(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】耐候性熱成形体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 8/14 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
D01F8/14 B
(21)【出願番号】P 2019157500
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 こゆ
(72)【発明者】
【氏名】室谷 浩紀
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-332152(JP,A)
【文献】特開平07-258921(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110524(WO,A1)
【文献】特許第7281174(JP,B2)
【文献】特開2021-036082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 8/00 - 8/18
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
D03D 1/00 - 27/18
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
D04C 1/00 - 7/00
D04G 1/00 - 5/00
D07B 1/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐候性熱成形体であって、長繊維が複数本集束したマルチフィラメント糸のみを繊維成分とする繊維製品にて構成されており、
前記繊維製品は、エチレングリコールとテレフタル酸とを含む共重合体により形成され白色以外の着色剤を含有した前記マルチフィラメント糸の形態の繊維成分が、テレフタル酸とエチレングリコールと1,4-ブタンジオールとε-カプロラクトンとジエチレングリコールとを含む共重合体より形成され酸化チタンを含有する熱接着性成分によって熱接着されたものであり、
前記熱接着性成分において、共重合体のジオール成分は、前記エチレングリコールを8.0~79.5モル%、前記1,4-ブタンジオールを20.0~90.0モル%、前記ジエチレングリコールを0.5~2.0モル%(ただし2.0モル%を除く)含有し、
前記熱接着成分の融点が前記繊維成分の融点よりも50℃~120℃低いことを特徴とする耐候性熱成形体。
【請求項2】
繊維成分と熱接着性成分との質量比が1:4~4:1であることを特徴とする請求項1記載の
耐候性熱成形体。
【請求項3】
編織物、網地、ロープ、撚糸および紐よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする
請求項1または2記載の耐候性熱成形体。
【請求項4】
農業用資材と、漁業用資材と、土木建築用資材と、ケーブル用資材とのいずれかであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の耐候性熱成形体。
【請求項5】
耐候性熱成形体の製造方法であって、
熱接着性繊維を準備し、この熱接着性繊維は、
横断面において芯鞘構造を呈し、
芯成分がエチレングリコールとテレフタル酸とを含む共重合体により形成され、
鞘成分がテレフタル酸とエチレングリコールと1,4-ブタンジオールとε-カプロラクトンとジエチレングリコールとを含む共重合体により形成され、
鞘成分の融点が芯成分の融点よりも50℃~120℃低く、
芯成分は白色以外の着色剤を含有し、
鞘成分は、酸化チタンを含有
するとともに、共重合体のジオール成分が、前記エチレングリコールを8.0~79.5モル%、前記1,4-ブタンジオールを20.0~90.0モル%、前記ジエチレングリコールを0.5~2.0モル%(ただし2.0モル%を除く)含有するものであり、
前記熱接着性繊維にて
、長繊維が複数本集束したマルチフィラメント糸を形成し、
このマルチフィラメント糸のみによって繊維製品を製造し、
