(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】シール部材
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
F16J15/10 C
F16J15/10 T
(21)【出願番号】P 2020075461
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森谷 圭
(72)【発明者】
【氏名】額田 基寛
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-240988(JP,A)
【文献】特開2008-303931(JP,A)
【文献】特開2015-021516(JP,A)
【文献】実開平04-097162(JP,U)
【文献】特開2020-085119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二部材のうちの一方の部材の被シール面に設けられた溝部に装着され、前記二部材間をシールする環状のシール部材であって、
前記溝部内に配置されるとともに、前記二部材によって圧縮されて前記二部材間をシールする本体部と、
前記本体部の一側面側に、前記本体部よりも高さ方向の寸法が小さい状態で複数設けられるとともに、前記溝部内に配置された際に、対向する前記溝部の壁面に先端が当接する脱落防止用突起と、
前記脱落防止用突起の一部分から前記高さ方向に突出する状態で設けられ、前記溝部内に前記脱落防止用突起を配置する際に押圧される押圧部と、
を備えるシール部材。
【請求項2】
前記押圧部と前記本体部との間に間隔を有する、請求項1記載のシール部材。
【請求項3】
前記押圧部が前記脱落防止用突起の中央部に設けられる、請求項1又は請求項2記載のシール部材。
【請求項4】
前記押圧部の形状が円錐台状である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項5】
前記押圧部が前記脱落防止用突起の高さ方向の両面に設けられる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項6】
前記脱落防止用突起が前記本体部の前記高さ方向の中央部に設けられる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシール部材。
【請求項7】
前記押圧部の前記高さ方向の上端の位置と、前記本体部の前記高さ方向の上端の位置とは同じ位置である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二部材のうちの一方の部材の被シール面に設けられた溝部に装着され、当該二部材間をシールする環状のシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シール部材としてOリング等が広く使用されている。このようなシール部材を介在させて二部材を組み付ける際に、溝部を備える部材を移動させる必要がある場合、単なるOリング等を使用すると、部材を傾けたときに溝部に装着したOリングが脱落してしまう。このような課題を解決するため、溝部内に装着されたときに、対向する側面に先端が当接することで溝部内にシール部材を一時的に固定させる脱落防止用突起を備えたシール部材が提案されている(例えば、特許文献1-4)。シール部材において、このような脱落防止用突起は、溝部内に収容可能な状態にまで弾性変形により形状を変形された後、溝部内に配置される。溝部内に配置された脱落防止用突起は弾性変形により復元し、シール部材が溝部の側面間に挟まる状態となる。その結果、溝部からのシール部材の脱落を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-150575号公報
【文献】実開平3-72156号公報
【文献】特開2003-148622号公報
【文献】特開2009-210049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、脱落防止用突起を備えるシール部材は、上述のようにシール部材が溝部の側面間に挟まる状態となって脱落を防止する構成であるため、脱落をより確実に防止しようとすると、脱落防止用突起が溝部の側面を押す力をより高める必要がある。その結果、溝部に挿入し難く、シール部材が溝部に傾いた状態で二部材間に組み付けられてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたもので、シール部材が傾いた状態のまま二部材間に組付けられてしまうことを抑制して、シール機能を確実に発揮させることができるシール部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、二部材のうちの一方の部材の被シール面に設けられた溝部に装着され、二部材間をシールする環状のシール部材を前提としている。そして、本発明に係るシール部材は、本体部、脱落防止用突起、及び押圧部を備える。本体部は、溝部内に配置されるとともに、二部材によって圧縮されて二部材間をシールする。脱落防止用突起は、本体部の一側面側に、本体部よりも高さ方向の寸法が小さい状態で複数設けられるとともに、溝部内に配置された際に、対向する溝部の壁面に先端が当接する。押圧部は、脱落防止用突起の一部分から高さ方向に突出する状態で設けられ、溝部内に脱落防止用突起を配置する際に押圧される。
