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特許7411189分岐型分解性ポリエチレングリコール結合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】分岐型分解性ポリエチレングリコール結合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/333 20060101AFI20231228BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20231228BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
C08G65/333
C08G81/00
C08L101/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020055412
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2020164856
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2019069450
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業、「高分子ナノテクノロジーを基盤とした革新的核酸医薬シーズ送達システムの創出」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100109542
【弁理士】
【氏名又は名称】田伏 英治
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】大坂間 順規
(72)【発明者】
【氏名】羽村 美華
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 高徳
(72)【発明者】
【氏名】西山 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】松井 誠
(72)【発明者】
【氏名】武元 宏泰
(72)【発明者】
【氏名】野本 貴大
(72)【発明者】
【氏名】ソン シャオハン
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106421806(CN,A)
【文献】特表2008-538200(JP,A)
【文献】特表2017-535633(JP,A)
【文献】特表2009-527581(JP,A)
【文献】国際公開第2006/088248(WO,A1)
【文献】特表2007-534324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/333
C08G 81/00
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(A):
【化1】


(式中、nは110~690であり、Wはグルタミン酸を中心とした対称構造の5~47残基のオリゴペプチドであり、ここで、Wのグルタミン酸を中心とした対称構造のオリゴペプチドが、以下のw1、w2またはw3の構造:
【化2】
【化3】

【化4】
(式中、Gluはグルタミン酸の残基であり、および
Zは、C末端アミノ酸としてグリシンを有する、グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-ロイシン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシン、バリン-アラニン-グリシン、またはフェニルアラニン-グリシンである。)
を有するものであり、aは2~8であり、Dは生体関連物質であり、LおよびLはそれぞれ独立して、2価のスペーサーであり、ならびにbは1~40である。)で示される分解性ポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質。
【請求項2】
bが1である請求項1に記載の生体関連物質。
【請求項3】
分解性ポリエチレングリコール誘導体1分子の分子量が20,000以上である請求項1または2に記載の生体関連物質。
【請求項4】
が、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、2級アミノ基、カルボニル基、ウレア結合、トリアゾリル基、マレイミドとメルカプトの結合、またはオキシム結合;またはこれらの結合および/または基を含んでいてもよいアルキレン基である請求項1~のいずれか1項に記載の生体関連物質。
【請求項5】
が、アルキレン基;またはウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、2級アミノ基、カルボニル基、およびウレア結合から選択される少なくとも一つの結合および/または基を含むアルキレン基である請求項1~のいずれか1項に記載の生体関連物質。
【請求項6】
Dの生体関連物質が、ホルモン、サイトカイン、抗体、アプタマーまたは酵素である請求項1~のいずれか1項に記載の生体関連物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内で分解する分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ホルモンやサイトカイン、抗体、酵素などの生体関連物質を用いた医薬品は、通常生体内へ投与されると腎臓における糸球体濾過や肝臓や脾臓などにおけるマクロファージによる取り込みによって、生体内から速やかに排出されてしまう。そのため血中半減期が短く、十分な薬理効果を得ることが困難であることが多い。この問題を解決するため、生体関連物質を糖鎖やポリエチレングリコールなどの親水性高分子やアルブミンなどによって化学修飾する試みが行われている。その結果、分子量の増大や水和層の形成などにより生体関連物質の血中半減期を延長することが可能となる。また、ポリエチレングリコールで修飾することで、生体関連物質の毒性や抗原性の低下、難水溶性薬剤の溶解性向上などの効果が得られることも良く知られている。
【0003】
ポリエチレングリコールで修飾された生体関連物質は、ポリエチレングリコールのエーテル結合と水分子との水素結合で形成される水和層で覆われ、分子サイズが大きくなることから、腎臓における糸球体濾過を回避することができる。さらにオプソニンや各組織を構成する細胞表面との相互作用が低下し、各組織への移行が減少することが知られている。ポリエチレングリコールは生体関連物質の血中半減期を延長させる優れた素材であり、その性能は分子量が大きいほど効果が高いことが分かっている。これまで、分子量4万以上の高分子量のポリエチレングリコールで修飾した生体関連物質の研究が多数行なわれており、有意にその血中半減期を延長できる結果が得られている。
【0004】
ポリエチレングリコールは生体関連物質の性能改善に用いられる修飾剤の中で至適基準とされており、現在ではポリエチレングリコール修飾製剤が複数上市され、医療現場で使用されている。一方で、2012年に欧州医薬品庁(EMA)から、分子量4万以上の高分子量のポリエチレングリコールで修飾した生体関連物質を一定の投与量以上で長期間動物に投与すると、一部の組織の細胞内に空胞が発生するとの現象が報告された(非特許文献1)。現時点において、空胞の発生自体が人体に悪影響を与えるとの報告はなく、また、先のEMAの報告において用いられた投与量は、医療現場において一般的に適用される投与量と比べて極めて高用量であることなどを考慮すれば、現在製造販売されている分子量が4万以上のポリエチレングリコールで修飾された治療製剤の安全性は問題ないといえる。しかしながら、非常に特殊な疾患(例えば、小人症など)の治療においては、ポリエチレングリコール修飾製剤を高用量、且つ、長期間に患者へ投与する治療プロトコルが採用されることも想定され得る。従って、かかる特殊な状況においても適用可能な、細胞に空胞を発生させないポリエチレングリコール修飾製剤の開発には潜在的な需要があると予想される。
【0005】
非特許文献2においては、通常のポリエチレングリコール修飾製剤の投与量に比べ、大過剰量のポリエチレングリコールを単独で動物に長期間投与したところ、分子量2万では空胞は見られず、分子量4万において空胞の発生が確認されている。空胞を抑制する手段の一つとして、ポリエチレングリコールの分子量を小さくすることが考えられるが、分子量を小さくすると生体関連物質の血中半減期を十分に改善することができないという問題が生じる。
【0006】
高分子量のポリエチレングリコールを体内で低分子量のポリエチレングリコールに分解し、腎臓からの排出を促進する技術については報告例がある。特許文献1には、生体内で切断されるスルフィド結合やペプチド結合部位を有したポリエチレングリコール誘導体に関する記載がなされている。当該ポリエチレングリコール誘導体は、生体内で腎臓からの排出に適した分子量まで分解されるとの記載がある。しかし、具体的な分解に関するデータは全く示されておらず、腎臓からの排出が促進されたというデータもない。さらに細胞の空胞に関する記載はない。
【0007】
特許文献2には、生体内の低pH環境下において加水分解可能なアセタール部位を有したポリエチレングリコール誘導体に関する記載がなされている。当該ポリエチレングリコール誘導体は、生体内で腎臓からの排出に適した分子量まで分解されるとの記載がある。しかし、具体的に腎臓からの排出が促進されたというデータは無く、さらに細胞の空胞に関する記載もない。また、これら加水分解が可能なアセタール部位は血中でも徐々に分解することが知られており、修飾した生体関連物質の血中半減期を十分に改善することができないと予想される。
【0008】
一方で、薬物を効果的にリリースするために分解性のオリゴペプチドを導入したポリエチレングリコール誘導体や体内で分解するハイドロゲルなどの報告例はある。
【0009】
非特許文献3には、酵素によって分解するオリゴペプチド部位を有したポリエチレングリコール誘導体に関する記載がなされている。ここではオリゴペプチドは、抗癌剤とポリエチレングリコールの間のリンカーとして導入されており、腫瘍周辺に特異的に発現している酵素によってオリゴペプチドが分解し、効率よく抗癌剤をリリースすることが報告されている。目的は抗癌剤のリリースであり、細胞の空胞を抑制する目的でポリエチレングリコールに分解性を付与するものではない。
【0010】
非特許文献4には、酵素によって分解するオリゴペプチド部位を有した架橋分子と多分岐型のポリエチレングリコール誘導体を用いたハイドロゲルに関する記載がなされている。ここではオリゴペプチドは多分岐型のポリエチレングリコール誘導体を繋ぎ合わせる架橋分子として用いられ、さらに酵素による分解性をハイドロゲルに付与することができる。目的は分解性のハイドロゲルの調製であり、細胞の空胞を抑制する目的でポリエチレングリコールに分解性を付与するものではない。
【0011】
特許文献3には、オリゴペプチドを骨格とした分岐型のポリエチレングリコール誘導体に関する記載がなされている。ここではオリゴペプチドは、ポリエチレングリコール誘導体の基本骨格として用いられており、酵素による分解性を付与するものではない。また、オリゴペプチドにリジンやアスパラギン酸など、側鎖にアミノ基やカルボキシル基を有したアミノ酸を含むことが特徴であり、それらを反応に利用した分岐型のポリエチレングリコール誘導体を合成することが目的である。細胞の空胞を抑制する目的のポリエチレングリコール誘導体ではない。
【0012】
さらに生体関連物質を修飾する用途に用いられるポリエチレングリコール誘導体においては、一般的に直鎖型と分岐型があり、非特許文献5には、直鎖型よりも分岐型のほうが有意に生体関連物質の血中半減期を延長させるとの記載がある。近年、上市されたポリエチレングリコール修飾製剤のほとんどは分岐型が採用されている。しかし、これまで当該分野において、細胞の空胞を抑制する分岐型のポリエチレングリコール誘導体で修飾された生体関連物質に関する報告はない。
【0013】
以上のように、血中では安定で、修飾した生体関連物質の血中半減期を改善することができ、さらに細胞内では特異的に分解して、細胞の空胞の発生を抑制することができる分岐型の高分子量のポリエチレングリコール誘導体で修飾された生体関連物質が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特表2009-527581号公報
【文献】国際公開第2005/108463号
【文献】国際公開第2006/088248号
【非特許文献】
【0015】
【文献】EMA/CHMP/SWP/647258/2012
【文献】Daniel G. Rudmann, et al.,Toxicol. Pathol., 41, 970-983(2013)
【文献】Francesco M Veronese, et al., Bioconjugate Chem., 16, 775-784(2005)
【文献】Jiyuan Yang, et al., Marcomol. Biosci., 10(4), 445-454(2010)
【文献】Yulia Vugmeysterang, et al., Bioconjugate Chem., 23, 1452-1462(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、細胞の空胞を引き起こさない高分子量の分岐型ポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質を提供することにある。より具体的には、生体内の血中で安定であり、且つ細胞内で分解される分岐型分解性ポリエチレングリコール誘導体にて修飾され、血中半減期が改善された生体関連物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、細胞内にて分解するオリゴペプチドを有した分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質を発明した。
【0018】
即ち、本発明は以下に示すとおりである。
[1]下式(A):
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、nは45~950であり、Wはグルタミン酸を中心とした対称構造の5~47残基のオリゴペプチドであり、aは2~8であり、Dは生体関連物質であり、LおよびLはそれぞれ独立して、2価のスペーサーであり、ならびにbは1~40である。)で示される分解性ポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質。
[2]下式(1):
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、nは45~950であり、Wはグルタミン酸を中心とした対称構造の5~47残基のオリゴペプチドであり、aは2~8であり、Dは生体関連物質であり、ならびにLおよびLはそれぞれ独立して、2価のスペーサーである。)で示される分解性ポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質。
[3]Wのグルタミン酸を中心とした対称構造のオリゴペプチドが、以下のw1、w2またはw3の構造を有するオリゴペプチドである[1]または[2]記載の生体関連物質。
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、Gluはグルタミン酸の残基であり、およびZはシステインを除く中性アミノ酸からなる2~5残基の分解性オリゴペプチドである。)
