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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A47C7/62 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020041994
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021142050
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592026325
【氏名又は名称】東海金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136113
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寿浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美松
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03368842(US,A)
【文献】特開平09-248227(JP,A)
【文献】実開昭63-178547(JP,U)
【文献】実開平07-019554(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子であって、
使用者が着座する座面部と、
前記座面部より後方、かつ、上方に位置し、前記座面部に着座する前記使用者の背中を支持する背もたれ部と、
可動式のテーブルと、
前記座面部と前記背もたれ部との側方に設けられ、前記テーブルを支持し、前記座面部に対して前後方向に回動するアーム部と、
前記テーブルが有するテーブル面に沿って配置され、前記アーム部に連結されている回動軸と、前記回動軸の周囲を囲み、前記回動軸を回転可能な状態で前記テーブルに固定する軸固定部と、を有し、前記テーブルが前記アーム部に対して前記回動軸を中心に回動するように前記テーブルと前記アーム部とを連結する連結部と、
を備え、
前記テーブルは、前記アーム部の回動と前記アーム部に対する回動とにより、前記背もたれ部の前方に配置される使用状態と、前記背もたれ部の後方に配置される収納状態と、を取るように移動し、
前記回動軸と前記軸固定部のうちの一方には、前記回動軸に対して斜めに(U字状を除く)溝部が設けられ、他方には、前記溝部に配置され、前記溝部に沿って移動する凸部が設けられており、
前記収納状態では、前記回動軸は上下方向に沿って配置されており、
前記収納状態になるように前記テーブルが回動されるときには、前記凸部が前記溝部に沿って移動することにより、前記テーブルが下方に移動
前記溝部は、前記収納状態のときに、前記凸部が配置される第1部位と、前記第1部位の端部に接続され、前記回動軸に対する傾斜角が前記第1部位より大きい第2部位と、を含む、椅子。
【請求項2】
請求項1記載の椅子であって、
前記凸部は、前記回動軸に設けられ、
前記溝部は、前記軸固定部に設けられており、
前記テーブルが前記収納状態にあるときには、前記凸部は、前記溝部の上端に位置する、椅子。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の椅子であって、
前記椅子が水平面に配置されている配置状態において、前記背もたれ部は重力方向に対して後方に傾斜して配置され、
前記テーブルは、前記配置状態にあるときの前記収納状態において、前記背もたれ部の上端より低い位置で、前記背もたれ部に沿って前記重力方向に対して傾斜して配置される、椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子には、可動式のテーブルが取り付けられているものがある。例えば、下記の特許文献1には、可動式のテーブルが取り付けられている車両のシートが開示されている。特許文献1の可動式のテーブルは、使用時には着座している乗員の前方に配置され、不使用時には背もたれ部の後方に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-208566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そうした可動式のテーブルが取り付けられた椅子においては、背もたれ部の後方に配置されたテーブルが、使用者が注意を払っていない間に、何らかの外力が働くことにより、勝手に移動してしまう場合があった。