(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】伸縮装置
(51)【国際特許分類】
B25J 18/02 20060101AFI20231228BHJP
F16H 19/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B25J18/02
F16H19/02 D
(21)【出願番号】P 2019145581
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】小林 信行
(72)【発明者】
【氏名】美谷島 啓介
(72)【発明者】
【氏名】内田 説子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】大川 多加志
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-150996(JP,A)
【文献】特開平8-318483(JP,A)
【文献】特開2008-49419(JP,A)
【文献】特開2009-196026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 18/02
F16H 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するテープと、
前記テープの巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置と、を備え、
前記テープは、
前記テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、
前記テープ駆動装置と前記伸縮部とに亘る非伸縮部と、を有し、
前記テープは、1本の連続したテープからなり、
前記伸縮部は、先端部に形成され前記テープが180度折り返された折返部と、前記テープの末端が固定された固定端と、を有することを特徴とする伸縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮装置であって、
前記非伸縮部は、前記テープが折り曲げられた折曲部を有することを特徴とする伸縮装置。
【請求項3】
弾性を有するテープと、
前記テープの巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置と、を備え、
前記テープは、
前記テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、
前記テープ駆動装置と前記伸縮部とに亘る非伸縮部と、を有し、
前記テープは、長手方向に垂直な断面が円弧状に形成され、
前記非伸縮部は、前記テープが折り曲げられた複数の折曲部を有し、
前記複数の折曲部は、前記テープの凸面が外側となる方向に曲げられてなることを特徴とする伸縮装置。
【請求項4】
弾性を有するテープと、
前記テープの巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置と、を備え、
前記テープは、
前記テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、
前記テープ駆動装置と前記伸縮部とに亘る非伸縮部と、を有し、
前記テープは、長手方向に垂直な断面が円弧状に形成され、
前記伸縮部は、先端部に形成され前記テープが180度折り返された折返部を有し、
前記非伸縮部は、前記テープが折り曲げられた折曲部を有し、
前記折返部及び前記折曲部は、前記テープの凸面が外側となる方向に曲げられてなることを特徴とする伸縮装置。
【請求項5】
弾性を有するテープと、
前記テープの巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置と、を備え、
前記テープは、
前記テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、
前記テープ駆動装置と前記伸縮部とに亘る非伸縮部と、を有し、
前記伸縮部と前記非伸縮部の境界に配置され、前記テープを所定角度折り曲げる折曲装置をさらに備え、
前記折曲装置は、回転自在に連結された第1部材と第2部材を有し、
前記第1部材は、非伸縮部側の前記テープを案内し、
