IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミヤワキの特許一覧

<>
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図1
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図2
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図3
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図4
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図5
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図6
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図7
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図8
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図9
  • 特許-弁装置とこれを用いた減圧弁 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】弁装置とこれを用いた減圧弁
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/16 20060101AFI20231228BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20231228BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G05D16/16 Z
F16K51/00 B
F16K17/30 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021037444
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137777
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】北邑 有希雄
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-316454(JP,A)
【文献】実開平01-076093(JP,U)
【文献】特開平09-279665(JP,A)
【文献】特開2007-018758(JP,A)
【文献】実開昭59-100968(JP,U)
【文献】実開平01-173808(JP,U)
【文献】中国実用新案第212616571(CN,U)
【文献】特開昭62-103717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/16
F16K 51/00
F16K 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、
前記主通路を開閉する主弁体と、
前記主弁体を開閉させるパイロット弁ユニットと、
内部に前記主弁体が配置された本体ケースと、
前記本体ケースに連結されて、内部に前記パイロット弁ユニットが配置された上ケースと、を備え、
前記パイロット弁ユニットが弁装置を有し、
前記弁装置が、
流体の流入路と流出路との間を開閉する弁体と、
前記流入路に設けられて、前記弁体が収納される弁室に異物が進入するのを防ぐスクリーン部材と、
前記流入路における前記スクリーン部材よりも上流側に設けられたプレスクリーンと、を備え、
前記スクリーン部材と前記プレスクリーンは、流体の流れ方向に離間して配置され、且つ、個別に弁装置に支持され、
前記プレスクリーンは、前記スクリーン部材よりもメッシュサイズが小さく設定され、且つ、オン・オフ自在に構成され、
前記プレスクリーンは、メッシュサイズの異なる複数のスクリーンを有し、
前記プレスクリーンは、前記流入路を流れる流体の温度変化により前記プレスクリーンをオン・オフする駆動機構と、前記駆動機構の駆動力により前記プレスクリーンをオン・オフするリンク機構とを有し、
前記本体ケースに前記プレスクリーンが配置され、前記上ケースに前記スクリーン部材が配置されている減圧弁
【請求項2】
請求項1に記載の減圧弁において、前記駆動機構は、バイメタルを有している減圧弁
【請求項3】
請求項1に記載の減圧弁において、前記駆動機構は、形状記憶ばねを有している減圧弁
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の弁装置において、