【0007】
このシール部材では、シール部材を溝部に装着する際に、押圧部を押すという簡便な作業で、溝部内に脱落防止用突起を適切に配置することができる。その結果、シール部材が溝部内で傾いて配置された状態のまま二部材間に組付けられることを防止でき、確実にシール機能を発揮させることができる。
【0008】
以上のシール部材において、押圧部と本体部との間に間隔を有する構成を採用することもできる。この構成では、溝部内の空間に占めるシール部材の割合(溝部に対するシール部材の充填率)をより低減することができ、溝部内でシール部材がボリューム過多になることを回避して容易に設計を行うことができる。
【0009】
以上のシール部材において、押圧部が脱落防止用突起の中央部に設けられる構成を採用することもできる。この構成では、溝部内の空間に占めるシール部材の割合をより低減することができるとともに、押圧部に付与された外力により、脱落防止用突起をよりスムーズに溝部内に配置することができる。
【0010】
以上のシール部材において、押圧部の形状が円錐台状である構成を採用することもできる。この構成では、溝部内の空間に占めるシール部材の割合をより低減することができるとともに、押圧部に付与された外力により、脱落防止用突起をよりスムーズに溝部内に配置することができる。
【0011】
以上のシール部材において、押圧部が脱落防止用突起の高さ方向の両面に設けられる構成を採用することもできる。この構成では、溝部内へシール部材を挿入する向きに関わらず、上述の効果を奏することができる。
【0012】
以上のシール部材において、脱落防止用突起が本体部の高さ方向の中央部に設けられる構成を採用することもできる。この構成では、溝部内への装着性と、脱落防止用突起による脱落防止機能とをバランスよく実現することができる。
【0013】
以上のシール部材において、押圧部の高さ方向の上端の位置と、本体部の高さ方向の上端の位置とは同じ位置である構成を採用することもできる。この構成では、押圧部に外力を容易に付与することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シール部材が傾いた状態のまま二部材間に組付けられてしまうことを抑制して、シール機能を確実に発揮させることができるシール部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシール部材の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】(a)は同シール部材の脱落防止用突起部分を模式的に示す拡大平面図である。(b)は(a)に示すシール部材の内周面を示す図である。(c)は(b)に示すシール部材の中央縦断面図である。
【
図3】(a)は同シール部材を溝部に装着する途中の状態を模式的に示す断面図である。(b)は同シール部材を溝部に装着した状態を模式的に示す断面図である。
【
図4】(a)は同シール部材を二部材間に組み付ける途中の状態を模式的に示す断面図である。(b)は同シール部材を二部材間に組み付けた状態を模式的に示す断面図である。
【
図5】(a)は比較例に係るシール部材を溝部に装着する途中の状態を模式的に示す断面図である。(b)は同シール部材を溝部に装着した状態の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】(a)は本発明の一実施形態に係るシール部材の他の例における脱落防止用突起部分を模式的に示す拡大平面図である。(b)は(a)に示すシール部材の内側面を示す図である。(c)は(b)に示すシール部材の中央縦断面図である。
【
図7】(a)は本発明の一実施形態に係るシール部材の他の例における脱落防止用突起部分を模式的に示す拡大平面図である。(b)は(a)に示すシール部材の内側面を示す図である。(c)は(b)に示すシール部材の中央縦断面図である。
【
図8】(a)は本発明の一実施形態に係るシール部材の他の例における脱落防止用突起部分を模式的に示す拡大平面図である。(b)は(a)に示すシール部材の内側面を示す図である。(c)は(b)に示すシール部材の中央縦断面図である。
【
