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特許7411255偏光された内部反射体を採用する導光光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】偏光された内部反射体を採用する導光光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20231228BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20231228BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20231228BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/28 Z
G02B5/00 Z
G02B5/30
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021501004
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 IB2019056057
(87)【国際公開番号】W WO2020016772
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】62/698,300
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518010049
【氏名又は名称】ルムス エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
【住所又は居所原語表記】8 Pinchas Sapir Street, 7403631 Ness Ziona, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダンジガー,ヨチャイ
(72)【発明者】
【氏名】マイケルズ,ダニエル
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-516862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0170213(US,A1)
【文献】特開2018-109738(JP,A)
【文献】特開2017-146494(JP,A)
【文献】特表2002-524763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0242392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
G02B 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光光学素子であって、
(a)少なくとも2つの平行な主要外部表面を有する透過的な基材であって、前記外部表面での内部反射によって基材内の光を導くための基材と、
(b)前記主要外部表面に平行でない前記基材内に配置された、複数の、相互に平行な内部表面であって、前記内部表面の各々の少なくとも一部が、第1偏光透過軸を有する構造偏光子を含み、前記構造偏光子が、前記第1偏光透過軸に対して平行に偏光された光に対して、実質的に透過的であり、かつ、前記第1偏光透過軸に対して垂直に偏光された光を、少なくとも部分的に反射する、内部表面と、
を含み、
前記内部表面のそれぞれの主軸は前記主要外部表面に平行な方向として定義され、前記複数の内部表面の各々の連続する内部表面ごとの前記第1偏光透過軸は、前記主軸に対して一連の角度で傾斜し、
前記連続する内部表面ごとの前記第1偏光透過軸の、前記主軸に対する一連の角度での傾斜は、周期的なねじれを形成してなる、導光光学素子。
【請求項2】
前記第1偏光透過軸が、前記内部表面の前のものに対して、各々の連続する内部表面ごとに、回転される、請求項1に記載の導光光学素子。
【請求項3】
前記構造偏光子が、前記第1偏光透過軸に対して垂直に偏光された光を、実質的に、完全に反射する、請求項1に記載の導光光学素子。
【請求項4】
前記基材の少なくとも一部が、複屈折性を示す材料から形成される、請求項1に記載の導光光学素子。
【請求項5】
前記第1偏光透過軸が、前記内部表面の前記複数の少なくとも2つの連続する内部表面に平行である、請求項に記載の導光光学素子。
【請求項6】
前記基材が、前記主要外部表面間で測定される厚さ有し、また、前記構造偏光子が、前記厚さの全体を満たさずに拡張する、請求項1に記載の導光光学素子。
