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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】排水口開閉装置および業務用調理釜
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A47J27/14 E
A47J27/14 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020132122
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029028
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-03-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 企業への販売 販売日:令和1年8月5日 販売場所:新日本厨機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592190497
【氏名又は名称】桐山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友永 拓志
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000938(JP,A)
【文献】特開2000-083816(JP,A)
【文献】特開昭63-280973(JP,A)
【文献】特開2012-036558(JP,A)
【文献】米国特許第10161121(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内釜および外釜と、前記内釜の底部に開口する排水口と、前記排水口から前記外釜の下端よりも下方まで延びる排水管とを備える業務用調理釜に取り付けられ、前記排水口を開閉する排水口開閉装置であって、
前記排水口を塞ぐ排水栓と、前記排水栓から前記排水管を通って下方へ延びるシャフトと、前記排水管の下端部に着脱自在に取り付けられて前記シャフトを上下に移動させるギアユニットと、を備え、
前記ギアユニットは、前記シャフトの軸方向に直交する回転軸を中心に回転するギアと、前記ギアの両側に配置されて前記回転軸を回転可能に支持する一対の側板と、前記ギアの径方向に移動可能に前記側板に支持されるとともに前記径方向の内側へ向けて付勢されて前記ギアの歯溝に係合する係合部と、前記側板に連結されて前記シャフトの軸方向へ延びるガイドプレートと、を備え、
前記シャフトの前記下端部は、前記軸方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝を有し、前記係合溝に前記ギアの歯を係合させた状態で前記ギアとは反対側の外面が前記ガイドプレートによって支持されることを特徴とする排水口開閉装置。
【請求項2】
前記シャフトの前記軸方向に平行な複数のフィンが、少なくとも前記シャフトの上端部に前記シャフトの周方向に間隔をあけて設けられ、
前記フィンは、前記シャフトの外周面から前記排水管の内周面の近傍まで前記シャフトの径方向に放射状に延びていることを特徴とする請求項1に記載の排水口開閉装置。
【請求項3】
前記側板は、前記ギアの前記径方向を長手方向とする長孔を備え、
前記係合部は、一対の前記側板の前記長孔に両端部が支持される係合ピンと、前記係合ピンと前記ギアの前記回転軸にそれぞれ一端と他端が取り付けられて前記係合ピンを前記ギアの前記径方向の内側へ付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の排水口開閉装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記係合ピンの外周に装着される係合リングを備え、
前記係合リングは、前記ギアの前記歯溝の幅よりも直径が大きく前記歯溝に部分的に係合することを特徴とする請求項3に記載の排水口開閉装置。
【請求項5】
前記ギアユニットは、一対の前記側板の下端に連結された締結フックをさらに備え、前記ガイドプレートと前記ギアの一部が前記排水管の前記下端部の側面に設けられた取付孔を通して前記排水管の内部に配置され、一対の前記側板の上端に設けられた取付溝に前記取付孔の上端縁が係合され、前記締結フックの先端が前記排水管の下端の開口から挿入されて前記取付孔の下端縁に係合され、前記締結フックが締結された状態で、前記排水管の前記下端部に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の排水口開閉装置。
【請求項6】
前記ギアユニットは、前記ギアの前記回転軸の一端に連結された自在継手と、前記自在継手を介して前記回転軸に連結された回転シャフトと、前記回転シャフトの先端に取り付けられた回転ツマミと、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の排水口開閉装置。
【請求項7】
内釜および外釜と、前記内釜の底部に開口する排水口と、前記排水口から前記外釜の下端よりも下方まで延びる排水管と、前記排水口を開閉する排水口開閉装置と、を備えた業務用調理釜であって、
前記排水口開閉装置は、前記排水口を塞ぐ排水栓と、前記排水栓から前記排水管を通って下方へ延びるシャフトと、前記排水管の下端部に着脱自在に取り付けられて前記シャフトを上下に移動させるギアユニットと、を備え、
前記ギアユニットは、前記シャフトの軸方向に直交する回転軸を中心に回転するギアと、前記ギアの両側に配置されて前記回転軸を回転可能に支持する一対の側板と、前記ギアの径方向に移動可能に前記側板に支持されるとともに前記径方向の内側へ向けて付勢されて前記ギアの歯溝に係合する係合部と、前記側板に連結されて前記シャフトの軸方向へ延びるガイドプレートと、を備え、
前記シャフトの前記下端部は、前記軸方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝を有し、前記係合溝に前記ギアの歯を係合させた状態で前記ギアとは反対側の外面が前記ガイドプレートによって支持されることを特徴とする業務用調理釜。
【請求項8】
前記内釜の下方に設けられた前記外釜の内部の燃焼室と、前記燃焼室に配置されたバーナと、前記外釜の下方に取り付けられた遮熱板と、をさらに備え、
前記排水管の前記下端部は、前記遮熱板よりも下方に位置することを特徴とする請求項7に記載の業務用調理釜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排水口開閉装置および業務用調理釜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から学校給食で一度に大量の調理を行う場合等に用いられる調理釜に関する発明が知られている(下記特許文献1)。特許文献1に記載された調理釜は、左右一対の架台と、釜本体と、蓋体と、蓋開閉用アームと、排水口と、排水栓と、排水栓駆動機構とを有している(同、請求項4および第0010段落)。
