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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】トレーニング器具セット
(51)【国際特許分類】
   A63B 21/002 20060101AFI20231228BHJP
   A63B 23/12 20060101ALI20231228BHJP
   A63B 23/04 20060101ALI20231228BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A63B21/002
A63B23/12
A63B23/04 Z
A61H1/02 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020024524
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021126461
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 智
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-506387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121074(US,A1)
【文献】特開2013-031653(JP,A)
【文献】登録実用新案第3191166(JP,U)
【文献】特開2015-000206(JP,A)
【文献】特開2017-000456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00-26/00
A61H 1/00- 5/00
A61H 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の本体部であって、長手方向の一部に外部から自身を支持するための力が作用される支持部を有する本体部を備え、
前記支持部は、前記力が作用されることで、前記本体部にトルクを付与可能であり、
ユーザが前記本体部に力およびトルクを作用させ、前記本体部の位置および姿勢を制御することで自らの筋力を鍛える、
トレーニング器具と、
前記トレーニング器具を立って把持しているユーザの足首の関節の動きを抑制する抑制器具と、を備える、
トレーニング器具セット。
【請求項2】
前記本体部の長手方向に垂直な所定軸周りの角度に関する物理量を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記角度に関する物理量に応ずる出力を行う出力部と、を更に備える、
請求項1に記載のトレーニング器具セット。
【請求項3】
前記出力部は、前記検出部により検出された前記角度に関する物理量に応じて前記出力を段階的に変更する、
請求項2に記載のトレーニング器具セット。
【請求項4】
前記本体部は、分割可能に構成された、
請求項1から3のうち何れか一項に記載のトレーニング器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トレーニング器具及びトレーニング器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
健康の維持、体力の強化、又はリハビリテーションなどを目的とし、トレーニング機材(例えば特許文献1-10)を使用した筋力トレーニングが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-504453号公報
【文献】特開2008-194469号公報
【文献】特開2000-176044号公報
【文献】実用新案登録第3075856号公報
【文献】特開2008-12273号公報
【文献】実用新案登録第3111521号公報
【文献】特開2017-70861号公報
【文献】特開2009-95625号公報
【文献】特開2004-344315号公報
【文献】実用新案登録第3191166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筋力トレーニングの一例として、筋肉を収縮させることで生じた力を静止状態の重量物へ伝達し、重量物を静止状態から所定方向へ移動させることが考えられる。しかしながら、このようなトレーニングの場合、重量物を移動させるためにユーザは反動をつけて筋肉を収縮させることが考えられる。その結果、ユーザの筋肉へ所望の通り負荷が作用せず、トレーニング効果が低減することが考えられる。
