(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ボビンケース交換装置のエラー検出装置
(51)【国際特許分類】
D05B 59/00 20060101AFI20231228BHJP
D05B 19/12 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
D05B59/00 Z
D05B19/12
(21)【出願番号】P 2022181745
(22)【出願日】2022-11-14
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000232461
【氏名又は名称】日本電波株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】太田 誠
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 武幸
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特許第6945206(JP,B1)
【文献】特開平09-155088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 59/00
D05B 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンのボビンケース交換装置における複数種類のエラーを検出するエラー検出装置(40)であって、
ボビンケース交換装置の駆動軸(16)と同期して回転し、エラーの種類に応じた回転位置に複数の被検知部(43-45)が設けられたドグ(41)と、
ドグ(41)の近傍に設けられ、ドグ(41)の回転により到達する被検知部(43-45)を検知するセンサー(51)と、
センサー(51)が検知した被検知部(43-45)の到達タイミングの違いによりエラーの種類を識別して出力する制御装置(70)と、
制御装置(70)が出力したエラーの種類をミシン使用者に伝達する伝達装置(80)と、を含み構成されているボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項2】
複数種類のエラーは、補充ボビンケース受け(2)への補充ボビンケース入れ忘れエラーと、釜(64)からの空ボビンケース取り出しエラーと、補充ボビンケース受け(2)からの補充ボビンケース取り出しエラーとを含む請求項1記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項3】
被検知部(43-45)は開スリットであり、センサー(51)は開スリットを通過した光を検知するフォトセンサーである請求項1記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項4】
制御装置(70)は、パルスを発生させるパルス発生部と、前記パルスに基づいて駆動軸回転用の駆動モーター(14)を作動させるモータードライバ部と、前記パルスをカウントするパルスカウント部と、パルスカウント数とフォトセンサー信号による判定部とを含む請求項3記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項5】
パルス発生部、パルスカウント部及び判定部は、CPU(73)が担う請求項4記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項6】
パルス発生部はクロック信号を生成する回路(74)と該クロック信号に基づいてパルスを出力する回路(75)とが担い、パルスカウント部は前記クロック信号をカウントすることによりパルスをカウントするカウンタ回路(76)が担い、判定部は判定回路(77)が担う請求項4記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項7】
伝達装置(80)は、エラーの種類に応じた色を発光する発光装置である請求項1~6のいずれか一項に記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項8】
伝達装置(80)は、エラーの種類に応じた文字又は図形を表示する表示装置である請求項1~6のいずれか一項に記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項9】
伝達装置(80)は、エラーの種類に応じた音又は声を発音する発音装置である請求項1~6のいずれか一項に記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項10】
