(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】可変抵抗器用抵抗素子
(51)【国際特許分類】
H01C 10/00 20060101AFI20231228BHJP
H01C 1/02 20060101ALI20231228BHJP
H01C 10/32 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01C10/00 Z
H01C10/00 R
H01C1/02 R
H01C10/32 A
(21)【出願番号】P 2019236451
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄也
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-041111(JP,A)
【文献】特開2002-057008(JP,A)
【文献】実開昭60-181001(JP,U)
【文献】実開平05-031205(JP,U)
【文献】実開平01-112004(JP,U)
【文献】特開2010-087330(JP,A)
【文献】特開昭50-013449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 10/00
H01C 1/02
H01C 10/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に形成される摺動接点摺接用の集電パターンと、
前記絶縁基板上の前記集電パターンの外側を囲むように形成される摺動接点摺接用の抵抗体パターンと、
前記絶縁基板上に
所定間隔を空けて並列に3か所形成される金属端子当接用
の端子接続パターンと、
前記集電パターン
と前記中央の端子接続パターンの間
、及び前記抵抗体パターンの両端のそれぞれと前記両側の端子接続パターンのそれぞれの間を、それぞれ接続する接続パターンと、
を具備する可変抵抗器用抵抗素子において、
前記
両側の接続パター
ンを、前記抵抗体パターンを形成するカーボンインクと同じカーボンインクからなる接続パターン被覆層で被覆
し、且つ前記中央の接続パターンを絶縁体層で覆い、
前記中央の接続パターンを覆う絶縁体層を、前記両側の接続パターンを覆う接続パターン被覆部の上まで形成し、
さらに前記絶縁体層の前記各端子接続パターンに対向する側の辺には、当該各端子接続パターンから隙間を形成するように、それぞれ凹部を設けたことを特徴とする可変抵抗器用抵抗素子。
【請求項2】
請求項1に記載の可変抵抗器用抵抗素子であって、
前記絶縁基板の隣り合う前記端子接続パターン間に切欠き部を形成し、
前記絶縁体層の前記各凹部の間の突出する部分の先端部分を、前記絶縁基板上の前記切欠き部の最も奥寄り近傍部分を囲む位置まで形成することを特徴とする可変抵抗器用抵抗素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーセンサなどの各種可変抵抗器に用いて好適な可変抵抗器用抵抗素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1の
図3に示すように、回転式可変抵抗器に用いる可変抵抗器用抵抗素子(可変抵抗器用基板)は、基板(10)の表面に、リング状の集電パターン(15)と、集電パターン(15)の周囲を囲む円弧状の抵抗体パターン(16)とを形成すると共に、基板(10)の1外周辺に3つの端子接続パターン(50)を形成し、集電パターン(15)の外周から引き出した接続パターンを中央の端子接続パターン(50)に接続し、抵抗体パターン(16)の両端から引き出した接続パターンをそれぞれ左右両側の端子接続パターン(50)に接続して構成されている。これら各パターンは、何れもスクリーン印刷などによって形成される。なお集電パターン(15)と抵抗体パターン(16)は、その表面を金属板製の摺動子が摺接する摺接パターンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような可変抵抗器用抵抗素子において、その電気的有効角度(集電パターン(15)と抵抗体パターン(16)上を摺動子が同時に摺動できる回転角度)を大きくしたい場合、抵抗体パターン(16)の両端を延ばしてその間隔を小さくしなければならない。
【0005】
