593(JP,A)
【文献】特開2020-066698(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112279989(CN,A)
【文献】特表2018-524436(JP,A)
【文献】特開2021-127429(JP,A)
【文献】国際公開第2023/001558(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂を含有する水性フレキソインキであって、
前記バインダー樹脂は、ポリイソシアネート由来の構成単位及びアクリルモノマー由来の構成単位を含み、
前記バインダー樹脂は、コアシェル型ウレタンアクリル樹脂及び/又は、ウレタン樹脂とアクリル樹脂との混合物を含み、
更に、前記バインダー樹脂は、カルボキシル基を有し当該カルボキシル基は、有機アミンを含む塩基性化合物により中和されてなり、
前記ポリイソシアネートが、
イソホロンジイソシアネート及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンであるポリイソシアネート(F1)、並びに、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートであるポリイソシアネート(F2)を含み、
前記
ポリイソシアネート(F1)と、ポリイソシアネート(F2)との質量比が、9:1~5:5である水性フレキソインキ。
【請求項2】
ラベル用である、請求項1に記載の水性フレキソインキ。
【請求項3】
アクリルモノマーが、アルキル基の炭素数が1~4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、請求項1又は2に記載の水性フレキソインキ。
【請求項4】
有機アミンが、アルキルアミンを含む、請求項
1に記載の水性フレキソインキ。
【請求項5】
バインダー樹脂が酸基を有し、その中和率が、100~150%である、請求項1又は2に記載の水性フレキソインキ。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の水性フレキソインキを用いて形成されるインキ層と基材とを含有する、ラベル用印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性フレキソインキ及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や衛生用品の包装印刷には、絵柄を付与する目的で、グラビア印刷、フレキソ印刷等、各種の印刷方式が手法として広く用いられている。中でもフレキソ印刷とは凸版印刷の一種であり、アニロックスロールを介して樹脂製の凸版にインキを付着させ、更に凸版からプラスチック基材等にインキを転移させる印刷方式である。このフレキソ印刷方式は高速印刷性に優れ、インキ転移量が少量であっても細かい文字やシャープな表現を再現することができるため有用である。印刷方式の違いから、フレキソ印刷方式に用いるフレキソインキの設計は、グラビアインキのインキ設計とは異なることが通常である。
【0003】
水性フレキソインキをプラスチックフィルムに印刷する場合、紙基材の様な浸透による乾燥ができないため、乾燥不良に起因して印刷層とプラスチックフィルムとの間でブロッキング(インキが裏移りする現象)が発生する可能性がある。また、水性フレキソインキの印刷では長時間の印刷において、版絡み性などの印刷不良につながるという問題がしばしば起こりうる。ここで、版絡みは、版の凸部だけでなく、凸部の側部やそのほかの部分(凹部)にまでインキが入り込み、凹部に溜まったインキにより、印刷物において本来印刷部分でない箇所にまでインキが転移されてしまう現象である。
【0004】
例えば、特許文献1では、コート紙に印刷されるバインダー樹脂がアクリル系樹脂であり、グリセリン、エチレングリコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを10~50質量%及び水50~90質量%を含有する紙用水性フレキソインキが開示されており、インキ表面張力をコントロールすることで転移性と重ね刷り適性が向上したことが示されている。しかしながら、当該インキではプラスチックフィルムへ印刷した際に媒体を乾燥させにくく、乾燥が不十分であれば塗膜の脆弱化が起こるため、巻き取り時のブロッキングが懸念される。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、プラスチックフィルム用水性フレキソインキに係る発明が記載されている。しかしながら、バインダー樹脂として単にウレタン樹脂のみを用いた場合では、非極性であるプラスチックフィルム基材への密着性に問題があるとともに、インキ被膜が柔軟であることから耐ブロッキング性にも問題があった。
また、各々の樹脂の利点を活かすために、アクリル樹脂とウレタン樹脂の複合化樹脂についても活発に検討されている(特許文献3、特許文献4)。
【0006】
近年では、上記の課題に加えて、インキ塗膜の耐水摩擦性を求められることが多い。耐水摩擦性とは、印刷物が水に濡れ、かつ輸送時等の振動により摩擦が生じた場合の印刷層の損傷に対する耐性であり、この課題は特にラベル用途で求められることが多い。
しかしながら、基材密着性、耐ブロッキング性、耐水摩擦性及び長時間の印刷安定性を同時に満たす水性フレキソインキは未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-146563号公報
【文献】国際公開第2019/102855号
【文献】特開2020-066698号公報
【文献】特開2018-131548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特にプラスチックフィルムに対して、優れた基材密着性、耐水摩擦性、及び耐ブロッキング性を有し、更に長時間の印刷安定性に優れた水性フレキソインキを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、下記に記載の水性フレキソインキを用いることで本願課題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち本発明は、バインダー樹脂を含有する水性フレキソインキであって、前記バインダー樹脂が、ポリイソシアネート由来の構成単位及びアクリルモノマー由来の構成単位を含み、前記ポリイソシアネートが、脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)、及び脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)を含む、水性フレキソインキに関する。
【0011】
また本発明は、脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)と、脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)との質量比F1:F2が、9:1~5:5である、上記の水性フレキソインキに関する。
【0012】
また本発明は、ラベル用である、上記の水性フレキソインキに関する。
【0013】
また本発明は、アクリルモノマーが、アルキル基の炭素数が1~4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む、上記の水性フレキソインキに関する。
【0014】
また本発明は、更に、有機アミンを含む、上記の水性フレキソインキに関する。
【0015】
また本発明は、有機アミンが、アルキルアミンを含む、上記の水性フレキソインキに関する。
【0016】
また本発明は、脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)が、イソホロンジイソシアネート及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む、上記の水性フレキソインキに関する。
