(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20231228BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
F24F7/06 101Z
F24F7/007 C
(21)【出願番号】P 2018127521
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 智和
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】岩▲崎▼ 則昌
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-249350(JP,A)
【文献】特開2009-92338(JP,A)
【文献】特開2012-177498(JP,A)
【文献】特開平11-52064(JP,A)
【文献】特開2012-241950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0174429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/06
F24C 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器の天面温度を領域ごとに検知する温度センサと、
前記調理器からの臭気や油煙を排気する排気部と、
前記排気部の排気風量を選択するための閾値温度を前記領域ごとに記憶する閾値温度記憶部と、
全ての領域に第1の閾値温度を適用した後、前記天面温度から少なくとも前記調理器のグリルの吹出口の位置を特定し、特定した前記グリルの前記吹出口の位置に該当する領域の閾値温度を前記第1の閾値温度よりも小さい第2の閾値温度に変更し、前記天面温度と前記第1の閾値温度および前記第2の閾値温度とを前記領域ごとに比較し比較結果に応じて前記排気風量を選択する制御部と、を有するレンジフード。
【請求項2】
さらに、
前記調理器の種類がガス調理器かIH調理器かを選択する選択スイッチを有し、
前記閾値温度記憶部は、ガス調理器用の閾値温度と前記ガス調理器用の閾値温度よりも小さいIH調理器用の閾値温度を記憶し、
前記制御部は、前記ガス調理器が選択されているときには、特定した前記ガス調理器用のグリルの吹出口の位置に該当する領域の閾値温度を前記ガス調理器用の前記第1の閾値温度から前記ガス調理器用の前記第2の閾値温度に変更し、前記天面温度と前記ガス調理器用の前記第1の閾値温度および前記第2の閾値温度とを前記領域ごとに比較し比較結果に応じて前記排気風量を選択し、前記IH調理器が選択されているときには、特定した前記IH調理器用のグリルの吹出口の位置に該当する領域の閾値温度を前記IH調理器用の前記第1の閾値温度から前記IH調理器用の前記第2の閾値温度に変更し、前記天面温度と前記IH調理器用の前記第1の閾値温度および前記第2の閾値温度とを前記領域ごとに比較し比較結果に応じて前記排気風量を選択する、請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
前記制御部は、
前記天面温度から前記調理器で使用している熱源の数と位置、および前記グリルの使用の有無を特定し、前記使用している熱源に該当する領域の前記天面温度と前記第1の閾値温度とを前記領域ごとに比較するとともに、前記グリルが使用されているときには、特定した前記グリルの前記吹出口の位置に該当する領域の前記天面温度と前記第2の閾値温度とを前記領域ごとに比較し比較結果に応じて前記排気風量を選択する、請求項1または2に記載のレンジフード。
【請求項4】
前記制御部が選択する前記排気風量は、比較結果に応じて、第一モードと、前記第一モードよりも前記排気風量が大きい第二モードとを含む、複数のモードを有する、請求項1から3のいずれかに記載のレンジフード。
【請求項5】
前記制御部が選択する前記排気風量は、前記第1の閾値温度または前記第2の閾値温度を超える前記天面温度の領域の合計数が所定の数を超えている場合には、より大きい排気風量のモードを選択する、請求項4に記載のレンジフード。
【請求項6】
前記制御部は、
区分された領域の前記天面温度の平均値と前記第1の閾値温度および前記第2の閾値温度とを比較し比較結果に応じて前記排気風量を選択
し、
前記区分された領域とは、特定したグリルの前記吹出口の位置に該当する領域およびその他の領域、または特定したグリルの前記吹出口の位置に該当する領域および熱源の位置に該当する領域のいずれかである、請求項4に記載のレンジフード。
【請求項7】
前記グリルの前記吹出口の位置の特定は、前記天面温度の前記領域ごとの温度分布を用いて行なう、請求項2に記載のレンジフード。
【請求項8】
前記グリルの前記吹出口の位置の特定は、前記選択スイッチにより前記ガス調理器が選択されている場合には、前記調理器の中央部よりも背面側の前記天面温度の高い領域が一定の範囲で横長に分布している部分により、前記選択スイッチにより前記IH調理器が選択されている場合には、前記調理器の中央部よりも背面側の前記天面温度の高い領域が前記調理器の一定の範囲よりも狭い領域で集中している部分により、それぞれ行なう、
請求項7に記載のレンジフード。
【請求項9】
前記調理器で使用している前記熱源の数と位置、および前記グリルの使用の有無の特定は、前記天面温度の前記領域ごとの温度分布を用いて行なう、請求項3に記載のレンジフード。
【請求項10】
前記調理器の前記熱源の数と位置、および前記グリルの前記吹出口の位置の特定は、前記調理器の種類ごとに前記熱源の位置と前記グリルの前記吹出口の位置とが示されているテンプレートと前記天面温度の前記領域ごとの温度分布とを比較することによって行なう、請求項3に記載のレンジフード。
【請求項11】