[4]Zの分解性オリゴペプチドが、C末端のアミノ酸としてグリシンを有するオリゴペプチドである[3]記載の生体関連物質。
[5]Zの分解性オリゴペプチドが、ハイドロパシー指標が2.5以上である疎水性の中性アミノ酸を少なくとも1つ有するオリゴペプチドである[3]または[4]のいずれかに記載の生体関連物質。
[6]分解性ポリエチレングリコール誘導体1分子の分子量が20,000以上である[1]~[5]のいずれかに記載の生体関連物質。
[7]Lが、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、2級アミノ基、カルボニル基、ウレア結合、トリアゾリル基、マレイミドとメルカプトの結合、またはオキシム結合;またはこれらの結合および/または基を含んでいてもよいアルキレン基である[1]~[6]のいずれかに記載の生体関連物質。
[8]Lが、アルキレン基;またはウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、2級アミノ基、カルボニル基、およびウレア結合から選択される少なくとも一つの結合および/または基を含むアルキレン基である[1]~[7]のいずれかに記載の生体関連物質。
[9]Dの生体関連物質が、ホルモン、サイトカイン、抗体、アプタマーまたは酵素である、[1]~[8]のいずれかに記載の生体関連物質。
【発明の効果】
【0027】
本発明の生体関連物質は、生体内の血中では安定であり、細胞内の酵素によって分解するオリゴペプチドを構造内に有した分岐型分解性ポリエチレングリコール誘導体によって修飾されている。そのため、当該生体関連物質は、血中では安定であり、従来の分解性を有さないポリエチレングリコール誘導体で修飾された生体関連物質と同等の血中半減期を有する。さらに、当該生体関連物質は、細胞内に取り込まれた場合、分解性ポリエチレングリコール誘導体のオリゴペプチド部位が速やかに分解されるため、これまで課題とされていた細胞の空胞の発生を抑制することができる。また、分解性ポリエチレングリコール誘導体を構成するオリゴペプチドは、グルタミン酸を中心とした対称構造を有しており、すべてのポリエチレングリコール鎖の末端に同一の分解性オリゴペプチドZが結合することになる。そのため細胞内での分解時に生じるポリエチレングリコール分解物は同一分子量、同一構造のものとなり、組織や細胞からの排出が均一になる特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1の化合物(p3)(NH ―E(FG-200ME) )のGPC分析結果を示す。
図2】実施例8の細胞を用いた分解性試験において、細胞内から回収した化合物(p3)(NH ―E(FG-200ME) )のGPC分析結果を示す。
図3】実施例5の化合物(p13)(NH ―E{E(FG-100ME) )のGPC分析結果を示す。
図4】実施例8の細胞を用いた分解性試験において、細胞内から回収した化合物(p13)(NH ―E{E(FG-100ME) )のGPC分析結果を示す。
図5】実施例9のサーモンカルシトニンと結合体(1)、メトキシPEG40kDa-sCTのRPLC分析結果を示す。
図6】実施例3で得られた化合物(p8)と、実施例9で得られた結合体(1)のMALDI-TOF-MSの分析結果を示す。
図7】メトキシPEGアルデヒド40kDaと、実施例9で得られたメトキシPEG40kDa-sCTのMALDI-TOF-MSの分析結果を示す。
図8】実施例9のサーモンカルシトニンと結合体(1)、メトキシPEG40kDa-sCTのSDS-PAGEの分析結果を示す(左図:CBB染色、右図:ヨウ素染色)。
図9】実施例10のヒト成長ホルモンと結合体(2)、メトキシPEG40kDa-hGHのRPLC分析結果を示す。
図10】実施例10のヒト成長ホルモンと結合体(2)のMALDI-TOF-MSの分析結果を示す。
図11】実施例10のヒト成長ホルモンとメトキシPEGアルデヒド40kDa-hGHのMALDI-TOF-MSの分析結果を示す。
図12】実施例10のヒト成長ホルモンと結合体(2)、メトキシPEG40kDa-hGHののSDS-PAGEの分析結果を示す(左図:CBB染色、右図:ヨウ素染色)。
図13】実施例13のメトキシPEGアミン40kDaを長期投与したマウスの脳脈絡叢の切片の画像(矢印は空胞を示す)を示す。
図14】実施例13の化合物(p3)(NH ―E(FG-200ME) )を長期投与したマウスの脳脈絡叢の切片の画像を示す。
図15】実施例14のPBS、メトキシPEGアミン40kDa、メトキシPEGアミン20kDa、化合物(p3)(NH ―E(FG-200ME) )を長期投与したマウスの脳脈絡叢の切片の画像(染色された部分がPEGの蓄積を示す)を示す。
図16】実施例12のサーモンカルシトニンと、PEG化サーモンカルシトニンの生理活性 (血中カルシウム濃度)の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本発明に係る分解性ポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質は、下式(A)で示される。
【0031】
【化6】
【0032】
(式中、nは45~950であり、Wはグルタミン酸を中心とした対称構造の5~47残基のオリゴペプチドであり、aは2~8であり、Dは生体関連物質であり、LおよびLはそれぞれ独立して、2価のスペーサーであり、ならびにbは1~40である。)
【0033】
本発明の式(A)の生体関連物質に結合するポリエチレングリコール誘導体1分子の分子量は、通常は4,000~160,000であり、好ましくは10,000~120,000であり、更に好ましくは20,000~80,000である。本発明の1つの好ましい実施形態では、本発明の式(A)のポリエチレングリコール誘導体1分子の分子量は20,000以上である。ここでいう分子量とは数平均分子量(Mn)である。
【0034】
式(A)中のnは、ポリエチレングリコールの繰り返しユニット数であり、通常は45~950であり、好ましくは110~690であり、更に好ましくは220~460である。
【0035】
式(A)中のaは、オリゴペプチドと結合しているポリエチレングリコール鎖の本数であり、通常は2~8であり、好ましくは2または4または8であり、更に好ましくは2または4である。
【0036】
式(A)中のbは、生体関連物質に結合している分解性ポリエチレングリコール誘導体の分子数であり、通常は1~40であり、好ましくは1~20であり、更に好ましくは1~10である。
生体関連物質に結合するポリエチレングリコール誘導体の分子数を増やすと、血中半減期の延長、抗原性の低減などの効果が得られるが、生体関連物質によっては活性が低下する可能性がある。一方で、一部の酵素などの生体関連物質においては、複数のポリエチレングリコール誘導体を結合させても活性が低下しないことが知られている。
【0037】
式(A)中のLおよびLは、それぞれ独立して、2価のスペーサーであり、これらのスペーサーは共有結合を形成し得る基であれば特に制限は無いが、Lは、好ましくはアミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、2級アミノ基、カルボニル基、ウレア結合、トリアゾリル基、マレイミドとメルカプトの結合、またはオキシム結合;またはこれらの結合および/または基を含んでいてもよいアルキレン基である。
また、Lは、好ましくはアルキレン基;またはアミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、2級アミノ基、カルボニル基、およびウレア結合から選択される少なくとも一つの結合および/または基を含むアルキレン基である。Lは、ポリエチレングリコールの繰り返しユニットに炭素原子で結合しているものが好ましい。
およびLの特に好ましい態様は、下記の群(I)に示されるものである。また、群(I)のスペーサーを2つから5つ組み合わせても良い。2価のスペーサーとしてエステル結合とカーボネート結合は生体内の血中で徐々に分解するため適さない。
【0038】
群(I):
【0039】
【化7】
【0040】
(z1)~(z20)において、式中のsは0~10の整数を示し、好ましくは0~6の整数、更に好ましくは0~3の整数を示す。また、(z2)~(z20)において、式中のsは同一でも、異なっていてもよい。Lが、非対称な2価のスペーサーの場合、隣接する他の基との結合位置は特に限定されず、上記群(I)の前記式で表されるスペーサーの右側がWとの結合位置を示し、左側がDとの結合位置を示す場合と、左側がWとの結合位置を示し、右側がDとの結合位置を示す場合の両結合位置を取り得る。同様に、Lが、非対称な2価のスペーサーの場合、上記群(I)の前記式で表されるスペーサーの右側がOCHCHとの結合位置を示し、左側がWとの結合位置を示す場合と、左側がOCHCHとの結合位置を示し、右側がWとの結合位置を示す場合の両結合位置を取り得る。
【0041】
式(A)中のLとしては、群(I)の(z3)、(z6)、(z7)~(z20)で示される基が好ましく、(z6)、(z9)、(z10)、(z12)、(z14)、(z16)、(z18)または(z20)で示される基がより好ましく、(z10)、(z12)、(z16)または(z20)で示される基が更に好ましい。
式(A)中のLとしては、群(I)の(z1)、(z2)、(z3)、(z4)、(z5)、(z6)、(z7)または(z8)で示される基が好ましく、(z3)または(z5)で示される基がより好ましい。
【0042】
式(A)中のWは、グルタミン酸を中心とした対称構造の5~47残基のオリゴペプチドであり、生体内の血中で安定であり、かつ細胞内の酵素で分解するオリゴペプチドであれば特に制限はないが、オリゴペプチドを構成するアミノ酸としては、中心部分を構成するグルタミン酸以外は、システインを除く中性アミノ酸からなることが好ましい。ここでいうグルタミン酸を中心とした対称構造のオリゴペプチドとは、グルタミン酸のα位のカルボキシル基とγ位のカルボキシル基に同一のペプチドが結合した化合物を意味し、グルタミン酸を中心に対となるペプチドが対称構造をとるオリゴペプチドである。当該オリゴペプチド中の中性アミノ酸とグルタミン酸の数の構成比(中性アミノ酸の数/グルタミン酸の数)としては、通常は2~10であり、好ましくは2~8であり、更に好ましくは2~6である。Wを構成するアミノ酸は基本的にはL型である。
【0043】
Wの特に好ましい態様は、下記の群(II)に示されるものである。
【0044】
群(II):
【0045】
【化8】
【0046】
【化9】
【0047】
【化10】
【0048】
(式中、Gluはグルタミン酸の残基であり、およびZはシステインを除く中性アミノ酸からなる2~5残基の分解性オリゴペプチドである。)
【0049】
(w1)~(w3)中のZは、側鎖にアミノ基やカルボキシル基を持つアミノ酸、具体的には、リジン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸を含まない中性アミノ酸で構成されるオリゴペプチドであることが好ましい。本発明の式(A)の分岐型分解性ポリエチレングリコール誘導体の合成においては、原料であるポリエチレングリコール誘導体とオリゴペプチドを反応にて結合させる際、オリゴペプチドのC末端のカルボキシル基をポリエチレングリコール誘導体との縮合反応に利用する。しかし、当該オリゴペプチドが側鎖にアミノ基やカルボキシル基を持つアミノ酸を有する場合、縮合反応にてオリゴペプチド同士の副反応や、ポリエチレングリコール誘導体が目的であるC末端のカルボキシル基ではなく、側鎖のカルボキシル基にも導入した不純物が発生する。
この不純物は通常の抽出や晶析などの精製工程で除去することは難しいため、純度よく目的物を得るためには、側鎖にアミノ基やカルボキシル基を持たないアミノ酸からなるオリゴペプチドを用いることが望ましい。Zを構成するアミノ酸は、α-アミノ酸であり、また基本的にはL型である。
【0050】
中性アミノ酸であるシステインはメルカプト基を有しており、他のメルカプト基とジスルフィド結合を形成するため、(w1)~(w3)中のZは、システインを含まない中性アミノ酸からなるオリゴペプチドであることが好ましい。
【0051】
加えて、(w1)~(w3)中のZは、C末端のアミノ酸としてグリシンを有するオリゴペプチドであることが好ましい。C末端のカルボキシル基とポリエチレングリコール誘導体を反応させる際は、基本的にC末端のカルボキシル基を縮合剤などで活性化する必要がある。この活性化の工程にて、グリシン以外のアミノ酸ではエピメリ化が起こりやすく、立体異性体が副生することが知られている。オリゴペプチドのC末端のアミノ酸をアキラルなグリシンとすることで、立体異性体の副生の無い、高純度な目的物を得ることができる。
【0052】
さらに、(w1)~(w3)中のZは、ハイドロパシー指標が2.5以上である疎水性の中性アミノ酸、具体的には、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシンを少なくとも1つ有するオリゴペプチドであることが好ましく、フェニルアラニンを有するオリゴペプチドであることが更に好ましい。Kyte と Doolittleにより作成された、アミノ酸の疎水性を定量的に示すハイドロパシー指標(hydropathy index)は、値が大きいほど疎水的なアミノ酸であることを示す(Kyte J &
Doolittle RF, 1982, J Mol Biol, 157:105-132.)。
【0053】
(w1)~(w3)中のZは、生体内の血中で安定であり、かつ細胞内の酵素で分解する性能を有し、システインを除く中性アミノ酸からなる2~5残基のオリゴペプチドであれば特に制限は無いが、具体的な例としては、グリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-ロイシン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシン、バリン-アラニン-グリシン、フェニルアラニン-グリシンなどであり、好ましくはグリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、グリシン-グリシン-フェニルアラニン-グリシン、グリシン-フェニルアラニン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシン、バリン-アラニン-グリシン、またはフェニルアラニン-グリシンであり、より好ましくはグリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、グリシン-フェニルアラニン-グリシン、バリン-シトルリン-グリシン、またはフェニルアラニン-グリシンであり、さらにより好ましくはグリシン-フェニルアラニン-ロイシン-グリシン、またはフェニルアラニン-グリシンである。
【0054】
式(A)中のDは、生体関連物質であり、特に制限はないが、ヒト又は他の動物の疾患の診断、治癒、緩和、治療または予防に関わる物質である。具体的にはタンパク質、ペプチド、核酸、細胞、ウィルスなどを含み、好適なタンパク質またはペプチドとしては、ホルモン、サイトカイン、抗体、アプタマー、酵素などが挙げられる。
