(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】リングギアの内径測定装置とこの内径測定方法及びその矯正方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/12 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
G01B11/12 Z
(21)【出願番号】P 2020194730
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】392036131
【氏名又は名称】株式会社フジテクノ
(72)【発明者】
【氏名】関 隆史
(72)【発明者】
【氏名】武内 隆
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-202315(JP,A)
【文献】特開昭60-142201(JP,A)
【文献】特開平03-033606(JP,A)
【文献】実開昭56-161508(JP,U)
【文献】特開昭51-046153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ変位計による環状体であるリングギアの内径測定装置に
係わり、ゼロ校正用のマスターリングと実測定するリングギアとを交換可能に載せるターンテーブルと、上記ターンテーブル
の外側部に配置されマスターリング及びリングギアの内径壁とその微細距離変位を計測するレーザ変位計と、上記ターンテーブルを回転駆動するサーボモータとこの回転制御駆動部と、上記レーザ変位計から得られたマスターリング及びリングギアの内径測定値とター
ンテーブルの
回転角度位置からリングギアの楕円長径量とその
位相値を計算処理する演算制御部と
からなり、上記ターンテーブル上には、該ターンテーブルの嵌合座面に僅かなクリアランスでマスターリング又はリングギアを交互に載せ、且つマスターリング又はリングギアの内径壁の3ヶ所を押圧ガイドするボールプランジャーからなる位置決め機構が配置され、上記ターンテーブルの単位回転角度毎に数値制御して回転動するサーボモータの回転制御駆動部と、上記レーザ変位計からのレーザ光線をマ
スターリング又はリングギアの内径壁面に照射させるとともにその反射光線を入力して距離測定機能を支配する入出力制御部と、上記入出力制御部に対して計測指令するとともにレーザ変位計が計測したマスターリング及びリングギアの内径壁面との距離とその微細距離変位値を入力するとともに上記回転制御駆動部からのターンテーブルの単位回転角度値を入力することでリングギアの楕円長径量とその位相値とを計算処理する演算制御部とを具備したリングギアの内径測定装置
において、
上記レーザ変位計により計測されるマスターリング及びリングギアの全周内径に係わる微細距離変位値と、サーボモータによるターンテーブルの単位回転角度位置となるマスターリング及びリングギアの各回転角位置値と、を入力してデジタル計算処理する演算制御部は、先ず、上記マスターリングの内径計測値により直径算出基準のゼロ校正し、続いてリングギアの内径計測値とその変位値を入力し、上記変位値からリングギアの1回転1周期波形解析により同芯度ズレ量算出し、また内径計測値とマスターリング直径との差分にて楕円矯正後の想定円を算出し、続いて1回転2周期情報を2回転分に分割計算して楕円矯正時の方向と矯正荷重決定から楕円長径量と長径・短径との位相値算出を実行することを特徴とするリングギアの内径測定方法。
【請求項2】
上記請求項1のリングギアの内径測定
方法において、上記演算制御部は、上記リングギアの溶接部をレーザ変位計で検出された溶接部の測定値をネグレクト(排除処理)した内径寸法を実測値とし、該実測値によりリングギアの全周内径値を演算処理することを特徴とするリングギアの内径測定方法。
【請求項3】
上記請求項1のリングギアの内径測定