前記調理器の前記熱源の位置と前記グリルの前記吹出口の位置との特定は、前記調理器と前記温度センサとの離隔距離に応じてあらかじめ登録した前記熱源の位置と前記吹出口の位置との位置情報を用い、離隔距離を設定することによって行なう、請求項3に記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンジフードに取り付けた温度センサによって調理器の天面温度を検出し、検出した天面温度に応じて自動的に排気風量を決定する、自動運転機能付きのレンジフードがある(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のレンジフードでは、調理器の天面温度を検出しているものの、その天面温度の上昇が、熱源による調理物温度の上昇に依るものなのか、グリルの吹出口から吹き出している油煙の温度の上昇に依るものなのか、を区別して捉えることができない。
【0005】
そのため、特許文献1のレンジフードでは、グリルよりも使用頻度の高い熱源側に天面温度の検出のウエイトを置き、検出される天面温度の高低に応じて自動的に排気風量を変化させている。
【0006】
したがって、特許文献1のレンジフードでは、グリルの吹出口から排出されている油煙の温度上昇はあまり考慮されず、グリルの吹出口から油煙が多く排出されていても、排気風量が増加されないことがある。
【0007】
このため、グリルの吹出口から排出される油煙を的確に捕集して外部に排気させることができないことがあり、臭い、煙、油が室内に拡散される恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、グリルの吹出口の臭気や油煙も的確に排気できるレンジフードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、調理器の天面温度を領域ごとに検知する温度センサと、調理器からの臭気や油煙を排気する排気部と、排気部の排気風量を選択するための閾値温度を領域ごとに記憶する閾値温度記憶部と、天面温度から少なくとも調理器のグリルの吹出口の位置を特定し、グリルの吹出口に該当する領域の閾値温度は他の領域の閾値温度よりも小さい値に変更し、天面温度と変更後の閾値温度とを領域ごとに比較し比較結果に応じて排気風量を選択する制御部と、を有するレンジフードである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、調理器の一部の領域に適用する閾値温度を変更し調理器の天面温度と変更後の閾値温度とを領域ごとに比較して排気風量を選択しているので、たとえば、グリルの吹出口の臭気や油煙も的確に排気でき、調理器からの臭い、煙、油が室内に拡散される恐れがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のレンジフードをキッチンに設置した場合の正面図である。
【
図2】本実施形態のレンジフードをキッチンに設置した場合の側面図である。
【
図3】本実施形態のレンジフードが備える操作パネルの正面図である。
【
図4】本実施形態のレンジフードの制御系のブロック図である。
【
図5】温度センサによる調理器の天面温度の検出状態を模式的に示す図である。
【
図6】前面側の2つの熱源を用いて調理をしている場合の、温度センサによる調理器の天面温度の検出状態を模式的に示す図である。
【
図7】前面側の2つの熱源を用いて調理をしている場合の、温度センサによる調理器の天面温度の検出状態を立体的に表した図である。
【
図8】背面側の熱源を用いて調理をしている場合の、温度センサによる調理器の天面温度の検出状態を模式的に示す図である。
【
図9】調理器のグリルを用いて調理をしている場合の、温度センサによる調理器の天面温度の検出状態を模式的に示す図である。
【
図10】調理器のグリルを用いて調理をしている場合の、温度センサによる調理器の天面温度の検出状態を立体的に表した図である。
【
図11】ガス用の調理器に適用するガス用閾値温度を模式的に示す図である。
【
図12】IH用の調理器に適用するIH用閾値温度を模式的に示す図である。
【
図13】本実施形態のレンジフードの動作フローチャートである。
【
図14】調理器の熱源の数と位置、およびグリルの吹出口の位置の特定をするためのテンプレートの一例を示す図である。
【
図15】調理器の熱源の数と位置、およびグリルの吹出口の位置の特定をするための他のテンプレートの一例を示す図である。
【
図16】調理器の熱源の位置とグリルの吹出口の位置との特定をするため、調理器とレンジフードとの離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置と吹出口の位置との位置情報の一例を示す図である。
【
図17】調理器の熱源の位置とグリルの吹出口の位置との特定をするため、調理器とレンジフードとの離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置と吹出口の位置との位置情報の他の一例を示す図である。
【
図18】調理器の熱源の位置とグリルの吹出口の位置との特定をするため、調理器とレンジフードとの離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置と吹出口の位置との位置情報の他の一例を示す図である。
【
図19】調理器のグリルの吹出口の領域に適用する閾値温度とその他の領域に適用する閾値温度との相違を模式的に示す図である。
【
図20】調理器で使用されている熱源の数とグリルの使用の有無によって選択される排気風量のモードの一例を示す図である。
【