【0017】
また本発明は、脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)が、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートを含む、上記の水性フレキソインキに関する。
【0018】
また本発明は、バインダー樹脂が酸基を有し、その中和率が、100~150%である、上記の水性フレキソインキに関する。
【0019】
また本発明は、上記の水性フレキソインキを用いて形成されるインキ層と基材とを含有する、印刷物に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、特にプラスチックフィルムに対して、優れた基材密着性、耐水摩擦性、及び耐ブロッキング性を有し、更に長時間の印刷安定性に優れた水性フレキソインキを提供する事が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を説明するための一例である。本発明の要旨を変更しない限り以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本明細書では、上記水性フレキソインキを単に「インキ」、プラスチックフィルムを単に「フィルム」と称することがあるが同義である。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」との記載は、「メタクリル」又は「アクリル」を表す。同様に、「(メタ)アクリレート」との記載は、「メタクリレート」又は「アクリレート」を表す。
【0023】
本発明は、バインダー樹脂を含有する水性フレキソインキであって、前記バインダー樹脂が、ポリイソシアネート由来の構成単位及びアクリルモノマー由来の構成単位を含み、前記ポリイソシアネートが、脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)、及び脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)を含む、水性フレキソインキに関する。
【0024】
「ポリイソシアネート由来の構成単位及びアクリルモノマー由来の構成単位を含み」とは、ポリイソシアネート由来の構成単位及びアクリルモノマー由来の構成単位を含んでいれば特段の限定は無く、例えば、コアシェル型ウレタンアクリル樹脂その他のウレタンアクリル複合樹脂、ウレタン樹脂とアクリル樹脂との混合物、又は、これらの混合物の態様が好適であるが、これらに限定されない。
【0025】
なお、「ポリイソシアネート由来の構成単位」を含む樹脂としては、ウレタン樹脂やウレタンウレア樹脂、それらの樹脂構造を含む複合樹脂等が挙げられる。「アクリルモノマー由来の構成単位」を含む樹脂は、いわゆるアクリル樹脂、又はその複合樹脂等をいう。
【0026】
また、上記バインダー樹脂において、前記ポリイソシアネートが、脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)、及び脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)を含むことによって、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及び基材密着性の向上などが期待できる。
【0027】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂は、上記要件を備えてなり、ウレタンアクリル複合樹脂、ウレタン樹脂とアクリル樹脂との混合物、及び、これらの混合物からなる群より選ばれる一種以上である態様が好適である。前記ウレタンアクリル複合樹脂としては、コアシェル型ウレタンアクリル樹脂が好適に例示できる。ただし、これらに限定されない。
【0028】
バインダー樹脂の含有率は、顔料濡れやインキ被膜の強度の観点から、インキ総質量中に1~30質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがなお好ましい。
【0029】
<酸基>
バインダー樹脂は酸基を有していることが好ましく、その場合の酸価は、10~110mgKOH/gであることが好ましく、30~60mgKOH/gであることがより好ましく、40~50mgKOH/gであることが更に好ましい。
バインダー樹脂が酸基を有し、その酸価が上記範囲であると、基材密着性及び耐水摩擦性が良好となるため好ましい。
【0030】
<中和率>
バインダー樹脂が酸基を有する場合、当該酸基は、塩基性化合物によって中和されていることが好ましい。当該中和は、バインダー樹脂を用いてインキを製造する前に行ってもよく、バインダー樹脂を含むインキを製造した後、インキに中和剤として塩基性化合物を添加することにより行ってもよく、その両方でもよい。
【0031】
上記中和の際の中和率は、インキ中において100~150%であることが好ましく、120~140%であることがさらに好ましい。上記範囲である場合、印刷時安定性や印刷物の乾燥性に優れる。本明細書中における中和率とは、[(塩基性化合物の有する塩基当量)/(バインダー樹脂の有する酸当量)]×100によって算出される値である。
【0032】
上記中和に用いる塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の有機アミン、アンモニア、金属塩等が挙げられ、中でも、有機アミンが好ましい。
【0033】
これらのうち、特にアルキルアミンを使用することが好ましく、インキ被膜の耐水摩擦性、印刷安定性、及び残留臭気等の点に優れるため、トリエチルアミンであることが更に好ましい。
【0034】
<ウレタンアクリル複合樹脂>
一実施形態において、バインダー樹脂はウレタンアクリル複合樹脂を含むことが好ましく、ウレタンアクリル複合樹脂としては、コアシェル型ウレタンアクリル樹脂、アクリル樹脂部とウレタン樹脂部の交互共重合体、主鎖がウレタン樹脂部で側鎖がアクリル樹脂部又は主鎖がアクリル樹脂部で側鎖がウレタン樹脂部である、いわゆるグラフト重合体等が挙げられるが、コアシェル型ウレタンアクリル樹脂が好適である。
【0035】
ウレタンアクリル複合樹脂総質量中のウレタン樹脂部とアクリル樹脂部の質量比は、9:1~5:5が好ましく、8:2~6:4がより好ましい。
上記範囲であると、本発明のインキを被膜にした際、各々の樹脂の利点である基材密着性、耐ブロッキング性等を、十分に発現させることができる。
【0036】
<アクリル樹脂部>
アクリル樹脂部は、アクリルモノマー由来の構成単位を含む。
アクリル樹脂部を構成するアクリルモノマーとしては、例えば、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールメタクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート等の芳香族系アルキル基含有アクリルモノマー、
更には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル基含有アクリルモノマー、
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基含有アクリルモノマー、
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有アクリルモノマー、
(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド等のアミド基含有アクリルモノマー、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、アリルアルコール等のヒドロキシル基含有アクリルモノマー、