この繊維製品を鞘成分の融点以上かつ芯成分の融点以下の温度条件で熱処理することによって、鞘成分を熱溶融させかつその後に冷却固化させて芯成分同士を熱接着させることを特徴とする
耐候性熱成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐候性熱成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メッシュシートの素材として、芯鞘型複合繊維であって、芯成分がポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分がポリエチレンテレフタレートよりも融点の低いポリエステル共重合体であるものを用いることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。かかる芯鞘型複合繊維よるなるマルチフィラメント糸を経糸および緯糸に用いて粗目の織物を製織し、熱処理して鞘成分を溶融および再固化させて、経糸および緯糸の交点を融着させることで、すなわち熱接着させることで、メッシュシートが得られる。経糸および緯糸の交点を融着させるのは、メッシュシートの目ずれを防止するためである。
【0003】
このようなメッシュシートは、用途によっては、デザイン性や識別性の観点から、原着であること、すなわち紡糸工程前の段階で着色されたものであることが望まれる。しかし、芯鞘型複合繊維中に単に着色剤を入れただけでは、溶融熱接着後にフィラメント中の各単糸の芯部が集合し、その芯部の周りを鞘成分が覆うモノフィラメント形状となるため、溶融熱接着前と比べて芯部の色が濃く見える、光沢が強く見えるという現象が起こる。
【0004】
また、特に産業資材用途の場合は、屋外での使用も多く、耐候性に優れたものが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐候性に優れるため屋外での使用においても機械的物性が低下しにくく、かつ、落ち着きのある高品位な色彩を有した熱成形体およびその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、耐候性熱成形体であって、長繊維が複数本集束したマルチフィラメント糸のみを繊維成分とする繊維製品にて構成されており、
前記繊維製品は、エチレングリコールとテレフタル酸とを含む共重合体により形成され白色以外の着色剤を含有した前記マルチフィラメント糸の形態の繊維成分が、テレフタル酸とエチレングリコールと1,4-ブタンジオールとε-カプロラクトンとジエチレングリコールとを含む共重合体より形成され酸化チタンを含有する熱接着性成分によって熱接着されたものであり、
前記熱接着性成分において、共重合体のジオール成分は、前記エチレングリコールを8.0~79.5モル%、前記1,4-ブタンジオールを20.0~90.0モル%、前記ジエチレングリコールを0.5~2.0モル%(ただし2.0モル%を除く)含有し、
前記熱接着成分の融点が前記繊維成分の融点よりも50℃~120℃低いことを特徴とする耐候性熱成形体を要旨とするものである。
【0008】
この耐候性熱成形体においては、繊維成分と熱接着性成分との質量比が1:4~4:1であることが好適である。
【0009】
本発明の耐候性熱成形体は、編織物、網地、ロープ、撚糸および紐よりなる群から選ばれたものであることが好適である。
【0010】
本発明の耐候性熱成形体は、農業用資材と、漁業用資材と、土木建築用資材と、ケーブル用資材とのいずれかであることが好適である。
【0011】
本発明の耐候性熱成形体の製造方法は、
熱接着性繊維を準備し、この熱接着性繊維は、
横断面において芯鞘構造を呈し、
芯成分がエチレングリコールとテレフタル酸とを含む共重合体により形成され、
鞘成分がテレフタル酸とエチレングリコールと1,4-ブタンジオールとε-カプロラクトンとジエチレングリコールとを含む共重合体により形成され、
鞘成分の融点が芯成分の融点よりも50℃~120℃低く、
芯成分は白色以外の着色剤を含有し、
鞘成分は、酸化チタンを含有するとともに、共重合体のジオール成分が、前記エチレングリコールを8.0~79.5モル%、前記1,4-ブタンジオールを20.0~90.0モル%、前記ジエチレングリコールを0.5~2.0モル%(ただし2.0モル%を除く)含有するものであり、
