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特許7411229ポリエステル樹脂シート用改質剤、ポリエステル樹脂組成物、ポリエステル樹脂シート、積層シート及び成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂シート用改質剤、ポリエステル樹脂組成物、ポリエステル樹脂シート、積層シート及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20231228BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20231228BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231228BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20231228BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/105
B32B27/36
C08K3/34
C08K5/103
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020214251
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022100092
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-07-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】邑上 祐一郎
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-111921(JP,A)
【文献】特開2010-215827(JP,A)
【文献】特開2004-268940(JP,A)
【文献】特開2017-145280(JP,A)
【文献】特開2004-331690(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0012804(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105482298(CN,A)
【文献】特開2009-179693(JP,A)
【文献】特表2007-526144(JP,A)
【文献】特開2007-126500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂シートの製造に用いられる改質剤であって、
下記の成分(A)及び下記の成分(B)を含有し、前記成分(B)がタルク及びゼオライトから選ばれる少なくとも1つを含み、前記改質剤中にカルシウム元素を0.1~3.0質量%の割合で含有することを特徴とするポリエステル樹脂シート用改質剤。
成分(A):3~6価の多価アルコールと、炭素原子数が8~22の炭化水素基を有する脂肪酸とのエステル化合物。
成分(B):カルシウム元素を含む化合物。
【請求項2】
前記成分(A)の形成に用いる前記多価アルコールが、ペンタエリスリトール及びグリセリンから選ばれる少なくとも一つを含む請求項1に記載のポリエステル樹脂シート用改質剤。
【請求項3】
前記成分(A)の形成に用いる前記脂肪酸が、前記炭素原子数が12~18の炭化水素基を有するものである請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂シート用改質剤。
【請求項4】
前記成分(A)及び前記成分(B)の含有割合の合計を100質量%とした場合に、前記成分(A)を40~80質量%及び前記成分(B)を20~60質量%の割合で含有する請求項1から3のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂シート用改質剤。
【請求項5】
ポリエステル樹脂シートの製造に用いられる樹脂組成物であって、
ポリエステル樹脂と、請求項1からのいずれか一項に記載のポリエステル樹脂シート用改質剤とを含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂の含有割合を100質量部とした場合に、前記ポリエステル樹脂シート用改質剤を0.1~45質量部の割合で含有する請求項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂の含有量を100質量部とした場合に、前記ポリエステル樹脂シート用改質剤を10~45質量部の割合で含有する請求項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
ポリエステル樹脂と、請求項1からのいずれか一項に記載のポリエステル樹脂シート用改質剤とを含有することを特徴とするポリエステル樹脂シート。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂の含有割合を100質量部とした場合に、前記ポリエステル樹脂シート用改質剤を0.1~1.5質量部の割合で含有する請求項に記載のポリエステル樹脂シート。
【請求項10】
請求項又はに記載のポリエステル樹脂シートから成る樹脂層と、他の樹脂層とを備えることを特徴とする積層シート。
【請求項11】
請求項又はに記載のポリエステル樹脂シートを、成形加工に供することを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の積層シートを、成形加工に供することを特徴とする成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性及び表面の滑り性に優れたポリエステル樹脂シートの製造に用いられる改質剤、及び、それを含むポリエステル樹脂組成物、ポリエステル樹脂シート、積層シート、並びに、成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル樹脂からなるフィルム又はシートは透明性に優れており、折り曲げ、打ち抜き裁断等の加工を容易に行うことが可能であるため、例えば、フィルム又はシートを熱成形に供することで、食品、薬品、文具、各種部品の容器、蓋製品等が製造されている。これらの成形体を製造する場合、所定の幅及び長さに調整され、多数枚が積み重ねられたポリエステルシートの山から、1枚ずつ熱成形装置に供給されて加工される。しかしながら、シートの滑り性が十分でなかったり、ブロッキングしていたりすると、不良品が得られたり、生産性が低下することとなる。
また、加工により形状付与された、例えば、容器は、通常、多数個が積み重ねられて運搬され、その後、容器が1個ずつ取り出されてから、容器内に物品が収容される。しかしながら、樹脂素材の滑り性が十分でなかったり、ブロッキングしていたりすると、複数の容器が重なったまま取り出されることがある。
【0003】
このような問題を解決するため、ポリエステルシートの表面、ひいては成形体の表面を滑り易くするよう表面特性の改良が試みられており、以下の技術が知られている。