【0005】
また、単に重量物を持って所定の方向へ動かす場合、複合的に多くの筋肉を収縮させずに済む。このような点からもトレーニング効果は低いと考えられる。
【0006】
本開示は、一側面では、ユーザの反動の利用を抑制し、かつ複数の部位の筋肉を同時に鍛えることでトレーニング効果を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
すなわち本開示の一側面に係るトレーニング器具は、棒状の本体部であって、長手方向の一部に外部から自身を支持するための力が作用される支持部を有する本体部を備え、前記支持部は、前記力が作用されることで、前記本体部にトルクを付与可能であり、ユーザが前記本体部に力およびトルクを作用させ、前記本体部の位置および姿勢を制御することで自らの筋力を鍛える。
【0009】
当該構成によれば、重力方向とは反対方向に向かう力を生じさせる第1の筋肉をユーザが収縮させ、収縮により生じた力を、支持部に作用させることができる。よって、空間内の所定位置において本体部の重心を重力方向に対して静止させることができる。つまり、当該構成によれば、本体部の重心を重力方向に対して静止させるために、第1の筋肉を鍛
えることができる。また、当該構成によれば、ユーザは、本体部を所定方向へ動かすことなくトレーニングすることができる。よって、ユーザが所定方向とは反対方向へ一旦本体部を移動させ、反動つけて本体部を動かすことは抑制される。よって、第1の筋肉の最大収縮力は増加することになり、トレーニング効果は向上する。
【0010】
また、当該構成によれば、本体部の重心を重力方向に対して静止させ続けるためには、第1の筋肉をユーザが収縮させ続けることが必要となる。つまり、ユーザの筋肉は持続的に鍛えられる。
【0011】
また、当該構成によれば、ユーザが支持部を介して力を作用させた結果、本体部にトルクが生じ、本体部が重心回りに回転することが考えられる。しかしながら、当該構成によれば、ユーザは支持部に別の方向へ向かう力を作用させることで本体部に回転を抑制するトルクを生じさせることができる。よって、本体部の回転は抑制される。また、支持部に別の方向へ向かう力を作用させるためには、第1の筋肉とは別の筋肉をユーザが収縮させることが必要となる。また、ユーザは、本体部の回転が生じた都度、第1の筋肉とは別の筋肉を素早く収縮させ、本体部の回転を抑制することになる。よって、ユーザは複数の筋肉をトレーニングすることができるとともに、筋力の収縮スピードを向上させることができる。また、当該構成によれば、本体部の重心を重力方向に対して持続的に静止させつつ、本体部の回転方向のバランスを取り続ける必要がある。よって、トレーニング器具のバランスをとる機能を鍛えることができる。
【0012】
また、当該構成によれば、トレーニング中にユーザの関節の動きは抑制される。よって、ユーザがトレーニング中に関節を痛めることは防止される。
【0013】
上記一側面に係るトレーニング器具は、前記本体部の長手方向に垂直な所定軸周りの角度に関する物理量を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記角度に関する物理量に応ずる出力を行う出力部と、を更に備えてもよい。
【0014】
ここで、角度に関する物理量は、角度、角速度、又は角加速度を含む。
【0015】
当該構成によれば、出力部からの出力をユーザが認識することで本体部の長手方向に垂直な所定軸周りの角度に関する物理量を把握することができる。そして、ユーザは、認識結果に基づいて複数の部位の筋肉の収縮具合を調節することができる。よって、ユーザは、本体部の回転方向のバランスを維持することが容易となる。換言すれば、本体部の回転方向のバランスは長時間維持可能となるため、複数の部位の筋肉は持続的に鍛えられる。また、本体部の傾きがユーザにフィードバックされることで筋力は効率的に増強される。
【0016】
上記一側面に係るトレーニング器具における前記出力部は、前記検出部により検出された前記角度に関する物理量に応じて前記出力を段階的に変更してもよい。
【0017】
当該構成によれば、本体部の長手方向に垂直な所定軸周りの角度に関する物理量を詳細に把握することができる。よって、ユーザは、認識結果に基づいて複数の部位の筋肉の収縮具合を微細に調節することで、本体部の回転方向のバランスを容易に維持することができる。換言すれば、本体部の回転方向のバランスは長時間維持可能となるため、複数の部位の筋肉は持続的に鍛えられる。また、本体部の傾きがユーザにフィードバックされることで筋力は効率的に増強される。
