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特許7411222自転車用クランクの着脱構造及び該着脱構造を具備した自転車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】自転車用クランクの着脱構造及び該着脱構造を具備した自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 3/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B62M3/00 E
B62M3/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020076666
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021011253
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019127610
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598139793
【氏名又は名称】アイデス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 範光
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-69798(JP,A)
【文献】実開昭52-13369(JP,U)
【文献】実開昭60-5989(JP,U)
【文献】特開2010-222002(JP,A)
【文献】特表2009-515767(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108974231(CN,A)
【文献】米国特許第5493937(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 3/00
F16B 21/00- 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の車体フレームに支持されて回転可能なクランク軸と、前記クランク軸と一体的に回転するチェーンリングと、前記クランク軸の両端側にそれぞれ設けられて前記クランク軸と一体回転可能な二つのクランクアームと、一方のクランクアームを前記クランク軸に対し着脱可能に止着する着脱ユニットとを備えた自転車用クランクの着脱構造であって、
前記着脱ユニットは、前記一方のクランクアームに対し軸方向外側から挿入されて前記クランク軸に係止される本体部材と、外部からの操作により移動可能な操作部材とを具備し、前記操作部材の前記移動により前記係止の状態を解除して、前記本体部材から前記クランク軸が外れるようにしたことを特徴とする自転車用クランクの着脱構造。
【請求項2】
前記本体部材は、前記クランク軸の軸方向に沿う略筒状に形成され、
前記操作部材は、先側に前記本体部材に挿通される軸状部を有するとともに該軸状部の後側に外部操作可能な押しボタン部を有し、
前記押しボタン部の被押圧面が、前記クランクアームの軸方向外側の面に対し軸方向内側に凹んで配置されることを特徴とする請求項1記載の自転車用クランクの着脱構造。
【請求項3】
前記本体部材は、前記クランク軸の軸方向に沿う略筒状に形成され、
前記操作部材は、先側に前記本体部材に挿通される軸状部を有するとともに該軸状部の後側に外部操作可能な押しボタン部を有し、
前記着脱ユニットは、前記操作部材を前記後側へ付勢する付勢部材と、前記本体部材の周壁に貫通状に支持されて前記本体部材の外周面から部分的に突出する球体とを備え、前記軸状部には、前記球体を該軸状部の径方向へ出没可能に抱持する凹部が設けられ、
前記凹部の軸方向内側には、前記球体に対し径方向内側から当接して前記球体を前記本体部材の外周面から突出させる当接部と、該当接部よりも前記後側で前記球体を前記本体部材の外周面から突出しないように収容する収容部とが設けられ、
前記クランク軸には、前記球体を含んで前記本体部材の外周に嵌脱可能に嵌り合う嵌脱筒状部が設けられ、
前記嵌脱筒状部の周壁には、前記球体に嵌り合う係脱部が設けられ、
前記操作部材が前記先側へ押し動かされる操作により、前記球体を前記係脱部から離脱するとともに前記収容部へ収容して、前記係止の状態を解除するようにしたことを特徴とする請求項1記載の自転車用クランクの着脱構造。
【請求項4】
前記チェーンリングの中心側には、前記クランク軸を挿通した状態で軸方向外側へ突出する係合筒部が設けられ、