特許文献1には、平均粒径8~50ミクロンの易滑剤粒子(シリカ等)を0.04~1重量%と、ポリエステル99.0~99.96重量%を配合した組成物からなる無延伸又は低倍率延伸ポリエステルシートが開示されている。特許文献2には、カルシウム元素およびリン元素を含有する内部粒子と50~750ppmのシリカ粒子を含有し、カルシウム元素の含有量が0.01~0.1重量%で、リン元素の含有量がカルシウム元素に対する元素量比で0.5~2倍当量であるポリエステルからなり、最大径が5μm以下の突起がフィルム表面に20~60個/μmの密度で存在することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。また、特許文献3には、少なくとも3層以上の積層構造を有し、一方のフィルム表面の表面粗さ(Ra)が0.001~0.005μmの範囲内であり、当該表面を構成する層中に酸化アルミニウム粒子を1000ppm以上含有し、当該表面に離型層、グリーンシートが順次設けられており、もう一方のフィルム表面の表面粗さ(Ra)が0.010~0.030μmの範囲内であるグリーンシート用離型積層ポリエステルフィルムであり、当該グリーンシート表面における、深さ0.2μm以上の凹みが1個以下/100cmであり、当該表面を構成する層中に炭素-炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物により架橋構造を達成したポリスチレン粒子を含有する積層ポリエステルフィルムであることを特徴とするグリーンシート用離型積層ポリエステルフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-17598号公報
【文献】特開平6-313095号公報
【文献】特開2016-187963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ポリエステル樹脂と併用して、透明性を損なわずに表面の滑り性に優れたポリエステル樹脂シートを与える改質剤、及び、それを含むポリエステル樹脂組成物、ポリエステル樹脂シート、積層シート、並びに、成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の脂肪酸エステルを含有し、カルシウム元素の含有割合が、改質剤に対して0.1~3.0質量%である改質剤を、ポリエステル樹脂と併用して得られた樹脂組成物を用いると、透明性を損なわずに表面の滑り性に優れたポリエステル樹脂シートが得られることを見出した。
【0007】
本発明は、以下に示される。
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤は、ポリエステル樹脂シートの製造に用いられる改質剤であって、成分(A)として、3~6価の多価アルコールと、炭素原子数が8~22の炭化水素基を有する脂肪酸とのエステル化合物、及び、成分(B)として、カルシウム元素を含む化合物であって、タルク及びゼオライトから選ばれる少なくとも一つを含有し、カルシウム元素の含有割合は、改質剤に対して0.1~3.0質量%であることを特徴とする。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂シートの製造に用いられる樹脂組成物であって、ポリエステル樹脂と、上記本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤とを含有することを特徴とする。
本発明のポリエステル樹脂シートは、ポリエステル樹脂と、上記本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤とを含有することを特徴とする。
本発明の積層シートは、上記本発明のポリエステル樹脂シートからなる樹脂層と、他の樹脂層とを備えることを特徴とする。
本発明の成形体の製造方法は、上記本発明のポリエステル樹脂シート又は積層シートを、成形加工に供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明において、ポリエステル樹脂シート用改質剤をポリエステル樹脂と併用してポリエステル樹脂組成物を調製した場合には、このポリエステル樹脂組成物を、透明性及び表面の滑り性に優れたポリエステル樹脂シートの製造に好適な成形材料とすることができる。ポリエステル樹脂組成物は、そのまま、ポリエステル樹脂シートの製造に用いるものであってよいし、ポリエステル樹脂に対する樹脂シート用改質剤の含有割合を高くした構成(マスターバッチ)とすることもできるので、このマスターバッチと、ポリエステル樹脂とを併用してポリエステル樹脂シートを効率よく製造することができる。また、本発明の積層シートは、透明性及び表面の滑り性に優れたポリエステル樹脂シートからなる樹脂層を備えるため、この樹脂層表面において少なくとも滑り性に優れる。
本発明のポリエステル樹脂シート又は積層シートを、従来、公知の成形加工に供することにより、所定形状の成形体を容易に得ることができる。得られる成形体の複数を重ねた場合には、ブロッキングの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤は、ポリエステル樹脂シートの製造に用いられる改質剤であって、成分(A)3~6価の多価アルコールと、炭素原子数が8~22の炭化水素基を有する脂肪酸とのエステル化合物、及び、成分(B)カルシウム元素を含む化合物を含有する。
【0010】
上記成分(A)は、多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物であり、好ましくは、炭素原子と、水素原子と、酸素原子とからなり、エステル結合を含む有機化合物である。
【0011】
上記成分(A)の形成に用いられる多価アルコールは、3~6個のヒドロキシ基を有する化合物である。
【0012】
上記多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ソルビタン、ソルビトール、エリトリトール、マンニトール、ガラクチトール、イディトール、タリトール、アリトール等が挙げられる。これらのうち、グリセリン及びペンタエリスリトールが好ましい。
【0013】
上記成分(A)の形成に用いられる脂肪酸は、アルキル基の炭素原子数が8~22である、カルボキシ基を有する化合物である。上記の好ましい態様の成分(A)とするために、この脂肪酸は、炭素・炭素不飽和結合を含んでもよい脂肪族化合物であり、即ち、脂肪族の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素における1個の水素原子がカルボキシ基に置換された化合物である。
【0014】
上記脂肪酸としては、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、9-ヘキサデセン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、cis-9-オクタデセン酸、11-オクタデセン酸、エイコサン酸、ドコサン酸等が挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素原子数が12~18の飽和脂肪酸である、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸及びオクタデカン酸が好ましい。
【0015】
上記成分(A)は、上記の多価アルコールと脂肪酸とのエステル化物であり、本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤に含まれる成分(A)は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0016】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤は、カルシウム元素を含有する。ポリエステル樹脂シート用改質剤におけるカルシウム元素の含有割合(含有量)は、当該ポリエステル樹脂シート用改質剤全体を100質量%とした場合に、0.1~3.0質量%であり、好ましくは0.3~3.0質量%、特に好ましくは0.5~2.0質量%である。