上記の特許文献1は、車両衝突時に、テーブルによって乗員の膝部を保護することを課題としているため、背もたれ部の後方に配置されたテーブルが勝手に移動するという課題の認識はない。このように、可動式のテーブルが取り付けられている椅子においては、使用者の操作によらずにテーブルが勝手に移動してしまうことを抑制することについては依然として改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態は、椅子として提供される。この形態の椅子は、前記座面部より後方、かつ、上方に位置し、前記座面部に着座する前記使用者の背中を支持する背もたれ部と、可動式のテーブルと、前記座面部と前記背もたれ部との側方に設けられ、前記テーブルを支持し、前記座面部に対して前後方向に回動するアーム部と、前記テーブルが有するテーブル面に沿って配置され、前記アーム部に連結されている回動軸と、前記回動軸の周囲を囲み、前記回動軸を回転可能な状態で前記テーブルに固定する軸固定部と、を有し、前記テーブルが前記アーム部に対して前記回動軸を中心に回動するように前記テーブルと前記アーム部とを連結する連結部と、を備える。前記テーブルは、前記アーム部の回動と前記アーム部に対する回動とにより、前記背もたれ部の前方に配置される使用状態と、前記背もたれ部の後方に配置される収納状態と、を取るように移動し、前記回動軸と前記軸固定部のうちの一方には、前記回動軸に対して斜めに溝部が設けられ、他方には、前記溝部に配置され、前記溝部に沿って移動する凸部が設けられており、前記収納状態では、前記回動軸は上下方向に沿って配置されており、前記収納状態になるように前記テーブルが回動されるときには、前記凸部が前記溝に沿って移動することにより、前記テーブルが下方に移動する。
この形態の椅子によれば、テーブルが収納状態にあるときには、上下方向に対して斜めに溝が配置されているため、収納状態にあるテーブルを回動させようとすると、テーブルの重さによって、凸部が溝部に沿って移動することを抑制する方向の力が生じる。そのため、テーブルが回動軸を中心に回動することを抑制でき、収納状態にあるテーブルが使用者の操作によらず勝手に移動してしまうことを抑制することができる。また、収納状態になるようにテーブルを回動させるときには、テーブルの重さによって、凸部が溝部に沿って移動するのを補助する方向に力が働くため、テーブルを収納状態にするための回動操作を円滑化することができる。
【0007】
(2)上記形態の椅子において、前記凸部は、前記回動軸に設けられ、前記溝部は、前記軸固定部に設けられており、前記テーブルが前記収納状態にあるときには、前記凸部は、前記溝部の上端に位置してよい。
この形態の椅子によれば、テーブルを収納状態にするために回動させときには、回動軸の凸部が、軸固定部の溝部にそって、下端側から上端に向かって移動することになる。よって、テーブルが収納状態にあるときには、テーブルにかかる重力を、テーブルの回動を抑制する方向に働かせることができる。また、収納状態にするためにテーブルを回動させるときには、テーブルにかかる重力を、テーブルの回動を円滑化させる方向に働かせることができる。
【0008】
(3)上記形態の椅子において、前記溝部は、前記収納状態のときに、前記凸部が配置される第1部位と、前記第1部位の端部に接続され、前記回動軸に対する傾斜角が前記第1第より大きい第2部位と、を含んでよい。
この形態の椅子によれば、テーブルが収納状態にあるときの重力方向に対する第1部位の傾斜角が第2部位よりも急峻になるため、テーブルの重さによって生じる力により、凸部が第1部位から第2部位へと移動することを抑制できる。よって、収納状態にあるテーブルが勝手に回動してしまうことを、さらに抑制することができる。
【0009】
(4)上記形態の椅子において、前記椅子が水平面に配置されている配置状態において、前記背もたれ部は重力方向に対して後方に傾斜して配置され、前記テーブルは、前記配置状態にあるときの前記収納状態において、前記背もたれ部の上端より低い位置で、前記背もたれ部に沿って前記重力方向に対して傾斜して配置されてよい。
この形態の椅子によれば、収納状態のときには、テーブルを、背もたれ部の後方におけるデッドスペースに位置させることができる。よって、テーブルが収納状態にあるときの椅子をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】椅子を斜め上方から見たときの概略斜視図。
図2】椅子を斜め下方から見た時の概略斜視図。
図3】椅子の概略分解斜視図。
図4】テーブルが使用状態から収納状態に遷移する途中の椅子の第1概略斜視図。