【請求項7】
前記構造偏光子が、前記厚さの半分未満に及ぶ、請求項に記載の導光光学素子。
【請求項8】
前記構造偏光子が、前記主要外部表面のいずれか一方へは拡張しない、請求項に記載の導光光学素子。
【請求項9】
前記主要外部表面に平行でない前記基材内に配置された、相互に平行な内部表面の、追加セットをさらに含み、内部表面の前記追加セットの各表面の少なくとも一部が、多層の、部分的に反射する誘電性コーティングを含む、請求項1に記載の導光光学素子。
【請求項10】
内部表面の前記追加的セットが、前記複数の内部表面と平行である、請求項に記載の導光光学素子。
【請求項11】
内部表面の前記追加的セットが、前記複数の内部表面と交互になっている、請求項10に記載の導光光学素子。
【請求項12】
内部表面の前記追加的セットの表面が、前記複数の内部表面の表面と同一面上にある、請求項10に記載の導光光学素子。
【請求項13】
前記基材の厚さが、第1の層と第2の層とに細分化され、そして、前記複数の内部表面が前記第1の層内に位置し、また、内部表面の前記追加的セットが前記第2の層内に位置する、請求項に記載の導光光学素子。
【請求項14】
画像を観察者の目に提供するためのディスプレイであって:
(a)請求項1~13のいずれかの導光光学素子と;および、
(b)コリメートされた画像を生成する画像プロジェクタであって、前記画像プロジェクタが、コリメートされた画像を導光光学素子に導入し、導光光学素子内の内部反射によって伝播させるように、前記導光光学素子に光学的にカップリングし、
ここで、前記複数の内部表面が、コリメートされた画像の一部を観察者の目の方へカップリングアウトするように配向されている、画像プロジェクタと、
を含む、ディスプレイ。
【請求項15】
観察者からより遠隔の前記基材の側面に配置された吸収偏光子をさらに含み、前記吸収偏光子が、前記構造偏光子の前記第1偏光透過軸の平均的な方向と位置合わせされた、偏光の軸を有する、請求項14に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイシステムに関し、そして特に、ディスプレイでの使用に適した導光光学素子に関係する。
【0002】
あるディスプレイ技術、つまり仮想現実と拡張現実用途のためのニヤアイディスプレイなどのヘッドアップディスプレイに特に適したものは、導波路とも呼ばれ、一連の内部の、傾斜した、相互に平行な、部分的に反射する、平面(または「ファセット」)を具備する、導光光学素子を採用する。画像プロジェクタは導波路に光学的にカップリング(coupled to)され、そして、コリメートされた画像に対応する光を導波路に注入し、それが内部反射によって、導波路に沿って伝播し、かつ、一連のファセットでの反射によって、徐々に、導波路から観察者の目の方へカップリングされるようにし、それにより、目の反対側の有効アパーチャ光学アパーチャを、プロジェクタの出力アパーチャと比較して拡張させる。
【0003】
ファセットの反射性は、偏光と角度に敏感である。誘電性コーティングが、望ましい反射パターンを生成するのに、一般に使用される。
【0004】
光が導波路内で伝播すると、その光は、外部表面によって、全内部反射(TIR)の角度で、反射される。このタイプの反射は、S偏光とP偏光との間の位相変化をもたらす。結果的に、SまたはP偏光で伝播する光はその偏光を維持するが、両偏光成分を有する組み合わされた偏光(傾斜しているか、あるいは楕円状)は配向を変える。
【発明の概要】
【0005】
本発明は導光光学素子である。
【0006】
本発明の実施形態の教示によると、導光光学素子が提供され:(a)少なくとも2つの平行な主要外部表面を有する透過的な基材であって、外部表面での内部表面反射によって基材内の光を導くための基材と;および、(b)主要外部表面に平行でない基材内に配置された、複数の、相互に平行な内部表面であって、当該内部表面の各々の少なくとも一部が、第1偏光透過軸を有する構造偏光子を含み、当該構造偏光子が、第1偏光透過軸に対して平行に偏光された光に対して、実質的に透過的であり、かつ、第1偏光透過軸に対して垂直に偏光された光を、少なくとも部分的に反射する、内部表面と、を含む。
【0007】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1偏光透過軸は、内部表面の前のものに対して、各々の連続する内部表面ごとに、回転される。