【0003】
上記左右一対の架台は、床面から略垂直に延びる。上記釜本体は、これらの架台間に前後方向に回動可能に支持されている。上記蓋体は、釜本体の上面開口部を覆う。上記蓋開閉用アームは、一端側が一方の架台の上面側に回動自在に支持されるとともに、他端側が蓋体に取り付けられている。上記排水口は、釜本体の底面に形成されている。上記排水栓は、排水口を塞ぐ。上記排水栓駆動機構は、釜本体の外側からの操作により排水栓を排水位置に任意に押し上げ可能である。
【0004】
より具体的には、上記排水栓駆動機構は、軸と、操作ハンドルと、カムとを有している(同、請求項5および第0011段落)。上記軸は、釜本体の底面下方に回転自在に設けられ、釜本体の外側から釜本体の底面に沿って排水口に向かって延びる。操作ハンドルは、軸の外側端部に設けられ、軸を回転させる。上記カムは、その軸の内側端部に設けられ、軸の回転に伴って排水栓を上下動させる。
【0005】
より詳細には、排水栓は、シール性を有する栓本体と、栓本体の下面から垂直に下方に延びる軸と、軸から左右に突出し、排水口に対する軸の振れを抑制する振れ止め片と、軸の下端部において水平方向に突出するピンを有している。また、排水栓駆動機構は、釜本体の底面下方に固定されたフレームと、フレームに回動自在に支持され、釜本体の外側から底面に沿って排水口に向かって延びる軸と、軸の外側端部に設けられ、軸を回転させる操作ハンドルと、軸の内側端部に設けられたカムを有している(同、第0021段落、図9および図10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-289544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の調理釜によれば、操作ハンドルを回転させるだけで排水栓の開閉ができるため、釜本体を回動することなく釜本体内の洗浄水等の排水を容易に行うことができる(同、第0012段落および第0022段落)。しかしながら、この従来の調理釜は、排水栓駆動機構の分解洗浄、排水口の開度の段階的な調節、および栓本体の下面から垂直に下方に延びる軸がより長くなった場合の排水栓の安定性に課題がある。
【0008】
本開示は、従来よりも分解洗浄と排水口の開度の段階的な調節が容易であり、排水栓の安定性を向上させることができる排水口開閉装置と、その排水口開閉装置を備えた業務用調理釜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、内釜および外釜と、前記内釜の底部に開口する排水口と、前記排水口から前記外釜の下端よりも下方まで延びる排水管とを備える業務用調理釜に取り付けられ、前記排水口を開閉する排水口開閉装置であって、前記排水口を塞ぐ排水栓と、前記排水栓から前記排水管を通って下方へ延びるシャフトと、前記排水管の下端部に着脱自在に取り付けられて前記シャフトを上下に移動させるギアユニットと、を備え、前記ギアユニットは、前記シャフトの軸方向に直交する回転軸を中心に回転するギアと、前記ギアの両側に配置されて前記回転軸を回転可能に支持する一対の側板と、前記ギアの径方向に移動可能に前記側板に支持されるとともに前記径方向の内側へ向けて付勢されて前記ギアの歯溝に係合する係合部と、前記側板に連結されて前記シャフトの軸方向へ延びるガイドプレートと、を備え、前記シャフトの前記下端部は、前記軸方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝を有し、前記係合溝に前記ギアの歯を係合させた状態で前記ギアとは反対側の外面が前記ガイドプレートによって支持されることを特徴とする排水口開閉装置である。
【0010】
業務用調理釜は、たとえば、学校、食堂、飲食店、宿泊施設、惣菜製造工場などにおいて、大量の食品を調理するために使用される。業務用調理釜による食品の調理中は、内釜の底部に開口する排水口が、上記態様の排水口開閉装置の排水栓によって塞がれて全閉状態になっている。業務用調理釜の使用後は、たとえば、内釜に残った食品残渣を排水口から排出したり、内釜を洗浄したりするために、上記態様の排水口開閉装置によって排水口を開状態にする。
【0011】
上記態様の排水口開閉装置によって排水口を開状態にするには、まず、ギアユニットのギアの回転軸を所定の一方向に回転させる。これにより、ギアの歯がシャフトの下端部の係合溝に噛み合った状態でギアが回転して、シャフトを上方へ移動させる。すると、シャフトの上端に連結されて業務用調理釜の内釜の底部の排水口を閉鎖する排水栓が上方へ移動して、排水口を開状態にする。このときのギアの回転軸の回転方向を開方向という。このように、ギアを回転方向へ回転させるには、ギアの歯溝と係合部との係合を解除する必要がある。
【0012】
ここで、係合部は、ギアの径方向に移動可能に側板に支持されるとともに、ギアの径方向の内側へ向けて付勢されて、ギアの歯溝に係合している。この状態で、回転軸を回転させると、ギアから係合部に対し、ギアの径方向外側を向く力が作用する。そして、回転軸に作用するトルクが所定のトルクを超え、係合部に作用する径方向外側を向く力が、係合部に作用する径方向内側を向く付勢力よりも大きくなると、係合部が径方向外側へ移動し、ギアの歯を一つ乗り越えて隣の歯溝に係合する。
【0013】
その結果、ギアが所定の角度で段階的に回転し、シャフトの下端部の上方側の係合溝に係合した上方側のギアの歯がシャフトを上方へ押し上げて係合溝から外れ、新たに下方側のギアの歯が下方側の係合溝に係合する。これを繰り返すことで、シャフトが段階的に上方へ移動して、排水栓を段階的に上方へ移動させ、業務用調理釜の内釜の底部の排水口の開度が段階的に上昇する。同様に、ギアの回転軸を開方向とは逆の閉方向へ回転させることで、シャフトが段階的に下方へ移動して、排水栓を段階的に下方へ移動させ、業務用調理釜の内釜の底部の排水口の開度が段階的に低下する。これにより、排水口の開度の調節を容易にすることができる。
【0014】
また、ギアの歯とシャフトの下端部の係合溝が係合してシャフトが上下に移動するときには、ギアとは反対側のシャフトの下端部の外面がガイドプレートによって支持される。このガイドプレートは、ギアユニットの側板に連結されてシャフトの軸方向へ延びている。これにより、シャフトの軸方向に沿う上下の移動時に、シャフトの振れを防止してシャフトを安定させ、排水栓の安定性を向上させることができる。
【0015】
また、上記態様の排水口開閉装置の分解洗浄を行うときには、ギアの回転軸を開方向へ回転させ、シャフトおよび排水栓を最上方位置まで移動させて、業務用調理釜の内釜の底部の排水口を全開状態にする。この状態では、シャフトの下端部において軸方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝は、すべてギアの歯との係合が外れ、シャフトの下端がギアの歯によって下方から支持された状態になっている。
