(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】散水装置、散水装置の制御方法及び散水方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20231228BHJP
F24F 1/42 20110101ALI20231228BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20231228BHJP
【FI】
F24F11/46
F24F1/42
F24F110:12
(21)【出願番号】P 2022014427
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】谷山 浩一
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-026685(JP,A)
【文献】特開2003-185190(JP,A)
【文献】特開平06-082177(JP,A)
【文献】特開2017-227417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0208887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/46
F24F 1/42
F24F 110/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空調装置の室外熱交換器に用いられる散水装置であって、
水蒸気が流れる蒸気管から水蒸気の凝縮水であるドレンを流入させるドレン管と、
前記ドレン管に接続された貯水タンクと、
前記貯水タンクからのドレンを前記室外熱交換器の伝熱管に散水する散水部と、
外気温を検出する外気温センサと、
前記貯水タンク内のドレン温度を検出するドレン温度センサと、
前記散水部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記空調装置が暖房運転していることを示す暖房運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が暖房運転していると判定される場合において、前記ドレン温度センサの検出温度が前記外気温センサの検出温度よりも高いことを条件に、前記貯水タンクのドレンが前記伝熱管に散水される暖房時散水制御が行われるように前記散水部を制御する、散水装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記空調装置が冷房運転していることを示す冷房運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が冷房運転していると判定される場合において、前記ドレン温度センサの検出温度が前記外気温センサの検出温度又は前記伝熱管の温度よりも低いことを条件に、前記貯水タンクのドレンが前記伝熱管に散水される冷房時散水制御が行われるように前記散水部を制御する、請求項1に記載の散水装置。
【請求項3】
前記制御部には、1日のうち前記散水部がドレンの散水を行う時間帯を示す散水時間帯情報が記憶されており、
前記制御部は、現在の時刻が前記時間帯内であることを条件に、前記暖房時散水制御を行う、請求項1または請求項2に記載の散水装置。
【請求項4】
前記貯水タンクのドレン水量を検出するための水量検出部を備え、
前記制御部には、前記室外熱交換器の熱負荷が高くなる時間帯としての高負荷時間帯が設定されており、
前記制御部は、少なくとも前記高負荷時間帯に前記暖房時散水制御によるドレンの散水を行う一方で、前記水量検出部による検出水量が減ると前記暖房時散水制御によるドレンの散水時間を短くするように構成されている、請求項1または請求項2に記載の散水装置。
【請求項5】
前記制御部には、1日のうち前記散水部がドレンの散水を行う時間帯を示す散水時間帯情報が記憶されており、
前記制御部は、現在の時刻が前記時間帯内であることを条件に、前記冷房時散水制御を行う、請求項2に記載の散水装置。
【請求項6】
前記貯水タンクのドレン水量を検出するための水量検出部を備え、
前記制御部には、前記室外熱交換器の熱負荷が高くなる時間帯としての高負荷時間帯が設定されており、
前記制御部は、少なくとも前記高負荷時間帯に前記冷房時散水制御によるドレンの散水を行う一方で、前記水量検出部による検出水量が減ると前記冷房時散水制御によるドレンの散水時間を短くするように構成されている、請求項2に記載の散水装置。
【請求項7】
前記散水装置は、前記貯水タンク内のドレン水量を調節する水量調節手段を更に備え、
前記制御部は、前記空調装置が暖房運転しているときの前記貯水タンク内のドレン温度が下がり難くなるように、前記貯水タンク内のドレン水量が、前記空調装置が冷房運転しているときの前記貯水タンク内のドレン水量よりも大きくなるように前記水量調節手段を制御する、請求項2、請求項5および請求項6のいずれか1項に記載の散水装置。
【請求項8】
前記散水装置は、前記貯水タンクの放熱を促進させるための放熱促進手段を更に備える、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の散水装置。
【請求項9】
冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空調装置の室外熱交換器に用いられる散水装置の制御方法であって、
前記散水装置は、水蒸気が流れる蒸気管から水蒸気の凝縮水であるドレンを流入させるドレン管と、前記ドレン管に接続された貯水タンクと、前記貯水タンクから流入したドレンを前記室外熱交換器の伝熱管に散水する散水部と、を備え、
前記制御方法は、
前記蒸気管から前記ドレン管を通して前記貯水タンクにドレンを溜める貯溜ステップと、
前記貯水タンクのドレン温度を検出するドレン温度検出ステップと、
外気温を検出する外気温検出ステップと、
前記空調装置が暖房運転していることを示す運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が暖房運転しているかどうかを判定する暖房判定ステップと、
前記空調装置が暖房運転していると判定された場合に、前記ドレン温度が前記外気温よりも高いことを条件に、前記散水部により前記伝熱管にドレンを散水する暖房時散水ステップと、を含む散水装置の制御方法。
【請求項10】
前記制御方法は、
前記伝熱管の温度を取得する伝熱管温度取得ステップと、
前記空調装置が冷房運転していることを示す運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が冷房運転しているかどうかを判定する冷房判定ステップと、
前記空調装置が冷房運転していると判定された場合に、前記ドレン温度が前記外気温又は前記伝熱管温度よりも低いことを条件に、前記散水部により前記伝熱管にドレンを散水する冷房時散水ステップと、を更に含む請求項9に記載の散水装置の制御方法。