前記第2部材は、伸縮部側の前記テープを案内することを特徴とする伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高い伸縮比を有すると共に十分な強度を有する伸縮装置として、特許文献1には、弾性を有する複数本のテープを有するアームと、アームの巻き取り及び繰り出しを行うアーム繰出装置と、を備えるマニピュレータ機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の伸縮装置は、油圧シリンダ等と比較して高い伸縮比を有する一方、アーム繰出装置がリールやモータ等を有する大掛かりな構成であるため、伸縮装置のなかでアーム繰出装置の占める割合が大きい。そのため、伸縮装置を設置する際、アーム繰出装置が他の構造物と干渉する可能性がある。このように、特許文献1に記載の伸縮装置は、高い伸縮比を有するという利点がある一方で、大掛かりなアーム繰出装置が設置の支障となることがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、設置自由度の高い伸縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る伸縮装置は、弾性を有するテープと、テープの巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置と、を備え、テープは、テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、テープ駆動装置と伸縮部とに亘る非伸縮部と、を有し、テープは、1本の連続したテープからなり、伸縮部は、先端部に形成されテープが180度折り返された折返部と、テープの末端が固定された固定端と、を有することを特徴とする。
【0007】
この発明では、テープがテープ駆動装置と伸縮部とに亘る非伸縮部を有するため、テープ駆動装置をテープの伸縮部から離して設置することができる。したがって、伸縮部を所望の位置に設置することができる。また、伸縮部は、折返部と固定端とを有するため、テープが二重に形成される。したがって、伸縮部の長手方向の剛性を高めることができる。
【0008】
また、本発明では、非伸縮部は、テープが折り曲げられた折曲部を有することを特徴とする。
【0009】
この発明では、伸縮装置を設置する際に伸縮部の延長線上に他の構造物が存在する場合には、テープに折曲部を形成することによって、テープ駆動装置及び非伸縮部と他の構造物との干渉を回避することができる。
【0012】
また、本発明に係る伸縮装置は、弾性を有するテープと、テープの巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置と、を備え、テープは、テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、テープ駆動装置と伸縮部とに亘る非伸縮部と、を有し、テープは、長手方向に垂直な断面が円弧状に形成され、非伸縮部は、テープが折り曲げられた複数の折曲部を有し、複数の折曲部は、テープの凸面が外側となる方向に曲げられてなることを特徴とする。
【0013】
この構成では、複数の折曲部はテープの凸面が外側となる方向に曲げられてなるため、テープがスムーズに送られる。
【0014】
また、本発明に係る伸縮装置は、弾性を有するテープと、テープの巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置と、を備え、テープは、テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、テープ駆動装置と伸縮部とに亘る非伸縮部と、を有し、テープは、長手方向に垂直な断面が円弧状に形成され、伸縮部は、先端部に形成されテープが180度折り返された折返部を有し、非伸縮部は、テープが折り曲げられた折曲部を有し、折返部及び折曲部は、テープの凸面が外側となる方向に曲げられてなることを特徴とする。
【0015】
この構成では、折返部及び折曲部はテープの凸面が外側となる方向に曲げられてなるため、テープがスムーズに送られる。
【0016】
また、本発明に係る伸縮装置は、弾性を有するテープと、テープの巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置と、を備え、テープは、テープ駆動装置の駆動に伴って伸縮する伸縮部と、テープ駆動装置と伸縮部とに亘る非伸縮部と、を有し、伸縮部と非伸縮部の境界に配置され、テープを所定角度折り曲げる折曲装置をさらに備え、折曲装置は、回転自在に連結された第1部材と第2部材を有し、第1部材は、非伸縮部側のテープを案内し、第2部材は、伸縮部側のテープを案内することを特徴とする。
【0017】
この構成では、折曲装置は回転自在に連結された第1部材と第2部材を有するため、伸縮部は非伸縮部に対して回転可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、設置自由度の高い伸縮装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る伸縮装置を示す模式図であり、伸縮部が伸長した状態の図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る伸縮装置を示す模式図であり、伸縮部が収縮した状態の図である。
【
図3】テープの断面図であって、テープの長手方向に垂直な断面を示す図である。