エラー検出装置(40)は、駆動軸(16)の原点検出も行うように構成された請求項1~6のいずれか一項に記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【請求項11】
エラー検出と原点検出とを識別するために、エラー検出用の被検知部(43-45)をスリット幅が相対的に狭い開スリットとし、原点検出用の被検知部(42)をスリット幅が相対的に広い開スリットとし、センサー(51)を両スリット幅の違いを検出するものとする請求項10記載のボビンケース交換装置のエラー検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンのボビンケース交換装置のエラー検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボビンケース交換装置は、下糸が無くなった又は無くなりかけたボビンを収容したボビンケース(以下「空ボビンケース」という。)をミシンの釜から取り出し、それと交換に、下糸が満巻されたボビンを収容したボビンケース(以下「補充ボビンケース」という。)を釜に取り付けるものである。
【0003】
本出願人は、先に特許文献1において、補充ボビンケースをセットする補充ボビンケース受けと、固定ベースと、固定ベースに対して旋回可能な旋回ベースと、空ボビンケース又は補充ボビンケースを掴むための開閉可能なツメを有するツメ装置と、旋回ベースを補充ボビンケース受けを向く方向と釜を向く方向との間で旋回可能にする旋回機構と、ツメ装置を旋回ベースに対して前後スライド可能にする前後スライド機構と、ツメを開閉可能にするツメ開閉機構と、これらの旋回機構、前後スライド機構及びツメ開閉機構をすべて駆動する1つの駆動軸とを含み構成されたボビンケース交換装置を開示した。このボビンケース交換装置により、駆動軸を1つにして故障率を下げ、修理によるダウンタイムを減らし、ミシンの稼働率を上げることができる、という優れた効果が得られた。
【0004】
また、このボビンケース交換装置には、(ア)補充ボビンケース受けへの補充ボビンケース入れ忘れエラーと、(イ)釜からの空ボビンケース取り出しエラーと、(ウ)補充ボビンケース受けからの補充ボビンケース取り出しエラーとを、1つのセンサーで検出するエラー検出装置を設けた。このエラー検出装置は、駆動軸及び旋回用カムと同期して回転し、上記(ア)~(ウ)のエラーに応じた回転位置に複数の開スリットが形成された円板状ドグと、ツメ装置と共に前後スライドする開スリット付きのバー状ドグと、円板状ドグの近傍であって円板状ドグとバー状ドグとが並んだ箇所に設置され、板状ドグの回転により到達する開スリットを検知する配置されたセンサーとを備えたものを示した。このエラー検出装置により、エラー検出用のセンサーも1つにして故障率を下げ、修理によるダウンタイムを減らし、ミシンの稼働率を上げることができる、という優れた効果が得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のエラー検出装置は、上記(ア)~(ウ)のいずれのエラーを検出したときにも、ボビンケース交換装置を停止させるだけであった。そのため、ミシン使用者がミシンヘッドに行ってボビンケース交換装置を調べてみないと、いずれのエラーが発生したのかが分からないという問題があった。
【0007】
また、この問題に起因し、エラーを解消する処置を効率的に行うことができないという問題もあった。すなわち、上記(ア)~(ウ)のエラーを解消する処置は次のとおりそれぞれ異なる。
(ア)補充ボビンケース入れ忘れエラーのときは、下糸を巻いたボビンケースを補充ボビンケース受けにセットする処置が必要である。
(イ)空ボビンケース取り出しエラーのときは、釜にある空ボビンケースを取り出す処置が必要である。
(ウ)補充ボビンケース取り出しエラーのときは、同エラーが発生した原因を確認して、例えば補充ボビンケースを補充ボビンケース受けに正しくセットし直すなどの処置が必要である。
【0008】
上記(ア)ではミシン使用者が補充ボビンケースを準備して持って行く必要があるが、上記(イ)(ウ)ではその必要はない。こういったことが、ボビンケース交換装置を調べてからでないと分からないようでは、処置をする際に効率が悪い。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ボビンケース交換装置で発生する複数種類のエラーを検出するだけでなく、いずれのエラーが発生したのかをミシン使用者に伝達してボビンケース交換装置を調べなくても分かるようにし、エラーを解消する処置を効率的に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ミシンのボビンケース交換装置における複数種類のエラーを検出するエラー検出装置であって、