【請求項11】
冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空調装置の室外熱交換器の伝熱管にドレンを散水する方法であって、
散水されるドレンの温度を検出するドレン温度検出ステップと、
外気温を検出する外気温検出ステップと、
前記空調装置が暖房運転していることを示す運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が暖房運転しているかどうかを判定する暖房判定ステップと、
前記空調装置が暖房運転していると判定された場合に、前記散水されるドレンの温度が前記外気温よりも高いことを条件に、水蒸気が流れる蒸気管からの水蒸気の凝縮水であるドレンが溜められたタンクからドレンを抜き出して前記伝熱管に向けて散水する暖房時散水ステップと、を含む散水方法。
【請求項12】
前記散水方法は、
前記伝熱管の温度を取得する伝熱管温度取得ステップと、
前記空調装置が冷房運転していることを示す運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が冷房運転しているかどうかを判定する冷房判定ステップと、
前記空調装置が冷房運転していると判定された場合に、前記ドレン温度が前記外気温又は前記伝熱管温度よりも低いことを条件に、水蒸気が流れる蒸気管からの水蒸気の凝縮水であるドレンが溜められたタンクからドレンを抜き出して前記伝熱管に向けて散水する冷房時散水ステップと、をさらに含む請求項11に記載の散水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散水装置、散水装置の制御方法及び散水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷房運転と暖房運転が可能なヒートポンプ式の空調装置に用いられる散水装置が知られている。例えば、特許文献1には、
図11に示すように、冷媒に温熱または冷熱を吸収させる室外機505と、室内に暖気または冷気を送る室内機506と、冷媒を循環させる冷媒配管507と、室外機505に散水を行う散水装置542と、を備えた空調装置501が開示されている。室外機505には、冷媒を大気と熱交換させる室外熱交換器と、冷媒を圧縮する圧縮機とが設けられている。この室外熱交換器は、空調装置が冷房運転するときに冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する一方で、空調装置が暖房運転するときに冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。散水装置542は、屋上に配置された水槽530から散布水を流入させる散水配管540と、流入させた散布水を室外機505の室外熱交換器に向けて噴出する散水ノズル541と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空調装置501では、冷房運転するときに、散水装置542が水槽530からの散布水を室外機505に散水する。これにより、室外熱交換器における冷媒の凝縮が促進されて、空調装置501の冷房能力が向上する。一方で、特許文献1の空調装置501では、暖房運転するときに、空調装置501の暖房能力を向上させることまでは考慮していない。
【0005】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、暖房運転と冷房運転とを行う空調装置において、暖房運転時に余分なコストをなるべくかけないようにしつつ空調装置の暖房能力を向上させる散水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、工場等において水蒸気が流れる蒸気管から比較的高温の余剰ドレンが廃棄されていることに着目し、この余剰ドレンを用いて暖房能力を向上できないか、鋭意検討し、本発明を創案した。
【0007】
本開示における散水装置は、冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空調装置の室外熱交換器に用いられる散水装置であって、水蒸気が流れる蒸気管から水蒸気の凝縮水であるドレンを流入させるドレン管と、前記ドレン管に接続された貯水タンクと、前記貯水タンクからのドレンを前記室外熱交換器の伝熱管に散水する散水部と、外気温を検出する外気温センサと、前記貯水タンク内のドレン温度を検出するドレン温度センサと、前記散水部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記空調装置が暖房運転していることを示す暖房運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が暖房運転していると判定される場合において、前記ドレン温度センサの検出温度が前記外気温センサの検出温度よりも高いことを条件に、前記貯水タンクのドレンが前記伝熱管に散水される暖房時散水制御が行われるように前記散水部を制御する。
【0008】
ヒートポンプ式の空調装置において暖房運転が行われる場合には、室外熱交換器は空調用冷媒を蒸発させるための蒸発器として機能する。上述のように構成された散水装置では、水蒸気が流れる蒸気管にドレン管を接続することにより、蒸気管の水蒸気を、暖房運転する空調装置の室外熱交換器への散水に活用することができる。そして、空調装置の暖房運転時に、暖房時散水制御により、外気温よりも高い温度を有するドレンを室外熱交換器の伝熱管に散水することにより、伝熱管における空調用冷媒の蒸発を促進できる。さらに、蒸気等の余剰水蒸気を活用することができるため、水道水や工水等を用いる場合に比べて水道代を節約できる。したがって、この散水装置によれば、空調装置が暖房運転するときに、運転コストを節約しつつ室外熱交換器の熱負荷を低減できる。
【0009】
また、寒冷地において空調装置が暖房運転するときには、室外熱交換器の伝熱管表面に着氷が発生し室外熱交換器の効率が低下することがある。しかし、この散水装置では、暖房時散水制御により、散水部を通じて外気温よりも高い温度を有するドレンが室外熱交換器の伝熱管に散水されるため、霜取装置等を用いることなく、伝熱管表面の着氷を抑制できる。
【0010】
また、散布水として水道水や工業用水を利用する場合には、散布水による室外熱交換器の腐食を抑制するために、散布水の中性化や不純物の除去を目的とした水処理が必要となる。しかし、この散水装置ではドレン管を通じて蒸気管の蒸気から発生したpHが中性であり不純物をほとんど含まないという特徴を有するドレンを散水に活用することにより、中性化や不純物除去などの水処理を省くことができるため、水処理コストを節約できる。
【0011】