ポリエチレングリコールモノアクリレート(日本油脂社製、ブレンマーPE-90、200、350、350G、AE-90、200、400等)ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノアクリレート(日本油脂社製、ブレンマー50PEP-300、70PEP-350等)、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(日本油脂社製、ブレンマーPME-400、550、1000、4000等)等のポリエチレンオキサイド基含有アクリルモノマーが挙げられる。
なお、アクリルモノマー以外で、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族系モノマーを更に含有することもできる。これらは、単独で用いても二種以上で用いてもよい。
【0037】
上記の中でも、ウレタン樹脂部との相溶性、基材密着性、及び耐ブロッキング性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましく、アルキル基の炭素数が1~4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。すなわち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、及びtーブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる一種以上である。また、上記のヒドロキシル基含有アクリルモノマーを更に含むことも好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率は、アクリル樹脂部を構成するアクリルモノマーの総質量中、60~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましく、80~100質量%であることが更に好ましい。
【0039】
アクリル樹脂部の質量平均分子量は、1,000~1,000,000であることが好ましい。
【0040】
アクリル樹脂部のガラス転移温度は-70℃~110℃であることが好ましく、-30~90℃であることが好ましく、-10~70℃であることが更に好ましい。具体的には、アクリル樹脂部として配合した各モノマーのホモポリマーにおけるガラス転移温度をTg1~Tgm、アクリル樹脂部として使用した各モノマーの質量比率をW1~Wmとしたとき、以下FOX式で表される。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)
W1+W2+…+Wm=1
なお示差走査熱量測定(DSC)による測定値であってもよい。近しい値となるためである。
【0041】
<ウレタン樹脂部>
ウレタン樹脂部は、ポリイソシアネート由来の構成単位を含み、更にポリオール由来の公営単位を含むことが好ましい。
ウレタン樹脂部は、ポリオールとポリイソシアネートとを縮合反応させて形成させることができ、末端にヒドロキシ基を有するものが好ましい。またウレタン樹脂部は、ポリオールとポリイソシアネートとの縮合反応物である末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、鎖延長剤との反応(鎖延長という)により得られるウレタンウレア樹脂部であってもよい。
【0042】
ウレタン樹脂部の質量平均分子量は、1,000~1,000,000であることが好ましく、5,000~50,000がより好ましい。
【0043】
<ポリオール>
ポリオールには、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましく、ポリエーテルポリオール及びカルボキシル基を有するポリオールを含むことがより好ましく、その他ポリオールを含んでいてもよい。
【0044】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合のポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。これらのうち、ポリエチレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0045】
ポリオールがポリエーテルポリオールを含む場合、ポリエーテルポリオールの含有率は、ウレタン樹脂部の総質量中、10~80質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが更に好ましい。
上記範囲であると、基材密着性、樹脂の顔料吸着能力、インキの溶解性、及び潤滑性に優れ
【0046】
ウレタン樹脂部を水媒体中に溶解又は分散させるためには、樹脂骨格中に親水基を導入する必要がある。上記で挙げたポリエーテルポリオールも親水基として有用ではあるが、エチレンオキサイド鎖のみで、水媒体中に溶解又は分散させるためには、樹脂骨格中に大量に導入する必要がある。その場合に、樹脂被膜の耐水性をより向上させるためには、アニオン性基を有するポリオールを、ポリエーテルポリオールと併用することが好ましい。アニオン性基を有するポリオールの中でも、乾燥後の優れた耐性発現の観点から、カルボキシル基を有するポリオールを使用することがより好ましい。
【0047】
<カルボキシル基を有するポリオール>
カルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸等のジメチロールアルカン酸や、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基含有ポリオールは単独、又は複数で使用することができる。
【0048】
ポリオールがカルボキシル基を有するポリオールを含む場合、カルボキシル基を有するポリオールの含有率は、耐水摩擦性の観点から、ウレタン樹脂部総質量中、1~50質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることが更に好ましい。また、ポリエーテルポリオールとカルボキシル基を有するポリオールとの質量比は、9.5:0.5~7:3が好ましく、9:1~8:2がより好ましい。
【0049】
<その他ポリオール>
その他ポリオールとしては、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0050】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸と低分子ジオールの縮合物であることが好ましく、当該低分子ジオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、4-ブタンジオール、1、6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール等の分岐構造を有する低分子ジオールが好ましい。なお、分岐構造を有する低分子ジオールとはジオールの有するアルキレン基の少なくとも一つの水素原子がアルキル基に置換された構造を有するジオールをいう。
【0051】
二塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸あるいはこれらの無水物が好ましい。中でもアジピン酸、セバシン酸、アセライン酸、コハク酸その他の脂肪族二塩基酸などが挙げられる。
【0052】
低分子ジオールとしては上記のものに加え、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール等の脂肪族環構造を有するジオールが好適である。
【0053】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物との反応により得られるものを挙げることができる。ポリカーボネートポリオールを構成するポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネート等を、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネート等を挙げることができる。
【0054】
<ポリイソシアネート>
