(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】電気味覚調整装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2022117501
(22)【出願日】2022-07-22
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】522294969
【氏名又は名称】株式会社UBeing
(74)【代理人】
【識別番号】100201363
【氏名又は名称】村田 豊
(72)【発明者】
【氏名】福島 大喜
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-042991(JP,A)
【文献】特開昭59-227268(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2404705(KR,B1)
【文献】国際公開第2021/101441(WO,A1)
【文献】特表2020-534979(JP,A)
【文献】NAKAMURA, Hiromi, et al.,Method of Modifying Spatial Taste Location Through Multielectrode Galvanic Taste Stimulation,IEEE Access,2021年,Vol. 9,pp. 47603-47614,ISSN 2169-3536
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、
前記人体の口腔内に当接される第
1の電極と、
前記人体の下顎底部および首前部のいずれかまたは全てに当接される第
2の電極と、
前記第
1の電極と前記第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、を備え、
前記第
1の電極と前記第
2の電極によって前記人体の味覚器官に前記電気信号を印加することで、前記人体に味覚を提示することを特徴とする、電気味覚調整装置。
【請求項2】
人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、
前記人体の下顎上部の頤唇溝部および頬部の
全てに当接される第
1の電極と、
前記人体の下顎底部および首前部の
全てに当接される第
2の電極と、
前記第
1の電極と前記第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、を備え、
前記第
1の電極と前記第
2の電極によって前記人体の味覚器官に前記電気信号を印加することで、前記人体に味覚を提示することを特徴とする、電気味覚調整装置。
【請求項3】
人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、
前記人体の下顎上部の頤唇溝部および頬部のいずれかまたは全てに当接される第
1の電極と、
前記人体の下顎底部および首前部のいずれかまたは全てに当接される第
2の電極と、
前記第
1の電極と前記第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、
食品容器を保持する食品容器保持部と、を備え
前記第1の電極と前記第2の電極と前記食品容器保持部は一体として構成され、
前記食品容器保持部
と一体として構成された前記第1の電極と前記第
2の電極によって前記人体の味覚器官に前記電気信号を印加して前記人体に味覚を提示することを特徴とする、電気味覚調整装置。
【請求項4】
人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、
前記人体の下顎上部の頤唇溝部および頬部のいずれかまたは全てに当接される第
1の電極と、
前記人体の下顎底部および首前部のいずれかまたは全てに当接される第
2の電極と、
前記第
1の電極と前記第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、
食品容器を保持する食品容器保持部と、を備え
前記第
1の電極と前記第
2の電極と前記食品容器保持部は一体として構成され、
前記食品容器保持部に保持された食品容器内の食品を飲食する動作に伴って前記第
1の電極と前記第
2の電極が前記人体に当接され、前記人体の味覚器官に前記電気信号を印加して前記人体に味覚を提示することを特徴とする、電気味覚調整装置。