【0016】
そのため、排水口開閉装置の分解洗浄を行う作業者は、たとえば、排水栓を把持してシャフトを排水管から容易に引き抜くことができる。その後、作業者は、内釜の底部の排水口から外釜の下端よりも下方まで延びる排水管の下端部に着脱自在に取り付けられたギアユニットを取り外して洗浄することができる。これにより、排水口開閉装置の分解洗浄を容易にすることができる。
【0017】
また、上記態様の排水口開閉装置は、シャフトの軸方向に平行な複数のフィンが、少なくともシャフトの上端部にシャフトの周方向に間隔をあけて設けられていてもよい。この場合、前記フィンは、前記シャフトの外周面から前記排水管の内周面の近傍まで前記シャフトの径方向に放射状に延びていてもよい。
【0018】
この構成により、シャフトは、少なくとも上端部から径方向へ放射状に延びる複数のフィンによって排水管内での径方向の移動が規制されて径方向の振れが防止され、さらに下端部においてギアと反対側の外面がギアユニットのガイドプレートによって支持される。このように、シャフトの上端部と下端部においてシャフトの径方向の移動が規制されることで、シャフトの軸方向に沿う上下の移動時に、シャフトの振れを防止してシャフトを安定させ、排水栓の安定性を向上させることができる。また、業務用調理釜の内釜の底部の排水口から排水管を介して液体や流動体を排出するときに、シャフトの軸方向に平行な複数のフィンによる整流効果を期待することができる。
【0019】
なお、シャフトの上端部は、たとえば、シャフトの軸方向における中央よりも上方側の部分であり、シャフトの下端部は、たとえば、シャフトの軸方向における中央よりも下方側の部分である。また、シャフトは、下端部の複数の係合溝の上方の外周面から排水管の内周面の近傍までシャフトの径方向へ放射状に延びる複数のフィンを有してもよい。この場合、シャフトの振れをより確実に防止してシャフトを安定させ、排水栓の安定性をより向上させることができ、ギアとガイドプレートとの間にシャフトの下端部をより容易かつ確実に配置することができる。
【0020】
また、上記態様の排水口開閉装置において、前記側板は、前記ギアの前記径方向を長手方向とする長孔を備えてもよい。この場合、前記係合部は、一対の前記側板の前記長孔に両端部が支持される係合ピンと、前記係合ピンと前記ギアの前記回転軸にそれぞれ一端と他端が取り付けられて前記係合ピンを前記ギアの前記径方向の内側へ付勢する付勢部材と、を備えることができる。
【0021】
この構成により、上記ギアユニットの一対の側板に設けられた長孔に係合部の係合ピンの両端部を挿通させることで、一対の側板によって係合部を長孔の長手方向であるギアの径方向に移動可能に支持することができる。さらに、付勢部材を弾性的に伸長させた状態で、付勢部材の一端と他端をそれぞれ係合ピンとギアの回転軸に取り付けることで、付勢部材によって係合ピンをギアの回転軸へ向けて付勢して、係合部をギアの径方向内側へ向けて付勢することができる。なお、付勢部材は、特に限定はされないが、たとえば、コイルスプリング、板ばね、弾性ゴムなどの弾性部材である。
【0022】
また、上記態様の排水口開閉装置において、前記係合部は、前記係合ピンの外周に装着される係合リングを備えてもよい。この場合、前記係合リングは、前記ギアの前記歯溝の幅よりも直径が大きく前記歯溝に部分的に係合してもよい。
【0023】
この構成により、上記ギアユニットのギアを回転させてギアの歯溝に係合した係合部をギアの径方向外側へ移動させ、係合部がギアの歯を一つ乗り越えて隣の歯溝に係合するときに、係合部の係合ピンの外周で係合リングが回転する。これにより、ギアの歯溝と係合部との係合の解除を容易にして、ギアの回転を容易にすることができる。また、係合リングは、ギアの歯溝の幅よりも直径が大きく、歯溝に部分的に係合しているので、ギアの歯溝と係合部との係合の解除をさらに容易にして、ギアの回転をさらに容易にすることができる。
【0024】
また、上記態様の排水口開閉装置において、前記ギアユニットは、一対の前記側板の下端に連結された締結フックをさらに備えてもよい。この場合、前記ギアユニットは、少なくとも前記ガイドプレートと前記ギアの一部が、前記排水管の前記下端部の側面に設けられた取付孔を通して、前記排水管の内部に配置される。また、一対の前記側板の上端に設けられた取付溝に、前記取付孔の上端縁が係合される。また、前記締結フックの先端が、前記排水管の下端の開口から挿入されて前記取付孔の下端縁に係合され、前記締結フックが締結される。このような状態で、前記ギアユニットは、前記排水管の前記下端部に着脱自在に取り付けられる。
【0025】
この構成により、ギアユニットは、締結フックの締結を解除することで、締結フックの先端が排水管の取付孔の下端縁から外れる。さらに、締結フックの先端を排水管の下端の開口の下方へ移動させながら、排水管の取付孔の上端縁に係合した一対の側板の取付溝を支点としてギアユニットを上方に傾けていくと、一対の側板の下端部が排水管の外面から離れる。その状態で、ギアユニットを斜め下方に排水管から離すように移動させると、排水管の取付孔の上端縁と、ギアユニットの一対の側板の上端に設けられた取付溝との係合が解除される。その後、ギアユニットを排水管からさらに離すように移動させると、排水管の取付孔を通して排水管の内部に挿入されたガイドプレートとギアの一部を取り出して、ギアユニットを排水管から取り外すことができる。
【0026】
一方、ギアユニットを排水管に取り付けるときには、まず、排水管の下端部の取付孔にギアユニットのガイドプレートとギアの一部を挿入し、一対の側板の上端に設けられた取付溝を排水管の下端部の取付孔の上端縁に係合させる。そして、取付溝を支点としてギアユニットを下方へ傾けるように移動させて、一対の側板の下端部を排水管の取付孔の下方側で排水管の外面に当接させる。その状態で、一対の側板の下端に連結された締結フックの先端を、排水管の下端の開口から挿入し、排水管の内側から取付孔の下端縁の外側に引っ掛けるようにして係合させ、締結フックを締結する。これにより、ギアユニットを排水管の下端に着脱自在に取り付けることができる。
【0027】
さらに、業務用調理釜の内釜の底部の排水口にシャフトを挿入して、シャフトの下端をギアとガイドプレートとの間に配置して、ギアの回転軸を閉方向に回転させ、シャフトの下端部の係合溝とギアの歯を係合させる。以上により、業務用調理釜に対する排水口開閉装置の取り付けが完了する。したがって、上記のようなギアユニットの構成によれば、業務用調理釜の排水管に対するギアユニットの取り付けと取り外しを容易にすることができ、業務用調理釜に対する排水口開閉装置の取り付けを容易にすることができる。
【0028】