【
図5】伸縮装置によって天窓を駆動する場合について説明する図であり、天窓が閉まった状態を示す。
【
図6】伸縮装置によって天窓を駆動する場合について説明する図であり、天窓が開いた状態を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例を示す模式図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例を示す図であって、(a)は矯正具の斜視図であり、(b)は矯正具の正面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例を示す図であって、(a)は矯正具の斜視図であり、(b)は矯正具の正面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例を示す模式図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例を示す模式図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る伸縮装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る伸縮装置100について説明する。
【0021】
図1に示すように、伸縮装置100は、弾性を有するテープ1と、テープ1の巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置30と、を備える。テープ1は、テープ駆動装置30の駆動に伴って伸縮する伸縮部10と、伸縮しない非伸縮部20と、を有する。
【0022】
伸縮装置100は、伸縮部10を伸縮させて駆動対象物101を動かしたり、伸縮部10にハンド102(
図13参照)等のアタッチメントを取り付けてマニピュレータとして用いられるものである。
【0023】
テープ1は、弾性を有する材料にて形成され、本実施形態では、ステンレスばね鋼にて形成される。テープ1は、ステンレスばね鋼に限らず、適度なばね性と剛性を有する材料で形成されればよく、合成樹脂や、合成樹脂に繊維(炭素繊維、ガラス繊維)や金属を組み合せた複合材料にて形成してもよい。
【0024】
図3に示すように、テープ1は、長手方向に垂直な断面が円弧状に形成され、凸面1aと凹面1bを有する。テープ1は、外力が作用していない状態では、長手方向に直線状に形成される。テープ1は、断面円弧状であるため、長手方向からの外力に対しては高い剛性を示し、容易に折れ曲がることはない。一方、長手方向と垂直な方向からの外力に対しては折れ曲がり、外力が除去されると元の直線状に弾性復帰する。
【0025】
テープ駆動装置30は、ケース34と、ケース34に回転自在に設けられテープ1の端部が接合されると共にテープ1がロール状に巻き付けられたリール31と、リール31を正逆回転させるモータ32と、リール31に巻き付けられたテープ1にテンションを付与して巻乱れを防止するテンション装置33と、ケース34に設けられテープ1を案内するガイド部35と、を有する。モータ32が正転駆動することによってリール31からテープ1が繰り出され、モータ32が逆転駆動することによってリール31にテープ1が巻き取られる。ガイド部35には、テープ1が摺動自在に挿通し、テープ1を案内する円弧状のガイドスリットが形成される。テンション装置33は、回転自在に設けられリール31に巻き付けられたテープ1に押し付けられるローラ33aと、ローラ33aをリール31に向けて付勢する付勢手段としてコイルばね33bと、を有する。コイルばね33bによりローラ33aが押し付けられることによって、テープ1は断面円弧状から断面矩形状に変形して略平らな状態でリール31に巻き付けられる。
【0026】
図1に示すように、伸縮装置100は、テープ1を所定角度折り曲げる折曲装置40と、テープ1を180度折り返す折返装置50と、をさらに備える。テープ1は、1本の連続したテープからなり、テープ駆動装置30から繰り出された後、折曲装置40にて90度折り曲げられ、さらに、折返装置50にて180度折り返され、末端が折曲装置40のケース41に固定される。このように、テープ1は、折曲部2と折返部3と固定端4とを有する。
【0027】
折曲部2と折返部3は、同方向に曲げられている。具体的には、折曲部2及び折返部3とも、テープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられている。これは、断面円弧状であるテープ1は、凸面1aが外側となる方向には比較的容易に曲がる一方、凹面1bが外側となる方向に曲がるには大きな力が必要になるためである。折曲部2及び折返部3ともテープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられているため、折曲装置40及び折返装置50においてテープ1はスムーズに送られる。なお、テープ駆動装置30のリール31に巻き付けられているテープ1も、凸面1aが外側となる方向に曲げられて巻き付けられている。