【0018】
また、当該構成によれば、トレーニングが単調となることは抑制されるため、ユーザが楽しみながらトレーニングすることができる。よって、ユーザがトレーニングに飽きてトレーニングを中断することは抑制される。このような点からもトレーニング効果は向上す
るといえる。
【0019】
上記一側面に係るトレーニング器具において、前記本体部の長手方向の長さは、2メートル以上であってもよい。
【0020】
当該構成によれば、本体部の回転方向のバランスを維持するために、ユーザの複数の部位の筋肉には好適な負荷がかかる。
【0021】
上記一側面に係るトレーニング器具において、前記本体部は、分割可能に構成されてもよい。
【0022】
当該構成によれば、トレーニング器具の運搬及び収納が容易となる。このようなトレーニング器具は、利便性の高い器具である。
【0023】
また、本開示の一側面に係るトレーニング器具セットは、上記一側面に係るトレーニング器具と、前記トレーニング器具を立って把持しているユーザの足首の関節の動きを抑制する抑制器具と、を備える。
【0024】
当該構成によれば、トレーニング器具を使用した場合の上半身のトレーニング効果と同様の効果を下半身についても得ることができる。すなわち、当該構成によれば、ユーザがトレーニング器具の本体部を把持し、抑制器具を装着した状態でしゃがむ場合、ユーザの姿勢は不安定となる。よって、姿勢を保持するためにユーザの下半身の複数の筋力が鍛えられる。また、姿勢を保持するために筋力の収縮スピードが向上される。また、姿勢を保持するために下半身の筋肉をユーザが収縮させ続けることが必要となる。よって、姿勢を保持するための機能を鍛えることができる。また、当該構成によれば反動を利用することなく下半身の筋力をトレーニングすることになる。よって、下半身の筋力の最大収縮力は増加することになり、トレーニング効果は向上する。
【0025】
また、当該構成によれば、しゃがむ時に、足首の関節の動きが抑制されるため、足首の関節への負荷は軽減される。換言すれば、足首の関節に怪我をしている場合であっても、当該構成は下半身の筋力を鍛錬することができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、ユーザの反動の利用を抑制し、かつ複数の部位の筋肉を同時に鍛えることでトレーニング効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態に係る健康器具の概要を示している。(A)は、健康器具の全体図の一例である。(B)は、分割された健康器具の概要を例示している。
図2図2は、健康器具の使用例を示している。
図3図3は、比較例に係るトレーニング機材の概要を例示している。(A)は、鉄アレイをユーザが使用する場合を示している。(B)は、バーベルを備えるトレーニング機材をユーザが使用する場合を示している。
図4図4は、第1変形例に係る健康器具の概要を示している。
図5図5は、第2変形例に係る健康器具の概要を示している。
図6図6は、第2実施形態に係る健康器具セットの概要を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本開
示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本開示の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。また、以下の実施形態では、上下方向、左右方向、及び前後は、ユーザから見た方向を指すものとする。
【0029】
図1は、本実施形態に係る健康器具1(本開示の「トレーニング器具」の一例)の概要を示している。図1(A)は、健康器具1の全体図の一例である。図1(A)に示されるように、健康器具1は、長手方向に伸びる円筒状のポール2を備える。ポール2は、例えばステンレスにより形成され、その全長は3メートル程度であり、重さは5kg程度である。また、健康器具1は、ポール2の中央付近に設けられたグリップ3を備える。このグリップ3は、ポール2を水平に支持した場合に、上下方向から見て健康器具1の重心位置を含む範囲に設けられている。グリップ3は、円筒状であり、その表面は例えばゴム等の弾性体により形成されている。グリップ3の長手方向の長さは、例えば人間の手によって把持可能なように、人間の掌の幅よりも広く設けられる。ここで、ポール2は、本開示の「本体部」の一例である。また、グリップ3は、本開示の「支持部」の一例である。また、ポール2とグリップ3とは一体であってもよい。