図9】(a)は本発明の一実施形態に係るシール部材の他の例における脱落防止用突起部分を模式的に示す拡大平面図である。(b)は(a)に示すシール部材の内側面を示す図である。(c)は(b)に示すシール部材の中央縦断面図である。
【
図10】(a)は本発明の一実施形態に係るシール部材の他の例における脱落防止用突起部分を模式的に示す拡大平面図である。(b)は(a)に示すシール部材の内側面を示す図である。
【
図11】(a)は
図10(b)に示すシール部材の中央縦断面図である。(b)は同シール部材を溝部に装着した状態を模式的に示す断面図である。
【
図12】(a)は本発明の一実施形態に係るシール部材の他の例における脱落防止用突起部分を模式的に示す拡大平面図である。(b)は(a)に示すシール部材の内側面を示す図である。(c)は(b)に示すシール部材の中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。本発明に係るシール部材は、例えば、インテークマニホールドとシリンダヘッドとの間等の二部材間を密封するシール構造に使用される。本発明に係るシール部材は、当該二部材の一方の部材の被シール面に設けられた環状かつ凹状の溝部に装着される。特に限定されないが、ここでは、平面視において円形状の溝部に装着されるシール部材により本発明を具体化している。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るシール部材の一例を模式的に示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態のシール部材10は、環状の本体部11と、本体部11の内周側に適当な間隔をおいて設けられた脱落防止用突起12とを備える。シール部材10の全体形状は、装着される溝部に対応する環状に形成される。上述のとおり、シール部材10は平面視において円形状の溝部に装着されるため、本体部11の全体形状は円形状になっている。
【0018】
図2(a)は、シール部材10の脱落防止用突起12部分を模式的に示す拡大平面図である。
図2(b)は、
図2(a)に示すシール部材10の内周面を示す図である。
図2(c)は、
図2(b)に示すシール部材10の中央縦断面図である。シール部材10は、FKM、NBR、H-NBR、EPDM、CR、ACM、AEM、VMQ及びFVMQ等のゴム材による加硫成型体により構成される。上述のとおり、シール部材10の全体形状は円形状である。本明細書では、当該円形状のシール部材10の中心軸に沿う方向を高さ方向と呼称し、当該円形状の半径に沿う方向を径方向と呼称する。
図2(c)は、径方向に沿う断面図に対応する。
図2(b)及び
図2(c)では、図中の上下方向が高さ方向に対応する。また、
図2(a)及び
図2(c)では、図中の左右方向が径方向に対応する。
【0019】
図2(a)から
図2(c)に示すように、シール部材10の本体部11は円形状の断面形状を有している。本体部11の高さ方向の厚みは、後述のように、被シール面の溝部の深さよりも大きく設定されている。したがって、溝部に配置されたシール部材10は、当該溝部が形成された一方の部材と、溝部が形成されていない他方の部材とを組み付けた際、両部材の間で圧縮され、当該二部材間をシールする。
【0020】
脱落防止用突起12は、本体部11よりも高さ方向の寸法が小さい状態で複数(ここでは3つ)設けられる。本実施形態のシール部材10では、脱落防止用突起12は、高さ方向において、本体部11の高さ方向の厚みの半分程度の厚みを有し、本体部11の高さ方向の中央部から内周面側に突出している。
図2(a)に示すように、脱落防止用突起12は平面視において概ね半楕円状の形状を有している。また、脱落防止用突起12と本体部11との接続部分である脱落防止用突起12の基部(本体部11の近傍)の内周面は、強度を高める観点から、本体部11に近づくほど徐々に本体部11の内周面における円周方向の幅が次第に大きくなる凹曲面により構成されている。
【0021】
また、シール部材10は、径方向において、脱落防止用突起12が設けられた部分の内周端から外周端までの寸法、すなわち、脱落防止用突起12の内周側端部12aから本体部11の外周側端部11aまでの寸法が、シール部材10が装着される溝部の開口幅よりもわずかに大きく設定されている。したがって、シール部材10を溝部内に適切に配置した場合、脱落防止用突起12は、対向する溝部の壁面(後述の内周側壁面21b)に先端が当接することになる。
【0022】
脱落防止用突起12は、溝部内に脱落防止用突起12を配置する際に押圧される押圧部13をそれぞれ備えている。押圧部13は、脱落防止用突起12の一部分から前記高さ方向に突出する状態で設けられる。シール部材10では、円錐台形状の押圧部13が、平面視における各脱落防止用突起12の中央部、すなわち、