【0028】
テープ駆動装置30からテープ1が繰り出されると、テープ1の繰り出し量に応じて、テープ1の折返部3は固定端4から離れる方向(
図1中上方向)へ移動する。一方、テープ駆動装置30がテープ1を巻き取ると、テープ1の巻き取り量に応じて、テープ1の折返部3は固定端4に近づく方向(
図1中下方向)へ移動する(
図2に示す状態)。このように、テープ1は、折返部3が自由端として機能し、テープ駆動装置30の駆動に伴って折返部3と固定端4の間の長さが変化する一方、テープ駆動装置30と折曲部2の間の長さは変化しない。つまり、テープ1における折返部3と固定端4とに亘る部分が、テープ駆動装置30の駆動に伴って伸縮する伸縮部10として機能し、テープ1におけるテープ駆動装置30と伸縮部10とに亘る部分が、テープ駆動装置30が駆動したとしても伸縮しない非伸縮部20として機能する。駆動対象物101は折返装置50のケース51に取り付けられるため、伸縮部10を伸縮させることによって、駆動対象物101を動かすことができる。
【0029】
テープ1がテープ駆動装置30と伸縮部10とに亘る非伸縮部20を有することにより、テープ駆動装置30を伸縮部10から離して配置することができる。したがって、伸縮装置100を設置する際、テープ駆動装置30が他の構造物と干渉することを回避することができるため、伸縮装置100を設置する上で、テープ駆動装置30が支障となることがない。
【0030】
また、非伸縮部20は折曲部2を有するため、伸縮装置100を設置する際に伸縮部10の延長線上に他の構造物が存在する場合には、テープ駆動装置30及び非伸縮部20と他の構造物との干渉を回避することができる。本実施形態では、折曲部2が90度折り曲げられる構成であるが、テープ駆動装置30及び非伸縮部20と他の構造物との位置関係に応じて折曲部2の折り曲げ角度を適宜調整すればよい。
【0031】
このように、伸縮装置100を設置する際には、非伸縮部20の長さ及び折曲部2の折り曲げ角度を調整することによってテープ駆動装置30及び非伸縮部20と他の構造物との干渉を回避して、伸縮部10が設置される。
【0032】
伸縮部10は、先端部に形成されテープ1が180度折り返された折返部3と、テープ1の末端が固定された固定端4とを有するため、2本のテープ1が重なった二重に形成される。したがって、例えば、テープ駆動装置30からテープ1が1m繰り出されると、駆動対象物101は0.5m
図1中上方向へ移動し、テープ駆動装置30がテープ1を1m巻き取ると、駆動対象物101は0.5m
図1中下方向へ移動する。伸縮部10はテープ1が二重に形成されるため、長手方向の剛性が増し、重量のある駆動対象物101を支持して駆動することが可能となる。
【0033】
一方、非伸縮部20は、1本のテープ1で形成される。これは、非伸縮部20は駆動対象物101を直接支持する部位ではなく、伸縮部10にテープ1を送る機能を有する部位であるため、伸縮部10と比較して大きな剛性は必要ないためである。非伸縮部20が1本のテープ1で形成されることによって、テープ1全体の長さを短くすることができ、伸縮装置100全体を軽量化することができる。
【0034】
伸縮部10には、長手方向に間隔を空けて配置され、2本のテープ1を束ねる複数の結束板11が設けられる。2本のテープ1は、
図4に示すように、互いの凹面1bが対向するように結束板11によって束ねられる。結束板11には、テープ1の外形形状と相似形状であってテープ1の外形形状よりも僅かに大きい円弧状の2つのガイドスリット11aが形成される。テープ1は、ガイドスリット11aを摺動自在に挿通し、伸縮部10の伸縮時にはガイドスリット11aに案内されて送られる。
【0035】
隣り合う結束板11は、紐12によって互いに連結されており、隣り合う結束板11を連結する紐12の長さによって隣り合う結束板11の間隔が設定される。折返装置50に一番近い結束板11(
図1中最上方の結束板11)は、紐12によって、折返装置50のケース51に取り付けられる。このように、各結束板11は、紐12を介して折返装置50に吊り下げられている。また、折曲装置40に一番近い結束板11(
図1中最下方の結束板11)は、紐12によって、折曲装置40のケース41に取り付けられる。これにより、紐12が全体に亘って張った状態が、伸縮部10の最大伸長状態となる。つまり、伸縮部10の最大伸長長さは、紐12の全体の長さによって規定される。紐12は、隣り合う結束板11の間隔を調整するための板間隔調整部材及び伸縮部10の最大伸長長さを規定する伸縮部最大長さ規定部材として機能する。板間隔調整部材及び伸縮部最大長さ規定部材は、紐12に限られず、ロープ状等であってもよい。
【0036】