ポリオールと反応させるポリイソシアネートとして、芳香族、脂肪族、脂環式のポリイソシアネートが用いられる。本発明の水性フレキソインキでは、ポリイソシアネートは、脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)、及び脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)を含む。
【0055】
ポリイソシアネートの含有率は、ウレタン樹脂部総質量中、10~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましく、25~35質量%であることが更に好ましい。
【0056】
<脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)、及び脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)>
本発明の実施形態である水性フレキソインキでは、上記のように脂環式構造を有するポリイソシアネートを2種類用いることを特徴とする。
反応速度や結晶性、及び粘度などの性質が異なる脂環式構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)と脂環式構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)とを任意に組み合わせることによって、ポリイソシアネートの構造単位で基材に対する濡れ性、バランスの取れたインキ被膜の柔軟性の制御をすることができる。
【0057】
ポリイソシアネート(F1)とポリイソシアネート(F2)の質量比F1:F2は、基材密着性や耐水摩擦性の観点から、9:1~5:5であることが好ましく、8:2~6:4であることがより好ましい。
【0058】
<ポリイソシアネート(F1)>
脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を含有する物を用いるが、ジイソシアネート化合物が望ましく、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0059】
<ポリイソシアネート(F2)>
脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)とは、分子内に2個以上のイソシアネート基を含有するものであるが、ジイソシアネート化合物が望ましく、例えば、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネートが挙げられる。
【0060】
<鎖延長剤>
本発明で使用するウレタン樹脂部の合成においては、必要に応じて鎖延長反応をおこなってもよい。鎖延長反応は、イソシアネート基過剰のウレタンプレポリマーを合成した後、ジアミンなど、イソシアネート基と反応する二官能以上の活性水素含有化合物を鎖延長剤として反応させる。この反応は、樹脂溶液の著しい増粘の観点から、樹脂を中和して水性化する際に行う事が好ましい。鎖延長により、ウレタン樹脂の更なる高分子量化が可能である。また、ウレア結合が導入される事で、樹脂の更なる凝集力向上も期待できる。
【0061】
鎖延長剤としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミンヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン及びその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;
ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;
トリメチロールプロパンなどのトリオール類;
ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;
N-(β-アミノエチル)エタノールアミンなどのアミノアルコール類
等の公知の鎖延長剤を使用できる。
単官能のモノアミン又はモノオールを併用すれば、鎖延長の停止による分子量の制御も可能である。
【0062】
<コアシェル型ウレタンアクリル樹脂>
本発明では、ウレタンアクリル複合樹脂が、コアシェル型ウレタンアクリル樹脂の形態であることがより好ましい。コアシェル型ウレタンアクリル樹脂とは、親水性のシェル部と疎水性のコア部からなるコアシェル型の構造を有する複合樹脂である。当該樹脂は、水溶性であっても水性エマルションであってもよいが、粒子が水中に安定分散されたエマルションであることが好ましく、その平均粒子径は60nm~1000nmの範囲になることが好ましく、60nm~400nmの範囲が更に好ましい。なお平均粒子径は動的光散乱法による測定値をいう。
【0063】
コアシェル型ウレタンアクリル樹脂は、アクリル樹脂部がコア部、ウレタン樹脂部がシェル部をそれぞれ構成していることが好ましい。ただし、ウレタン樹脂部をコア部、水溶化したアクリル樹脂部をシェル部として構成されていてもよい。
【0064】
コアシェル型ウレタンアクリル樹脂の質量平均分子量は、シェル部が5,000~50,000、コア部が50,000~1,000,000であることが好ましい。
【0065】
<コアシェル型ウレタンアクリル樹脂の製造方法>
コアシェル型ウレタンアクリル樹脂の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法で製造される。例えば、特許第6565337号に記載されたように、あらかじめ水溶性のウレタン樹脂を公知の手法で製造しておき、その後、ウレタン樹脂の水溶液中にアクリルモノマーを添加し重合させる方法等が挙げられる。
より具体的には、例えば、ポリオールとポリイソシアネートを40~120℃で反応させウレタンプレポリマーを合成し、酸性基を中和し水系媒体に分散させウレタン樹脂水溶液とする。前期ウレタン樹脂水溶液中にアクリルモノマーと重合開始剤を添加し、ウレタン樹脂でアクリルモノマーを内包させた後に、アクリルモノマーを30℃~100℃で重合させることにより得られる。
【0066】
<ウレタン樹脂とアクリル樹脂の混合物>
一実施形態において、バインダー樹脂はウレタン樹脂とアクリル樹脂(A)との混合物であることも好ましい。その場合、公知の方法により合成した樹脂を混合し用いることができる。
【0067】
ウレタン樹脂とアクリル樹脂(A)との混合物総質量中のウレタン樹脂とアクリル樹脂(A)との質量比は、9:1~5:5が好ましく、8:2~6:4がより好ましい。
上記範囲であると、インキ被膜にした際、各々の樹脂の利点である基材密着性、耐ブロッキング性等を、十分に発現することができる。
【0068】
<ウレタン樹脂>
ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとを縮合反応させてなる、末端にヒドロキシ基を有するものが好ましい。またウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとの縮合反応物である末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、鎖延長剤との反応により得られるウレタンウレア樹脂としてもよい。
ポリオールにはポリエーテルポリオール及びカルボキシル基を有するポリオールを含むことが好ましく、その他ポリオールを含んでいてもよい。
ポリイソシアネートは、脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)、及び脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)を含む。
【0069】
ウレタン樹脂に用いるポリオール、ポリイソシアネート、及び鎖延長剤は、上記ウレタンアクリル複合樹脂の説明において例示した化合物を好ましく用いることができる。
【0070】
<ウレタン樹脂の製造方法>