また、上記態様の排水口開閉装置において、前記ギアユニットは、前記ギアの前記回転軸の一端に連結された自在継手と、前記自在継手を介して前記回転軸に連結された回転シャフトと、前記回転シャフトの先端に取り付けられた回転ツマミと、を備えてもよい。
【0029】
この構成により、業務用調理釜の外釜の下端よりも下方まで延びる排水管の下端部に取り付けられたギアユニットの操作を容易にすることができる。より具体的には、ギアユニットのギアの回転軸の一端に自在継手を介して連結された回転シャフトを、外釜の径方向の外側かつ上方へ向けて延ばすことで、回転ツマミを作業者が操作しやすい位置に配置することが可能になる。そして、作業者が回転ツマミを回転させることで、ギアユニットのギアの回転軸を開方向または閉方向へ回転させて、排水栓によって業務用調理釜の底部の排水口の開度を段階的に調整することができる。したがって、排水口の開度の段階的な調節をより容易にすることができる。
【0030】
本開示の第2の態様は、内釜および外釜と、前記内釜の底部に開口する排水口と、前記排水口から前記外釜の下端よりも下方まで延びる排水管と、前記排水口を開閉する排水口開閉装置と、を備えた業務用調理釜である。前記排水口開閉装置は、前記排水口を塞ぐ排水栓と、前記排水栓の下面から前記排水管を通って下方へ延びるシャフトと、前記排水管の下端部に着脱自在に取り付けられて前記シャフトを上下に移動させるギアユニットと、を備える。前記ギアユニットは、前記シャフトの軸方向に直交する回転軸を中心に回転するギアと、前記ギアの両側に配置されて前記回転軸を回転可能に支持する一対の側板と、前記ギアの径方向に移動可能に前記側板に支持されるとともに前記径方向の内側へ向けて付勢されて前記ギアの歯溝に係合する係合部と、前記側板に連結されて前記シャフトの軸方向へ延びるガイドプレートと、を備える。前記シャフトの前記下端部は、前記軸方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝を有し、前記係合溝に前記ギアの歯を係合させた状態で前記ギアとは反対側の外面が前記ガイドプレートによって支持される。
【0031】
このような構成の業務用調理釜によれば、上記第1の態様に係る排水口開閉装置と同様の構成の排水口開閉装置を備えることで、上記第1の態様に係る排水口開閉装置と同様の効果を奏することができる。
【0032】
また、上記態様の業務用調理釜は、前記内釜の下方に設けられた前記外釜の内部の燃焼室と、前記燃焼室に配置されたバーナと、前記外釜の下方に取り付けられた遮熱板と、をさらに備えてもよい。この場合、前記排水管の前記下端部は、前記遮熱板よりも下方に位置する。
【0033】
この構成により、業務用調理釜はガス加熱式の調理釜となり、たとえば、蒸気加熱式の調理釜やIH加熱式の調理釜と比較して、排水管が上下方向に長くなり、ギアユニットの取り付け位置が制限され、排水栓から下方に延びるシャフトが長くなる。しかし、上記態様の業務用調理釜によれば、上記の排水口開閉装置を備えることで、排水口開閉装置の分解洗浄を容易にすることができ、排水栓の開度の段階的な調節を容易にすることができ、排水栓の安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本開示の上記各態様によれば、従来よりも分解洗浄と排水栓の開度の段階的な調節が容易であり、排水栓の安定性を向上させることができる排水口開閉装置と、その排水口開閉装置を備えた業務用調理釜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本開示の一実施形態に係る排水口開閉装置および業務用調理釜の正面図。
図2図1の業務用調理釜の一部を拡大して示す正面図。
図3図1の業務用調理釜の排水口開閉装置の分解斜視図。
図4図3の排水口開閉装置のシャフトの平面図。
図5図3の排水口開閉装置のギアユニットの分解斜視図。
図6図3の排水口開閉装置を組み立てた状態の側面図。
図7図3の業務用調理釜の排水管に取り付けた図6のギアユニットの拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本開示に係る排水口開閉装置および業務用調理釜の実施形態を説明する。
【0037】
図1は、本開示の一実施形態に係る排水口開閉装置100およびそれを備えた業務用調理釜1の正面図である。図2は、図1の業務用調理釜1の一部を拡大して示す正面図である。なお、図1は、業務用調理釜1の一部を透視して表している。
【0038】
本実施形態の業務用調理釜1は、主に、内釜2および外釜3と、内釜2の底部に開口する排水口4と、その排水口4から外釜3の下端よりも下方まで延びる排水管5とを備えている。また、図1に示す例において、業務用調理釜1は、たとえば、内釜2の開口を塞ぐ蓋6と、外釜3の両側に配置されて外釜3を支持する一対の架台7と、架台7に支持された外釜3を傾倒させるためのハンドル8と、を備えている。
【0039】
また、図1および図2に示す例において、業務用調理釜1は、内釜2の下方に設けられた外釜3の内部の燃焼室9と、その燃焼室9に配置されたバーナ10と、外釜3の下方に取り付けられた遮熱板11と、をさらに備えている。すなわち、本実施形態の業務用調理釜1は、ガス加熱式のガス回転釜である。なお、本実施形態の排水口開閉装置100が適用される業務用調理釜1は、ガス回転釜に限定されず、たとえば、蒸気加熱式の蒸気回転釜や、IH加熱式のIH回転釜であってもよい。
【0040】
蓋6は、一方の架台7に支持された回転軸6aを中心に回動して、内釜2の開口を開閉する。一対の架台7は、外釜3の左右に取り付けられた傾倒軸3aを介して、外釜3および内釜2を傾倒可能に支持している。ハンドル8を回転させることで、図示を省略するウォームギアを介して、外釜3の傾倒軸3aを中心として、内釜2および外釜3を傾倒させたり、元の位置に戻したりすることができる。
【0041】
図2に示すように、内釜2と外釜3との間には空間が設けられ、内釜2の下方の外釜3の下部の内側に燃焼室9が形成されている。バーナ10は、燃焼室9に配置され、ガスを燃焼させて内釜2を加熱する。遮熱板11は、燃焼室9の下方に外釜3の下端と間隔をあけて概ね水平に配置され、複数の支持部材11aによって外釜3に固定されている。排水管5は、内釜2の底部の排水口4からまっすぐに下方へ延び、燃焼室9を通過して遮熱板11の下方まで延びている。これにより、排水管5の下端部は、たとえば、遮熱板11よりも下方に位置している。
【0042】
図3は、図1の業務用調理釜1の排水口開閉装置100の分解斜視図である。排水口開閉装置100は、業務用調理釜1に取り付けられ、排水口4を開閉する装置である。排水口開閉装置100は、たとえば、排水口4を塞ぐ排水栓110と、排水栓110の下面から排水管5を通って下方へ延びるシャフト120と、排水管5の下端部に着脱自在に取り付けられてシャフト120を上下に移動させるギアユニット130と、を備えている。
【0043】