【0008】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、構造偏光子の第1偏光透過軸は、内部表面の第1と内部表面の次のものとの間の第1の方向に回転され、そして、内部表面の当該次のものと内部表面のさらに次のものとの間の、当該第1の方向とは反対の、第2の方向に回転される。
【0009】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、構造偏光子の第1偏光透過軸は、内部表面の第1と内部表面の次のものとの間の第1の角度にわたって回転され、そして、内部表面の当該次のものと内部表面のさらに次のものとの間の、当該第1の角度より大きい、第2の角度にわたって回転される。
【0010】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、構造偏光子は、第1偏光透過軸に対して垂直に偏光された光を、実質的に、完全に反射する。
【0011】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、基材の少なくとも一部は、複屈折性を示す材料から形成される。
【0012】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、第1偏光透過軸は、複数の内部表面の少なくとも2つの連続する内部表面に平行である。
【0013】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、基材は主要外部表面間で測定される厚さを有し、そしてここで、構造偏光子が、その厚さの全体を満たさずに拡張する。
【0014】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、構造偏光子は、その厚さの半分未満に及ぶ。
【0015】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、構造偏光子は、主要外部表面のいずれか一方へは拡張しない。
【0016】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、主要外部表面に平行でない基材内に配置された、相互に平行な内部表面の、追加的セットも提供され、内部表面の当該追加的セットの各表面の少なくとも一部は、多層の、部分的に反射する誘電性コーティングを含む。
【0017】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、内部表面の追加的セットは、複数の内部表面と平行である。
【0018】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、内部表面の追加的セットは、複数の内部表面と交互になっている。
【0019】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、内部表面の追加的セットの表面は、複数の内部表面の表面と同一平面上にある。
【0020】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、基材の厚さは、第1の層と第2の層とに細分化され、そしてここで、複数の内部表面が第1の層内に位置し、また、内部表面の追加的セットが第2の層内に位置する。
【0021】
本発明の実施形態の教示によって、画像を観察者の目に提供するためのディスプレイも提供され:(a)前述の導光光学素子と;および、(b)コリメートされた画像を生成する画像プロジェクタであって、当該画像プロジェクタは、コリメートされた画像を導光光学素子に導入し、導光光学素子内の内部反射によって伝播させるように、導光光学素子に光学的にカップリングし、ここで、複数の内部表面が、コリメートされた画像の一部を観察者の目の方へカップリングアウトするように配向されている、画像プロジェクタと、を含む。
【0022】
本発明の実施形態のさらなる特徴によれば、観察者からより遠隔の基材の側面に配置された吸収偏光子も提供され、当該吸収偏光子は、構造偏光子の第1偏光透過軸の平均的な方向と位置合わせされた、偏光の軸を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、添付の図面を参照して、例示のみによって、本明細書で説明される。
図1】本発明の態様の教示に従って、構築されかつ操作可能な、ディスプレイシステムで使用される、導光光学素子(LOE)の概略図であり、一連の構造偏光子内部ファセットを通過する光線内の、偏光の進行を示す。
図2図1に類似する概略図であり、LOEの最初の内部ファセットの偏光調整の付加を示す。
図3図1に類似する概略図であり、S-偏光され、カップリングインされた画像の、注入の事例を示す。