テープ1の伸縮部10に過大な外力が作用し、伸縮部10がある部分で折れ曲がったとしても、伸縮部10のテープ1は複数の結束板11にて束ねられて支持されているため、外力が除去されると元の直線状に弾性復帰する。換言すれば、伸縮部10のテープ1は、複数の結束板11によって支持されていることにより、外力に対して折れ曲がることが防止されている。隣り合う結束板11の間隔は、伸縮部10の基端部から折返部3に向かって徐々に大きくなるように配置される。これは、伸縮部10には、基端側ほど大きな負荷が作用するためである。結束板11の数、及び隣り合う結束板11の間隔は、伸縮部10の長さ、駆動対象物101の重量、伸縮装置100の用途、及びテープ1の剛性等を考慮して設定される。
【0037】
テープ1の固定端4と折曲装置40のケース41との間には、圧力検出器としての圧力センサ60が設けられる。ケース41は固定端4を通じて伸縮部10に作用する荷重を支持する機能も有するため、圧力センサ60の検出結果に基づいて伸縮部10に作用する荷重を算出することができる。圧力センサ60の検出結果に基づいて、伸縮部10に作用する過負荷を判定したり、伸縮部10の折れ曲がりを判定したりすることが可能となる。
【0038】
折曲装置40は、ケース41と、ケース41に回転自在に設けられテープ1を案内するガイドローラ42と、ガイドローラ42に沿うテープ1にテンションを付与するテンション装置43と、ケース41に設けられ非伸縮部20側のテープ1を案内する第1ガイド部44と、ケース41に設けられ伸縮部10側のテープ1を案内する第2ガイド部45と、を有する。
【0039】
テンション装置43は、回転自在に設けられガイドローラ42に沿うテープ1に押し付けられるローラ43aと、ローラ43aをガイドローラ42に向けて付勢する付勢手段としてコイルばね43bと、を有する。コイルばね43bによりローラ43aがガイドローラ42に向けて押し付けられることによって、テープ1は断面円弧状から断面矩形状に変形して略平らな状態でガイドローラ42の外周面に沿って送られる。したがって、テープ1はガイドローラ42によってスムーズに送り方向が変更される。
【0040】
第1ガイド部44及び第2ガイド部45には、テープ1が摺動自在に挿通し、テープ1を案内する円弧状のガイドスリットが形成される。本実施形態では、テープ1が90度折り曲げられるように、第1ガイド部44と第2ガイド部45の取付位置が設定される。テープ1は、テープ駆動装置30から繰り出されると、第1ガイド部44からガイドローラ42に向かって断面円弧状から断面矩形状に徐々に変形し、ガイドローラ42から第2ガイド部45に向かって断面矩形状から断面円弧状に徐々に変形する。第1ガイド部44と第2ガイド部45の位置関係を調整することによって、折曲装置40でのテープ1の折り曲げ角度が調整される。
【0041】
折返装置50は、ケース51と、ケース51に回転自在に設けられテープ1を案内するガイドローラ52と、ガイドローラ52の外周面に沿って形成されたガイド壁53と、ケース51に設けられテープ1を案内するガイド部54と、を有する。
【0042】
ガイド部54には、テープ1が摺動自在に挿通し、テープ1を案内する円弧状の2つのガイドスリットが形成される。ガイド部54に形成される2にガイドスリットの形状は、
図4に示す結束板11に形成された2つのガイドスリット11aと同じ形状である。
【0043】
ケース51内には、ガイドローラ52の外周面とガイド壁53との間にC字状の通路55が形成される。テープ1は、通路55を通過する際に、断面円弧状から断面矩形状に変形して略平らな状態でガイドローラ52の外周面に沿って送られる。したがって、テープ1は通路55によってスムーズに送り方向が変更される。
【0044】
以上のように構成される伸縮装置100の動作について、
図1及び2を参照して説明する。
【0045】
モータ32が正転駆動すると、テープ駆動装置30のリール31からテープ1が繰り出され、繰り出されたテープ1は、非伸縮部20から伸縮部10へと送られる。これにより、伸縮部10が伸長し(
図1中上方向へ伸長)、折返装置50に取り付けられた駆動対象物101は
図1中上方向へ移動する。伸縮部10の最大伸長状態では、紐12が全体に亘って張った状態となり、各結束板11は紐12を介して折返装置50に吊り下げられた状態となる。
【0046】
一方、モータ32が逆転駆動すると、伸縮部10のテープ1が非伸縮部20へと送られ、テープ駆動装置30のリール31にテープ1が巻き取られる。これにより、伸縮部10が収縮し(
図1中下方向へ収縮)、折返装置50に取り付けられた駆動対象物101は
図1中下方向へ移動する。
図2は、伸縮部10が最収縮した状態を示す。この最収縮状態では、紐12は緩んだ状態となり(
図2では紐12の図示を省略)、折返装置50のケース51が一端の結束板11に接触すると共に、折曲装置40のケース41が他端の結束板11に接触して、隣り合う結束板11が互いに接触した状態となる。このように、伸縮部10は、折返装置50のケース51と折曲装置40のケース41との間で隣り合う結束板11が互いに接触するまで収縮する。