前記熱接着性繊維にて、長繊維が複数本集束したマルチフィラメント糸を形成し、
このマルチフィラメント糸のみによって繊維製品を製造し、
この繊維製品を鞘成分の融点以上かつ芯成分の融点以下の温度条件で熱処理することによって、鞘成分を熱溶融させかつその後に冷却固化させて芯成分同士を熱接着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の耐候性熱成形体の製造方法によれば、熱接着性繊維の鞘成分が特定含有量のジエチレングリコールを含む共重合体より形成されていることによって、この熱接着性繊維を用いて得られる熱成形体を、耐候性に優れ、このため屋外での使用においても機械的物性が低下しにくいものとすることができる。また本発明によれば、熱接着性繊維の芯成分に白色以外の着色剤を含有し、また鞘成分は酸化チタンを含有していることから、鞘成分を白色にすることによって光沢を抑制することができ、落ち着きのある高品位な色彩を有した熱成形体を得ることができる。また、酸化チタンは紫外線を乱反射させるため、鞘成分に酸化チタンを含有することにより耐候性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の耐候性熱成形体の製造に用いられる熱接着性繊維は、芯成分と鞘成分とを有する。芯成分を構成する共重合体は、エチレングリコールをジオール成分とし、テレフタル酸をジカルボン酸成分として得られるポリエチレンテレフタレートである。なお、ジカルボン酸成分として、ごく少量のイソフタル酸等の他のジカルボン酸成分が混合されていてもよく、ジオール成分として、ブタンジオール等の他のジオール成分が混合されていてもよい。芯成分の融点は概ね260℃程度である。
【0014】
鞘成分を構成する共重合体は、エチレングリコールと1,4-ブタンジオールとε-カプロラクトンとジエチレングリコールとをジオール成分とし、テレフタル酸をジカルボン酸成分として得られる共重合ポリエステルである。ジエチレングリコールを共重合成分として所定量存在すると、融点の調整性や融着した鞘成分の耐摩耗性を向上させることができる。1,4-ブタンジオールを共重合成分とすることで、ポリマーの結晶化速度およびじん性を上げるという技術的効果が得られる。ε-カプロラクトンを共重合成分とすることで、鞘成分の結晶性を維持しながら、ε-カプロラクトンの共重合量を変化させて、共重合体の融点を所望のものとすることができる。
【0015】
各共重構成分の割合は、共重合単位のモル比として、酸成分であるテレフタル酸は95.0~80.0モル%、ε-カプロラクトンは5.0~20.0モル%であることが好ましい。ジオール成分であるエチレングリコールは8.0~79.5モル%、1,4-ブタンジオールは20.0~90.0モル%、ジエチレングリコールは0.5~2.0モル%であることが必要である。この共重合モル比を上記範囲とすることにより、芯成分であるポリエチレンテレフタレートとの融点差を約50~80℃低く設定することができる。すなわち、鞘成分を構成する共重合体の融点を約180~210℃に設定できる。
【0016】
鞘成分の融点は、芯成分の融点よりも50℃~120℃低くなっており、概ね140℃~210℃である。芯成分と鞘成分の融点差が50℃未満であると、鞘成分が溶融する温度に加熱した場合、芯成分が熱による影響を受けて劣化するおそれがある。これにより、加熱処理により得られた熱成形体の物性が低下するおそれがある。また、芯成分と鞘成分の融点差が120℃を超えると、芯成分と鞘成分との融点差が大きくなりすぎて、熱接着繊維を公知の複合溶融紡糸法で得られにくくなる。
【0017】
芯成分と鞘成分の質量割合は、芯成分:鞘成分=1:4~4:1(質量比)であることが好ましい。芯成分の質量割合が低すぎると、加熱処理後に得られた熱成形体の形態保持性(強度や剛性)が低下する傾向となりやすい。熱接着性成分である鞘成分が溶融して融着しても芯成分は当初の繊維形態を維持しているが、かかる芯成分の質量割合が低いと、熱成形体の強度や剛性が低下する。また、熱接着性成分である鞘成分の質量割合が低すぎると、加熱処理後に得られた熱成形体の表面に毛羽立ちが生じやすくなる。芯成分と鞘成分は、同心に配置されていてもよいし、偏心して配置されていてもよい。しかしながら、偏心に配置されていると、加熱処理時に収縮が生じやすくなるため、同心に配置されている方がより好ましい。