より具体的には、サイトカインとしては、免疫を調整するインターフェロンタイプI、タイプII、タイプIIIや、インターロイキンや腫瘍壊死因子、それらの受容体アンタゴニストなどが挙げられる。成長因子としては、造血因子であるエリスロポエチンや刺激因子である顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)などが挙げられ、血液凝固因子としては、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XII因子などが挙げられる。ホルモンとしては、カルシトニンやインスリン、そのアナログやエキセナチド、GLP-1、そしてソマトスタチンやヒト成長ホルモンなどが挙げられる。抗体としては、完全長抗体、また抗体フラグメントとして、FabやsvFVなどが挙げられ、アプタマーとしては、DNAアプタマー、RNAアプタマーなどが挙げられ、酵素としては、スーパーオキシドディスムターゼやウリカーゼなどが挙げられる。これらタンパク質は、血中での安定性が低く、ポリエチレングリコールで修飾し、血中半減期を延長させることが望ましい。
好適なタンパク質としては、インターフェロン、インターロイキン、エリスロポエチン、GCSF、第VIII因子、第IX因子、ヒト成長ホルモン、抗体フラグメントなどが挙げられ、より好ましくは、ヒト成長ホルモン、インターフェロン、GCSF、エリスロポエチン、または抗体フラグメント(特にFab)が挙げられ、さらに好ましくは、ヒト成長ホルモン、またはGCSFが挙げられる。
好適なペプチドとしては、インスリン、ビバリルジン、テリパラチド、エキセナチド、エンフビルチド、デガレリクス、ミファムルチド、ネシリチド、ゴセレリン、グラチラマー、オクトレオチド、ランレオチド、イカチバント、ジコチニド、プラムリンチド、ロミプロスチム、カルシトニン、オキシトシン、リュープロレリン、グルカゴンが挙げられ、より好ましくは、インスリン、エキセナチド、カルシトニン(特にサーモンカルシトニン)が挙げられる。
【0055】
式(A)で示される生体関連物質の好ましい態様の1つは、bが1である、下式(1)で示される生体関連物質である。
【0056】
【化11】
【0057】
(式中、n、W、a、D、LおよびLは、それぞれ前記と同義である。)
【0058】
式(1)の好ましい態様の1つは、Wがw1であり、およびa=2の下式(2)で示される生体関連物質である。
【0059】
【化12】
【0060】
(式中、Glu、Z、n、D、LおよびLは、前記と同義である。)
【0061】
式(1)の好ましい態様の1つは、Wがw2であり、およびa=4の下式(3)で示される生体関連物質である。
【0062】
【化13】
【0063】
(式中、Glu、Z、n、D、LおよびLは、前記と同義である。)
【0064】
式(1)の好ましい態様の1つは、Wがw3であり、およびa=8の下式(4)で示される生体関連物質である。
【0065】
【化14】
【0066】
(式中、Glu、Z、n、D、LおよびLは、前記と同義である。)
【0067】
本発明の式(A)の生体関連物質は、下式(5)で示される分解性ポリエチレングリコール誘導体と生体関連物質を反応させることによって得ることができる。
【0068】
【化15】
【0069】
(式中、Xは生体関連物質と反応可能な官能基であり、W、a、n、LおよびLは前記と同義である。)
【0070】
式(5)中のXは、化学修飾の対象となる生理活性タンパク質、ペプチド、抗体、核酸などの生体関連物質に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基であれば特に制限されない。例えば、「Harris, J. M. Poly(Ethylene Glycol) Chemistry; Plenum Press: New York, 1992」、「Hermanson, G. T. Bioconjugate Techniques, 2nd ed.; Academic Press: San
Diego, CA, 2008」および「PEGylated Protein Drugs: Basic Science and Clinical Applications; Veronese, F. M., Ed.; Birkhauser:
Basel, Switzerland,2009」などに記載されている官能基が挙げられる。
【0071】
式(5)中のXで示される「生体関連物質と反応可能な官能基」は、生体関連物質が有するアミノ基、メルカプト基、アルデヒド基、カルボキシル基、不飽和結合またはアジド基などの官能基と化学結合可能な官能基であれば特に制限されない。
具体的には、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシド基、カルボキシル基、メルカプト基、マレイミド基、置換マレイミド基、ヒドラジド基、ピリジルジチオ基、置換スルホネート基、ビニルスルホニル基、アミノ基、オキシアミノ基(HN-O-基)、ヨードアセトアミド基、アルキルカルボニル基、アルケニル基(例えば、アリル基、ビニル基)、アルキニル基、置換アルキニル基(例えば、後記の炭素数1~5の炭化水素基で置換されたアルキニル基)、アジド基、アクリル基、スルホニルオキシ基(例えば、アルキルスルホニルオキシ基)、α-ハロアセチル基、などが挙げられ、好ましくは、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシド基、マレイミド基、置換マレイミド基、ビニルスルホニル基、アクリル基、スルホニルオキシ基(例えば、炭素数1~5のアルキル-スルホニルオキシ基)、置換スルホネート基、カルボキシル基、メルカプト基、ピリジルジチオ基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、置換アルキニル基(例えば、後記の炭素数1~5の炭化水素基で置換された炭素数2~5のアルキニル基)、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基であり、より好ましくは活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、マレイミド基、オキシアミノ基およびアミノ基であり、特に好ましくはアルデヒド基、マレイミド基およびオキシアミノ基である。
【0072】
別の好適な実施形態において、かかる官能基Xは、下記の群(III)、群(IV)、群(V)、群(VI)、群(VII)および群(VIII)に分類することができる。
【0073】
群(III):生体関連物質が有するアミノ基と反応可能な官能基
下記の (a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(j)、または(k)で示される基が挙げられる。
【0074】
群(IV):生体関連物質が有するメルカプト基と反応可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、または(l)で示される基が挙げられる。
【0075】
群(V):生体関連物質が有するアルデヒド基と反応可能な官能基
下記の(h)、(m)、(n)、または(p)で示される基が挙げられる。
【0076】
群(VI):生体関連物質が有するカルボキシル基と反応可能な官能基
下記の(h)、(m)、(n)、または(p)で示される基が挙げられる。
【0077】
群(VII):生体関連物質が有する不飽和結合と反応可能な官能基
下記の(h)、(m)、または(o)で示される基が挙げられる。
【0078】
群(VIII):生体関連物質が有するアジド基と反応可能な官能基
下記の(l)で示される基が挙げられる。
【0079】
【化16】
【0080】
官能基(j)において、式中のWは塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)またはヨウ素原子(I)などのハロゲン原子を示し、好ましくはBr、またはI、より好ましくはIである。
【0081】
また、官能基(e)および官能基(l)において、式中のYおよびYは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~5の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1~5の炭化水素基である。炭素数1~5の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、またはエチル基である。
【0082】
また、官能基(k)において、式中のYはフッ素原子を含んでいてもよい炭素数が1~10の炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、4-メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、ビニル基、4-メチルフェニル基、または2,2,2-トリフルオロエチル基である。
【0083】
活性エステル基とは、脱離能の高いアルコキシ基を有したエステル基である。脱離能の高いアルコキシ基としては、ニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミド、ペンタフルオロフェノールなどから誘導されるアルコキシ基が挙げられる。活性エステル基は、好ましくはN-ヒドロキシスクシンイミドから誘導されるアルコキシ基を有したエステル基である。
【0084】
活性カーボネート基とは、脱離能の高いアルコキシ基を有したカーボネート基である。脱離能の高いアルコキシ基としては、ニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミド、ペンタフルオロフェノールなどから誘導されるアルコキシ基が挙げられる。活性カーボネート基は、好ましくはニトロフェノールまたはN-ヒドロキシスクシンイミドから誘導されるアルコキシ基を有したカーボネート基である。
【0085】
置換マレイミド基とは、マレイミド基の二重結合の片方の炭素原子に炭化水素基が結合しているマレイミド基である。炭化水素基は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、またはエチル基である。
【0086】
置換スルホネート基とは、スルホネート基の硫黄原子にフッ素原子を含んでいてもよい炭化水素基が結合しているスルホネート基である。フッ素原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、ビニル基、フェニル基、ベンジル基、4-メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基などが挙げられ、好ましくはメチル基、ビニル基、4-メチルフェニル基、または2,2,2-トリフルオロエチル基である。
【0087】
本発明の生体関連物質に用いられる分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、例えば、次のような工程を経て製造することができる。
【0088】
【化17】
【0089】
(工程中のPEGはポリエチレングリコール鎖であり、Peptideはオリゴペプチドであり、Proは保護基であり、およびLは2価のスペーサーである。)
【0090】
工程中のPEGは、ポリエチレングリコール鎖であり、分子量は、前記したポリエチレングリコールの繰り返しユニット数であるnで定義したとおりであり、つまりnが45~950であることから、その分子量の範囲は、2000~42000である。
【0091】
工程中のPeptideは、前記Zと同義のオリゴペプチドである。本工程ではN末端のアミノ基が保護基で保護されたオリゴペプチドを用いる。
【0092】
工程中のProは、保護基であり、ここで保護基とは、ある反応条件下で分子中の特定の化学反応可能な官能基の反応を防止または阻止する成分である。保護基は、保護される化学反応可能な官能基の種類、使用される条件および分子中の他の官能基もしくは保護基の存在により変化する。保護基の具体的な例は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば「Wuts, P. G. M.; Greene, T. W. Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed.; Wiley-Interscience: New York, 2007」に記載されている。また、保護基で保護された官能基は、それぞれの保護基に適した反応条件を用いて脱保護、すなわち化学反応させることで、元の官能基を再生させることができる。保護基の代表的な脱保護条件は前述の文献に記載されている。
【0093】
工程中のLは、前記L、およびLと同義の2価のスペーサーである。
【0094】
反応Aは、N末端のアミノ基が保護基で保護されたオリゴペプチドのカルボキシル基と、片末端がメトキシ基であるポリエチレングリコール誘導体のアミノ基を縮合反応にて結合させ、ポリエチレングリコール誘導体(1)を得る工程である。
オリゴペプチドのN末端のアミノ基の保護基は、特に制限は無いが、例えばアシル系保護基およびカーバメート系保護基が挙げられ、具体的にはトリフルオロアセチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
縮合反応としては、特に制限は無いが、縮合剤を用いる反応が望ましい。縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)などのカルボジイミド系の縮合剤を単独で使用しても良く、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)などの試薬と併用しても良い。また、より反応性の高いHATUやHBTU、TATU,TBTU、COMU、DMT-MMなどの縮合剤を使用しても良い。また反応を促進するため、トリエチルアミンやジメチルアミノピリジンなどの塩基を用いても良い。
反応で副生した不純物、または反応で消費されず残存したオリゴペプチドや縮合剤などは、精製除去を行うのが好ましい。精製は、特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出などで精製することができる。
【0095】
【化18】
【0096】
脱保護Bは、反応Aで得られたポリエチレングリコール誘導体(1)の保護基を脱保護して、ポリエチレングリコール誘導体(2)を得る工程である。脱保護反応としては、従来公知の方法を用いることができるが、オリゴペプチドやLの2価のスペーサーが分解しない条件を用いる必要がある。また、本工程は、反応Aの工程の一環として実施することも可能である。
脱保護反応で副生した不純物などは、精製除去を行うのが好ましい。精製は、特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出などで精製することができる。
【0097】
【化19】
【0098】
反応Cは、脱保護Bで得られたポリエチレングリコール誘導体(2)のアミノ基と、アミノ基が保護基で保護されたグルタミン酸誘導体の二つのカルボキシル基を縮合反応で結合させ、2本の分解性ポリエチレングリコール鎖がグルタミン酸残基で繋がれた構造である分岐型のポリエチレングリコール誘導体(3)を得る工程である。
前記反応Aと同様に、縮合剤を用いた反応が望ましく、反応を促進するため、トリエチルアミンやジメチルアミノピリジンなどの塩基を用いても良い。
グルタミン酸のアミノ基の保護基は、特に制限は無いが、例えばアシル系保護基およびカーバメート系保護基が挙げられ、具体的にはトリフルオロアセチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
反応で副生した不純物、または反応で消費されず残存したポリエチレングリコール誘導体などは、精製除去を行うのが好ましい。精製は、特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出などで精製することができる。