図2(b)において、脱落防止用突起12の突出幅方向(長手方向)の中央部に設けられている。また、特に限定されないが、本実施形態では、
図2(a)に示すように、円錐台状の押圧部13の底部13aが、脱落防止用突起12の本体部11側の端部に接する状態で配置されている。さらに、
図2(c)に示すように、本実施形態では、押圧部13は、脱落防止用突起12の高さ方向の両面に設けられており、高さ方向において、押圧部13の先端(
図2(c)における、押圧部13の上端及び下端)の位置は、本体部11の対応する先端(
図2(c)における、本体部11の上端及び下端)の位置と同じ位置になっている。
【0023】
図3(a)は、シール部材10を被シール面20aに設けられた溝部21に装着する途中の状態を模式的に示す断面図である。
図3(b)は、シール部材10を溝部21に装着した状態を模式的に示す断面図である。また、
図4(a)は、シール部材10を二部材20、30間に組み付ける途中の状態を模式的に示す断面図である。
図4(b)は、シール部材10を二部材20、30間に組み付けた状態を模式的に示す断面図である。上述のように、シール部材10の内周側端部12aから外周側端部11aまでの径方向における寸法は、溝部21の開口幅dよりもわずかに大きく設定されている。そのため、シール部材10を溝部21の開口部上に配置しただけでは、
図3(a)に示すように、シール部材10において脱落防止用突起12が設けられている部分が溝部21内に進入せず、開口部に係止された状態で留まることになる。当該状態で、本体部11及び押圧部13を同時に押下、あるいは、順次押下すると、
図3(b)に示すように、シール部材10が溝部21内に適切に装着された状態を容易に実現することができる。ここで、適切に装着された状態とは、溝部21の底面21aと、当該底面21aと対向する本体部11の先端11b(下端11b)とが確実に当接する状態、かつ、溝部21の底面21aと、当該底面21aと対向する押圧部13の先端13b(下端13b)とが確実に当接する状態を意味する。
【0024】
また、当該状態では、シール部材10の外周側端部11aが、対向する溝部21の外周側壁面21cに圧接され、かつ、シール部材10の内周側端部12aが、対向する溝部21の内周側壁面21bに圧接された状態となる。すなわち、シール部材10は、溝部21の外周側壁面21cと内周側壁面21bとの間に挟持された状態となる。したがって、例えば、溝部21を備える部材20を上下反転させたとしても、シール部材10が溝部21から離脱して落下することはない。
【0025】
このように、本実施形態のシール部材10では、シール部材10を溝部21に装着する際に、押圧部13を押すという簡便な作業で、溝部21内に脱落防止用突起12を適切に配置することができる。その結果、シール部材10が溝部21内で傾いて配置された状態のまま二部材20、30間に組付けられることを防止でき、確実にシール機能を発揮させることができる。
【0026】
以上のように、シール部材10が溝部21内に適切に配置された状態で、
図4(a)に示すように、相手方の部材30が溝部21と対向する状態で配置され、部材20と部材30とが締結等により接合・固定される。このとき、シール部材10は、
図4(b)に示すように、溝部21の底面21aと部材30の被シール面30aとの間で圧縮される。シール部材10が高さ方向に圧縮されると、脱落防止用突起12を設けた部分では、本体部11、脱落防止用突起12、及び押圧部13は弾性変形し、溝部21の底面21a、内周側壁面21b、外周側壁面21c、及び部材30の被シール面30aを所定のシール圧で押圧する状態で溝部21内に収容される。
【0027】
ここで、シール部材10の効果をより具体的に説明するため、上述の押圧部13を具備しない比較例に係るシール部材100について説明する。
図5(a)は、シール部材100を溝部21に装着する途中の状態を模式的に示す断面図である。
図5(b)は、シール部材10を溝部21に装着した状態を模式的に示す断面図である。なお、押圧部13を具備しない点を除いてシール部材100の構成はシール部材10と同様であるため、対応する構成要素についてはシール部材10と同一の符号を付している。
【0028】
シール部材10と同様に、シール部材100の内周側端部12aから外周側端部11aまでの径方向における寸法は、溝部21の開口幅dよりもわずかに大きく設定されている。そのため、シール部材100を溝部21の開口部上に配置しただけでは、
図5(a)に示すように、シール部材100において脱落防止用突起12が設けられている部分が溝部21内に進入せず、開口部に係止された状態で留まることになる。当該状態で、本体部11及び脱落防止用突起12を同時に押下、あるいは、順次押下しても、押圧部13を具備しないシール部材100では、例えば、