【0030】
また、健康器具1は、円筒ケース4A、4Bを備える。円筒ケース4A、4Bは、夫々ポール2の両端に長軸方向に沿って連結される。ここで、円筒ケース4A、4Bとポール2とには、ポール2に対して円筒ケース4A、4Bが嵌合して固定されることが可能な嵌合機構が設けられていてもよい。なお、ポール2に対する円筒ケース4A、4Bの固定方法は嵌合機構に限定されず、ポール2に対して円筒ケース4A、4Bは、ねじを介して固定されてもよいし、円筒ケース4A、4Bとポール2とは、螺合させられてもよい。又は、ポール2に対して円筒ケース4A、4Bが粘着テープにより、あるいは接着などの手法により固定されてもよい。
【0031】
また、健康器具1は、傾きセンサ5と、制御チップ6と、LED(Light Emitting Diode)7A、7B、7Cと、ブザー8と、を備える。そして、円筒ケース4Aの内部には、傾きセンサ5と、制御チップ6と、LED7A、7B、7Cと、ブザー8と、が収容される。一方、円筒ケース4Bの内部には、LED7A、7B、7Cが収容される。傾きセンサ5は、例えばポール2のヨー軸、ピッチ軸、又はロール軸周りの角度を検出し、検出した角度に応じた電気信号を出力する。そして、制御チップ6は、傾きセンサ5からの出力を受信し、受信した出力に応じてLED7A、7B、7Cが段階的に点灯するようにLED7A、7B、7Cの発光を制御する。より詳細には、LED7Aは、青色に点灯し、LED7Bは黄色に点灯し、LED7Cは赤色に点灯する。そして、制御チップ6は、傾きセンサ5からのヨー軸、ピッチ軸、又はロール軸周りの角度の出力が所定値以上の場合、LED7Aを点灯させる。また、制御チップ6は、傾きセンサ5からの出力がさらに大きい場合は、LED7B、LED7Cの順にLED7B、LED7Cを段階的に点灯させる。ここで、傾きセンサ5は、本開示の「検出部」の一例である。また、LED7A、7B、7Cは、本開示の「出力部」の一例である。又は、傾きセンサ5の代わりにジャイロセンサが健康器具1に設けられていてもよく、ジャイロセンサは、ポ
ール2のヨー軸、ピッチ軸、又はロール軸周りの角速度又は角加速度を検出してもよい。そして、制御チップ6は、ジャイロセンサ5から受信したポール2の角速度、又は角加速度に応じてLED7A、7B、7Cが段階的に点灯するようにLED7A、7B、7Cの発光を制御してもよい。なお、ヨー軸、又はピッチ軸は、本開示の「本体部の長手方向に垂直な所定軸」の一例である。また、ポール2のヨー軸、ピッチ軸、又はロール軸周りの角度、角速度、又は角加速度は、本開示の「角度に関する物理量」の一例である。
【0032】
また、制御チップ6は、傾きセンサ5からの出力を受信し、受信した出力が所定値以上である場合に、ブザー8に作動指令信号を送信する。ブザー8は、例えば圧電ブザーであ
り、印加される作動指令に応じて音を発生させる。ここで、ブザー8は、本開示の「出力部」の一例である。
【0033】
また、図1(A)に示される健康器具1は、例えば長手方向に3つに分割することができる。図1(B)は、3分割された健康器具1の概要を例示している。図1(B)に示されるように、健康器具1におけるポール2の中央部分を形成するポール2Bの両端には、夫々孔9が設けられている。また、ポール2の両端部分を形成するポール2A、2Cの片側の端部には、孔10が設けられている。また、健康器具1は、ボルト11を備え、孔9はボルト11と螺合可能な雌ネジ部を有する。ポール2Bの両端が、ポール2A、2Cの端部にそれぞれに緩挿されると、孔9と孔10が重なることになる。そして、孔9と孔10が重なっている部分に図1(A)に示されるようにボルト11が差し込まれ、ボルト11が孔9と螺合されることで、ポール2A、2Cがポール2Bに対して固定される。また、孔9は、ポール2A、2Cの夫々の長手方向に複数設けられており、ユーザが孔10と重ねる孔9を変更することでポール2の長さを調節することができる。ここで、孔9、孔10、及びボルト11は、本開示の「分割可能に構成された」ことの一例である。なお、本開示の「分割可能な機構」は、孔9、孔10、及びボルト11に限られず、例えばポール2Bがポール2A及びポール2Cの内部にねじ込まれるような機構が設けられていてもよい。
【0034】