前記弁装置が、ばね力によって前記弁体を弁シートに着座させるばね体と、前記ばね体のばね力に抗して前記弁体を開弁方向に押圧して前記弁シートから離間させるシャフト部材と、前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記弁体を前記弁シートから離間させる第1の弁駆動部とを有し、
前記第1の弁駆動部は、前進して前記シャフト部材を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材とを有し、
さらに、前記流出路の圧力を受けて前記主弁体を開弁させる第2の弁駆動部が設けられ、
前記弁装置の前記流入路が前記主通路の一次側に連通している減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の通路に設けられて通路の開閉により通路の圧力を調節する弁装置とこれを用いた減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の通路には、通路内の圧力を調節するために種々の弁装置が配置される(例えば、特許文献1)。特許文献1のような弁装置では、スクリーンと呼ばれるフィルターのような機構の部品が取り付けられる。スクリーンは、弁体が収納される弁室に異物が侵入するのを防ぐ役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-103717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
減圧弁のような蒸気配管に接続して使用される機器では、使用環境によっては、初期段階に多量のスケールを含んだ蒸気が流れ込むことにより、作動開始直後に弁体と弁シートとの間へのスケールの噛み込みに起因する蒸気漏れが起こることがある。スクリーンのメッシュサイズを小さくすれば、初期段階におけるスケールの噛み込みを回避できる。しかしながら、メッシュサイズが小さいと、目詰まりが起こり易く、蒸気の流量に悪影響を与える恐れがある。そのため、メンテナンス頻度が増加するなど新たな問題の発生が懸念される。
【0005】
本発明は、初期段階におけるスケールの噛み込みを回避しつつ、メンテナンス頻度の増加を抑制できる弁装置とこれを用いた減圧弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の弁装置は、流体の流入路と流出路との間を開閉する弁体と、前記流入路に設けられて前記弁体が収納される弁室に異物が進入するのを防ぐスクリーン部材と、前記流入路における前記スクリーン部材よりも上流側に設けられたプレスクリーンと、を備えている。前記プレスクリーンは、前記スクリーン部材よりもメッシュサイズが小さく設定され、且つ、オン・オフ自在に構成されている。前記弁装置は、さらに、前記流入路を流れる流体の温度変化により前記プレスクリーンをオン・オフする駆動機構を有している。前記駆動機構は、温度に応じて形状を大きく変化させる感温変形部材、例えば、バイメタルまたは形状記憶ばね等を有している。ここで、「オン」とは、流入路のような通路を塞ぐように通路内に進出して異物の除去を行う作動状態をいい、「オフ」とは通路から後退して異物除去を行わない不作動状態をいう。
【0007】
この構成によれば、初期段階ではプレスクリーンをオン(作動状態)とすることで、作動開始直後の弁体と弁シートとの間へのスケールの噛み込みを防ぐことができる。また、初期段階を過ぎた後にプレスクリーンをオフ(不作動状態)とすることで、初期段階でプレスクリーンに目詰まりが起こった場合でも、蒸気の流量に影響しない。その結果、スクリーン部材のメンテナンス頻度の増加を抑制できる。また、プレスクリーンは、駆動源により自動でオン・オフされるので、操作遅れ(ヒューマンエラー)を回避することができる。したがって、初期段階で確実にプレスクリーンをオン(作動状態)とすることができる。駆動源にバイメタルまたは形状記憶ばねを用いると、駆動源を小形化でき、プレスクリーンの着脱が容易になる。
【0008】
本発明において、前記プレスクリーンは、メッシュサイズの異なる複数のスクリーンを有していてもよい。この場合、例えば、メッシュサイズの大きなスクリーンを上流側に、メッシュサイズの小さなスクリーンを下流側に配置してもよい。この構成によれば、段階的にスケールの除去を行うことで、作動開始直後の弁体と弁シートとの間へのスケールの噛み込みを効果的に防ぐことができるとともに、初期段階でのプレスクリーンの目詰まりを抑制できる。
【0009】
本発明において、前記駆動機構の駆動力により前記プレスクリーンをオン・オフするリンク機構が設けられていてもよい。この構成によれば、簡単な構成で、プレスクリーンのオン・オフ操作(作動/不作動の切り替え)を行うことができる。