【0099】
【化20】
【0100】
脱保護Dは、反応Cで得られたポリエチレングリコール誘導体(3)の保護基を脱保護して、ポリエチレングリコール誘導体(4)を得る工程である。脱保護反応としては、従来公知の方法を用いることができるが、オリゴペプチドやLの2価のスペーサーが分解しない条件を用いる必要がある。また、本工程は、反応Cの工程の一環として実施することも可能である。
脱保護反応で副生した不純物などは、精製除去を行うのが好ましい。精製は、特に制限されないが、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、超臨界抽出などで精製することができる。
【0101】
【化21】
【0102】
反応Eは、脱保護Dで得られたポリエチレングリコール誘導体(4)のアミノ基と、アミノ基が保護基で保護されたグルタミン酸誘導体の二つのカルボキシル基を縮合反応で結合させ、4本の分解性ポリエチレングリコール鎖がグルタミン酸残基で繋がれた構造である分岐型のポリエチレングリコール誘導体(5)を得る工程である。
前記反応Cと同条件で反応と精製が可能である。
ポリエチレングリコール誘導体(5)の中から、分子量や官能基の異なるポリエチレングリコール不純物を除去する手法としては、特開2014-208786号公報、または特開2011-79934号公報に記載の精製技術を用いることができる。
【0103】
【化22】
【0104】
脱保護Fは、反応Eで得られたポリエチレングリコール誘導体(5)の保護基を脱保護して、ポリエチレングリコール誘導体(6)を得る工程である。脱保護反応としては、従来公知の方法を用いることができるが、オリゴペプチドやLの2価のスペーサーが分解しない条件を用いる必要がある。前記脱保護Dと同条件で反応と精製が可能である。また、本工程は、反応Eの工程の一環として実施することも可能である。
【0105】
【化23】
【0106】
反応Gは、脱保護Fで得られたポリエチレングリコール誘導体(6)のアミノ基と、アミノ基が保護基で保護されたグルタミン酸誘導体の二つのカルボキシル基を縮合反応で結合させ、8本の分解性ポリエチレングリコール鎖がグルタミン酸残基で繋がれた構造である分岐型のポリエチレングリコール誘導体(7)を得る工程である。
前記反応Cと同条件で反応と精製が可能である。
【0107】
【化24】
【0108】
脱保護Hは、反応Gで得られたポリエチレングリコール誘導体(7)の保護基を脱保護して、ポリエチレングリコール誘導体(8)を得る工程である。前記脱保護Fと同条件で反応と精製が可能である。また、本工程は、反応Gの工程の一環として実施することも可能である。
【0109】
以上の反応A、脱保護B、反応Cおよび脱保護Dを行うことにより、2分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体(4)が得られる。2分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体(4)を原料として、続けて反応Eおよび脱保護Fを行うことにより、4分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体(6)が得られる。さらに続けて反応Gおよび脱保護Hを行うことにより、8分岐型の分解性ポリエチレングリコール誘導体(8)が得られる。
【0110】
脱保護D、脱保護Fおよび脱保護Hで得られたポリエチレングリコール誘導体(4)、(6)および(8)は、いずれもアミノ基を1つ有しており、これを利用して様々な官能基に変換が可能である。
【0111】
ポリエチレングリコール誘導体の末端のアミノ基を他の官能基に変換する工程については、特に制限は無いが、基本的には、アミノ基と反応可能な活性エステル基を有した化合物、または酸無水物、酸クロライドなどの一般的な反応試薬を用いることで、様々な官能基に容易に変換することが出来る。
【0112】
例えば、ポリエチレングリコール誘導体の末端のアミノ基をマレイミド基に変換したい場合は、以下のような試薬と反応させることで、目的物を得ることができる。
【0113】
【化25】
【0114】
例えば、ポリエチレングリコール誘導体の末端のアミノ基をカルボキシル基に変換したい場合は、無水コハク酸や無水グルタル酸と反応させることで、目的物を得ることができる。
【0115】
例えば、ポリエチレングリコール誘導体の末端のアミノ基を水酸基に変換したい場合は、カプロラクトンなどの環状エステルの開環物と縮合反応させることで、目的物を得ることができる。
【0116】
これら反応試薬は、低分子量の試薬であり、高分子量のポリマーであるポリエチレングリコール誘導体とは大きく溶解性が異なるため、抽出や晶析などの一般的な精製方法にて容易に除去が可能である。
【0117】
以上のような工程を経て、得られた分解性ポリエチレングリコールは、血中で安定であり、細胞内でのみ分解する性能を有することが求められる。その性能を適切に評価するため、例えば、以下に示すような試験を実施し、分解性ポリエチレングリコールの血中での安定性、そして細胞内での分解性を評価することができる。
なお、これらの評価においてポリエチレングリコール誘導体が有する官能基の種類による影響を考慮し、評価試料はすべて、アミノ基を1つ有したポリエチレングリコール誘導体に統一して試験を実施した。
【0118】
分解性ポリエチレングリコール誘導体の血中での安定性を評価するための試験方法については、特に制限は無いが、例えば、マウス、ラット、ヒトなどの血清を用いた試験などが挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール誘導体を1~10mg/mLの濃度になるように血清に溶解し、37℃で96時間インキュベート後、血清中に含まれるポリエチレングリコール誘導体を回収し、GPCを測定することで分解率を評価することができる。分解率は、安定性試験前のポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%と、安定性試験後のポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%から算出する。具体的には以下の式を用いる。
分解率 = (試験前のピーク面積% - 試験後のピーク面積%) ÷ 試験前のピーク面積% × 100
例えば、安定性試験前の分解性ポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%が95%であり、試験後のGPCメインフラクションのピーク面積%が90%だったとすると、分解率は以下のように算出される。
分解率 = (95-90)÷95×100 = 5.26(%)
分解性ポリエチレングリコール誘導体は、血中で分解してしまうと、目的とする血中半減期を得ることができないため、安定性試験において、96時間後の分解率は、10%以下が好ましく、5%以下がさらに好ましい。
【0119】
分解性ポリエチレングリコール誘導体の細胞内での分解性を評価するための試験方法については、特に制限は無いが、例えば、分解性ポリエチレングリコール誘導体を含有した培地を用いて、細胞を培養させる試験などが挙げられる。ここで使用する細胞や培地については、特に制限は無いが、具体的には、ポリエチレングリコール誘導体を1~20mg/mLの濃度になるように培地であるRPMI-1640に溶解し、この培地を用いて、マクロファージ細胞RAW264.7を37℃で96時間培養後、細胞中のポリエチレングリコール誘導体を回収し、GPCを測定することで分解率を評価することができる。分解率は、安定性試験と同様に、試験前後のポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%を用いて算出する。
例えば、細胞を用いた分解性試験前の分解性ポリエチレングリコール誘導体のGPCメインフラクションのピーク面積%が95%であり、試験後のGPCメインフラクションのピーク面積%が5%だったとすると、分解率は以下のように算出される。
分解率 = (95-5)÷95×100 = 94.7(%)
分解性ポリエチレングリコール誘導体は、細胞内で効率よく分解されないと、目的とする細胞の空胞を抑制できないため、分解性試験において、96時間後の分解率は、90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0120】
得られた分解性ポリエチレングリコール誘導体を生体関連物質に結合させる方法としては、特に制限は無いが、例えば「Hermanson, G. T. Bioconjugate Techniques, 3rd ed.;Academic Press:
San Diego, CA, 2013」や「Mark, Sonny S. Bioconjugate protocols, strategies and methods; 2011」に記載の方法を用いることができる。その中でも例えば、生体関連物質であるタンパク質やペプチドなどのリジン残基の側鎖アミノ基をターゲットとする場合は、活性化エステル基や活性化カーボネート基を有したポリエチレングリコール誘導体が用いられる。また、生体関連物質であるタンパク質やペプチドなどのシステイン残基のメルカプト基をターゲットとする場合は、マレイミド基やヨードアセトアミド基を有したポリエチレングリコール誘導体が用いられる。天然の生体関連物質に含まれるフリーのシステイン残基の数は極めて少ないため、この方法ではより選択的にポリエチレングリコールを生体関連物質に結合させることができる。さらにメルカプト基を発生、または導入する方法として、生体関連物質のジスルフィド結合を切断させる方法や、遺伝子工学的に生体関連物質を改変してシステイン残基を導入する方法などがあり、これらの技術と組み合わせることで、生体関連物質の目的とする場所に、目的とする数のポリエチレングリコール誘導体を結合できることが知られている。
次に、生体関連物質であるタンパク質やペプチドなどのN末端のアミノ基をターゲットとする場合は、アルデヒド基を有したポリエチレングリコール誘導体が用いられる。具体的には、低pHの緩衝溶液中で、アルデヒド基を有したポリエチレングリコール誘導体と適切な還元剤を用いることで、タンパク質やペプチドのN末端のアミノ基に、選択的にポリエチレングリコール誘導体を結合させることができる。
これらポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質は、一般的な方法として知られている、透析やゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)などで精製することができる。また、得られた生体関連物質は、一般的に、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF-MS)、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、逆相クロマトグラフィー(RPLC)などの分析方法にて評価することができる。
【0121】
分解性ポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質の生理活性を評価する方法については、特に制限は無いが、例えば生体関連物質がインスリンであれば血中糖濃度、カルシトニンであれば血中カルシウム濃度など、投与した動物から定期的に採血し、血中の物質を適切な分析機器を用いて測定することで評価できる。具体的には、インスリンであれば、グルコース測定キットを使用して、投与後のグルコース濃度の低下をモニタリングし、カルシトニンであれば、カルシウム測定キットを使用して、投与後のカルシウム濃度の低下をモニタリングすることで評価することができる。
【0122】
分解性ポリエチレングリコール誘導体が結合した生体関連物質の血中半減期や体内分布を評価するための試験方法については、特に制限は無いが、例えば、放射性同位体や蛍光物質をラベル化し、マウスやラットに投与して、モニタリングする試験などが挙げられる。
ポリエチレングリコール誘導体に導入した分解性ペプチドは、ポリエチレングリコールに細胞内での分解性を付与するが、そのペプチド構造によってポリエチレングリコールを結合させた生体関連物質の体内動態を変化させる可能性が考えられる。そこで、導入したペプチド構造の体内動態への影響を確認するため、血中半減期および、その体内分布について、分解性を持たない同分子量のポリエチレングリコール誘導体を修飾した生体関連物質と比較する必要がある。具体的には、放射性同位体でラベル化した生体関連物質に、分解性を持たないポリエチレングリコール誘導体と分解性ポリエチレングリコール誘導体をそれぞれ結合させ、得られた2種の生体関連物質をマウスに投与し、複数のタイムポイントで、血液、各臓器の放射線量を測定し、定量測定を行うことができる。
【0123】
分解性ポリエチレングリコール誘導体の血中半減期や体内分布を評価するための試験方法については、特に制限は無いが、例えば、放射性同位体や蛍光物質をラベル化し、マウスやラットに投与して、モニタリングする試験などが挙げられる。
ポリエチレングリコール誘導体に導入した分解性ペプチドは、ポリエチレングリコールに細胞内での分解性を付与するが、そのペプチド構造によってポリエチレングリコールの体内動態を変化させる可能性が考えられる。そこで、導入したペプチド構造の体内動態への影響を確認するため、血中半減期および、その体内分布について、分解性を持たない同分子量のポリエチレングリコール誘導体と比較する必要がある。具体的には、放射性同位体でラベル化した分解性を持たないポリエチレングリコール誘導体と、分解性ポリエチレングリコール誘導体を、マウスに投与し、複数のタイムポイントで、血液、各臓器の放射線量を測定し、定量測定を行うことができる。
【0124】
分解性ポリエチレングリコール誘導体の細胞の空胞抑制を評価するための試験方法については、特に制限は無いが、例えば、非特許文献2に記載があるように、長期間、高頻度、および高投与量でマウスやラットに投与を続け、空胞が発生しやすいといわれている臓器や器官の切片画像を確認する試験などが挙げられる。
具体的には、ポリエチレングリコール誘導体を10~250mg/mLの濃度になるように生理食塩水に溶解し、マウス尾静脈より週3回、4週間以上、20~100μL投与を続け、空胞が発生しやすいといわれている器官である脳脈絡叢や脾臓などのパラフィン切片を作製して染色後、切片画像を病理学的手法により確認し、空胞抑制の評価を行うことができる。
なお、本評価においてポリエチレングリコールの投与量は、当該技術分野における一般的なポリエチレングリコールの投与量と比べ、大過剰のポリエチレングリコールを投与する必要がある。
【0125】
非特許文献2では、高分子量のポリエチレングリコールによる細胞の空胞化は、ポリエチレングリコールの組織への蓄積と関係があるとの記載がある。分解性ポリエチレングリコール誘導体の細胞への蓄積性を評価するための試験方法については、特に制限は無いが、上記の空胞の評価と同じ方法で作成した切片画像より評価することができる。ポリエチレングリコールが蓄積しやすいといわれている器官である脳脈絡叢や脾臓などの染色した切片画像を病理学的手法により確認し、ポリエチレングリコールの蓄積性の評価を行うことができる。
なお、本評価においてポリエチレングリコールの投与量は、当該技術分野における一般的なポリエチレングリコールの投与量と比べ、大過剰のポリエチレングリコールを投与する必要がある。
【実施例
【0126】