方法において、1回転2周期情報を2回転分に分割計算して楕円長径量とその長径・短径位相を算出し、この算出結果に基づき、真円に矯正する矯正部材に対して楕円矯正時の方向と矯正荷重を設定し、一対の圧縮矯正手段は、リングギアの長径・短径位相の長径側と対面させ、その楕円長径量を消去すべく対応した少なくとも押圧力でリングギアの長径側を圧縮矯正するとともに短径側を拡径矯正させることを特徴とするリングギアの矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の内径計測の対象部材は、棒材から円形に形成した環状体であって、具体的には外周に歯車を設けたリングギアの内径測定技術に係り、特に生産ライン上でも正確な測定が可能なレーザ変位計によるリングギアの真円度と内径測定とを求めるべく、リングギアの内径測定装置とこの内径測定方法及び矯正方法を開発したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面形状や円弧加工物の内外の表面形状を精密に測定するには、触子で表面形状をトレースする門型の三次元測定装置が、古くから一般的に知られている。しかし、最近はレーザ変位計で三次元の表面形状(物品の内径測定、外径測定他)を数値データとすべく、レーザ変位計と測定物の測定点との距離を測定数値として読み取り、ワーク旋回や移動の位置情報から形状測定する技術が開発されている。即ち、内径測定装置とその測定方法が提案されている。
【0003】
上記レーザ変位計による内径測定装置の公知例について、順次説明する。先ず、管状体内表面検査装置及び管状体内表面検査方法は、管状体の内径に変化が生じた場合でも、内表面に照射された環状光を確実に撮像することができ、従来と同様に、管状体の内表面における欠陥の有無を検査することができる。
その構成は、管状体内表面検査装置2では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、管状体1の管内径Dの変化に追従して、その都度、撮像部21とレーザ光照射部22との間の距離を調整できる。よって、管状体内表面検査装置2では、管状体1の管内径Dに変化が生じた場合でも、環状レーザ光L1を確実に撮像することができ、従来と同様に、管状体1の内表面1aにおける欠陥の有無を検査するものである(特許文献1)。
【0004】
また、測定対象における測定孔の内径の測定精度を高めることができる内径測定装置がある。その構成は、内径測定装置1は、レーザ変位計2及び光学鏡筒5を回転させて、測定対象8における測定孔81の内径を測定するよう構成されている。回転機構4は、レーザ変位計2、ケース本体部3、光学鏡筒5、偏心スライド機構51等を、ケース本体部3内を通過する光軸中心線C1の回りに一体的に回転させる。演算手段71は、光学鏡筒5が測定対象8の測定孔81に配置された状態で、偏心量検出手段52から送られる偏心量Rの情報を利用して、受光器27によって合焦が検出されるときの、結像レンズ65から測定孔81の内壁面までの焦点距離を測定するとともに、回転機構4を回転させて測定孔81の周方向の各点について行った焦点距離の測定結果に基づいて測定孔81の内径を算出するものである(特許文献2)。
【0005】
また、計測値に個人差が少なく、効率的に高精度に計測ができ、計測システムの小型化、丸穴内部に挿入する測定装置も省容積化を計る。その構成は、半導体レーザに代表される発光素子と光位置検出素子(PSD)やCCDに代表される受光素子を一つの対とすれば、三対の発光素子と受光素子(4aと7a、4bと7b、4cと7c)を一つのセンサヘッド2に収納し、集積化を計り、このセンサヘッドを丸穴の内部に挿入させる。三対の光素子と受光素子は、丸穴内部の円周に向かってビーム光a、b、cを三方向に照射し、丸穴内部の円周で乱反射したスポット光A、B、Cの一部を受け、受光素子上に結んだスポット光の位置より、光学的三角測量方式を応用して、センサヘッド中心から丸穴内部の円周面までの三方向の変位量を測定するものである(特許文献3)。
【0006】
また、最近、ハンデイプローブの三次元測定機なる商品が存在し、誰でもどこでも3次元測定が可能で、多彩な測定項目を持つものである(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-60722号公報
【文献】特開2014-126306号公報
【文献】実用新案登録第3078078号公報
【文献】WEBの「三次元測定機ならキーエンス他」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1は、管状体内表面検査装置及び管状体内表面検査方法である。しかし、本発明の課題は、棒材から円形に形成した環状体であって、例えば外周に歯車を設けたリングギアにおいて、この内径測定技術に係り、特に生産ライン上でも正確に測定出来るようレーザ変位計によるリングギアの内径測定装置とこの内径測定方法である。従って、この文献1の課題とは全く異なるから、この技術的手段の開発に対して先行技術ではない。
【0009】
特許文献2は、内径測定装置であるものの、その構成は、レーザ変位計及び光学鏡筒を回転させて、測定対象における測定孔の内径を測定するよう機能されている。この内径測定装置は、本発明の課題となる技術的手段やその目的は全く異なる。