図5】テーブルが使用状態から収納状態に遷移する途中の椅子の第2概略斜視図。
図6】テーブルが収納状態にあるときの椅子の概略斜視図。
図7】テーブルが収納状態にあるときの椅子の概略側面図。
図8】保持機構の概略分解斜視図。
図9】固定部を上方から見たときの概略平面図。
図10】固定部の概略側面図。
図11】テーブルが収納状態にあるときのアーム回動部を透視して示す概略平面図。
図12】連結部の概略分解斜視図。
図13】回動軸を示す概略側面図。
図14】第2固定部品の概略斜視図
図15】収納状態にされる手前の段階でのテーブルを例示する説明図。
図16】収納状態にさたテーブルの状態を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態:
1-1.椅子の概略構成:
図1は、本実施形態における椅子10を斜め上方から見たときの概略斜視図である。図2は、椅子10を斜め下方から見た時の概略斜視図である。図1図2にはそれぞれ、互いに直交するX方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印が図示されている。X方向は椅子10の左右方向に平行な方向を示している。椅子10の左右方向とは、椅子10の幅方向に相当し、使用者が椅子10に着座したときの右方向および左方向を意味する。図1および図2では、X方向を示す矢印は左方向を示している。Y方向は椅子10の前後方向に平行な方向を示している。椅子10の前後方向とは、椅子10の奥行方向に相当し、椅子10に着座したときの使用者の前方向および後方向を意味する。図1および図2では、Y方向を示す矢印は後方向を示している。Z方向は椅子10の上下方向に平行な方向を示している。椅子10の上下方向とは、椅子10の高さ方向に相当し、椅子10に着座したときの使用者の上方向および下方向を意味する。図1および図2では、Z方向を示す矢印は上方向を示している。椅子10が水平面に配置された状態では、X方向およびY方向は水平方向に平行であり、Z方向は重力方向に平行である。X方向、Y方向、および、Z方向を示す矢印は、後に参照する各図においても図1および図2に対応するように図示されている。
【0012】
図1に示すように、椅子10は、使用者が着座する座面部20と、座面部20に着座した使用者の背中を支持する背もたれ部30と、座面部20および背もたれ部30を支持する脚部40と、可動式のテーブル50と、を備える。座面部20は、板状部位によって構成され、図1に示す上面部21と、図2に示す下面部22と、を有する。上面部21は、左右方向および前後方向に沿って配置される。ここで、本明細書において、ある方向に「沿って」と言うときは、その方向に平行な状態のみならず、その方向に対して、例えば45°未満の角度で傾斜している状態も含んでいる。椅子10に使用者が着座する際には、使用者の臀部が上面部21に載置される。図2に示すように、下面部22には脚部40と、後述するアーム回動部63とが固定されている。
【0013】
背もたれ部30は、座面部20より上方かつ後方に位置している。本実施形態では、背もたれ部30は、座面部20の後端から上方へと延び出ている板状部位として構成されている。背もたれ部30は、上下方向および左右方向に沿って配置されている。背もたれ部30の前面にはクッションが配置されていてもよい。なお、他の実施形態では、背もたれ部30は、板状部位として構成されていなくともよく、座面部20の後端から上方に延び出ている柱状部位や、座面部20に連結されたフレームに張り渡された帯状部位によって構成されていてもよい。
【0014】
本実施形態では、脚部40は、座面部20の前後左右のそれぞれの端部を支持する4本の柱状部位によって構成されている。脚部40は、金属製のパイプ部材によって構成されている。他の実施形態では、脚部40としては、例えば、座面部20の中央部を支持する1本の柱状部位と、その柱状部位の下端に設けられ、椅子10が載置される載置面に沿って広がっている土台部と、を有する構成が採用されてもよい。また、他の実施形態では、脚部40は省略されてもよい。この場合には、椅子10は、例えば、座面部20が段差部の上面に固定された備え付けのシートとして構成されてもよい。あるいは、椅子10は、座面部20が床面に配置される座椅子として構成されてもよいし、座面部20が車輪によって支持されている車いすとして構成されていてもよい。
【0015】
