(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】胚移植用具および胚移植用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/435 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A61B17/435
(21)【出願番号】P 2020558396
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2019045145
(87)【国際公開番号】W WO2020110813
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018223434
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509038108
【氏名又は名称】株式会社北里コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井上 太
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038557(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0193055(US,A1)
【文献】特表2002-522167(JP,A)
【文献】特開平02-268745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0040756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無色透明の合成樹脂製の軟質チューブと、前記軟質チューブの基端部に設けられたハブとを有する胚移植用具であって、
前記軟質チューブは、先端部から基端に向かって所定幅にて所定長延びる第1の微粒子含有部と、前記先端部から前記基端に向かって所定幅にて延び、かつ前記第1の微粒子含有部と向かい合う第2の微粒子含有部と、前記第1の微粒子含有部と前記第2の微粒子含有部間に位置し、前記軟質チューブの先端から前記基端に向かって所定長延び、前記軟質チューブの内腔内が視認可能な第1の無色透明部と、前記第1の無色透明部と向かい合うように設けられた第2の無色透明部とを備え、前記第1および第2の微粒子含有部は、前記軟質チューブの内壁内に位置し、前記軟質チューブの外面および内面に露出せず、かつ、前記第1および第2の微粒子含有部は、合成樹脂と前記合成樹脂と異なる材料により形成された多数の微粒子とからなり、前記微粒子は、前記合成樹脂中に分散しており、前記第1および第2の微粒子含有部は、前記合成樹脂と前記微粒子間により形成された多数の境界面を有し、
さらに、前記第1および第2の微粒子含有部を形成する合成樹脂は、前記軟質チューブの微粒子を含有しない部分を形成する樹脂より、可撓性が高い合成樹脂であることを特徴とする胚移植用具。
【請求項2】
前記微粒子は、光透過性微粒子である請求項1に記載の胚移植用具。
【請求項3】
前記微粒子は、光透過性ガラスビーズまたは光透過性樹脂ビーズである請求項1または2に記載の胚移植用具。
【請求項4】
前記胚移植用具は、先端部に、前記第1および第2の微粒子含有部を持たない環状透明先端部を備えている請求項1ないし
3のいずれかに記載の胚移植用具。
【請求項5】
前記第1および第2の微粒子含有部の厚さは、前記軟質チューブの肉厚の1/5~1/3であり、前記第1および第2の微粒子含有部の幅は、前記軟質チューブの外周長の5/100~20/100であり、前記第1および第2の無色透明部の幅は、前記軟質チューブの外周長の30/100以上である請求項1ないし
4のいずれかに記載の胚移植用具。
【請求項6】
前記微粒子は、直径が0.5~200μmの中実微粒子である請求項1ないし
5のいずれかに記載の胚移植用具。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれかに記載の胚移植用具と、前記胚移植用具の前記軟質チューブの先端部が突出する状態にて、前記軟質チューブを収納し、かつ前記軟質チューブより硬質の可撓性チューブと、前記可撓性チューブの基端に設けられたシースハブとを備えるシースとからなることを特徴とする胚移植用器具。
【請求項8】
前記軟質チューブは、前記シースの先端より突出する部分の全長に前記第1および第2の微粒子含有部を有している請求項
7に記載の胚移植用器具。
【請求項9】
前記微粒子は、中空微粒子である請求項1ないし
6のいずれかに記載の胚移植用具。
【請求項10】
前記微粒子は、直径が0.5~200μmである請求項
9に記載の胚移植用具。
【請求項11】
前記微粒子は、中空ガラスビーズまたは中空樹脂ビーズである請求項
9または10に記載の胚移植用具。
【請求項12】
前記軟質チューブは、先端部の外面に、等間隔に配置された複数のマーカーを有し、前記マーカ-は、周方向に延びる短い帯状のものとなっており、さらに、前記マーカーは、前記第1の微粒子含有部または前記第2の微粒子含有部上に位置し、かつ、前記第1および第2の無色透明部上には、位置しないものとなっている請求項
9ないし
11のいずれかに記載の胚移植用具。
【請求項13】
請求項
9ないし
12のいずれかに記載の胚移植用具と、前記胚移植用具の前記軟質チューブの先端部が突出する状態にて、前記軟質チューブを収納し、かつ前記軟質チューブより硬質の可撓性チューブと、前記可撓性チューブの基端に設けられたシースハブとを備えるシースとからなることを特徴とする胚移植用器具。