下記実施例で得られたH-NMRは、日本電子デ-タム(株)製JNM-ECP400またはJNM-ECA600から得た。測定にはφ5mmチュ-ブを用い、重水素化溶媒には、DOまたは内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を含有するCDClおよびd-DMSOを用いた。得られたポリエチレングリコール誘導体の分子量およびアミン純度は、液体クロマトグラフィー(GPCおよびHPLC)を用いて算出した。液体クロマトグラフィーのシステムは、GPCには東ソー(株)製「HLC-8320GPC EcoSEC」を用い、HPLCにはWATERS社製「ALLIANCE」を用いた。以下、GPCおよびHPLCの分析条件を示す。
GPC分析(分子量測定)
標準ポリマー:分子量が、8,000、20,000、50,000および100,000のポリエチレングリコールを標準ポリマーとして使用してGPC分析による分子量測定を行った。
検出器:示差屈折計
カラム:ultrahydrogel500およびultrahydrogel250(WATERS製)
移動相:100mM Acetate buffer+0.02%NaN(pH5.2)
流速:0.5mL/min
サンプル量:5mg/mL、20μL
カラム温度:30℃
HPLC分析(アミン純度測定)
検出器:示差屈折計
カラム:TSKgel SP-5PW(東ソー(株)製)
移動相:1mM Sodium phosphate buffer(pH6.5)
流速:0.5mL/min
注入量:5mg/mL、20μL
カラム温度:40℃
【0127】
[実施例1]
化合物(p3)(NH ―E(FG-200ME) )の合成
【0128】
【化26】
【0129】
[実施例1-1]
【0130】
【化27】
【0131】
N末端を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)で保護したL-フェニルアラニル-グリシン(Fmoc-Phe-Gly)(0.267g、6.0×10-4モル、渡辺化学工業(株)製)と末端にプロピルアミノ基を有するメトキシPEG(6.0g、2.8×10-4モル、数平均分子量=21,120、日油株式会社製「SUNBRIGHT MEPA-20T」)に脱水N,N’-ジメチルホルムアミド(60g)を添加し、30℃で加温溶解した。その後、ジイソプロピルエチルアミン(192μL、1.2×10-3モル、関東化学(株)製)と(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)(0.321g、7.5×10-4モル、シグマアルドリッチ社製)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で1時間反応させた。反応終了後、クロロホルム(600g)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(240g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行った。水層と有機層を分離後、再度、有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(240g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行い、有機層を回収した。得られた有機層(クロロホルム溶液)に硫酸マグネシウム(2.4g)を添加し、30分攪拌して脱水した後、5Aろ紙の上にオプライトを敷いた桐山ロートを用いて吸引ろ過を行った。得られたろ液を40℃にて濃縮し、濃縮物に酢酸エチル(240g)を添加して均一になるように攪拌した後、ヘキサン(120g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度酢酸エチル(240g)に溶解し、ヘキサン(120g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(120g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p1)(ME-200GF-Fmoc)を得た。収量5.1g。
【0132】
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、2.80ppm(m、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.04ppm(m、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.10ppm(m、2H、-CO-NH-CH -CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、3.24ppm(s、3H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.48ppm(m、約1,900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.20ppm(m、4H)、7.33ppm(m、9H)、7.66ppm(m、4H、Ar)、7.88ppm(d、2H、Ar)、8.27ppm(t、1H)
【0133】
[実施例1-2]
【0134】
【化28】
【0135】
実施例1-1で得られたME-200GF-Fmoc(4.9g、2.3×10-4モル)にN,N’-ジメチルホルムアミド(29.4g)を添加し、30℃で加温溶解した。ピペリジン(1.55g、1.8×10-2モル、和光純薬工業(株)製)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で2時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル(300g)を加えて均一になるまで攪拌し、ヘキサン(150g)を添加して、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度酢酸エチル(300g)に溶解し、ヘキサン(150g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(150g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p2)(ME-200GF-NH )を得た。収量3.9g。
【0136】
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.10ppm(q、2H、-CO-NH-CH -CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、3.24ppm(s、3H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.48ppm(m、約1,900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、8.12ppm(broad、1H)
【0137】
[実施例1-3]
【0138】
【化29】
【0139】
N末端をFmoc基で保護したL-グルタミン酸(Fmoc-Glu-OH)(16.0mg、4.3×10-5モル、渡辺化学工業(株)製)と実施例1-2で得られたME-200GF-NH(2.0g、1.0×10-4モル)に脱水N,N’-ジメチルホルムアミド(10g)を添加し、30℃で加温溶解した。その後、ジイソプロピルエチルアミン(19.2μL、1.1×10-4モル、関東化学(株)製)と4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn水和物(DMT-MM)(39.0mg、1.1×10-4モル、和光純薬工業(株)製)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で1時間反応した。その後、ピペリジン(0.5g、5.9×10-3モル、和光純薬工業(株)製)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で2時間反応した。反応終了後、反応液をトルエン(80g)で希釈した後、ヘキサン(40g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度トルエン(80g)に溶解し、ヘキサン(40g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(40g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p3)(NH ―E(FG-200ME) )を得た。収量1.6g。分子量を表1に示す。HPLC:アミン純度92%。
【0140】
H-NMR(d-DMSO):1.54ppm(m、2H、-NH-CO-CH(NH)-CH -CH-)、1.62ppm(m、4H、-CO-NH-CHCH -CH-)、1.97ppm(m、2H、-NH-CO-CH(NH)-CHCH -)、2.74ppm(dd、1H、-CO-NH-CH-CH -C)、2.81ppm(dd、1H、-CO-NH-CH-CH -C)、3.11ppm(m、11H)、3.24ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.49ppm(m、1H、-CO-NH-CH-CH-C)、4.57ppm(m、1H、-CO-NH-CH-CH-C)、7.25ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.74ppm(m、2H)、8.44ppm(m、2H)、8.61ppm(m、2H)
【0141】
[実施例2]
化合物(p4)(MA―E(FG-200ME) )の合成
【0142】
【化30】
【0143】
実施例1で得られた化合物(p3)(200mg、5.0×10-6モル)をアセトニトリル(160mg)およびトルエン(1.0g)に溶解した。その後、N-メチルモルホリン(10mg、1.0×10-5モル、関東化学(株)製)と3-マレイミドプロピオン酸 N-スクシンイミジル(8.0mg、3.0×10-5モル、大阪合成有機化学研究所(株)製)を添加し、室温にて窒素雰囲気下および遮光下で6時間反応した。反応終了後、反応液を2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾ-ル(BHT)(10mg)含有の酢酸エチル(50g)で希釈した後、ヘキサン(25g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(5mg)含有のヘキサン(25g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p4)(MA―E(FG-200ME) )を得た。収量137mg。分子量を表1に示す。マレイミド純度は90%(H-NMR)であった。
【0144】
H-NMR(d-DMSO): 1.62ppm(m、6H)、1.99ppm(m、2H、-NH-CO-CH(NH)-CHCH -)、2.34ppm(m、2H、-NH-CO-CH -CH-Maleimide)、2.75ppm(dd、1H、-CO-NH-CH-CH -C)、2.82ppm(dd、1H、-CO-NH-CH-CH -C)、3.11ppm(m、11H)、3.24ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.04ppm(m、2H、-NH-CO-CHCH -Maleimide)、4.49ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、6.98ppm(s、2H、-CO-CH-CH-CO-)、7.25ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.69ppm(dt、2H)、8.04ppm(d、1H)、8.29ppm(dd、2H)、8.41ppm(dt、2H)
【0145】
[実施例3]
化合物(p8)(AL―E(FG-200ME) )の合成
【0146】
【化31】
【0147】
[実施例3-1]
化合物(p5)(HO―E(FG-200ME) )の合成
【0148】
【化32】
【0149】
ε-カプロラクトン(114mg、1.0×10-3モル、東京化成工業(株)製)を1N NaOH(0.8mL、8.0×10-4モル、関東化学(株)製)に溶解し2時間反応させ、6-ヒドロキシカプロン酸水溶液(0.88M)を調製した。また、実施例1で得られた化合物(p3)(2.0g、5.0×10-5モル)をアセトニトリル(8.0g)に溶解した。その後、上記6-ヒドロキシカプロン酸水溶液(114μL、1.0×10-4モル)とジイソプロピルエチルアミン(20μL、1.2×10-4モル、関東化学(株)製)とDMT-MM(21mg、6.0×10-5モル、和光純薬工業(株)製)を上記(p3)のアセトニトリル溶液に添加し、室温にて窒素雰囲気下で1時間反応した。反応終了後、反応液を40℃にて濃縮し、得られた濃縮物にクロロホルム(24g)を添加して溶解した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行った。水層と有機層を分離後、再度、有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10g)を添加し、室温にて15分攪拌して洗浄を行い、有機層を回収した。得られた有機層(クロロホルム溶液)に硫酸マグネシウム(1.2g)を添加し、30分攪拌して脱水した後、5Aろ紙の上にオプライトを敷いた桐山ロ-トを用いて吸引ろ過を行った。得られたろ液を40℃にて濃縮し、濃縮物にトルエン(50g)を添加して均一になるように攪拌した後、ヘキサン(25g)を加えて、室温にて15分攪拌し、生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度トルエン(50g)に溶解し、ヘキサン(25g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(2mg)含有のヘキサン(10g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p5)(HO―E(FG-200ME) )を得た。収量1.5g。
【0150】
H-NMR(CDCl):1.37ppm(m、2H、HO-CH-CHCH -CH-CH-CO-NH-)、1.55ppm(m、4H、HO-CHCH -CHCH -CH-CO-NH-)、1.77ppm(m、4H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、1.85ppm(m、1H)、2.01ppm(m、2H、HO-CH-CH-CH-CHCH -CO-NH-)、3.01ppm(m、1H)、3.24ppm(m、8H)、3.38ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.03ppm(m、4H)、4.14ppm(m、1H)、4.48ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、6.95ppm(broad、1H)、7.00ppm(broad、1H)、7.26ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.66ppm(broad、1H)、8.29ppm(broad、1H)
【0151】
[実施例3-2]
化合物(p6)(SC―E(FG-200ME) )の合成
【0152】
【化33】
【0153】