図21】本実施形態のレンジフードとは異なるタイプのレンジフードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみに限定されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されている。したがって、各図面における各構成要素の寸法比率は実際とは異なる。また、図面において同一の要素には同一の符号を付し、明細書において重複する説明は省略する。
【0013】
(レンジフードの構成)
図1は、本実施形態に係るレンジフードをキッチンに設置した場合の正面図である。また、
図2は、本実施形態に係るレンジフードをキッチンに設置した場合の側面図である。
【0014】
図1および
図2に示すように、本実施形態のレンジフード100は、調理器200の上部に設置される。レンジフード100は調理器200の調理時に生じる臭い、煙、油などを含む臭気や油煙を吸い込み外部に排気する。例示している調理器200は、3つの熱源210(3つの熱源の総称)およびグリルの吹出口220を有する。なお、本明細書において、熱源とは、ガス用の調理器に対してはバーナーを、IH用の調理器に対してはヒーターを、それぞれ意味する。
【0015】
レンジフード100は、その中央部より左側の前面側の下面に、調理器200の天面温度を検知する温度センサ300を有する。温度センサ300は、図示点線で示される領域の温度を検出する。温度センサ300は、たとえば、8×8の64個の領域の温度を別々に検知できる複眼温度センサである。したがって、温度センサ300は、調理器200の天面温度を64の領域ごとに検出することができる。なお、本実施形態では、発明の理解を容易にするために、8×8の64個の領域の温度を別々に検知できる複眼温度センサを例示したが、たとえば、
図16~
図18に示すように、16×16の256個の領域の温度を別々に検知できる複眼温度センサを用いてもよい。また、さらに多くの領域の温度を別々に検知できる複眼温度センサを用いても良い。複眼温度センサとしては、たとえば複眼式赤外線センサを例示することができる。
【0016】
レンジフード100は、その上部に排気部110を備えている。排気部110は、調理器200からの臭気や油煙を排気する。排気部110は、調理器200からの油煙を吸い込む吸気口112、屋外と連通する排気口114、吸気口112と排気口114とを結ぶ通路内に吸気口112から吸い込んだ油煙を排気口114に排気させる排気ファン116を備えている。排気ファン116は図示されていないファンモータによって駆動される。
【0017】
レンジフード100は、その上部の前面側に、レンジフード100の動作を指示するための操作パネル120を備えている。
【0018】
図3は、本実施形態のレンジフード100が備える操作パネル120の正面図である。操作パネル120は、運転スイッチ121、風量スイッチ122、風量自動スイッチ123、タイマースイッチ124、照明スイッチ125、および常時換気スイッチ126を有する。運転スイッチ121は、レンジフード100を動作させるためのスイッチである。風量スイッチ122は、排気ファン116の排気風量を、弱、中、強に手動で切り替えるためのスイッチである。風量自動スイッチ123は、温度センサ300が検知する調理器200の天面温度に応じて、排気ファン116の排気風量のモードを、自動的に最適なモードに切り替える制御を行わせるためのスイッチである。タイマースイッチ124は、排気ファン116を調理終了後に回転させる時間を設定するためのスイッチである。照明スイッチ125は、調理器200の上面を照らすLED電球の点灯/消灯させるためのスイッチである。常時換気スイッチ126は、排気ファン116を手動で回転/停止させることで常時換気の運転/停止を行うためのスイッチである。
【0019】
図4は、本実施形態のレンジフード100の制御系のブロック図である。レンジフード100は、排気ファン116、ファンモータ118、操作パネル120、制御装置130、および温度センサ300を有する。排気ファン116、ファンモータ118、および操作パネル120は上記の通りである。制御装置130は、レンジフード100に内蔵されている。
【0020】
制御装置130は、ガス/IH選択スイッチ132、閾値温度記憶部134、および制御部136を有する。ガス/IH選択スイッチ132は、レンジフード100が設置されるキッチンの調理器の種類がガス調理器かIH調理器かを選択する選択スイッチである。ガス/IH選択スイッチ132は、操作パネル120に設けても良い。ガス/IH選択スイッチ132は、レンジフード100を現場に設置するときに作業者が、または、レンジフード100の使用開始前に使用者が操作する。閾値温度記憶部134は、排気部110の排気風量を選択するための閾値温度を温度センサ300が検知する天面温度の領域ごとに対応させて記憶する。閾値温度記憶部134は、ガス用の調理器200に対して使用するガス用閾値温度とIH用の調理器200に対して使用するIH用閾値温度の両方を記憶する。閾値温度記憶部134に記憶されている閾値温度の大きさは、ガス調理器用の閾値温度よりもIH調理器用の閾値温度の方が小さい。制御部136は、閾値温度記憶部134から取り出した閾値温度のうち、調理器200の一部の領域に適用する閾値温度を変更し、温度センサ300が検知する天面温度と変更後の閾値温度とを領域ごとに比較し、比較結果に応じて排気部110の排気風量を選択する。
【0021】
(レンジフード100を構成する各部の動作)
次に、レンジフード100を構成する各部の動作を詳細に説明する。
【0022】
(温度センサ300)
図5は、温度センサ300による調理器200の天面温度の検出状態を模式的に示す図である。上記の通り、温度センサ300は、レンジフード100の下面に取り付けられているので、調理器200の天面温度は、
図5のように、たとえば8×8の64に区分された領域(Tij(i=1~8、j=1~8))ごとに検出される。具体的には、T11~T88までの64の領域の温度が領域ごとに検知される。
【0023】