前記制御部は、前記空調装置が冷房運転していることを示す冷房運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が冷房運転していると判定される場合において、前記ドレン温度センサの検出温度が前記外気温センサの検出温度又は前記伝熱管の温度よりも低いことを条件に、前記貯水タンクのドレンが前記伝熱管に散水される冷房時散水制御が行われるように前記散水部を制御してもよい。
【0012】
ヒートポンプ式の空調装置において冷房運転が行われる場合には、室外熱交換器は空調用冷媒を凝縮させるための凝縮器として機能する。上述のように構成された散水装置では、空調装置が冷房運転するときに、冷房時散水制御によって、散水部を通じて外気温又は伝熱管の温度よりも低い温度を有するドレンが室外熱交換器の伝熱管に散水される。これにより、伝熱管における空調用冷媒の凝縮が促進されるため、暖房運転時だけでなく冷房運転時においても室外熱交換器の熱負荷を低減できる。
【0013】
また、伝熱管の温度よりも低い温度を有するドレンを散水する場合には、貯水タンクのドレン温度を外気温まで下げることなく散水することができるため、貯水タンクのドレン温度が外気温まで下がるのを待つことなく散水できる。
【0014】
前記制御部には、1日のうち前記散水部がドレンの散水を行う時間帯を示す散水時間帯情報が記憶されていてもよく、前記制御部は、現在の時刻が前記時間帯内であることを条件に、前記暖房時散水制御を行ってもよい。
【0015】
この態様では、空量装置の暖房運転時において、制御部に記憶された時間帯にドレンの散水が行われる。例えば、電力消費が比較的大きくなるピーク時間帯にドレンの散水を行うことにより、消費電力のピークカットを行うことができるため、室外熱交換器の熱負荷を低減しつつ空調装置の電力代を効果的に節約できる。
【0016】
前記散水装置は、前記貯水タンクのドレン水量を検出するための水量検出部を備えていてもよい。前記制御部には、前記室外熱交換器の熱負荷が高くなる時間帯としての高負荷時間帯が設定されていてもよく、前記制御部は、少なくとも前記高負荷時間帯に前記暖房時散水制御によるドレンの散水を行う一方で、前記水量検出部による検出水量が減ると前記暖房時散水制御によるドレンの散水時間を短くするように構成されていてもよい。
【0017】
この態様では、暖房運転時に、少なくとも室外熱交換器の熱負荷が高くなる高負荷時間帯において暖房時散水制御が行われるため、高負荷時間帯における室外熱交換器の熱負荷を低減させることができる。さらに、貯水タンクのドレン水量が高負荷時間帯に散水されるドレン水量よりも多い場合には、貯水タンクのドレン水量に応じて高負荷時間帯以外の時間帯にもドレンの散水を行うことができる。
【0018】
前記制御部には、1日のうち前記散水部がドレンの散水を行う時間帯を示す散水時間帯情報が記憶されていてもよく、前記制御部は、現在の時刻が前記時間帯内であることを条件に、前記冷房時散水制御を行ってもよい。
【0019】
この態様では、暖房運転時だけでなく冷房運転時においても、制御部に記憶された時間帯にドレンの散水を行うことにより、室外熱交換器の熱負荷を低減しつつ空調装置の電力代を効果的に節約できる。
【0020】
前記散水装置は、前記貯水タンクのドレン水量を検出するための水量検出部を備えていてもよい。前記制御部には、前記室外熱交換器の熱負荷が高くなる時間帯としての高負荷時間帯が設定されていてもよく、前記制御部は、少なくとも前記高負荷時間帯に前記冷房時散水制御によるドレンの散水を行う一方で、前記水量検出部による検出水量が減ると前記冷房時散水制御によるドレンの散水時間を短くするように構成されていてもよい。
【0021】
この態様では、暖房運転時だけでなく冷房運転時にも、少なくとも室外熱交換器の熱負荷が高くなる高負荷時間帯において暖房時散水制御が行われるため、高負荷時間帯における室外熱交換器の熱負荷を低減させることができる。さらに、貯水タンクのドレン水量が高負荷時間帯に散水されるドレン水量よりも多い場合には、貯水タンクのドレン水量に応じて高負荷時間帯以外の時間帯にもドレンの散水を行うことができる。
【0022】
前記散水装置は、前記貯水タンク内のドレン水量を調節する水量調節手段を更に備えていてもよく、前記制御部は、前記空調装置が暖房運転しているときの前記貯水タンク内のドレン温度が下がり難くなるように、前記貯水タンク内のドレン水量が、前記空調装置が冷房運転しているときの前記貯水タンク内のドレン水量よりも大きくなるように、前記水量調節手段を制御してもよい。
【0023】
散水装置では、暖房運転時にはドレン温度が外気温よりも高い場合にドレンが散水され、冷房運転時にはドレン温度が外気温よりも低い場合にドレンが散水される。この態様では、暖房運転時の前記貯水タンクのドレン水量を冷房運転時の前記貯水タンクのドレン水量よりも大きくすることにより、暖房運転時に貯水タンク内のドレン温度を下がり難くし、冷房運転時に貯水タンク内のドレン温度が下がり易くできる。これにより、暖房運転時及び冷房運転時において、貯水タンク内のドレンの温度を散水可能な温度に保持し易くできる。
【0024】
前記散水装置は、前記貯水タンクの放熱を促進させるための放熱促進手段を更に備えていてもよい。
【0025】
ドレン管から流入するドレンが、散水可能な温度よりも著しく高い温度を有している場合には、放熱により散水可能な温度まで下げるために比較的長い時間が必要となる。この態様では、放熱促進手段によって貯水タンクのドレンの放熱を促進することにより、放熱促進手段を用いない場合と比べて、ドレン温度を散水可能な温度まで下げるために必要な時間を短縮できる。これにより、ドレン温度の調節をより容易にできる。なお、放熱促進手段の具体例として、貯水タンクに放熱板を設けることや、貯水タンクに外気を送るための送風ファンを設けることなどが挙げられる。
【0026】
本開示における散水装置の制御方法は、冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空調装置の室外熱交換器に用いられる散水装置の制御方法である。前記散水装置は、水蒸気が流れる蒸気管から水蒸気の凝縮水であるドレンを流入させるドレン管と、前記ドレン管に接続された貯水タンクと、前記貯水タンクから流入したドレンを前記室外熱交換器の伝熱管に散水する散水部と、を備えている。前記制御方法は、前記蒸気管から前記ドレン管を通して前記貯水タンクにドレンを溜める貯溜ステップと、前記貯水タンクのドレン温度を検出するドレン温度検出ステップと、外気温を検出する外気温検出ステップと、前記空調装置が暖房運転していることを示す運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が暖房運転しているかどうかを判定する暖房判定ステップと、前記空調装置が暖房運転していると判定された場合に、前記ドレン温度が前記外気温よりも高いことを条件に、前記散水部により前記伝熱管にドレンを散水する暖房時散水ステップと、を含んでいる。