チェーンリング側の前記クランクアームの基端側には、前記クランク軸を挿入して一体回転可能に接続される接続孔と、この接続孔の軸方向内側に連通して前記係合筒部に一体回転可能に係合する被係止孔とが設けられていることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の自転車用クランクの着脱構造。
【請求項5】
前記チェーンリングには、挿通される前記クランク軸よりも径方向外側に、開口をチェーンリング側の前記クランクアームへ向けた係合孔が設けられ、
チェーンリング側の前記クランクアームには、前記係合孔に挿入されて嵌り合う係合凸部が設けられていることを特徴とする請求項1~3何れか1項記載の自転車用クランクの着脱構造。
【請求項6】
前記クランク軸は、前記着脱ユニットが係止される位置よりも軸方向内側にメネジ部を有し、
記着脱ユニットに置換可能な固定ボルトを備え、
前記固定ボルトは、前記一方のクランクアームに対し軸方向外側から挿入されて前記クランク軸のメネジ部に螺合接続されるように形成されていることを特徴とする請求項1~5何れか1項記載の自転車用クランクの着脱構造。
【請求項7】
請求項1~6何れか1項記載の自転車用クランクの着脱構造を具備した自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のクランク及びペダル等を着脱できるようにした自転車用クランクの着脱構造及び該着脱構造を具備した自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な自転車は、例えば特許文献1に記載されるように、車体フレームに支持されて一体的に回転可能なクランク軸及びチェーンリング(スプロケットと呼称される場合もある。)と、クランク軸の端部側に環状に装着されて該クランク軸に対する交差方向へ延設されたクランクアームと、クランクアームの延設方向の端部に支持されたペダルと、クランクアームの中心部に対し軸方向外側から挿入されて前記クランク軸にねじ込まれた固定ボルトとを具備している。
【0003】
ところで、このような従来の自転車構造において、クランクアーム及びペダル等を外すことが求められる場合がある。
例えば、幼児や子供等の自転車初心者が自転車の練習をする場合、通常、ペダルを漕ぐことよりも、足で地面を蹴って進みながら、倒れないようにバランスをとる練習をする必要がある。このような練習を行う場合、クランクアームやペダル等は足に引っかかって邪魔になるので、外すことが望まれる。
また、自転車を運搬する場合等も、突出するクランクアームやペダル等を、運搬の邪魔にならないように外したい場合がある。
【0004】
従来構造の自転車において、クランクアーム等を外す場合には、前記固定ボルトを六角レンチ等の工具により緩めて外し、コッタレス抜き工具等と呼ばれる自転車専用の工具によりクランクアームをクランク軸から引抜くことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-160139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、クランクアーム等を外すには、一般工具及び専用工具等の複数の工具を用いる上、特別な技術知識や作業時間も要する。
また、クランクアームを外した場合でも、クランク軸が残ってしまうので、このクランク軸が練習の時に脚に当たってしまい邪魔になってしまう。さらに、運搬時には、残されたクランク軸が周囲の物にぶつかって邪魔になったり、残されたクランク軸により梱包サイズが幅方向に大きくなったりする場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するために、以下の構成を具備するものである。
自転車の車体フレームに支持されて回転可能なクランク軸と、前記クランク軸と一体的に回転するチェーンリングと、前記クランク軸の両端側にそれぞれ設けられて前記クランク軸と一体回転可能な二つのクランクアームと、一方のクランクアームを前記クランク軸に対し着脱可能に止着する着脱ユニットとを備えた自転車用クランクの着脱構造であって、前記着脱ユニットは、前記一方のクランクアームに対し軸方向外側から挿入されて前記クランク軸に係止される本体部材と、外部からの操作により移動可能な操作部材とを具備し、前記操作部材の前記移動により前記係止の状態を解除して、前記本体部材から前記クランク軸が外れるようにしたことを特徴とする自転車用クランクの着脱構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上説明したように構成されているので、クランクアーム等を容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る自転車用クランクの着脱構造の一例を示す分解斜視図である。なお、チェーンリングの歯やスプライン等は簡略的に図示している。