テーブル50は、後述する可動機構60を介して座面部20に連結されている。テーブル50は、板状の部材によって構成されており、物が載置されるテーブル面51と、テーブル面51の裏側の裏面52と、を有する。テーブル50は、例えば、樹脂によって作製される。テーブル50は、使用者の操作により、座面部20および背もたれ部30に対する位置を変位させることができる。これにより、テーブル50は、図1に示されている、使用者が使用可能なように背もたれ部30の前方に配置される使用状態と、後に参照する図6に示されている、使用者の邪魔にならないように背もたれ部30の後方に配置される収納状態と、を取ることができる。テーブル50の移動のメカニズムについては後述する。
【0016】
図3は、椅子10の概略分解斜視図である。本実施形態では、椅子10は、座面部20の本体部23を構成する板状部位と背もたれ部30を構成する板状部位とが一体化された本体部品11を備える。本体部品11は例えば樹脂部材によって構成される。本体部品11には、座面部20の上面部21を構成するクッション24が取り付けられる。本体部品11の下方には、金属製の支持フレーム12がビスや、ナット、ワッシャを介して固定される。支持フレーム12は、座面部20および背もたれ部30のそれぞれの骨格を構成する。テーブル50を支持する可動機構60は、支持フレーム12を介して本体部品11に取り付けられる。また、脚部40を構成するパイプ部材は、支持フレーム12に溶接などによって連結されている。
【0017】
1-2.テーブルの移動機構:
図1および図2に加えて、図4図5図6、および、図7を参照して、椅子10におけるテーブル50の移動機構を説明する。図4および図5は、テーブル50が使用状態から収納状態に遷移するまでの途中の状態にある椅子10の概略斜視図である。図6には、テーブル50が収納状態にあるときの椅子10が図示されている。図7は、テーブル50が収納状態にあるときの椅子10をX方向に見た時の概略側面図である。
【0018】
上述したように、テーブル50は可動機構60を介して座面部20に取り付けられている。図1および図2に示すように、可動機構60は、テーブル50を支持するアーム部61と、アーム部61を座面部20に対して回動させるアーム回動部63と、テーブル50をアーム部61に連結する連結部65と、を備えている。図1に示すように、アーム部61は、座面部20と背もたれ部30との側方に設けられている。アーム部61は、例えば、金属製のパイプ部材によって構成される。図2に示すように、アーム部61は、アーム回動部63を介して、座面部20に対して前後方向に回動可能な状態で座面部20に連結されている。アーム回動部63は、予め定められた範囲内でのアーム部61の回動を許容するように構成されている。アーム回動部63の詳細な構成については後述する。
【0019】
連結部65は、テーブル50を、アーム部61に対して回動可能な状態でアーム部61に連結している。本実施形態では、連結部65はテーブル50の裏面52に設けられている。他の実施形態では、連結部65は、テーブル50の外周側面に設けられていてもよい。連結部65は、予め定められた範囲内でのテーブル50の回動を許容するように構成されている。連結部65の詳細な構成については後述する。
【0020】
図1を参照する。テーブル50の使用状態では、テーブル50は、テーブル面51が左右方向および前後方向に沿った姿勢で、背もたれ部30の前方、かつ、座面部20より上方の位置に保持される。なお、使用状態では、アーム部61は、アーム回動部63によって前方への回動が規制された状態となり、テーブル50は、連結部65によって下方への回動が規制された状態となる。
【0021】
テーブル50を使用状態から収納状態へと遷移させるときには、椅子10の使用者は、まず、図4に示すように、アーム部61の位置を固定したまま、テーブル50を上方に向かって回動させて、テーブル50を座面部20および背もたれ部30の側方に移動させる。これにより、テーブル50は、テーブル面51が上下方向および前後方向に沿った配置姿勢となる。この状態では、テーブル面51は、座面部20および背もたれ部30とは反対の方向を向いている。テーブル50は、連結部65によって、それ以上、座面部20から離れる方向へと回動しないように回動が規制された状態となる。
【0022】
次に、使用者は、図5に示すように、アーム部61を後方に向かって回動させる。これによって、テーブル50は、後述するアーム回動軸67を支点として後方へと回転移動する。アーム部61は、アーム回動部63によって、テーブル50が背もたれ部30と左右方向に並ぶ高さ位置で回動が規制される。
【0023】