【0047】
次に、
図5及び6を参照して、伸縮装置100によって、天井70に設けられた開口部70aを開閉する天窓103を駆動する場合について説明する。
図5は天窓103が閉まった状態を示し、
図6は天窓103が開いた状態を示す。なお、
図5及び
図6では、折曲装置40のガイドローラ42、テンション装置43、及びテープ1の折曲部2の図示を省略している。
【0048】
天窓103は軸71を中心として開閉自在に天井70に取り付けられる。天窓103には、伸縮装置100の折返装置50のケース51が軸56を介して回転自在に連結される。
【0049】
図1及び2に示す伸縮装置100では、折曲装置40でのテープ1の折り曲げ角度が90度固定の形態であった。これに対して、
図5及び
図6に示す伸縮装置100は、折曲装置40でのテープ1の折り曲げ角度が可変である。具体的に説明すると、折曲装置40は、ケース41として、第1部材としての第1ケース41aと第2部材としての第2ケース41bとを有し、第1ケース41aと第2ケース41bは軸41cを介して回転自在に連結される。第1ケース41aには、非伸縮部20側のテープ1を案内する第1ガイド部44が設けられ、第2ケース41bには、伸縮部10側のテープ1を案内する第2ガイド部45が設けられる。
【0050】
図5に示すように、天窓103が閉まった状態では、伸縮部10は、非伸縮部20との成す角度がα度の状態で天窓103を支持している。
【0051】
天窓103を開く際には、スイッチ操作等によりモータ32を駆動し、テープ駆動装置30にてテープ1を巻き取って伸縮部10を収縮させる。
図6に示すように、伸縮部10の収縮に伴って、天窓103は軸71を中心に回動して開く。この際、天窓103の回動に伴って、第1ケース41aと第2ケース41bが相対回転し、伸縮部10と非伸縮部20の成す角度がβ度(β>α)に変化する。このように、伸縮部10が伸縮して天窓103が回動すると、伸縮部10は非伸縮部20に対して回転して天窓103の回動に追従する。
【0052】
天窓103の全開及び全閉のタイミングで伸縮装置100を自動停止させるためにリミットスイッチを設け、リミットスイッチの動作に連動してモータ32を停止させるようにしてもよい。また、折曲装置40又は折返装置50にテープ1の送り量及び巻き取り量を検出するセンサを設け、そのセンサの検出結果に基づいてモータ32を停止させるようにしてもよい。また、天窓103が全閉する前に圧力センサ60によって検出された圧力が急激に増加した場合には、天井70と天窓103の間に異物が噛み込んだと判定してモータ32を停止させるようにしてもよい。
【0053】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0054】
テープ1がテープ駆動装置30と伸縮部10とに亘る非伸縮部20を有することにより、テープ駆動装置30を伸縮部10から離して配置することができる。つまり、非伸縮部20の分だけ、テープ駆動装置30と伸縮部10を離して配置することができる。したがって、伸縮装置100を設置する際に、テープ駆動装置30が他の構造物と干渉する場合には、非伸縮部20の長さを調整して、テープ駆動装置30と他の構造物との干渉を回避することができる。このように、伸縮装置100を設置する上で、伸縮装置100のなかで占める割合が大きいテープ駆動装置30が支障となることがないため、伸縮装置100の設置自由度は高いものとなる。
【0055】
以下に、上記実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。なお、変形例を示す
図7~13において、上記実施形態に係る伸縮装置100と同一の機能を有する構成には、図面中に同一の符号を付す。
【0056】
(1)上記実施形態では、テープ1が断面円弧状である形態について説明した。しかし、テープ1の断面形状は円弧状に限定されず、矩形や円形等であってもよい。
【0057】
(2)上記実施形態では、折曲装置40が1つ設けられる形態について説明した。これに代わり、
図7に示すように、折曲装置40を2つ以上設けるようにしてもよい。つまり、非伸縮部20に複数の折曲部2を形成してもよい。折曲装置40を複数設けることによって、テープ駆動装置30及び非伸縮部20と他の構造物との干渉をより効果的に防ぐことができる。この形態において、テープ1が断面円弧状である場合には、複数の折曲部2及び折返部3は、テープ1の凸面1aが外側となるように同方向に曲げることが好ましい。なお、この形態において、
図5及び6に示すように、非伸縮部20に対して伸縮部10を回転可能に構成する場合には、複数の折曲装置40のうち、伸縮部10と非伸縮部20の境界に配置された折曲装置40Aのケース41を、回転自在に連結された第1ケース41aと第2ケース41b(