図2】同自転車用クランクの着脱構造において、(a)はクランクアームに対しクランク軸が接続される前の状態を示し、(b)はクランクアームに対しクランク軸が接続された後の状態を示す。
図3】同自転車用クランクの着脱構造の要部断面図であり、クランク軸を外す手順を(a)(b)に順次に示している。
図4】同自転車用クランクの着脱構造の要部断面図であり、(a)はクランク軸が外された状態、(b)は着脱ユニットを含むクランクアームが外された状態を示す。
図5】着脱ユニットをボルトに換えてクランクアーム及びクランク軸を組み立てている様子を示す断面図である。
図6】ボルトによりクランクアームとクランク軸を接続した状態を示す断面図である。
図7】本発明に係る自転車用クランクの着脱構造の他例を示す分解斜視図である。なお、チェーンリングの歯等は簡略的に図示している。
図8図7の自転車用クランクの着脱構造において、(a)はクランクアームに対しクランク軸が接続される前の状態を示し、(b)はクランクアームに対しクランク軸が接続された後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第1の特徴は、自転車の車体フレームに支持されて回転可能なクランク軸と、前記クランク軸と一体的に回転するチェーンリングと、前記クランク軸の両端側にそれぞれ設けられて前記クランク軸と一体回転可能な二つのクランクアームと、一方のクランクアームを前記クランク軸に対し着脱可能に止着する着脱ユニットとを備えた自転車用クランクの着脱構造であって、前記着脱ユニットは、前記一方のクランクアームに対し軸方向外側から挿入されて前記クランク軸に係止される本体部材と、外部からの操作により移動可能な操作部材とを具備し、前記操作部材の前記移動により前記係止の状態を解除して、前記本体部材から前記クランク軸が外れるようにした(図1図5参照)。
【0011】
第2の特徴として、前記本体部材は、前記クランク軸の軸方向に沿う略筒状に形成され、
前記操作部材は、先側に前記本体部材に挿通される軸状部を有するとともに該軸状部の後側に外部操作可能な押しボタン部を有し、
前記押しボタン部の被押圧面が、前記クランクアームの軸方向外側の面に対し軸方向内側に凹んで配置される(図3及び図4参照)。
【0012】
第3の特徴として、前記本体部材は、前記クランク軸の軸方向に沿う略筒状に形成され、前記操作部材は、先側に前記本体部材に挿通される軸状部を有するとともに該軸状部の後側に外部操作可能な押しボタン部を有し、前記着脱ユニットは、前記操作部材を前記後側へ付勢する付勢部材と、前記本体部材の周壁に貫通状に支持されて前記本体部材の外周面から部分的に突出する球体とを備え、前記軸状部には、前記球体を該軸状部の径方向へ出没可能に抱持する凹部が設けられ、前記凹部の内側には、前記球体に対し径方向内側から当接して前記球体を前記本体部材の外周面から突出させる当接部と、該当接部よりも前記後側で前記球体を前記本体部材の外周面から突出しないように収容する収容部とが設けられ、前記クランク軸には、前記球体を含んで前記本体部材の外周に嵌脱可能に嵌り合う嵌脱筒状部が設けられ、前記嵌脱筒状部の周壁には、前記球体に嵌り合う係脱部が設けられ、前記操作部材が前記先側へ押し動かされる操作により、前記球体を前記係脱部から離脱するとともに前記収容部へ収容して、前記係止の状態を解除するようにした(図3図4参照)。
ここで、「抱持する」とは、抱きかかえるように支持することを意味する。
また、前記「略筒状」には、円筒状や角筒状を含む。
【0013】
第4の特徴として、前記チェーンリングの中心側には、前記クランク軸を挿通した状態で軸方向外側へ突出する係合筒部が設けられ、チェーンリング側の前記クランクアームの基端側には、前記クランク軸を挿入して一体回転可能に接続される接続孔と、この接続孔の軸方向内側に連通して前記係合筒部に一体回転可能に係合する被係止孔とが設けられている(図1図2参照)。
【0014】
第5特徴として、前記チェーンリングには、挿通される前記クランク軸よりも径方向外側に、開口をチェーンリング側の前記クランクアームへ向けた係合孔が設けられ、チェーンリング側の前記クランクアームには、前記係合孔に挿入されて嵌り合う係合凸部が設けられている(図7及び図8参照)。
【0015】