【請求項5】
人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、
前記人体の口腔内に当接される第
1の電極と、
前記人体の下顎底部および首前部のいずれかまたは全てに当接される第
2の電極と、
前記第
1の電極と前記第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、を備え、
前記第
1の電極と前記第
2の電極によって前記人体の味覚器官に前記電気信号を印加することで、前記人体に味覚を提示し、
前記提示した味覚を判定する味覚判定手段を備え、
前記電気信号発生部は前記味覚判定手段からの判定情報によって前記電気信号を変化させることを特徴とする、電気味覚
調整装置。
【請求項6】
人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、
前記人体の下顎上部の頤唇溝部および頬部の
全てに当接される第
1の電極と、
前記人体の下顎底部および首前部の
全てに当接される第
2の電極と、
前記第
1の電極と前記第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、を備え、
前記第
1の電極と前記第
2の電極によって前記人体の味覚器官に前記電気信号を印加することで、前記人体に味覚を提示し、
前記提示した味覚を判定する味覚判定手段を備え、
前記電気信号発生部は前記味覚判定手段からの判定情報によって前記電気信号を変化させることを特徴とする、電気味覚
調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気刺激によって味覚を提示し調整する電気味覚調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
健康被害の誘因の一つとして塩分や糖分の取りすぎが報告されている。一方で塩分量を抑えた減塩食が推奨されているが、一般的に食事に対する充足感を低下させている。
【0003】
食事に対する充足感を低下させる「薄味」とされる減塩食であっても満足できるような十分な味覚を提示する方法として、口腔内の味覚器官に電気刺激をあたえることにより味覚を提示する手法が開示されている。例えば特許文献1には頭部に電気信号を印加する電極を装着する味覚電気刺激装置が開示されている。特許文献2には指先に電極を設置し、導電性を有した箸やフォークなどの食器と食材を介して電気信号を印加する電気味覚提示装置が開示されている。
【0004】
また、コロナウイルス感染症など感染症の初期症状の一つである味覚変化を早期に、簡便に、在宅で自己確認が可能な検査装置の要求も高まっている。例えばコロナウイルス感染症や悪性腫瘍など疾病関連による味覚変化を感染初期の段階で確認したり、コロナウィルス感染の後遺症による味覚変化を個人で継続して確認するなど、電気味覚調整装置を味覚検査装置として利用する形態への要求も高まっている。さらにコロナウイルス感染の後遺症による味覚障害を補うよう味覚調整し食事を豊かにするなど利用態様にも期待が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-42991
【文献】特開2021-45399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の味覚電気刺激装置は、食事の期間中は頭部に電極を装着しておかなければならず、また食事の前後に電極の取付および取り外しといった作業が必要となる。また電極間に電気信号を印加するための配線なども必要であり、さらに電極を口内に保持しておかなければならないので、これらの煩わしさは食事の満足度を低下させる要因となる。
【0007】
特許文献2の電気味覚提示装置は指先に電極を設置し、導電性を有した箸やフォークなどの食器と食材を介して電気信号を印加することで配線の煩わしさを解消しようとしているが、電極が取り付けられた手袋等を装着する必要があり、食事期間中は電極を装着し続けなければならないといった煩わしさは完全には解消できない。
【0008】