【請求項14】
前記軟質チューブは、前記シースの先端より突出する部分の全長に前記第1および第2の微粒子含有部を有している請求項
13に記載の胚移植用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胚移植用具および胚移植用器具に関する。具体的には、生体外にて受精された胚(受精卵)を生体、具体的には、動物の子宮内に移植する場合に用いられる胚移植用具および胚移植用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
胚を移植する場合には、一般的に、卵子および精子を採取し、培養容器に卵子を入れ、これに精子懸濁液を添加する、いわゆる媒精を行い、受精させた受精卵またはこの受精卵の2分割、4分割、8分割した胚を動物、例えば、人間の子宮内に移植する。
【0003】
そして、比較的硬いシースを膣口より挿入し子宮頸管を通過させる。次いで、このシース内に胚を直接もしくは胚を吸引したチューブを挿入し、さらに、チューブを押し込み、先端部を子宮口内に到達させた後、シリンジを押し胚を子宮内に移植する。そして、チューブおよび外套管を抜去し、移植を終了する。
【0004】
本件発明者は、特開2004-129789(特許文献1)の胚移植用器具を提案している。特許文献1の胚移植用器具1は、先端から後端まで貫通した通路と先端外面に設けられた球状膨出部22とを備える可撓性シース2と、可撓性シース内に抜去可能に挿入され、かつ先端が前記シースの先端面より若干突出する可撓性スタイレット3と、スタイレット抜去した可撓性シース2内に挿入可能であり、可撓性シース2の先端より所定長さ突出可能な柔軟先端部41aを備える移植用チューブ体4とを備えている。
【0005】
そして、このような胚移植用器具に用いられる移植用チューブ体4は、特にその先端部において超音波撮像性が高いものが望まれている。移植用チューブとして、超音波撮像性を有するものとしては、特開2003-190275(特許文献2)、特開2004-298632(特許文献3)が提案されている。また、本願発明者は、WO2017/038557(特許文献4)を提案している。
【0006】
特許文献2には、プラスチック材料製の外科医療用器具(1,1’)であって、超音波造影における当該装置の可視性を増加させるために選択した、当該器具の少なくとも一部において、前記材料が、その厚みの大部分を通してガスの泡(12,12’)を含むことを特徴とする器具が提案されている。
【0007】
さらに、特許文献2には、透明ポリウレタンを押出成型した可撓性シャフト1を有する胚置換用カテーテルであり、シャフト1は長手方向に延在する孔10を有する。直径5μ~10μの範囲のガスの泡12を、押出成型中にガスを添加することによりシャフトの壁の厚み方向に導入する。泡12は、超音波造影中でのカテーテルの可視性を増加させる一方で、カテーテルに沿って流れる物質を見ることができるように選択することが開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、胚輸送用のカテーテルまたは他の医療器具であって、押出成型した二つの層12および13を有するシャフト1を有する。外層13は比較的厚く、超音波観察における視認性を向上させるのに十分な気泡22を含むが、気泡の密度はカテーテル内部の物質を肉眼で見ることができるものとする。内層12は比較的薄くて気泡を含まず、それによってカテーテルに滑らかな孔10を提供するものが開示されている。
【0009】
また、特許文献4には、軟質チューブ11とハブ12とを有し、軟質チューブ11は、先端から基端に向かって所定幅にて所定長延びる第1の気泡含有表面層13aと、第1の気泡含有表面層13aと向かい合う第2の気泡含有表面層13bと、第1の気泡含有表面層13aと第2の気泡含有表面層13b間に位置する第1および第2の無色透明部15a,15bとを備える。第1および第2の気泡含有表面層は、軟質チューブの軸方向に長い多数の気泡14を含有する。第1および第2の気泡含有表面層の厚さは、軟質チューブの肉厚の1/5~1/3であり、幅は、軟質チューブの外周長の5/100~20/100である胚移植用具1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-129789
【文献】特開2003-190275(USP8092390)
【文献】特開2004-298632(USP10045756)
【文献】WO2017/038557(EP3345559)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2、3、4の移植チューブ体は、十分な超音波撮像性を有している。しかし、チューブ内壁への気泡を良好に含有させることは難しく、チューブ外面に気泡の破泡に起因する凹凸が形成されやすく、また、気泡の分布に偏りが生じ、これが、超音波撮像においてコントラストとなって現れることがあった。
【0012】
本発明の目的は、チューブの内外面ともに良好な平滑性を備え、かつ、ムラがなくかつ十分な超音波造影性を有し、かつ、顕微鏡と光源を用いた内部の視認において、十分な光透過性と視認性を有する胚移植用具およびそれを用いた胚移植用器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
無色透明の合成樹脂製の軟質チューブと、前記軟質チューブの基端部に設けられたハブとを有する胚移植用具であって、