第6の特徴は、上記着脱ユニットに置換可能な固定ボルトを備え、前記固定ボルトは、前記一方のクランクアームに対し軸方向外側から挿入されて前記クランク軸に螺合接続されるように形成されている(図1図5及び図6参照)。
【0016】
第7の特徴は、上記自転車用クランクの着脱構造を具備して自転車を構成した。
【0017】
<第一の実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、本明細書中、「軸方向外側」とは、クランク軸20の長手方向の中心部から軸方向に沿って離れる方向側を意味する。また、「軸方向内側」とは、クランク軸20の軸方向に沿って、クランク軸20の長手方向の中心部に向かう方向側を意味する。
また、「径方向外側」とは、クランク軸20の径方向に沿ってクランク軸20の中心部から離れる方向を意味する。また、「径方向内側」とは、クランク軸20の径方向に沿ってクランク軸20の中心部へ向かう方向を意味する。
【0018】
この自転車用クランクの着脱構造Aは、自転車の車体フレーム10に支持されて一体的に回転可能なクランク軸20と、クランク軸20と一体的に回転するチェーンリング30と、クランク軸20の両端側にそれぞれ装着されてクランク軸20と一体回転可能な二つのクランクアーム40,50と、一方のクランクアーム50をクランク軸20に対し着脱可能に止着する着脱ユニット60と、着脱ユニット60に置換可能な固定ボルト70とを具備している。
【0019】
車体フレーム10は、例えば比較的小型の子供用自転車を構成している。
この車体フレーム10は、ハンドル側のヘッドチューブ(図示せず)から下斜め後方へ延設されるダウンチューブ11と、サドル(図示せず)から下斜め前方へ延設されるシートチューブ12と、後輪軸(図示せず)の両側から前方へ延設された左右のチェーンステー13,13とを、これらの交差部分に位置する筒状のシェル部14によって一体に支持している。
【0020】
シェル部14は、軸方向を車幅方向へ向けた円筒状に構成され、その内部にベアリング等の軸受部材(図示せず)を介してクランク軸20を回転自在に支持する。
【0021】
クランク軸20は、シェル部14に挿通され、その一端側と他端側をシェル部14から軸方向外側へ突出させた長尺円筒状の部材である。
なお、図示例では、シェル部14に対しクランク軸20のみが着脱されるようにしたが、図示しない好ましい一例としては、クランク軸20とその周囲のベアリング及びベアリング受け等によって一体ユニット状のボトムブラケットを構成し、このボトムブラケットが、シェル部14に対し軸方向に着脱されるようにしてもよい。
【0022】
そして、クランク軸20の一端側には、クランクアーム40の基端側が回転不能かつ軸方向移動不能に固定される。また、同クランク軸20の他端側には、クランクアーム50の基端側が回転不能かつ軸方向移動不能であって、着脱可能に装着されている(図1参照)。
【0023】
また、クランク軸20の一端側には、着脱ユニット60の球体64を含んで該着脱ユニット60の本体部材61の外周に嵌脱可能に嵌り合うように、嵌脱筒状部20aが設けられる。
【0024】
嵌脱筒状部20aは、図5等に示すように、クランクアーム50を回転不能に係止する係止部21と、着脱ユニット60の球体64に係脱する係脱部22と、着脱ユニット60の本体部材61に嵌り合う嵌合筒部23と、固定ボルト70の先端側に螺合可能なメネジ部24とを有する。
【0025】
係止部21は、嵌脱筒状部20aの外周部に、軸方向に沿って直線状に連続する凹凸部を周方向に多数配設して、オススプライン状に形成される。
【0026】
係脱部22は、係止部21及び嵌合筒部23が設けられた範囲にて、嵌脱筒状部20aの周壁を貫通する円形状の貫通孔である。
なお、この係脱部22は、図示する好ましい一例によれば、嵌脱筒状部20aの径方向の一方側と他方側に対応して二つ設けられるが、他例としては、その一方を削除することも可能である。また、この係脱部22は、後述する球体64に係脱するようにすれば、嵌脱筒状部20aの内周面に設けられる凹部に置換することが可能である。
【0027】
嵌合筒部23は、係脱部22以外に凹凸の無い円筒状に形成され、着脱ユニット60の小径部61bを抜き差し可能に嵌め合わせる。
【0028】
メネジ部24は、嵌合筒部23よりも奥側(軸方向内側)に形成された雌ネジであり、固定ボルト70に螺合するように形成される。
【0029】
チェーンリング30は、外周部にチェーン(図示ぜず)に噛み合う歯部30aを有する円盤状の部材である。このチェーンリング30の中心側には、クランク軸20を貫通状に挿通する貫通孔31と、貫通孔31の周囲から軸方向外側へ突出してクランクアーム40に嵌り合う係合筒部32とが設けられる。
