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特許7411174溶接技能レベル判定システム、記憶媒体、学習済モデル生成方法および学習済モデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】溶接技能レベル判定システム、記憶媒体、学習済モデル生成方法および学習済モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/24 20060101AFI20231228BHJP
   B23K 9/095 20060101ALI20231228BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20231228BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20231228BHJP
   G06N 3/04 20230101ALI20231228BHJP
【FI】
G09B19/24 Z
B23K9/095 515Z
B23K31/00 Z
G09B19/00 H
G06N3/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019141429
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021026041
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】519279971
【氏名又は名称】株式会社ラムダシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】519279786
【氏名又は名称】株式会社S・A・P
(73)【特許権者】
【識別番号】507096124
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】利光 宏一
(72)【発明者】
【氏名】森竹 隆広
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 博
【審査官】佐々木 祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-171184(JP,A)
【文献】特開昭63-290685(JP,A)
【文献】特開2019-048309(JP,A)
【文献】特開平10-235490(JP,A)
【文献】特開2021-001959(JP,A)
【文献】特開平05-040511(JP,A)
【文献】藤田 紀勝 Norikatsu FUJITA,溶接技能パラメータに基づく溶接訓練学習システム Torch Operation Learning System Based on Welding Skill Parameters,電子情報通信学会論文誌 (J90-D) 第9号 THE IEICE TRANSACTIONS ON INFORMATION AND SYSTEMS (JAPANESE EDITION),日本,社団法人電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS,2007年09月01日,第J90-D巻,pp. 2522-2529
【文献】新光機器株式会社,アーク溶接 第55話 溶接電流・ワイヤ送給速度・ワイヤ径 担当 高木柳平,溶接技術だより,2016年06月20日,https://shinkokiki.co.jp/column/3696.html,特に本文参照。[検索日:2023年6月28日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 - 9/56
G01B 17/00 - 19/26
B23K 9/095
B23K 31/00
G06N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、前記加熱器具の加速度の経時的推移、および前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データを用い、前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力、前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする学習済モデルを機械学習により生成し、前記学習済モデルは、前記溶接機の電流値、前記溶接機の電圧値、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量または前記加熱器具の加速度が急激に変化した場合に作業者の溶接技能レベルが低く見積もられるような相関関係に関するものである、モデル生成手段と、
前記溶接機の電流値の経時的推移と、前記溶接機の電圧値の経時的推移と、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移と、前記加熱器具の加速度の経時的推移とを受け付ける受付手段と、
前記モデル生成手段により生成された前記学習済モデルに、前記受付手段により受け付けられた前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力することにより溶接技能レベルを演算する演算手段と、
を備えた、溶接技能レベル判定システム。
【請求項2】
前記溶接機の電流値を検知する電流計と、
前記溶接機の電圧値を検知する電圧計と、
前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量を検知する溶接ワイヤ送り量検知機構と、