しかし、抵抗体パターン(16)の両端間には集電パターン(15)から引き出される接続パターンが通過するので、上述のように抵抗体パターン(16)の両端の間隔を小さくすると、抵抗体パターン(16)の両端と、集電パターン(15)から引き出される接続パターンとの間隔が狭くなり、両者間にイオンマイグレーションを発生してしまう虞があった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、イオンマイグレーションを効果的に防止することができる可変抵抗器用抵抗素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、絶縁基板と、前記絶縁基板上に形成される摺動接点摺接用の集電パターンと、前記絶縁基板上の前記集電パターンの外側を囲むように形成される摺動接点摺接用の抵抗体パターンと、前記絶縁基板上に所定間隔を空けて並列に3か所形成される金属端子当接用の端子接続パターンと、前記集電パターンと前記中央の端子接続パターンの間、及び前記抵抗体パターンの両端のそれぞれと前記両側の端子接続パターンのそれぞれの間を、それぞれ接続する接続パターンと、を具備する可変抵抗器用抵抗素子において、前記両側の接続パターンを、前記抵抗体パターンを形成するカーボンインクと同じカーボンインクからなる接続パターン被覆層で被覆し、且つ前記中央の接続パターンを絶縁体層で覆い、前記中央の接続パターンを覆う絶縁体層を、前記両側の接続パターンを覆う接続パターン被覆部の上まで形成し、さらに前記絶縁体層の前記各端子接続パターンに対向する側の辺には、当該各端子接続パターンから隙間を形成するように、それぞれ凹部を設けたことを特徴としている。
本発明によれば、接続パターン被覆層(カーボン層)によって接続パターンの露出部分を被覆するので、接続パターンへの水分の付着を防止できてそのイオン化を防止でき、これによってイオンマイグレーションを効果的に防止することができる。
また接続パターン被覆層として抵抗体パターンを構成するカーボンインクと同じカーボンインクを用いているので、抵抗体パターンと接続パターン被覆層とを同一工程で形成することができて作業効率を向上させることができ、また同一材料を用いるのでこの点からもコストの低減化を図ることができる。
また本可変抵抗器用抵抗素子のように、集電パターンに接続した接続パターンの両側に、抵抗体パターンの両端に接続した接続パターンが配置されている場合、全ての接続パターンに導電性を有する接続パターン被覆層を被覆すると、各接続パターン被覆層の間隔が狭くなり、ショートの虞が高くなるが、本発明によれば、中央の接続パターンには絶縁層を被覆するので、両側の接続パターンとのショートの虞を確実に防止することができる。
また、中央の接続パターンを覆う絶縁層を、両側の接続パターンを覆う接続パターン被覆層の上まで形成したので、これら接続パターン間のイオンマイグレーションをさらに効果的に防止することができる。
【0009】
また本発明は、上記特徴に加え、前記絶縁基板の隣り合う前記端子接続パターン間に切欠き部を形成し、前記絶縁体層の前記各凹部の間の突出する部分の先端部分を、前記絶縁基板上の前記切欠き部の最も奥寄り近傍部分を囲む位置まで形成することを特徴としている。
本発明によれば、切欠きを設けることで、隣り合う端子接続パターン間のマイグレーションを防止できる。同時に、切欠き部の最も奥寄り近傍部分を伝ってのイオンマイグレーションも、絶縁体層によって防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、イオンマイグレーションを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態にかかる可変抵抗器用抵抗素子(以下「抵抗基板」という)1の平面図である。同図に示すように、抵抗基板1は、回転式可変抵抗器用の抵抗基板であり、絶縁基板10上に、集電パターン20と、抵抗体パターン40と、3つの端子接続パターン60(60-1,2,3)とを形成して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは絶縁基板10から集電パターン20などの各種パターンを形成した面側を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0014】