最後に、使用者は、図6に示すように、アーム部61の位置を保持したまま、テーブル面51が後方に向く姿勢となるように、テーブル50を背もたれ部30の方へと回動させる。これによって、テーブル50は、背もたれ部30の後方に配置された収納状態となる。なお、収納状態となるようにテーブル50を回動させると、矢印で示されているように、テーブル50はアーム部61に対する位置がわずかに下方に移動するが、この理由については後述する。使用者は、ここまでで説明したのと逆の手順の操作により、テーブル50を収納状態から使用状態にすることもできる。
【0024】
図7を参照する。図7には、テーブル50が収納状態にあるときの椅子10が水平面HSに配置された配置状態が図示されている。本実施形態の椅子10によれば、この配置状態にあるときには、背もたれ部30は、重力方向に対して後方に傾斜して配置される。重力方向に対する背もたれ部30の傾斜角度θaは、0°より大きく、45°より小さい角度である。背もたれ部30がこのように傾斜していることによって、使用者は、座面部20に着座したときに、よりくつろいだ姿勢をとることができる。
【0025】
また、本実施形態の椅子10によれば、テーブル50は、上記の配置状態にあるときの収納状態において、背もたれ部30の上端より低い位置で、背もたれ部30に沿って重力方向に対して傾斜して配置される。これによって、傾斜している背もたれ部30の後方におけるデッドスペースにテーブル50を配置することができ、テーブル50が収納状態にあるときの椅子10をコンパクトにすることができる。本実施形態では、収納状態にあるテーブル50は、上下方向において、背もたれ部30の少なくとも一部と重なり合う部位が形成される位置に配置されている。これによって、収納状態にあるテーブル50と背もたれ部30との間の距離を小さくすることができるため、テーブル50が収納状態にあるときの椅子10を、より一層、コンパクトにすることができる。
【0026】
1-3.可動機構の構成:
テーブル50の可動機構60が備えるアーム回動部63と連結部65の詳細な構成を順に説明する。
【0027】
(1)アーム回動部の構成:
図2を参照する。アーム回動部63は、アーム回動軸67と、一対の保持機構68と、を備える。アーム回動軸67は、アーム部61の下端部に連結され、アーム部61の回動軸として機能する軸状の部材である。本実施形態では、アーム回動軸67は、アーム部61と一体的な部品として構成されており、アーム部61を構成する金属製のパイプ部材を折り曲げることによって形成されている。
【0028】
アーム回動軸67は、座面部20の下面に固定されている一対の保持機構68によって、回転可能な状態で左右方向に沿って保持されている。保持機構68のそれぞれは、座面部20の左右方向における端部に寄った位置に取り付けられている。保持機構68は両方ともほぼ同じ構成を有している。
【0029】
図8は、図3に示す領域Aを抜き出した図であり、保持機構68の概略分解斜視図である。保持機構68は、座面部20に固定される固定部70と、アーム回動軸67の周囲を囲み、アーム回動軸67を保持する軸保持部71と、アーム回動軸67の回動を規制する回動規制部73と、を備える。
【0030】
固定部70は、座面部20を支持する支持フレーム12に接合された板状部材によって構成されている。固定部70は、座面部20に沿って配置されている平板部位75を有する。平板部位75には、軸保持部71を固定するためのボルトBTが締結されるボルト穴76と、回動規制部73が挿通されるスリット77と、が設けられている。
【0031】
軸保持部71は、上下方向に互いに嵌め合わされる一対の保持部品71a,71bによって構成される。第1保持部品71aは、アーム回動軸67を下方から支持する部品であり、アーム回動軸67の外周側面に沿った周面周を有する凹部である下側軸受け部80を有する。また、第1保持部品71aの下側軸受け部80の上側には、第2保持部品71bが勘合する勘合部位81が形成されている。さらに、第1保持部品71aの勘合部位81の前後方向の両側には、ボルトBTが挿通されるボルト孔82が形成されている。第2保持部品71bは、アーム回動軸67を上方から押さえる部品であり、アーム回動軸67の外周側面に沿った周面周を有する凹部である上側軸受け部84を有する。第2保持部品71bが、第1保持部品71aの勘合部位81に嵌められると、上側軸受け部84と下側軸受け部80とが対向しあって、アーム回動軸67が左右方向に挿通される貫通孔が形成される。
【0032】
回動規制部73は、アーム回動軸67に固定されており、アーム回動軸67とともに回転する。回動規制部73は、アーム回動軸67の外周側面から一方向に延び出ている延出板部86と、延出板部86の両面に設けられた一対の突起部87と、を有する。延出板部86は、アーム回動軸67の回転方向に沿って配置されており、各突起部87はアーム回動軸67の回転方向に交差する方向に突起している。