ウレタン樹脂の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法で製造される。例えば、特許第4900136号に記載されたように、有機溶剤を用いずにポリオールとポリイソシアネートとを重合させる方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、は、ポリオ-ル及びポリイソシアネートを仕込んだ後、乾燥窒素で置換し、90℃~220℃で10分~5時間反応させる。その後、冷却しながら中和剤を加えることにより得られる。
【0071】
ウレタン樹脂の質量平均分子量は、5,000~100,000であることが好ましい。
【0072】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂(A)は、アクリルモノマー由来の構成単位を含む。アクリル樹脂を構成するアクリルモノマーは、上記ウレタンアクリル複合樹脂の説明において例示した化合物を好ましく用いることができる。本発明のアクリル樹脂(A)としては、水溶型アクリル樹脂(A-1)や、エマルジョン型(以下Em型と略す)アクリル樹脂(A-2)などが挙げられる。
【0073】
アクリル樹脂(A)は、ウレタン樹脂との相溶性や、基材密着性、及び耐ブロッキング性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むものが好ましく、アルキル基の炭素数が1~4である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことがより好ましい。
【0074】
アクリル樹脂(A)を構成するアクリルモノマーのうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率は、60~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましく、80~100質量%であることが更に好ましい。
【0075】
アクリル樹脂(A)のガラス転移温度は-70℃~110℃であることが好ましく、-30~90℃であることが好ましく、-10~70℃であることが更に好ましい。上記ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)による測定値である。
【0076】
<水溶型アクリル樹脂(A-1)の製造方法>
水溶型アクリル樹脂(A-1)の製造方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合や塊状重合等の公知の方法により製造される。例えば、特許第7030265号に記載されたように、親水性の有機溶剤を含む溶剤中に、アクリルモノマー及び重合開始剤を添加し、還流して重合させる方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、窒素等の不活性ガス下、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、酢酸エステル系溶媒等の水混和性溶剤、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒等の水非混和性溶剤中にアクリルモノマーを添加、混合し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル等を添加して、60~170℃で1~10時間、好ましくは4~8時間共重合させたのち、水、中和剤を加え脱溶剤することにより得られる。
【0077】
水溶型アクリル樹脂(A-1)の質量平均分子量(Mw)は、5,000~30,000である事が好ましい。
【0078】
<Em型アクリル樹脂(A-2)の製造方法>
Em型アクリル樹脂(A-2)は、界面活性剤や高分子分散剤を乳化剤として、アクリルモノマーを乳化重合して得ることができる。例えば、特許6168080号に記載されたように、水溶型アクリル樹脂を乳化剤として用いて重合する方法等が挙げられる。より具体的には、例えば、反応槽に水性媒体と水溶型アクリル樹脂を仕込み、昇温して溶解させる。その後、窒素雰囲気下でアクリルモノマーを滴下しながら、ラジカル重合開始剤を添加する。反応開始後、反応槽の溶液の色が青白くなるので、粒子核の形成が確認できる。アクリルモノマーの滴下完了後、更に数時間反応させる事で目的のEm型アクリル樹脂(A-2)を得ることができる。アクリルモノマーはそのまま反応槽に滴下してもよいし、水性媒体であらかじめ乳化液にしてから滴下してもよい。水溶型アクリル樹脂は水性媒体中で保護コロイド(シェル成分)として働き、生成する粒子核(コア成分)を安定化する。
【0079】
Em型アクリル樹脂(A-2)の質量平均分子量(Mw)は、100,000~600,000である事が好ましい。
【0080】
<水性フレキソインキの製造方法>
本発明の水性フレキソインキは、例えば特開2020-186344号公報に記載されたように、バインダー樹脂、着色顔料及び体質顔料などを水及び規定量の溶剤に溶解及び/又は分散処理(顔料分散)をすることにより製造することができる。その後、得られた分散体に、必要に応じて添加剤、水及び必要に応じ親水性溶剤等を配合することにより、水性フレキソインキを製造することができる。
【0081】
顔料分散に使用する分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。中でも、サンドミル、ガンマミルその他のビーズミルで分散することが好ましい。
【0082】
水性フレキソインキ中に気泡や予期しない粗大粒子などが含まれる場合は、ろ過等の処理を行ってもよく、ろ過器は公知のものを使用することができる。
【0083】
前記方法で製造された水性フレキソインキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はB型粘度計で25℃において測定された粘度である。当該粘度計はトキメック社製などのものが使用できる。
【0084】
<顔料>
顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色の顔料又は有彩色の有機顔料が使用できる。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの有機顔料は、水性フレキソインキ100質量%中、5~30質量%の割合で配合する事が好ましい。また、白の酸化チタンの場合は、水性フレキソインキ100質量%中、10~60質量%の割合で配合することが好ましい。
【0085】
有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンエローなどのキノフタロン系有機顔料、イソインドリンエローなどのイソインドリン系有機顔料、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0086】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86 93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0087】
カーボンブラックの具体例としては、デグサ社製「Special Black350、250、100、550、5、4、4A、6」「PrintexU、V、140U、140V、95、90、85、80、75、55、45、40、P、60、L6、L、300、30、3、35、25、A、G」、キャボット社製「REGAL400R、660R、330R、250R」「MOGUL E、L」、三菱化学社製「MA7、8、11、77、100、100R、100S、220、230」「#2700、#2650、#2600、#200、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750、#650、#52、#50、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#332、#30、#25、#20、#10、#5、CF9、#95、#260」等が挙げられる。
【0088】