図6は、前面側の2つの熱源210A、210Bを用いて調理をしている場合の、温度センサ300による調理器200の天面温度の検出状態を模式的に示す図である。
図6において塗りつぶしの色の濃い領域は、その色の濃さに応じて検知温度が高くなっている。また、
図7は、前面側の2つの熱源210A、210Bを用いて調理をしている場合の、温度センサ300による調理器200の天面温度の検出状態を立体的に表した図である。
図7において立体図形の高さが高い領域は、その高さに応じて検知温度が高くなっている。これらの図を見ると、温度センサ300のT22~T27、T32~T37、T42~T47の領域の検知温度が他の領域の検知温度よりも高いことがわかる。
【0024】
図8は、背面側の熱源210Cを用いて調理をしている場合の、温度センサ300による調理器200の天面温度の検出状態を模式的に示す図である。
図8においても、塗りつぶしの色の濃い領域は、その色の濃さに応じて検知温度が高くなっている。背面側の熱源210Cは前面側の2つの熱源210A、210Bよりも大きさが小さく、火力も小さいので、その検知温度も
図6に比べて低くなっていることがわかる。この図を見ると、温度センサ300のT43、T44、T53、T54、T63、T64の領域の検知温度が他の領域の検知温度よりも高いことがわかる。
【0025】
図9は、調理器200のグリルを用いて調理をしている場合の、温度センサ300による調理器200の天面温度の検出状態を模式的に示す図である。
図9においても、塗りつぶしの色の濃い領域は、他の領域よりも検知温度が高い領域である。また、
図10は、調理器200のグリルを用いて調理をしている場合の、温度センサ300による調理器200の天面温度の検出状態を立体的に表した図である。
図10において立体図形の高さが高い領域は、その高さに応じて検知温度が高くなっている。この図を見ると、温度センサ300のT73~T76の領域の検知温度が他の領域の検知温度よりも高いことがわかる。
【0026】
図6~
図10に示すように、温度センサ300は、全ての領域の天面温度を領域ごとに検出することができ、熱源210Aと熱源210Bを用いて料理をしている場合には、温度センサ300の熱源210Aに対応する領域と熱源210Bに対応する領域のみの温度が高くなる。また、熱源210Cを用いて料理をしている場合には、温度センサ300の熱源210Cに対応する領域のみの温度が高くなる。さらに、調理器200のグリルを用いて調理をしている場合には、温度センサ300のグリルの吹出口220に対応する領域のみの温度が高くなる。もちろん、熱源210A、熱源210B、熱源210C、およびグリルを用いて調理をしている場合には、温度センサ300の熱源210A、熱源210B、熱源210C、およびグリルの吹出口220に対応する領域の温度が高くなる。したがって、天面温度の温度分布を見れば、熱源210A~210Cのどの熱源が使用中であるのか、調理器200のグリルの使用の有無を容易に特定できる。
【0027】
(閾値温度記憶部134)
閾値温度記憶部134は、排気部110の排気風量を選択するための閾値温度を温度センサ300が検知する天面温度の領域ごとに対応させて記憶する。また、その閾値温度として、ガス調理器用の閾値温度とIH調理器用の閾値温度とを記憶している。
【0028】
図11は、ガス用の調理器200に適用するガス用閾値温度を模式的に示す図である。この閾値温度は、温度センサ300が検知する天面温度の全ての領域に対応している。たとえば、ガス用の調理器200により料理をしている時に温度センサ300が
図6および
図7のように分布する天面温度を検知した場合には、Tijの領域の天面温度とGijの領域の閾値温度とを比較する。たとえば、領域T11の天面温度と領域G11の閾値温度とを比較し、領域T12の天面温度と領域G12の閾値温度とを比較し、ということを、領域T88の天面温度と領域G88の閾値温度との比較が終わるまで64の全ての領域に対して行なう。
【0029】
図12は、IH用の調理器200に適用するIH用閾値温度を模式的に示す図である。この閾値温度は、ガス用閾値温度と同様に、温度センサ300が検知する天面温度の全ての領域に対応している。たとえば、IH用の調理器200により料理をしている時に温度センサ300が
図6および
図7のように分布する天面温度を検知した場合には、Tijの領域の天面温度とCijの領域の閾値温度とを比較する。たとえば、領域T11の天面温度と領域C11の閾値温度とを比較し、領域T12の天面温度と領域C12の閾値温度とを比較し、ということを、領域T88の天面温度と領域C88の閾値温度との比較が終わるまで64の全ての領域に対して行なう。
【0030】
(制御部136の動作)
図13は、本実施形態のレンジフード100の動作フローチャートである。この動作フローチャートは制御部136によって処理される。なお、この動作フローチャートは、操作パネル(
図3参照)120の風量自動スイッチ123が選択されているときに動作する。以下に、レンジフード100の動作を詳細に説明する。
【0031】
制御部136は、ガス/IH選択スイッチ132が、「ガス」、「IH」のどちらを選択しているのかを判断する(S100)。「ガス」を選択していれば(S100:ガス)、制御部136は、閾値温度記憶部134に記憶されている閾値温度のうち、温度センサ300が検知した天面温度との比較をする閾値温度として、
図11に示したガス用閾値温度を選択する(S110)。一方、「IH」が選択されていれば(S100:IH)、制御部136は、
図12に示したIH用閾値温度を選択する(S120)。
【0032】