ボビンケース交換装置の駆動軸と同期して回転し、エラーの種類に応じた回転位置に複数の被検知部が設けられたドグと、
ドグの近傍に設けられ、ドグの回転により到達する被検知部を検知するセンサーと、
センサーが検知した被検知部の到達タイミングの違いによりエラーの種類を識別して出力する制御装置と、
制御装置が出力したエラーの種類をミシン使用者に伝達する伝達装置と、を含み構成されていることを特徴とする。
【0011】
複数種類のエラーとしては、特に限定されないが、補充ボビンケース受けへの補充ボビンケース入れ忘れエラーと、釜からの空ボビンケース取り出しエラーと、補充ボビンケース受けからの補充ボビンケース取り出しエラーとを含む態様を例示できる。
【0012】
被検知部及びセンサーとしては、特に限定されないが、被検知部は開スリットであり、センサーは開スリットを通過した光を検知するフォトセンサーである態様を例示できる。ドグの被検知部以外の本体形状としては、特に限定されず、円板状、角板状、円筒状等を例示できる。
【0013】
制御装置としては、特に限定されないが、パルスを発生させるパルス発生部と、前記パルスに基づいて駆動軸回転用の駆動モーターを作動させるモータードライバ部と、前記パルスをカウントするパルスカウント部と、パルスカウント数とフォトセンサー信号による判定部とを含む態様を例示できる。この態様において、次の二例を例示する。
(1)パルス発生部、パルスカウント部及び判定部はCPU(Central Processing Unit)が担う例。CPUはMCU(Micro Controller Unit)でもMPU(Micro Processor Unit)でもよい。
(2)パルス発生部はクロック信号を生成する回路と該クロック信号に基づいてパルスを出力する回路とが担い、パルスカウント部は前記クロック信号をカウントすることによりパルスをカウントするカウンタ回路が担い、判定部は判定回路が担う例。
【0014】
伝達装置としては、特に限定されないが、次の三例を例示する。
(a)エラーの種類に応じた色を発光する発光装置。
(b)エラーの種類に応じた文字又は図形を表示する表示装置。
(c)エラーの種類に応じた音又は声を発音する発音装置
【0015】
エラー検出装置は、駆動軸の原点検出も行うものであることが好ましい。
【0016】
エラー検出と原点検出とを識別するために、エラー検出用の被検知部をスリット幅が相対的に狭い開スリットとし、原点検出用の被検知部をスリット幅が相対的に広い開スリットとし、センサーを両スリット幅の違いを検出するものとすることが好ましい。
とが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ボビンケース交換装置で発生する複数種類のエラーを検出するだけでなく、いずれのエラーが発生したのかをミシン使用者に伝達してボビンケース交換装置を調べなくても分かるようにし、エラーを解消する処置を効率的に行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は実施例のボビンケース交換装置の斜視図である。
【
図3】
図3は同装置の旋回ベース、前後スライド機構、エラー検出装置等の斜視図である。
【
図4】
図4は同装置の3つのカム等の分解斜視図である。
【
図5】
図5は同装置のツメ装置等の分解斜視図である。
【
図6】
図6は同エラー検出装置の円板状ドグとバー状ドグの側面図である。
【
図7】
図7は同エラー検出装置のブロック図である。
【
図8】
図8は同ボビンケース交換装置のタイミングチャート図である。
【
図9】
図9は同装置の補充ボビンケース入れ忘れエラー検出を示す(a)は正常時の側面図、(b)はエラー時の側面図である。
【
図10】
図10は同装置の空ボビンケース取り出しエラー検出を示す(a)は正常時の側面図、(b)はエラー時の側面図である。
【
図11】
図11は同装置の補充ボビンケース取り出しエラー検出を示す(a)は正常時の側面図、(b)はエラー時の側面図である。
【
図12】
図12は同エラー検出装置によるエラー検出のフローチャート図である。
【
図13】
図13は同エラー検出装置によるエラー検出のタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ミシンのボビンケース交換装置における複数種類のエラーを検出するエラー検出装置であって、