【0027】
上述のように構成された散水装置の制御方法によれば、暖房時散水制御により、外気温よりも高い温度を有するドレンを室外熱交換器の伝熱管に散水して、伝熱管における空調用冷媒の蒸発を促進することにより、蒸気管からの余剰ドレンを活用して室外熱交換器の熱負荷を低減できる。
【0028】
前記制御方法は、前記伝熱管の温度を取得する伝熱管温度取得ステップと、前記空調装置が冷房運転していることを示す運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が冷房運転しているかどうかを判定する冷房判定ステップと、前記空調装置が冷房運転していると判定された場合に、前記ドレン温度が前記外気温又は前記伝熱管温度よりも低いことを条件に、前記散水部により前記伝熱管にドレンを散水する冷房時散水ステップと、を更に含んでいてもよい。
【0029】
本開示における散水方法は、冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空調装置の室外熱交換器の伝熱管にドレンを散水する方法である。前記散水方法は、散水されるドレンの温度を検出するドレン温度検出ステップと、外気温を検出する外気温検出ステップと、前記空調装置が暖房運転していることを示す運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が暖房運転しているかどうかを判定する暖房判定ステップと、前記空調装置が暖房運転していると判定された場合に、前記散水されるドレンの温度が前記外気温よりも高いことを条件に、水蒸気が流れる蒸気管からの水蒸気の凝縮水であるドレンが溜められたタンクからドレンを抜き出して前記伝熱管に向けて散水する暖房時散水ステップと、を含んでいる。
【0030】
前記散水方法は、前記伝熱管の温度を取得する伝熱管温度取得ステップと、前記空調装置が冷房運転していることを示す運転情報又はカレンダー情報に基づいて前記空調装置が冷房運転しているかどうかを判定する冷房判定ステップと、前記空調装置が冷房運転していると判定された場合に、前記ドレン温度が前記外気温又は前記伝熱管温度よりも低いことを条件に、水蒸気が流れる蒸気管からの水蒸気の凝縮水であるドレンが溜められたタンクからドレンを抜き出して前記伝熱管に向けて散水する冷房時散水ステップと、をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本開示による散水装置によれば、暖房運転と冷房運転とを行う空調装置において、暖房運転時に余分なコストをなるべくかけないようにしつつ空調装置の暖房能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態に係る散水装置の概略的な構成図である。
【
図2】水蒸気が利用される施設において第1実施形態の散水装置にドレンが供給されることを説明するための概略的な構成図である。
【
図3】
図2の散水装置及の変形例を示す概略的な構成図である。
【
図4】第1実施形態に係る散水装置の運転制御のフローチャートを示す。
【
図5】第2実施形態に係る散水装置のドレン水量と散水時間の長さの関係を説明するための図である。
【
図6】第3実施形態に係る散水装置の運転制御のフローチャートを示す。
【
図7】第4実施形態に係る散水装置の貯水タンクを示す、(a)は暖房運転時、(b)は冷房運転時である。
【
図8】第5実施形態に係る散水装置の放熱促進手段を示す構成図である。
【
図9】第5実施形態に係る散水装置の放熱促進手段の別形態を示す構成図である。
【
図10】第6実施形態に係る散水装置の概略的な構成図である。
【
図11】従来の空調装置における散水装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明するが、当業者の理解を容易にするために、例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0034】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る散水装置1の構成について
図1を参照して説明する。本実施形態に係る散水装置1は、冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空調装置10に散水を行うための装置である。
【0035】
空調装置10は、室外に配置された室外機12と、室内に配置された室内機14と、室外機12と室内機14との間で空調用の冷媒流体を循環させる冷媒流路17と、を備えている。室外機12は、冷媒を外気と熱交換させるための室外熱交換器13、圧縮機、四路切換弁、室外膨張弁及び室外ファン(いずれも図示省略)を有している。室外熱交換器13としては、例えばフィンアンドチューブ熱交換器を用いることができる。室外熱交換器13には、両端が冷媒流路17に接続された伝熱管16が設けられており、伝熱管16を流れる冷媒と室外ファンから送風される空気との間で熱交換が行われる。
【0036】
伝熱管16に流入させた比較的低温の液状の冷媒と、この液状の冷媒の蒸発温度よりも高温の空気とを熱交換させることにより、室外熱交換器13は冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。この場合、蒸発したガス状の冷媒が冷媒流路17を通じて室内機14に供給され、室内機14に設けられた室内熱交換機15により室内に温風が供給される。すなわち、空調装置10において暖房運転が行われる。
【0037】
一方で、伝熱管16に流入させた比較的高温のガス状の冷媒と、このガス状の冷媒の凝縮温度よりも低温の空気とを熱交換させることにより、室外熱交換器13は冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。この場合、凝縮した液状の冷媒が冷媒流路17を通じて室内機14に供給され、室内機14に設けられた室内熱交換機15により室内に冷風が供給される。すなわち、空調装置10において冷房運転が行われる。
【0038】
散水装置1は、
図1に示すように、蒸気管3に接続して使用する。蒸気管3は、例えば、工場等の高温の水蒸気が利用される施設において、ボイラ等により供給される高温の水蒸気をプレス装置、発電用タービン等の需要先に供給するための配管である。
【0039】
散水装置1は、蒸気管3を流れる水蒸気からドレン(水蒸気の凝縮水)を分離させるためのスチームトラップ5と、スチームトラップ5に接続されたドレン管20と、ドレン管20からドレンを流入させる貯水タンク22と、貯水タンク22からのドレンを室外熱交換器13の伝熱管16に向けて散水する散水部30と、を備えている。スチームトラップ5は、蒸気管3の水蒸気から分離されたドレンをドレン管20に流入させるように構成されている。スチームトラップ5としては、例えば、水蒸気とドレンの比重差を利用して水蒸気からドレンを分離するメカニカルトラップを用いることができるが、これに限らない。スチームトラップ5を通じてドレン管20には、例えば、70~80℃の高温のドレンが流入する。