を更に備えた、請求項1記載の溶接技能レベル判定システム。
【請求項3】
前記溶接ワイヤ送り量検知機構は、前記溶接機における溶接ワイヤを送る送りローラと、前記送りローラの回転量を検知するエンコーダとを有している、請求項2記載の溶接技能レベル判定システム。
【請求項4】
前記溶接機は、前記加熱器具の加速度を測定する加速度センサを有しており、
前記受付手段は、前記加速度センサにより測定される前記加熱器具の加速度の経時的推移を受け付けるようになっている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の溶接技能レベル判定システム。
【請求項5】
前記演算手段により演算された溶接技能レベルが所定の閾値よりも低い場合にこのことを報知する報知部を更に備えた、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の溶接技能レベル判定システム。
【請求項6】
前記演算手段により演算された溶接技能レベルを表示する表示部を更に備えた、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の溶接技能レベル判定システム。
【請求項7】
前記演算手段により演算された溶接技能レベルが所定の閾値よりも低い場合は、前記溶接機による溶接作業のガイダンス画面が前記表示部に表示される、請求項6記載の溶接技能レベル判定システム。
【請求項8】
前記加熱器具にはマイクが取り付けられており、
前記教師データには、前記マイクにより検知される溶接箇所の音も含まれるようになっており、
前記モデル生成手段により生成される前記学習済モデルは、入力として溶接箇所の音も含まれるようになっており、
前記受付手段は、前記マイクにより検知される溶接箇所の音も受け付けるようになっており、
前記演算手段は、前記モデル生成手段により生成された前記学習済モデルに、前記受付手段により受け付けられた前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移に加えて溶接箇所の音も入力することにより溶接技能レベルを演算する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の溶接技能レベル判定システム。
【請求項9】
溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を受け付け、
前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、前記加熱器具の加速度の経時的推移、および前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データを用いて機械学習により生成された、前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力、前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする学習済モデルであって、前記溶接機の電流値、前記溶接機の電圧値、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量または前記加熱器具の加速度が急激に変化した場合に作業者の溶接技能レベルが低く見積もられるような相関関係に関するものである学習済モデルに、受け付けられた前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力することにより溶接技能レベルを演算する
処理をコンピュータに実行させるプログラムが記憶された、記憶媒体。
【請求項10】
溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、前記加熱器具の加速度の経時的推移、および前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データを受け付ける工程と、
受け付けられた前記教師データを用いて、前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力、前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする学習済モデルを機械学習により生成し、前記学習済モデルは、前記溶接機の電流値、前記溶接機の電圧値、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量または前記加熱器具の加速度が急激に変化した場合に作業者の溶接技能レベルが低く見積もられるような相関関係に関するものである工程と、
を備えた、学習済モデル生成方法。
【請求項11】
溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、前記加熱器具の加速度の経時的推移、および前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データを用いて機械学習により生成された、前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力、前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とし、前記溶接機の電流値、前記溶接機の電圧値、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量または前記加熱器具の加速度が急激に変化した場合に作業者の溶接技能レベルが低く見積もられるような相関関係に関するものである、学習済モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを検知するための溶接技能レベル判定システム、記憶媒体、学習済モデル生成方法および学習済モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶融金属等から構成される溶接ワイヤを加熱器具(トーチ)で溶かすことにより2つの部材を接合させる半自動溶接機として様々な種類のものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。