【0033】
図9は、固定部70を上方から見たときの概略平面図である。図10は、固定部70を左右方向に沿って見た時の概略側面図である。アーム回動軸67を保持する軸保持部71が固定部70に固定されると、延出板部86の先端部位は、図10に示すように、固定部70の平板部位75に設けられているスリット77に挿通される。また、各突起部87は、図9に示すように、平板部位75におけるスリット77の周縁部の上側に配置される。図9に示すように、スリット77の中央部には、幅が局所的に大きくなっている部位が設けられており、固定部70へのアーム回動軸67の組み付けの際には、その部位を介して、突起部87をスリット77に挿通させることができる。
【0034】
図10に示すようにアーム回動軸67が回転すると、回動規制部73は、スリット77に沿ってアーム回動軸67を支点として回動する。図9に示すように、回動規制部73がスリット77の端部近傍にまで移動すると、一対の突起部87がスリット77の周縁部に引っ掛かり、アーム回動軸67のそれ以上の回転が規制される。これにより、アーム部61の回動可能な範囲が規定される。
【0035】
図11は、テーブル50が収納状態にあるときのアーム回動部63を上方から透視して見たときの概略平面図である。図11では、テーブル50が使用状態になったときのアーム部61の位置と、回動規制部73の位置と、が破線で図示してある。テーブル50が収納状態にあるときには、回動規制部73の一対の突起部87は、スリット77の後端側においてスリット77の周縁部に引っ掛かる。これによって、テーブル50の重さによってアーム部61が後方に回動しすぎることが規制され、テーブル50が図6に示す収納状態での高さ位置に保持される。一方、テーブル50が使用状態にあるときには、図11の破線で示されているように、回動規制部73の一対の突起部87は、スリット77の前端側においてスリット77の周縁部に引っ掛かる。これによって、テーブル50の重さによってアーム部61が前方に回動しすぎることが規制され、テーブル50が図1に示す使用状態での高さ位置に保持される。
【0036】
(2)連結部の構成:
図12は、連結部65の概略分解斜視図である。連結部65は、テーブル50が回動するときの支点となる回動軸90と、回動軸90の周囲を囲み、回動軸9を回転可能な状態でテーブル50に固定する軸固定部92と、を備える。回動軸90は、軸状の部材であり、アーム部61の上端部に連結されている。本実施形態では、回動軸90は、アーム部61と一体的な部品として構成されており、アーム部61を構成する金属製のパイプ部材を折り曲げることによって形成されている。つまり、本実施形態では、アーム部61とアーム回動軸67と回動軸90とは一本のパイプ部材を折り曲げて形成されている。本実施形態では、回動軸90は、アーム回動軸67と直交する方向に沿って形成されている。
【0037】
回動軸90はテーブル面51に沿って配置される。回動軸90は、テーブル50の使用状態では、図1に示すように、アーム部61の上端から前方に延び出ており、テーブル50の収納状態では、図6に示すように、アーム部61の上端から上方に延び出ている。
【0038】
図13は、回動軸90を示す概略側面図である。回動軸90の外周側面には、2つの凸部91が設けられている。凸部91の機能については後述する。なお、凸部91の数は2つには限定されない。他の実施形態では、回動軸90には、凸部91が1つのみ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0039】
図12を参照する。軸固定部92は、回動軸90を挟んで互いに嵌め合わされる一対の固定部品92a,92bによって構成される。一対の固定部品92a,92bは、例えば樹脂材料によって構成される。第1固定部品92aは、テーブル50の裏面52に固定され、テーブル50側から回動軸90を保持する部品である。第1固定部品92aは、回動軸90に沿った方向を長手方向とする長手形状を有している。第1固定部品92aは、テーブル50とは反対側に、回動軸90の外周側面に沿った内周面を有する凹部であるテーブル側軸受け部93を有する。
【0040】