【0010】
また、特許文献3は、三対の発光素子と受光素子を一つのセンサヘッドに収納し、集積化を計り、このセンサヘッドを丸穴の内部に挿入させるタイプである。この方式は、光学的三角測量方式を応用して、センサヘッド中心から丸穴内部の円周までの三方向の変位量を測定するものであるから、本発明とは全く異なる技術内容である。
【0011】
また、WEBで観られるハンデイプローブの三次元測定機なる商品が存在し、誰でもどこでも3次元測定が可能で、多彩な測定項目を持つものである。しかし、本発明とは全く異なる技術的手段であるから、本発明には適用出来ず、全く異なる技術内容である。
【0012】
本発明は、上記特許文献1~3等にみられる技術内容とは異なり、これらの従来技術手段を適用することなく、新規な課題となるリングギアに代表される環状体の内径測定装置とその内径測定方法と歪みを矯正する新規発明を達成したものである。即ち、レーザ変位計により、マスターリングとリングギアとの測定値(楕円長径量とその長径・短径の位相値から内径と真円度)を読み取るとともに、その歪みの修正機能を持つ矯正手段により的確に真円状態に矯正可能とした。即ち、リングギアの真円度と内径値を検知する為の新規な内径測定装置とこの内径測定方法及びその矯正方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1のリングギアの内径測定方法は、レーザ変位計による環状体であるリングギアの内径測定装置に係わり、 上記レーザ変位計により計測されるマスターリング及びリングギアの全周内径に係わる微細距離変位値と、サーボモータによるターンテーブルの単位回転角度位置となるマスターリング及びリングギアの各回転角位置値と、を入力してデジタル計算処理する演算制御部は、先ず、上記マスターリングの内径計測値により直径算出基準のゼロ校正し、続いてリングギアの内径計測値とその変位値を入力し、上記変位値からリングギアの1回転1周期波形解析により同芯度ズレ量算出し、また内径計測値とマスターリング直径との差分にて楕円矯正後の想定円を算出し、続いて1回転2周期情報を2回転分に分割計算して楕円矯正時の方向と矯正荷重決定から楕円長径量と長径・短径との位相値算出を実行することを特徴とする。
【0014】
請求項2のリングギアの内径測定方法は、上記請求項1のリングギアの内径測定方法において、上記演算制御部は、上記リングギアの溶接部をレーザ変位計で検出された溶接部の測定値をネグレクト(排除処理)した内径寸法を実測値とし、該実測値によりリングギアの全周内径値を演算処理することを特徴とする。
【0015】
請求項3のリングギアの内径矯正方法は、上記請求項1のリングギアの内径測定方法において、1回転2周期情報を2回転分に分割計算して楕円長径量とその長径・短径位相を算出し、この算出結果に基づき、真円に矯正する矯正部材に対して楕円矯正時の方向と矯正荷重を設定し、一対の圧縮矯正手段は、リンギアの長径・短径位相の長径側と対面させ、その楕円長径量を消去すべく対応した少なくとも押圧力でリングギアの長径側を圧縮矯正するとともに短径側を拡径矯正させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1のリングギアの内径測定方法によると、リングギアの内径測定装置を作動させて、上記レーザ変位計とターンテーブル上に置かれたマスターリングによりリングギアの内測定である楕円長径量・楕円短径量とその位相値から真円度と溶接部とが高精度に測定できる効果が発揮される。
【0024】
本発明の請求項2のリングギアの内径測定方法によると、上記請求項1のリングギアの内径測定方法において、上記演算処理部は、上記リングギアの溶接部をレーザ変位計で検出された溶接部の測定値をネグレクト(排除処理)した内径寸法を実測値とし、該実測値によりリングギアの全周内径値を演算処理するから、溶接部に関係無く、リングギアの全周内径値をノイズ無く正確に演算処理できる効果が発揮される。
【0025】
本発明の請求項3のリングギアの矯正方法は、上記請求項1のリングギアの内径測定方法において、1回転2周期情報を2回転分に分割計算して楕円矯正時の方向と矯正荷重から楕円長径量とその長径・短径位相の算出結果に基づき、真円に矯正する矯正部材となる一対の圧縮矯正手段は、リングギアの長径・短径位相の長径側と対面させ、その楕円長径量を消去すべく対応した少なくとも押圧力でリングギアの長径側を圧縮矯正するとともに短径側を拡径矯正し、歪んだリングギアの真円矯正が正確に実施できる効果が発揮される。