ポリエステル樹脂シート用改質剤に含まれるカルシウム元素は、上記成分(B)のカルシウム元素を有する化合物に由来するカルシウム元素でもよく、それ以外のカルシウム元素でもよい。
本発明において、ポリエステル樹脂シート用改質剤におけるカルシウム元素の含有割合が上記範囲内であれば、ポリエステル樹脂と併用してポリエステル樹脂組成物とすることにより、透明性を損なわずに表面の滑り性に優れたポリエステル樹脂シート等の成形体を容易に製造することができる。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤におけるカルシウム元素の含有量の定量方法としては、通常の測定方法を適用することができる。例えば、蛍光X線分析法などが挙げられる。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤において、上記成分(B)のカルシウム元素を含有する化合物は、タルク及びゼオライトから選ばれる少なくとも一つを含むものであれば特に限定されず、更に無機化合物及び有機化合物のいずれを含んでもよい。
【0019】
上記成分(B)は、好ましくは粒子状であり、レーザー・回折散乱法による平均粒径は、透明性を損なわずに表面の滑り性に優れたポリエステル樹脂シートが得られることから、タルクの場合、好ましくは0.5~20μmであり、ゼオライトの場合、1~10μmである。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤において、上記成分(A)及び成分(B)の含有割合は、これらの含有量の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは40~80質量%及び20~60質量%である。
【0021】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤は、樹脂成形体の透明性が得られる限りにおいて、必要に応じて、他の成分を含有することができ、例えば、上記成分(B)を除く充填剤(以下、「他の充填剤」という)、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、結晶核剤等を含有することができる。
【0022】
他の充填剤としては、シリカ、タルク(但し、カルシウム元素を含まない)、珪藻土、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、酸化鉄、フェライト、ゼオライト、パイロフィライト、スメクタイト、バーミキュライト、ウォラストナイト、マイカ、クレー等が挙げられる。尚、本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤に含まれる他の充填剤は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤の好ましい構成は、以下のとおりである。
(1)成分(A)及び成分(B)からなる改質剤
(2)成分(A)、成分(B)及び他の充填剤とからなる改質剤
【0024】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤は、好ましくは、成分(A)と、成分(B)と、必要に応じて併用される他の成分とを、従来、公知の混合装置を用いて混合することにより、製造することができる。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤は、上記成分(A)と、上記成分(B)とを含有し、透明であり、その表面が滑らかなポリエステル樹脂シート等の成形体を与える樹脂組成物の製造原料として好適である。
【0026】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂シートの製造に用いられるものであって、ポリエステル樹脂と、本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤とを含有するものである。本発明の樹脂組成物において、本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤の添加量に制限はないが、ポリエステル樹脂の含有量を100質量部とした場合に、本発明の改質剤を、好ましくは0.1~45質量部の割合で含有するものである。ポリエステル樹脂の含有量を100質量部とした場合に、本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤を10~45質量部の割合で含有する本発明のポリエステル樹脂組成物は、マスターバッチとすることができる。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂組成物に含まれるポリエステル樹脂シート用改質剤及びポリエステル樹脂は、いずれも、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0028】
上記ポリエステル樹脂は、熱可塑性樹脂であり、芳香族ポリエステル樹脂及び脂肪族ポリエステル樹脂のいずれでもよく、両者の組み合わせでもよい。また、これらのポリエステル樹脂は、ホモポリエステル及びコポリエステルのいずれでもよい。
【0029】
上記ポリエステル樹脂は、通常、ジカルボン酸成分と、ジヒドロキシ成分との重縮合、ジカルボン酸成分と、ジヒドロキシ成分と、オキシカルボン酸成分との重縮合、ラクトン成分の開環重合等により得られた樹脂である。
【0030】
上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(2,6-ナフタレンジカルボン酸等)、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸等の炭素原子数8~16程度の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体等、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等の炭素原子数8~12程度の脂環式ジカルボン酸又はその誘導体等、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素原子数2~40程度の脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体等が挙げられる。
【0031】
また、上記ジヒドロキシ成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2~12程度のアルキレンジオール等の脂肪族アルキレンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールAに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した付加体(ジエトキシ化ビスフェノールA等)等の芳香族ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0032】
上記オキシカルボン酸成分としては、乳酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-n-酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0033】
上記ラクトン成分としては、ε-プロピオラクトン、δ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0034】