図2は、健康器具1の使用例を示している。図2に示されるように、ユーザは、例えば右手でグリップ3を握る。この際、ユーザの右手には、健康器具1の重量が重力方向に作用する。そこで、ユーザは、健康器具1の重量に相当する力をグリップ3の下面3Bから上方向へ作用させる。
【0035】
ここで、ユーザからグリップ3に作用させた力の向きは、重力方向とは反対方向以外の成分を含んでいることが考えられる。また、ユーザからグリップ3へ作用させた力の合力の中心は、健康器具1の重心から外れた位置であることも考えられる。つまり、ユーザがグリップ3へ作用させた力により、健康器具1には重心周りにトルクが生じ、健康器具1が回転することが考えられる。
【0036】
ここで、例えば図2の矢印32に示されるように、健康器具1がユーザの右方向から見て反時計回りに回転したとする。このような場合、円筒ケース4Aに収容される傾きセンサ5が、ポール2のピッチ軸周りの角度に応じた電気信号を出力する。そして、制御チップ6は、当該電気信号を受信する。ここで、制御チップ6は、受信した電気信号に応じて、LED7Aが青色に点灯するようにLED7Aの制御を行う。また、制御チップ6は、受信した電気信号に応じてブザー8を鳴らす。このような健康器具1の動作により、光及び音により健康器具1が回転していることをユーザにフィードバックすることになる。また、ユーザは、このようなLED7Aの点灯により、健康器具1が回転していることを自分の目で見て確かめる。
【0037】
健康器具1がユーザの右方向から見て反時計回りに回転していることを確認したユーザは、健康器具1の回転を抑制する力を作用させようと意識する。その結果、グリップ3の上かつ前の部分3Aを上方向からユーザは押さえようとする。このようにユーザが意識した結果、健康器具1を重力方向に静止させるために使用した筋肉とは異なる筋肉が収縮される。そして、回転を抑制する力がグリップ3の部分3Aに上方向から作用すると、ユーザの右方向から見て反時計回りに回転しているポール2の回転速度が減速される。よって、LED7Aは消灯される。このようにしてユーザは、ポール2が落下しないようにポール2を支持しつつ、ユーザの右方向から見てポール2が回転しないようにバランスをとることになる。なお、図2では、ユーザの右方向から見てポール2の回転を抑制するためにグリップ3の部分3Aに上方向から力を作用させる例が示されているが、重力方向の周り
や他の方向の周りにポール2が回転しないようにユーザはグリップ3の他の部分に異なる方向から力を作用させてもよい。
【0038】
図3は、比較例に係るトレーニング機材の概要を例示している。図3(A)は、鉄アレイ51をユーザが使用する場合を示している。図3(A)に示されるように、鉄アレイ51をユーザが使用してトレーニングを行う場合、ユーザは鉄アレイ51を把持してぶら下げた状態から上腕二頭筋を収縮させ、肘関節を屈曲させることで鉄アレイ51を持ち上げる。そして、所定の位置まで鉄アレイ51を持ち上げると、鉄アレイ51が元の位置に戻るまで肘関節を伸長させる。このような動作を繰り返すことにより上腕二頭筋は鍛錬される。
【0039】
しかしながら、このようなトレーニングの場合、鉄アレイ51を持ち上げる度に肘関節は屈曲することになるため、肘関節への負担が大きいと考えられる。つまり、肘関節が故障する虞がある。また、一旦持ち上げた鉄アレイ51を初期位置に戻し、再度持ち上げる際に、反動を使ってユーザが鉄アレイ51を持ち上げることが考えられる。このような動作を行うと、上腕二頭筋の最大収縮力は低下することになり、トレーニング効果は低減される。また、このような動作では、上腕二頭筋以外の筋肉を鍛えることは困難である。よって、トレーニング効果は低いといえる。また、鉄アレイ51を持ち上げた状態から初期位置に戻す場合、上腕二頭筋への負荷は低減される。つまり、上腕二頭筋に継続的に負荷が作用する訳ではないため、トレーニング効果は低減される。
【0040】