また、コロナウイルス感染症や悪性腫瘍など疾病関連による味覚障害を測定する装置としても、特に在宅での自己確認や継続した味覚チェックなどの用途として、煩わしさのない簡便な装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するために本出願にかかる発明は、人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、人体の口腔内に当接される第1の電極と、人体の下顎底部および首前部のいずれかまたは全てに当接される第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、を備え、第1の電極と第2の電極によって人体の味覚器官に前記電気信号を印加することで、人体に味覚を提示することを特徴とする、電気味覚調整装置である。
【0010】
さらに人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、人体の下顎上部の頤唇溝部および頬部のいずれかまたは全てに当接される第1の電極と、人体の下顎底部および首前部のいずれかまたは全てに当接される第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、を備え、第1の電極と第2の電極によって人体の味覚器官に前記電気信号を印加することで、人体に味覚を提示することを特徴とする、電気味覚調整装置である。
【0011】
さらに本発明にかかる電気味覚調整装置は、第1の電極と第2の電極と一体として構成された食品容器を保持する食品容器保持部と、を備える。
食品容器保持部に保持された食品容器内の食品を前記人体が経口摂取することで第1の電極と第2の電極が人体に当接され、人体の味覚器官に前記電気信号を印加することで、前記人体に味覚を提示することを特徴とする電気味覚調整装置である。
【0012】
さらに本発明にかかる電気味覚調整装置は、人体への接近を感知する接近検出手段と、を備え、電気信号発生部は前記接近検出手段によって前記電気信号を調整する電気味覚調整装置である。
【0013】
さらに本発明にかかる電気味覚調整装置は、電気信号の振幅、周波数、波形、断続時間のいずれかまたは全てを調整可能であることを特徴とする電気味覚調整装置である。
【0014】
本発明にかかる電気味覚調整装置の第1の電極が陽極であって第2の電極が陰極であること、または第1の電極が陰極であって第2の電極が陽極であることを特徴とする電気味覚調整装置である。
【0015】
本発明にかかる電気味覚調整装置の第1の電極が陽極であって第2の電極が陰極であること、または第1の電極が陰極であって第2の電極が陽極のいずれかの組み合わせを切替可能であることを特徴とする電気味覚調整装置である。
【0016】
本発明にかかる電気味覚調整装置は、味覚を判定する味覚判定手段を備え、電気信号発生部は味覚判定手段からの判定情報によって電気信号を変化させることを特徴とする電気味覚検査装置である。
【0017】
本発明にかかる電気味覚調整装置は、人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、人体の口腔内に当接される第1の電極と、人体の下顎底部および首前部のいずれかまたは全てに当接される第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、を備え、第1の電極と第2の電極によって人体の味覚器官に前記電気信号を印加することで、人体に味覚を提示することを特徴とする、電気味覚検査装置である。
【0018】
本発明にかかる電気味覚調整装置は、人体への電気刺激によって味覚を調整する電気味覚調整装置であって、人体の下顎上部の頤唇溝部および頬部のいずれかまたは全てに当接される第1の電極と、人体の下顎底部および首前部のいずれかまたは全てに当接される第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に電気信号を印加する電気信号発生部と、を備え、第1の電極と第2の電極によって人体の味覚器官に前記電気信号を印加することで、人体に味覚を提示することを特徴とする、電気味覚検査装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、味覚器官に電気刺激を印加するための電極を食品を口に含むときにのみ電極を接触させることで味覚提示を行うことができ、食事の期間中電極を装着することなく味覚を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明にかかる電気味覚調整装置が味覚を提示する人体の模式図である。
【
図2】本発明にかかる電気味覚調整装置が味覚を提示する際に設置する電極の位置を示す模式図である。
【
図3】本発明にかかる電気味覚調整装置のリング電極の模式図である。
【