前記軟質チューブは、先端部から基端に向かって所定幅にて所定長延びる第1の微粒子含有部と、前記先端部から前記基端に向かって所定幅にて延び、かつ前記第1の微粒子含有部と向かい合う第2の微粒子含有部と、前記第1の微粒子含有部と前記第2の微粒子含有部間に位置し、前記軟質チューブの先端から前記基端に向かって所定長延び、前記軟質チューブの内腔内が視認可能な第1の無色透明部と、前記第1の無色透明部と向かい合うように設けられた第2の無色透明部とを備え、前記第1および第2の微粒子含有部は、前記軟質チューブの内壁内に位置し、前記軟質チューブの外面および内面に露出せず、かつ、前記第1および第2の微粒子含有部は、合成樹脂と前記合成樹脂と異なる材料により形成された多数の微粒子とからなり、前記微粒子は、前記合成樹脂中に分散しており、前記第1および第2の微粒子含有部は、前記合成樹脂と前記微粒子間により形成された多数の境界面を有し、
さらに、前記第1および第2の微粒子含有部を形成する合成樹脂は、前記軟質チューブの微粒子を含有しない部分を形成する樹脂より、可撓性が高い合成樹脂である胚移植用具。
【0014】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
上記の胚移植用具と、前記胚移植用具の前記軟質チューブの先端部が突出する状態にて、前記軟質チューブを収納し、かつ前記軟質チューブより硬質の可撓性チューブと、前記可撓性チューブの基端に設けられたシースハブとを備えるシースとからなる胚移植用器具。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の胚移植用具の一実施例の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した胚移植用具を用いた胚移植用器具の正面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した胚移植用器具に用いられているシースの正面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した胚移植用器具の先端部の拡大図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した胚移植用具の先端部の拡大図である。
【
図7】
図7は、
図2に示した胚移植用器具の基端部の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の胚移植用具の他の実施例の正面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した胚移植用具の先端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の胚移植用具およびそれを用いた胚移植用器具を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の胚移植用具1は、無色透明の合成樹脂製の軟質チューブ11と、軟質チューブ11の基端部に設けられたハブ12とを有する。軟質チューブ11は、先端部から基端に向かって所定幅にて所定長延びる第1の微粒子含有部13aと、先端部から基端に向かって所定幅にて延び、かつ第1の微粒子含有部13aと向かい合う第2の微粒子含有部13bと、第1の微粒子含有部13aと第2の微粒子含有部13b間に位置し、軟質チューブ11の先端から基端に向かって所定長延び、内腔内が視認可能な第1の無色透明部15aと、第1の無色透明部15aと向かい合うように設けられた第2の無色透明部15bとを備える。第1および第2の微粒子含有部13a,13bは、軟質チューブ11の内壁内に位置し、軟質チューブ11の外面および内面に露出せず、かつ、第1および第2の微粒子含有部13a、13bは、合成樹脂と合成樹脂と異なる材料により形成された多数の微粒子14とからなり、微粒子14は、合成樹脂中に分散しており、第1および第2の微粒子含有部13a、13bは、合成樹脂と微粒子間により形成された多数の境界面を有している。
【0017】
この実施例の胚移植用具1は、先端から基端まで貫通した内腔を有する軟質チューブ11と、軟質チューブ11の基端部に固定されたハブ12とを有する。なお、ハブ12は、軟質チューブと一体に形成してもよい。
軟質チューブ11は、胚を移送するためのチューブであり、先端から後端まで貫通した内腔16を備えている。軟質チューブの長さは、70~800mm程度、特に、200~600mm程度が好適であり、軟質チューブの外径は、0.5~3mm程度、特に、1~2mm程度が好適である。また、軟質チューブの内径は、0.3~0.7mm程度、特に、0.4~0.6mm程度が好適である。
【0018】
軟質チューブ11の形成材料としては、無色透明性とある程度の柔軟性を有するものが好ましく、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、軟質塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレンブチレン-スチレンコポリマー)などのエラストマー、ポリウレタン、特に、熱可塑性ポリウレタン(熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリエステルポリウレタン、特に、好ましくは、ソフトセグメント部分とハードセグメント部分を有するセグメント化熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、より具体的には、ソフトセグメントの主成分としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが好ましく、ハードセグメントの主成分としては、1,4-ブタンジオールなどが好ましい。)等が使用できる。好ましくは、ポリアミド、もしくはポリアミドエラストマーである。