上記ポリエステル樹脂が芳香族ホモポリエステルの場合、好ましくは、ジカルボン酸成分と、ジヒドロキシ成分との重縮合物である。
ジカルボン酸成分は、好ましくは、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等であり、ジヒドロキシ成分は、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等である。代表的なホモポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン-1,4-ジメチルテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等である。これらのうち、PETが特に好ましい。
【0035】
また、上記ポリエステル樹脂が芳香族コポリエステルの場合、好ましくは、ジカルボン酸成分と、ジヒドロキシ成分と、オキシカルボン酸成分との重縮合物である。
ジカルボン酸成分は、好ましくは、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等から選ばれた1種又は2種以上であり、ジヒドロキシ成分は、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上であり、オキシカルボン酸は、例えば、p-オキシ安息香酸等である。代表的なコポリエステル樹脂は、テレフタル酸と、エチレングリコールと、4-シクロヘキサンジメタノールとからなる縮合物(「PETG樹脂」といわれることがある)、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート樹脂等である。
【0036】
上記ポリエステル樹脂が脂肪族ポリエステル樹脂である場合、環状ラクトンの開環重合反応、脂肪族ヒドロキシカルボン酸(オキシカルボン酸)の重縮合反応、脂肪族二塩基酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω-ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等)及び/又はそのエステル形成性化合物(コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル等の、分子中にエステル結合形成性の官能基を2個以上有する脂肪族化合物)と、脂肪族ジオール(エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等)との重縮合反応等により得られた樹脂であることが好ましい。
【0037】
環状ラクトンの開環重合反応により得られた脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ(ε-プロピオラクトン)樹脂、ポリ(δ-ブチロラクトン)樹脂、ポリ(β-ブチロラクトン)樹脂、ポリ(γ-ブチロラクトン)樹脂、ポリ(ピバロラクトン)樹脂、ポリ(δ-バレロラクトン)樹脂、ポリ(ε-カプロラクトン)樹脂等が挙げられる。
【0038】
脂肪族ヒドロキシカルボン酸(オキシカルボン酸)の重縮合反応により得られた脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)樹脂、ポリ(4-ヒドロキシ酪酸)樹脂、ポリ(4-ヒドロキシ吉草酸)樹脂等が挙げられる。
【0039】
上記ポリエステル樹脂は、芳香族ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0040】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂シートの透明性が得られる限りにおいて、必要に応じて、他の成分を含有することができ、例えば、成分(B)を除く充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、結晶核剤等を含有することができる。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂組成物がマスターバッチである場合、例えば、円柱状、角柱状、球状、楕円球状等を有するものとすることができる。
【0042】
上記マスターバッチは、上記本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤と、ポリエステル樹脂とを含有する混合物を加熱して溶融混練物とした後、これを、従来、公知の押出法に供することにより製造することができる。具体的な製造方法は、以下に示される。
(1)上記本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤と、ポリエステル樹脂とを、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機に投入して混合した後、単軸押出機、多軸押出機等の押出機により溶融混練しつつ造粒してマスターバッチを得る方法
(2)ポリエステル樹脂を単軸押出機や多軸押出機等の押出機により溶融状態としたところへ、上記本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤、添加剤等をサイドフィード又は液状注入により混合し、溶融混練しつつ造粒してマスターバッチを得る方法
【0043】
本発明のポリエステル樹脂シートは、上記本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤を含む。透明であり、その表面が滑らかなポリエステル樹脂シートにおけるポリエステル樹脂シート用改質剤は好ましい割合で含有される。即ち、ポリエステル樹脂シート用改質剤は、ポリエステル樹脂の含有量を100質量部とした場合に、好ましくは0.1~1.5質量部の割合で含有される。成分(A)は、0.02~1.2質量部、好ましくは0.04~1.2質量部の割合で含有される。カルシウム元素は、0.0001~0.045質量部、好ましくは0.0003~0.045質量部、より好ましくは0.0005~0.03質量部の割合で含有される。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂シートの厚さは、特に限定されないが、好ましくは100~800μm、より好ましくは300~500μmである。
【0045】
本発明のポリエステル樹脂シートは、透明であり、JIS K 7136に準ずる方法のHAZE測定に供した場合、HAZEは、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。従って、このポリエステル樹脂シートを通して反対側の物品の視認性に優れる。
【0046】
また、本発明のポリエステル樹脂シートを、JIS K 7125に準ずる方法の静摩擦係数測定に供した場合、静摩擦係数は、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下である。本発明のポリエステル樹脂シートは、上記の性質を有することから、その表面が滑らかであり、複数の樹脂シートが重なり合っている場合に、ブロッキングを起こすことなく、1枚ずつ容易に取り出すことができる。
【0047】
本発明のポリエステル樹脂シートは、上記本発明のポリエステル樹脂組成物を、カレンダー成形、Tダイ成形、インフレーション成形、ブロー成形等の、従来、公知の成形手段に供することにより、製造することができ、必要に応じて、延伸加工を行うことができる。その後、本発明のポリエステル樹脂シートを、真空成形、圧空成形、打ち抜き加工、組み立て加工等の2次加工に供することにより、容器等の所定形状を有する成形体を製造することができる。