酸化チタンの具体例としては、石原産業社製「タイペークCR-50、50-2、57、80、90、93、95、953、97、60、60-2、63、67、58、58-2、85」「タイペークR-820,830、930、550、630、680、670、580、780、780-2、850、855」「タイペークA-100、220」「タイペークW-10」「タイペークPF-740、744」「TTO-55(A)、55(B)、55(C)、55(D)、55(S)、55(N)、51(A)、51(C)」「TTO-S-1、2」「TTO-M-1、2」、テイカ社製「チタニックスJR-301、403、405、600A、605、600E、603、805、806、701、800、808」「チタニックスJA-1、C、3、4、5」、デュポン社製「タイピュアR-900、902、960、706、931」などが挙げられる。
【0089】
<添加剤>
水性フレキソインキに使用できる添加剤としては、硬化剤、ブロッキング防止剤、増粘剤、レオロジー調整剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、表面張力調整剤、中和剤及びポリオレフィン粒子などが好適に挙げられる。
【0090】
<中和剤>
本発明のインキにおけるバインダー樹脂が酸基を有する場合、更に中和剤を含むことが好ましい。中和剤とは、バインダー樹脂における酸基の中和に用いる塩基性化合物である。当該塩基性化合物としては、有機アミン、アンモニア、金属塩等が挙げられ、有機アミンが好ましい。
【0091】
有機アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等が挙げられる。
これらのうち、特にアルキルアミンを使用することが好ましく、インキ被膜の耐水摩擦性、印刷安定性、及び残留臭気等の点に優れるため、トリエチルアミンであることが更に好ましい。
【0092】
<ポリオレフィン粒子>
本発明の水性フレキソインキは、プラスチックフィルム基材のインキ被膜の耐摩擦性とブロッキング性を向上する目的及び水・有機溶剤の乾燥性を向上させる目的で、更にポリオレフィン粒子を含んでもよい。
かかるポリオレフィン粒子は融点が90~140℃であることが好ましく、95~135℃であることがより好ましく、95~125℃であることが更に好ましい。平均粒子径は0.5~10μmであることが好ましく、0.5~8μmであることがより好ましく、0.5~5μmであることが更に好ましい。なお、平均粒子径はコールターカウンター法による測定値である。該当する粒子径及び融点では本発明におけるバインダー樹脂となじんだ強いインキ被膜を形成し、耐水摩擦性の良化を促す。
【0093】
ポリオレフィン粒子の含有率は、水性フレキソインキ総質量中、固形分で0.5~5質量%であることが好ましい。0.5質量%以上で耐水摩擦性が向上し、5質量%以下で使用すると水性フレキソインキの経時安定性も良好となる。
【0094】
ポリオレフィン粒子としては、市販のポリオレフィン粒子を使用することができる。例えば、三井化学社製、ケミパールW100、W200、W300、W310、W306、W400、W401、W4005、W410、W500、WF640、W700、W800、W900、W950、WH201、WP100が挙げられる。
【0095】
<界面活性剤>
また、本発明の水性フレキソインキは、基材へのレベリング性を調節する目的で、各種表面調整剤を含有する事ができる。表面調整剤の含有率は、塗膜物性への影響のバランスを考慮して、水性フレキソインキ100質量%中、固形分換算で0~1.0質量%程度であることが好ましい。
【0096】
表面調整剤としては例えば、日信化学社製、サーフィノール104E,104H、104A、104PA,104PG-50、104S、420、440、465、485、SE,SE-F、PSA-336、61、2502、ダイノール604、607、ビックケミー社製BYK-381、3441、302、307、325、331、333、342、345、346、347、348、349、378、3455が挙げられる。
【0097】
<ヒドラジド添加剤>
また、本発明の水性フレキソインキは、基材への密着性向上や、樹脂の常温架橋(ケト基含有の場合)等の目的で、ヒドラジド系添加剤を含有する事ができる。ヒドラジド系添加剤としては、例えば、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0098】
<親水性溶剤>
さらに本発明の水性フレキソインキは、基材への濡れ性、インキの乾燥性を制御する目的で、親水性溶剤を含有してもよい。
【0099】
親水性溶剤の含有率は、インキのレベリング性、乾燥性の観点から、水性フレキソインキ100質量%中、1~10質量%であることが好ましく、2~5質量%であることがより好ましい。
【0100】
親水性溶剤としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノールなどの一価のアルコール溶剤;
エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;
N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ε-カプロラクタム等のラクタム系溶剤;
ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、出光製エクアミドM-100、エクアミドB-100等のアミド系溶剤が挙げられる。
これらは1種類又は2種以上を併用して用いることができる。
【0101】
<ラベル>
本発明のインキは、特にプラスチックフィルムに対して、優れた基材密着性、耐水摩擦性、及び耐ブロッキング性を有し、更に長時間の印刷安定性に優れることから、ラベル用であることが好ましく、プラスチックラベル用であることがより好ましい。
【0102】
ラベルは少なくとも基材と印刷層とを有し、ラベルの基材は特に限定されず、プラスチックフィルム(プラスチックシート)、合成紙などのプラスチック基材(プラスチック製基材)からなるプラスチックラベル(特に合成紙からなるものは合成紙ラベルと称する場合がある)、紙からなる紙ラベル、織布や不織布からなる布製ラベルなどが挙げられる。中でも、プラスチックラベルが好ましい。また、上記プラスチックラベルとしては、具体的には、ストレッチラベル、シュリンクラベル、ストレッチシュリンクラベル、インモールドラベル、タックラベル、ロールラベル(巻き付け方式の糊付ラベル)、感熱接着ラベル等が挙げられる。中でも、タックラベルが好ましい。
【0103】
<印刷物>
本発明のインキは、フレキソ印刷によってインキ層と基材とを含有する印刷物とすることができ、当該印刷物は、上記ラベル用として好適であり、プラスチックラベル用として更に好適である。
【0104】
<印刷物の製造方法>本発明のインキからなるインキ層と基材とを含有する印刷物は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム基材(例えば、処理ポリエチレンテレフタラート(東洋紡社製 E-5100))上に、セントラルインプレッション(CI)型のフレキソ印刷機を利用してアニロックスロール及び樹脂版によって印刷速度100m/分で印刷し、乾燥して得られた印刷物を24時間、40℃でエージングした後取り出して得ることができる。
【0105】
水性フレキソインキの乾燥工程においては、基材に悪影響を及ぼさない範囲であれば任意の温度をかける事が可能である。フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷においては、40~100℃の低温乾燥で1~200秒の範囲で処理する事が一般的である。
【0106】
<フレキソ印刷方法>(アニロックスロール)
本発明の印刷物の製造に使用されるアニロックスとしては、セル彫刻が施されたセラミックアニロックスロール、クロムメッキアニロックスロール等を使用することができる。優れたドット再現性を有する印刷物を得るために印刷する際に使用する版線数の5倍以上好ましくは6倍以上の線数を有するアニロックスロールが使用される。例えば、使用する版線数が75lpiの場合は375lpi以上のアニロックスが必要であり、版線数が150lpiの場合は750lpi以上のアニロック