【0027】
以上のように、本発明によるリングギアの内径測定装置とこの内径測定方法及びその矯正方法によると、(1)歪んだ環状体、例えばリングギアを真円とする芯出しが容易に実施できる。(2)楕円変形したリングギアの歪みの計算処理が容易に実施できる。(3)従来の触子からなる3次元測定機よりも優位性が高い。(4)リングギアの生産ラインに導入できる。(5)レーザ変位計と演算処理部により、リングギアの溶接部の状態検査と排除処理計算ができる。(6)リングギアの楕円歪量とその角度位置との関係から、真円への矯正作業が容易となる。(7)リングギアは、内径測定装置のターンテーブルへの装着が簡便にしてラフで良い。等々の生産ラインでの優位性が発揮される新技術であり、以下の実施態様により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】 本発明の実施形態を示し、リングギアの内径測定装置の断面図と制御系図である。
【
図2】 本発明の実施形態を示し、マスターリングとリングギアの作用断面図である。
【
図3】 本発明の実施形態を示し、各リングとターンテーブルの平面図と測定線図である。
【
図4】 本発明の実施形態を示し、内径測定処理のフローチャート図である。
【
図5】 本発明の実施形態を示し、測定原理図と測定値算出イメージ線図である。
【
図6】 本発明の実施形態を示し、測定結果の校正円と楕円の線図である。
【
図7】 本発明の実施形態を示し、楕円変形のリングギアを矯正する原理図である。
【
図8】 本発明の実施形態を示し、楕円変形を矯正するフローチャート図である。
【
図9】 本発明の実施形態を示し、楕円変形のリングギアを矯正する他の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1から
図9を参照して本発明の実施形態となる環状体
のリングギアの内径測定装置100
による新規な内径測定方法(図4)とその実施図、更に矯正方法(図8)とその実施図及びその他の実施図により順次説明する。
【実施例】
【0030】
本発明の第1実施の形態となる内径測定装置100について、その実施形態を
図1~
図3で示す。先ず
図1と
図2において、この機台F上には、1つのターンテーブル(回転体)2と、このターンテーブル2の回転中心に設けた支軸3を回転自在に支持する軸受体4と、上記支軸3の下端に連結された機台Fの底部には、サーボモータ(エンコーダー機能付き・数値制御モータ)Mを備えている。このサーボモータMは、駆動制御される数値制御系の回転制御駆動部CCに繋がれている。また、機台F上のターンテーブル2よりも外側上部には、機台Fに取付けたフレーム1にレーザ光線反射式のレーザ変位計Lを配置している。上記レーザ変位計Lは、例えば、市販されているキーエンス社製ものが使用される。繰返し精度が0.1μmと高精度である。勿論、これ以下の繰返し精度でも良い。
【0031】
上記機台F上に配置したターンテーブル2は、
図2に見るように、その外周上縁2aがリング状に凹んでいる。上記ターンテーブル2の中央上面2bの外周面となる外周上縁2aには、ゼロ校正用のマスターリングMLと、内径計測されるリングギアLGとが交換可能に若干の隙間(例えば、Φ274.6mm、クリアランス0.55mm)の元に嵌合する。
【0032】
上記マスターリングMLと計測されるリングギアLGとは、ほぼ同じ肉厚寸法である。上記両部材ML,LGの肉厚は、上記ターンテーブル2の外周縁2aの窪み寸法よりも約2倍高い寸法関係になっている。これにより、
図2(a)(b)に見るように、レーザ変位計Lから照射される光線L1は、上記マスターリングMLやリングギアLGの内径面X1,X2で反射光L2となり、受光部L0にキャッチされる。上記光線L1の発射時間と受光部L0が受ける反射光L2との時間差により、レーザ変位計LからマスターリングMLやリングギアLGの内径面X1,X2との距離を精密に測定する。その精度維持の為には、
図2と
図3に示すように、ターンテーブル2上に120°の間隔に配置したボールプランジャーPBがマスターリングMLやリングギアLGの内径面X1,X2を軽く押し当て、芯ズレを拘束して自動芯出する構成を成している。尚、上記ボールプランジャーPBに替えて、適宜な公知部材への変更が可能である。例えば、チャック部材が適用される。
【0033】