【0048】
また、上記本発明のポリエステル樹脂シートを用いて、多層構造の樹脂シート、即ち、積層シートを製造することができる。本発明においては、透明であり、その表面が滑らかとなる樹脂構成のポリエステル樹脂シートと、他の樹脂層とからなる積層シートであり、例えば、1面側及び他面側の表面層がいずれも、本発明のポリエステル樹脂シートからなるものとし、中間層が他の樹脂組成である3層型積層シートとすることができる。このような態様の積層シートにおいて、HAZEが、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であると、シートを通して反対側の物品の視認性に優れる。本発明の積層シートは、3層型積層シートに限定されず、2層型積層シート又は4層以上からなる積層シートであってもよい。
【0049】
上記3層型積層シートは、共押出法、ラミネート法等により製造することができる。このうち、共押出法の場合、1面側の表面層、及び、他面側の表面層を形成する、ポリエステル樹脂と、上記本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤とを含有する成形材料(熱可塑性樹脂組成物)と、中間層を形成することとなる成形材料(熱可塑性樹脂組成物)とを、インフレーション成形又はTダイ成形に供する方法を用いることができ、必要に応じて、延伸させることもできる。また、ラミネート法としては、ドライラミネート法、サンドラミネート法、押出ラミネート法等が挙げられる。これらのラミネート法により製造する場合には、1面側の表面層、及び、他面側の表面層を形成するための、ポリエステル樹脂と、上記本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤とを含有するポリエステル樹脂シートと、中間層を形成するための樹脂フィルムとの間に、接着剤を介在させた状態でラミネートすることができる。
【0050】
本発明の積層シートを、上記本発明のポリエステル樹脂シートの場合と同様に、真空成形、圧空成形、打ち抜き加工、組み立て加工等の2次加工に供することにより、容器等の所定形状を有する成形体を製造することができる。
【実施例
【0051】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、部及び%は、特記しない限り、質量基準である。
【0052】
1.ポリエステル樹脂シート用改質剤の原料及びカルシウム元素の定量
ポリエステル樹脂シート用改質剤の製造に用いた原料を以下に示す。充填剤の平均粒径は、レーザー回折・散乱法による測定値である。
【0053】
(1)脂肪酸エステル
A-1:ペンタエリスリトールテトラステアレート
A-2:グリセリントリステアレート
A-3:ソルビタントリステアレート
A-4:グリセリンモノステアレート
A-5:ジグリセリンモノラウレート
A-6:ペンタエリスリトールジステアレート
a-1:エチレングリコールモノステアレート
a-2:デカグリセリンモノラウレート
【0054】
(2)充填剤(カルシウム元素を含む化合物)
B-1:ゼオライト粒子(平均粒径:7μm、Ca量:5.73%)
B-2:ゼオライト粒子(平均粒径:5μm、Ca量:5.20%)
B-3:ゼオライト粒子(平均粒径:3μm、Ca量:5.26%)
B-4:ゼオライト粒子(平均粒径:10μm、Ca量:5.40%)
B-5:タルク粒子(平均粒径:4μm、Ca量:0.19%)
B-6:タルク粒子(平均粒径:6μm、Ca量:0.29%)
B-7:タルク粒子(平均粒径:10μm、Ca量:0.10%)
B-8:タルク粒子(平均粒径:15μm、Ca量:0.27%)
B-9:ゼオライト粒子(平均粒径:12μm、Ca量:5.54%)
B-10:ゼオライト粒子(平均粒径:0.5μm、Ca量:5.20%)
【0055】
(3)他の充填剤
C-1:シリカ粒子(平均粒径:3μm)
C-2:タルク粒子(平均粒径:8μm、Ca非含有)
C-3:シリカ粒子(平均粒径:8μm)
C-4:シリカ粒子(平均粒径:3μm)
C-5:シリカ粒子(平均粒径:0.5μm)
【0056】
(4)カルシウム元素の定量
実施例及び比較例におけるポリエステル樹脂シート用改質剤のカルシウム元素の含有割合(含有量)は、株式会社リガク製蛍光X線分析装置「ZSX101e」により定量した。
【0057】
2.ポリエステル樹脂シート用改質剤の製造
実施例1-1
38.5部の脂肪酸エステルA-1と、7.7部のゼオライト粒子B-1と、30.8部のタルク粒子B-5と、7.7部のシリカ粒子C-1と、15.3部のタルク粒子C-2とをミキサーにより撹拌して、均一混合物からなるポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-1」という)を得た(表1参照)。この表1には、本発明に係る成分(A)及び(B)の合計を100%としたときの割合と、ポリエステル樹脂シート用改質剤に含まれるカルシウム元素の割合(Ca量)とを併記した。
【0058】
実施例1-2
50部の脂肪酸エステルA-1と、15部のゼオライト粒子B-1と、35部のタルク粒子C-2とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-2」という)を得た(表1参照)。
【0059】
実施例1-3
60部の脂肪酸エステルA-1と、2.5部の脂肪酸エステルA-4と、9.4部のゼオライト粒子B-1と、28.1部のゼオライト粒子B-2とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-3」という)を得た(表1参照)。
【0060】
実施例1-4
60部の脂肪酸エステルA-2と、25部のゼオライト粒子B-2と、15部のシリカ粒子C-3とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-4」という)を得た(表1参照)。
【0061】
実施例1-5
40部の脂肪酸エステルA-2と、30部のゼオライト粒子B-4と、30部のタルク粒子B-7とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-5」という)を得た(表1参照)。
【0062】
実施例1-6
59部の脂肪酸エステルA-1と、6.3部のゼオライト粒子B-3と、34.7部のタルク粒子B-6とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-6」という)を得た(表1参照)。
【0063】
実施例1-7
40.5部の脂肪酸エステルA-1と、46.5部のゼオライト粒子B-3と、13部のタルク粒子B-8とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-7」という)を得た(表1参照)。
【0064】
実施例1-8
27.3部の脂肪酸エステルA-2と、31.8部のゼオライト粒子B-3と、40.9部のタルク粒子B-5とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-8」という)を得た(表1参照)。
【0065】
実施例1-9
70部の脂肪酸エステルA-2と、3.7部の脂肪酸エステルA-5と、26.3部のゼオライト粒子B-9とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-9」という)を得た(表1参照)。
【0066】
実施例1-10
78.6部の脂肪酸エステルA-2と、1.4部のゼオライト粒子B-1と、20部のタルク粒子B-5とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-10」という)を得た(表1参照)。