絶縁基板10は、ポリフェニレンスルフイド(PPS)、ナイロン(PA)などの合成樹脂製の硬質基板によって構成されている。絶縁基板10の形状は、略矩形状であって、その一辺を円弧状に形成し、その反対側の一辺を略直線状の端子接続用辺11に形成し、またその中央に円形の貫通孔13を設けている。絶縁基板10上には、上述のように、集電パターン20や抵抗体パターン40などが印刷によって形成されているが、以下その構成をその製造方法と共に説明する。
【0015】
図2~
図4は、抵抗基板1の製造方法説明図であり、それぞれ図(a)はその工程において印刷するパターンのみを示し、図(b)はそれまでに重ねたパターンの印刷状態を示している。
【0016】
図2に示すように、まず、絶縁基板10上に銀ペーストをスクリーン印刷することによって、集電パターン本体部20Aと、3つの端子接続パターン60-1,2,3と、各端子接続パターン60-1,2,3に接続される接続パターン80-1,2,3とを形成する。
【0017】
集電パターン本体部20Aは、絶縁基板10表面の貫通孔13の周囲にリング状に形成される。3つの端子接続パターン60-1,2,3は、絶縁基板10表面の端子接続用辺11に所定間隔を空けて並ぶように設けられる。さらに言えば、絶縁基板10の端子接続用辺11には、その外周辺から凹むように、2つの切欠き部15-1,2が形成されており、これら切欠き部15-1,2は隣り合う各端子接続パターン60-1,2,3の間に形成されている。
【0018】
中央の端子接続パターン60-2は、集電パターン本体部20A方向に向かってその幅寸法を小さくする三角形状に形成され、これによって、切欠き部15-1,2の最も奥寄り部分側における両側の端子接続パターン60-1,3との間隔を広げるようにしている。また両側の端子接続パターン60-1,3は、集電パターン本体部20A方向に向かってその幅寸法を小さくする略台形状に形成され、その際、中央の端子接続パターン60-2側の辺を傾斜辺とすることで、切欠き部15-1,2の最も奥寄り部分(集電パターン20寄り部分)側における中央の端子接続パターン60-2との間隔を広げるようにしている。各端子接続パターン60-1,2,3の形状を上記のように構成することで、切欠き部15-1,2の最も奥寄り側においてのイオンマイグレーション(銀マイグレーション)を防止している。
【0019】
中央の端子接続パターン60-2の前記集電パターン本体部20A側の端部には、前記集電パターン本体部20Aと接続される接続パターン80-2が接続されている。接続パターン80-2は直線状である。左右の端子接続パターン60-1,3の前記集電パターン本体部20A側の端部には、下記する抵抗体パターン40の両端に接続される接続パターン80-1,3が接続されている。接続パターン80-1,3は、前記中央の接続パターン80-2の方向に向いて直線状に延びた後、集電パターン本体部20A側に向かって屈曲して延びる形状に形成されている。接続パターン80-1,3の先端部分が、下記する抵抗体パターン40の両端位置と重なる。
【0020】
次に、
図3に示すように、絶縁基板10上に、カーボンペーストをスクリーン印刷することによって、集電パターン被覆層20Bと、抵抗体パターン40と、接続パターン被覆層80A-1,3とを形成する。
【0021】
集電パターン被覆層20Bは、前記集電パターン本体部20Aの表面全体を被覆するように、リング状であってその幅寸法が、集電パターン本体部20Aの幅寸法よりも少し大きくなるように形成されている。集電パターン本体部20Aと集電パターン被覆層20Bによって、集電パターン20が構成される。
【0022】
抵抗体パターン40は、前記集電パターン20の外側を等間隔に囲むように円弧状に形成されている。抵抗体パターン40の両端部には、それぞれ接続パターン被覆層80A-1,3が形成されている。接続パターン被覆層80A-1,3は、その一端が抵抗体パターン40の端部に接続され、端子接続用辺11側に向けて引き出された後、左右の端子接続パターン60-1,3側に向けて略直角に屈曲し、直線状に延ばされている。言い換えれば、接続パターン被覆層80A-1,3は、前記接続パターン80-1,3の表面を覆うように形成されている。従って、接続パターン被覆層80A-1,3の幅寸法は、接続パターン80-1,3の幅寸法よりも少し大きい寸法に形成されている。
【0023】
次に、
図4に示すように、絶縁基板10上に、絶縁樹脂ペーストをスクリーン印刷することによって、絶縁層100を形成する。
【0024】