排水栓110は、たとえば、全体として円板状に設けられている。排水栓110は、たとえば、円板状の天板部111と、パッキン112と、フランジ状の連結部113とを有している。天板部111は、排水栓110の全閉時に排水口4を閉鎖する。パッキン112は、排水栓110の全閉時に排水口4の内側に係合して排水口4をシールする。連結部113は、下部の中央にシャフト120の上端を連結させる連結穴を有している。
【0044】
シャフト120は、上端部が排水栓110の連結部113に連結され、排水管5内をまっすぐに下方へ延び、下端部が排水管5の下端の開口の近傍に位置している。シャフト120の下端部には、シャフト120の軸方向に間隔をあけて、複数の係合溝121が設けられている。本実施形態において、シャフト120は、たとえば、等間隔に設けられた3つの係合溝121を有している。なお、係合溝121の数は、特に限定されず、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0045】
図3に示す例において、シャフト120の上端部には、たとえば、排水栓110の下方に間隔をあけて複数のフィン122が設けられている。複数のフィン122は、たとえば、シャフト120の軸方向に平行な板状に設けられ、シャフト120の周方向に間隔をあけて配置され、シャフト120の径方向に突出している。また、シャフト120の下端部には、たとえば、上端部と同様に、係合溝121の上方に間隔をあけて、複数のフィン122が設けられている。なお、シャフト120は、フィン122を有しなくてもよい。
【0046】
図4は、図3の排水口開閉装置100のシャフト120と排水管5の平面図である。フィン122は、たとえば、シャフト120の外周面から排水管5の内周面の近傍まで、シャフト120の径方向に放射状に延びている。図4に示す例において、シャフト120は、たとえば、少なくとも上端部において、周方向に等間隔に3つのフィン122を有している。また、図3に示す例において、シャフト120は、下端部においても、上端部と同様に3つのフィン122を有している。なお、シャフト120の周方向に配置されるフィン122の数は、特に限定されず、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0047】
図5は、図3の排水口開閉装置100のギアユニット130の分解斜視図である。図6は、図3の排水口開閉装置100を組み立てた状態の側面図である。図7は、図3の業務用調理釜1の排水管5に取り付けた図6の排水口開閉装置100の拡大図である。なお、図5から図7では、ギアユニット130の一部の部品を省略している。また、図7では、付勢部材133bを模式的に表している。
【0048】
ギアユニット130は、たとえば、ギア131と、一対の側板132と、係合部133と、ガイドプレート134と、を備えている。また、図5に示す例において、ギアユニット130は、締結フック135をさらに備えている。また、図3に示す例において、ギアユニット130は、自在継手136と、回転シャフト137と、回転ツマミ138と、をさらに備えている。
【0049】
ギア131は、シャフト120の軸方向に直交する回転軸131aを有し、回転軸131aを中心に回転する。ギア131は、角が丸められた矩形の歯131bと、角が丸められた矩形の歯溝131cとを有している。ギア131の歯厚は、シャフト120の軸方向における係合溝121の幅よりも僅かに小さくなっている。また、歯131bは、歯先の歯厚が、歯元の歯厚よりも、僅かに厚くなっている。また、歯溝131cの幅は、ギア131の径方向の内側よりも径方向の外側において、僅かに広くなっている。
【0050】
一対の側板132は、ギア131の両側に配置されて、ギア131の回転軸131aを回転可能に支持している。より具体的には、一対の側板132は、ギア131の回転軸131aを挿通させる貫通孔132aを有し、一対のスペーサ132bを介してギア131を挟持している。また、一対の側板132は、それぞれ、ギア131の径方向を長手方向とする長孔132eを備えている。この長孔132eは、係合部133をギア131の径方向に移動可能に支持する。
【0051】
また、一対の側板132は、排水管5に対する取り付け側の上端に、それぞれ、取付溝132cが設けられている。この取付溝132cは、図3に示すように、排水管5の下端部の側面に設けられた長方形の取付孔5aの上端縁を係合させる。また、一対の側板132は、排水管5に対する取り付け側の端部の下端に、段差状の当接部132dが設けられている。この当接部132dは、排水管5の側面に設けられた長方形の取付孔5aの下端縁の外側に当接する。
【0052】
また、一対の側板132は、それぞれ、下端からギア131が配置される内側とは反対の外側へ向けて概ね垂直に曲折されたフランジ部132fを備えている。フランジ部132fは、締結フック135を固定するためのねじを挿通させる貫通孔を有している。
【0053】
係合部133は、ギア131の径方向に移動可能に側板132に支持されるとともに、ギア131の径方向の内側へ向けて付勢されて、ギア131の歯溝131cに係合する。係合部133は、たとえば、係合ピン133aと、付勢部材133bと、係合リング133cと、を備える。
【0054】
係合ピン133aは、一対の側板132の長孔132eに両端部が支持される。付勢部材133bは、係合ピン133aとギア131の回転軸131aにそれぞれ一端と他端が取り付けられて、係合ピン133aをギア131の径方向の内側へ付勢する。付勢部材133bとしては、たとえば、コイルスプリング、板ばね、弾性ゴムなどの弾性部材を用いることができる。
【0055】
係合リング133cは、係合ピン133aの外周に回転可能に装着される円環状の部材である。係合リング133cは、ギア131の歯溝131cの幅よりも直径が大きく、歯溝131cに部分的に係合する。なお、係合部133は、係合リング133cを省略することも可能である。この場合、係合ピン133aの直径をギア131の歯溝131cの幅より大きくしてもよい。
【0056】
ガイドプレート134は、たとえば、連結板134aを介して一方の側板132に連結されて、シャフト120の軸方向へ延びている。ガイドプレート134は、図6および図7に示すように、シャフト120の係合溝121にギア131の歯131bを係合させた状態で、ギア131とは反対側のシャフト120の外面を支持する。ガイドプレート134は、たとえば、シャフト120の軸方向に平行な支持部134bと、シャフト120の軸方向に対して傾斜した傾斜部134cとを有している。
【0057】
支持部134bは、たとえば、少なくともシャフト120の2つ以上の係合溝121にわたってシャフト120の軸方向に平行に延びている。ガイドプレート134の上方側の傾斜部134cは、上方側ほどシャフト120の外周面から離れるように傾斜した平板状に設けられている。ガイドプレート134の下方側の傾斜部134cは、下方側ほどシャフト120の外周面から離れるように傾斜した平板状に設けられている。ガイドプレート134の上方側の傾斜部134cは、シャフト120の下端部をギア131とガイドプレート134との間に配置するときに、シャフト120の下端をギア131とガイドプレート134との間へ案内する。