【0040】
貯水タンク22は、貯水タンク22の上部に接続されたドレン管20から高温のドレンを流入させて溜めることができる。貯水タンク22には、例えば、アルミニウムやステンレス等の比較的伝熱性の高い素材が用いられる。このため、貯水タンク22内に溜められた高温のドレンは貯水タンク22を介して放熱し、貯水タンク22内のドレン温度は経時的に低下する。
【0041】
散水部30は、貯水タンク22の下部に接続されており貯水タンク22からドレンを流入させる接続管34と、接続管34を流れるドレンを昇圧させるポンプ36と、接続管34からのドレンを伝熱管16に散水するための散水部本体32と、を有している。散水部本体32としては、例えば、ドレンを噴霧するスプレーノズルが用いられるが、これに限らない。なお、散水部30は、貯水タンク22を散水部30よりも上に配置することにより、貯水タンク22からのドレンが自重によって伝熱管16に散水されるように構成されていてもよい。この場合、ポンプ36が省略されるとともに接続管34には、接続管34を開閉する開閉弁が設けられる。
【0042】
散水装置1はさらに、外気温度を検出する外気温センサ45と、貯水タンク22内のドレン温度を検出するドレン温度センサ46と、散水部30を制御する制御部40と、を備えている。制御部40は、外気温センサ45、ドレン温度センサ46及びポンプ36と電気的に接続されている。外気温センサ45は、室外機12周辺の外気温度を検出可能に配置されており、ドレン温度センサ46は、貯水タンク22内のドレン温度を検出可能に配置されている。
【0043】
制御部40は、ポンプ36を制御するためのポンプ制御部41と、記憶部42と、情報取得部44と、を含んでいる。情報取得部44は、外気温センサ45からの外気温度を示す信号と、ドレン温度センサ46からの貯水タンク22の温度を示す信号と、を受け付けるためのものである。
【0044】
記憶部42には、カレンダー情報と、散水時間帯情報と、カレンダー情報及び散水時間帯情報に基づき散水装置1の運転を制御するための制御プログラムと、が記憶されている。カレンダー情報は、暖房運転と冷房運転のどちらに該当するかを日単位または月単位で示すものであり、空調装置10がどちらの運転をしているかを制御部40が判定するために用いられる。カレンダー情報には、例えば、7月~9月に冷房運転すること及び12月~2月に暖房運転することを示す情報が割り当てられている。したがって、制御部40は、例えば、今日が7月1日であれば空調装置10が冷房運転していると判定し、今日が12月1日であれば空調装置10が暖房運転していると判定する。
【0045】
散水時間帯情報は、1日のうち散水を行う時間帯を1時間単位で示すものであり、現在の時刻が散水を行う時間帯内であるかどうかを制御部40が判定するために用いられる。散水時間帯情報として、例えば、工場等の操業時間帯である8時から20時の間に散水を行うことを示す情報が割り当てられている。制御部40は、現在の時刻が9時00分であれば散水装置1による散水が行われる時間であると判定し、現在の時刻が7時00分であれば散水装置1による散水が行われない時間であると判定する。なお、散水時間帯情報として、電力ピーク時間帯(暖房運転時には冬季の電力ピーク時間帯である10時から12時の間及び16時から18時の間、冷房運転には夏季の電力ピーク時間帯である12時から16時の間)に散水を行うことを示す情報が割り当てられていてもよい。
【0046】
ここで、散水装置1が工場等の高温の水蒸気が利用される施設2に配設された場合に、散水装置1にドレンを供給するための構成の一例を、
図2を参照しつつ説明する。この施設2は、施設2内に高温の水蒸気を供給して利用する水蒸気利用システム70と、施設2の建物内の室温を調節する空調装置10と、空調装置10の室外熱交換器13にドレンを散水する散水装置1と、を備えている。水蒸気利用システム70は、高温の水蒸気を発生されるボイラ71と、水蒸気を利用する水蒸気利用設備72と、水蒸気利用設備72に蒸気を供給するための蒸気流路73と、ドレンを回収するための回収流路76と、ドレンタンク78及び給水タンク79と、を有している。蒸気流路73には、蒸気流路73を流れる水蒸気からドレンを分離させる複数のスチームトラップ5、6、7が設けられている。スチームトラップ6、7において水蒸気から分離したドレンは、回収流路76を通じてドレンタンクに溜められて、給水タンク79を通じて作動流体である水としてボイラ71に戻される。
【0047】
散水装置1のドレン管20は、スチームトラップ5に接続されている。すなわち、水蒸気利用システム70において水蒸気から発生したドレンの一部がスチームトラップ5を通じて散水装置1に供給される。また、ドレン管20は、
図3に示すように、スチームトラップ5だけでなく、回収流路76に接続されていてもよい。この場合、回収流路76におけるドレン管20との接続部には、ドレンの流入先をドレンタンク78と散水装置1の貯水タンク22との間で切り替える切替機構77が設けられている。これにより、水蒸気利用システム70から散水装置1に、より大きな流量のドレンを流入させられる。さらに、切替機構77がドレンの流入先を切り替えることにより、散水装置1へのドレン供給量を調節できる。
【0048】
ここで、散水装置1の運転制御について、
図4に示すフローチャートを参照しつつ説明する。制御部40は、空調装置10が運転を開始すると、記憶部42に記憶された制御プログラムを起動することにより散水装置1の運転制御を開始する。
【0049】
制御部40の情報取得部44は、外気温センサ45から、室外機12周辺の外気温度を示す信号を受け付ける(外気温検出ステップST12)。情報取得部44は、ドレン温度センサ46から、貯水タンク22内のドレン温度を示す信号を受け付ける(ドレン温度検出ステップST14)。なお、外気温検出ステップST12とドレン温度検出ステップST14とは、この順に行われなくてもよい。
【0050】
次に、制御部40は、記憶部42に記憶されたカレンダー情報を参照し、今日が暖房運転の日に該当するか否かを判定する(暖房運転判定ステップST20)。暖房運転の日に該当すると判定された場合、制御部40は、記憶部42に記憶された散水時間帯情報を参照して、現在の時刻が散水時間帯情報に示された暖房運転時の散水時間帯内であるか否かを判定する(暖房時間帯判定ステップST22)。散水時間帯内であると判定された場合、制御部40はドレン温度が外気温度よりも高いか否かを判定する(暖房時温度判定ステップST24)。ドレン温度が外気温度よりも高いと判定された場合、制御部40は、ポンプ制御部41がポンプ36を作動させることにより、貯水タンク22のドレンを室外熱交換器13に散水するような暖房時散水制御を行う(暖房時散水ステップST26)。その後、暖房時間帯判定ステップST22に戻る。