このような半自動溶接機では、ワイヤ供給装置から溶接ワイヤが供給され、この供給された溶接ワイヤが加熱器具で加熱させられた後に当該加熱器具の先から自動で送り出される。このような溶接方法では、溶接棒を用いて溶接を行う場合と比較して溶接棒の交換の手間を省くことができ、作業効率を向上させることができる。このように、半自動溶接機では、溶接ワイヤは自動で供給されるが、溶接の作業自体は作業者が手動で行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-205332号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、従来の半自動溶接機では、作業者の熟練度によって溶接の品質が大きく変わってしまうという問題があった。このため、熟練者の勘に頼るのではなく、溶接作業を標準化して数値で管理することが求められている。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、溶接機の電圧値の経時的推移、溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具の加速度の経時的推移に基づいて、溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを検知することができる溶接技能レベル判定システム、記憶媒体、学習済モデル生成方法および学習済モデルを提供することを目的とする。
【0006】
本発明の溶接技能レベル判定システムは、溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、前記加熱器具の加速度の経時的推移、および前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データを用い、前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力、前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする学習済モデルを機械学習により生成するモデル生成手段と、前記溶接機の電流値の経時的推移と、前記溶接機の電圧値の経時的推移と、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移と、前記加熱器具の加速度の経時的推移とを受け付ける受付手段と、前記モデル生成手段により生成された前記学習済モデルに、前記受付手段により受け付けられた前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力することにより溶接技能レベルを演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の溶接技能レベル判定システムは、前記溶接機の電流値を検知する電流計と、前記溶接機の電圧値を検知する電圧計と、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量を検知する溶接ワイヤ送り量検知機構と、を更に備えていてもよい。
【0008】
この場合、前記溶接ワイヤ送り量検知機構は、前記溶接機における溶接ワイヤを送る送りローラと、前記送りローラの回転量を検知するエンコーダとを有していてもよい。
【0009】
また、前記溶接機は、前記加熱器具の加速度を測定する加速度センサを有しており、前記受付手段は、前記加速度センサにより測定される前記加熱器具の加速度の経時的推移を受け付けるようになっていてもよい。
【0010】
本発明の溶接技能レベル判定システムは、前記演算手段により演算された溶接技能レベルが所定の閾値よりも低い場合にこのことを報知する報知部を更に備えていてもよい。
【0011】
本発明の溶接技能レベル判定システムは、前記演算手段により演算された溶接技能レベルを表示する表示部を更に備えていてもよい。
【0012】
この場合、前記演算手段により演算された溶接技能レベルが所定の閾値よりも低い場合は、前記溶接機による溶接作業のガイダンス画面が前記表示部に表示されてもよい。
【0013】
また、前記加熱器具にはマイクが取り付けられており、前記教師データには、前記マイクにより検知される溶接箇所の音も含まれるようになっており、前記モデル生成手段により生成される前記学習済モデルは、入力として溶接箇所の音も含まれるようになっており、前記受付手段は、前記マイクにより検知される溶接箇所の音も受け付けるようになっており、前記演算手段は、前記モデル生成手段により生成された前記学習済モデルに、前記受付手段により受け付けられた前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移に加えて溶接箇所の音も入力することにより溶接技能レベルを演算するようになっていてもよい。
【0014】