【0067】
実施例1-11
61.1部の脂肪酸エステルA-3と、38.9部のゼオライト粒子B-10とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤E-11」という)を得た(表1参照)。
【0068】
比較例1-1
47.4部の脂肪酸エステルA-1と、1.4部のゼオライト粒子B-1と、51.2部のシリカ粒子C-4とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤e-1」という)を得た(表1参照)。
【0069】
比較例1-2
25部の脂肪酸エステルA-6と、75部のゼオライト粒子B-10とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤e-2」という)を得た(表1参照)。
【0070】
比較例1-3
62.5部の脂肪酸エステルa-1と、18.75部のゼオライト粒子B-1と、18.75部のシリカ粒子C-3とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤e-3」という)を得た(表1参照)。
【0071】
比較例1-4
30.3部の脂肪酸エステルa-2と、15.15部のゼオライト粒子B-2と、14.55部のタルク粒子C-2と、40部のシリカ粒子C-5とを用いて、実施例1-1と同様の操作を行いポリエステル樹脂シート用改質剤(以下、「樹脂シート用改質剤e-4」という)を得た(表1参照)。
【0072】
【表1】
【0073】
3.マスターバッチ(樹脂組成物)の製造
上記で得られたポリエステル樹脂シート用改質剤と、中国石化儀征化繊社製ポリエチレンテレフタレート「BG-80」(商品名)とを用いて、マスターバッチ(樹脂組成物)を製造した。
【0074】
実施例2-1
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、35.1部の樹脂シート用改質剤E-1とを、タンブラーにより撹拌した後、日本製鋼所社製二軸混練押出機「TEX30α」(型式名)を用いて、250℃~270℃で溶融混練して、マスターバッチM-1を得た(表2参照)。
【0075】
実施例2-2
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、25.0部の樹脂シート用改質剤E-2とを用いて、実施例2-1と同様の操作を行い、マスターバッチM-2を得た(表2参照)。
【0076】
実施例2-3
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、25.0部の樹脂シート用改質剤E-4とを用いて、実施例2-1と同様の操作を行い、マスターバッチM-3を得た(表2参照)。
【0077】
実施例2-4
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、25.0部の樹脂シート用改質剤E-5とを用いて、実施例2-1と同様の操作を行い、マスターバッチM-4を得た(表2参照)。
【0078】
実施例2-5
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、22.7部の樹脂シート用改質剤E-7とを用いて、実施例2-1と同様の操作を行い、マスターバッチM-5を得た(表2参照)。
【0079】
実施例2-6
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、22.0部の樹脂シート用改質剤E-11とを用いて、実施例2-1と同様の操作を行い、マスターバッチM-6を得た(表2参照)。
【0080】
【表2】
【0081】
4.樹脂組成物の製造並びにポリエステル樹脂シートの製造及びその評価
上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、上記で得られたポリエステル樹脂シート用改質剤又はマスターバッチとを用いて、ポリエステル樹脂シート形成用の樹脂組成物を製造した。
【0082】
実施例3-1
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.50部の樹脂シート用改質剤E-1とを、タンブラーにより撹拌した後、日本製鋼所社製二軸混練押出機「TEX30α」(型式名)を用いて、250℃~270℃で溶融混練して、ポリエステル樹脂シート製造用の組成物(以下、「樹脂組成物T-1」という)を得た。次いで、この樹脂組成物T-1の溶融混練物をTダイより40℃に調温した冷却ロール上に押出し、厚さが300μmのポリエステル樹脂シート(以下、「樹脂シートS-1」という)を得た(表3参照)。
【0083】
得られた樹脂シートS-1について、下記の方法により、滑り性及び透明性の評価を行い、その結果を表3に併記した。
【0084】
(1)滑り性
ポリエステル樹脂シートを、20℃及び65%R.H.で24時間調湿した後、同雰囲気にて東洋精機社製摩擦測定機「TR-2」(型式名)を用い、JIS K7125に準拠して静摩擦係数を測定した。測定は3枚の樹脂シートの任意の表面に対して行い、合計3点の平均値を採用して、以下の基準で滑り性を評価した。
◎◎:0.35以下
◎:0.35超~0.40以下
〇:0.40超~0.60以下
×:0.60超
【0085】
(2)透明性
ポリエステル樹脂シートのHAZEを、日本電色工業社製ヘーズメーター「NDH5000」(型式名)を用い、JIS K7136に準拠して測定した。測定は5枚の樹脂シートの任意の位置に対して行い、合計5点の平均値を採用して、以下の基準で透明性を評価した。
◎:5%以下
〇:5%超~10%以下
×:10%超
【0086】
実施例3-2
99.60部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.54部のマスターバッチM-1とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-2を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-2を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0087】
実施例3-3
96.58部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、4.62部のマスターバッチM-1とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-3を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-3を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0088】
実施例3-4
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、1.01部の樹脂シート用改質剤E-1とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-4を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-4を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0089】
実施例3-5