また、図3(B)は、バーベルを備えるトレーニング機材(以降、スミスマシンという)をユーザが使用する場合を示している。図3(B)に示されるように、スミスマシン52は、バーベル53と、バーベル53の移動方向に沿って設けられ、バーベル53のシャフトが移動時に当接するレール54と、バーベル53を持ち上げるユーザの体を支持するベンチ55と、を備える。このようなスミスマシン52をトレーニングに利用する場合、バーベル53のシャフトをユーザが把持し、バーベル53を所定の高さまで持ち上げる動作を繰り返すことで、ユーザの大胸筋が鍛えられる。しかしながら、このようなスミスマシン52の場合、バーベル53のシャフトがレール54に当接しながら移動するため、シャフトが重力方向の周りに回転することは抑制される。よって、ユーザは、バーベル53を持ち上げる際に重力方向の周りに回転方向にバランスを取る必要はない。よって、大胸筋以外の筋肉に負荷が作用することは抑制される。また、バーベル53のバランスをとる機能を鍛えることは困難となる。また、筋肉の収縮スピードを上げて回転方向にバーベル53のバランスをとるといったこともユーザはせずに済む。つまり、スミスマシン52のようなトレーニング機材によれば、トレーニング効果は低いといえる。
【0041】
また、持ち上げたバーベル53を一旦下ろし、バーベル53を支持する力を弱めることでバーベル53を胸でバウンドさせ、当該バウンドを利用してバーベル53を持ち上げることが考えられる。スミスマシン52では、ユーザの体を支持するベンチ55が設けられているため、このようにベンチ55と自身の体を利用し、反動を生み出してトレーニングすることができる。このような行為を行うと、大胸筋に継続的に負荷が作用されないことになる。また、大胸筋の最大収縮力は低下することになる。このような点からも、トレーニング効果は低減されるといえる。
【0042】
また、このようなスミスマシン52は、複数の部品から形成されているため製造コストは増大することが考えられる。また、これらの複数の部品のサイズは大きいため、運搬及び収納は困難と考えられる。
【0043】
[作用・効果]
上記の鉄アレイ51やスミスマシン52と比較して、本実施形態における健康器具1に
よれば、腕の筋肉をユーザが収縮させ、収縮により生じた力を、グリップ3の下面3Bに作用させることで、健康器具1の重心を重力方向に対して静止させることができる。換言すれば、健康器具1によれば、健康器具1の重心を重力方向に静止させることで、腕の筋肉を鍛えることができる。また、健康器具1によれば、ユーザは、静止状態から健康器具1を所定方向へ動かすために腕の筋肉を収縮させているわけではない。よって、比較例に係る鉄アレイ51及びスミスマシン52を使用したトレーニングとは異なり、ユーザが反動をつけて健康器具1を動かすことは抑制される。このような健康器具1によれば、筋肉の最大収縮力は増大することになり、トレーニング効果は向上する。
【0044】
また、上記のような健康器具1によれば、健康器具1の重心を重力方向に静止させ続けるためには、腕の筋肉をユーザが収縮させ続けることが必要となる。つまり、ユーザの腕の筋肉は持続的に鍛えられる。
【0045】
また、健康器具1によれば、ユーザがグリップ3の下面3Bへ力を作用させた結果、健康器具1が重心を回転中心として、ユーザの右方向から見て反時計回りに回転することが考えられる。しかしながら、健康器具1によれば、ユーザがグリップ3を把持している状態で、グリップ3の中の前側の部分3Aに例えば上方向から下方向への力を作用させることができる。よって、健康器具1の回転は抑制される。また、健康器具1の回転を抑制するためには、健康器具1の重心を重力方向に対して静止させる力を生じさせる腕の筋肉とは別の筋肉をユーザが収縮させることが必要となる。また、ユーザは、健康器具1の回転が生じた都度、当該別の筋肉を収縮させ、健康器具1の回転を抑制することになる。つまり、上記のような健康器具1によれば、ユーザが健康器具1の重心を重力方向へ静止させ続けるとともに、回転方向のバランスをとる必要があるため、ユーザの複数の筋肉は鍛えられる。また、ユーザは回転方向のバランスをとるために筋力の収縮スピードを向上させることができる。さらに、ユーザは健康器具1のバランスをとる機能を鍛えることができる。つまり、上記の健康器具1によれば、トレーニング効果は向上する。
【0046】
また、上記の健康器具1によれば、トレーニング中のユーザの関節の動きは抑制されるよって、比較例に係る鉄アレイ51を使用したトレーニングとは異なり、ユーザがトレーニング中に関節を痛めることは防止される。
【0047】