IH用閾値温度はガス用閾値温度よりも低い値が設定されている。IH用の調理器200の熱源の温度は、ガス用の調理器200の熱源の温度よりも低く出る場合があるからである。IH用の調理器200ではガス用の調理器200ほど天面温度が上がっていなくとも、多量の臭気と油煙を発生することがある。IH用閾値温度をガス用閾値温度よりも低い値とすることで、IH用の調理器200でも、適切な排気風量で臭気と油煙を排気できるようになる。すなわち、臭気と油煙の捕集性能をガス用の調理器200とIH用の調理器200とで同一にでき、臭気と油煙の捕集性能が調理器200の種類に依らない。
【0033】
次に、制御部136は、複眼の温度センサ300により、調理器200の天面温度を検出する。天面温度は領域ごとに検知される(S130)。具体的には、
図6~
図10に示したように、温度センサ300の全ての領域TIJ=T11~T88の温度を検知する。
【0034】
次に、制御部136は、調理器200で使用されている熱源の位置、数、および種類を特定する(S140)。具体的には、使用されている熱源の位置、数、使用されているものが熱源であるかグリルであるか、およびグリルの吹出口220の位置を特定する。これらの特定は、次のような手法で行う。
【0035】
(検知した天面温度分布を用いる手法)
上記の通り、たとえば、調理器200の熱源210Aおよび210B(
図5参照)を使用している場合には、温度センサ300が検知する天面温度の温度分布は、
図6および
図7に示すようになる。この温度分布に、S120で選択した閾値温度を適用し、閾値温度よりも高い温度の領域のみを抽出すると、
図6の色の濃い領域、換言すれば、
図7の図形の高さの高い領域が残る。また、残った領域において、温度の最も高い領域が2つある。これらの残った領域の位置(Ti=T22~T27、T32~T37、T42~T47)および温度の最も高い領域の位置(Tij=T33、T36)は認識できているので、熱源210Aと210Bが使用されていることがわかる。つまり、使用されている熱源の位置が熱源210Aおよび210Bの位置、使用されている熱源の数が2、使用されているものが熱源であるということがわかる。
【0036】
また、たとえば、調理器200の熱源210C(
図5参照)を使用している場合には、温度センサ300が検知する天面温度の温度分布は、
図8に示すようになる。この温度分布に、S120で選択した閾値温度を適用し、閾値温度よりも高い温度の領域のみを抽出することによって、上記と同様に、熱源210Cが使用されていることがわかる。つまり、使用されている熱源の位置が熱源210Cの位置、使用されている熱源の数が1、使用されているものが熱源であるということがわかる。
【0037】
さらに、たとえば、調理器200のグリルを使用している場合には、グリルの吹出口220(
図5参照)から臭気と油煙が排出されるので、温度センサ300が検知する天面温度の温度分布は、
図9および
図10に示すようになる。この温度分布に、S120で選択した閾値温度を適用し、閾値温度よりも高い温度の領域のみを抽出すると、
図9の色の濃い領域、換言すれば、
図10の図形の高さの高い領域が残る。残った領域の位置(Tij=T73~T76)は認識できているので、グリルが使用されていることがわかる。また、グリルの吹出口220の位置もわかる。
【0038】
上記のように、調理器200で使用している熱源の数と位置、およびグリルの使用の有無の特定は、前記天面温度の前記領域ごとの温度分布を用いて行なうことができ、さらに、グリルの吹出口220の位置の特定も、天面温度の領域ごとの温度分布を用いて行なうことができる。なお、検知した天面温度分布を用いる手法では、温度センサ300が検知できる領域を細かくすればするほど(温度センサ300の画素を増やせば増やすほど)調理器200の熱源210A~210Cおよびグリルの吹出口220の境界が捕えやすくなる。
【0039】
(検知した天面温度分布とテンプレートとを用いる手法)
図14は、調理器200の熱源の数と位置、およびグリルの吹出口の位置の特定をするためのテンプレート140の一例を示す図である。このテンプレート140は
図5に示したように、3口の熱源とグリルを有する調理器200に適用するものである。また、
図15は、調理器の熱源の数と位置、およびグリルの吹出口の位置の特定をするための他のテンプレート150の一例を示す図である。このテンプレート150は、2口の熱源とグリルを有する調理器200に適用するものである。
【0040】
これらのテンプレート140、150は、制御部136の図示されていない記憶部に記憶させておく。なお、テンプレート140、150は、制御部136の記憶部に替えて、外部のサーバーの記憶部に記憶させるようにしても良い。調理器200は種々のメーカーから様々なタイプのものが発売されている。したがって、現在発売されている全てのタイプの調理器200のテンプレートを記憶させておくことが好ましい。なお、このテンプレートは、レンジフード100を現場で設置する際に、調理器200のメーカー名および型番により選択できるようにしておくと良い。なお、具体的な選択のパターンとしては、型番を入力するパターン、代表的な型番が表示されてその中から選択決定するパターン、温度分布とテンプレートを比較してより近いテンプレートを提示しその提示されたテンプレートの中から作業者が正しいテンプレートを選択するパターンなど、種々のパターンが考えられる。
【0041】
テンプレート140は、熱源が位置する3つの領域142、144、146の情報とグリルの吹出口220が位置する領域148の情報を有している。また、テンプレート150は、熱源が位置する2つの領域152、154の情報とグリルの吹出口220が位置する領域156の情報を有している。
【0042】
上記の例では、温度センサ300が検知した全ての領域の温度分布のみを用いて熱源の位置や数、グリルの吹出口の位置などを特定したが、この温度分布だけではこれらの特定が正確にできない場合もある。これは、温度センサ300が調理器200の調理面の中心の真上に設置されていないことに起因する。温度センサ300は、実際には、