【0051】
暖房時間帯判定ステップST22において散水時間帯内ではないと判定された場合、または、暖房時温度判定ステップST24においてドレン温度が外気温度よりも低いと判定された場合、ポンプ制御部41はポンプ36を停止させ(ポンプ停止ステップST28)、暖房時間帯判定ステップST22に戻る。
【0052】
一方で、暖房運転判定ステップST20において暖房運転の日に該当しないと判定された場合、制御部40は前記カレンダー情報参照し、今日が空調装置10が冷房運転の日か否かを判定する(冷房運転判定ステップST30)。冷房運転の日に該当すると判定された場合、制御部40は、記憶部42に記憶された散水時間帯情報を参照して、現在の時刻が散水時間帯情報に示された冷房運転時の散水時間帯内であるか否かを判定する(冷房時間帯判定ステップST32)。散水時間帯内であると判定された場合、制御部40は、ドレン温度が外気温度よりも低いか否かを判定する(冷房時温度判定ステップST34)。ドレン温度が外気温度よりも低いと判定された場合、制御部40は、ポンプ制御部41がポンプ36を作動させることにより、貯水タンク22のドレンを伝熱管16に散水するような冷房時散水制御を行う(冷房時散水ステップST36)。その後、冷房時間帯判定ステップST32に戻る。
【0053】
冷房時間帯判定ステップST32において散水時間帯内ではないと判定された場合、または、冷房時温度判定ステップST34においてドレン温度が外気温度よりも高いと判定された場合、ポンプ制御部41はポンプ36を停止させ(ポンプ停止ステップST38)、冷房時間帯判定ステップST32に戻る。
【0054】
冷房運転判定ステップST30において冷房運転の日に該当しないと判定された場合には、制御部40はポンプ36を作動させることなく制御プログラムを終了する。制御部40は、空調装置10が運転を終了するときに、制御プログラムを終了させて散水装置1の運転制御を終了する。
【0055】
なお、制御部40は、暖房時散水制御及び冷房時散水制御において、貯水タンク22のドレン水量が所定の値以下のときに、ポンプ制御部41がポンプ36を停止させて貯水タンク22のドレン水量を増やすような制御を行ってもよい。この場合、貯水タンク22のドレン水量が所定の値よりも大きいことを条件に、制御部40は、暖房時散水制御及び冷房時散水制御を再開する。
【0056】
上述のように構成された散水装置1では、水蒸気が流れる蒸気管3にドレン管20を接続することにより、蒸気管3の水蒸気を、暖房運転する空調装置10の室外熱交換器13への散水に活用することができる。そして、空調装置10の暖房運転時に、暖房時散水制御により、外気温よりも高い温度を有するドレンを伝熱管16に散水することにより、伝熱管16における冷媒の蒸発を促進できる。さらに、蒸気等の余剰水蒸気を活用することができるため、水道水や工水等を用いる場合に比べて水道代を節約できる。したがって、この散水装置1によれば、空調装置10が暖房運転するときに、運転コストを節約しつつ室外熱交換器13の熱負荷を低減できる。
【0057】
また、寒冷地において空調装置10が暖房運転するときには、室外熱交換器13の伝熱管16表面に着氷が発生し室外熱交換器13の効率が低下することがある。しかし、この散水装置1では、暖房時散水制御により、散水部30を通じて外気温よりも高い温度を有するドレンが室外熱交換器13の伝熱管16に散水されるため、霜取装置等を用いることなく、伝熱管16表面の着氷を抑制できる。
【0058】
また、散布水として水道水や工業用水を利用する場合には、散布水による室外熱交換器13の腐食を抑制するために、散布水の中性化や不純物の除去を目的とした水処理が必要となる。しかし、この散水装置1ではドレン管20を通じて蒸気管3の蒸気から発生したpHが中性であり不純物をほとんど含まないという特徴を有するドレンを散水に活用することにより、中性化や不純物除去などの水処理を省くことができるため、水処理コストを節約できる。
【0059】
また、空調装置10が冷房運転するときに、冷房時散水制御によって、散水部30を通じて外気温または室外熱交換器13の冷媒温度よりも低い温度を有するドレンが伝熱管16に散水される。これにより、伝熱管16における冷媒の凝縮が促進されるため、暖房運転時だけでなく冷房運転時においても室外熱交換器13の熱負荷を低減できる。また、外気温よりも高く且つ室外熱交換器13の冷媒温度よりも低い温度を有するドレンを散水する場合には、貯水タンク22のドレン温度を外気温まで下げることなく散水することができるため、貯水タンク22のドレン温度が外気温まで下がるのを待つことなく散水できる。
【0060】
また、空調装置10が暖房運転または冷房運転する際に、暖房時間帯判定ステップST22または冷房時間帯判定ステップST32により、記憶部42に記憶された時間帯情報に示された時間帯にだけドレンの散水を行うことができる。
【0061】
また、ドレンの散水が停止される期間に、貯水タンク22にドレンを溜めたままにすることにより、ドレンの放熱(自然冷却)により、貯水タンク22内のドレン温度を下げることができる。さらに、空調装置10が停止する夜間に自然冷却させたドレンを昼間の散水に用いられる。したがって、貯水タンク22内のドレン温度を散水可能な温度まで冷却するために十分長い時間を確保でき、また、夜間の外気温は昼間よりも低いため、貯水タンク22内のドレン温度をより低い温度まで下げることができる。
【0062】
なお、制御部40の情報取得部44は、室外機12から室外熱交換器13の伝熱管16の温度を示す信号を受け付けられるように構成されていてもよく、制御部40は冷房時温度判定ステップST34において、ドレン温度が外気温よりも低いか否かではなく、ドレン温度が伝熱管16の温度よりも低いか否かを判定してもよい。この場合、散水装置1の運転制御が開始された後に、情報取得部44は室外機12から、伝熱管16の温度を示す信号を取得する。そして、冷房時温度判定ステップST34において、ドレン温度が伝熱管16の温度よりも低いと判定された場合、冷房時散水ステップST36において冷房時散水制御が行われる。
【0063】
室外熱交換器13が凝縮器として機能する冷房運転時では、伝熱管16の温度は外気温よりも高い。したがって、この構成によれば、冷房時散水制御において、ドレン温度を外気温度まで下げることなくドレンの散水を行うことができるため、貯水タンク22内のドレン温度を下げるための時間を短縮できる。
【0064】
(実施形態2)
実施形態2による散水装置1は、室外熱交換器13の熱負荷が高くなる時間帯である高負荷時間帯にドレンの散水を行う一方で、高負荷時間帯以外の時間帯においても貯水タンク22のドレン水量に応じてドレンの散水を行うように構成されている点において実施形態1による散水装置1とは異なっている。
【0065】