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.60部の樹脂シート用改質剤E-2とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-5を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-5を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0090】
実施例3-6
98.48部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、1.90部のマスターバッチM-2とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-6を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-6を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0091】
実施例3-7
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.91部の樹脂シート用改質剤E-3とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-7を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-7を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0092】
実施例3-8
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.55部の樹脂シート用改質剤E-4とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-8を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-8を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0093】
実施例3-9
95.60部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、5.50部のマスターバッチM-3とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-9を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-9を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0094】
実施例3-10
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.70部の樹脂シート用改質剤E-5とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-10を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-10を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0095】
実施例3-11
97.20部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、3.50部のマスターバッチM-4とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-11を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-11を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0096】
実施例3-12
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.81部の樹脂シート用改質剤E-6とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-12を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-12を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0097】
実施例3-13
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.50部の樹脂シート用改質剤E-7とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-13を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-13を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0098】
実施例3-14
93.83部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、7.57部のマスターバッチM-5とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-14を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-14を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0099】
実施例3-15
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.20部の樹脂シート用改質剤E-8とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-15を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-15を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0100】
実施例3-16
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、1.32部の樹脂シート用改質剤E-9とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-16を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-16を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0101】
実施例3-17
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、1.21部の樹脂シート用改質剤E-10とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-17を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-17を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0102】
実施例3-18
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、1.01部の樹脂シート用改質剤E-11とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-18を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-18を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0103】