図4図1に類似する概略図であり、LOEに沿って通る光の偏光をさらに安定させるための、軸上の構造偏光子の付加を示す。
図5A】二次光線経路を示す概略図であり、これに沿って観察者が実世界オブジェクトを観察することができ、それにより、ゴースト画像のリスクがもたらされる。
図5B】本発明の態様に従って、図5Aの二次光線経路を弱めるための、外部偏光子の使用を示す、図5Aに類似する図である。
図6】オーバーラップしているファセットを採用する、本発明の態様に係るLOEを示す、概略側面図である。
図7A】本発明の教示に係るLOEの実装を示す概略側面図であり、ここでは、比較的浅い角度のファセットと、より高い角度の光線とによって、単一のファセットを複数回通過する光線経路が、導かれ得る。
図7B】LOEの主要表面から間隔を置いて配置されたLOEの層内の、構造偏光子反射表面の局在を示す、図7Aに類似する図である。
図7C】LOEの主要表面から間隔を置いて配置されたLOEの層内の、構造偏光子反射表面の局在を示す、図7Aに類似する図である。
図8A】単一のLOE内の多層の、誘電性コーティングされた、部分的に反射する内部表面を具備する構造偏光子内部表面を、交互になった構成で統合する、本発明のさらなる態様の教示に係る、LOEの概略側面図である。
図8B】単一のLOE内の多層の、誘電性コーティングされた、部分的に反射する内部表面を具備する構造偏光子内部表面を、同一平面上の構成で統合する、本発明のさらなる態様の教示に係る、LOEの概要略面図である。
図9】同じ配向を有する一連の構造偏光子内部ファセットを通って、複屈折性導波路に沿って通る光線における、偏光の進行を示す、図1に類似する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、導光光学素子(LOE)と、そのようなLOEを採用する、対応ディスプレイシステムである。
【0025】
本発明に係るLOEの原理および働きは、図面とそれに伴う説明を参照して一層よく理解され得る。
【0026】
図面に注意を向ける前に、一般的に、本発明の態様に係る導光光学素子は、外部表面での内部反射によって、基材内で光を導くための、少なくとも2つの平行な主要外部表面を有する、透過的な基材を含む。複数の相互に平行な内部表面は基材内に配置され、それらは主要外部表面に対して平行でない。内部表面の各々の少なくとも一部には、第1偏光透過軸を有する構造偏光子が配される。構造偏光子は、第1偏光透過軸に対して平行に偏光された光に対して、実質的に透過的(90%を超える透過率)であり、また、第1偏光透過軸に対して垂直に偏光された光を、少なくとも部分的に反射する。連続する内部表面の偏光軸を、TIRの偏光混合特性と共に適切に配向すること、および/または 複屈折性の材料を使用することによって、各連続するファセットからの画像証明のカップリングアウトの望ましい割合を達成することが可能である。
【0027】
本発明のある好ましい実施形態は、配向高感度偏光反射体(または「構造偏光子」)を採用し、それは、1つの入射偏光を透過させ、反射体の固有の軸配向に従って、垂直の偏光を反射する。そのような構造偏光子の例は、(例えば、米国ユタ州のMoxtek Ink.から市販されている)ワイヤ-グリッドフィルムを含み、ここで、ワイヤの配向が、反射される偏光を決定する。構造偏光子の他の例は、米国ミネソタ州の3M Companyから市販されている、複屈折性誘電性コーティングまたはフィルムである。本発明の「構造偏光子」という用語はこれらの例に限定的でなく、また、第1の軸に対して、平行な電界ベクトルで平面偏光された光入射が、主に/大部分で反射され、また、第1の軸に対して、垂直な電界ベクトルで平面偏光された光入射が、主に/大部分で透過されるような、異方的光学特性を有する、任意のおよび全ての偏光選択的な素子を、一般に、指す。最も好ましくは、透過された偏光は、(「実質的に透過的である」と言われる)90%を超える透過率を示し、そして、最も好ましくは、95%を上回る透過率を示す。反対に、ある実装の反射偏光は、(90%を超える反射を示す)「実質的に完全反射」し、そして、最も好ましくは、95%を上回る反射である。ある好ましい事例では、2つの偏光軸間の分離は、実質的に完全であり、透過偏光の1%未満が反射され、そして、反射偏光の1%未満が透過される。混合偏光、または主要軸に対して中間角の偏光の平面で平面偏光されたビームは、第1の軸に対して平行な成分と垂直な成分に分解され、対応軸に対する角度のコサインに対応する割合で、部分反射と部分透過がなされるであろう。
【0028】