絶縁層100は、前記中央の接続パターン80-2と、その両側の一対の接続パターン被覆層80A-1,3とを被覆するように形成されている。絶縁層100は、略直線状で、前記端子接続パターン60-1,2,3の並び方向とほぼ平行になるように形成されている。絶縁層100の中央には、集電パターン20方向に突出して接続パターン80-2を被覆する接続パターン用絶縁層101が設けられている。接続パターン用絶縁層101は、接続パターン80-2の全体(端子接続パターン60-2の近傍部分を除く)を覆うように形成されており、さらに接続パターン用絶縁層101の幅方向の両側部分が、前記両接続パターン被覆層80A-1,3の対向する内側辺付近も覆う幅寸法に形成されている。
【0025】
一方、絶縁層100の下辺の各端子接続パターン60-1,2,3に対向する部分は、各端子接続パターン60-1,2,3から所定の隙間を形成するように、凹部103,105,107が形成されている。逆に言えば、絶縁層100の下辺の凹部103と凹部105の間の部分と、凹部105と凹部107の間の部分は、下方向に突出してそれらの先端部分はそれぞれ切欠き部15-1,2の最も奥寄り近傍部分を囲むようにその近傍位置にまで形成されている。以上によって、抵抗基板1が完成する。
【0026】
図5は抵抗基板1の前記端子接続パターン60-1,2,3などを形成した部分の近傍部分の要部拡大平面図である。また
図6は、
図5のA-A部分断面概略図である。上記抵抗基板1には、例えば
図6に点線で示すように、各端子接続パターン60-1,2,3上にそれぞれ金属端子120の一端が当接された状態で図示しない金型内に収納され、当該金型内の抵抗基板1周囲に形成されたキャビティー内に溶融樹脂を圧入・固化し、金型を取り外すことで、各金属端子120を各端子接続パターン60-1,2,3に接続する。これによって、抵抗基板1と各金属端子120とを一体に固定した図示しないケースが成形される。当該ケース内に設置された抵抗基板1の上に摺動子や回転つまみなどを組み込むことで、回転式電子部品が組み立てられる。そして摺動子を回転すれば、摺動子の摺動接点が集電パターン20と抵抗体パターン40上を摺接し、各金属端子120間の電気的出力が変化する。
【0027】
以上説明したように、抵抗基板1は、絶縁基板10と、絶縁基板10上に形成される摺動接点摺接用の抵抗体パターン40と、絶縁基板10上に形成される摺動接点摺接用の集電パターン20と、絶縁基板10上に形成される金属端子当接用の複数の端子接続パターン60-1,2,3と、抵抗体パターン40と何れかの前記端子接続パターン60-1,3の間、及び前記集電パターン20と他の何れかの前記端子接続パターン60-2の間を、それぞれ接続する接続パターン80-1,2,3と、を具備し、前記接続パターン80-1,2,3の少なくとも一部を、前記抵抗体パターン40を形成するカーボンインクと同じカーボンインクからなる接続パターン被覆層80A-1,3で被覆して構成されている。
【0028】
このように構成することで、接続パターン被覆層(カーボン層)80A-1,3によって接続パターン80-1,3の露出部分を被覆するので、接続パターン80-1,3への水分の付着を防止できてそのイオン化を防止でき、これによってイオンマイグレーションを効果的に防止することができる。特に、接続パターン被覆層(カーボン層)80A-1,3を、接続パターン80-1,3の少なくとも隣接する他のパターンに接近している部分に被覆すれば、この部分、即ち隣接する他のパターンに最も近くて最もイオンマイグレーションによるショートが起き易い部分からのイオンマイグレーションを防止することができる。
【0029】
また接続パターン被覆層80A-1,3として抵抗体パターン40を構成するカーボンインクと同じカーボンインクを用いているので、抵抗体パターン40と接続パターン被覆層80A-1,3とを同一工程で形成することができて作業効率を向上させることができ、また同一材料を用いるのでこの点からもコストの低減化を図ることができる。
【0030】
ところで、カーボン層からなる接続パターン被覆層80A-1,3には、印刷時のピンホールなどによって、接続パターン80-1,3の表面を完全には覆えない虞がある。ピンホールなどがあると、そこから水分が浸入し、接続パターン80-1,3を構成する銀パターンから銀イオンが析出されるが、接続パターン被覆層80A-1,3は導電性を有するので、析出した銀イオンが接続パターン被覆層80A-1,3内を移動し、イオンマイグレーションを生じる。そこで上記抵抗基板1ではさらに、接続パターン被覆層80A-1,3の少なくとも一部(特にイオンマイグレーションによる不都合が生じ易い部分)を、絶縁体層100で被覆し、これによって、水分の接続パターン(銀パターン)80A-1,2,3への浸入によるイオン化と、銀イオンの移動をさらに確実に防止し、これによってイオンマイグレーションを効果的に防止している。