ボビンケース交換装置の駆動軸と同期して回転し、エラーの種類に応じた回転位置に複数の被検知部が設けられたドグと、
ドグの近傍に設けられ、ドグの回転により到達する被検知部を検知するセンサーと、
センサーが検知した被検知部の到達タイミングの違いによりエラーの種類を識別して出力する制御装置と、
制御装置が出力したエラーの種類をミシン使用者に伝達する伝達装置と、を含み構成されている。
ミシンの種類は特に限定されず、直線縫いミシン、模様縫いミシン、刺繍ミシン等を例示できる。
【実施例】
【0020】
次に、本発明の実施例について
図1~
図13を参照して説明する。なお、実施例の各部の構造、材料、形状及び寸法は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0021】
ミシン60は、ミシンヘッド(図示略)と、その下方のベッド61とを備える。ベッド61は機枠62の上に取り付けられ、ベッド61には駆動軸63が通されている。ベッドは、駆動軸63により駆動される釜64と、その上を覆う針板65とを備える。
【0022】
ボビンケース交換装置1は、釜64の手前に設けられている。以下では、ボビンケース交換装置1から見て、釜64の側を「前」、釜64に向かって進むことを「前進」といい、反対の側を「後」、釜64から反対に離れることを「後退」ということにする。
【0023】
図1~
図7に示すように、ボビンケース交換装置1は、
補充ボビンケースBをセットする補充ボビンケース受け2と、
固定ベース3と、
固定ベース3に対して旋回可能な旋回ベース4と、
空ボビンケースA又は補充ボビンケースBを掴むための開閉可能なツメ10を有するツメ装置6と、
旋回ベース4を、補充ボビンケース受け2を向く方向と釜64を向く方向との間で旋回可能にする旋回機構17と、
ツメ装置6を旋回ベース4に対して前後スライド可能にする前後スライド機構22と、
ツメ10を開閉可能にするツメ開閉機構34と、
旋回機構17と前後スライド機構22とツメ開閉機構34とをすべて駆動する1つの駆動軸16と、
駆動軸16を回転させる1つの駆動モーター14と、
補充ボビンケース受け2への補充ボビンケース入れ忘れエラーと、釜64からの空ボビンケース取り出しエラーと、補充ボビンケース受け2からの補充ボビンケース取り出しエラーと、駆動軸16の原点とを、1つのセンサーで検出するエラー検出装置40と
を含み構成されている。
【0024】
[補充ボビンケース受け2]
補充ボビンケース受け2は、斜めに前傾することにより後面が斜め上後方を向く受け板に、補充ボビンケースBをセットする凹所が形成されてなる。補充ボビンケース受け2は、釜64の直下の機枠にブラケットを介して取り付けられている。
【0025】
[固定ベース3]
固定ベース3は、縦方向と前後方向とに延びる板状体であって、補充ボビンケース受け2の側部に固定されている。ベースには、後述するモーターの旋回を逃がすための逃がし穴が形成されている。
【0026】
[旋回ベース4]
旋回ベース4は、縦方向と前後方向とに延びる板状体であって、その後上部が固定ベース3の上部に対して旋回支持軸5により軸着され、該旋回支持軸5を中心にしてその前部が旋回可能となっている。
【0027】
[ツメ装置6]
ツメ装置6は、スライドベース7と、スライドベース7の上にピン受け8を介して取り付けられた押さえ下板9と、押さえ下板9の上にピン受け8に係入する支点軸11により回動可能に取り付けられたツメ10と、押さえ下板9の上に固定されたツメ受け12と、ツメ10及びツメ受け12を覆う押さえ上板13とからなる。
後述する後側スライドブロック28と共に、スライドベース7、押さえ下板9、ツメ10、ツメ受け12及び押さえ上板13が共に前後スライドしうる。
ツメ10は、ツメ受け12に近付くように回動すると、ツメ受け12とでボビンケースのつまみを掴む「閉」となり、ツメ受け12から離れるように回動すると、ボビンケースA,Bのつまみを離して「開」となる。
【0028】
[駆動モーター14]
駆動モーター14は、旋回ベース4の後部に横向きに取り付けられている。モーター本体15は旋回ベース4の左側にあって固定ベース3の逃がし穴を貫通しており、モーター本体15が回転させる駆動軸16は旋回ベース4の右側に突出している。駆動モーター14には減速機付きDCモーターが使用され、モーター(出力軸)1周に要する回転時間は5秒である。
【0029】
[旋回機構17]
旋回機構17は、駆動軸16に取り付けられて共に回転する旋回用カム18と、固定ベース3に基台20及び旋回位相調整板21を介して取り付けられたカムフォロア19とを含み構成されている。