【0058】
締結フック135は、たとえば、フック135aと、レバー135bと、台座135cとを備えている。フック135aは、たとえば、レバー135bの基端部に軸支されている。レバー135bは、たとえば、レバー135bを軸支する軸よりも基端側で台座135cに軸支されている。台座135cは、たとえば、ねじを挿通させる貫通孔を有し、ねじによって側板132のフランジ部132fに固定される。
【0059】
以上のような構成により、ギアユニット130は、たとえば、以下のように業務用調理釜1の排水管5の下端部に着脱自在に取り付けられる。まず、ガイドプレート134とギア131の一部が、排水管5の下端部の側面に設けられた取付孔5aを通して排水管5の内部に配置される。次に、一対の側板132の上端に設けられた取付溝132cに取付孔5aの上端縁が係合され、一対の側板132の下端に設けられた当接部132dが取付孔5aの下端縁の外側に当接する。
【0060】
次に、たとえば、締結フック135のレバー135bの先端をフック135aの先端側に倒した状態で、フック135aの先端を排水管5の下端の開口から挿入して取付孔5aの下端縁に内側から係合させる。次に、締結フック135のレバー135bの先端をフック135aと反対側に倒して、締結フック135を締結された状態して、フック135aと取付孔5aの下端縁との係合を強固にする。以上により、ギアユニット130は、業務用調理釜1の排水管5の下端部に着脱自在に取り付けられる。
【0061】
図3に示すように、自在継手136は、ギア131の回転軸131aの一端に連結されて、ボルト136aによって回転軸131aに締結されている。回転シャフト137は、自在継手136を介してギア131の回転軸131aに連結されている。回転ツマミ138は、回転シャフト137に対して回り止めがされた状態で、回転シャフト137の先端に取り付けられている。
【0062】
以下、本実施形態の排水口開閉装置100と、その排水口開閉装置100を備えた業務用調理釜1の作用について説明する。
【0063】
本実施形態の排水口開閉装置100は、内釜2および外釜3と、内釜2の底部に開口する排水口4と、その排水口4から外釜3の下端よりも下方まで延びる排水管5とを備える業務用調理釜1に取り付けられ、排水口4を開閉する装置である。排水口開閉装置100は、排水口4を塞ぐ排水栓110と、排水口4から排水管5を通って下方へ延びるシャフト120と、排水管5の下端部に着脱自在に取り付けられてシャフト120を上下に移動させるギアユニット130と、を備えている。ギアユニット130は、シャフト120の軸方向に直交する回転軸131aを中心に回転するギア131と、そのギア131の両側に配置されて回転軸131aを回転可能に支持する一対の側板132と、を備えている。また、ギアユニット130は、ギア131の径方向に移動可能に側板132に支持されるとともにギア131の径方向の内側へ向けて付勢されてギア131の歯溝131cに係合する係合部133と、側板132に連結されてシャフト120の軸方向へ延びるガイドプレート134と、を備えている。シャフト120の下端部は、軸方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝121を有し、その係合溝121にギア131の歯を係合させた状態でギア131とは反対側の外面がガイドプレート134によって支持される。
【0064】
業務用調理釜1は、たとえば、学校、食堂、飲食店、宿泊施設、惣菜製造工場などにおいて、大量の食品を調理するために使用される。業務用調理釜1による食品の調理中は、内釜2の底部に開口する排水口4が、排水口開閉装置100の排水栓110によって塞がれて全閉状態になっている。業務用調理釜1の使用後は、たとえば、内釜2に残った食品残渣を排水口4から排出したり、内釜2を洗浄したりするために、排水口開閉装置100によって排水口4を開状態にする。
【0065】
上記のような構成の排水口開閉装置100によって排水口4を開状態にするには、まず、ギアユニット130のギア131の回転軸131aを所定の一方向に回転させる。これにより、図6および図7に示すように、ギア131の歯がシャフト120の下端の係合溝121に噛み合った状態でギア131が回転して、シャフト120を上方へ移動させる。すると、シャフト120の上端に連結されて業務用調理釜1の内釜2の底部の排水口4を閉鎖する排水栓110が上方へ移動して、排水口4を開状態にする。このときのギア131の回転軸131aの回転方向を開方向ODという。このように、ギア131を開方向ODへ回転させるには、ギア131の歯溝131cと係合部133との係合を解除する必要がある。
【0066】
ここで、係合部133は、ギア131の径方向に移動可能に側板132に支持されるとともに、ギア131の径方向の内側へ向けて付勢されて、ギア131の歯溝131cに係合している。この状態で、回転軸131aを回転させると、ギア131から係合部133に対し、ギア131の径方向外側を向く力が作用する。そして、回転軸131aに作用するトルクが所定のトルクを超え、係合部133に作用する径方向外側を向く力が、係合部133に作用する径方向内側を向く付勢力よりも大きくなると、係合部133が径方向外側へ移動し、ギア131の歯131bを一つ乗り越えて隣の歯溝131cに係合する。
【0067】
その結果、ギア131が所定の角度で段階的に回転し、シャフト120の下端部の上方側の係合溝121に係合した上方側のギア131の歯131bが、シャフト120を上方へ押し上げて、係合溝121から外れる。そして、新たに下方側のギア131の歯131bが下方側の係合溝121に係合する。これを繰り返すことで、シャフト120が段階的に上方へ移動して、排水栓110を段階的に上方へ移動させ、業務用調理釜1の内釜の底部の排水口4の開度が段階的に上昇する。同様に、ギア131の回転軸131aを開方向ODとは逆の閉方向CDへ回転させることで、シャフト120が段階的に下方へ移動して、排水栓110を段階的に下方へ移動させ、業務用調理釜1の内釜2の底部の排水口4の開度が段階的に低下する。これにより、排水口開閉装置100は、排水口4の開度の調節を容易にすることができる。
【0068】
また、ギア131の回転軸131aを閉方向CDへ回転させることで、排水口4が排水栓110によって閉じられて全閉状態になると、シャフト120の下方への移動が停止して、シャフト120の係合溝121によってギア131の回転が規制される。これにより、作業者は、排水口4が排水栓110によって閉じられて全閉状態になったことを、ギア131の回転軸131aが回転しなくなることによって認識することができる。
【0069】