図4】本発明にかかる電気味覚調整装置のリング電極を装着方法の一例である。
【
図5】本発明にかかる食品容器保持部を有する電気味覚調整装置の一例である。
【
図6】本発明にかかる食品容器保持部を有する電気味覚調整装置に使用例を示す模式図である。
【
図7】本発明にかかる食品容器保持部を有する電気味覚調整装置に使用例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。尚、実施形態は図で示された構成および手段に限定されるものではない。
【0022】
従来より舌や口腔内の味覚器官への電気刺激により味覚を提示する方法が開示されている。この電気刺激を印加するためには電極の設置方法にもさまざまな手法が提示されている。
【0023】
例えば(特許文献1)特開2018-42991では後頭部及び頸部背側に一方の電極を設置し、口腔及び顎周辺にもう一方の電極を設置して人体に閉回路を構成し、電気信号を印加する発明が開示されている。
【0024】
例えば(特許文献2)特開2021-45399では、食器を保持する手に一方の電極を設置し、飲食する際に使用するコップや箸などの食器にもう一方の電極を設置し、手から腕を経由して口内と接触した食器の間で閉回路を構成し、電気信号を印加する発明が開示されている。
【0025】
これらに対して本発明は、下顎の上部である頤(おとがい)唇溝部に一方の電極を設置し、下顎底部にもう一方の電極を設置することで下顎周辺部で閉回路を構成し、口内の味覚器官に電気信号を印加するものである。この電極配置によれば、電気信号を印加する経路を比較的短くすることができるため、印加電圧を低減できる、味覚器官以外への通電を抑制できる、などのメリットを享受するこがきる。
【0026】
またさらに本発明は、口腔内の例えば舌に一方の電極を設置し、下顎底部にもう一方の電極を設置することで下顎周辺部で閉回路を構成し、口内の味覚器官に電気信号を印加するものである。この電極配置によれば、電気信号を印加する経路を比較的短くすることができるため、印加電圧を低減できる、味覚器官以外への通電を抑制できる、舌への局所的な電気信号の印可によってよりきめ細かな味覚調整を可能とする、などのメリットを享受するこがきる。
【0027】
また本発明による、下顎周辺部への電極設置の例として、頬部に一方の電極を設置することも可能である。また、下顎周辺部への電極設置の例として、首の前面部に一方の電極を設置することも可能である。この場合、例えば頬部に一方の電極を設置し、下顎底部にもう一方の電極を設置することで閉回路を構成し、口内の味覚器官に電気信号を印加することができる。また、頤唇溝部に一方の電極を設置し、首前面部にもう一方の電極を設置することで閉回路を構成し、口内の味覚器官に電気信号を印加することができる。また、頬部に一方の電極を設置し、首の前面部に一方の電極を設置することで閉回路を構成し、口内の味覚器官に電気信号を印加することができる。
【0028】
図2は頤唇溝部4に一方の電極10を、下顎底部5にもう一方の電極11を設置した例である。電極10と電極11間に印加された電気信号は味覚器官2を刺激して味覚を惹起、抑制して味覚を提示する。図示しない電気信号発生部は味覚を惹起、抑制するために電気信号の振幅、周波数、波形、断続時間等を組み合わせた様々な波形の電気信号を発生する。
【0029】
電気信号発生部は電気信号の振幅、周波数、波形、断続時間等を様々に組み合わせることで塩味、酸味、苦味、甘味、うま味を増強または抑制することができる。また塩味、酸味、苦味、甘味、うま味のそれぞれを個別に増強または抑制することにより味覚を提示することができる。
【0030】
また、電気信号発生部は電気信号の振幅、周波数、波形、断続時間等を様々に組み合わせることで渋味、辛味、脂肪味、えぐ味、冷涼感、こく、濃厚さを増強、抑制し、さらにこれら呈味の広がりや持続感を提示することで、食事から得られる「おいしさ」を提供することができる。
【0031】
図2は電気信号発生部12からの電気信号を電極10および電極11を介して印加した例を示す図である。電極10および電極11によって印加された電気信号により口腔内の味覚器官2に味覚調整電流13が流れる。この味覚調整電流13が流れることによって口腔内の味覚の増強、抑止または提示すること可能となる。
【0032】
味覚の増強、抑止または提示の1例として、
図2の頤唇溝部4の電極10を陽極、下顎底部5の電極11を陰極とした陽極電気刺激の場合、電気信号の振幅、周波数、波形、断続時間等を様々に組み合わせることで塩味等を増強することが可能である。