【0019】
図4ないし
図6に示すように、軟質チューブ11は、先端部から基端に向かって所定幅にて所定長延びる第1の微粒子含有部13aと、先端部から基端に向かって所定幅にて延び、かつ第1の微粒子含有部13aと、軟質チューブ11の中心を介して、向かい合う第2の微粒子含有部13bとを有する。この実施例の胚移植用具1では、第1および第2の微粒子含有部13a、13bは、軟質チューブ11の先端部から基端まで延びるものとなっている。なお、第1および第2の微粒子含有部13a、13bは、
図4に示すように、シース2の可撓性チューブ21の先端より突出する部分に有すればよく、それより基端側部分には、なくてもよい。
【0020】
図6に示すように、第1および第2の微粒子含有部13a、13bは、軟質チューブ11の内壁内に位置し、軟質チューブ11の外面および内面に露出していない。また、第1および第2の微粒子含有部13a、13bは、合成樹脂と合成樹脂と異なる材料により形成された多数の微粒子14とからなる。微粒子14は、合成樹脂中に、ほぼ均一に分散している。第1および第2の微粒子含有部13a、13bは、合成樹脂と微粒子14間、具体的には、微粒子14の表面により形成された多数の境界面を有している。超音波は、異なる物質により形成された境界面にて反射するため、この微粒子を含有する第1および第2の微粒子含有部13a、13bは、超音波エコーにて撮像され、その生体内での位置を容易に確認することができる。
【0021】
第1および第2の微粒子含有部13a、13bに用いられる合成樹脂としては、透明性とある程度の柔軟性を有するものが好ましく、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、軟質塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレンブチレン-スチレンコポリマー)などのエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、例えば、熱可塑性ポリウレタン(熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱可塑性ポリエステルポリウレタン、特に、好ましくは、ソフトセグメント部分とハードセグメント部分を有するセグメント化熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、より具体的には、ソフトセグメントの主成分としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが好ましく、ハードセグメントの主成分としては、1,4-ブタンジオールなどが好ましい。)等が使用できる。好ましくは、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーである。
なお、第1および第2の微粒子含有部13a、13bに用いられる合成樹脂としては、透明性を備えかつ着色されたものであってもよい。着色としては、青色、緑色、灰色などが好ましい。
【0022】
また、第1および第2の微粒子含有部13a、13bを形成する合成樹脂は、軟質チューブ11を形成する合成樹脂より、可撓性が高い合成樹脂であることが好ましい。微粒子を含有することにより、第1および第2の微粒子含有部13a、13bの形成材料は、含有しないものに比べて、可撓性が低下する傾向が高い。よって、上記のようにすることにより、第1および第2の微粒子含有部13a、13bの形成材料と、軟質チューブを形成する形成材料間の物性の差が少ないものとすることができる。特に、微粒子と合成樹脂とからなる第1および第2の微粒子含有部の形成材料は、軟質チューブを形成する合成樹脂(形成材料)とほぼ同等の可撓性を有していることが好ましい。可撓性調整は、第1および第2の微粒子含有部13a、13bを形成する合成樹脂、微粒子の添加量により調整することができる。このようにすることにより、第1および第2の微粒子含有部13a、13bの形成材料と、軟質チューブを形成する形成材料間の物性の差がより少ないものとなる。なお、第1および第2の微粒子含有部13a、13bの形成材料と、軟質チューブを形成する形成材料は、同じものであってもよい。
【0023】
微粒子非含有部形成樹脂(第1の樹脂)および微粒子含有部形成樹脂(第2の樹脂)として異なる材料を選択する場合には、共押出成形性の点から第1の樹脂と第2の樹脂は、相溶性の良好な材料を選択することが好ましい。相溶性が良いとは、熱力学的な相互溶解性が良好であることを示すものであり、言い換えれば、硬化後両者間において分離しないことを示すものである。そして、第2の樹脂は、第1の樹脂より可撓性の高い(柔軟性の高い)樹脂が選択される。
そして、第1の樹脂と第2の樹脂は、系統が同じ樹脂で物性が異なる樹脂を選択することが望ましい。系統としては、例えば、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系などがある。
【0024】