【0018】
熱接着性繊維は、芯成分のポリエチレンテレフタレートが白色以外の着色剤を含有し、鞘成分の共重合ポリエステルが酸化チタンを含有している。熱接着性繊維の着色は、芯成分に含有させる着色剤で行うものであり、鞘成分は酸化チタンを含有することにより白色である。鞘成分を白色にすることによって光沢を抑制することができ、落ち着きのある高品位な色彩を有した熱成形体を得ることができる。したがって、芯成分の着色剤は、上記のように白以外とする。また、酸化チタンは紫外線を乱反射させるため、鞘成分に酸化チタンを含有することにより耐候性が向上する。
【0019】
芯成分に含有させる着色剤としては、アゾ系、シアニン系、スチレン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、キノフタロン系、インディゴ系、アンスラキノン系、複合酸化物系、金属錯体系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、群青、酸化鉄、カーボンブラック等の顔料および染料を用いることが好ましく、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
芯成分への着色剤の添加は、重合時に添加することも可能である。しかし、その場合は、着色剤を変更する際に重合タンクを洗浄する必要があり、ロスが多大となり好ましくない。したがって、ポリエステルに着色剤の含有量が10~50質量%程度となるように練り込んでマスターバッチ化されたチップを作製し、紡糸時にこのマスターバッチ化されたチップを芯成分のチップと任意の顔料濃度になるように混合して用いるのが好ましい。
【0021】
芯成分中の着色剤の含有量は0.1~2.0質量%程度が好ましい。この範囲より少なくなると着色度合いが低くなり、使用される用途が限られるようになる。また、2.0質量%を超えると、芯成分の強度が劣るようになるばかりでなく、コスト面でも不利益となる。
【0022】
鞘成分中の酸化チタンの含有量は0.2~1.0質量%であることが好ましく、この範囲より少ないと光沢を抑制する効果が劣りやすくなる。またこの範囲より多いと鞘成分が濃白色になって高品位の色彩の熱成形体が得られなくなりやすく、しかも製糸性にも劣るようになりやすい。このため、同範囲は、0.3~0.7質量%であることが特に好ましい。鞘成分への酸化チタンの添加のタイミングは、重合時であることが好ましい。
【0023】
熱接着性繊維の繊度は、1~20デシテックスであることが好ましい。熱接着性繊維は、複数本の長繊維を集束して熱接着マルチフィラメント糸としたものである。
【0024】
熱接着性繊維は、芯成分となるポリエチレンテレフタレートと、鞘成分となる共重合ポリエステルとを、複合紡糸孔を持つ紡糸装置に供給して、複合溶融紡糸するという公知の方法で得ることができる。
【0025】
さらに、熱接着性繊維すなわち上述の熱接着マルチフィラメント糸を用いて、製織、製編、製網または編組して、織物、編物、網地、ロープ、撚糸または紐等の繊維製品とする。詳細には、たとえば、熱接着マルチフィラメント糸を経糸および緯糸として製織し織物を得てもよいし、熱接着マルチフィラメント糸を経編機や緯編機に掛けて編物を得てもよい。また、熱接着マルチフィラメント糸を組網機に掛けて、結節網地や無結節網地を得てもよい。さらに、熱接着マルチフィラメント糸を複数本組んで紐を得てもよい。繊維製品を得る際、熱接着マルチフィラメント糸1本を用いてもよいし、複数本の熱接着マルチフィラメント糸を引き揃え、所望による撚りを施した糸条を用いてもよい。
【0026】
次に得られた繊維製品を加熱し、熱成形体を得る。加熱温度は、熱接着性成分である鞘成分の融点以上かつ芯成分の融点未満とする。芯成分が融点約260℃のポリエチレンテレフタレートであるため、熱処理温度は140℃~200℃が好適である。また、加熱処理時または加熱処理後に、所望の形状となるように加圧してもよい。この加熱により、鞘成分の共重合ポリエステルが溶融するとともに、芯成分は当初の繊維形態を維持した状態で、複合繊維相互間が融着して、熱成形体が得られる。たとえば、繊維製品として粗目の編織物または網地を採用し、この編織物または網地を加熱して共重合ポリエステルを溶融させると、編織物または網地の交点で強固に融着した熱成形体が得られる。なお、編織物または網地の交点とは、たとえば、織物の場合は経糸および緯糸の交差点であり、編物や網地の場合は結節点のことである。また、交点以外の部位(たとえば網地であれば網脚)中の鞘成分である共重合ポリエステルも溶融させ、全体を融着させて、高剛性の熱成形体を得てもよい。