実装の代替的セットでは、構造偏光子の反射率は、例えばワイヤーグリッドの導電率、誘導性コーティングのパラメータを変化させることによって、または、作用する光の偏光に対して、その軸を回転させることによって、変更することが可能である。例えば、このように調節されたワイヤーグリッド偏光子は、P偏光を透過し続けることができるが、ある選ばれた値へと低下されたS偏光の低下された反射率を有するかもしれず、例えば、透過されている残りのS偏光について80%または50%などとなり得る。このことは、システム設計に追加的自由度を付加する。例えば、同じ配向のファセットのいくつかまたは全てを有することが可能になり、そしてその後、ファセットからファセットへ、連続的に増加する反射率を使用することによって、カップリングアウトされるS偏光の割合を調節することが可能になる、
【0029】
本発明の態様によれば、構造偏光子がファセットの反射メカニズムとして使用され、ここで、その軸は導波路の軸と異なり、つまり、基材の主要表面に対して、平行でもなく垂直でもない。ファセットにおける構造偏光子の実装は、フィルムの適用によって、または直接コーティングによって、可能である。一連のファセットは、好ましくは、接合部が適切なフィルムかコーティングで結合されたプレートの積み重ねを形成し、その後、その積み重ねを適切な角度で切断および研磨し、随意に、(以下に例示されるような)追加的な、対向する層および/または内部表面で挟まれる他の層を具備する、内部ファセットを形成することによって構築される。
【0030】
図1は、本発明の態様に係る、アーキテクチャを示す。導波路(4)は、ファセット(6)、(8)および(10)(明瞭さのために3つのみが示される)を有する。偏光光線(12)は、導波路へ注入され、そして、TIRによって導波路で反射されながら伝播する。光線がファセットを横切って通り(円形の点でマークされている)、光の一部が反射され、そして基材からカップリングアウトされ、ここでは、ファセット(6)からの光線(14)、ファセット(8)からの光線(15)、およびファセット(10)からの光線(16)として示される。光線(12)および結果として生じるカップリグアウトされた光線(14-16)は、画像の各ピクセルに異なって角度付けされた光線を含む、コリメーとされた画像の単一の光線を表わすが、同様の原理が各々に当てはまる。
【0031】
偏光スキーム(18A-18D)は、伝播している光線から観察されるような光の偏光配向を示す。(18A)は、反射する導波路に対して縦方向である、注入された光線のP偏光を示し、ここでは、Sが、導波路に対して横方向の偏光(この例ではエネルギーを有していない)である。1つの偏光のみが励起される((18A)で双頭矢印によって示されるようなP)ので、この偏光は、導波路(4)内におけるTIR伝播の間、維持される。スキーム(18B)は、ファセット(6)に作用する時の、光線のP偏光を示し(双頭矢印)、そして、破線は、伝播の方向に沿って見られるような、ファセット(6)上の構造偏光子反射軸を、概略的に表す。ファセット(6)上の反射軸が、光線Pの偏光に対して垂直であったならば、光線(14)として外に反射される光は皆無であろうが、反射軸((18B)の破線)は、意図的にわずかに傾けられる(回転される)。傾斜角度は、(14)として導波路からカップリングアウトされる光量を、傾斜角度のサインに近似する割合で、決定する。
【0032】
ほとんどの光エネルギーは、導波路内でTIRとして伝播し続ける。しかし、残る光の偏光が、導波路面に対する垂直状態からわずかに逸れているので、いずれのTIRについても、垂直状態からさらに逸脱することになるだろう。この逸脱は、18Cの楕円によって表わされる。ここで、伝播光線は、ファセット(8)に作用する際に、基材軸に対する垂直状態から逸脱する。垂直状態からのドリフトを最小限にするために、ある場合には、18Bに対して18Cの破線で示されるように、次のファセット(8)の構造偏光子軸を、ファセット(6)に対する元々の偏光と反対方向に傾けることが好ましい。光線(15)は、構造偏光子の反射軸(破線)に対して平行な作用光(楕円)の偏光の成分によって決まる、明度で生成され、それは第1偏光透過軸に対して垂直である。他の場合では、隣接するファセット偏光軸間の回転が同じ方向に漸次進むのであれば、画像均一性のための利点があるかもしれない。
【0033】
スキーム(18C)に示される同じプロセスは、ファセット(10)上で繰り返され、スキーム(18D)として示される。
【0034】
構造偏光子の周期的なねじれは、伝搬光線の偏光のドリフトを制限し、結果として、導波路に沿った均一な光の抽出と、観察者の方への光エネルギーのより効率的な抽出とを可能にする。