旋回用カム18は特定カムプロフィールのカム縁をもつ板カムであり、回転に伴いカム縁の各位相が、カムフォロア19を押すことにより、旋回用カム18とともに旋回ベース4が旋回するようになっている。また、基台20に対して旋回位相調整板21を位置調整して止めることにより、旋回位相を調整することができる。なお、カムフォロア19を旋回用カム18に当接させる方向に、旋回機構17を付勢するバネ機構(図示略)を備えている。
旋回用カム18等による旋回ベース4の旋回角度(補充ボビンケース受け2を向く方向と釜64を向く方向との間の角度)は例えば20~40°(図示例は30°)であり、機構を組み込みやすく且つ旋回時間を短くできる。
【0030】
[前後スライド機構22]
前後スライド機構22は、駆動軸16及び旋回用カム18と同期して回転する前後スライド用カム23と、カムフォロア24付きの四節リンク25と、四節リンク25の1つのレバーに取り付けられた前後スライド用レバー26と、旋回ベース4に取り付けられた前後スライド軸27と、前後スライド軸27にスライド可能に係合した後側スライドブロック28及び前側スライドブロック29と、両スライドブロック28,29間の前後長8mmほどの間隙30に介装されたバネ31と、後側スライドブロック28に突設され、前後スライド用レバー26に係合するレバー駆動ピン32とを含み構成され、前側スライドブロック29にツメ装置6のスライドベース7が取り付けられている。
【0031】
前後スライド用カム23は、その孔に旋回用カム18の孔にも差し込まれた複数本の連結ネジ33が差し込まれていることにより、旋回用カム18と同期して回転する。前後スライド用カム23は特定カムプロフィールのカム縁をもつ板カムであり、回転に伴いカム縁の各位相がカムフォロア24を押して、四節リンク25を前後方向に揺動させる。この揺動と共に前後スライド用レバー26が揺動してレバー駆動ピン32を押すことにより、後側スライドブロック28がバネ31を介して前側スライドブロック29を押すので、後側スライドブロック28と前側スライドブロック29は同量スライドし、前側スライドブロック29にスライドベース7において取り付けられたツメ装置6が前後スライドするようになっている。なお、カムフォロア24を前後スライド用カム23に当接させる方向に、前後スライド機構22を付勢するバネ機構(図示略)を備えている。
【0032】
詳しくは、後側スライドブロック28及び前側スライドブロック29の前後スライド量が44mmになったときに、後述するように押さえ下板9及び押さえ上板13がボビンケースA,Bを押さえるので、前側スライドブロック29(及びそれに取り付けられたスライドベース7とバー状ドグ46)はそれ以上スライドしなくなる。その後、後側スライドブロック28のみがバネ31を圧縮しながら2mmスライドしてストロークの46mmに達し、間隙30は8mmから6mmに縮まる。
【0033】
しかし、押さえるべきボビンケースA,Bがなかった場合には、後側スライドブロック28及び前側スライドブロック29の前後スライド量が44mmになったときに、押さえ下板9及び押さえ上板13がボビンケースA,Bを押さえないので、前側スライドブロック29はさらにスライド可能である。その後、後側スライドブロック28は、前側スライドブロック29(及びそれに取り付けられたスライドベース7とバー状ドグ46)とともに2mmスライドしてストロークの46mmに達する。
【0034】
[ツメ開閉機構34]
ツメ開閉機構34は、駆動軸16及び旋回用カム18と同期して回転するツメ開閉用カム35と、カムフォロア36付きのツメ開閉用レバー37と、四節リンク38と、ツメ10の支点軸11よりも後側から下方へ延び、押さえ下板9のスリットを貫通して、四節リンク38の側縁に当たるツメ駆動ピン39とを含み構成されている。
【0035】
ツメ開閉用カム35は、その孔に旋回用カム18の孔にも差し込まれた複数本の連結ネジ33が差し込まれていることにより、旋回用カム18と同期して回転する。ツメ開閉用カム35は特定カムプロフィールのカム縁をもつ板カムであり、回転に伴いカム縁の各位相がカムフォロア36を押してツメ開閉用レバー37を前後方向に揺動させ、ツメ開閉用レバー37が係合ピンを介して四節リンク38を前後方向に揺動させるとともに四節リンク38の側縁を横方向に変位させ、該側縁がツメ駆動ピン39を押すことにより、ツメ10が回動して開閉するようになっている。なお、カムフォロア36をツメ開閉用カム35に当接させる方向に、ツメ開閉機構34を付勢するバネ機構(図示略)を備えている。
【0036】
[エラー検出装置40]