また、上記の健康器具1によれば、ポール2のヨー軸、ピッチ軸、又はロール軸周りの角度に応じてLED7A、7B、7Cが段階的に点灯される。よって、ユーザは視覚を通じて光を検知し、ポール2の回転または傾きの度合いを容易に把握することができる。また、上記の健康器具1によれば、ポール2のヨー軸、ピッチ軸、又はロール軸周りの角度に応じてブザー8が鳴るため、ユーザは聴覚を通じて音を検知し、健康器具1の回転または傾きの度合いを容易に把握することができる。よって、ユーザは、複数の部位の筋肉の収縮具合を微細に調節し、ポール2の回転方向のバランスを容易に維持することができる。換言すれば、ユーザは、ポール2の回転方向のバランスは長時間維持可能となるため、複数の部位の筋肉は持続的に鍛錬される。つまり、上記の健康器具1によれば、トレーニング効果は向上する。また、上記の健康器具1によれば、ポール2の傾きがユーザにフィードバックされることで筋力は効率的に増強される。このような点からもトレーニング効果は向上するといえる。
【0048】
また、上記の健康器具1を使用したトレーニングは、点灯するLED7A、7B、7Cの色に応じ、ユーザが複数の部位の筋肉の収縮具合を調節する。よって、比較例に係る鉄アレイ51やスミスマシン52を使用したトレーニングのように、特定の部位の筋肉の収縮を繰り返すといった単調なトレーニングとは異なる。よって、ユーザが楽しみながらトレーニングすることができる。よって、ユーザがトレーニングに飽きてトレーニングを中断することは抑制される。このような点からもトレーニング効果は向上するといえる。
【0049】
また、上記の健康器具1は、ポール2の全長が3メートル程度あるが、ポール2は長手方向に3分割されるため、比較例に係るスミスマシン52とは異なり、運搬及び収納が容易となる。このような健康器具1は、利便性の高い器具と言える。また、上記の健康器具1は、グリップ3を把持するという簡便な動作でトレーニングが実現される。よって、比較例に係るスミスマシン52とは異なり、ユーザが気軽にトレーニングを行うことができる。また、上記の健康器具1によれば、簡易な部品や構造により形成されるため、比較例に係るスミスマシン52とは異なり、低コストで容易に製作可能である。
【0050】
<第1変形例>
図4は、第1変形例に係る健康器具1Aの概要を示している。図4に示されるように、
健康器具1Aは、円筒ケース4A、4Bがポール2に連結されていない。健康器具1Aは、代わりにポール2と別体の信号装置12を有する。そして、信号装置12にLED7A、7B、7Cが設けられている。また、健康器具1Aは、無線通信モジュール13を有し、ポール2の内部に、傾きセンサ5、制御チップ6、ブザー8、及び無線通信モジュール13が収容されている。制御チップ6は、傾きセンサ5から受信した電気信号に応じて、LED7A、7B、7Cの夫々を点灯あるいは消灯させるための作動指令信号を発生させる。そして、制御チップ6は、無線通信モジュール13を介して当該信号を信号装置12へ送信する。そして、信号装置12において、LED7A、7B、7Cのうちの何れかのLEDが点灯し、ユーザが健康器具1Aの回転を認識することができる。このような健康器具1Aであっても、本実施形態と同様の効果を奏することができる。ここで、ポール2は、本開示の「本体部」の一例である。
【0051】
<第2変形例>
図5は、第2変形例に係る健康器具1Bの概要を示している。図5に示されるように、第2変形例に係る健康器具1Bは、グリップ3と連結され、ユーザの手首に装着可能なバンド14を備える。バンド14は、グリップ3を覆うようにグリップ3に連結される。よって、ユーザは、自らの手を介してグリップ3の下面3B及び部分3Aに力を作用させるのではなく、バンド14が巻かれた手首又は腕を運動させることでバンド14を介してグリップ3の下面3B及び部分3Aに力を作用させる。このような健康器具1Bは、健康器具1と同様の効果を奏するが、グリップ3が手で把持される場合に鍛錬されるユーザの筋肉とは異なる筋肉を鍛錬することができる。また、バンド14を装着する部位を変更することで、異なる筋肉を鍛錬することができる。
【0052】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態に係る健康器具セット20(本開示の「トレーニング器具セット」の一例)の概要を示している。図6に示されるように、健康器具セット20は、健康器具1と、靴21と、を備える。靴21は、ユーザの足首を覆うように形成されている。また、靴21は、例えばプラスチックなど、布や革よりも剛性の高い素材により形成される。また、靴21の下部には、ユーザから見て前後方向に伸びる重り22を備える。重り22は、ユーザから見て靴21の左右方向の下部に夫々一つずつ設けられる。ここで、靴21は、本開示の「抑制器具」の一例である。
【0053】