【0030】
貫通孔31は、クランク軸20、及び該クランク軸20を支持するベアリングあるいはボトムブラケット等(図示せず)を挿通するように円筒状に形成される。
【0031】
係合筒部32は、その外周部が、クランクアーム40内の被係止孔41bに対し回転不能に係合するように、全周にわたって凹部と凸部を交互に多数配設したオススプライン状に形成される。
【0032】
チェーンリング30側に位置するクランクアーム40は、図1及び図2に示すように、クランク軸20の端部側に装着された筒部41と、この筒部41から径方向外側へ長尺状に延設された腕部42とを具備し、腕部42の先端側に図示しないペダルを装着している。
このクランクアーム40は、筒部41をチェーンリング30の係合筒部32に嵌め合わせて、回転力をチェーンリング30に伝達する。
【0033】
筒部41は、チェーンリング30の係合筒部32よりも一回り程径が大きい略円筒状に形成され、その内部に、クランク軸20の端部側を一体回転可能に嵌め合わせる接続孔41aと、この接続孔41aの軸方向内側に連通してチェーンリング30の係合筒部32に一体回転可能に係合する被係止孔41bとを有する。
【0034】
接続孔41aとクランク軸20を接続する手段は、接続孔41aに対しクランク軸20を軸方向移動不能かつ回転不能に固定する手段であればよい。この固定手段の具体例としては、溶接や、圧入、ネジ嵌合、スプラインを介した嵌合等が挙げられる。
【0035】
筒部41にクランク軸20が接続された際、筒部41内の被係止孔41bと、クランク軸20外周面との間には、環状の隙間s(図2(b)参照)が確保される。チェーンリング30の係合筒部32は、この隙間sに挿入されて、被係止孔41bに噛合う。
【0036】
被係止孔41b(図2参照)は、係合筒部32に対し、軸方向に抜差し可能、かつ回転不能に嵌り合う構成とすればよく、図示例によれば、オススプライン状の係合筒部32外周部に対し噛み合うメススプライン状に形成される。
【0037】
反チェーンリング側のクランクアーム50は、図1に示すように、クランク軸20の基端側に装着された筒部51と、この筒部51から径方向外側へ長尺状に延設された腕部52とを具備し、腕部52の先端側に図示しないペダルを装着している。このクランクアーム50の腕部52と、逆側のクランクアーム40の腕部42とは、延設方向が角度180°逆になる。
【0038】
筒部51は、クランク軸20よりも外径が大きい略円筒状に形成され、図5等に示すように、クランク軸20の嵌脱筒状部20aが抜差し可能に挿入される被係止孔51aと、この被係止孔51aの軸方向外側で縮径した縮径孔部51bと、この縮径孔部51bよりもさらに軸方向外側で拡径した拡径孔部51cとを同軸上に配置している。
【0039】
被係止孔51aは、略円筒状の内周面を、クランク軸20に対し一体回転可能に嵌り合うように形成している。
詳細に説明すれば、この被係止孔51aの内周面は、クランク軸20における嵌脱筒状部20a外周のオススプライン状の係止部21に対し、軸方向に抜差し可能、かつ回転不能に噛み合うメススプライン状に形成される。
【0040】
縮径孔部51bは、着脱ユニット60及び固定ボルト70の小径部61b,72に嵌り合う円筒状の孔であり、被係止孔51aとの間に段部を形成している。この段部は、クランク軸20の軸方向の端面に圧接される。
【0041】
拡径孔部51cは、着脱ユニット60及び固定ボルト70の大径部71(頭部)を収容可能な筒状に形成され、縮径孔部51bとの間に段部を形成している。この段部は、着脱ユニット60又は固定ボルト70の大径部71によって軸方向に圧接される。
【0042】
着脱ユニット60は、反チェーンリング側のクランクアーム50に対し軸方向外側から挿入されてクランク軸20の嵌合筒部23に係止される本体部材61と、外部からの操作により軸方向へ移動可能な操作部材62と、操作部材62を軸方向外側へ付勢する付勢部材63と、本体部材61の周壁に貫通状に支持されて本体部材61の外周面から部分的に突出する球体64とを備える。
この着脱ユニット60は、操作部材62の軸方向内側への移動により、クランク軸20との係止状態を解除して、本体部材61からクランク軸20が外れるようにする。
【0043】
本体部材61は、クランク軸20の軸方向に沿う略筒状に形成される。詳細に説明すれば、この本体部材61は、軸方向外側(後側)の大径部61aと、大径部61aよりも軸方向内側(先側)で縮径された小径部61bとを有する。
【0044】