実施例3-1で得られた化合物(p5)(500mg、1.3×10-5モル)をジクロロメタン(3.5g)に溶解した。その後、炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(51mg、2.0×10-4モル、東京化成工業(株)製)とピリジン(24μL、3.0×10-4モル、関東化学(株)製)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で8時間反応した。反応終了後、5%食塩水で反応液を洗浄し硫酸マグネシウム(0.1g)を加えて、25℃で30分攪拌した後、5Aろ紙の上にオプライトを敷いた桐山ロ-トを用いて吸引ろ過を行った。得られたろ液を濃縮後、濃縮物にトルエン(50g)を添加して溶解した後、ヘキサン(25g)を加えて室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度トルエン(50g)に溶解し、ヘキサン(25g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(5mg)含有のヘキサン(25g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p6)(SC―E(FG-200ME) )を得た。収量286mg。活性カーボネート純度は92%(H-NMR)。
【0154】
H-NMR(CDCl):1.38ppm(m、2H、Succinimide-OCO-CH-CHCH -CH-CH-CO-NH-)、1.59ppm(m、2H、Succinimide-OCO-CH-CH-CHCH -CH-CO-NH-)、1.75ppm(m、6H)、1.85ppm(m、1H)、2.13ppm(m、2H、Succinimide-OCO-CH-CH-CH-CHCH -CO-NH-)、2.83ppm(s、4H、-CO-CH -CH -CO-)、3.01ppm(m、1H)、3.19ppm(m、6H)、3.38ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.03ppm(m、3H)、4.18ppm(m、1H)、4.31ppm(t、2H、Succinimide-OCO-CH -CH-CH-CH-CH-CO-NH-)、4.50ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、6.98ppm(broad、1H)、7.15ppm(broad、1H)、7.26ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.81ppm(broad、1H)、8.37ppm(broad、1H)
【0155】
[実施例3-3]
化合物(p7)(DE―E(FG-200ME) )の合成
【0156】
【化34】
【0157】
実施例3-2で得られた化合物(p6)(250mg、6.3×10-6モル)をクロロホルム(2g)に溶解した。その後、1-アミノ-3,3-ジエトキシプロパン(10μL、6.3×10-5モル、ACROS ORGANICS製)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で3時間反応した。反応終了後、反応液をトルエン(25g)で希釈し、ヘキサン(12.5g)を加えて室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(2.5mg)含有のヘキサン(12.5g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p47)(DE―E(FG-200ME) )を得た。収量185mg。
【0158】
H-NMR(CDCl):1.20ppm(t、6H、(CH -CH-O)-CH-)、1.32ppm(m、2H、(CH-CH-O)-CH-CH-CH-NH-COO-CH-CHCH -CH-CH-CO-NH-)、1.58ppm(m、2H、(CH-CH-O)-CH-CH-CH-NH-COO-CH-CH-CHCH -CH-CO-NH-)、1.76ppm(m、4H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、1.82ppm(m、2H、(CH-CH-O)-CH-CH -CH-NH-COO-CH-CH-CH-CH-CH-CO-NH-)、2.11ppm(m、2H、(CH-CH-O)-CH-CH-CH-NH-COO-CHCH -CH-CH-CH-CO-NH-)、2.16ppm(m、1H)、2.70ppm(m、1H)、3.06ppm(m、2H)、3.25ppm(m、11H)、3.38ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.02ppm(m、8H)、4.17ppm(m、1H)、4.51ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、4.55ppm(t、1H、(CH-CH-O)CH-)、5.36ppm(broad、1H)、6.47ppm(broad、1H)、6.98ppm(broad、2H)、7.26ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.81ppm(broad、1H)、8.36ppm(broad、1H)
【0159】
[実施例3-4]
化合物(p8)(AL―E(FG-200ME) )の合成
【0160】
【化35】
【0161】
実施例3-3で得られた化合物(p7)(150mg、3.8×10-6モル)をpH1.90に調整したりん酸緩衝液(2.25g)に溶解し、室温にて窒素雰囲気下で3時間反応した。反応後、0.1N水酸化ナトリウム水溶液(0.89g)を添加し、pHを6.40に調整した後、塩化ナトリウム(0.56g)を添加し溶解した。得られた溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液(0.60g)を滴下し、pHを7.06に調整した後、BHT(0.6mg)含有のクロロホルム(3g)を添加して、室温で20分攪拌し、有機層に生成物を抽出した。有機層と水層を分離し、有機層を回収した後、水層に再度BHT(0.6mg)含有のクロロホルム(3g)を添加して、室温で20分攪拌し、有機層に生成物を抽出した。抽出1回目と2回目で得られた有機層を合わせて40℃で濃縮し、得られた濃縮物をトルエン(30g)に希釈し、ヘキサン(15g)を加えて室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(3.0mg)含有のヘキサン(15g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p8)(AL―E(FG-200ME) )を得た。収量84mg。分子量を表1に示す。アルデヒド純度は92%(H-NMR)であった。
【0162】
H-NMR(CDCl):1.32ppm(m、2H、CHO-CH-CH-NH-COO-CH-CHCH -CH-CH-CO-NH-)、1.57ppm(m、2H、CHO-CH-CH-NH-COO-CH-CH-CHCH -CH-CO-NH-)、1.76ppm(m、4H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、1.82ppm(m、1H)、2.10ppm(m、2H、CHO-CH-CH-NH-COO-CHCH -CH-CH-CH-CO-NH-)、2.16ppm(m、1H)、2.71ppm(m、2H、CHO-CH -CH-NH-COO-CH-CH-CH-CH-CH-CO-NH-)、3.02ppm(m、1H)、3.26ppm(m、8H)、3.38ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.01ppm(m、4H)、4.16ppm(m、1H)、4.49ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、5.59ppm(broad、1H)、6.36ppm(broad、1H)、6.93ppm(broad、2H)、7.08ppm(broad、1H)、7.26ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.80ppm(broad、1H)、8.37ppm(broad、1H)、9.79ppm(s、1H、CHO-CH-CH-NH-COO-)
【0163】
[実施例4]
化合物(p9)(NH O―E(FG-200ME) )の合成
【0164】
【化36】
【0165】
実施例3-1で得られた化合物(p5)(300mg、7.5×10-6モル)をトルエン(2.4g)に30℃で加温溶解し、減圧にて共沸脱水した。その後、濃縮物をクロロホルム(2.4g)に溶解し、N-ヒドロキシフタルイミド(7.3mg、4.5×10-5モル、和光純薬工業(株)製)とトリフェニルホスフィン(35mg、1.4×10-4モル、関東化学(株)製)とアゾジカルボン酸ジイソプロピル(22μL、1.1×10-4モル、ACROS ORGANICS製)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で4時間反応した。反応終了後、反応液にメタノール(9.1μL)を添加し25℃で30分攪拌し、40℃で濃縮した。濃縮液をトルエン(3.0g)に希釈し共沸後、濃縮物をトルエン(1.5g)に溶解し、エチレンジアミン一水和物(24μL、3.0×10-4モル、関東化学(株)製)を添加し、室温にて窒素雰囲気下で1時間反応した。反応終了後、反応液をトルエン(50g)で希釈した後、ヘキサン(25g)を加えて室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(20g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p9)(NH O―E(FG-200ME) )を得た。収量156mg。分子量を表1に示す。HPLC:オキシアミン純度91%。
【0166】
H-NMR(CDCl):1.32ppm(m、2H、HN-O-CH-CHCH -CH-CH-CO-NH-)、1.56ppm(m、4H、HN-O-CHCH -CHCH -CH-CO-NH-)、1.76ppm(m、4H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、1.85ppm(m、1H)、2.10ppm(m、2H、HN-O-CH-CH-CH-CHCH -CO-NH-)、2.17ppm(m、1H)、3.01ppm(m、1H)、3.24ppm(m、8H)、3.38ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.03ppm(m、2H)、4.17ppm(m、1H)、4.49ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、5.37ppm(broad、2H)、6.40ppm(broad、1H)、6.95ppm(broad、2H)、7.12ppm(broad、1H)、7.26ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.74ppm(broad、1H)、8.31ppm(broad、1H)
【0167】
[実施例5]
化合物(p13)(NH ―E{E(FG-100ME) )の合成
【0168】
【化37】
【0169】
[実施例5-1]
化合物(p10)(ME-100GF-Fmoc)の合成
【0170】
【化38】
【0171】
実施例1-1と同製法にて、N末端をFmoc基で保護したL-フェニルアラニル-グリシン(Fmoc-Phe-Gly)(533mg、1.2×10-3モル、渡辺化学工業(株)製)と末端にプロピルアミノ基を有するメトキシPEG(9.9g、1.0×10-3モル、数平均分子量=9,896、日油株式会社製「SUNBRIGHT MEPA-10T」)を原料として用いて、上記化合物(p10)(ME-100GF-Fmoc)を得た。収量9.2g。
【0172】
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、2.80ppm(m、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.04ppm(m、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.10ppm(m、2H、-CO-NH-CH -CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、3.24ppm(s、3H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.48ppm(m、約900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.20ppm(m、4H)、7.33ppm(m、9H)、7.66ppm(m、4H、Ar)、7.88ppm(d、2H、Ar)、8.27ppm(t、1H)
【0173】
[実施例5-2]
化合物(p11)(ME-100GF-NH )の合成
【0174】
【化39】
【0175】
実施例1-2と同製法にて、実施例5-1で得られた化合物(p10)(9.2g、4.6×10-4モル)用いて脱保護反応を行い、上記化合物(p11)(ME-100GF-NH )を得た。収量8.7g。
【0176】
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、1.64ppm(broad、1H)、2.59ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、2.98ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.10ppm(q、2H、-CO-NH-CH -CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、3.24ppm(s、3H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.48ppm(m、約900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、7.24ppm(m、6H、-NH-CO-CH-CH 、-NH-)、7.73ppm(t、1H)、8.12ppm(broad、1H)
【0177】
[実施例5-3]
化合物(p12)(NH ―E(FG-100ME) )の合成
【0178】
【化40】
【0179】
実施例1-3と同製法にて、N末端をFmoc基で保護したL-グルタミン酸(Fmoc-Glu-OH)(135mg、3.7×10-4モル、渡辺化学工業(株)製)と実施例5-2で得られた化合物(p11)(8.5g、8.5×10-4モル)を原料として用いて、反応と脱保護を連続して行い、上記化合物(p12)(NH ―E(FG-100ME) )を得た。収量6.6g。HPLC:アミン純度95%。
【0180】