図5(b)に示すように、弾性体である脱落防止用突起12が溝部21の内周側壁面21bの上端のコーナー部と当接した場合に発生する反発力(弾性力)に阻害され、脱落防止用突起12を溝部21内に容易に進入させることができない。このような状態では、例えば、溝部21を備える部材20を上下反転させた場合、シール部材100は溝部21から離脱して落下してしまう。また、このような状態で部材30を組み付けると、二部材20、30の間にシール部材100が挟まれる噛み込みが発生することになる。このような噛み込みが発生すると、所望のシール性能を得ることができなくなる。
【0029】
一方、脱落防止用突起12に押圧部13を備える本実施形態のシール部材10では、簡便な作業で、溝部21内に脱落防止用突起12を適切に配置することができ、溝部21からのシール部材10の脱落を防止できるとともに、所望のシール性能を確実に得ることができる。
【0030】
以上説明したように、シール部材10では、シール部材10を溝部21に装着する際に、押圧部13を押すという簡便な作業で、溝部21内に脱落防止用突起12を適切に配置することができる。その結果、シール部材10が溝部21内で傾いて配置された状態のまま二部材20、30間に組付けられることを防止でき、確実にシール機能を発揮させることができる。
【0031】
また、シール部材10は、特に好ましい形態として、脱落防止用突起12の中央部に押圧部13を備えている。このような構成を採用することで、押圧部13に付与された外力を脱落防止用突起12に効率よく伝えることができ、脱落防止用突起12をよりスムーズに溝部21内に配置することができる。また、脱落防止用突起12の一部に押圧部13を設ける構成であるため、脱落防止用突起12の全体に押圧部を設ける場合に比べて溝部21内の空間に占めるシール部材10の割合(溝部に対するシール部材の充填率)をより低減することができる。なお、脱落防止用突起12に配置される押圧部13の位置及び数は本実施形態に限定されず、他の構成を採用することも可能である。
【0032】
また、シール部材10は、特に好ましい形態として、円錐台状の押圧部13を備えている。このような構成を採用することで、押圧部13に付与された外力により、脱落防止用突起12をよりスムーズに溝部21内に配置するという機能を損なうことなく、押圧部13の体積を減少させることができる。したがって、溝部21内の空間に占めるシール部材10の割合をより低減することができるとともに、脱落防止用突起12をよりスムーズに溝部21内に配置することができる。なお、押圧部13の形状は本実施形態に限定されず、他の形状を採用することも可能である。例えば、円柱状や角柱状の押圧部を採用することも可能である。また、押圧部と本体部との間に空間を設けることも必須ではなく、押圧部と本体部とが一体的に形成された構成を採用することも可能である。
【0033】
また、シール部材10は、特に好ましい形態として、脱落防止用突起12の高さ方向の両面に押圧部13を備え、高さ方向で線対称となる形状を採用している。このような構成を採用することで、溝部21内へシール部材10を挿入する表裏の向きに関わらず、上述の効果を得ることができる。なお、脱落防止用突起12の高さ方向の両面に押圧部13を設けることは必須ではなく、脱落防止用突起12の高さ方向の一方面にのみ押圧部13を設ける構成を採用することも可能である。
【0034】
また、シール部材10は、特に好ましい形態として、本体部11の高さ方向の中央部に設けられた脱落防止用突起12を備えている。このような構成を採用することで、脱落防止用突起12が本体部11の高さ方向の中央部と異なる位置に設けられる構成に比べて、溝部21内への装着性と、脱落防止用突起12による脱落防止機能とをバランスよく実現することができる。なお、本体部11の高さ方向の中央部に脱落防止用突起12を設けることは必須ではなく、本体部11の高さ方向の他の位置に脱落防止用突起12を配置する構成を排除するものではない。
【0035】
また、シール部材10は、特に好ましい形態として、本体部11の高さ方向の上端の位置と同じ位置に、高さ方向の上端の位置が配置された押圧部13を備えている。このような構成を採用することで、押圧部13に外力を容易に付与することができる。なお、本体部11の高さ方向の上端の位置と押圧部13の高さ方向の上端の位置を同じ位置に配置することは必須ではない。押圧機能を実現でき、かつシール性能に影響を及ぼさない範囲において、本体部11の高さ方向の上端と押圧部13の高さ方向の上端とを同一の位置に配置してもよく、異なる位置に配置してもよい。
【0036】
続いて、図面に基づいて、本発明に係るシール部材の他の事例について説明する。
図6(a)は本発明の一実施形態に係る他のシール部材40における脱落防止用突起42部分を模式的に示す拡大平面図である。
図6(b)は
図6(a)に示すシール部材40の内側面を示す図である。
図6(c)は
図6(b)に示すシール部材40の中央縦断面図である。また、