【0027】
熱接着性繊維には、必要に応じて、芯成分のポリエチレンテレフタレートおよび/または鞘成分の共重合ポリエステルに、難燃剤、熱安定剤、結晶核剤、耐光剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、界面活性剤、表面改質剤、各種無機または有機電解質などの添加剤が含有されていてもよい。さらに必要に応じて、芯成分のポリエチレンテレフタレートに耐候剤を含有させたり、鞘成分に酸化チタン以外の耐候剤を含有させたりしてもよい。
【実施例】
【0028】
以下の実施例、比較例における性能の評価は、次の方法によって行った。
【0029】
(a)強伸度
JIS L-1013 8.5 引張強さ及び伸び率の記載に準じて、定速伸長形引張試験機(島津製作所社製オートグラフAG-I)を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分の条件で測定した。
【0030】
(b)耐候性
デューパネルウェザーメータを用い、ブラックパネル温度63℃にて48時間、144時間、240時間照射させた後、強伸度を測定し、強力低下率および伸度低下率を、下記式で計算して求めた。
強力低下率の計算式
強力低下率(%)=〔〔照射前の強力-照射後の強力〕/照射前の強力〕×100
伸度低下率の計算式
伸度低下率(%)=〔〔照射前の伸度-照射後の伸度〕/照射前の伸度〕×100
【0031】
(実施例1)
芯成分として、ポリエチレンテレフタレート(融点260℃)と、ポリエチレンテレフタレート中にカーボンブラックを35質量%練り込んだマスターバッチとの質量比が、ポリエチレンテレフタレート:マスターバッチ=53:1となるようにドライブレンドしたものを用いた。
【0032】
鞘成分は、共重合単位のモル比として、テレフタル酸86.8モル%、ε-カプロラクトン13.2モル%、エチレングリコール50.0モル%、1,4-ブタンジオール49.2モル%、およびジエチレングリコール0.8モル%よりなる、融点160℃の共重合ポリエステルを用い、これに酸化チタン0.4質量%を含有させた。
【0033】
そして、芯鞘質量比を芯:鞘=3:1として複合紡糸することにより、黒色の熱接着性繊維からなるマルチフィラメント糸(1100デシテックス、96フィラメント)を得た。
【0034】
このマルチフィラメント糸を角8本打ちとして製紐し、ピンテンターで180℃、速度2m/minで熱処理して、表面が溶融固化してなる棒状の熱成形体を得た。これを実施例1の熱成形体とした。
【0035】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレート中に、黄色の顔料(ピグメントイエロー147)11質量%と、赤色の顔料(ソルベントレッド135)0.5質量%とを練り込んだマスターバッチを準備した。そして、芯成分として、ポリエチレンテレフタレート(融点260°)と、上記のマスターバッチとの質量比が、ポリエチレンテレフタレート:マスターバッチ=70:1となるように両者をドライブレンドしたものを用いた。
【0036】
鞘成分として、実施例1と同様の融点160℃の共重合ポリエステルを用い、同様に酸化チタン0.4質量%を含有させた。
【0037】
そして、芯鞘質量比を芯:鞘=3:1として複合紡糸することにより、黄色の熱接着性繊維からなるマルチフィラメント糸(1670デシテックス、192フィラメント)を得た。このマルチフィラメント糸を角8本打ちとして製紐し、ピンテンターで180℃、速度2m/minで熱処理して、表面が溶融固化してなる棒状の熱成形体を得た。これを実施例2の熱成形体とした。
【0038】