具体的には、第1の樹脂として柔軟なポリウレタンを選択し、第2の樹脂としては第1の樹脂より柔軟なポリウレタンを選択する、第1の樹脂としてポリアミドエラストマーを選択し、第2の樹脂としては第1の樹脂より柔軟なポリアミドエラストマーを選択する、第1の樹脂としてポリオレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー)を選択し、第2の樹脂としては第1の樹脂より柔軟なポリオレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー)を選択する、第1の樹脂としてポリエステル系エラストマー(例えば、ポリエステルエラストマー)を選択し、第2の樹脂としては第1の樹脂より柔軟なポリエステル系エラストマー(例えば、ポリエステルエラストマー)を選択するなどが考えられる。なお、第1の樹脂と第2の樹脂として、相溶性の高い樹脂の組み合わせを選択することにより、両者の境界部分では、第1の樹脂と第2の樹脂とはミクロ的に混合され、混合状態となっているものと思われる。このため、両者間には厳密な意味での界面がなく、両者の混合物による境界部分が形成されているものと考える。
【0025】
第1および第2の微粒子含有部13a、13bが含有する微粒子は、光透過性微粒子であることが好ましい。また、微粒子としては、光透過性ガラスビーズ、光透過性合成樹脂ビーズが好ましい。微粒子としては、中実であり、直径が、0.5~200μmであることが好ましい。特に、1~150μmが好ましく、より具体的には、10~120μmが好適である。また、微粒子としては、透明性を有し、かつ有色のものであってもよい。有色の場合に、色としては、青色、緑色、灰色などが好ましい。
光透過性樹脂ビーズとしては、シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子等が好ましい。光透過性樹脂微粒子は、微粒子含有部形成樹脂と系統が異なる材料により形成されたものを選択することが好ましい。
【0026】
第1および第2の微粒子含有部13a、13bが含有する微粒子は、中空微粒子、特に、中空微小球であってもよい。中空微粒子は、中空ガラスビーズ(中空ガラス微小球)または中空樹脂ビーズ(中空樹脂微小球)であることが好ましい。また、中空微粒子は、光透過性微粒子であることが好ましい。特に、中空微粒子としては、光透過性中空ガラスビーズ(光透過性中空ガラス微小球)、光透過性中空合成樹脂ビーズ(光透過性中空合成樹脂微小球)が好ましい。中空微粒子としては、内部が中空であり、直径が、0.5~200μmであることが好ましい。特に、1~150μmが好ましく、より具体的には、10~120μmが好適である。また、中空微粒子としては、透明性を有し、かつ有色のものであってもよい。有色の場合に、色としては、青色、緑色、灰色などが好ましい。
【0027】
約500μm未満の平均径を有する中空ガラス微粒子(中空ガラス微小球)は、「ガラスマイクロバブル」、「ガラスバブル」、「中空ガラスビーズ」又は「ガラスバルーン」としても一般に知られている。
本発明の胚移植用具では、 種々の径の中空ガラス微粒子(中空ガラス微小球)を用いることができる。この「径」という用語は、中空微小球の直径及び高さと等しいと考えられる。中空ガラス微小球は、体積メジアン径が、10~80μmであることが好ましく、特に、30~70μmの範囲であることが好ましい。体積メジアン径は、D50径とも呼ばれ、粒径分布における中空微小球の50体積%が、示される径よりも小さいことを意味する。体積メジアン径は、脱気脱イオン水中に中空ガラス微小球を分散させることによって、レーザー光回折により決定される。レーザー光回折粒径分析器は、例えば、Malvern Instruments,Malvern,UK製の商品名「MASTERSIZER 2000」が利用できる。また、中空ガラス微小球は、平均粒径が、10~80μmであることが好ましく、特に、30~70μmの範囲であることが好ましい。
【0028】
使用する中空微小球(中空ガラスビーズ)は、軟質チューブの押出成形後に残存するのに十分な強度を有している必要がある。中空微小球の10体積%が崩壊する有効静水圧(耐圧強度90%残存)は、3メガパスカル(MPa)以上、好ましくは、10メガパスカル(MPa)以上であることが好ましい。なお、耐圧強度の上記数値は、数値MPa±5%を意味する。耐圧強度90%残存は、100MPa以上であってもよい。中空微小球(中空ガラスビーズ)の崩壊強度は、例えば、(グラムでの)試料サイズが、ガラスバブルの密度の10倍に等しいことを除いて、ASTM D3102-72「Hydrostatic Collapse Strength of Hollow Glass Microspheres」を用いて、グリセロール中の中空ガラス微小球の分散体について測定することが好ましい
【0029】
本発明に使用可能な中空ガラスビーズ(微小球)としては、例えば、3M Company,St.Paul,MNの商品名「3M GLASS BUBBLES」(例えば、グレードS60、S60HS、iM30K、iM16K、S38HS、S38XHS、K42HS、K46及びH50/10000)、ポッターズ・バロティーニ株式会社の商品名「SPHERICEL(登録商標、材料:硼珪酸ガラス)、品番25P45(平均粒径45μm,粒径範囲15~75μm、耐圧強度5Mpa)、品番60P18(平均粒径18μm、粒径範囲5~35μm、耐圧強度55Mpa)、ポッターズ・バロティーニ株式会社の商品名Q-CEL(登録商標、材料:硼珪酸ナトリウムガラス)、品番5020FPS(平均粒径40μm、粒径範囲5~90μm、耐圧強度3.4Mpa)、品番7040S(平均粒径45μm、粒径範囲5~90μm、耐圧強度13.8Mpa)、品番5020(平均粒径60μm、粒径範囲5~115μm、耐圧強度3.4Mpa)、Silbrico Corp.,Hodgkins,ILから商品名「SIL-CELL」(例えば、グレードSIL35/34、SIL-32、SIL-42及びSIL-43)、Sinosteel Maanshan Inst.of Mining Research Co.,Maanshan,Chinaの商品名「Y8000」などがある。