図7(a)は本発明の一実施形態に係る他のシール部材50における脱落防止用突起42部分を模式的に示す拡大平面図である。
図7(b)は
図7(a)に示すシール部材50の内側面を示す図である。
図7(c)は
図7(b)に示すシール部材50の中央縦断面図である。
図6(b)、
図6(c)、
図7(b)、及び
図7(c)では、図中の上下方向が高さ方向に対応し、
図6(a)、
図6(c)、
図7(a)、及び
図7(c)では、図中の左右方向が径方向に対応する。また、上述のシール部材10と同様の機能を有するシール部材40、50の構成要素には、シール部材10と同一の符号を用いている。
【0037】
上述のシール部材10では、例示として、円錐台状の押圧部13が脱落防止用突起12から直接突出する事例について説明したが、このような構成は必須ではない。例えば、
図6(a)から
図6(c)に示すように、円錐台状の押圧部43と脱落防止用突起42との間に台座14が設けられていてもよい。
【0038】
このシール部材40では、脱落防止用突起42の高さ方向の厚みをシール部材10の半分程度とし、当該厚みの減少分に対応する高さ方向の厚みを有する台座14を、脱落防止用突起42の高さ方向の両面に配置している。なお、特に限定されないが、この例では、高さ方向において、押圧部43の両端の位置が、本体部11の両端の位置よりも外側に位置する構成を採用している。
【0039】
図6(a)に示すように、台座14は、平面視において、押圧部43の底部43aの半径よりも数mm程度大きい半径を有する半円部14aを先端に有し、当該半円部14aの直径と同一の幅を有する矩形部14bが半円部14aから延出された形状を有する。そして、半円部14aの頂点が、シール部材40の内周側端部42aと重なる位置に配置されている。このような構成を採用することで、溝部21内の空間に占めるシール部材40の割合をシール部材10に比べてより低減することができる。また、溝部21内の空間に占めるシール部材10の割合をさらに低減する観点では、
図7(a)から
図7(c)に示すように、
図6(a)から
図6(c)に示すシール部材40の台座14を採用することなく、脱落防止用突起42から直接突出する円錐台状の押圧部53を備える構成を採用することも可能である。なお、特に限定されないが、この例では、高さ方向において、押圧部53の両端の位置が、本体部11の両端の位置よりも内側に位置する構成を採用している。
【0040】
また、
図8(a)は本発明の一実施形態に係る他のシール部材60における脱落防止用突起62部分を模式的に示す拡大平面図である。
図8(b)は
図8(a)に示すシール部材60の内側面を示す図である。
図8(c)は
図8(b)に示すシール部材60の中央縦断面図である。また、
図9(a)は本発明の一実施形態に係る他のシール部材70における脱落防止用突起72部分を模式的に示す拡大平面図である。
図9(b)は
図9(a)に示すシール部材70の内側面を示す図である。
図9(c)は
図9(b)に示すシール部材70の中央縦断面図である。
図8(b)、
図8(c)、
図9(b)、及び
図9(c)では、図中の上下方向が高さ方向に対応し、
図8(a)、
図8(c)、
図9(a)及び
図9(c)では、図中の左右方向が径方向に対応する。また、上述のシール部材10と同様の機能を有するシール部材60、70の構成要素には、シール部材10と同一の符号を用いている。
【0041】
上述のシール部材10では、例示として、脱落防止用突起12が、平面視において概ね半楕円状の形状を有し、その長径の寸法が概ね押圧部13の底部13aの直径の3倍程度である事例について説明したが、このような構成は必須ではない。例えば、
図8(a)から
図8(c)に示すように、平面視において、押圧部13の底部13aの周囲を数mm程度の幅で取り囲む状態とした形状(あるいは、押圧部13の底部13aと整合する形状)を有する脱落防止用突起62を採用することもできる。なお、本態様においても、本体部11との接続部分である、脱落防止用突起62の基部(本体部11の近傍)の内周面は、強度確保の観点から、本体部11に近づくほど徐々に本体部11の内周面における円周方向の幅が次第に大きくなる凹曲面により構成されている。
【0042】
このような構成を採用することで、脱落防止用突起62の先端62aと溝部21の内周面との接触面積が減少して脱落防止機能がやや低下することになるが、溝部21内の空間に占めるシール部材60の割合をシール部材10に比べてより低減することができる。また、溝部21内の空間に占めるシール部材10の割合をさらに低減する観点では、
図9(a)から
図9(c)に示すような、シール部材40と同様の台座14を押圧部13と脱落防止用突起72との間に設けた構成を採用することも可能である。
【0043】
さらに、