【0010】
本発明の減圧弁は、流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、前記主通路を開閉する主弁体と、前記主弁体を開閉させるパイロット弁ユニットとを備えている。前記パイロット弁ユニットが、本発明の弁装置を有し、この弁装置が、さらに、ばね力によって前記弁体を弁シートに着座させるばね体と、前記ばね体のばね力に抗して前記弁体を開弁方向に押圧して前記弁シートから離間させるシャフト部材と、前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記弁体を前記弁シートから離間させる第1の弁駆動部とを有している。前記第1の弁駆動部は、前進して前記シャフト部材を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材とを有している。さらに、前記流出路の圧力を受けて前記主弁体を開弁させる第2の弁駆動部が設けられ、前記弁装置の前記流入路が前記主通路の一次側に連通している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の弁装置および減圧弁によれば、作動開始直後の弁体と弁シートとの間へのスケールの噛み込みを防ぐことができるうえに、スクリーン部材のメンテナンス頻度の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の対象である減圧弁の基本構成を示す縦断面図である。
図2】同減圧弁の減圧前の状態を模式的に示す縦断面図である。
図3】同減圧弁の圧力調整状態を模式的に示す縦断面図である。
図4】同減圧弁の減圧保持状態を模式的に示す縦断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る弁装置を備えた減圧弁を示す縦断面図である。
図6】(A)は同弁装置のプレスクリーンのオフ状態を示す縦断面図で、(B)は同プレスクリーンのオン状態を示す縦断面図である。
図7】(A)は同プレスクリーンのオフ状態を示す斜視図で、(B)は同プレスクリーンのオン状態を示す斜視図である。
図8】(A)は同プレスクリーンの駆動機構のオフ状態を示す断面図で、(B)は同駆動機構のオン状態を示す断面図である。
図9】(A)本発明の第2実施形態に係る弁装置のプレスクリーンのオフ状態を示す斜視図で、(B)は同プレスクリーンのオン状態を示す斜視図である。
図10】(A)は同プレスクリーンの駆動機構のオフ状態を示す断面図で、(B)は同駆動機構のオン状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明するのに先立って、蒸気通路に用いる減圧弁について説明する。様々な産業において、コスト、利便性、安全性の観点から、蒸気は、熱媒体として用いられている。その最大のメリットとして、単位重量当たりの潜熱量が大きいこと、圧力をコントロールすれば温度も一定に保持できることがあげられる。
【0014】
蒸気を使用する場合、必要な圧力ごとに蒸気を発生させるのではなく、ボイラーで高圧の蒸気を発生させておいて、その蒸気を生産物や用途に応じて必要な圧力に下げて使用する。その場合、蒸気の圧力をほぼ一定に保つ自動弁が減圧弁である。圧力を下げる目的は、蒸気温度を下げて所望の加熱温度に保つためである。
【0015】
減圧の基本原理は、絞り現象と呼ばれるもので、蒸気が管内を流れるとき、蒸気が流れる通路を絞ると、絞られた箇所よりも下流側の蒸気圧力が低くなる。これが蒸気の減圧である。単に絞るだけであれば、バルブを中間開度に固定したり、オリフィスプレートを設けたりする方法があるが、この方法では、流量が変化した際に圧力も変わるという問題がある。そこで、流量や、一次側の圧力(絞り箇所の上流側の圧力)が変わっても、二次側の圧力(絞り箇所の下流側の圧力)が変動しないように、弁を通過する流体のエネルギーを直接利用して自動的に弁開度が変化するように設定されたバルブが減圧弁である。
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の対象である弁装置を用いた減圧弁の一種であるパイロット作動式の減圧弁の基本構成を示す。図1において、減圧弁は流体の一種である蒸気Sが流れる主通路1に配置されている。減圧弁PRVのケーシング2は、本体ケース4と、上ケース6と下ケース8とを連結してなる。本体ケース4の内部に、一次側通路10と、二次側通路12と、その間にある弁室14とが形成されている。一次側通路10および二次側通路12が、蒸気Sが流れる主通路1の一部を形成する。弁室14には、弁ホルダ16と、その内部を摺動する主弁体18とが配置されている。弁ホルダ16は、その上部が本体ケース4にねじ連結により支持されている。