また、ギア131の歯131bとシャフト120の下端部の係合溝121が係合してシャフト120が上下に移動するときには、ギア131とは反対側のシャフト120の下端部の外面がガイドプレート134によって支持される。このガイドプレート134は、ギアユニット130の側板132に連結されてシャフト120の軸方向へ延びている。これにより、排水口開閉装置100は、シャフト120の軸方向に沿う上下の移動時に、シャフト120の振れを防止してシャフト120を安定させ、排水栓110の安定性を向上させることができる。
【0070】
また、排水口開閉装置100の分解洗浄を行うときには、ギア131の回転軸131aを開方向ODへ回転させ、シャフト120および排水栓110を最上方位置まで移動させて、業務用調理釜1の内釜2の底部の排水口4を全開状態にする。この状態では、シャフト120の下端部において軸方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝121は、すべてギア131の歯131bとの係合が外れ、シャフト120の下端がギア131の歯131bによって下方から支持された状態になっている。
【0071】
そのため、排水口開閉装置100の分解洗浄を行う作業者は、たとえば、排水栓110を把持してシャフト120を排水管5から容易に引き抜くことができる。その後、作業者は、内釜2の底部の排水口4から外釜3の下端よりも下方まで延びる排水管5の下端部に着脱自在に取り付けられたギアユニット130を取り外して洗浄することができる。これにより、排水口開閉装置100は、分解洗浄を容易にすることができる。
【0072】
また、本実施形態の排水口開閉装置100は、たとえば図6に示すように、シャフト120の軸方向に平行な複数のフィン122が、少なくともシャフト120の上端部にシャフト120の周方向に間隔をあけて設けられている。これらのフィン122は、たとえば図4に示すように、シャフト120の外周面から排水管5の内周面の近傍までシャフト120の径方向に放射状に延びている。
【0073】
この構成により、シャフト120は、少なくとも上端部から径方向へ放射状に延びる複数のフィン122によって排水管5内での径方向の移動が規制されて径方向の振れが防止される。さらに、シャフト120は、下端部においてギア131と反対側の外面がギアユニット130のガイドプレート134によって支持される。このように、シャフト120の上端部と下端部においてシャフト120の径方向の移動が規制されることで、シャフト120の軸方向に沿う上下の移動時に、シャフト120の振れを防止してシャフト120を安定させ、排水栓110の安定性を向上させることができる。また、業務用調理釜1の内釜2の底部の排水口4から排水管5を介して液体や流動体を排出するときに、シャフト120の軸方向に平行な複数のフィン122による整流効果を期待することができる。
【0074】
なお、シャフト120の上端部は、たとえば、シャフト120の軸方向における中央よりも上方側の部分であり、シャフト120の下端部は、たとえば、シャフト120の軸方向における中央よりも下方側の部分である。また、シャフト120は、たとえば図6に示すように、下端部の複数の係合溝121の上方の外周面から排水管5の内周面の近傍までシャフト120の径方向へ放射状に延びる複数のフィン122を有している。これにより、シャフト120の振れをより確実に防止してシャフト120を安定させ、排水栓110の安定性をより向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態の排水口開閉装置100において、側板132は、ギア131の径方向を長手方向とする長孔132eを備えている。そして、係合部133は、一対の側板132の長孔132eに両端部が支持される係合ピン133aと、その係合ピン133aとギア131の回転軸131aにそれぞれ一端と他端が取り付けられて係合ピン133aをギア131の径方向の内側へ付勢する付勢部材133bと、を備えている。
【0076】
この構成により、ギアユニット130の一対の側板132に設けられた長孔132eに係合部133の係合ピン133aの両端部を挿通させることができる。これにより、一対の側板132によって係合部133を長孔132eの長手方向であるギア131の径方向に移動可能に支持することができる。さらに、付勢部材133bを弾性的に伸長させた状態で、付勢部材133bの一端と他端をそれぞれ係合ピン133aとギア131の回転軸131aに取り付けることができる。これにより、付勢部材133bによって係合ピン133aをギア131の回転軸131aへ向けて付勢して、係合部133をギア131の径方向内側へ向けて付勢することができる。
【0077】
また、本実施形態の排水口開閉装置100において、係合部133は、係合ピン133aの外周に装着される係合リング133cを備えている。この係合リング133cは、ギア131の歯溝131cの幅よりも直径が大きくされ、歯溝131cに部分的に係合している。
【0078】
この構成により、ギアユニット130のギア131を回転させると、ギア131の歯溝131cに係合した係合部133がギア131の径方向外側へ移動して、係合部133がギア131の歯131bを一つ乗り越えて隣の歯溝に係合する。このとき、係合部133の係合ピン133aの外周で係合リング133cが回転する。これにより、ギア131の歯溝131cと係合部133との係合の解除を容易にして、ギア131の回転を容易にすることができる。また、係合リング133cは、ギア131の歯溝131cの幅よりも直径が大きく、歯溝131cに部分的に係合しているので、ギア131の歯溝131cと係合部133との係合の解除をさらに容易にして、ギア131の回転をさらに容易にすることができる。
【0079】
また、本実施形態の排水口開閉装置100において、ギアユニット130は、一対の側板132の下端に連結された締結フック135をさらに備えている。そして、ギアユニット130は、図7に示すように、少なくともガイドプレート134とギア131の一部が、排水管5の下端部の側面に設けられた取付孔5aを通して、排水管5の内部に配置される。また、一対の側板132の上端に設けられた取付溝132cに、取付孔5aの上端縁が係合される。また、図3および図5に示す締結フック135の先端が、排水管5の下端の開口から挿入されて取付孔5aの下端縁に係合され、締結フック135が締結される。このような状態で、ギアユニット130は、排水管5の下端部に着脱自在に取り付けられる。
【0080】