【0035】
光(12)が導波路内で伝播すると、そのエネルギーは低下する。したがって、照明均一性は、光の注入点からさらに遠い場所のファセットのアウトカップリングを増加させることによって、改善される。このことは、図1に示されるように、構造偏光子のねじれ角度をファセットごとに増加させていくことによって達成される。構造偏光子のねじれ(破線)は、ファセット6(18B)からファセット8(18C)へ、そしてファセット10(18D)へと増加する。各々の連続するファセットでのアウトカップリングの割合を調節するために、前のファセットに対する構造偏光子の回転を使用すると、製作のためには特に単純な構造となる、というのは、各ファセットで使用される構造部品が本質的に同じであるため、各々の連続する接合部で独自に階層化された構造による製作の必要が無いからである。
【0036】
ある実装では、導波路の素材は有利に均一かつ等方的であり、したがって、複屈折性が存在せず、また光線に取り入れられる偏光の逸脱がより小さくなる。しかし、いくつかの場合には、プラスチックの導波路を形成することが好ましいかもしれず、そのような場合には、いくらかの複屈折性が存在する。本発明のある実装によれば、あらゆるファセットが(TIRまたは他によって)逸脱したエネルギーをアウトカップリングし、透過光を構造偏光子の軸に従って平面偏光構成に導くので、これらの逸脱は除去される。図2では、導波路(24)の構造偏光子軸と平行な構造偏光子軸を有する、追加的なファセット(20)が導入される。結果として、素材の複屈折性または((24)で楕円の偏光として表される)不正確な入力カップリングによって導入された任意の逸脱は、カップリングアウトされ、そして、偏光配向のさらなる悪化が抑制される。このことによって、ファセット(6)は、図1に示されるような名目上の偏光を、確実に受け取ることになる。
【0037】
この追加的な偏光ファセットは、(逸脱した光を必ずしも観察者へ反射するわけでは無い)任意の角度であり得、また、反射ファセットが任意の構造偏光子を持たず誘電的であるシステムに、組み込まれ得る。
【0038】
図3は、図1と同じアーキテクチャであるが、S偏光の注入と構造偏光子反射軸の適切な回転とを伴うものを示す。
【0039】
偏光配向のさらなる安定化は、図4に示されるような連続するファセット間の、構造偏光子の相対的配向の漸次的回転によって達成され得る。光は、(本明細書ではP偏光であると仮定される)垂直な偏光で注入され、(18Bと同様に)傾けられた構造偏光子軸(30B)を有する第1のファセットに作用する。ここで、光の偏光はドリフトし、そして、次のファセットは構造偏光子の垂直軸を有する(30C)。結果として、軸から逸れた光はカップリングアウトされ、また、透過光は、次のファセット(30D)に作用する際に、再度P偏光される(双頭矢印)。(30D)では、構造偏光子はもう一度(好ましくは、(30B)より大きな角度で、かつ、どちらか一方の方向となり得るように)傾けられる。そのプロセスは、(30E)と(30F)で繰り返される。基材の軸に対して平行な偏光に間欠的に戻ることによって、偏光は安定し、また、垂直に偏光するファセットとその次のファセットとの間で一定状態になる。
【0040】
他の構造偏光子軸ねじれプロファイルも、角度のねじれを一定に維持することを含んで可能であり、それによって製造が単純化される。十分な複屈折性が存在する場合、同じ配向(ゼロ回転)を有する一連の偏光ファセットを採用しても良く、以下でさらに説明するように、連続するファセット間の複屈折性による偏光の混合に依存し得る。
【0041】
構造偏光子は周辺光も反射し、そのことが、ある場合には、図5Aに説明されるような問題につながり得る。導波路(4)は注入された光(12)を導き、そして、ファセットは、既に説明されたように、観察者(32)の目に光を透過する。風景(34)からの光源は、光線(38)として直接透過される一方の成分と、透過される前に反射される光線(40)としての垂直成分との、2つの偏光に、構造偏光子によって分割される、未偏光の光(36)で導波路を照らす。
【0042】
2つの透過光線(38)と(40)は平行であるが、このことは、オブジェクト(34)が近くにある場合には、観察者にとっては妨害的なものとなり得る。図5Bは、外側「世界」のために、LOEの外面に対して平行に配置される偏光子(42)を導入することによって、本発明の実施形態に従って、この問題に対処するためのアプローチを示す。偏光子の透過配向は、構造偏光子の透過軸の平均的な配向に対して平行であり、そのため、反射され偏光された光線(40)は、実質的に弱められるだろう。連続するファセット間の構造偏光子軸の回転が漸進的に同じ方向である場合、外部偏光子(42)の軸は、好ましくは、導光路の外部主要表面に投影されるようなファセットの軸の平均に従って配向されるように選択され、それにより、ファセットの軸と外部偏光子の軸との間のずれが最小限に抑えられる。