【0033】
味覚の増強、抑止または提示のもう一つの例として、
図2の頤唇溝部4の電極10を陰極、下顎底部5の電極11を陽極とした陰極電気刺激の場合、電気信号の振幅、周波数、波形、断続時間等を様々に組み合わせることで味覚抑止効果と、電気信号停止後に生じる味覚増強効果を惹起することが可能である。
【0034】
味覚の増強、抑止または提示のもう一つの例として、
図2の頤唇溝部4の電極10を陽極、下顎底部5の電極11を陰極とした陽極電気刺激と、電極10を陰極、電極11を陽極とした陰極電気刺激とを適宜入れ替えながら、さらに電気信号の振幅、周波数、波形、断続時間等を様々に組み合わせることで味覚抑止効果と、電気信号停止後に生じる味覚増強効果、抑止効果を惹起することが可能である。
【0035】
[実施例1]
本発明の第1の実施例について説明する。
図3は電気信号を印加するための電極をリング状に構成した例である。
図3に示すリング電極20は、指輪状に指を挿入する方向から見た図である。リング状電極20は電気信号を印加するための陽極または陰極電極30、リング状電極20を指に装着したときに電極30と手指
6乃至
8との絶縁を確保する絶縁体31から構成される。また電極30は図示しない電気信号発生部と電気的に接続されている。
【0036】
図4はリング電極21と対をなすもう一方のリング電極22をそれぞれ拇指
7と示指
8に装着した例である。ただし
図4は一例であってそれぞれのいずれの指との組み合わせ、または同一の指であっても良い。電極を指に装着した状態では、絶縁体31によって電気信号は人体へ印加されていない状態を保っている。
【0037】
電極21および電極22による電気信号の印加方法は、リング電極21を装着した拇指7を下顎底部5に添えるようにし、同時にリング電極22を装着した示指8で頤唇溝部4に添えるようにし、拇指7と示指8で下顎を挟むように保持する。この時電極21と電極22がそれぞれ下顎底部5と頤唇溝部4に当接され、味覚器官2に電気信号を印加することができる。
【0038】
これまでの説明のように、本発明にかかる実施例1によれば、飲食時に味覚の調整を欲した任意のタイミングで下顎を2本の指で挟むという簡単な動作で電気信号を印加することができる。片方の手6にのみリング電極を装着すれば良いので、食事の期間中頭部周辺に電極を装着しなければならないという煩わしさが解消できる。
【0039】
[実施例2]
次に本発明の第2の実施例について説明する。
図5は食品容器保持部53と2つの電極が一体として構成された電気味覚調整装置50の模式図である。電極55と電極56は電極保持部51と電極保持部52にそれぞれ固定されている。電極保持部51と電極保持部52は一体として構成されていても良いし、別々の構成であっても良く、特に構成手段に制限は無いが、後述するように電極55と頤唇溝部4が、電極56と下顎底部5が同時に当接できるような形状となっていることが望ましい。
【0040】
電極保持部51又は電極保持部52は食品容器保持部53と一体として構成されるが、各部が可動部分を介して連結されていても良いし、可撓性のある材質(例えばプラスチック、ゴム)を土台として一体として構成されていても良い。また、電極55と電極56は図示しない電気信号発生部と電気的に接続されている。
【0041】
食品容器保持部53は食品容器の飲み口部を保持して固定するための穴54が設けられている。穴54は食品容器の飲み口部を貫通させ、貫通した飲み口部を締め付け、または挟み、または密着することで食品容器全体を保持し、電気味覚調整装置50は食品容器に保持される。
【0042】
食品容器保持部53が保持する食品容器の例として、ペットボトル、パウチ容器、椀、吸い飲み等がある。
【0043】
図6は食品容器保持部63に食品容器70の飲み口部71を保持し、飲み口部71から食品容器70内の食品を摂取したときの模式図である。このとき、電極61と電極62はそれぞれ頤唇溝部4と下顎底部5に当接され、味覚を調整する電気信号を印加できる閉回路を構成する。図示しない電気信号発生部により味覚を調整する電気信号が印加される。
【0044】
飲み口部71を口から離すと、電極61と電極62はそれぞれ頤唇溝部4と下顎底部5から離れるので電気信号の印加も停止される。この様な電極の接触及び非接触による電気信号の印加と停止のほか、図示しない近接センサまたは接触センサにより電極と人体との距離を計測して電気信号の印加と停止を行っても良い。
【0045】