図10(a)は本発明の一実施形態に係る他のシール部材80における脱落防止用突起82部分を模式的に示す拡大平面図である。
図10(b)は
図10(a)に示すシール部材80の内側面を示す図である。
図11(a)は
図10(b)に示すシール部材80の中央縦断面図である。
図11(b)は
図10(b)に示すシール部材80を溝部21に装着した状態を模式的に示す断面図である。
図10(b)、
図11(a)、及び
図11(b)では、図中の上下方向が高さ方向に対応し、
図10(a)、
図11(a)及び
図11(b)では、図中の左右方向が径方向に対応する。また、上述のシール部材10と同様の機能を有するシール部材80の構成要素には、シール部材10と同一の符号を用いている。
【0044】
上述のシール部材10では、例示として、押圧部13の形状が、円錐台状である事例について説明したが、上述のとおり、押圧部13の形状は任意である。例えば、
図10(a)、
図10(b)、
図11(a)、及び
図11(b)に示すように、円弧状の先端部を有する台形状の押圧部83を採用することもできる。このような構成を採用することで、押圧部83の面積が大きくなるため、ユーザはより容易に脱落防止用突起82を押下することができる。なお、特に限定されないが、この事例では、押圧部83を大きくしたことにより、溝部21内の空間に占めるシール部材80の割合が大きくなることを抑制するため、押圧部83を脱落防止用突起82の高さ方向の一方面のみに設けている。
【0045】
このように、押圧部83を脱落防止用突起82の高さ方向の一方面のみに設けた構成であっても、シール部材10と同様に、溝部21の開口部に係止された状態で、本体部11及び押圧部83を同時に押下、あるいは、順次押下すると、
図11(b)に示すように、シール部材10が溝部21内に適切に装着された状態を容易に実現することができる。なお、ここでは、適切に装着された状態とは、溝部21の底面21aと、当該底面21aと対向する本体部11の先端11b(下端11b)とが確実に当接する状態、かつ、溝部21の内周側壁面21bと、当該内周側壁面21bと対向する脱落防止用突起82の内周側端部82aとが確実に当接する状態を意味する。
【0046】
また、
図12(a)は本発明の一実施形態に係る他のシール部材90における脱落防止用突起12部分を模式的に示す拡大平面図である。
図12(b)は
図12(a)に示すシール部材90の内側面を示す図である。
図12(c)は
図12(b)に示すシール部材90の中央縦断面図である。
図12(b)及び
図12(c)では、図中の上下方向が高さ方向に対応し、
図12(a)及び
図12(c)では、図中の左右方向が径方向に対応する。また、上述のシール部材10と同様の機能を有するシール部材90の構成要素には、シール部材10と同一の符号を用いている。
【0047】
上述のシール部材10では、例示として、円錐台状の押圧部13の底部13aが、脱落防止用突起12の本体部11側の端部に接する状態で配置された事例について説明したが、押圧部13の配置位置は任意に設定可能である。例えば、
図12(a)から
図12(c)に示すように、円錐台状の押圧部93の底部93aの内周側の端部が、シール部材90の内周側端部12aと重なる状態とすることで、本体部11と押圧部93との間に隙間94(連結部94)を設ける構成を採用することもできる。このような構成を採用することで、溝部21内の空間に占めるシール部材90の割合をより低減することができ、溝部21内でシール部材90がボリューム過多になることを回避して容易に設計を行うことができる。
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、シール部材が傾いた状態のまま二部材間に組付けられてしまうことを抑制して、シール機能を確実に発揮させることができる。
【0049】
なお、上述の実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上述の実施形態では、脱落防止用突起を本体部の内周面に設けた構成について説明したが、脱落防止用突起は、本体部の外周面に設けた場合でも同様の効果を奏することができる。また、上述の実施形態では、平面視における溝部の形状が円形状である事例について説明したが、溝部の形状は環状であれば任意の形状を採用することができる。加えて、上述の実施形態で説明した各構成要素の形態を適宜組み合わせてシール部材を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
10、40、50、60、70、80、90 シール部材
11 本体部
12、42、62、72、82 脱落防止用突起
13、43、53、83、93 押圧部
20 部材(二部材の一方の部材)
20a 被シール面
21 溝部
21a 底面
21b、22b 壁面
30 部材(二部材の他方の部材)
30a 被シール面