本発明は、溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を受け付け、前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、前記加熱器具の加速度の経時的推移、および前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データを用いて機械学習により生成された、前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力、前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする学習済モデルに、受け付けられた前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力することにより溶接技能レベルを演算する処理をコンピュータに実行させるプログラムが記憶された、記憶媒体である。
【0015】
本発明の学習済モデル生成方法は、溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、前記加熱器具の加速度の経時的推移、および前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データを受け付ける工程と、受け付けられた前記教師データを用いて、前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力、前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする学習済モデルを機械学習により生成する工程と、を備えている。
【0016】
本発明は、溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、前記加熱器具の加速度の経時的推移、および前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データが入力される入力層と、学習済モデルを出力する出力層と、前記教師データを用いてパラメータが学習された中間層と、を備え、前記教師データが前記入力層に入力されると、前記中間層にて演算し、前記出力層により前記学習済モデルを出力する、ニューラルネットワークである。
【0017】
本発明は、溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、前記加熱器具の加速度の経時的推移、および前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データを用いて機械学習により生成された、前記溶接機の電流値の経時的推移、前記溶接機の電圧値の経時的推移、前記溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および前記加熱器具の加速度の経時的推移を入力、前記溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする、学習済モデルである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の溶接技能レベル判定システム、記憶媒体、学習済モデル生成方法、ニューラルネットワークおよび学習済モデルによれば、溶接ワイヤを加熱する加熱器具を有する溶接機の電流値の経時的推移、溶接機の電圧値の経時的推移、溶接機における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具の加速度の経時的推移に基づいて、溶接機により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態による溶接システムの構成を概略的に示す概略構成図である。
図2図1に示す溶接システムにおけるワイヤ供給装置のワイヤ送り機構の構成を示す側面図である。
図3図1に示す溶接システムの溶接ユニットにおける各構成要素の接続の態様を示す構成図である。
図4図1に示す溶接システムにおいて各種センサおよびエンコーダにより検知された値の経時的推移を示す表である。
図5図1に示す溶接システムにより溶接技能レベルを演算する構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図5は、本実施の形態に係る溶接システムを示す図である。
【0021】
まず、本実施の形態に係る溶接システムについて図1乃至図4を用いて説明する。図1に示すように、本実施の形態に係る溶接システムは、作業者が溶接作業を行うための溶接機10と、作業者が装着する装着具30と、溶接機10から様々なデータが送られるデータ収集端末40と、管理端末50とを備えている。ここで、溶接機10、装着具30およびデータ収集端末40は、溶接の作業現場2に配置されている。一方、管理端末50は、作業現場2とは別の場所である管理室4に設置されている。なお、管理端末50は管理室4に設置されることに限定されることはなく、管理端末50が作業現場2に設置されていてもよい。しかしながら、管理端末50を管理室4に設置した場合には、複数の作業現場2にそれぞれ配置される溶接機10やデータ収集端末40等を1つの管理端末50で管理することができる。
【0022】
溶接機10は、電源装置12、ワイヤ供給装置14および加熱器具(トーチ)15を有している。ワイヤ供給装置14は、溶融金属等から構成される溶接ワイヤを加熱器具15に供給するようになっている。加熱器具15は作業者によって把持されるようになっており、ワイヤ供給装置14から送られた溶接ワイヤを加熱器具15によって加熱して溶融することにより、溶融された金属で2つの部材24(図3参照)を接合させることができるようになっている。電源装置12は、ワイヤ供給装置14および加熱器具15に電力を供給するようになっている。