【0017】
主弁体18は、コイルスプリングからなる主ばね体20により、弁ホルダ16に形成された主弁シート22に接触して閉弁する方向にばね力が付加されている。弁室14の上方には、主弁体18を駆動する主弁駆動部24が配置されている。この主弁駆動部24は、主弁体18に当接するピストン26が、本体ケース4に支持されたシリンダ28に摺動自在に挿入されている。ピストン26の上方が、後述する主弁体駆動室27となっている。ピストン26には主弁体駆動室27の圧力を逃がす逃がし孔29が設けられている。
【0018】
上ケース6の上部に、パイロット弁ユニット30が配置されている。つまり、上ケース6が、パイロット弁ユニット30のケーシングを形成する。このパイロット弁ユニット30は、弁体32を含む弁装置34と、この弁装置34を開閉させるパイロット弁駆動部36とを有する。弁体32は、例えば、ボール形(球体)であるが、これに限定されない。弁装置34は、弁座ブロック37を有し、その先端部(図1の左端部)に弁シート40が形成されている。弁シート40の中央部に、弁体32により開閉される弁口41が開口している。
【0019】
弁座ブロック37に、シャフト部材42が前後方向(図1の左右方向)に貫通して挿入されている。シャフト部材42の先端部42aが弁体32に接触し、後端部42bがパイロット弁駆動部36の後述する先端板38に対向している。弁体32は、コイルスプリングからなる第1のばね体44によって弁シート40に押し付けられている。第1のばね体44は、上ケース6に設けた第1のばね受け48との間に介装されている。
【0020】
パイロット弁駆動部36は、先端(図1の左端)の先端板38が、後方(図1の右方)から前方(図1の左方)へ向かって、コイルスプリングからなる第2のばね体54によって押圧されている。第2のばね体54は、先端板38に接触する先端部材56と、カバー部材50の内側に配置された第2のばね受け58との間に介装されている。カバー部材50は、上ケース6(ケーシング)にねじ連結されている。カバー部材50と先端部材56との間にプッシュロッド60が配置され、このプッシュロッド60は第2のばね体54の内側空間を通っている。
【0021】
パイロット弁駆動部36は、圧力調整手段49を有している。圧力調整手段49は、前記先端板38とベローズ43とを有し、第2のばね体54を閉弁方向(右方向)に後退させる。つまり、圧力調整手段49は、第2のばね体54をそのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材を構成する。
【0022】
先端板38にベローズ43の先端部43aが接続されており、ベローズ43の基端部43bが、上ケース6とカバー部材50との間で固定支持されている。カバー部材50に、圧力調整用の調整ハンドル52が回動自在にねじ連結されている。
【0023】
弁装置34の前側(左側)には第1のばね体44を収納するパイロット室62が配置されている。このパイロット室62に、一次導通路64を介して一次側通路10が連通している。パイロット室62には、異物除去用のスクリーン66が配置されている。スクリーン66には、複数のメッシュ(孔)が形成されている。
【0024】
また、弁装置34における弁体32の下流側に、弁口41に連通する貫通路68が形成されている。他方、圧力付加手段49が収納されている圧力導入室70には、二次導通路72を介して二次側通路12が連通している。
【0025】
つまり、一次導通路64が弁体32の流入路を構成し、貫通路68が弁体32の流出路を構成し、その間にパイロット室62が形成されている。パイロット室62に、弁体32および第1のばね体44が収納されている。つまり、パイロット室62が、弁体32および第1のばね体44を収納する弁室を構成する。スクリーン66は、流入路64に設けられて、パイロット室(弁室)62に異物が進入するのを防ぐスクリーン部材を構成する。
【0026】
つぎに上記構成の作動を説明する。
[減圧前]
図2は減圧動作の開始前を示し、主弁体18が閉弁状態にある。この減圧弁に蒸気Sが通気されると、蒸気Sは一次側通路10から一次導通路64を通ってパイロット室62に達する。
【0027】
[圧力調整]
調整ハンドル52を減圧方向(左回り)に回転させると、図3に示すように、圧力付加手段49のプッシュロッド60が前方(左方向)へ移動する。これに伴い、ベローズ43が伸長して先端板38によりシャフト部材42を前方(左方向)へ移動させ、弁体32を開く。これにより、流出路(貫通路)68に蒸気Sが流れ、ピストン26を押し下げて主弁体18を開弁させる。このとき、圧力付加手段49の先端の押圧板38と弁座ブロック37の背面との間には若干の隙間Gが存在する。主弁体18の開弁により、一次側通路10内の蒸気Sが二次側通路12に流入して減圧される。