散水装置1は、貯水タンク22のドレン水量を検出するための水量検出部を備えている。水量検出部は、例えば、貯水タンク22のドレン水量を検出する水量センサであるが、これに限られず、貯水タンク22におけるドレンの流入量を検出する流量センサ及び流出量を検出する流量センサを備えた構成でもよい。
【0066】
記憶部42には、室外熱交換器13の熱負荷が高くなる時間帯を示す高負荷時間帯情報が記憶されている。記憶部42には、さらに、貯水タンク22のドレン水量と散水時間の長さとの間の関係を表わすマップまたは関係式が記憶されている。このマップまたは関係式では、貯水タンク22のドレン水量が増えると散水時間が長くなり、貯水タンク22のドレン水量が減ると散水時間が短くなるように、ドレン水量と散水時間の関係を規定している。例えば、
図5(a)にF1として示すように、ドレン水量Q1に対して散水時間を4時間とし、ドレン水量Q2に対して散水時間を8時間とするように、散水時間の長さが貯水タンク22のドレン水量に対して線形に変化するように規定されてもよい。
【0067】
制御部40は、暖房運転時または冷房運転時に、前記水量検出部からのドレン水量の情報と、前記マップまたは関係式とに基づき、散水時間の長さを決定する。制御部40は、さらに、散水時間の長さに基づき、前記高負荷時間帯を含むようにして、散水時間帯を決定する。そして、制御部40は、現在の時刻が前記散水時間帯内であることを条件に、暖房時散水制御または冷房時散水制御を行う。
【0068】
より具体的に、記憶部42には、例えば、高負荷時間帯情報として冬季の電力ピーク時間帯(10時から12時の間及び16時から18時の間)を示す情報と、
図5(a)に示すようなドレン水量と散水時間の関係を示す情報と、が記憶されていてもよい。
【0069】
この場合、暖房運転の場合には、水量検出部の検出値がドレン水量Q2のときには、制御部40は、高負荷時間帯を含む10時から18時の間を散水時間帯として決定する。なお、散水時間が8時間の場合に、高負荷時間帯を含む9時から13時の間及び15時から19時の間が散水時間帯として決定されてもよい。一方で、水量検出部の検出値がドレン水量Q1のときには、散水時間が4時間であるため、制御部40は、高負荷時間帯を含む10時から12時の間及び16時から18時の間を散水時間帯として決定する。
【0070】
このように構成された散水装置1では、暖房運転時または冷房運転時に、少なくとも高負荷時間帯においてドレンの散水が行われるため、室外熱交換器13の熱負荷が効果的に低減される。さらに、貯水タンク22のドレン水量が高負荷時間帯に散水されるドレン水量よりも多い場合には、貯水タンク22のドレン水量に応じて高負荷時間帯以外の時間帯にもドレンの散水を行うことができる。
【0071】
なお、記憶部42には、ドレン水量と散水時間の関係が線形ではなく、
図5(b)に示すように、所定の閾値に応じてステップ状に変化するように規定されてもよい。この場合、ドレン水量が第1の水量閾値T1よりも小さければ、散水時間が4時間であるため、高負荷時間帯を含む10時から12時の間及び16時から18時の間が散水時間帯として決定される。ドレン水量が第1の水量閾値T1よりも大きく且つ第2の水量閾値T2よりも小さければ、散水時間と6時間とし、高負荷時間帯を含む10時から13時の間及び15時から18時の間が散水時間帯として決定される。また、ドレン水量が第2の水量閾値T2よりも大きい場合には、散水時間と8時間とし、高負荷時間帯を含む10時から18時の間が散水時間帯として決定される。なお、
図5(b)に示すドレン水量と散水時間の関係は、2つの水量閾値により散水時間が3段階に変化しているが、これに限らない。例えば、ドレン水量と散水時間の関係は、2段階または4段階に変化してもよい。
【0072】
(実施形態3)
実施形態3に係る散水装置1は、制御部40の情報取得部44が空調装置10から、空調装置10が暖房運転または冷房運転のいずれの運転状態であるかを示す信号を取得するように構成されている点において実施形態1による散水装置1とは異なっている。この場合、記憶部42には、カレンダー情報は記憶されない。ここでは、実施形態1と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0073】
この散水装置1の運転制御では、
図6に示すように、情報取得部44が空調装置10から、空調装置10が暖房運転または冷房運転のいずれの運転状態であるかを示す運転状態情報を受け付ける(運転状態取得ステップST40)。
【0074】
そして、暖房運転判定ステップST20において、制御部40は、カレンダー情報ではなく、空調装置10から取得した運転状態情報に基づき、空調装置10が暖房運転しているか否かを判定する。同様に、冷房運転判定ステップST30において、制御部40は、空調装置10から取得した運転状態情報に基づき、空調装置10が冷房運転しているか否かを判定する。これ以外は
図2と同様である。
【0075】
(実施形態4)
実施形態4に係る散水装置1は、
図7に示すように、貯水タンク22内のドレン水量を調節するための水量調節手段51をさらに備えている点において、実施形態1による散水装置1とは異なっている。ここでは、実施形態1と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0076】
散水装置1は、貯水タンク22に接続され貯水タンク22から余剰なドレンを排出するための排出路26と、貯水タンク22内のドレン水量を検出する水量センサ48と、をさらに備えている。水量調節手段51は、ドレン管20上に配置されドレン管20を開閉する第1開閉弁53と、排出路26上に配置され排出路26を開閉する第2開閉弁55と、を含んでいる。水量センサ48、第1開閉弁53及び第2開閉弁55は制御部40と電気的に接続されている。水量センサ48は検出したドレン水量を示す信号を制御部40に伝達する。記憶部42には、暖房運転時における貯水タンク22の目標水量を表す暖房時目標水量と、冷房運転時における目標水量を表す冷房時目標水量と、が記憶されている。暖房運転時における貯水タンク22の放熱を抑制するために、暖房時目標水量は、冷房時目標水量よりも大きい値に設定されている。
【0077】
制御部40は、第1開閉弁53及び第2開閉弁55の開閉を制御する弁制御部43をさらに含んでいる。制御部40は、水量センサ48により検出されたドレン水量と記憶部42に記憶された暖房時目標水量または冷房時目標水量とを比較して、貯水タンク22のドレン水量が暖房時目標水量または冷房時目標水量に近づくように水量調節手段51を制御する。
【0078】