スロールが必要である。アニロックス容量については本発明の水性フレキソインキの乾燥性とブロッキング性の観点から1-8cc/m2の容量、好ましくは2~6cc/m2のアニロックスロールである。
【0107】
<フレキソ印刷方法>(フレキソ版)
本発明の印刷物の製造に使用されるフレキソ版としては、UV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版またはダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーニング線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
【0108】
<フレキソ印刷方法>(印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることができ、適宜の印刷機を使用することができる。
【0109】
<基材>
本発明の水性フレキソインキは、低温乾燥条件下においても、ポリエチレンテレフタラートやポリプロピレン等のポリオレフィン等のプラスチックフィルム基材において、処理面・未処理面ともに、良好な基材密着性、耐水摩擦性や耐ブロッキング性を発現する。
【0110】
本発明の印刷物における基材はプラスチック基材であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、ナイロン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロハン、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状の基材が挙げられ、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0111】
また、シリカ、アルミナ、アルミニウムなどの無機化合物をポリエチレンテレフタレート、ナイロンフィルムに蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコールなどによるコート処理を施されていてもよい。
【0112】
基材は、印刷される面(印刷層と接する面)が易接着処理されていることが好ましく、易接着処理とは、例えば、コロナ放電処理、紫外線/オゾン処理、プラズマ処理、酸素プラズマ処理、プライマー処理等が挙げられる。例えばコロナ放電処理では基材上に水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等が発現する。これらの官能基は、インキ中の樹脂が水酸基等の官能基を有する場合に、それらと水素結合を形成することができる。
【実施例】
【0113】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。なお、実施例4、5、12、13、20,21、27、28は参考例である。
【0114】
<酸価>
樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数。乾燥させた水溶性樹脂(A)について、JIS K2501に記載の方法に従い、水酸化カリウム・エタノール溶液で電位差滴定をおこない算出した。
【0115】
<質量平均分子量>
質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポ
リスチレン換算の値である。乾燥させた樹脂の水分散体又は水溶液をテトラヒドロフランに溶解させ、0.1%の溶液を調製し、東ソー製HLC-8320-GPC(カラム番号M-0053分子量測定範囲約2千~約400万)により質量平均分子量を測定した。
【0116】
<粒子の平均粒子径>
ベックマンコールター社製 コールターマルチサイザーを用いて、コールターカウンター法による粒子分布測定法で測定した。測定範囲は0.4~1600(μm)である。
【0117】
(合成例1)コアシェル型ウレタンアクリル樹脂(PUA01)の合成
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、温度計を備えた反応容器に、PEG2000(数平均分子量2000のポリエチレングリコール)45.0部、PTG2000(数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール)67.5部、2,2-ジメチロールプロピオン酸22.5部、イソホロンジイソシアネート70.0部、メチレンビス(4,1‐シクロヘキシレン)=ジイソシアネート30.0部、NMP500.0部を仕込み、触媒としてジブチルスズジラウリレート2.0部を添加後、窒素雰囲気下、80~90℃で、6時間加熱した。反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン11.9部を添加・混合した。反応混合物を、強攪拌下のもと水1288部の中に加えた。ついで、イソホロンジアミン85.0部を加えて、ウレタン樹脂溶液を得た。
得られたウレタン樹脂溶液350部に、アクリル酸3.0部、アクリル酸メチル7.0部、メタクリル酸メチル13.0部、メタクリル酸ブチル7.0部、水90.0部を加え、50℃に加温した。次に、1質量%アスコルビン酸水溶液9.5部と、7質量%過酸化ブチル水溶液2.5部とを加えた。発熱が収まった後、50℃で加熱し留去して調整し、固形分20%のウレタンアクリル複合樹脂の水溶液(PUA01)を得た。得られたウレタンアクリル複合樹脂(PUA01)の酸価は43.8mgKOH/g、質量平均分子量(Mw)は550,000であった。
【0118】
(合成例2~9及び比較合成例1~2)コアシェル型ウレタンアクリル樹脂(PUA02~PUA11)の合成
表1に示す各原料及び比率を用いた以外は合成例1と同様の方法にて、ウレタン樹脂PUA02~PUA11を合成した。
【0119】
【0120】
(合成例10)ウレタン樹脂(PU01)の合成
温度計、撹拌機、還流冷却管、撹拌装置、還流器を備えた反応容器に窒素ガスを導入しながら、PEG2000(数平均分子量2000のポリエチレングリコール)30.0部、PTG2000(数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール)60.0部、2,2-ジメチロールプロピオン酸12部及びイソホロンジイソシアネート21.0部、1,4-ジシクロヘキシレンジイソシアネート9.0部を仕込み、90℃、3時間反応させた。冷却後、得られた水溶性樹脂にトリエチルアミン6.3部とイオン交換水553.2部の混合溶液を徐々に滴下して中和することにより水溶化し、固形分20%のウレタン樹脂の水溶液(PU01)を得た。得られたウレタン樹脂(PU01)の酸価は38.0mgKOH/g、質量平均分子量(Mw)は40,000であった。なお、酸価、質量平均分子量(Mw)は前述の方法で測定した。
【0121】
(合成例11~17及び比較合成例3~4)ウレタン樹脂(PU02~PU10)の合成
表2に示す各原料及び比率を用いた以外は合成例10と同様の方法にて、ウレタン樹脂PU02~PU10を合成した。
【0122】
【0123】
表1及び表2の各原料化合物の略号は、以下のそれぞれの化合物を示す。
PEG2000:ポリエチレングリコール(数平均分子量2000)
PTG2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)
DMPA:2,2-ジメチロールプロピオン酸
IPDI:イソホロンジイソシアネート:脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)
水添XDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン:脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)