第2固定部品92bは、テーブル50の裏面52に対向する対向面94に回動軸90の外周側面に沿った内周面を有する凹部である外側軸受け部95を有する。外側軸受け部95のテーブル50側には、第1固定部品92aが勘合する勘合部位96が形成されている。第2固定部品92bは、勘合部位96に第1固定部品92aが嵌まった状態で、テーブル50の裏面52に固定ねじ98によってねじ止めされる。第2固定部品92bには、固定ねじ98が挿通されるねじ穴99が設けられている。第2固定部品92bの勘合部位に第1固定部品92aが嵌ると、第2固定部品92bの外側軸受け部95と第1固定部品92aのテーブル側軸受け部93とが対向しあって、回動軸90の外周側面を囲む貫通孔が形成される。回動軸90は、その貫通孔内に挿通されて回動可能な状態で保持される。
【0041】
図14は、第2固定部品92bを、その対向面94側から見たときの概略斜視図である。図14では、第2固定部品92bは、テーブル50が収納状態にあるときの上下方向と一致するように図示されている。第2固定部品92bの外側軸受け部95の内周面には2つの溝部100が切られている。溝部100は、外側軸受け部95に配置される回動軸90に対して斜めに切られている。
【0042】
本実施形態では、溝部100は、テーブル50が収納状態にあるときに、上端側に配置される第1部位101と、第1部位101の下端に接続されている第2部位102と、を有している。外側軸受け部95に配置される回動軸90に対する傾斜角は、第1部位101よりも第2部位102の方が大きい。溝部100の回動軸90に対する傾斜角とは、溝部100と回動軸90の軸線方向との間の2つの角度のうち、小さい方の角度を意味する。本実施形態では、第1部位101と回動軸90との間の傾斜角は、45°未満であり、第2部位102と回動軸90との間の傾斜角は、45°より大きい。第1部位101と第2部位102のそれぞれの回動軸90に対する傾斜角の差は、例えば5~30°程度である。また、本実施形態では、第1部位101の長さは、第2部位102よりも短い。
【0043】
軸固定部92に回動軸90が組み付けられるときには、図13に示す回動軸90の凸部91が溝部100内に配置される。軸固定部92に保持されている状態で回動軸90が回転するときには、凸部91は溝部100に沿って移動する。凸部91が溝部100の端部に到達したときには、回動軸90の回転は規制される。なお、溝部100の数は2つに限定されることはない。溝部100は、回動軸90に設けられた凸部91の数に応じた数で設けられていればよい。
【0044】
図15および図16を参照して、回動軸90の凸部91と軸固定部92の溝部100の機能を説明する。図15には、図5に示されている、収納状態にされる手前の段階でのテーブル50の状態が例示されている。また、図16には、図6に示されている、収納状態にされたテーブル50の状態が例示されている。図15および図16では、軸固定部92の内部における凸部91の位置と溝部100の位置とを破線で図示してある。また、図15および図16には、便宜上、重力方向Gが図示してある。
【0045】
図15の状態では、回動軸90の凸部91は、溝部100の下端に位置している。この状態からテーブル50を回動させて収納状態にすると、図16に示されているように、凸部91は、溝部100に沿って、溝部100の上端側へと斜めに移動し、溝部100の上端に位置する。これにより、テーブル50は、回動軸90に対して下方に移動し、その分だけ、回動軸90の先端が、図16の矢印に示すように軸固定部92から延び出る。
【0046】
ここで、図15および図16の状態では、回動軸90は上下方向、つまり、重力方向に沿って配置されている。そのため、テーブル50を回動させて図15の状態から図16の収納状態にするときには、テーブル50の重さによって凸部91が溝部100の上端側へと誘導されやすくなっており、テーブル50をより少ない力で回動させることができる。また、テーブル50が図16に示す収納状態になっているときには、テーブル50の重さによって凸部91が溝部100の下端側へと移動することを抑制する力が生じる。よって、図6に示されている収納状態にあるテーブル50が、使用者の操作によらず、背もたれ部30から離れる方向へと勝手に回動してしまうことが抑制される。
【0047】
本実施形態では、上記のように、溝部100の上端側には、回動軸90に対する角度が急峻な第1部位101が設けられており、収納状態では、凸部91はその第1部位101に配置されている。収納状態では、第1部位101は、上下方向に対する傾斜角が、第2部位102よりも急峻になるため、第1部位101に位置する凸部91は、テーブル50の重さによって生じる力により、第2部位102へと移動することが抑制される。よって、収納状態にあるテーブル50が勝手に回動することが、より一層抑制される。
【0048】