上記リングギアLGの内径測定装置100は、例えば、レーザ変位計Lによる環状体の一つであるリングギアLGの内径測定に適用される。その構成は、ゼロ校正用のマスターリングMLと実測定するリングギアLGとを交換可能に載せるターンテーブル2と、上記ターンテーブル上部空間もしくは外側部に配置され、上記マスターリングML又はリングギアLGの内径面X1,X2との距離とその微細な距離変位を計測するレーザ変位計Lと、上記ターンテーブル2の回転駆動と回転角度位置θを検出するエンコーダー機能付き数値制御モータであるサーボモータMと、この回転制御駆動部CCと、
図3(b)に示すように、上記レーザ変位計から得られたマスターリングML及びリングギアLGの内径測定面X1,X2とターテーブル2の回転角度位置θに基づきリングギアの楕円長径量Rとその位相角値θ1,θ2と溶接部S等を計算処理する演算制御部CPUとを備えている。Pは表示器である。
【0034】
本発明のリングギアの内径測定装置100は、以上の如く構成されており、
図4に示す測定処理のフローチャート、即ち、バランサー解析応用による楕円長径量Rとその位相角度θの算出工程を説明する。
【0035】
初めにターンテーブル2にマスターリングMLを載せ、「高真円度のマスターリングMLでゼロ校正」Aを行い、リングギアLGの直径算出基準とする。続いて、「リングギアLGである実ワークの内周変位測定」Bを行う。これで、ターンテーブル2の中心とリングギアLGの擬似中心の同芯度は多少ズレても補正可能。そこで、
図1に示す電気制御系の演算処理部CPUは、上記レーザ変位計Lにより計測されるマスターリング及びリングギアの全周内径計測値X1,X2と、サーボモータMによるターンテーブルの回転位置となるマスターリング及びリングギアの各回転角位置θとを入力して「同芯度ズレ量算出」Cを、1回転1周期波形解析により行う。そして、「楕円波形算出」Dは、平均値でマスター直径との差分にて相当真円の直径を算出:楕円矯正後の想定直径とする。最後に「楕円長径量R、位相θ算出」Eは、1回転2周期情報を2回転分に分割計算して楕円矯正時の方向と矯正荷重決定から「楕円長径量Rとその長径・短径の位相θ算出」Eの計算処理を、バランサー解説の応用により実行する。これにより、楕円長径量Rとその位相角θのデータが得られる。
【0036】
上記演算処理部CPUによるリングギアLGの算出は、
図5(a)(b)に示す算出イメージとなるリングギア模式図&測定値算出イメージに基づく位相角θと相対距離とが行われる。即ち、1,真円度に関して、
図5(a)に示すように、リングギアは楕円形状になっている。そのため、A1,A2の短径部と、B1,B2の長径部との位相が90°間隔で各々2箇所存在する。これに基づいて、各々の位相及び相対位置における「楕円長径量、位相算出」は、1回転2周期情報を2回転分に分割計算して楕円矯正時の方向と矯正荷重決定から楕円長径量とその長径・短径位相の算出を実行する。
【0037】
図5(b)は、横軸を位相角(0°~360°)と、縦軸を相対距離となる楕円長径量(mm)で図示している。尚、図示から、
図5(a)と
図5(b)とは、長径・短径位相が真逆の関係で図示されている。
図3(b)と
図5(b)において、位相角(60°付近と210°付近A1とA2において長径となり、位相角(130°付近と320°付近B1とB2において短径となる「楕円長径量R及び楕円短径量」とが解明される。
【0038】
更に、レーザ変位計LによってリングギアLGの半径距離が計測される時に、
図5(b)に図示するように、波形の一部、例えば位相角(110°付近で、波形の落ち込みSが発生したとする。この波形落込みは、上記演算処理部CPUにより、上記リングギアの溶接部Sとして、レーザ変位計Lで検出される。この事態に際して、溶接部を感知するとともに、この溶接部をネグレクト(排除処理)した内径寸法を実測値とし、該実測値によりリングギアの全周内径値を演算処理する。これで、
図6に示すリングギアLGの全周内径値をノイズレスに正確に演算処理している。
【0039】
上記リングギアLGにおける楕円歪み量(即ち、楕円長径量R)と、この旋回位相角度θの位置との関係から、楕円変形歪みしたリングギアLGの矯正方法が実施可能となる。その具体的な実施例を以下に説明する。即ち、内径測定値(楕円長径量R)と、その旋回位相角度θとに基づき、リングギアLGの真円度を高める矯正作用の元データとなる。
【0040】
図7に、その矯正方法の概念的な矯正手段を示す。即ち、テーブル2上(図示無し)には、リングギアLGが載せられ、その楕円歪み量の最大値R1側を、テーブル2の左右位置に配置した一対の圧縮矯正手段となる油圧式の加圧片P1,P2に対面させる。そして、加圧片P1,P2の加圧力P0は、上記リングギアの内径測定装置100によって測定された楕円長径量Rとその位相角度θに基づいて、加圧方向は楕円歪み量の最大となる楕円長径量R1の方向に合わせる。尚、上記加圧力P0の他にリングギアLGを真円とすべく、ストローク量Stも吟味される。