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート中に、シアニングリーンを10質量%練り込んだマスターバッチを準備した。そして、芯成分として、ポリエチレンテレフタレート(融点260℃)と、上記のマスターバッチとの質量比が、ポリエチレンテレフタレート:マスターバッチ=100:1となるようにドライブレンドしたものを用いた。
【0039】
鞘成分として、実施例1と同様の融点160℃の共重合ポリエステルを用い、同様に酸化チタン0.4質量%を含有させた。
【0040】
そして、芯鞘質量比を芯:鞘=3:1として複合紡糸することにより、緑色の熱接着性繊維からなるマルチフィラメント糸(280デシテックス、48フィラメント)を得た。この熱接着性繊維からなるマルチフィラメント糸を角8本打ちとして製紐し、ピンテンターで180℃、速度2m/minで熱処理して、表面が溶融固化してなる棒状の熱成形体を得た。これを実施例3の熱成形体とした。
【0041】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレート(融点260℃)と、ポリエチレンテレフタレート中にカーボンブラックを35質量%練り込んだマスターバッチとを用いた。そして、両者の質量比がポリエチレンテレフタレート:マスターバッチ=49:1となるようにドライブレンドしたものを溶融紡糸することにより、黒色の繊維からなるマルチフィラメント糸(1100デシテックス、96フィラメント)を得た。
【0042】
このマルチフィラメント糸を角8本打ちとして製紐し、ピンテンターで180℃、速度2m/minで熱処理して、熱セットされた組紐を得た。
【0043】
(比較例2)
ポリエチレンテレフタレート(融点260℃)中に、実施例2で用いたのと同じピグメントイエロー147を11質量%と、実施例2で用いたのと同じソルベントレッド135を0.5質量%とを練り込んだマスターバッチを得た。そして、ポリエチレンテレフタレートと、上記のマスターバッチとを、両者の質量比がポリエチレンテレフタレート:マスターバッチ=50:1となるようにドライブレンドしたものを溶融紡糸することにより、黒色の熱接着性繊維からなるマルチフィラメント糸(1670デシテックス、192フィラメント)を得た。
【0044】
このマルチフィラメント糸を角8本打ちとして製紐し、ピンテンターで180℃、速度2m/minで熱処理して、熱セットされた組紐を得た。
【0045】
(比較例3)
実施例3と同様に、ポリエチレンテレフタレート(融点260℃)中に、シアニングリーンを10質量%練り込んだマスターバッチを準備した。そして、ポリエチレンテレフタレートと、上記のマスターバッチとを、両者の質量比がポリエチレンテレフタレート:マスターバッチ=100:1となるようにドライブレンドしたものを溶融紡糸することにより、黒色の熱接着性繊維からなるマルチフィラメント糸(280デシテックス、48フィラメント)を得た。
【0046】
このマルチフィラメント糸を角8本打ちとして製紐し、ピンテンターで180℃、速度2m/minで熱処理して、熱セットされた組紐を得た。
【0047】
実施例1~3の熱成形体、比較例1~3の熱セットされた組紐の耐候性の評価結果を表1に示す。
【0048】
【0049】
熱接着性繊維により構成され、熱処理により鞘成分が溶融再固化してなる熱成形体であるところの実施例1~3は、強力低下率および伸度低下率とも低いレベルであり、このため耐候性に優れたものであった。また、熱成形体の表面は、溶融再固化してなる熱接着成分で覆われてなり、それぞれが有する顔料の色彩は、光沢が抑えられたマット調であり品位を感じるものであった。
【0050】
これに対し比較例1~3は、溶融固化した棒状の熱成形体ではなく、折り曲げ可能で結び目を形成することが可能な柔軟な紐であり、強力低下率および伸度低下率とも高いレベルであり、したがって実施例1~3と比べて耐候性が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の熱成形体は、熱接着性繊維を用いた繊維製品を熱処理することによって得ることができ、耐候性に優れ、かつ、落ち着きのある高品位な色彩を有したものである。このため、農業用、漁業用、土木建築用、ケーブル用などの産業用資材として用いることができるほか、家庭用資材、自動車用資材など、各種用途に広く用いることができる。