実施例3-19
98.18部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、2.22部のマスターバッチM-6とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物T-19を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートS-19を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0104】
比較例3-1
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.50部の樹脂シート用改質剤e-1とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物t-1を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートs-1を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0105】
比較例3-2
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.30部の樹脂シート用改質剤e-2とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物t-2を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートs-2を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0106】
比較例3-3
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.81部の樹脂シート用改質剤e-3とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物t-3を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートs-3を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0107】
比較例3-4
100部の上記ポリエチレンテレフタレート(PET)と、0.50部の樹脂シート用改質剤e-4とを用いた以外は、実施例3-1と同様にして樹脂組成物t-4を製造し、次いで、表3に示す樹脂シートs-4を製造した。その後、滑り性及び透明性の評価を行った(表3参照)。
【0108】
【表3】
【0109】
表3の結果から明らかなように、実施例3-1~3-19では、本発明に係るポリエステル樹脂シート用改質剤を含有する樹脂組成物を用いたため、高い透明性を維持したまま優れた滑り性を有するポリエステル樹脂シートが得られたことが分かる。また、実施例3-2、3-3、3-6、3-9、3-11、3-14及び3-19は、表2に示したマスターバッチを用いてポリエステル樹脂シートを製造した例であり、ポリエステル樹脂の含有量を100質量部とした場合に、ポリエステル樹脂シート用改質剤を10~45質量部で含有する樹脂組成物からなるマスターバッチを用いて好適にポリエステル樹脂シートの製造が可能であることが分かる。
【0110】
5.積層シートの製造及びその評価
上記で得られたポリエステル樹脂組成物と中国石化儀征化繊社製ポリエチレンテレフタレート「BG-80」(商品名)を用いて、積層シートを製造した。
【0111】
実施例4-1
実施例3-1と同様にして作成した樹脂シートS-1製造用の樹脂組成物T-1を両表層に、上記ポリエチレンテレフタレート樹脂を中間層に、それぞれの溶融混練物をTダイより40℃に調温した冷却ロール上に共押出し、厚さが300μm、層比=1/8/1の3層積層シート(以下、「積層シートU-1」という)を得た(表4参照)。
【0112】
得られた積層シートU-1について、樹脂シートと同様の評価基準で滑り性及び透明性の評価を行い、その結果を表4に併記した。
【0113】
実施例4-2~4-19
実施例4-1と同様にして、表3に示すポリエステル樹脂シート(S-2~S-19)製造用の樹脂組成物(T-2~T-19)を用いて表4に示す積層シートU-2~U-19を得た(表4参照)。
【0114】
比較例4-1~4-4
実施例4-1と同様にして、表3に示すポリエステル樹脂シート(s-1~s-4)製造用の樹脂組成物(t-1~t-4)を用いて表4に示す積層シートu-1~u-4を得た(表4参照)。
【0115】
【表4】
【0116】
表4の結果から明らかなように、実施例4-1~4-19は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を中間層にして、その中間層の表層(両表層)に、本発明に係るポリエステル樹脂シート用改質剤を含有する樹脂組成物を用いた3層構造の積層シートであることから、高い透明性を維持したまま優れた滑り性を有する積層シートであることが分かる。
【0117】
6.成形体の製造及びその評価
上記のポリエステル樹脂シート又は積層シートを用いて、成形体を製造した。
【0118】
実施例5-1
表3に示すポリエステル樹脂シート(S-1)を用いて、布施真空(株)製NGF-0912型真空成形機により樹脂温度90℃にて真空成型を行い、縦10cm×横15cm×深さ3cmのトレイ型の成形体(以下、「成形体V-1」という)を得た(表5参照)。
【0119】
得られた成形体V-1について、トレイ型の底面を切り出し、ポリエステル樹脂シートと同様の評価基準で滑り性及び透明性の評価を行い、その結果を表5に併記した。
【0120】
実施例5-2~5-19
実施例5-1と同様にして、表3に示すポリエステル樹脂シート(S-2~S-19)を用いて表5に示す成形体V-2~V-19を得た(表5参照)。
【0121】
実施例5-20~5-38
実施例5-1と同様にして、表4に示す積層シート(U-1~U-19)を用いて表6に示す成形体V-20~V-38を得た(表6参照)。
【0122】
比較例5-1~5-4
実施例5-1と同様にして、表3に示すポリエステル樹脂シート(s-1~s-4)を用いて表7に示す成形体v-1~v-4を得た(表7参照)。
【0123】
比較例5-5~5-8
実施例5-1と同様にして、表4に示す積層シート(u-1~u-4)を用いて表7に示す成形体v-5~v-8を得た(表7参照)。
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
表5~表7の結果から明らかなように、実施例5-1~5-38は、本発明に係るポリエステル樹脂シート用改質剤を含有する樹脂組成物を使用したポリエステル樹脂シート及び積層シートから得られた成形体であることから、高い透明性を維持したまま優れた滑り性を有する成形体であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のポリエステル樹脂シート用改質剤及びマスターバッチは、透明性に優れ、その表面が滑らかなポリエステル樹脂成形体を与える樹脂組成物の製造原料として好適である。また、本発明により得られるポリエステル樹脂成形体は、フィルム、シート、蓋、容器、内部に物品を収容する袋状物等に好適である。この成形体は、その表面が滑らかであるために、各成形体が重なり合っている場合に、ブロッキングを起こすことなく、1個ずつ又は1枚ずつ容易に取り出すことができる。