H-NMR(d-DMSO):1.54ppm(m、2H、-NH-CO-CH(NH)-CH -CH-)、1.62ppm(m、4H、-CO-NH-CHCH -CH-)、1.97ppm(m、2H、-NH-CO-CH(NH)-CHCH -)、2.74ppm(dd、1H、-CO-NH-CH-CH -C)、2.81ppm(dd、1H、-CO-NH-CH-CH -C)、3.11ppm(m、11H)、3.24ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約1,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.49ppm(m、1H、-CO-NH-CH-CH-C)、4.57ppm(m、1H、-CO-NH-CH-CH-C)、7.25ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.74ppm(m、2H)、8.44ppm(m、2H)、8.61ppm(m、2H)
【0181】
[実施例5-4]
化合物(p13)(NH ―E{E(FG-100ME) )の合成
【0182】
【化41】
【0183】
実施例1-3と同製法にて、N末端をFmoc基で保護したL-グルタミン酸(Fmoc-Glu-OH)(15.2mg、4.1×10-5モル、渡辺化学工業(株)製)と実施例5-3で得られた化合物(p12)(2.0g、1.0×10-4モル)を原料として用いて、反応と脱保護を連続して行い、上記化合物(p13)(NH ―E{E(FG-100ME) )を得た。収量1.2g。分子量を表1に示す。HPLC:アミン純度94%。
【0184】
H-NMR(d-DMSO):1.62ppm(m、14H)、2.00ppm(m、6H、-NH-CO-CH(NH)-CHCH -)、2.78ppm(m、4H)、3.11ppm(m、14H)、3.24ppm(s、16H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約3,600H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.19ppm(m、2H)、4.51ppm(m、4H)、7.25ppm(m、20H、-CO-NH-CH-CH )、7.71ppm(m、4H)、7.89ppm(m、1H)、8.45ppm(m、9H)
【0185】
[実施例6]
化合物(p16)(NH ―E(GFLG-200ME) )の合成
【0186】
【化42】
【0187】
[実施例6-1]
化合物(p14)(ME-200GLFG-Fmoc)の合成
【0188】
【化43】
【0189】
実施例1-1と同製法にて、N末端をFmoc基で保護したL-グリシル-フェニルアラニル-ロイシル-グリシン(Fmoc-Gly-Phe-Leu-Gly)(66mg、1.1×10-4モル、渡辺化学工業(株)製)と末端にプロピルアミノ基を有するメトキシPEG(1.5g、7.1×10-5モル、数平均分子量=21,120、日油株式会社製「SUNBRIGHT MEPA-20T」)を原料として用いて、上記化合物(p14)(ME-200GLFG-Fmoc)を得た。収量1.2g。
【0190】
H-NMR(CDCl):0.89ppm(d、3H、-NH-CO-CH-CH-CH(CH )、0.91ppm(d、3H、-NH-CO-CH-CH-CH(CH )、1.53ppm(m、2H、-NH-CO-CH-CH -CH(CH)、1,70ppm(m、1H、-NH-CO-CH-CHCH(CH)、1.80ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、3.10ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.18ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.33ppm(m、7H)、3.74ppm(m、約1,900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.31ppm(broad、1H)、4.55ppm(t、1H、-NH-CO-CH-CH-C)、6.91ppm(broad、1H)、7.00ppm(broad、1H)、7.28ppm(m、5H、-NH-CO-CH-CH )、7.33ppm(t、2H、Ar)、7.41ppm(m、3H、Ar)、7.73ppm(m、3H、Ar)、7.89ppm(d、2H、Ar)、7.98ppm(broad、1H)
【0191】
[実施例6-2]
化合物(p15)(ME-200GLFG-NH )の合成
【0192】
【化44】
【0193】
実施例1-2と同製法にて、実施例6-1で得られた化合物(p14)(1.2g、5.7×10-5モル)用いて脱保護反応を行い、上記化合物(p15)(ME-200GLFG-NH )を得た。収量1.0g。
【0194】
H-NMR(CDCl):0.89ppm(d、3H、-NH-CO-CH-CH-CH(CH )、0.91ppm(d、3H、-NH-CO-CH-CH-CH(CH )、1.53ppm(m、2H、-NH-CO-CH-CH -CH(CH)、1,70ppm(m、1H、-NH-CO-CH-CHCH(CH)、1.80ppm(m、2H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、3.10ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.18ppm(dd、1H、-NH-CO-CH-CH -C)、3.33ppm(m、7H)、3.74ppm(m、約1,900H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.31ppm(broad、1H)、4.55ppm(t、1H、-NH-CO-CH-CH-C)、6.91ppm(broad、1H)、7.00ppm(broad、1H)、7.28ppm(m、5H、-NH-CO-CH-CH )、7.98ppm(broad、1H)
【0195】
[実施例6-3]
化合物(p16)(NH ―E(GFLG-200ME) )の合成
【0196】
【化45】
【0197】
実施例1-3と同製法にて、N末端をFmoc基で保護したL-グルタミン酸(Fmoc-Glu-OH)(8.3mg、2.3×10-5モル、渡辺化学工業(株)製)と実施例6-2で得られた化合物(p15)(1.0g、4.8×10-5モル)を原料に用いて、反応と脱保護を連続して行い、上記化合物(p16)(NH ―E(GFLG-200ME) )を得た。収量0.5g。分子量を表1に示す。HPLC:アミン純度90%。
【0198】
H-NMR(CDCl):0.89ppm(d、6H、-NH-CO-CH-CH-CH(CH )、0.91ppm(d、6H、-NH-CO-CH-CH-CH(CH )、1.53ppm(m、4H、-NH-CO-CH-CH -CH(CH)、1,70ppm(m、2H、-NH-CO-CH-CHCH(CH)、1.77ppm(m、4H、-CO-NH-CHCH -CH-O-(CH-CH-O)n-CH)、1.85ppm(m、1H)、3.01ppm(m、1H)、3.24ppm(m、8H)、3.38ppm(s、6H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.64ppm(m、約3,800H、-CO-NH-CH-CH-CH-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.03ppm(m、4H)、4.14ppm(m、1H)、4.48ppm(m、2H、-CO-NH-CH-CH-C)、6.95ppm(broad、1H)、7.00ppm(broad、1H)、7.26ppm(m、10H、-CO-NH-CH-CH )、7.66ppm(broad、2H)、8.29ppm(broad、2H)
【0199】
[比較例1]
化合物(p18)(LY-400NH )の合成
【0200】
【化46】
【0201】
[比較例1-1]
化合物(p17)(LY―400BO)の合成
【0202】
【化47】
【0203】
上市されているポリエチレングリコール修飾薬剤に用いられているリジン骨格の2分岐型ポリエチレングリコール活性化エステル(3.0g、7.5×10-5モル、数平均分子量=39,700、日油株式会社製「SUNBRIGHT LY-400NS」)をトルエン(15g)に40℃で加温溶解し、N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,2-ジアミノエタン(48μL、3.0×10-4モル、東京化成工業(株)製)を添加し、40℃にて窒素雰囲気下で1時間反応した。反応終了後、反応液を酢酸エチル(12g)で希釈した後、ヘキサン(14g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、再度酢酸エチル(27g)に溶解し、ヘキサン(14g)を加えて、室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、ヘキサン(30g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥することにより上記化合物(p17)(LY―400BO)を得た。収量2.7g。
【0204】
H-NMR(CDCl):1.37ppm(m、2H)、1.43ppm(s、9H、-CH-NH-CO-(CH )、1.51ppm(m、2H)、3.15ppm(m、2H)、3.38ppm(s、6H、-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.65ppm(m、約3,650H、-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.21ppm(m、4H)
【0205】
[比較例1-2]
化合物(p18)(LY-400NH )の合成
【0206】
【化48】
【0207】
比較例1-1で得られた化合物(p17)(1.0g、2.5×10-6モル)をイオン交換水(4.0g)に溶解し、メタンスルホン酸(57μL、8.8×10-4モル、関東化学(株)製)を添加し、40℃にて窒素雰囲気下で6時間反応した。反応後、イオン交換水(6.0g)で希釈し、1N水酸化ナトリウム水溶液(0.9g)を添加し、pHを12に調整した後、塩化ナトリウム(2.5g)を添加し溶解した。得られた溶液にBHT(1.0mg)含有のクロロホルム(10g)を添加して、室温で20分攪拌し、有機層に生成物を抽出した。有機層と水層を分離し、有機層を回収した後、40℃で濃縮し、得られた濃縮物をトルエン(30g)で希釈し、ヘキサン(15g)を加えて室温にて15分攪拌し生成物を析出させた。5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、析出物を回収した後、BHT(3.0mg)含有のヘキサン(15g)で洗浄し、5Aろ紙を用いて吸引ろ過し、真空乾燥して上記化合物(p18)(LY-400NH )を得た。収量0.7g。分子量を表1に示す。HPLC:アミン純度97%。
【0208】
H-NMR(CDCl):1.37ppm(m、2H)、1.51ppm(m、2H)、3.15ppm(m、2H)、3.38ppm(s、6H、-O-(CH-CH-O)n-CH )、3.65ppm(m、約3,650H、-O-(CH -CH -O)n-CH)、4.21ppm(m、4H)
【0209】
【表1】
【0210】
[実施例7]
血清中での安定性試験
1.5mLのエッペンドルフチューブに、マウスまたはヒト血清1mLを加え、各種ポリエチレングリコール誘導体を5.0mg/mLの濃度になるように添加した。37℃で96時間インキュベ-ション後、200μLをサンプリングし、そこにアセトニトリルを添加し、ボルテックスにて1分間攪拌し、血清中のたんぱく質を析出させ、遠心分離後、上清を回収した。次に脂肪酸などの疎水性物質を除去するため、回収液にヘキサンを添加し、ボルテックスにて1分間攪拌し、遠心分離後、下層を回収した。この溶液を真空条件にて濃縮し、血清中からポリエチレングリコール誘導体の回収を行った。その後、GPC分析を行い、分解性ポリエチレングリコール誘導体の分解率を算出した。
分解率は以下の式にて算出した。
分解率 = (試験前の40kDaのピーク面積% - 試験後の40kDaのピーク面積%) ÷ (試験前の40kDaのピーク面積%) × 100
結果を以下の表2に示す。
【0211】
【表2】
【0212】
表2によれば、分解性ポリエチレングリコール誘導体である化合物(p3)、(p13)、(p16)は、非分解性のポリエチレングリコール誘導体である化合物(p18)、メトキシPEGアミン40kDaと同様に、血清中において分解はみられなかった。つまり、当該分解性ポリエチレングリコール誘導体が血中では安定であることが示された。
【0213】
[実施例8]
細胞を用いた分解性試験
培地RPMI-1640(10%FBS Pn/St)10mLを用いて、100mmディッシュにRAW264.7を10×10cell播種し、37℃で24時間培養後、各種ポリエチレングリコール誘導体を10mg/mLの濃度になるよう溶解した培地に交換し、37℃で96時間培養した。培養後、細胞を1%SDS溶液にて溶解し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて希釈し、そこにアセトニトリルを添加し、ボルテックスにて1分間攪拌し、細胞溶解液中のたんぱく質を析出させ、遠心分離後、上清を回収した。次に脂肪酸などの疎水性物質を除去するため、回収液にヘキサンを添加し、ボルテックスにて1分間攪拌し、遠心分離後、下層を回収した。この溶液を真空条件にて濃縮し、細胞内からポリエチレングリコール誘導体の回収を行った。
また、細胞培養に使用した培地中での分解を確認するため、各種ポリエチレングリコール誘導体を10mg/mLの濃度になるよう溶解した培地のみで37℃で96時間培養し、上記と同操作にてポリエチレングリコール誘導体の回収を行った。
その後、回収した各種ポリエチレングリコール誘導体のGPC分析を行い、実施例7と同じ計算式にて分解性ポリエチレングリコール誘導体の分解率を算出した。
結果を以下の表3に示す。また、化合物(p3)、(p13)の細胞実験の前後のGPCチャートをそれぞれ図1図2、および図3図4に示す。
【0214】
【表3】
【0215】
表3によれば、分解性ポリエチレングリコール誘導体である化合物(p3)および(p16)は、細胞内にて効果的に分解し(分解率99%)、分子量4万から2万に分解することが確認できた。また、化合物(p13)においては、分解率99%にて、分子量4万から1万に分解されることが確認できた。これら分解性ポリエチレングリコール誘導体は、細胞培養で用いた培地では分解しないことから、細胞内で特異的に分解されたことが確認できた。一方で、非分解性のポリエチレングリコール誘導体である化合物(p18)およびメトキシPEGアミン40kDaにおいては、いずれも細胞内での分解はみられなかった。
【0216】
[実施例9]
サーモンカルシトニン(sCT)のPEG化
アミノ酸配列:
CSNLSTCVLG KLSQELHKLQ TYPRTNTGSG TP(配列番号:1)
であるサーモンカルシトニン(sCT)(0.5mg、1.5×10-7モル、株式会社ピーエイチジャパン製)を100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に溶解し、実施例3で得られた化合物(p8)またはメトキシPEGアルデヒド40kDa(18mg、4.5×10-7モル)、および還元剤である2-ピコリルボラン(2.0×10-6モル)を加え、sCT濃度を1.0mg/mLに調整し、4℃にて24時間反応させた。その後、反応液を10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を用いて透析し、HiTrap SP HP(5mL、GEヘルスケア製)を用いたイオン交換クロマトグラフィーにて精製することにより、sCT―E(FG-200ME)またはメトキシPEG40kDa-sCTを得た。それぞれのモル収率は36%、49%であった。