しかして、一対の圧縮矯正手段P1,P2は、リングギアLGの長径・短径位相の長径側と対面しており、その楕円長径量R1を縮めるべく相応した加圧力P0により、リングギアの長径側を圧縮矯正するとともに短径側R2を拡径矯正し、真円度を向上させることができる。
【0041】
その矯正工程は、
図8に示すフローチャートにより概念的に実行される。先ず、矯正するリングギアLGの「楕円長径量Rとその位相角度θ」Hについて、「テーブル上でのリングギアLGの方向制御」Iに合わせられる。続いて、テーブル及びリングギアの回転拘束」Jをブレーキ片BKで行う、続く「加圧力とストローク量を測定した楕円長径量Rで定め矯正実行」Kを行い、「矯正後の楕円歪み量の再計測」Nを行う。ここで、「レーザ変位計Lと演算処理部による再計測」Oをレーザ変位計Lによって行う。「規定値内ならエンド」Pとする。しかし、規定値外ならば、「規定値外」Qとし、再矯正」Qとし、上記Hの「楕円長径量Rとその位相角度θ」に戻り、I,J,K,N,Oの再工程後に、「規定値内」ならエンド(終了)Pとする。しかし、「規定値外」Qならば、再々矯正とし、K,N,O,Pの工程を繰り返す。数回に渡り繰返して、規定値外ならば、不良品として廃棄又は外部で再修正する。
【0042】
図9は、上記
図7に示す矯正方法の概念的な矯正手段において、テーブル2上(図示無し)には、リングギアLGが載せられ、その楕円歪み量の最小径値側R2を、テーブル2の左右位置に配置した油圧式の加圧片P1,P2に対面させる。そして、加圧片P1,P2の加圧力P0は、上記リングギアの内径測定装置100によって測定された楕円短径量R2の方向に合わせる。
しかして、一対の圧縮矯正手段P1,P2は、リングギアLGの短径側と対面しており、その楕円短径量R2を拡げるべく相応した加圧力P0により、該リングギアの短径側R2を拡径矯正させるとともに長径側を圧縮矯正し、真円度を向上することができる。
【0043】
以上のように、本発明のリングギアの内径測定装置100によれば、その構成手段と制御系とバランサー解析応用の演算処理ソフトウエアによる内径及び真円度の測定と、矯正方法等々により、高品質なリングギアLGとすべく、真円度と内径値を測定検知し、矯正する事ができる。
【0044】
上記リングギアの内径測定装置100のメリットを、再度列記すれば、本発明によるリングギアの内径測定装置とこの内径測定方法及びその矯正方法によると、(1)歪んだ環状体、例えばリングギアを真円とする芯出しが容易に実施できる。(2)楕円変形したリングギアの歪みの計算処理が容易に実施できる。(3)従来の触子からなる3次元測定機よりも優位性が高い。(4)リングギアの生産ラインに導入できる。(5)レーザ変位計と演算処理部により、リングギアの溶接部の状態検査と排除処理計算ができる。(6)リングギアの楕円歪量とその角度位置との関係から、真円への矯正作業が容易となる。(7)リングギアは、内径測定装置のターンテーブルへの装着が簡便にしてラフで良い。等々の生産ラインでの優位性が発揮される新技術である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のリングギアの内径測定装置100とその内径測定方法とこれによる矯正方法等は、上記実施例に限定されない。例えば、リングギア以外の環状体の内径測定にも適用可能である。例えば、ベアリングの外輪や内輪、各種の高精度を要する各種リング体の内径測定装置としても適用できる。
更に、本発明の内径測定装置は、細部の構成要素を発明の技術的範囲内において、その設計変更や内径測定方法の変更が可能である。例えば、上記リングギアにおいて、内周面にギアを設けた場合は、そのリングギアの外周面をレーザ変位計Lで計測しても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 フレーム
2 ターンテーブル
2a 外周上縁
2b 中央上面
3 支軸
4 軸受体
100 内径測定装置
A1,A2 短径部
B1,B2 長径部
S 溶接部
CC 回転制御駆動部
CPU 演算処理部
E 位相値
F 機台
LG リングギア
M サーボモータ
ML マスターリング
L レーザ変位計
L1 光線
L2 反射光
L0 受光部
X 内径面
X1,X2 内径測定値
P 表示パネル
PB ボールプランジャー
P1,P2 加圧片
P0 加圧力
St ストローク量
θ 回転角度位置
R1 楕円長径量
R2 楕円短径量