大径部61aは、クランクアーム50の拡径孔部51c内に収容された状態で、後端面が拡径孔部51cから後方へ突出しないように、拡径孔部51cよりも軸方向長さが短い筒状に形成される(図3図4参照)。
【0045】
小径部61bは、クランク軸20の嵌合筒部23に嵌り合う円筒状に形成され、その周壁に、球体64を貫通状に支持する貫通孔61b1を有する。
【0046】
貫通孔61b1は、球体64が、着脱ユニット60の径方向外側へ抜け出たり抜け落ちたりしないように、球体64の外径よりも若干小さく設定されている。
また、小径部61bの周壁は、球体64を径方向外側へ部分的に突出させるように、その肉厚が適宜に設定されている。
【0047】
また、操作部材62は、軸方向内側(先側)に本体部材61の小径部61bに挿通される軸状部62aを有するとともに、軸方向外側(後側)に外部操作可能な押しボタン部62bを有する。
この押しボタン部62bの被押圧面は、クランクアーム50における筒部51の軸方向外側の面に対し、図3中の寸法X、軸方向内側に段状に凹んで配置される。
この構成によれば、押しボタン部62bの被押圧面に、手指や足、物等が触れて、押しボタン部62bが意図せずに押圧されてしまうような誤操作を防ぐことができる。
なお、必要に応じて、寸法Xの凹状部分に、円柱状等のキャップを着脱可能に装着し、該キャップにより前記凹状部分の開口を閉鎖するようにしてもよい。
【0048】
軸状部62aには、長尺な略円柱状に形成され、球体64を軸状部62aの径方向へ出没可能に抱持する凹部62cが設けられる。
【0049】
凹部62cの内側には、球体64に対し径方向内側から当接して球体64を本体部材61における小径部61bの外周面から突出させる当接部62c1と、当接部62c1よりも軸方向外側で球体64を小径部61bの外周面から突出しないように収容する収容部62c2とが設けられる。
【0050】
当接部62c1は、球体64に対し、軸方向内側から斜めに接する傾斜面状に形成される。
収容部62c2は、当接部62c1よりも軸方向外側(図示の左寄り)に底面を有し、球体64を半分程度収容可能な凹状の空間を確保している(図4参照)。
【0051】
固定ボルト70は、軸方向外側(後側)の円筒状の大径部71(頭部)と、大径部71よりも軸方向内側(先側)で縮径された円筒状の小径部72とを有する。
大径部71の端面には、六角レンチ等の締め付け治具を挿入し嵌め合わせる治具挿入孔71aが設けられる。
小径部72の前端側の外周面には、クランク軸20のメネジ部24に螺合するオネジ部72aが設けられる。
【0052】
なお、図中、符号80は、クランクアーム50とシェル部14の端面との間で、クランク軸20の外周部に環状に装着された環状弾発部材である。この環状弾発部材80は、波ワッシャーや、スプリングワッシャー、圧縮コイルスプリング等とすることが可能である。
【0053】
次に、上記構成の自転車用クランクの着脱構造Aについて、クランクアーム50を外す手順を詳細に説明する。
初期状態では、図3(a)に示すように、着脱ユニット60の本体部材61がクランク軸20の嵌合筒部23に嵌り合うとともに、球体64の一部が係脱部22に嵌り合うことで、クランクアーム50に対しクランク軸20が引抜け不能に固定される。また、クランクアーム50側の被係止孔51aと、クランク軸20側の係止部21との噛み合いにより、クランクアーム50に対しクランク軸20が回転不能に固定される。
【0054】
図3(b)に示すように、着脱ユニット60の操作部材62が外部から押されて、操作部材62が軸方向内側へ前進すると、球体64が係脱部22から離脱して収容部62c2に嵌り合う。
【0055】
このため、図4(c)に示すように、クランクアーム50及び着脱ユニット60からクランク軸20を軸方向へ引き離すことができる。この際、クランク軸20の逆端側では、チェーンリング30の係合筒部32から、クランクアーム40の筒部41が引抜かれる(図1及び図2参照)。
【0056】
そして、クランクアーム50及び着脱ユニット60が、図4(d)に示すように、シェル部14から軸方向外側へ引き離される。
【0057】
また、シェル部14に貫通させたクランク軸20をクランクアーム50に接続する場合は、クランク軸20の端部側を、クランクアーム50の被係止孔51aに挿入し押圧すれば、球体64がクランクアーム50の端部に押されて当接部62c1に摺接しながら収容部62c2内へ移動するとともに、操作部材62が軸方向内側へ前進する。そして、球体64とクランク軸20側の係脱部22との軸方向の位置が略一致すると、球体64が係脱部22に嵌り合って、上記初期状態(図4(a)参照)に戻る。