【0028】
[減圧の保持]
二次側通路12に流入した蒸気Sの一部が、図4に示すように、二次導通路72を通って圧力導入室70に達する。圧力導入室70内の蒸気圧力によって圧力付加手段49のベローズ43が押し縮められ、先端板38が右方向へ後退する。これにより、シャフト部材42の後方(右方向)への移動を許容して弁体32を閉弁方向に移動させる。このようにして主弁体駆動室27の圧力が調整されることで、主弁体18の開度が調整され、二次側通路12の圧力が一定に保たれる。
【0029】
つぎに、本発明の第1実施形態の要部であるスクリーン構造について図5~8により説明する。図5に示すように、弁装置34は、さらに、一次導入路(流入路)64におけるスクリーン部材66よりも上流側に設けられたプレスクリーン80を備えている。本実施形態では、プレスクリーン80は、一次導入路64における本体ケース4に形成される部分に設けられている。ただし、プレスクリーン80は、一次導入路64における上ケース6に形成される部分に設けられてもよい。
【0030】
図6(A)に示すように、本体ケース4に、一次導入路64と装置の外部を連通させる開口4aが形成されている。プレスクリーン80は、開口4aを介して一次導入路64に着脱自在に設置されている。開口4aは、蓋部材85により閉塞されている。詳細には、ボルトのような締結部材(図示せず)により、蓋部材85が本体ケース4に着脱自在に取り付けられている。
【0031】
プレスクリーン80は、スクリーン部材66よりもメッシュサイズが小さく設定されている。ここで、「メッシュサイズ」とは、金網における網目の大きさをいう。つまり、メッシュサイズが小さいスクリーンほど、これを通過する際に小さな異物を捕捉できる。
【0032】
本実施形態のプレスクリーン80は、メッシュサイズの異なる2つの第1および第2のスクリーン82,84を有している。詳細には、第1のスクリーン82は、第2のスクリーン84よりもメッシュサイズが小さく、図6(B)に示すように、第2のスクリーン84よりも下流側に配置されている。すなわち、第1のスクリーン82のメッシュサイズが最も小さく、第2のスクリーン84のメッシュサイズが2番目に小さく、スクリーン部材66のメッシュサイズが最も大きい。
【0033】
ただし、プレスクリーン80のスクリーンの数は2つに限定されず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、スクリーンの数が複数の場合、メッシュサイズがすべて異なっていてもよく、すべて同じであってもよい。さらに、スクリーンの数が3つ以上の場合、一部のメッシュサイズが同じで、他部のメッシュサイズが異なっていてもよい。
【0034】
プレスクリーン80は、オン・オフ自在に構成されている。ここで、オン・オフ自在とは、スクリーン82,84をオン状態とオフ状態に切り替えることが可能なことをいう。この場合、「オン状態」とはスクリーン82,84が作動している状態、すなわち、図6(B)に示すように、一次導入路64を塞ぐように位置してメッシュサイズよりも大きな異物を捕捉可能な状態をいう。一方、「オフ状態」とはスクリーン82,84が不作動な状態、すなわち、図6(A)に示すように、一次導入路64を開放するように位置して、異物を捕捉しない状態をいう。
【0035】
プレスクリーン80の駆動機構Mを説明する。駆動機構Mは、流入路64を流れる流体Fの温度変化によりプレスクリーン82,84をオン・オフする駆動源86と、プレスクリーン80と駆動源86とを連結して駆動源86の動力によりスクリーン82,84をオン・オフするリンク機構88とを有している。
【0036】
本実施形態の駆動源86は、バイメタルユニット90と、圧縮ばね型のばね部材92とを有している。バイメタルユニット90は、図7に示すように、熱膨張率が異なる2枚の金属板を貼り合わせて構成された複数のバイメタル90aからなる。バイメタルユニット90は、図6(A)に示す一次導入路64内に前後方向(図6(A)の左右方向)に伸縮自在に配置されている。詳細には、複数のバイメタル90aが前後方向に並べて配置されている。ばね部材92も、開口4aから一次導入路64に渡って前後方向(図6(A)の左右方向)に伸縮自在に配置されている。
【0037】
バイメタルユニット90とばね部材92は、前後方向(図6(A)の左右方向)に移動自在な可動部材94を介して接している。詳細には、バイメタルユニット90の一端(前端)は可動部材94に当接しており、他端(後端)は固定部材96を介して本体ケース4に固定されている。一方、ばね部材92の一端(前端)は受け板98に当接しており、他端(後端)は可動部材94に当接している。