次に、健康器具セット20の使用例を示す。ユーザは、第1実施形態に記載されるように健康器具1を使用してトレーニングを行う。加えて、ユーザは、靴21を履き、しゃがんで立ち上がる動作を繰り返す。ここで、ユーザがしゃがんで立ち上がる動作を繰り返している間、ユーザの足首は、剛性の高い靴21によって覆われているため、足首の関節が動くことは抑制される。
【0054】
[作用・効果]
上記のような健康器具セット20によれば、健康器具1により腕が鍛えられるだけではなく、スクワットにより下半身も鍛えることができる。よって、トレーニング効果は向上する。また、ユーザは靴21を履き、しゃがんで立ち上がる動作を繰り返している間、ユーザの姿勢は不安定となる。よって、姿勢を保持するためにユーザの下半身の複数の筋力が鍛えられる。また、姿勢を保持するために筋力の収縮スピードが向上される。また、姿勢を保持するために下半身の筋肉をユーザが収縮させ続けることが必要となる。つまり、姿勢を保持する機能を鍛えることができる。また、上記のような健康器具セット20によれば、反動を利用することなく下半身の筋力をトレーニングすることになる。よって、下半身の筋力の最大収縮力は増加することになり、トレーニング効果は向上する。
【0055】
また、しゃがんで立ち上がる動作を繰り返している間、足首の関節の動きは剛性の高い靴21により抑制されるため、足首の関節への負荷は軽減される。換言すれば、足首の関節に怪我をしている場合であっても、健康器具セット20によりトレーニングは可能となる。また、ユーザは、しゃがんで立ち上がる動作を繰り返している間に転倒しないように体のバランスを取る必要があるが、足首の関節の動きが抑制されているため、足首の関節以外の部位を複合的に動かすことで体のバランスを取ることになる。つまり、足首の関節以外の部位に複合的に負荷がかかることになり、トレーニング効果は向上する。
【0056】
<その他変形例>
第1実施形態では、グリップ3を把持して健康器具1の重心を静止させることが例示さ
れているが、回転方向にバランスを保ちながらポール2を持ち上げてもよい。また、上記の実施形態及び変形例では、健康器具1がユーザの手によって握られる例が記載されているが、ユーザの足の指を使って健康器具1を掴んでもよい。また、健康器具1のポール2には、重りが後付けされ、ポール2の重量が加減されてもよい。また、上記の健康器具1はLED7及びブザー8を備えており、ユーザの視覚及び聴覚を通じてポール2の傾き角をユーザにフィードバックすることができるが、これに加えて健康器具1はポール2の傾き角に応じて振動を発生させるバイブレータを備え、ユーザの触覚を通じてポール2の傾き角をユーザにフィードバックしてもよい。このように五感のうちの複数の感覚を通じてポール2の傾き角をユーザにフィードバックすることで、筋力は効率的に増強される。このような点からもトレーニング効果は向上するといえる。なお、健康器具1は、LED7、ブザー8あるいはバイブレータのうちの少なくとも一つを備えていてもよいし、備えていなくともよい。また、健康器具1には、傾きセンサ5、及び制御チップ6が設けられていなくともよい。また、ポール2の長さは2メートル以上であればよい。また、ポール2は、分割可能でなくともよく、ポール2A及びポール2Cがポール2Bの内部へ収容される機構を有し、全長が伸縮可能な構造であってもよい。より具体的には、例えばポール2Bの両端に締め付け機構を設け、使用時にはポール2Bの両端でポール2A及びポール2Cを締め付けて固定し、収納時には、締め付け機構による締め付けを解除し、ポール2Bの内面に対してポール2A及びポール2Cをスライドさせて収容し、再度締め付け機構を締め付けることで、ポール2A及びポール2Cを収容状態で固定するようにしてもよい。このようなポール2によっても運搬及び収納が容易となる。このような健康器具1は、利便性の高い器具といえる。
【0057】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0058】
1、1A、1B :健康器具
2、2A、2B、2C:ポール
3 :グリップ
3A :グリップ3の部分
3B :グリップ3の下面
4A、4B :円筒ケース
5 :傾きセンサ
6 :チップ
7A、7B、7C :LED
8 :ブザー
9 :孔
10 :孔
11 :ボルト
12 :信号装置
13 :無線通信モジュール
14 :バンド
20 :健康器具セット
21 :靴
22 :重り
51 :鉄アレイ
52 :スミスマシン
53 :バーベル
54 :レール
55 :ベンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6