【0023】
図2に示すように、ワイヤ供給装置14は、第1送りローラ16および第2送りローラ17を有しており、これらの第1送りローラ16および第2送りローラ17の間から溶接ワイヤ(図2において参照符号Wで表示)が送り出されるようになっている。また、第1送りローラ16には、この第1送りローラ16の回転量を検知するエンコーダ18が設けられている。このようなエンコーダ18により検知された第1送りローラ16の回転量に基づいて、溶接ワイヤの送り量が検知されるようになっている。なお、エンコーダ18は第1送りローラ16の回転量を検知するものに限定されない。最終的に溶接ワイヤの送り量を検知することができるものであれば、エンコーダ18は第1送りローラ16以外のローラの回転量を検知するようになっていてもよい。また、エンコーダ18以外の手段により溶接ワイヤの送り量が検知されるようになっていてもよい。本実施の形態では、第1送りローラ16、第2送りローラ17およびエンコーダ18により、溶接ワイヤの送り量を検知する溶接ワイヤ送り量検知機構が構成されている。
【0024】
このような溶接機10における各構成要素の接続態様について図3を用いて説明する。図3に示すように、電源装置12には、第1ガス入口12a、第2ガス入口12b、トーチ接続端子12c、リモートコンセント12d、トーチスイッチコンセント12e、手動接続端子(+)12fおよび手動接続端子(-)12gが設けられている。ここで、アルゴンガスボンベ20のガスホース20aが第1ガス入口12aに接続されるようになっている。このことにより、アルゴンガスボンベ20からアルゴンガスを電源装置12に供給することができるようになる。なお、電源装置12にはアルゴンガス以外にもシールドガスとなる他の種類のガスが供給されるようになっていてもよい。また、遠隔制御装置22のコード22aがリモートコンセント12dに接続されるようになっている。このことにより、遠隔制御装置22によって溶接機10を遠隔制御することができるようになる。また、加熱器具15には第1コード15a、第2コード15bおよび第3コード15cがそれぞれ設けられている。ここで、第1コード15aはトーチスイッチコンセント12eに接続される。また、第2コード15bはトーチ接続端子12cの-極に接続される。また、第3コード15cは第2ガス入口12bに接続される。また、加熱器具15にはスイッチ15dが設けられており、加熱器具15を把持した作業者がスイッチ15dを押すことによりワイヤ供給装置14から送られた溶接ワイヤが加熱されるとともにこの加熱された溶接ワイヤが加熱器具15から送り出されるようになっている。
【0025】
また、溶接機10により溶接される2つの部材24のうち一方の部材24には第4コード24aが接続されており、この第4コード24aはトーチ接続端子12cの+極に接続されるようになっている。
【0026】
また、図3に示すように、第2コード15bには電流計25が設けられており、この電流計25により第2コード15bを流れる電流値が検知されるようになっている。また、電圧計26は、第2コード15bと第4コード24aの間の電位差を測定するようになっている。具体的には、電圧計26の第1プローブ26aを第4コード24aに押し当てるとともに第2プローブ26bを第2コード15bに押し当てることにより第2コード15bと第4コード24aの間の電位差が測定されるようになる。また、加熱器具15には3軸の加速度センサ27が取り付けられている。このような加速度センサ27により、x方向、y方向、z方向からなる3つの方向の加熱器具15の加速度を検知することができるようになる。なお、加熱器具15に取り付けられるのは3軸の加速度センサ27に限定されない。x方向、y方向、z方向からなる3つの方向の加熱器具15の加速度に加えて、加熱器具15の回転角速度も検知可能な6軸の加速度センサが加熱器具15に取り付けられてもよい。更に別の例として、加熱器具15の3つの方向の加速度、回転角速度に加えて加熱器具15の方位(コンパス)も検知可能な9軸の加速度センサが加熱器具15に取り付けられてもよい。また、溶接機10が配置される作業現場2には温度センサ28および湿度センサ29がそれぞれ設置されている。
【0027】
装着具30は、カメラおよび投射型や網膜投射型のディスプレイが搭載されたスマートグラス(商標登録)32と、マイク34とを有しており、装着具30を装着した作業者は、スマートグラス32に搭載されたディスプレイに表示される画面を見ながら溶接作業を行うことができるとともに、作業者がしゃべる声をマイク34により拾って後述するデータ収集端末40に送ることができるようになっている。また、装着具30を装着した作業者の視野も、スマートグラス32に搭載されたカメラにより撮像することでき、この撮像された映像は後述するデータ収集端末40に送られるようになっている。また、装着具30にイヤホンが取り付けられていてもよい。この場合には、装着具30を装着した作業者に対してイヤホンによって音声により指示を与えることができるようになる。
【0028】
作業現場2に設置されるデータ収集端末40には、溶接機10の電源装置12およびワイヤ供給装置14がそれぞれ接続されている。そして、溶接機10のエンコーダ18、電流計25、電圧計26、加速度センサ27、温度センサ28および湿度センサ29等による検知結果に係る情報が経時的に送られるようになっている。データ収集端末40に送られた各種の情報(具体的には、各センサ等により検知された値の経時的推移)を図4の表に示す。なお、図4の表において「送り量」とは溶接ワイヤの送り量であり、このような溶接ワイヤの送り量はエンコーダ18により検知される第1送りローラ16の回転量に基づいて算出される。
【0029】