【0038】
可動部材94は、図7のガイド部材100を介して前後方向に移動自在に構成されている。ガイド部材100は、前後方向(図6(A)の左右方向)に延びる棒状の部材であり、その一端(前端)が受け板98に支持され、他端(後端)が固定部材96に支持されている。ガイド部材100は、バイメタルユニット90、可動部材94およびばね部材92を貫通して延びている。これらバイメタルユニット90、ばね部材92、可動部材94、固定部材96、受け板98およびガイド部材100により、駆動源86が構成されている。
【0039】
図8に示すように、本実施形態では、可動部材94および固定部材96は、左右方向に長手方向を有する棒状の部材である。本実施形態では、可動部材94および固定部材96は、直方体形状であり、同一サイズで、同一形状である。ただし、可動部材94と固定部材96の形状はこれに限定されず、また、各部材94,96で、サイズ、形状が異なっていてもよい。
【0040】
本実施形態では、バイメタルユニット90、ばね部材92およびガイド部材100は、可動部材94および固定部材96の左右の両端部に設けられている。つまり、バイメタルユニット90、ばね部材92およびガイド部材100は、2つずつ設けられている。ただし、バイメタルユニット90、ばね部材92およびガイド部材100の配置、数はこれに限定されない。
【0041】
一次導入路64が高温になると、図7(A)に示すように、各バイメタル90aが前後方向に湾曲して、バイメタルユニット90が前後方向に伸びる。その結果、可動部材94がバイメタルユニット90によって前方(図7(A)の左側)に押され、ばね部材92のばね力に抗して前方に移動する。
【0042】
一次導入路64が低温になると、図7(B)に示すように、バイメタルユニット90が真直な形状に戻る(前後方向に縮む)。その結果、可動部材94がばね部材92のばね力によって後方(図7(B)の右側)に押されて後方に移動する。このように、本実施形態の駆動源86では、一次導入路64内の温度変化により可動部材94が前後方向に移動して、駆動力を発生させている。
【0043】
図8に示すリンク機構88は、可動部材94および固定部材96とスクリーン82,84に回動自在に連結されたリンク体102を有している。リンク体102は、複数の細長いリンク片を連結したものである。
【0044】
つぎに、本実施形態のプレスクリーン80の動作を説明する。作動前あるいは作動開始直後、一次導入路64の内部は低温であるから、バイメタルユニット90は縮んだ状態(図7(B)の状態)であり、プレスクリーン80は、図6(B)のオン状態となっている。したがって、各スクリーン82,84により、使用開始直後のスケールが捕捉される。
【0045】
作動開始からある程度の時間が経過すると、一次導入路64の内部は高温となるから、バイメタルユニット90は伸びた状態(図7(A)の状態)となり、リンク体102の作動によりプレスクリーン80は、図6(A)のオフ状態となる。したがって、初期段階でプレスクリーン80に目詰まりが起こった場合でも、蒸気の流量に影響しない。以降、図6(A)のオフ状態で運転が継続される。
【0046】
上記構成によれば、初期段階ではプレスクリーン80をオン(図7(A)の作動状態)とすることで、作動開始直後の弁体と弁シートとの間へのスケールの噛み込みを防ぐことができる。また、初期段階を過ぎた後にプレスクリーン80をオフ(図6(A)の不作動状態)とすることで、初期段階でプレスクリーン80に目詰まりが起こった場合でも、蒸気の流量に影響しない。その結果、スクリーン部材66(図5)のメンテナンス頻度の増加を抑制できる。
【0047】
プレスクリーン80は、駆動源86により自動でオン・オフされるので、操作遅れ(ヒューマンエラー)を回避することができる。したがって、初期段階に確実にプレスクリーン80をオン(作動状態)とすることができる。
【0048】
駆動源86にバイメタル90aが用いられているので、駆動源86を小形化でき、プレスクリーン80の開口4aからの着脱が容易である。また、プレスクリーン80は、リンク機構88を介してオン・オフされるので、簡単な構成で、プレスクリーンのオン・オフ操作(作動/不作動の切り替え)を行うことができる。
【0049】
プレスクリーン80は、メッシュサイズの異なる複数のスクリーン82,84を有し、メッシュサイズの小さな第1スクリーン82をメッシュサイズの大きな第2のスクリーン84よりも下流側に配置している。これにより、段階的にスケールの除去が行われ、作動開始直後の弁体と弁シートとの間へのスケールの噛み込みを効果的に防ぐことができるとともに、初期段階でのプレスクリーン80の目詰まりを抑制できる。
【0050】