図5及び6参照)にて構成すればよい。
【0058】
(3)上記実施形態のように折曲装置40を設ける代わりに、テープ1の経路にガイドチェーンを配置し、ガイドチェーンに沿ってテープ1を折り曲げることによって、非伸縮部20に折曲部2を形成してもよい。
【0059】
(4)上記実施形態では、非伸縮部20に折曲部2を形成する形態について説明した。しかし、折曲部2は必須の構成ではない。テープ駆動装置30及び非伸縮部20と他の構造物との関係によっては、
図8に示すように、伸縮部10と非伸縮部20を直線状に設けてもよい。この形態では、伸縮部10と非伸縮部20の境界にケース85を設け、テープ1の固定端4をケース85に固定すればよい。伸縮部10は、折返装置50のケース51とケース85との間で隣り合う結束板11が互いに接触するまで収縮する。
【0060】
(5)上記実施形態では、テープ1は、長手方向に垂直な断面が円弧状に形成され、折曲部2及び折返部3とも、テープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられる。これは、テープ1は凹面1bが外側となる方向に曲がるには大きな力が必要になるためである。しかし、
図9及び10のそれぞれに示す矯正具90,95を用いれば、テープ1が断面円弧状であっても、折曲部2及び折返部3を凹面1bが外側となる方向にテープ1を曲げることができる。
図9(a)及び
図10(a)は、それぞれ矯正具90,95の斜視図であり、
図9(b)及び
図10(b)は、それぞれ矯正具90,95の正面図である。
図9に示す矯正具90は、テープ1を180度折り返すためのものである。矯正具90は、テープ1が通過するU字状の通路91を有する。通路91は、通過するテープ1が断面円弧状から断面矩形状に変形するように、矯正具90の端面90a,90bに開口して形成される出入口91a,91bがテープ1の断面形状と同様の断面円弧状に形成される一方、出入口91a,91bの間は断面矩形状に形成される。
図10に示す矯正具95は、テープ1を90度折り曲げるためのものである。矯正具95も、テープ1が通過する通路96を有する。通路96は、出入口96a,96bが断面円弧状に形成される一方、出入口96a,96bの間は断面矩形状に形成される。このように、矯正具90,95を用いることによって、テープ1が断面円弧状であっても、テープ1は通路91,96を通過する際に強制的に断面矩形状に変形されるため、折曲部2及び折返部3を凹面1bが外側となる方向に曲げ易くなる。なお、
図9及び10に示す矯正具90,95は、一例であって、2つの出入口の位置関係によりテープ1の折り曲げ角度を任意に設定することができる。また、このような内部にテープ1が通過する通路を有する矯正具を、上記実施形態のように凸面1bが外側となる方向にテープ1を曲げる場合にも用いてもよい。
【0061】
(6)上記実施形態では、テープ1の固定端4が折曲装置40のケース41に固定される形態について説明した。これに代わり、テープ1の固定端4は、テープ駆動装置30のケース34に固定してもよい。この形態では、1本の連続したテープ1は、テープ駆動装置30から繰り出された後、折曲装置40にて90度折り曲げられ、折返装置50にて180度折り返され、折曲装置40にて90度折り曲げられ、末端がテープ駆動装置30のケース34に固定される。このように、テープ1の固定端4を固定する位置は、折曲装置40のケース41に限定されない。
【0062】
(7)上記実施形態では、テープ1の自由端として機能する折返部3が1つ設けられる形態について説明した。これに代わり、
図11に示すように、折返部3を2つ以上設けるようにしてもよい。この形態では、折返部3に対応して折返装置50も2つ設けられ、2つの折返装置50のケース51に亘って駆動対象物101が取り付けられる。折返部3が2つ設けられることによって、伸縮部10は、4本のテープ1が重なった四重に形成される。よって、伸縮部10が二重に形成される上記実施形態と比較して、伸縮部10の長手方向の剛性が増し、より重量のある駆動対象物101を支持して駆動することが可能となる。伸縮部10は、基端部に形成されテープ1が180度折り返された基端側折返部3aを有する。テープ1の基端側折返部3aは、ケース81に設けられた矯正具82,83(
図10に示す矯正具95と同様のもの)に案内される。テープ1の固定端4はケース81に固定される。伸縮部10は、2つの折返装置50のケース51と折曲装置40のケース41との間で隣り合う結束板11が互いに接触するまで収縮する。
【0063】
(8)上記実施形態では、テープ1が折返部3と固定端4を有する形態について説明した。これに代わり、
図12に示すように、テープ1を折り返さずに、テープ1の先端部を駆動対象物101に取り付けるようにしてもよい。この形態では、伸縮部10を複数本のテープ1で構成してもよい。具体的には、1つのテープ駆動装置30から重ね合わされた複数本のテープ1を同時に繰り出すようにしてもよい。また、複数のテープ駆動装置30からそれぞれ繰り出されたテープ1を結束板11にて束ねるようにしてもよい。