【0031】
また抵抗基板1は、絶縁基板10の隣り合う端子接続パターン60-1,2,3間に切欠き部15-1,2を形成したので、隣り合う端子接続パターン60-1,2,3間のイオンマイグレーションを効果的に防止できる。同時に絶縁基板10上の前記切欠き部15-1,2の最も奥寄り近傍部分を含む所定の範囲を、絶縁体層100で被覆したので、切欠き部15-1,2の最も奥寄り近傍部分を伝ってのイオンマイグレーションも、この絶縁体層100によって防止することができる。
【0032】
また抵抗基板1では、集電パターン20に接続した接続パターン80-2の両側に、抵抗体パターン40の両端に接続した接続パターン80-1,3を配置し、前記両側の接続パターン80-1,3には、接続パターン被覆層80A-1,3を被覆し、前記中央の接続パターン80-2には、絶縁体層100を被覆しているが、これは以下の理由による。即ち、集電パターン20に接続した接続パターン80-2の両側に、抵抗体パターン40の両端に接続した接続パターン80-1,3が配置されている場合、全ての接続パターン80-1,2,3に導電性を有する接続パターン被覆層80Aを被覆すると、各接続パターン被覆層80A間の間隔がさらに狭くなり、ショートの虞が高くなる。そこで、上記抵抗基板1においては中央の接続パターン80-2には絶縁層100を被覆することとし、これによってこの接続パターン80-2に導電性のある接続パターン被覆層を被覆する場合に比べ、その電気的な幅寸法を広くしないようにし、これによって、両側の接続パターン80-1,3とのショートの虞を防止している。
【0033】
さらに、上記抵抗基板1においては、中央の接続パターン80-2を覆う絶縁層100を、両側の接続パターン80-1,3を覆う接続パターン被覆層80A-1,3(その一部)の上まで形成しているので、さらに効果的なイオンマイグレーション防止効果を得ることができる。なお前記接続パターン80-1,3の端部の真上の接続パターン被覆層80A-1,3上は、摺動子の摺動接点が電気的に接続する必要があるので、この部分上には接続パターン用絶縁層101を設けず、当該部分上よりも両接続パターン被覆層80A-1,3の対向する端辺近傍部分に接続パターン用絶縁層101を形成することとしている。
【0034】
また上記抵抗基板1において、絶縁層100に凹部103,105,107を設けたので、積層する各パターン間に印刷ずれが生じたとしても、絶縁層100が端子接続パターン60-1,2,3上を覆うことはなく、これによって、金属端子の接続不良を確実に防止することができる。
【0035】
また、上記したように、抵抗基板1の周囲には合成樹脂製のケースがインサート成形されるが、このケースの一部を絶縁層100や接続パターン被覆層80A-1,3の上面にも形成しておけば、絶縁層100の上面や絶縁層100を形成していない接続パターン被覆層80A-1,3の上面への水の浸入をより効果的に防止でき、より効果的なマイグレーション防止効果を得ることができる。
【0036】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、回転式可変抵抗器用の絶縁基板について説明したが、抵抗体パターンと集電パターンを直線状で平行に配置したスライド式可変抵抗器用の絶縁基板など、他の各種可変抵抗器用の絶縁基板に対しても同様に適用することができる。また上記実施形態では、絶縁基板として合成樹脂製の硬質基板を用いたが、合成樹脂フィルム製のフレキシブル基板を用いても良い。また抵抗体パターン、集電パターン、端子接続パターン、接続パターン、接続パターン被覆層、絶縁体層、切欠き部などの形状・材質などに種々の変更を行っても良いことは言うまでもない。また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 抵抗基板(可変抵抗器用抵抗素子)
10 絶縁基板
15-1,2 切欠き部
20 集電パターン
40 抵抗体パターン
60(60-1,2,3) 端子接続パターン
80(80-1,2,3) 接続パターン
80A(80A-1,3) 接続パターン被覆層
100 絶縁体層