【0030】
中空樹脂ビーズ(微小球)としては、樹脂材料が、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、アクリル-アクリロニトリル共重合樹脂、アクリル-スチレン-アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル-メタアクリロニトリル共重合樹脂、アクリル-アクリロニトリル-メタアクリロニトリル共重合樹脂、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
中空微粒子の形状としては、球形、楕円球形、偏平球形等が挙げられ、球形であることが好ましい。
【0031】
第1および第2の微粒子含有部13a、13bにおける微粒子の含有率は、0.1~30%であることが好ましく、特に、0.5~10%が好ましい。より好ましくは、1~5%である。
第1および第2の微粒子含有部13a、13bにおける微粒子の体積含有率は、1~30%であることが好ましく、特に、5~20%が好ましい。より好ましくは、7~15%である。
そして、この実施例の胚移植用具1では、
図4および
図5に示すように、先端部に、第1および第2の微粒子含有部を持たない環状透明先端部11aを備えている。このため、第1および第2の微粒子含有部13a、13bは、胚移植用具1(軟質チューブ11)の先端面においても、露出しないものとなっている。
【0032】
また、第1および第2の微粒子含有部13a、13bの厚さが、軟質チューブ11の肉厚の1/5~1/3であることが好ましい。また、向かい合うように、2つの微粒子含有部を有するため、十分な超音波造影性を有する。第1および第2の微粒子含有部13a、13bの幅は、軟質チューブ11の外周長の5/100~20/100であることが好ましい。
【0033】
さらに、
図6に示すように、第1および第2の微粒子含有部13a,13bの厚さT1は、軟質チューブ11の肉厚の1/5~1/3が好ましい。特に、厚さT1は、軟質チューブ11の肉厚の1/5~1/4であることが好ましい。そして、第1および第2の微粒子含有部13a,13bの上部および下部は、微粒子非含有部となっている。第1および第2の微粒子含有部13a,13bの厚さを上記のようなものとすることにより、軟質チューブ11における微粒子含有部に起因する物性の変化が少なく、良好な変形性を有する。また、
図6に示す第1および第2の微粒子含有部13a,13bの内側の微粒子非含有部の厚さT2は、軟質チューブ11の肉厚の1/5~1/3であることが好ましい。また、
図6に示す第1および第2の微粒子含有部13a,13bの外側の微粒子非含有部の厚さT3は、軟質チューブ11の肉厚の1/5~1/3であることが好ましい。
【0034】
さらに、
図4ないし
図6に示すように、第1および第2の微粒子含有部13a,13bは、所定の幅にて先端部から基端方向に、かつ、軟質チューブ11の中心軸に平行に延びている。この実施例のものでは、第1および第2の微粒子含有部13a,13bは、ほぼ一定の幅にて基端方向に延びている。さらに、第1および第2の微粒子含有部13a,13bの幅は、
図6に示すように、軟質チューブ11の外周長の5/100~20/100となっている。このような幅とすることにより、第1および第2の無色透明部15a,15bは、十分な幅を有するものとなる。第1および第2の微粒子含有部13a,13bの幅は、軟質チューブ11の外周長の7/100~15/100が好適である。また、第1および第2の微粒子含有部13a,13bの形成部分の角度R1は、15~70度が好適であり、特に、30~50度が好適である。なお、第1および第2の微粒子含有部13a,13bの幅は、ほぼ同じであることが好ましいが、異なるものであってもよい。
【0035】
そして、胚移植用具1は、第1の微粒子含有部13aと第2の微粒子含有部13b間に位置し、軟質チューブ11の先端から基端に向かって所定長延び、第1の無色透明部15aと、第1の無色透明部15aと、軟質チューブの中心軸を介して向かい合うように設けられた第2の無色透明部15bとを備えている。第1および第2の無色透明部15a,15bは、向かい合うように設けられ、かつ、十分な光透過性と、顕微鏡による内腔16内の視認性を有する。これにより、内腔内に保有された生体細胞を顕微鏡により確認可能となっている。
【0036】
そして、第1および第2の無色透明部15a,15bの幅は、軟質チューブ11の外周長の30/100以上となっている。特に、無色透明部15a,15bの幅は、軟質チューブ11の外周長の35/100以上であることが好ましい。また、第1および第2の無色透明部15a,15bの形成部分の角度R2は、110~165度が好適であり、特に、130~150度が好適である。なお、第1および第2の無色透明部15a,15bの幅は、ほぼ同じであることが好ましいが、異なるものであってもよい。
【0037】
そして、この実施例の胚移植用具1は、