また、図15の状態からテーブル50を図16の収納状態へと回動させる場合には、凸部91が第2部位102から第1部位101に進入するときに、テーブル50が回動軸90に対して下がる速度が大きくなる。これにより、使用者はテーブル50が収納状態になった感触を得ることができる。また、本実施形態では、上記のように、第1部位101の長さが第2部位102よりも短いため、テーブル50が急な速度で回動軸90に対して下がる距離が短くなっており、テーブル50が収納状態になるときの衝撃が緩和される。
【0049】
以上のように、本実施形態の椅子10によれば、テーブル50が収納状態にあるときには、上下方向に対して斜めに溝100が配置される。そのため、収納状態にあるテーブル50を回動させようとすると、テーブル50の重さによって、凸部91が溝部100に沿って移動することを抑制する方向の力が生じ、テーブル50が回動軸90を中心に回動することが抑制され、収納状態にあるテーブル50が使用者の操作によらず勝手に移動してしまうことが抑制される。また、収納状態になるようにテーブル50を回動させるときには、テーブル50の重さによって、凸部91が溝部100に沿って移動するのを補助する方向に力が働くため、テーブル50を収納状態にするための回動操作が円滑化される。
【0050】
2.他の実施形態:
上記実施形態で説明した種々の構成は、例えば、以下のように改変することが可能である。以下に説明する他の実施形態はいずれも、上記実施形態と同様に、本開示の技術を実施するための形態の一例として位置づけられる。
【0051】
・他の実施形態1:
上記実施形態において、凸部91が軸固定部92のテーブル側軸受け部93または外側軸受け部95の内周面に設けられ、溝部100が回動軸90の外周側面に設けられていてもよい。この場合には、収納状態になるようにテーブル50を回動させると、テーブル50に固定されている軸固定部92に設けられた凸部91が、回動軸90に設けられている溝100に沿って下方に移動して、テーブル50が下方に移動する。よって、この場合には、溝部100の第1部位101と第2部位102の位置は上記実施形態のときとは上下に入れ替えられることが望ましい。こうした構成であっても、テーブル50にかかる重力によって、収納状態からテーブル50が回動しようとするときの溝部100に沿った凸部91の移動が抑制される。よって、上記の実施形態で説明したのと同様な作用効果を奏することができる。つまり、溝部100が、連結部65における回動軸90と軸固定部92のうちの一方に設けられ、他方に凸部91が設けられていれば、上記実施形態で説明したのと同様な作用効果を奏することが可能である。
【0052】
・他の実施形態2:
上記実施形態において、溝部100は、回動軸90に対する傾斜角度が異なる第1部位101と第2部位102とを有していなくてもよい。溝部100は、回動軸90に対して一定の傾斜角で切られていてもよい。
【0053】
・他の実施形態3:
上記実施形態において、椅子10が水平面に配置された配置状態においては、背もたれ部30は重力方向に平行に配置されていてもよい。また、上記実施形態において、テーブル50は、収納状態にあるときに、背もたれ部30に沿って配置されていなくてもよいし、背もたれ部30の上端から突出する部位を有するように配置されていてもよい。
【0054】
3.その他:
本開示の技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須ではないと説明されているものに限らず、その技術的特徴が本明細書中に必須であると説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…椅子、11…本体部品、12…支持フレーム、20…座面部、21…上面部、22…下面部、23…本体部、24…クッション、30…背もたれ部、40…脚部、50…テーブル、51…テーブル面、52…裏面、60…回動機構、61…アーム部、63…アーム回動部、65…連結部、67…アーム回動軸、68…保持機構、70…固定部、71…軸保持部、第1保持部品71a、第2保持部品71b、73…回動規制部、75…平板部位、77…スリット、80…下側軸受け部、81…勘合部位、82…ボルト穴、84…上側軸受け部、86…延出板部、87…突起部、90…回動軸、91…凸部、92…軸固定部、92a…第1固定部品、92b…第2固定部品、93…テーブル側軸受け部、94…対向面、95…外側軸受け部、96…勘合部位、98…固定ねじ、99…ねじ穴、100…溝部、101…第1部位、102…第2部位、BT…ボルト、HS…水平面
図1
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