この構成により、ギアユニット130は、締結フック135の締結を解除することで、締結フック135の先端が排水管5の取付孔5aの下端縁から外れる。さらに、締結フック135の先端を排水管5の下端の開口の下方へ移動させながら、排水管5の取付孔5aの上端縁に係合した一対の側板132の取付溝132cを支点としてギアユニット130を上方に傾けていくと、一対の側板132の下端部が排水管5の外面から離れる。その状態で、ギアユニット130を斜め下方に排水管5から離すように移動させると、排水管5の取付孔5aの上端縁と、ギアユニット130の一対の側板132の上端に設けられた取付溝132cとの係合が解除される。その後、ギアユニット130を排水管5からさらに離すように移動させると、排水管5の取付孔5aを通して排水管5の内部に挿入されたガイドプレート134とギア131の一部を取り出して、ギアユニット130を排水管5から取り外すことができる。
【0081】
一方、ギアユニット130を排水管5に取り付けるときには、まず、排水管5の下端部の取付孔5aにギアユニット130のガイドプレート134とギア131の一部を挿入し、一対の側板132の上端に設けられた取付溝132cを排水管5の下端部の取付孔5aの上端縁に係合させる。そして、取付溝132cを支点としてギアユニット130を下方へ傾けるように移動させて、一対の側板132の下端部の当接部132dを排水管5の取付孔5aの下端縁の外側に当接させる。その状態で、一対の側板132の下端に連結された締結フック135の先端を、排水管5の下端の開口から挿入し、排水管5の内部から一対の当接部132dの間で取付孔5aの下端縁の外側に引っ掛けるようにして係合させる。そして、レバー135bをフック135aと反対側に倒して締結フック135を締結する。これにより、ギアユニット130を排水管5の下端に着脱自在に取り付けることができる。
【0082】
さらに、業務用調理釜1の内釜2の底部の排水口4にシャフト120を挿入して、シャフト120の下端をギア131とガイドプレート134との間に配置して、ギア131のガイドプレート134を閉方向CDに回転させる。これにより、シャフト120の下端部の係合溝121とギア131の歯が係合する。以上により、業務用調理釜1に対する排水口開閉装置100の取り付けが完了する。したがって、本実施形態の排水口開閉装置100によれば、業務用調理釜1の排水管5に対するギアユニット130の取り付けと取り外しを容易にすることができ、業務用調理釜1に対する排水口開閉装置100の取り付けを容易にすることができる。
【0083】
また、本実施形態の排水口開閉装置100において、ギアユニット130は、ギア131の回転軸131aの一端に連結された自在継手136と、この自在継手136を介してギア131の回転軸131aに連結された回転シャフト137と、この回転シャフト137の先端に取り付けられた回転ツマミ138と、を備えている。
【0084】
この構成により、業務用調理釜1の外釜3の下端よりも下方まで延びる排水管5の下端部に取り付けられたギアユニット130の操作を容易にすることができる。より具体的には、ギアユニット130のギア131の回転軸131aの一端に自在継手136を介して連結された回転シャフト137を、外釜3の径方向の外側かつ上方へ向けて延ばすことで、回転ツマミ138を作業者が操作しやすい位置に配置することが可能になる。そして、作業者が回転ツマミ138を回転させることで、ギアユニット130のギア131の回転軸131aを開方向ODまたは閉方向CDへ回転させて、排水栓110によって業務用調理釜1の底部の排水口4の開度を段階的に調整することができる。したがって、本実施形態の排水口開閉装置100によれば、排水口4の開度の段階的な調節をより容易にすることができる。
【0085】
また、本実施形態の業務用調理釜1は、内釜2および外釜3と、内釜2の底部に開口する排水口4と、その排水口4から外釜3の下端よりも下方まで延びる排水管5と、排水口4を開閉する排水口開閉装置100と、を備えている。排水口開閉装置100は、排水口4を塞ぐ排水栓110と、排水口4から排水管5を通って下方へ延びるシャフト120と、排水管5の下端部に着脱自在に取り付けられてシャフト120を上下に移動させるギアユニット130と、を備えている。ギアユニット130は、シャフト120の軸方向に直交する回転軸131aを中心に回転するギア131と、そのギア131の両側に配置されて回転軸131aを回転可能に支持する一対の側板132と、を備えている。また、ギアユニット130は、ギア131の径方向に移動可能に側板132に支持されるとともにギア131の径方向の内側へ向けて付勢されてギア131の歯溝131cに係合する係合部133と、側板132に連結されてシャフト120の軸方向へ延びるガイドプレート134と、を備えている。シャフト120の下端部は、軸方向に間隔をあけて設けられた複数の係合溝121を有し、その係合溝121にギア131の歯を係合させた状態でギア131とは反対側の外面がガイドプレート134によって支持される。
【0086】
本実施形態の業務用調理釜1によれば、本実施形態の排水口開閉装置100を備えることで、前述の本実施形態の排水口開閉装置100と同様の効果を奏することができる。
【0087】
また、本実施形態の業務用調理釜1は、内釜2の下方に設けられた外釜3の内部の燃焼室9と、その燃焼室9に配置されたバーナ10と、外釜3の下方に取り付けられた遮熱板11と、をさらに備えている。そして、排水管5の下端部は、遮熱板11よりも下方に位置している。
【0088】
このような構成により、本実施形態の業務用調理釜1は、たとえば、蒸気加熱式の調理釜やIH加熱式の調理釜と比較して排水管5が上下方向に長くなるガス調理釜に特有の構成を有している。そのため、ギアユニット130の取り付け位置が制限され、排水栓110から下方に延びるシャフト120が長くなる。しかし、本実施形態の業務用調理釜1によれば、本実施形態の排水口開閉装置100を備えることで、排水口開閉装置100の分解洗浄を容易にすることができ、排水口4の開度の段階的な調節を容易にすることができ、排水栓110の安定性を向上させることができる。
【0089】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来よりも分解洗浄と排水口4の開度の段階的な調節が容易で、排水栓110の安定性を向上させることができる排水口開閉装置100と、その排水口開閉装置100を備えた業務用調理釜1を提供することができる。
【0090】
以上、図面を用いて本開示に係る排水口開閉装置および業務用調理釜の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
1 業務用調理釜
2 内釜
3 外釜
4 排水口
5 排水管
5a 取付孔
9 燃焼室
10 バーナ
11 遮熱板
100 排水口開閉装置
110 排水栓
120 シャフト
121 係合溝
122 フィン
130 ギアユニット
131 ギア
131a 回転軸
131b 歯
131c 歯溝
132 側板
132c 取付溝
132e 長孔
133a 係合ピン
133b 付勢部材
133c 係合リング
134 ガイドプレート
135 締結フック
136 自在継手
137 回転シャフト
138 回転ツマミ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7