図1に示すように、ハブ12より先端側かつ軟質チューブ11の基端部に設けられ、等間隔にて複数設けられたマーカー35を備えている。具体的には、等間隔に配置された5つの距離指標マーカー35と、最も先端側に位置する距離指標マーカー35に近接し、かつ先端側に設けられたエンドマーカー36を有している。
【0038】
胚移植用具1は、軟質チューブ11の基端部に固定されたハブ12を有している。
図7に示すように、軟質チューブ11は、基端内に挿入されたカシメ部材16と、接着剤31により、ハブ12に固定されている。
また、ハブ12は、基端に開口部を備え、軟質チューブ11内と連通する中空部18を有している。ハブ12の中空部18は、注射器などの医療用具のノズルと液密に装着可能なルアーテーパー部となっている。ハブ12の基端には、外方に突出する向かい合う2つの突出部17を備えている。ハブ12は、中央部分に設けられた2つの環状リブ19を備え、リブ19より前方部分は、リブ19より後方部分より、小径の筒状部となっている。この小径の筒状部は、後述するシース2のシースハブ22内に挿入可能なものとなっている。ハブの形成材料としては、硬質樹脂が使用される。
【0039】
さらに、本発明の胚移植用具は、
図8に示す実施例の胚移植用具1aのように、先端部にマーカー43を有するものであってもよい。具体的には、
図8および
図9に示すように、軟質チューブ11aは、先端部の外面に、ほぼ等間隔に配置された複数のマーカー43を有することが好ましい。
図8および
図9に示すものでは、等間隔に配置された5つのマーカー43と、最も基端側に位置するマーカー43に近接し、かつ基端側に設けられた強調マーカー43aを有している。マーカー43の数としては、3~10が好ましく、5つごとに、強調マーカー43aを有することがより好ましい。
【0040】
各マーカー43,43aは、
図9に示すように、環状ではなく、周方向に延びる短い帯状のものとなっている。さらに、軟質チューブ11aの第1の微粒子含有部13a(または第2の微粒子含有部13b)上に位置するように設けられている。このため。
図10に示すように、マーカー43,43aは、軟質チューブ11aの第1および第2の無色透明部15a,15bには、位置せず、第1および第2の無色透明部15a,15bにおける内部視認性を阻害しないものとなっている。
【0041】
次に、本発明の胚移植用器具10について説明する。
胚移植用器具10は、上述した胚移植用具1または1aと、シース2とからなる。
図2および
図3に示すように、シース2は、胚移植用具1の軟質チューブ11または11aの先端部が突出する状態にて、軟質チューブ11または11aを収納し、かつ軟質チューブ11より硬質の可撓性チューブ21と、可撓性チューブ21の基端に設けられたシースハブ22とを備える。
【0042】
この実施例のシース2は、先端から基端まで貫通した内腔27を有する可撓性チューブ21と、可撓性チューブ21の基端部に固定されたシースハブ22とを有する。なお、シースハブ22は、可撓性チューブ21と一体に形成してもよい。
シース2は、
図2、
図3および
図7に示すように、先端から後端まで貫通した内腔27を有する可撓性チューブ21を備える。可撓性チューブ21は、長さ50~300mm、好ましくは、100~250mmである。また、外径は、1~5mm、好ましくは、1.5~3.5mmである。また、内径は、0.8~4.8mm、好ましくは、1.3~3.3mmである。また、シース2の先端より突出する胚移植用具1の軟質チューブ11の突出長は、30~100mm程度が好ましく、特に、35~70mmが好適である。
【0043】
可撓性チューブ21の形成材料としては、軟質チューブ11または11aより硬質でありある程度の保形性と、可撓性を備えるものが用いられる。可撓性チューブ21の形成材料としては、ポリエステル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー)、ポリアミド(例えば、6ナイロン、66ナイロン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、フッ素樹脂(例えば、PTFE、ETFE)などが使用できる。さらに、この実施例のシース2では、先端部の外面に、
図3に示すように、複数の挿入深度確認用マーカー23が設けられている。具体的には、等間隔に配置された5つの
挿入深度確認用マーカー23と、最も基端側に位置する
挿入深度確認用マーカー23に近接し、かつ基端側に設けられたエンドマーカー23aを有している。
【0044】
シースハブ22は、
図7に示すように、可撓性チューブ21の後端に接着剤25により固定されている。シースハブ22は、可撓性チューブ21内の内腔27と連通する内腔24を備える中空状ハブである、そして、
図3および
図7に示すように、側面には把持用凹部とこの凹部表面に形成された滑り止め用のリブを備えている。また、シースハブ22は、内腔27内にて内側に突出する環状リブ26を備えており、この環状リブ26に可撓性チューブ21の基端が当接している。そして、シースハブ22と可撓性チューブ21の基端部間に充填された接着剤25により、可撓性チューブ21は、シースハブ22に固定されている。また、シースハブ22は、開口部がテーパー状に拡径するものとなっている。シースハブの形成材料としては、硬質樹脂が使用される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の胚移植用具は、以下のものである。
(1) 無色透明の合成樹脂製の軟質チューブと、前記軟質チューブの基端部に設けられたハブとを有する胚移植用具であって、