【0043】
図6は、画像の均一性が増した、本発明の実施形態に係る構成を例示する。ファセットはオーバーラップしており(例えば(45)、(46)、および(47))、結果として、これらのファセットによって反射された光のいくらかは、外に反映される前に、隣接するファセットによって反射されるだろう。
【0044】
光線(12)は、(点線でマークされた)既定の偏光を有する、導波路(4)内で伝播する。それがファセット(45)に作用すると、(実線でマークされた)垂直な偏光成分は、光線(48)として直接外へ反射される。光線(12)が伝播し続けると、それはファセット(46)に作用する。このファセットからの反射は、隣接するファセット(45)に作用し、その後、(46)によってもう一度反射し、(50)としてカップリングアウトする。同じプロセスは光線(51)を生成する。
【0045】
これらの複数回の反射が、基材からのカップリングアウトのために既に一度屈折された光線で生じることは、注目するべきことである。これらの光線は、導光路に沿って伝播する全体の光エネルギーのほんの一部であるが、効率的に反射されて複数回の反射を経るように、主として横方向の偏光を有する。このことは、伝播する光線(12)を邪魔することなく、画像の均一性を増強するための「混合」効果を最大化し、その結果、伝播する画像を歪ませ得る。
【0046】
図7Aは、ファセットの導波路軸に対する角度が、光線の角度より浅い場合の、導波路(4)内の光線(12)の伝播を示す。この結果、光線が対頂角の角度(60)でファセットを通り抜けることができ、そして、正の角度(62)で同じファセットを通ることができる、形状になる。同じプロセスが(64)と(66)に存在する。2度同じファセットを通ることが、伝播する照明の非均一性のソースとなり得る。さらに、構造偏光子の透過率が(例えば吸収ロスによって)高くない場合、ファセットを通る複数回の透過は光のパワーを低下させるであろう。図7Bは、ファセットが導波路幅にわたって拡張することのない、変更されたアーキテクチャを示す。結果として、ファセットのダブルの通過のケースは大幅に減少し、ファセット(したがって構造偏光子)を横切る通過が減少し、その結果として、照明はより均一的となり、減衰はより小さくなる。
【0047】
図7Cは、透過率をさらに改善し、かつ均一性をさらに改善するための、ファセットの狭いセクションを示す。1つの非限定的な例によって、ファセットは、主要な平行面間の導光路が及ぶのは、全厚さの、半分未満、いくつかの場合では3分の1未満、そしてここで示される例では4分の1未満であり得る。この場合、ファセット間の間隔は好ましくは小さく、したがって、観察者に対する非均一的な視認性をさらに低下させる。例えば、ニヤアイディスプレイの文脈では、導光路の主要表面に対して平行な伝播の方向に沿って測定される、隣接するファセット間の距離は、わずか2mmであって良く、ある特に好ましい場合には、わずか1mmであって良い。
【0048】
図7Bと7Cの好ましいが非限定的な例では、ファセットは基材の主要表面へと拡張せず、むしろ、中間層に含まれる。7Bと7Cに示されるマージンは、7Aに示される構成の側面(または両側面)に、透過的なバンク(bank)を取り付けることによって、生成され得る。
【0049】
構造偏光子を備えたファセットと部分反射誘電性コーティングを備えたファセットとの組み合わせを採用する、ハイブリッドファセットシステムは、いくつかの場合には、2つの技術の利点を組み合わせ、そしてそれによって、均一性、エネルギー抽出、および透過率を向上させ得る。図8Aでは、導波路(60)は、(単線で示される)構造偏光子ファセット(62)と(二重線で示される)誘電性ファセット(64)を組み込む。ビーム(12)が導波路内で伝播すると、両方のファセットは光を観察者の方へ反射する。
【0050】
図8Bは、誘電性ファセットがセクション(68)にあり、構造偏光子ファセットがセクション(70)にある、製造するのが簡易な構成を示す。2タイプのファセットは互いに対して平行であっても良く、または、示されるように、同一平面上にあっても良い。実装の代替的セットでは、(誘電性)ファセットの第2のセットは、構造偏光子ファセットとは異なって配向付けられて良く、例えば、(本出願の先行技術を構成しない)PCT出願番号PCT/IL2018/050701の教示に従って、二次元のアパーチャ拡張を達成する。