【0064】
(9)上記実施形態では、テープ駆動装置30は、リール31をモータ32で駆動することによって、テープ1の繰り出しと巻き取りを行う形態について説明した。これに代わり、テープ駆動装置30は、テープ1を一対のローラで挟み、一対のローラの一方をモータで駆動することによって、リール31に巻き付けられたテープ1の繰り出しと巻き取りを行うようにしてもよい。このように、テープ1の繰り出しと巻き取りを行うテープ駆動装置30の構成は、特定の構成に限定されない。
【0065】
(10)上記実施形態では、伸縮装置100によって天窓103を駆動する場合について説明した。伸縮装置100の用途としては、ドアの開閉装置や、車両のリアハッチを開閉するステー等の種々の用途に利用することができる。また、伸縮装置100は、
図13に示すように、駆動対象物101に代えて、開閉動作が可能なハンド102等のアタッチメントを折返装置50に取り付けてマニピュレータとしても用いることができる。
【0066】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0067】
伸縮装置100は、弾性を有するテープ1と、テープ1の巻き取りと繰り出しを行うテープ駆動装置30と、を備え、テープ1は、テープ駆動装置30の駆動に伴って伸縮する伸縮部10と、テープ駆動装置30と伸縮部10とに亘る非伸縮部20と、を有する。
【0068】
この構成では、テープ1がテープ駆動装置30と伸縮部10とに亘る非伸縮部20を有するため、テープ駆動装置30をテープ1の伸縮部10から離して設置することができる。したがって、伸縮部10を所望の位置に設置することができる。よって、設置自由度の高い伸縮装置100を提供することができる。
【0069】
また、非伸縮部20は、テープ1が折り曲げられた折曲部2を有する。
【0070】
この構成では、伸縮装置100を設置する際に伸縮部10の延長線上に他の構造物が存在する場合には、テープ1に折曲部2を形成することによって、テープ駆動装置30及び非伸縮部20と他の構造物との干渉を回避することができる。
【0071】
また、テープ1は、1本の連続したテープからなり、伸縮部10は、先端部に形成されテープが180度折り返された折返部3と、テープ1の末端が固定された固定端4と、を有する。
【0072】
この構成では、伸縮部10は、折返部3と固定端4とを有するため、テープ1が二重に形成される。したがって、伸縮部10の長手方向の剛性を高めることができる。
【0073】
また、テープ1は、長手方向に垂直な断面が円弧状に形成され、非伸縮部20は、テープ1が折り曲げられた複数の折曲部2を有し、複数の折曲部2は、テープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられてなる。
【0074】
この構成では、複数の折曲部2はテープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられてなるため、テープ1がスムーズに送られる。
【0075】
また、テープ1は、長手方向に垂直な断面が円弧状に形成され、伸縮部10は、先端部に形成されテープが180度折り返された折返部3を有し、非伸縮部20は、テープ1が折り曲げられた折曲部2を有し、折返部3及び折曲部2は、テープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられてなる。
【0076】
この構成では、折返部3及び折曲部2はテープ1の凸面1aが外側となる方向に曲げられてなるため、テープ1がスムーズに送られる。
【0077】
また、伸縮装置100は、伸縮部10と非伸縮部20の境界に配置され、テープ1を所定角度折り曲げる折曲装置40をさらに備え、折曲装置40は、回転自在に連結された第1ケース41a(第1部材)と第2ケース41b(第2部材)を有し、第1ケース41aは、非伸縮部20側のテープ1を案内し、第2ケース41bは、伸縮部10側のテープ1を案内する。
【0078】
この構成では、折曲装置40は回転自在に連結された第1ケース41aと第2ケース41bを有するため、伸縮部10は非伸縮部20に対して回転可能となる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0080】
100・・・伸縮装置、1・・・テープ、1a・・・テープの凸面、2・・・折曲部、3・・・折返部、4・・・固定端、10・・・伸縮部、11・・・結束板、12・・・紐、20・・・非伸縮部、30・・・テープ駆動装置、31・・・リール、32・・・モータ、40・・・折曲装置、50・・・折返装置、60・・・圧力センサ、101・・・駆動対象物、102・・・ハンド、103・・・天窓