図9,10を用いて、本発明の第2実施形態に係る弁装置34Aを説明する。図9(A)は本実施形態の弁装置34Aのプレスクリーン80のオフ状態を示す斜視図で、図9(B)オン状態を示す斜視図である。第2実施形態の弁装置34Aは、第1実施形態の弁装置34とは、駆動源86Aの構成のみが異なり、その他の構成は同じである。第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0051】
図10(A)は本実施形態の駆動源86Aのオフ状態を示す断面図で、図10(B)はオン状態を示す断面図である。本実施形態の駆動源86Aは、形状記憶ばね200を有している。形状記憶ばね200は、任意の形状を記憶させると、それが変形した場合でも温度変化で元へ戻る性質を有する合金(例えば、ニッケル・チタン合金)からなる。このような形状記憶ばね200を用いることにより、構造の簡単なアクチエータ(駆動源)を構成できる。
【0052】
形状記憶ばね200は、一次導入路64内に前後方向(図10(A)の左右方向)に伸縮自在に配置されている。詳細には、形状記憶ばね200の一端(前端)は可動部材208に係止されており、他端(後端)は固定部材206を介して本体ケース4に固定されている。より詳細には、可動部材208に係止部208aが形成され、形状記憶ばね200の一端(前端)が係止部208aに係止されている。
【0053】
可動部材208は、ガイド部材210を介して前後方向に移動自在に支持されている。ガイド部材210は、前後方向(図10(A)の左右方向)に延びる棒状の部材であり、その一端(前端)に移動規制部材212が設けられており、他端(後端)が固定部材96に支持されている。移動規制部材212は、可動部材208の前方(図10(A)の左側)への移動を規制するもので、本実施形態では、ガイド部材210の外周に設けられた環状の部材からなる。ただし、移動規制部材212の形状はこれに限定されない。
【0054】
ガイド部材210は、形状記憶ばね200および可動部材208を貫通して延びている。これら形状記憶ばね200、固定部材206、可動部材208およびガイド部材210により、駆動源86Aが構成されている。
【0055】
第2実施形態でも、図8に示す第1実施形態と同様に、可動部材208および固定部材206は、左右方向に長手方向を有する棒状の部材であり、両部材206、208は、同一サイズの直方体形状である。
【0056】
この第2実施形態でも、形状記憶ばね200およびガイド部材210は、可動部材208および固定部材206の左右の両端部に設けられている。つまり、形状記憶ばね200およびガイド部材210は、2つずつ設けられている。ただし、形状記憶ばね200およびガイド部材210の配置、数はこれに限定されない。
【0057】
一次導入路64が高温になると、図10(A)に示すように、形状記憶ばね200が前後方向に伸びる。これにより、可動部材208が形状記憶ばね200によって前方(図10(A)の左側)に押されて前方に移動し、移動規制部材212に当接する。
【0058】
一次導入路64が低温になると、図10(B)に示すように、形状記憶ばね200が前後方向に縮む。これにより、可動部材208が後方(図10(B)の右側)に引っ張られて後方に移動する。このように、本実施形態の駆動源86Aでは、一次導入路64内の温度変化により可動部材208が前後方向に移動して、駆動力を発生させている。
【0059】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第2実施形態によれば、駆動源86に形状記憶ばね200が用いられているので、第1実施形態よりも一層駆動源86Aを小形化でき、プレスクリーン80の開口4aからの着脱が容易になる。
【0060】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、パイロット弁ユニット30の弁装置34,34Aについて説明したが、本発明は、パイロット弁を有しない直動型の減圧弁にも適用できる。また、本発明は、減圧弁以外の弁装置にも適用できる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
32 弁体
34,34A 弁装置
40 弁シート
42 シャフト部材
44 第1のばね体(ばね体)
62 パイロット弁室(弁室)
64 一次導入路(流入路)
66 スクリーン(スクリーン部材)
68 貫通路(流出路)
80 プレスクリーン
82 第1のスクリーン
84 第2のスクリーン
86,86A 駆動源
88 リンク機構
90 バイメタルユニット(バイメタル)
200 形状記憶ばね
M 駆動機構
PRV 減圧弁
S 蒸気(流体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10