また、データ収集端末40には装着具30が接続されている。そして、上述したように、作業者がしゃべる声がマイク34により拾われてデータ収集端末40に送られるとともに、スマートグラス32に搭載されたカメラにより撮像された映像がデータ収集端末40に送られるようになっている。
【0030】
作業現場2とは別の場所である管理室4に設けられた管理端末50は例えばパーソナルコンピュータ等から構成されている。具体的には、管理端末50は、モニタ等の表示部50aと、キーボード等の操作部50bと、ROMやRAM等のメモリからなる記憶手段50cと、CPU等のプロセッサ50dを有している。なお、モニタ等の表示部50aおよびキーボード等の操作部50bを有するパーソナルコンピュータの代わりに、携帯可能なタブレット端末が用いられてもよい。このようなタブレット端末に設けられたタッチパネルは、表示部50aおよび操作部50bを兼ねたものとなる。このような管理端末50には、装着具30およびデータ収集端末40が通信可能に接続されている。ここで、溶接機10の電源装置12およびワイヤ供給装置14、ならびに装着具30からデータ収集端末40に送られた情報は、データ収集端末40から管理端末50に送られるようになっている。このことにより、スマートグラス32に搭載されているカメラにより撮像された、作業者の視野を管理端末50の表示部50aに表示させることができる。また、管理端末50から装着具30にガイダンス画面に係る情報を送ることにより、この装着具30のスマートグラス32に溶接作業のガイダンス画面を表示させることができるようになっている。また、管理端末50にマイクを接続してもよい。この場合は、管理端末50を操作する管理者は音声でマイクに指示を送ることにより、装着具30に取り付けられているイヤホンから作業者に音声で指示を伝達することができるようになる。
【0031】
このように、作業現場2で溶接機10により溶接作業を行う作業者に装着される装着具30と、管理室4に設けられた管理端末50とを通信可能に接続することによって、例えば経験の少ない作業者が作業現場2で溶接機10により溶接作業を行うときに、経験豊富な管理者は、管理端末50の表示部50aに表示される情報(具体的には、データ収集端末40から管理端末50に送られた、溶接機10の各種情報やスマートグラス32に搭載されたカメラにより撮像された画像)を参照して、操作部50bにより指示を入力することができるようになる。そして、操作部50bに入力された指示が装着具30に送られることにより、この装着具30のスマートグラス32に表示される画面に管理者の指示を表示させることができる。このことにより、経験の少ない作業者であっても、経験豊富な管理者から与えられる指示に従うことによって、作業現場2で溶接機10によってより的確な溶接作業を行うことができるようになる。
【0032】
また、本実施の形態の溶接システムは、作業者の溶接技能レベルを演算する溶接技能レベル判定システムとして機能するようになっている。ここで、作業者の溶接技能レベルとしては、例えば0~100の範囲内の数値パラメータを用いる。このような溶接技能レベル判定システムの構成について図5を用いて説明する。なお、以下に示すような作業者の溶接技能レベルを検知する動作は、管理端末50のプロセッサ50dにより実行されるようになっている。
【0033】
図5に示すように、溶接技能レベル判定システムは、教師データ51に基づいて学習済モデル54を作成するモデル生成手段52と、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移を受け付ける受付手段55と、モデル生成手段52により生成された学習済モデル54に、受付手段55により受け付けられた溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移を入力することにより溶接技能レベルを演算する演算手段56と、演算手段56により出力された溶接技能レベルを出力する出力手段58とを備えている。
【0034】
このような溶接技能レベル判定システムにおいて、モデル生成手段52により学習済モデル54が予め生成されている。ここで、モデル生成手段52は、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、加熱器具15の加速度の経時的推移、および溶接機10により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データ51を用い、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移を入力、溶接機10により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする学習済モデル54を機械学習により生成するようになっている。なお、教師データ51において用いられる、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移は、データ収集端末40から管理端末50に送られた情報や、管理端末50の表示部50aにより入力された情報に基づいて決められる。また、教師データ51において用いられる、溶接機10により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルは、管理端末50の表示部50aにより入力された情報に基づいて決められる。
【0035】