このように、本発明にかかる実施例2の電気味覚調整装置によれば、飲食物を食品容器から摂取するときにのみ電極を設置するので、食事の期間中に電極を装着しなければならないという煩わしさが解消される。
【0046】
図7は実施例2の電極61が口腔内に当接されるよう構成された例である。食品容器保持部63に食品容器70の飲み口部71を保持し、飲み口部71から食品容器70内の食品を摂取すると電極61は口腔内に挿入されて味覚器官(例えば舌)に当接され、電極62は下顎底部5に当接され、味覚を調整する電気信号を印加できる閉回路を構成する。図示しない電気信号発生部により味覚を調整する電気信号が印加される。
【0047】
飲み口部71を口から離すと、電極61は口腔内から引き抜かれ、電極62は下顎底部5から離れるので電気信号の印加も停止される。この様な電極の接触及び非接触による電気信号の印加と停止のほか、図示しない近接センサまたは接触センサにより電極と人体との距離を計測して電気信号の印加と停止を行っても良い。
【0048】
[実施例3]本発明にかかる電気味覚調整装置に使用される電極は、金属製の電極に限られず、導電プラスチックなど導電性を有していればよい。例えば導電性プラスチックを用いて電極と一体成型し、さらに下顎の形状に沿って成型することで電極の密着性が高まる。
【0049】
[実施例4]これまで説明した電気味覚調整装置は、人体の味覚器官に電流を流すことで飲食時に味覚を増強、減少又は提示惹起するものであるが、飲食物が口内に存在していなくても味覚を提示、惹起することができる。この原理を直接利用することで本発明にかかる電気味覚調整装置を人体の味覚機能測定装置として利用することができる。
【0050】
味覚機能測定装置の例として、前述した実施例2にかかる構成の電気味覚調整装置を例にして説明する。口中に飲食物を含んでいない状態の被検者に電極55と電極56をそれぞれ頤唇溝部4と下顎底部5に当接する。次に検査者は図示しない制御手段によって電極55と電極56の間に電気信号を印加する。被検者は電気信号が印加されている間、または電気信号が印加される前後において感知した味覚の種類、強弱を判断する。
【0051】
印加した電気信号の極性、振幅、周波数、波形、断続時間等から推定される味覚の増強、減少または提示効果と、被検者が感知した味覚、感知しなかった味覚、増強された味覚、減少した味覚、提示または惹起された味覚とを比較することにより、被検者の味覚器官の機能を確認することができる。
【0052】
被検者の感知した味覚の種類、強弱の判断は、図示しない味覚判定手段によって電気味覚調整装置に伝達される。電気味覚調整装置は味覚判定手段によって伝達された判定情報に基づいて電気信号の印加を継続したり停止したりし、また電気信号の極性、振幅、周波数、波形、断続時間等を変化させる。比較判定手段の例として、押しボタンスイッチ、スライダーバー等で構成される入力手段がある。被検者は例示した押しボタンスイッチ、スライダーバーによって感知した味覚、感知しなかった味覚、増強された味覚、減少した味覚、提示または惹起された味覚を表現する。
【0053】
電気味覚調整装置は味覚判定手段によって伝達された被検者の味覚感知状態と、印加した電気信号の状態を相対的、または客観的に比較することにより、被検者の味覚機能の確認を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 被検体
2 味覚器官
3 口
4 頤(おとがい)唇溝部
5 下顎底部
6 手
7 拇指
8 示指
10 電極
11 電極
12 電気信号発生部
13 味覚調整電流
20 リング電極
21 指に装着したリング電極
22 指に装着したリング電極
30 電極部分
31 絶縁体
50 電気味覚調整装置
51 電極保持部
52 電極保持部
53 食品容器保持部
54 食品容器保持用の穴
55 電極
56 電極
60 電気味覚調整装置
61 電極
62 電極
63 食品容器保持用の穴
70 食品容器
71 食品容器の飲み口
【要約】
【課題】飲食時に電気信号よって味覚を調整する電気味覚調整装置において、電気信号を印加するためには電極を装着しなければならない。このする煩わしさを解消する電気味覚調整装置を提供する。
【解決手段】電気味覚調整装置1は食品容器に装着され、食品容器を口にする際に電気味覚調整装置1に連結された電極1と電極2が、それぞれ下顎上部と下顎底部に接触することで電気信号を印加する。これにより味覚調整のための電極装着を容易にすることができる。
【選択図】
図2