【0058】
また、上記のようにしてクランクアーム50及び着脱ユニット60をクランク軸20から引き離した状態で、着脱ユニット60を固定ボルト70に置換し、固定ボルト70によってクランクアーム50をクランク軸20に接続することも可能である(図4図6参照)。
この場合は、着脱ユニット60が外されたクランクアーム50の筒部51に対し、軸方向外側から固定ボルト70を挿入し、固定ボルト70の小径部72をクランク軸20の端部に挿入し、該小径部72のオネジ部72aをクランク軸20内のメネジ部24に螺合接続すればよい。
【0059】
よって、上記自転車用クランクの着脱構造Aを具備した自転車(図示せず)によれば、車体フレーム10に対し、二つのクランクアーム40,50を容易に着脱することができる。
例えば、幼児や子供等の初心の自転車運転者が、自転車の練習をする場合に、着脱ユニット60の操作により二つのクランクアーム40,50を車体フレーム10から外し、足で地面を蹴って進みながら、倒れないようにバランスをとる練習をすることができる。
また、同自転車運転者が、バランスをとれるようになった際には、着脱ユニット60を操作して、二つのクランクアーム40,50を車体フレーム10に容易に装着することができる。
【0060】
なお、上記実施態様では、係止部21と被係止孔51aの係合構造、および係合筒部32と被係止孔41bの係合構造は、オススプラインとメススプラインを噛合わせる構成としたが、他例としては、単数又は複数組の凸部と凹部を嵌め合わせた構造や、キーとキー溝を嵌め合わせた構造等にすることも可能である。
【0061】
<第二の実施態様>
次に、本発明に係る他の実施態様について説明する。
以下に説明する実施態様は、上述した自転車用クランクの着脱構造Aに対し、その一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、同様の部分については同一の符号を用いて重複する詳細説明を省略する。
【0062】
図7及び図8に示す自転車用クランクの着脱構造Bは、上記自転車用クランクの着脱構造Aにおいて、クランク軸20をクランク軸20’に置換し、チェーンリング30をチェーンリング30’に置換し、クランクアーム40,50をクランクアーム40’,50’に置換し、着脱ユニット60を着脱ユニット60’に置換し、環状弾発部材80を省いたものである。
【0063】
クランク軸20’は、上記クランク軸20において、係止部21を省き、一端側と他端側の外周面に平面部25を設けたものである(図7及び図8参照)。
平面部25は、円筒状のクランク軸20’の端部側の外周面を、クランク軸20’の中心軸と平行に切欠した平坦面状に形成される。この平面部25は、クランク軸20’の周方向に所定角度の間隔を置いて複数(図示例によれば角度90度の間隔を置いて四つ)設けられる。すなわち、クランク軸20’の一端側と他端側の外周面は、それぞれ、四角柱状に形成される。
そして、このクランク軸20’の軸方向内側(図示の左側)において、一つの平面部25には、上記係脱部22が貫通状に設けられる(図7参照)。
なお、図示例以外の他例としては、平面部25を、径方向の両側のみに位置するように平行に二つ設けた態様とすることも可能である。
【0064】
クランク軸20’の先端側(図7によれば左端側)の内周面には、後述する着脱ユニット60’に嵌り合う嵌合筒部(図示せず)と、該嵌合筒部の奥側に位置するメネジ部24(図5参照)とが設けられる。
このクランク軸20’の前記嵌合筒部は、上記嵌合筒部23(図5参照)を、断面略正方形の四角孔状に形成したものである。
【0065】
チェーンリング30’は、上記チェーンリング30において、上記係合筒部32を外周部に凹凸のない筒部32’に置換し、筒部32’よりも径方向外側に、開口をクランクアーム40’へ向けた係合孔33を設けたものである。
【0066】
筒部32’は、チェーンリング30’の中心部に位置する。この筒部32’は、クランク軸20’が挿入された際に、クランクアーム40’の筒部41’に対し、端面同士で当接する。
【0067】
係合孔33は、筒部32’よりも径方向外側であって且つ歯部30aよりも径方向内側に位置し、チェーンリング30’の中心軸と略平行する貫通孔である。この係合孔33は、その開口を、クランクアーム40’の係合凸部43に臨ませている(図7参照)。
【0068】
クランクアーム40’は、上記クランクアーム40において、筒部41を筒部41’に置換し、腕部42の延設方向の途中に、係合孔33に挿入され嵌り合う係合凸部43を設けたものである(図7及び図8参照)。
【0069】