【0217】
RPLC分析
装置:WATERS社製「ALLIANCE」
検出器:UV(280nm)
カラム:Inertsil WP300 C18(GLサイエンス)
移動相A:0.05%TFA-H
移動相B:0.05%TFA-ACN
グラジエント:B30%(0min)、B40%(5min)、B50%(15min)、B100%(16min)、B100%(20min)の順に変更
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
上記RPLC分析条件にて、PEG化sCTの純度を算出した。結果を図5に示す。
sCT―E(FG-200ME)のRPLC純度:99%
メトキシPEG40kDa-sCTのRPLC純度:99%
【0218】
MALDI-TOF-MS分析
装置:Bruker社製「autoflex3」
サンプル:0.5mg/mL、PBS溶液
マトリクス:α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)飽和溶液(0.01%TFA-HO:ACN=2:1)
サンプル(1μL)とマトリクス(19μL)を混合し、1μLをターゲットにスポット
上記MALDI-TOF-MS分析条件にて、原料のPEGおよびPEG化sCTの分子量を測定した。
図6には、原料である化合物(p8)と、sCT―E(FG-200ME)のMALDI-TOF-MSの結果を合わせて示す。
sCT―E(FG-200ME)の分子量:46,405
化合物(p8)の分子量:43,136
図7には、原料であるメトキシPEGアルデヒド40kDaと、メトキシPEG40kDa-sCTのMALDI-TOF-MSの結果を合わせて示す。
メトキシPEG40kDa-sCTの分子量46,427
メトキシPEGアルデヒド40kDaの分子量43,303
図7によれば、PEG化sCTの分子量は、原料のPEG誘導体の分子量に比べ、おおよそsCTの分子量の分だけ増加していることが確認できた。
【0219】
SDS-PAGE分析
キット:Thermo Fisher Scientific社製 NuPAGE(登録商標) Bis-Tris Precast Gel(ゲル濃度4-12%)
染色液:クマシーブリリアントブルー溶液(CBB溶液)またはヨウ素染色溶液(BaCl+I溶液)
上記SDS-PAGEキットの推奨測定条件に従い、PEG化sCTの評価を行った。結果を図8に示す。図8によれば、PEG化sCTにおいては、タンパク質やペプチドを選択的に染色させるCBB染色でバンドがみられ、さらに、ポリエチレングリコールを染色させるヨウ素染色においてもバンドが見られた。両方の染色でバンドがみられ、ポリエチレングリコール誘導体がsCTに結合していることを確認できた。
【0220】
[実施例10]
ヒト成長ホルモン(hGH)のPEG化
アミノ酸配列:
MFPTIPLSRL FDNAMLRAHR LHQLAFDTYQ EFEEAYIPKE QKYSFLQNPQ TSLCFSESIP TPSNREETQQ KSNLELLRIS LLLIQSWLEP VQFLRSVFAN SLVYGASDSN VYDLLKDLEE GIQTLMGRLE DGSPRTGQIF KQTYSKFDTN SHNDDALLKN YGLLYCFRKD MDKVETFLRI VQCRSVEGSC GF(配列番号:2)
であるヒト成長ホルモン(hGH)(0.4mg、1.8×10-8モル、Shenandoah Biotechnology社製)を100mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に溶解し、実施例3で得られた化合物(p8)またはメトキシPEGアルデヒド40kDa(3.6mg、9.0×10-8モル)、および還元剤であるシアノ水素化ホウ素ナトリウム(9.0×10-7モル)を加え、hGH濃度を1.0mg/mLに調整し、25℃にて24時間反応させた。その後、反応液を10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.7)を用いて透析し、HiTrap SP HP(5mL、GEヘルスケア製)を用いたイオン交換クロマトグラフィーにて精製することにより、hGH―E(FG-200ME)またはメトキシPEG40kDa-hGHを得た。それぞれのモル収率は28%、32%であった。
【0221】
RPLC分析
装置:WATERS社製「ALLIANCE」
検出器:UV(280nm)
カラム:Inertsil WP300 C18(GLサイエンス)
移動相A:0.1%TFA-H
移動相B:0.1%TFA-ACN
グラジエント:B40%(0min)、B80%(25min)、B90%(27min)、B40%(27.1min)の順に変更
流速:1.0mL/min
カラム温度:25℃
上記RPLC分析条件にて、PEG化hGHの純度を算出した。結果を図9に示す。
hGH―E(FG-200ME)のRPLC純度:90%
メトキシPEG40kDa-hGHのRPLC純度:97%
【0222】
MALDI-TOF-MS分析
装置:Bruker社製「autoflex3」
サンプル:0.5mg/mL、PBS溶液
マトリクス:ケイ皮酸(SA)飽和溶液(0.01%TFA-HO:ACN=2:1)
サンプル(1μL)とマトリクス(19μL)を混合し、1μLをターゲットにスポット
上記MALDI-TOF-MS分析条件にて、PEG化hGHの分子量を測定した。結果を図10図11に示す。
hGH―E(FG-200ME)の分子量:65,584
メトキシPEG40kDa-hGHの分子量:65,263
図10および図11によれば、PEG化hGHの分子量は、原料のPEG誘導体の分子量(図6および図7の下図を参照)に比べ、おおよそhGHの分子量の分だけ増加していることが確認できた。
【0223】
SDS-PAGE分析
キット:Thermo Fisher Scientific社製 NuPAGE(登録商標) Bis-Tris Precast Gel(ゲル濃度4-12%)
染色液:クマシーブリリアントブルー溶液(CBB溶液)またはヨウ素染色溶液(BaCl+I溶液)
上記SDS-PAGEキットの推奨測定条件に従い、PEG化hGHの評価を行った。結果を図12に示す。図12によれば、PEG化hGHにおいては、タンパク質やペプチドを選択的に染色させるCBB染色でバンドがみられ、さらに、ポリエチレングリコールを染色させるヨウ素染色においてもバンドが見られた。また、両方の染色でバンドがみられ、ポリエチレングリコール誘導体がhGHに結合していることを確認できた。
【0224】
[実施例11]
顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)のPEG化
アミノ酸配列:
TPLGPASSLP QSFLLKCLEQ VRKIQGDGAA LQEKLCATYK LCHPEELVLL GHSLGIPWAP LSSCPSQALQ LAGCLSQLHS GLFLYQGLLQ ALEGISPELG PTLDTLQLDV ADFATTIWQQ MEELGMAPAL QPTQGAMPAF ASAFQRRAGG VLVASHLQSF LEVSYRVLRH LAQP(配列番号:3)である顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)(0.1mg、5.3×10-9モル、PeproTech社製)を10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.6、5%ソルビトール含有)に溶解し、実施例3で得られた化合物(p8)および還元剤であるシアノ水素化ホウ素ナトリウム(5.3×10-7モル)を加え、GCSF濃度を2.0mg/mLに調整し、4℃にて24時間反応させた。その後、反応液を10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.6)を用いて希釈し、HiTrap SP HP(5mL、GEヘルスケア製)を用いたイオン交換クロマトグラフィーにて精製することにより、GCSF―E(FG-200ME)を得た。モル収率41%。
【0225】
RPLC分析
装置:WATERS社製「ALLIANCE」
検出器:UV(280nm)
カラム:Inertsil WP300 C18(GLサイエンス)
移動相A:0.1%TFA-H
移動相B:0.1%TFA-ACN
グラジエント:B40%(0min)、B70%(25min)、B90%(27min)、B40%(29min)の順に変更
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
上記RPLC分析条件にて、PEG化GCSFの純度を算出した。
GCSF―E(FG-200ME)のRPLC純度:97%
【0226】
MALDI-TOF-MS分析
装置:Bruker社製「autoflex3」
サンプル:0.5mg/mL、PBS溶液
マトリクス:ケイ皮酸(SA)飽和溶液(0.01%TFA-HO:ACN=2:1)
サンプル(1μL)とマトリクス(19μL)を混合し、1μLをターゲットにスポット
上記MALDI-TOF-MS分析条件にて、PEG化GCSFの分子量を測定した。GCSF―E(FG-200ME)の分子量:62,199
上記MALDI-TOF-MS分析結果によれば、PEG化GCSFの分子量は、原料のPEG誘導体の分子量に比べ、おおよそGCSFの分子量の分だけ増加していることが確認できた。
【0227】
SDS-PAGE分析
キット:Thermo Fisher Scientific社製 NuPAGE(登録商標) Bis-Tris Precast Gel(ゲル濃度4-12%)
染色液:クマシーブリリアントブルー溶液(CBB溶液)またはヨウ素染色溶液(BaCl+I溶液)
上記SDS-PAGEキットの推奨測定条件に従い、PEG化GCSFの評価を行った。上記SDS-PAGE分析結果によれば、PEG化GCSFにおいては、タンパク質やペプチドを選択的に染色させるCBB染色でバンドがみられ、さらに、ポリエチレングリコールを染色させるヨウ素染色においてもバンドが見られた。また、両方の染色でバンドがみられ、ポリエチレングリコール誘導体がGCSFに結合していることを確認した。
【0228】
[実施例12]
PEG化サーモンカルシトニン(sCT)の生理活性評価
実施例9で得られた、分子量4万の分解性ポリエチレングリコール誘導体が結合したsCTであるsCT―E(FG-200ME)と、非分解性であるメトキシPEG40kDaが結合したメトキシPEG40kDa-sCT、未修飾のsCTおよびPBSの4群にて、これらの生理活性を動物実験にて比較評価した。マウス種はBalb/c(8週齢、雄)、PEG化sCT溶液および未修飾のsCT溶液は、PBSを用いてsCT濃度として8.0μg/mLになるように調製し、sCTの投与量として40μg/kgとなるように投与した。1、6、24時間でマウスから採血して血漿を回収し、カルシウムE-テストワコー(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)を用いてカルシウム濃度を測定した。その結果を図16に示す。
図16によれば、PBSの群と比べ、すべてのsCTは有意にカルシウム濃度を低下させた。未修飾のsCTでは、投与6時間後からカルシウム濃度の上昇がみられたが、sCT―E(FG-200ME)と、メトキシPEG40kDa-sCTは、継続して低いカルシウム濃度を維持することが分った。PEG化によってsCTの血中半減期が長くなり、生理活性が損なわれることなく、維持されていることが確認された。
【0229】
[実施例13]
動物実験による空胞形成評価試験
末端にアミノ基を有する分子量4万である分解性ポリエチレングリコール誘導体である化合物(p3)NH―E(FG-200ME)と、非分解性であるメトキシPEGアミン40kDaを用いて、動物実験による空砲形成評価を行った。マウス種はBalb/c(8週齢、雄)、ポリエチレングリコール溶液は、生理食塩水を用いてポリエチレングリコール誘導体を100mg/mLの濃度になるように調製し、マウス尾静脈より20μL投与した。週3回、4週間連続投与を続け、投与終了後、マウスを4%パラホルムアルデヒド水溶液で灌流固定し、パラフィン切片を作製した。HE染色、および抗PEG抗体による免疫染色を行い、脳の脈絡叢上皮細胞における空胞形成を評価した。免疫染色としては、免疫染色キット(BOND Refine Polymer Detection
Kit、ライカ社製)と抗PEG抗体(B-47抗体、アブカム社製)を用いて実施した。抗PEG抗体による免疫染色を行った脳の脈絡叢切片の画像を図13(メトキシPEGアミン40kDa)と図14(NH―E(FG-200ME))に示す。
その結果、分解性ポリエチレングリコールであるNH―E(FG-200ME)は、メトキシPEGアミン40kDaに比べ、有意に空胞の形成を抑制した。
なお、本実施例において投与したポリエチレングリコールの量は、あくまで空胞化を評価するために最適化した量であり、当該技術分野における一般的なポリエチレングリコールの投与量と比べ、極めて多量である。
【0230】
[実施例14]
動物実験によるポリエチレングリコールの蓄積性評価試験
末端にアミノ基を有した分子量4万である分解性ポリエチレングリコール誘導体である化合物(p3)NH―E(FG-200ME)と、非分解性であるメトキシPEGアミン20kDa、メトキシPEGアミン40kDa、およびコントロールであるPBSを用いて、動物実験によるポリエチレングリコールの蓄積性評価を行った。マウス種はBalb/c(8週齢、雄)、ポリエチレングリコール溶液は、生理食塩水を用いてポリエチレングリコール誘導体を62.5mg/mLの濃度になるように調製し、マウス尾静脈より100μL投与した。週3回、4週間連続投与を続け、投与終了後、マウスを4%パラホルムアルデヒド水溶液で灌流固定し、パラフィン切片を作製した。抗PEG抗体による免疫染色を行い、脳の脈絡叢上皮細胞における蓄積性を評価した。免疫染色を行ったそれぞれの脳の脈絡叢切片の画像を図15に示す。
図15によれば、ポリエチレングリコールが含まれないPBSを投与したマウスの脈絡叢切片では染色されないのに対し、非分解性であるメトキシPEGアミン40kDaでは、切片の広範囲で茶色に染色されることが確認された。この染色部分はPEGが蓄積していることを示す。一方、分解性ポリエチレングリコールであるNH―E(FG-200ME)の切片においては、茶色に染色された部分が少なく、分子量が半分のメトキシPEGアミン20kDaと同等の蓄積を示した。結果として、分解性ポリエチレングリコールはその分解性により、同分子量の非分解性であるメトキシPEGアミン40kDaに比べ、有意に組織へのポリエチレングリコールの蓄積を抑制した。
なお、本実施例において投与したポリエチレングリコールの量は、あくまで蓄積性を評価するために最適化した量であり、当該技術分野における一般的なポリエチレングリコールの投与量と比べ、極めて多量である。
【産業上の利用可能性】
【0231】
本発明の分解性ポリエチレングリコール誘導体は、細胞の空胞を引き起こさない高分子量のポリエチレングリコール誘導体であり、生体関連物質を修飾する用途に効果的に用いることができ、生体内の血中で安定であり、且つ細胞内で分解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
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