モデル生成手段52は、例えばニューラルネットワークから構成されている。このようなニューラルネットワークは、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、加熱器具15の加速度の経時的推移、および溶接機10により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを含む教師データ51が入力される入力層と、学習済モデル54を出力する出力層と、教師データ51を用いてパラメータが学習された中間層とを有している。そして、このようなニューラルネットワークでは、教師データ51が入力層に入力されると、中間層にて演算し、出力層により学習済モデル54を出力するようになる。このようなニューラルネットワークとして既知のものを用いることができる。
【0036】
ここで、溶接機10の電流値、溶接機10の電圧値、または溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量が急激に変化した場合には、熟練度の低い作業者によって溶接作業が行われていることが推察される。また、加熱器具15の加速度が急激に変化した場合にも、熟練度の低い作業者によってこの加熱器具15が操作されていることが推察される。このため、このような場合には溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルが低く見積もられるようになる。このような相関関係に関する学習済モデル54をモデル生成手段52は生成するようになる。
【0037】
受付手段55は、電流計25により測定された電流値の経時的推移、電圧計26により測定された電圧値の経時的推移、エンコーダ18による測定結果に基づいて算出された溶接ワイヤの単位時間当たりの送り量の経時的推移、および加速度センサ27により測定された加熱器具15の加速度の経時的推移を受け付けるようになっている。そして、演算手段56は、モデル生成手段52により生成された学習済モデル54に、受付手段55により受け付けられた、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移を入力することにより溶接技能レベルを演算する。演算手段56により演算された溶接技能レベルは出力手段58により出力される。具体的には、出力手段58により出力された溶接技能レベルは管理端末50の操作部50bに表示されたり装着具30のスマートグラス32に表示されたりする。
【0038】
また、出力手段58により出力された溶接技能レベルが所定の閾値よりも低い場合は、溶接機10により溶接作業を行った作業者は熟練者(ベテラン)ではなく経験が少ない者であると考えられる。この場合には、出力手段58により出力された溶接技能レベルが所定の閾値よりも低いことが図示しないスピーカー等によって音声で報知される。この際に、スピーカーは、演算手段56により演算された溶接技能レベルが所定の閾値よりも低い場合にこのことを報知する報知部として機能する。なお、報知部は、音声以外の手段によって報知を行うようになっていてもよい。また、出力手段58により出力された溶接技能レベルが所定の閾値よりも低い場合は、管理端末50から装着具30にガイダンス画面に係る情報が送られる。このことにより、装着具30のスマートグラス32に溶接作業のガイダンス画面を表示させることができるため、経験が少ない作業者であっても、スマートグラス32に表示されるガイダンス画面を見ながら溶接作業を行うことができるようになる。また、このようにして実際に行われた溶接作業について、溶接機10の電源装置12やワイヤ供給装置14、加熱器具15に設けられた各センサ等により検知された情報や、操作部50bに入力された作業者の溶接作業レベル等の情報はデータ収集端末40に送られ、このデータ収集端末40から管理端末50に送信される。このことにより、管理端末50においてモデル生成手段52に新たな教師データ51が入力され、よって学習済モデル54の精度がより一層向上する。
【0039】
また、出力手段58により出力された溶接技能レベルは、溶接機10の電源装置12やワイヤ供給装置14、加熱器具15に設けられた各センサ等により検知された情報や、装着具30のスマートグラス32に搭載されているカメラにより撮像された動画とともに記憶手段50cに記憶されるようになっている。このことにより、溶接技能レベルが高い熟練者による実際の溶接作業内容と、溶接技能レベルが低い作業者による実際の溶接作業内容とを比較したり、溶接技能レベルが高い熟練者による実際の溶接作業内容を標準化したりすることができるようになる。また、ある作業者が溶接機10によって溶接作業を行った後にこの作業者の溶接技能レベルが演算されるため、より高いスコアの溶接技能レベルを目指して作業者が溶接の技能の向上に努力、研鑽することができるようになる。
【0040】
なお、管理端末50におけるROMやRAM等のメモリからなる記憶手段50cには、まず、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移を受け付け、次に、教師データ51を用いて機械学習により生成された学習済モデル54に、受け付けられた溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移を入力することにより溶接技能レベルを演算する処理をプロセッサ50dに実行させるプログラムが記憶されている。
【0041】