図1に示すように、レンジフード100の中央部より左側の前面側の下面に設けている。また、温度センサ300は調理器200に向けて傾斜させて設けている。このため調理器200の調理面の温度を斜めから検知することになり、温度センサ300の各領域が温度を検知する範囲は歪む。この歪みのため、熱源の位置や数、グリルの吹出口の位置などの特定が正確にできなくなる恐れがある。
【0043】
調理器200に適合するテンプレートが
図14のテンプレート140であった場合、制御部136は、温度センサ300が検知した温度分布とテンプレート140とを比較する。そして、テンプレート140の熱源が位置する3つの領域142、144、146の情報とグリルの吹出口220が位置する領域148の情報を頼りに、熱源の位置や数、グリルの吹出口の位置などを特定する。このように、テンプレートを用いることによって、熱源の位置や数、グリルの吹出口の位置などの特定がより正確にできる。
【0044】
上記のように、調理器200の熱源の数と位置、およびグリルの吹出口220の位置の特定は、調理器200の種類ごとに熱源の位置とグリルの吹出口の位置220とが示されているテンプレートと天面温度の領域ごとの温度分布とを比較することによって行なうことができる。なお、上記の内容は発明の理解を容易にするために簡素化して説明したものである。実際には、テンプレートを使用しても離隔や設置奥行きの問題が生じる。したがって、実際には離隔距離ごと、設置奥行きごとにテンプレートを用意しておくことが好ましい。
【0045】
(検知した天面温度分布と調理器-レンジフード離隔距離を用いる手法)
図16~
図18は、調理器200の熱源の位置とグリルの吹出口の位置との特定をするため、調理器200とレンジフード100との離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置と吹出口の位置との位置情報の一例を示す図である。
図16は、離隔距離が60cmの場合、
図17は、離隔距離が80cmの場合、
図18は、離隔距離が100cmの場合をそれぞれ示す。
【0046】
上記したように、温度センサ300が調理器200の調理面の中心の真上に設置されていないため、温度センサ300の各領域が温度を検知する範囲はこれらの図に示すように歪む。このため、調理器200とレンジフード100との離隔距離の相違によって、たとえば、同じ熱源210Aであっても、温度センサ300が熱源210の温度を検知する領域がずれる。同様に、同じグリルの吹出口220であっても、温度センサ300がグリルの吹出口220の温度を検知する領域がずれる。
【0047】
このずれのため、熱源の位置や数、グリルの吹出口の位置などの特定が正確にできなくなる。このため、調理器200とレンジフード100との離隔距離ごとに、各熱源の位置とグリルの吹出口220の位置が温度センサ300のどの領域に該当するのか、という情報を、制御部136の記憶部に記憶させておく。調理器200とレンジフード100との離隔距離は、現場でレンジフード100を設置する際に設定できるようにする。
【0048】
上記のように、調理器200の熱源の位置とグリルの吹出口220の位置との特定は、調理器200と温度センサ300との離隔距離に応じてあらかじめ登録した熱源の位置と吹出口220の位置との位置情報を用い、離隔距離を設定することによって行なうことができる。
【0049】
以上のように、テンプレートを用いたり調理器200とレンジフード100との離隔距離を設定したりすることによって、各熱源の位置、数、グリルの使用の有無、グリルの吹出口220の位置などを正確に把握することができる。また、離隔距離に応じて閾値温度を変えても良い。具体的には、離隔距離が近いほど閾値温度を高く、離隔距離が遠いほど閾値温度を低く設定するようにしても良い。このように、離隔距離に応じて閾値温度を変えると、各熱源の位置、数、グリルの使用の有無、グリルの吹出口220の位置などをより正確に把握することができる。
【0050】
また、上記の手法に加えて、グリルの吹出口220の位置は、ガス調理器かIH調理器かによって、位置の特定手法を変えても良い。S100のステップで調理器の種類が選択されているので、ガス調理器が選択されている場合には、たとえば、調理器200の中央より背面側で、かつ、幅300~600mm×奥行40~80mm相当の範囲よりも小さい範囲で横長に温度上昇している位置をグリルの吹出口220とする。また、IH調理器が選択されている場合には、たとえば、調理器200の中央より背面側で、かつ、幅10~30mm×奥行40~80mm相当の範囲よりも小さい範囲で集中的に所定の領域で温度上昇している位置をグリルの吹出口220とする。このような特定手法を採用することによって、より精度よくグリルの吹出口220の位置を特定できる。
【0051】
このように、グリルの吹出口220の位置の特定は、ガス/IH選択スイッチ132によりガス調理器が選択されている場合には、調理器200の中央部よりも背面側の天面温度の高い領域が一定の範囲で横長に分布している部分により行なう。また、ガス/IH選択スイッチ132によりIH調理器が選択されている場合には、調理器200の中央部よりも背面側の天面温度の高い領域が調理器200の一定の範囲よりも狭い領域で集中している部分により行なうことができる。
【0052】
次に、
図13のフローチャートに戻って、グリルの吹出口220部分に適用させる閾値温度を下げる(S150)。S140のステップでグリルの吹出口の位置が正確に特定されているので、その吹出口220の位置に該当する温度センサ300の領域の検知温度と比較させる閾値温度を下げる。一般的に、温度センサ300では、グリルの吹出口220から排出される臭気や油煙の温度は熱源の部分から排出される臭気や油煙の温度よりも低く検知される。このため、グリルの吹出口220の検知温度が低くとも臭気や油煙が大量に排出されている場合がある。したがって、吹出口220の位置に該当する領域の閾値温度を下げることによって、グリルの吹出口220の検知温度が熱源の検知温度よりも低い場合でも、排気ファン116による排気風量を増加させることができ、グリルの吹出口220からの臭気や油煙の捕集率が向上する。