【0051】
様々な異なる構造と実装が、このハイブリッド構成を採用して実装され得る。:
1)構造偏光子ファセットと誘電性部分反射ファセットの両方は、S偏光を反射する。
2)誘電性ファセットはS偏光を反射し、そして、構造偏光子はP偏光を反射するように配向付けられる。
3)誘電性部分反射ファセットは、LOEに沿って同一(一定の反射率を有する)であり得る一方で、構造偏光子軸角度のばらつきが、LOEにわたる全体的なカップリングアウト割合において必要とされるばらつきを提供するために使用される。このことは、LOEの製造コストを大幅に低下させる。
4)構造偏光子が偏光スタビライザとして機能する(複屈折性が制御されていない)導光路に、主要材料としてプラスチックを使用すること。
5)最低限の複数経路でファセットをオーバーラップさせること:つまり、導波路に沿って、構造偏光子と誘電性コーティングされたファセットを交互に配置することによって、カップリングアウトされる光線が、LOEを出る前に、隣接する構造偏光子ファセットに遭遇するケースを最小限に抑えながら、ファセットの近接オーバーラップが達成される。
【0052】
構造偏光子ファセットアーキテクチャは、1Dの導波路、つまり光が平行な主要表面の単一ペアによって1次元で導かれるか、あるいは、2Dの導波路、つまり4度折返しの内部反射による、垂直表面の2つのペアによって導かれるかのいずれかで、実装され得る。
【0053】
上述されるように、導波路の媒体そのものは、複屈折性を導入し、かつ、それによって入射偏光光を回転させるように、設計され得る。図9は、そのようなアーキテクチャを概略的に示す。導波路(204)は、例えば、製造中にかけられた負荷、または、その平面の表面に複屈折性フィルムを取り付けることによって、複屈折性を有するようになる。この例では、導波路の複屈折性軸は、一点破線として示される。光は、(218A)で示されるように、この軸からいくらかのオフセット量で、導波路に注入される。それが伝播すると、導波路の複屈折性およびTIRは、(218B)で示されるように、偏光を回転させ、楕円形にする。偏光回転の量は、TIRの予想される回転に対する、導波路の複屈折性の量によって管理され得る。構造偏光子反射体(206)は、点線によって示されるような、傾けられた偏光反射軸配向を有する。その結果、透過後は、偏光は、光線(214)としての垂直偏光のカップリングアウト後に、(219B)に示されるようになる。
【0054】
この場合、導波路の一部または全部に沿って同じ偏光軸角度(配向)で設定された構造偏光子と協働することが可能であり、そのため上記のプロセスは、構造偏光子(208)と(210)とに関して、繰り返される。
【0055】
LOE構造のみが、ほとんどの図で示されているが、LOEは、観察者の目に画像を提供するための、ディスプレイ、一般にヘッドアップディスプレイ、好ましくは頭部装着型のディスプレイまたはメガネフレームに支持されるディスプレイなどの、ニヤアイディスプレイの一部としての使用が意図されていることが、理解されるであろう。そのようなすべての場合において、ディスプレイは、好ましくは、コリメートされた画像を生成する画像プロジェクタを含み、画像プロジェクタは、コリメートされた画像を導光光学素子に導入し、画像が導光光学素子内の内部反射によって伝播するように、そして、内部選択的反射表面によって漸次カップリングアウトされ、画像を観察者の目の方へ向けるように、LOEに光学的に結合される。
【0056】
例えば、照明源、LCOSチップなどの空間光変調器、および、一般に、すべてが1以上のPBSキューブの表面に配置される、または他のプリズム配置の、コリメート光学系を採用する、適切な画像プロジェクタ(または「POD」)の例は、当技術分野で周知である。同様に、カップリングイン反射体の使用によるものや、適切に角度付けられたカップリングプリズムによるものなどの、画像をLOEにカップリングさせるための、適切なカップリングイン構成は、当技術分野で周知である。説明を簡潔にするために、本明細書では、プロジェクタもカップリングイン構成も、これ以上は説明されない。
【0057】
上記の説明は例としての役割を果たすことのみを意図しており、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内において、他の多くの実施形態が可能であることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9