前記軟質チューブは、先端部から基端に向かって所定幅にて所定長延びる第1の微粒子含有部と、前記先端部から前記基端に向かって所定幅にて延び、かつ前記第1の微粒子含有部と向かい合う第2の微粒子含有部と、前記第1の微粒子含有部と前記第2の微粒子含有部間に位置し、前記軟質チューブの先端から前記基端に向かって所定長延び、前記軟質チューブの内腔内が視認可能な第1の無色透明部と、前記第1の無色透明部と向かい合うように設けられた第2の無色透明部とを備え、前記第1および第2の微粒子含有部は、前記軟質チューブの内壁内に位置し、前記軟質チューブの外面および内面に露出せず、かつ、前記第1および第2の微粒子含有部は、合成樹脂と前記合成樹脂と異なる材料により形成された多数の微粒子とからなり、前記微粒子は、前記合成樹脂中に分散しており、前記第1および第2の微粒子含有部は、前記合成樹脂と前記微粒子間により形成された多数の境界面を有している胚移植用具。
【0046】
特に、第1および第2の微粒子含有部は、軟質チューブの内壁内に位置し、軟質チューブの外面および内面に露出しないため、チューブの内外面ともに良好な平滑性を備える。そして、第1および第2の微粒子含有部は、合成樹脂と合成樹脂と異なる材料により形成された多数の微粒子とからなり、さらに、第1および第2の微粒子含有部は、合成樹脂と微粒子間により形成された多数の境界面を有しているため、ムラのない良好な超音波造影性を有する。そして、第1の無色透明部とそれと向かい合うよう第2の無色透明部を備えるため、十分な光透過性と視認性を有する。よって、良好な胚移植を行うことができる。
【0047】
また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
(2) 前記微粒子は、光透過性微粒子である上記(1)に記載の胚移植用具。
(3) 前記微粒子は、光透過性ガラスビーズまたは光透過性樹脂ビーズである上記(1)または(2)に記載の胚移植用具。
(4) 前記第1および第2の微粒子含有部を形成する合成樹脂は、前記軟質チューブを形成する合成樹脂より、可撓性が高い合成樹脂である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の胚移植用具。
(5) 前記微粒子と前記合成樹脂とからなる前記第1および第2の微粒子含有部の形成材料は、前記軟質チューブを形成する合成樹脂とほぼ同等の可撓性を有している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の胚移植用具。
(6) 前記胚移植用具は、先端部に、前記第1および第2の微粒子含有部を持たない環状透明先端部を備えている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の胚移植用具。
(7) 前記第1および第2の微粒子含有部の厚さは、前記軟質チューブの肉厚の1/5~1/3であり、前記第1および第2の微粒子含有部の幅は、前記軟質チューブの外周長の5/100~20/100であり、前記第1および第2の無色透明部の幅は、前記軟質チューブの外周長の30/100以上である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の胚移植用具。
(8) 前記微粒子は、直径が0.5~200μmの中実微粒子である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の胚移植用具。
【0048】
また、本発明の胚移植用器具は、以下のものである。
(9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の胚移植用具と、前記胚移植用具の前記軟質チューブの先端部が突出する状態にて、前記軟質チューブを収納し、かつ前記軟質チューブより硬質の可撓性チューブと、前記可撓性チューブの基端に設けられたシースハブとを備えるシースとからなる胚移植用器具。
【0049】
また、上記の実施態様は、以下のものであってもよい。
(10) 前記軟質チューブは、前記シースの先端より突出する部分のほぼ全長に前記第1および第2の微粒子含有部を有している上記(9)に記載の胚移植用器具。
(11) 前記微粒子は、中空微粒子である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の胚移植用具。
(12) 前記微粒子は、直径が0.5~200μmである上記(11)に記載の胚移植用具。
(13) 前記微粒子は、中空ガラスビーズまたは中空樹脂ビーズである上記(11)または(12)に記載の胚移植用具。
(14) 前記軟質チューブは、先端部の外面に、ほぼ等間隔に配置された複数のマーカーを有し、前記マーカ-は、周方向に延びる短い帯状のものとなっており、さらに、前記マーカーは、前記第1の微粒子含有部または前記第2の微粒子含有部上に位置し、かつ、前記第1および第2の無色透明部上には、位置しないものとなっている上記(11)ないし(13)のいずれかに記載の胚移植用具。
【0050】
また、本発明の胚移植用器具は、以下のものである。
(15) 上記(11)ないし(14)のいずれかに記載の胚移植用具と、前記胚移植用具の前記軟質チューブの先端部が突出する状態にて、前記軟質チューブを収納し、かつ前記軟質チューブより硬質の可撓性チューブと、前記可撓性チューブの基端に設けられたシースハブとを備えるシースとからなることを特徴とする胚移植用器具。
(16) 前記軟質チューブは、前記シースの先端より突出する部分のほぼ全長に前記第1および第2の微粒子含有部を有している上記(15)に記載の胚移植用器具。