【0053】
図19は、調理器200の熱源の領域に適用する閾値温度とグリルの吹出口220の領域に適用する閾値温度との相違を模式的に示す図であり、風量の設定に用いる閾値温度の一例である。
【0054】
図19に示すように、(Gij=G73~G76の4つの領域)の閾値温度の大きさは、その領域以外の領域の閾値温度の大きさと比較して小さくなっている。これは、調理器200がガスの場合でもIHの場合でも同様である。Gij=G73~G76の4つの領域は、
図9および
図10に示したように、調理器200の中央より背面側に位置するグリルの吹出口220の領域(Tij=T73~T76)と合致する領域である。閾値温度記憶部134には、一律の大きさの閾値温度が記憶されているが、制御部136は、S140のステップの処理で特定したグリルの吹出口220の位置に基づいて、グリルの吹出口220の位置に該当する領域の閾値温度を下げる。理解し易いように切りのいい温度で説明すると、グリルの吹出口220の検知温度に20℃をプラスした温度が50℃以上であれば、排気ファン116を強のモードに設定する。つまり、グリルの吹出口220の検知温度が30℃以上であれば排気ファン116を強のモードに設定する。また、熱源の検知温度が50℃以上であれば排気ファン116を強のモードに設定する。したがって、この場合、グリルの吹出口220の領域(Gij=G73~G76の4つの領域)の閾値温度は、他の領域よりも閾値温度の大きさを20℃下げている。
【0055】
次に、制御部136は、調理器200の天面温度と閾値温度とを比較する(S160)この比較は、具体的には次の手順で行われる。まず、グリルの吹出口220の領域の検知温度とグリルの吹出口220の領域に該当する部分の閾値温度とを比較する。グリルの吹出口220の温度は
図9および
図10に示すようにTij=T73~T76の4つの領域で検知されているので、これと
図19の閾値温度Gij=G73~G76の4つの領域とを比較する。まず、T73とG73とを比較し、次に、T74とG74とを比較し、ということをT76とG76との比較まで順に行ない、検知温度が閾値温度よりも高い領域の数Xをカウントする。グリルの吹出口220の領域の比較が終了したら、その他の領域の検知温度と閾値温度とを比較する。この比較は、Tij=T73~T76の4つの領域を除く、Tij=T11~T88に対して行なう。まず、T11とG11とを比較し、次に、T12とG12とを比較し、ということをT88とG88との比較まで順に行ない、検知温度が閾値温度よりも高い領域の数Yをカウントする。
【0056】
次に、制御部136は、S160の比較結果により、排気風量を選択する(S170)。次に、制御部136は、選択された、第一モードまたは第二モードの排気風量で排気ファン116を駆動する。この排気風量の選択と排気ファン116の駆動は、次のような手法で行なう。
【0057】
(検知温度が閾値温度よりも高い領域の数から選択)
上記のように、グリルの吹出口220の領域で検知温度が閾値温度よりも高い領域の数がXであり、グリルの吹出口220以外の領域で検知温度が閾値温度よりも高い領域の数がYであったとすると、閾値温度を超えている領域の合計はX+Yである。このX+Yの数があらかじめ設定した判定値Zを超えていないときには、制御部136は、排気風量を第一モードに設定する。一方、このX+Yの数があらかじめ設定した判定値を超えているときには、制御部136は、排気風量を第一モードよりも排気風量が大きい第二モードに設定する。
【0058】
このように、制御部136は、ガス調理器が選択されているときには天面温度とガス調理器用の閾値温度とを領域ごとに比較し比較結果に応じて排気風量を選択し、IH調理器が選択されているときには天面温度とIH調理器用の閾値温度とを領域ごとに比較し比較結果に応じて前記排気風量を選択する。
【0059】
また、上記のように、制御部136は、天面温度から少なくとも調理器200のグリルの吹出口220の位置を特定し、グリルの吹出口220に該当する領域の閾値温度は他の領域の閾値温度よりも小さい値を用いて比較し比較結果に応じて排気風量を選択する。
【0060】
さらに、制御部136が選択する排気風量は、閾値温度を超える天面温度の領域の合計数(X+Y)が所定の数(判定値Z)を超えている場合には、より大きい排気風量のモード(第二モード)を選択する。
【0061】
制御部136が上記のようにして排気風量を設定すると、検知された天面温度が低く臭気や油煙が多く発生しているような場合でも、排気風量を増加させることができ、汚染空気の拡散を有効に防止できる。
【0062】
(使用している熱源の位置、数、グリルの吹出口の温度などから選択)
図20は、調理器で使用されている熱源の数とグリルの使用の有無によって選択される排気風量のモードの一例を示す図である。
【0063】
制御部136は、S140の処理で、調理器200で使用されている熱源の位置、数、および種類を特定している。調理器200で使用されている熱源の位置、数、および種類の情報と温度センサ300が検出した天面温度に基づいて、排気風量を選択する。
【0064】
使用している熱源の口数が0~2のときには、閾値温度t1(
図19でグリルの吹出口220の領域に適用する閾値温度)を超えるグリルの数と閾値温度t2(
図19でグリルの吹出口220以外の領域で適用する閾値温度)を超える熱源の口数の合計が2以上であれば、制御部136は、排気風量を第二モードに設定する。また、使用している熱源の口数が3口のときには、閾値温度t1を超えるグリルの口数が1以下、または、閾値温度t2を超える熱源の口数が1以下のときには制御部136は、排気風量を第二モードに設定する。これら以外の条件であれば、制御部136は、排気風量を第一モードに設定する。