具体的に、暖房運転時において、貯水タンク22内のドレン水量が暖房時目標水量よりも少ない場合には、弁制御部43が第1開閉弁53を開きつつ第2開閉弁55を閉じることにより、貯水タンク22内のドレン水量を増やす。これにより、貯水タンク22内のドレン水量を暖房時目標水量に近づけることができる。同様に、冷房運転時においてドレン水量が冷房時目標水量よりも多い場合には、弁制御部43が第1開閉弁53を閉じつつ第2開閉弁55を開くことにより、貯水タンク22の水量を減らす。これにより、貯水タンク22内のドレン水量を冷房時目標水量に近づけることができる。暖房時目標水量は冷房時目標水量よりも大きい値なので、暖房運転時の貯水タンク22内のドレン水量は、冷房運転時の貯水タンク22内のドレン水量よりも大きくなる。
【0079】
散水装置1では、暖房運転時にはドレン温度が外気温よりも高い場合にドレンが散水され、冷房運転時にはドレン温度が外気温よりも低い場合にドレンが散水される。この態様では、暖房運転時の貯水タンク22のドレン水量を冷房運転時の貯水タンク22のドレン水量よりも大きくすることにより、暖房運転時に貯水タンク22内のドレン温度を下がり難くし、冷房運転時に貯水タンク22内のドレン温度が下がり易くできる。これにより、暖房運転時及び冷房運転時において、貯水タンク22内のドレンの温度を散水可能な温度に保持し易くできる。
【0080】
(実施形態5)
実施形態5に係る散水装置1は、
図8に示すように、放熱促進手段57を備えている点において実施形態1による散水装置1とは異なっている。ここでは、実施形態1と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0081】
放熱促進手段57は、例えば、貯水タンク22の下に配置されており、制御部40の制御下で貯水タンク22に向けて外気を送風する送風ファンである。送風ファンを作動させて貯水タンク22の外面に外気を送風することにより、貯水タンク22内のドレンの放熱を促進する。なお、散水装置1では、空調装置10が冷房運転することを条件として、送風ファンが作動するように構成されていてもよい。
【0082】
ドレン管20から流入するドレンが、散水可能な温度よりも著しく高い温度を有している場合には、放熱により散水可能な温度まで下げるために比較的長い時間が必要となる。この態様では、放熱促進手段57により貯水タンク22のドレンの放熱を促進することにより、放熱促進手段57を用いない場合と比べて、ドレン温度を散水可能な温度まで下げるために必要な時間を短縮できる。これにより、ドレン温度の調節をより容易にできる。
【0083】
なお、
図9に示すように、放熱促進手段57は、送風ファンに代えて、貯水タンク22の外面に突出するように形成された複数の放熱フィンであってもよい。複数の放熱フィンにより貯水タンク22の外気との接触面積を増やすことにより、貯水タンク22内のドレンの放熱を促進する。
【0084】
(実施形態6)
実施形態6に係る散水装置1は、
図10に示すように、貯水タンク22が、暖房運転時に散水部30にドレンを供給するための暖房用タンク61と、冷房運転時に散水部30にドレンを供給するための冷房用タンク63と、を含んでいる点において、実施形態1による散水装置1とは異なっている。ここでは、実施形態1と異なる構成要素について説明し、その他の構成要素については説明を省略する。
【0085】
暖房用タンク61及び冷房用タンク63は、ドレン管20に対して並列に接続されている。ドレン管20には、暖房用タンク61にドレンを流入させる流路を開閉するための開閉弁62と、冷房用タンク63にドレンを流入させる流路を開閉するための開閉弁64と、が設けられている。また、暖房用タンク61及び冷房用タンク63は、接続管34に対しても並列に接続されている。接続管34には、暖房用タンク61からドレンを流出させる流路を開閉するための開閉弁65と、冷房用タンク63からドレンを流出させる流路を開閉するための開閉弁66と、が設けられている。開閉弁62、64、65、66は、弁制御部43により開閉が制御される。
【0086】
暖房用タンク61には、暖房用タンク61の外面を覆うように配置された断熱部材67と、暖房用タンク61内のドレン温度を検出するための温度センサ(図示省略)が設けられている。断熱部材67としては、例えば、ポリウレタンフォーム等の熱遮断性のよい材料が採用される。暖房用タンク61に断熱部材67を設けることにより、暖房用タンク61内のドレン温度が下がり難くなっている。
【0087】
冷房用タンク63には、冷房用タンク63におけるドレンの放熱を促進するための放熱部68と、冷房用タンク63内のドレン温度を検出するための温度センサが設けられている(図示省略)。放熱部68としては、例えば、冷房用タンク63の外面に突出するように形成された複数の放熱フィンが採用される。冷房用タンク63に放熱部68を設けることにより、冷房用タンク63内のドレン温度が下がり易くなっている。
【0088】
散水装置1では、空調装置10の暖房運転時には暖房用タンク61からのドレンを用いて散水部30が室外熱交換器13に散水し、冷房運転時には冷房用タンク63からのドレンを用いて散水部30が室外熱交換器13に散水するように運転制御が行われる。すなわち、空調装置10の運転状態に応じて、タンク内のドレン温度の下がり難さが異なる2つのタンク61、63を切り替えて用いることにより、散水に用いるドレン温度の調節をより容易にできる。また、2つのタンク61、63のドレンを混合させることにより、ドレン温度を調節して散水に用いることもできる。
【0089】
(その他の実施形態)
散水装置1は、空調装置10が暖房運転する場合にのみ、制御部40の暖房時散水制御により室外熱交換器13へのドレンの散水を行うように構成されていてもよい。この場合、空調装置10が冷房運転するときに、制御部40は冷房時散水制御を行わない。
【0090】
また、貯水タンク22が、貯水タンク22の外面を覆うように配置され、貯水タンク22に対して着脱可能な断熱部材を有していてもよい。このようにすれば、冬季には断熱部材を貯水タンク22に取り付けることにより貯水タンク22をドレン温度の下がり難い暖房用タンクとして機能させ、夏季には断熱部材を貯水タンク22から取り外すことにより貯水タンク22をドレン温度の下がり易い冷房用タンクとして機能させることができる。
【0091】
また、散水装置1は、散水部30が、工場等において水蒸気が流れる蒸気管から水蒸気の凝縮水であるドレンを流入させる既設のタンク等から、ドレンを流入させるように構成されてもよい。この場合、前記既存のタンク、前記既存のタンクにドレンを流入させる配管及び前記既存のタンク内のドレン温度を検出する温度センサを、を貯水タンク22、ドレン管20及びドレン温度センサ46として活用できるため、散水装置1の導入コストを節約できる。
【0092】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
1 散水装置
3 蒸気管
5 スチームトラップ
10 空調装置
13 室外熱交換器
16 伝熱管
20 ドレン管
22 貯水タンク
30 散水部
40 制御部
45 外気温センサ
46 ドレン温度センサ
51 水量調節手段
57 放熱促進手段