以上のような構成からなる本実施の形態の溶接技能レベル判定システムによれば、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移を入力、溶接機10により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする学習済モデル54を機械学習により生成し、そして、生成された学習済モデル54に、受付手段55により受け付けられた溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移を入力することにより溶接技能レベルを演算するため、溶接機10を用いた溶接作業について熟練者の勘に頼るのではなく、溶接作業を標準化して数値で管理することができる。とりわけ、複数の作業現場2における溶接作業を、1つの管理端末50で管理することにより、モデル生成手段52に入力される教師データ51の数を増やすことができ、よって学習済モデル54の精度をより一層向上させることができる。また、複数の作業現場2における溶接作業を、1つの管理端末50で管理する場合には、複数の溶接機10の各々に対応して管理端末50を設置する場合と比較して管理端末50の数を減らすことができるためコスト削減を図ることができるようになる。
【0042】
なお、本発明による溶接システムや溶接技能レベル判定システムは、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0043】
例えば、上述した溶接技能レベル判定システムでは、モデル生成手段52は、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、加熱器具15の加速度の経時的推移、および溶接機10により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルという5つの要素を含む教師データ51を用い、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移という4つの要素を入力、溶接機10により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力とする学習済モデル54を機械学習により生成するようになっている。しかしながら、本発明はこのような態様に限定されることはない。本発明による溶接技能レベル判定システムの他の例として、教師データ51は、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、加熱器具15の加速度の経時的推移、および溶接機10により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルという5つの要素に加えて、他の要素を更に含んでいてもよい。他の要素としては、例えば、溶接箇所の音や、プール部の動画画像、溶接箇所の温度が挙げられる。具体的には、溶接箇所の音を他の要素とする場合には、溶接箇所の音を検知するためのマイクが加熱器具15に取り付けられる。また、溶接箇所の温度を他の要素とする場合には、溶接箇所の温度を検知するための温度計が加熱器具15に取り付けられる。
【0044】
また、この場合には、学習済モデル54は、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移という4つの要素に加えて、追加された他の要素を含めた5つ以上の要素を入力、溶接機10により溶接作業を行う作業者の溶接技能レベルを出力としたものとなる。また、受付手段55は、溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、および加熱器具15の加速度の経時的推移という4つの要素に加えて、他の要素に係る情報を受け付けるようになる。そして、演算手段56は、モデル生成手段52により生成された学習済モデル54に、受付手段55により受け付けられた溶接機10の電流値の経時的推移、溶接機10の電圧値の経時的推移、溶接機10における溶接ワイヤの単位時間あたりの送り量の経時的推移、加熱器具15の加速度の経時的推移および他の要素を入力することにより溶接技能レベルを演算する。
【0045】
モデル生成手段52は、ニューラルネットワークにより教師データ51から学習済モデル54を生成するものに限定されることはない。本発明による溶接技能レベル判定システムの他の例として、モデル生成手段52は、決定木(Decision trees)学習、相関ルール学習、遺伝子プログラミング、クラスタリング等の他の種類の機械学習により学習済モデル54を生成するようになっていてもよい。
【0046】
また、本発明による溶接技能レベル判定システムの更に他の例として、作業者の溶接技能レベルの判定を行うのは管理端末50に限定されることはない。上述したモデル生成手段52、受付手段55、演算手段56および出力手段58が管理端末50ではなく各作業現場2のデータ収集端末40に設けられており、各作業現場2においてデータ収集端末40によって作業者の溶接技能レベルの判定が行われるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
2 作業現場
4 管理室
10 溶接機
12 電源装置
12a 第1ガス入口
12b 第2ガス入口
12c トーチ接続端子
12d リモートコンセント
12e トーチスイッチコンセント
14 ワイヤ供給装置
15 加熱器具
15a 第1コード
15b 第2コード
15c 第3コード
15d スイッチ
16、17 ローラ
18 エンコーダ
20 アルゴンガスボンベ
20a ガスホース
22 遠隔制御装置
22a コード
24 部材
24a 第4コード
25 電流計
26 電圧計
26a 第1プローブ
26b 第2プローブ
27 加速度センサ
28 温度センサ
29 湿度センサ
30 装着具
32 スマートグラス
34 マイク
40 データ収集端末
50 管理端末
50a 表示部
50b 操作部
50c 記憶手段
50d プロセッサ
51 教師データ
52 モデル生成手段
54 学習済モデル
55 受付手段
56 演算手段
58 出力手段
図1
図2
図3
図4
図5