水添MDI:メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネート:脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)
IPDA:イソホロンジアミン
【0124】
(合成例18)水溶型アクリル樹脂(PA01)の合成
撹拌機、冷却管、温度計、窒素ガス導入管及び滴下ロートを備えた反応器に、イソプロピルアルコール/酢酸エチル(=1/1(質量比))の混合溶媒1400部を仕込み、75~78℃に加熱した後、窒素ガスを導入しながらこれにアクリル酸25部、アクリル酸ブチル70部、メタクリル酸メチル130部、メタクリル酸ブチル70部及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2部の混合物を滴下ロートより3時間かけて滴下した。さらに滴下終了後還流温度で3時間重合させて反応を完結させ、カルボキシル基に対して1.0当量のトリエチルアミンを含むイオン交換水を加え、IPA、酢酸エチルを留去して調整し、固形分20%のアクリル樹脂の水溶液(PA01)を得た。得られたアクリル樹脂の酸価は65.5mgKOH/g、質量平均分子量(Mw)は21,000であった。
【0125】
(合成例19)水溶型アクリル樹脂(PA02)の合成
表3に示す各原料及び比率を用いた以外は合成例18と同様の方法にて、アクリル樹脂(PA02)を合成した。
【0126】
(合成例20)Em型アクリル樹脂(PA03)の合成
攪拌器、温度計、2つの滴下ロート、還流器を備えた反応容器に窒素ガスを導入しながら、合成例19で調製した固形分20%の水溶型アクリル樹脂(PA01)溶液150部仕込み、温度80℃まで昇温した。次に、2つの滴下ロートにおいて、一方からは、アクリル酸ブチル7部、メタクリル酸メチル13部、メタクリル酸ブチル7部を2時間かけて滴下した。もう一方からは、過硫酸アンモニウム20%水溶液2.0部を2時間かけて滴下した。滴下完了後、更に4時間反応させてEm型アクリル樹脂(PA03)溶液を得た。イオン交換水により、Em型アクリル樹脂(PA03)溶液の固形分を20.0%に調整した。得られたEm型アクリル樹脂(PA03)の酸価は34.5mgKOH/g、質量平均分子量(Mw)は250,000であった。
【0127】
【0128】
(実施例1)水性フレキソインキ(INK1)の製造
顔料[タイペークCR80 石原産業社製]38.0部、合成例1のウレタンアクリル樹脂(PUA01)50.0部、イオン交換水2.0部、表面調整剤[サーフィノール420 日信化学工業社製]0.4部、アジピン酸ヒドラジド0.3部、イソプロパノール2.0部を加え、撹拌機で10分撹拌したのち、ビーズミル分散機であるアイガーミル(アイガー社製 ビーズミル)を使用して10分間で分散処理し、顔料分散液を得た。前記顔料分散液に、三井化学社製ケミパールW500(固形分40.0%)3.0部、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)2.0部、トリエチルアミン2.7部を加えた後、混練して目的の水性フレキソインキ(INK1)を得た。
【0129】
(実施例2~33及び比較例1~6)水性フレキソインキ(INK2~39)の製造
表4及び表5に示す各原料及び比率を用いた以外は上記実施例1と同様の方法でアイガーミル(アイガー社製 ビーズミル)を使用して10分間で分散処理し、実施例2~33及び比較例1~6のインキINK2~39を作製した。
【0130】
<水性フレキソインキ組成物の評価>
水性フレキソインキ組成物を、フレキシプルーフ100(アニロックスロール500LPI/6.0cc)を用いて、PET基材(処理面)に塗工した。塗工後、基材をオーブンで25℃・1日でエージングし、評価用の印刷物塗膜を得た。これを用いて、基材密着性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性を実施した。表4及び表5にその結果を示す。
【0131】
[基材密着性]
印刷物塗膜にセロハンテープ(ニチバン社製18mm幅)を貼り付け、圧着ローラー(質量5kg)で1往復させた後に、垂直方向に剥離試験をおこない、インキの剥がれた面積の割合から基材密着性について評価した。
評価基準は以下の通りである。
A;インキの剥がれがない(優良)
B;インキの剥がれがややある(10%未満)(良好)
C;インキの剥がれがある(10%以上、30%未満)(使用可)
D;インキの剥がれがかなりある(30%以上)(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0132】
[耐水摩擦性]
印刷物塗膜を1分間水に浸漬させた。浸漬後、摩擦子にカナキン(JIS L 0803)を用い、水をたらした塗膜表面を学振試験機(テスター産業社製)により、荷重500gで500往復させた。インキの剥がれた面積の割合から耐水摩擦性について評価した。評価基準は以下の通りである。
A;インキの剥がれがない(優良)
B;インキの剥がれがややある(5%未満)(良好)
C;インキの剥がれがある(5%以上、30%未満)(使用可)
D;インキの剥がれがかなりある(30%以上)(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0133】
[耐ブロッキング性]
上記で得られた印刷物について、印刷物の塗工面とPET基材のコロナ非処理面を重ね、荷重10kg/cm2を負荷し、温度40℃-湿度80%RHの環境で24時間経過後、印刷物と重ね合わせたPET基材を剥がし重ねた基材との剥離抵抗又はインキの転移を以て耐ブロッキング性を評価した。
A:剥離抵抗がなく、印刷層の転移がない(優良)
B:弱い剥離抵抗があるが、印刷層の転移がない(良好)
C:やや強い剥離抵抗があるが、印刷層の転移がない(使用可)
D:印刷層から基材フィルム非処理面への転移が目視で認められる(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0134】
[印刷安定性]
セントラルインプレッション(CI)型のフレキソ印刷機を利用して印刷速度100m/分でアニロックスロールを6時間空転させ、インキの液温25℃における運転前と運転後の粘度の変動値をザーンカップ#4(離合社製)で測定し、印刷安定性を評価した。
A:粘度の変動値が±1.0秒である(優良)
B:粘度の変動値が±3.0秒である(良好)
C:粘度の変動値が±5.0秒である(使用可)
D:粘度の変動値が±10.0秒である(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0135】
【0136】
【0137】
<評価結果>
表4及び表5に示される通り、実施例では基材密着性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及び印刷安定性の全てが実用レベルであるインキが得られ、プラスチックフィルム基材上へのフレキソ印刷に適したインキであることが確認できた。一方、表4及び表5に示されるとおり、比較例のインキは、基材密着性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性、及び印刷安定性のうちのいずれか一つ以上において実用レベルに満たないものであった。
【要約】
【課題】本発明は、特にプラスチックフィルムに対して、優れた基材密着性、耐水摩擦性、及び耐ブロッキング性を有し、更に長時間の印刷安定性に優れた水性フレキソインキを提供する事を目的とする。
【解決手段】
バインダー樹脂を含有する水性フレキソインキであって、前記バインダー樹脂が、ポリイソシアネート由来の構成単位及びアクリルモノマー由来の構成単位を含み、前記ポリイソシアネートが、脂環構造を1つ有するポリイソシアネート(F1)、及び脂環構造を2つ有するポリイソシアネート(F2)を含む、水性フレキソインキ。
【選択図】なし