【0065】
制御部136の排気風量の設定の具体的な態様は、
図21に示す通りである。
【0066】
このように、制御部136は、天面温度に基づき調理器200で使用している熱源の数と位置、および前記グリルの使用の有無を特定し、使用している熱源に該当する領域の天面温度と閾値温度とを領域ごとに比較するとともに、グリルが使用されているときにはグリルの吹出口に該当する領域の天面温度と閾値温度とを領域ごとに比較し比較結果に応じて排気風量を選択する。
【0067】
(最も大きい排気風量が必要な閾値温度に基づき排気風量を選択)
上記のように、閾値温度を超えている領域の数や使用されている熱源やグリルの数などによって排気風量を設定する以外に、最も大きい排気風量が必要な閾値温度に基づき排気風量を選択することも考えられる。
【0068】
たとえば、温度センサ300が検知した天面温度の内、1つの領域の検知温度が、最も大きい排気風量が必要な閾値温度を超えていたとすると、閾値温度を超えている領域が1つだけであっても、制御部136は、最大の排気風量で排気ファン116を駆動させる。
【0069】
このような制御をすることによって、天面温度が急激に上昇した場合でも、その温度上昇に追従するように、早めに排気風量を上げることができ、汚染空気の拡散を効率的に防止できる。
【0070】
(区分された領域の天面温度の平均値と閾値温度に基づき排気風量を選択)
また、制御部136は、グリルの吹出口220の位置に該当する領域およびその他の領域、またはグリルの吹出口220の位置に該当する領域および熱源の位置に該当する領域、のいずれかの区分された領域の天面温度の平均値と閾値温度とを比較し比較結果に応じて排気風量を選択しても良い。
【0071】
このような制御をすることによって、排気ファン116を無駄に作動させることなく、かつ、排気が必要なときには確実に排気させることができる。
【0072】
次に、
図13のフローチャートに戻って、制御部136は、停止信号があるか否かを判断する(S190)。停止信号がなければ(S190:NO)、S130のステップに戻り、S130~S180までの処理を繰り返す。一方、停止信号があれば(S190:YES)、レンジフード100の運転を停止する(S200)。
【0073】
以上のように、本実施形態のレンジフード100によれば、グリルの吹出口220の領域に適用する閾値温度を他の領域に適用する閾値温度より下げて適用しているので、グリルの吹出口220から吹き出す臭気や油煙に合わせて排気風量を設定することができ、グリルの吹出口220から排出される臭い、煙、油が室内に拡散されることを防止できる。
【0074】
また、上記の実施形態では、排気ファン116のみを備えたレンジフード100を例示したが、本発明は、
図21に示すような、本実施形態のレンジフードとは異なるタイプのレンジフード、すなわち、油煙の油を捕獲するディスク119を備えたレンジフード100に対しても適用できる。なお、ディスク119は、調理運転中に回転し油煙から油を捕獲するフィルタとして機能するものである。
【0075】
ディスク119を備えたレンジフードの場合、排気ファン116と同様に、ディスク119の回転数制御を行っても良い。つまり、ディスク119の回転数制御も排気ファン116の排気風量の制御と同様に、熱源の位置や使用口数、グリルの使用有無、レンジフード100と調理器200との離隔距離や調理器200の天面温度の分布からディスク119の回転数を決定し、制御するようにしても良い。
【0076】
また、上記の実施形態では、排気風量のモードとして、第一モードと第二モードとの2つのモードを有する場合を例示したが、排気風量の異なるモードとして3つ以上の複数のモードを備えても良い。
【0077】
また、レンジフード100を自動運転させる場合、設定したモードのうち、全てのモードから最適なモードを選択して排気風量を変更する仕様を採用しても良いし、特定のモードから最適なモードを選択して排気風量を変更する仕様を採用しても良い。たとえば、排気風量の選択が弱・中・強の3段階から選べるレンジフード100の場合、自動運転では、弱・中・強の3段階のモードから、たとえば中と強の2つの段階のモードを制御対象として中と強とで排気風量が切り替わり、手動運転の場合のみ、弱も選択可能とする仕様を採用しても良い。
【0078】
また、上記の実施形態では、熱源に依らず一律に同一の閾値温度を適用したが、熱源ごとに閾値温度を変えても良い。温度センサ300と各熱源との距離は異なるため、その距離に応じて閾値温度を変えても良い。たとえば、本実施形態では、熱源が三口で温度センサ300はレンジフード100の手前側、かつ使用者側から見て左側に設けられているため、左手前の熱源の閾値温度を最も低く設定するようにしても良い。
【0079】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想に基づいて様々な形態として実施可能であり、それらもまた本発明の範疇であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0080】
100 レンジフード、
110 排気部、
112 吸気口、
114 排気口、
116 排気ファン、
118 ファンモータ、
120 操作パネル、
121 運転スイッチ、
122 風量スイッチ、
123 風量自動スイッチ、
124 タイマースイッチ、
125 照明スイッチ、
126 常時換気スイッチ、
130 制御装置、
132 ガス/IH選択スイッチ、
134 閾値温度記憶部、
136 制御部、
200 調理器、
210 熱源、
220 グリルの吹出口、
300 温度センサ。