筒部41’は、上記筒部41の内部を、形状変更したものである(図8(a)参照)。詳細に説明すれば、この筒部41’の内部には、クランク軸20’の複数の平面部25に嵌り合う角筒状の被掛止孔41a’と、この被掛止孔41a’よりも軸方向外側で拡径された円筒状の拡径孔部(図示せず)とが設けられる。
この筒部41’には、軸方向外側から固定ボルト70が挿入される。この固定ボルト70は、オネジ部72aをクランク軸20’端部の雌ネジ部(図示せず)に螺合し締め付けられるとともに、大径部71を前記拡径孔部に嵌め合わせる。
なお、このようにして一体化したクランク軸20’、クランクアーム40’及び固定ボルト70は、通常使用状態で分解されることを想定していない。
【0070】
係合凸部43は、腕部42の内側面から突出する軸状の突起であり、チェーンリング30’の係合孔33に対応するように、径方向の位置が設定されている。
この係合凸部43は、クランク軸20’が貫通孔31に挿入される際に、係合孔33に嵌り合う(図7参照)。
【0071】
もう一方のクランクアーム50’は、上記クランクアーム50において、筒部51を筒部51’に置換したものである。
【0072】
筒部51’は、上記クランクアーム40’の筒部41’と左右対称に構成され、その内部に、クランク軸20’端部側の複数の平面部25に嵌り合う角筒状の被掛止孔51a’と、この被掛止孔51a’よりも軸方向外側で拡径された円筒状の拡径孔部51c(図5参照)とを有する。
この筒部51’には、軸方向外側から着脱ユニット60’が挿入される。
【0073】
着脱ユニット60’は、上記着脱ユニット60において、円筒状の上記小径部61bを、外観視四角柱状の小径部61b’に置換したものである。
小径部61b’の内部構造は、小径部61bのものと同じである。
この小径部61b’の四つの平坦状外面のうちの一つの面には、上記着脱ユニット60と同様にして、球体64を貫通状に支持する貫通孔61b1(図4及び図5参照)が設けられる。
この着脱ユニット60’は、筒部51’に対し軸方向外側から挿入されて、小径部61b’をクランク軸20’内の嵌合筒部(図示せず)に嵌め合わせるとともに、大径部61aを筒部51’内の拡径孔部51c(図5参照)に嵌め合わせる。なお、クランク軸20’内の嵌合筒部(図示せず)は、上記嵌合筒部23(図5参照)を角筒状に形成したものである。
【0074】
よって、図7及び図8に示す自転車用クランクの着脱構造Bによれば、チェーンリング30’側の係合孔33と、クランクアーム40’側の係合凸部43との嵌り合いにより、チェーンリング30’に対しクランクアーム40’を回り止めすることができる。
さらに、クランク軸20’の略四角柱状の両端部を、それぞれ、クランクアーム40’とクランクアーム50’に篏合しているため、これらクランク軸20’及び両クランクアーム40’,50’を、簡素な構造により一体回転可能にすることができる。
そして、この自転車用クランクの着脱構造Bは、上記自転車用クランクの着脱構造Aと同様に、車体フレーム10に対し、二つのクランクアーム40,50を容易に着脱することができる。
【0075】
なお、図示例の自転車用クランクの着脱構造Bでは、小径部61b’及び球体64を、径方向の一方側のみに設けたが、他例としては、着脱ユニット60’をその中心線を軸にして対称な構造にすることで、小径部61b’、球体64及び凹部62c等を、径方向の両側に設けるようにしてもよい。
【0076】
<その他の変形例>
上記実施態様によれば、操作部材62を軸方向内側へ押操作される態様としたが、この操作部材の他例としては、軸方向外側へ引き操作される態様や、軸方向に対する交差方向に押し操作又は引き操作される態様等とすることも可能である。
【0077】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0078】
10:車体フレーム
20,20’:クランク軸
20a:嵌脱筒状部
21:係止部
22:係脱部
23:嵌合筒部
24:メネジ部
30,30’:チェーンリング
32,32’:係合筒部
33:係合孔
40,40’,50,50’:クランクアーム
41,41’,51,51’:筒部
41a:接続孔
41b:被係止孔
43:係合凸部
51a,51a’:被係止孔
60,60’:着脱ユニット
61:本体部材
62:操作部材
62a:軸状部
62b:押しボタン部
62c:凹部
62c1:当接部
62c2:収容部
63:付勢部材
64:球体
70:固定ボルト
A,B:自転車用クランクの着脱構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8