エラー検出装置40は、駆動軸16及び旋回用カム18と同期して回転し、エラーの種類に応じた回転位置に複数の開スリットが設けられた円板状ドグ41と、スライドベース7に取り付けられて共に前後スライドするバー状ドグ46と、センサーベース50に取り付けられたことにより円板状ドグ41の近傍に設けられ、円板状ドグ41の回転により到達する開スリットを検知する1つのフォトセンサー51とを含み構成されている。(さらに、新規には制御装置70と伝達装置80とを含むが、この点は後述する。)
【0037】
円板状ドグ41は、その孔に旋回用カム18にも差し込まれた複数本の連結ネジ33が差し込まれていることにより、駆動軸16及び旋回用カム18と同期して回転する。円板状ドグ41は、カム角度と位相を合わせた開スリットが形成された円板であり、詳しくは
図6に示すように、
・駆動軸16の位相0°(原点)に合わせた円板側原点検出スリット42と、
・位相160°に合わせた円板側補充ボビンケース忘れ用スリット43と、
・位相270°に合わせた円板側空ボビンケース用スリット44と、
・位相290°に合わせた円板側補充ボビンケース用スリット45と
が形成されている。円板側原点検出スリット42のスリット幅は回転角で7.5°である。エラー検出用の開スリット43,44,45のスリット幅は回転角で2.5°である。
【0038】
バー状ドグ46は、カム角度と位相を合わせた開スリットが形成された前後方向に延びる帯板であり、詳しくは、
・バー側原点検出スリット47と、
・バー側空ボビンケース用スリット48と
が形成されている。
【0039】
円板状ドグ41とバー状ドグ46とは、両者のスリットが重なりうる位置関係で、横方向に近接して並んでいる。
【0040】
センサーベース50は、円板状ドグ41とバー状ドグ46の情報に位置するように、旋回ベース4の上部に取り付けられている。
1つのフォトセンサー51は、センサーベース50に取り付けられた発光体及び受光体からなり、円板状ドグ41の開スリットとバー状ドグ46の開スリットとが合致したことを(該開スリットを通過した光を検知することにより)検知して、補充ボビンケース受け2への補充ボビンケース入れ忘れエラーと、釜64からの空ボビンケース取り出しエラーと、補充ボビンケース受け2からの補充ボビンケース取り出しエラーと、駆動軸16の原点とを検出する。その詳細は後述する。
【0041】
ここまで説明してきたボビンケース交換装置1の機械的構成は、特許文献1で開示したボビンケース交換装置の構成と基本的に同一であるが(上記開スリット43-45の位相角の微差を除く。)、本実施例では、エラー検出装置40がさらに、フォトセンサー51が検知した開スリットの到達タイミングの違いによりエラーの種類を識別して出力する制御装置70と、制御装置70が出力したエラーの種類をミシン使用者に伝達する伝達装置80とを含み構成されている点が、特許文献1のエラー検出装置と異なる。
【0042】
制御装置70は、
図7に示すように、駆動モーター14の起動スイッチ71と、パルスを発生させるパルス発生部と、前記パルスに基づいて駆動モーター14を作動させるモータードライバ72と、前記パルスをカウントするパルスカウント部と、パルスカウント数とフォトセンサー信号による判定部とを含み構成され、次の二例を例示する。
(1)
図7(a)に示すように、パルス発生部、パルスカウント部及び判定部は、MCU73が担う例。
(2)
図7(b)に示すように、パルス発生部は、クロック信号を生成するクロック信号生成回路74と該クロック信号に基づいてパルスを出力するパルス出力回路75とが担い、パルスカウント部は前記クロック信号をカウントすることによりパルスをカウントするカウンタ回路76が担い、判定部は判定回路77が担う例。
【0043】
パルス発生部が発生するパルスの周波数は2,000Hz(=pls/sec)であり、前記のとおりモーター(出力軸)1周に要する時間は5秒であるから、該1周のパルス数は10,000plsである。
【0044】
伝達装置80は、フルカラーLEDを用いて4色(例えば黄色、赤色、緑色、青色)発光、又は3色(例えば黄色、赤色、青色)発光させる発光装置である。
【0045】
制御装置70の構成については、次の[基本動作]と[エラー検出と原点検出]を説明した後に、さらに詳述することとする。
【0046】
[基本動作]
以上のように構成された本実施例のボビンケース交換装置1の基本動作を、
図8のタイミングチャートを参照して説明する。なお、上述した特許文献1との機械的構成の同一性から、当該基本動作における図面は、特許文献1の
図8-
図21と基本的に同一となるから省略する。
【0047】
(1)駆動軸16の位相が0°(原点)のとき、ツメ装置6は旋回ベース4と共に、補充ボビンケース受け2を向く方向と釜64を向く方向との中間位置にある。このとき、釜64には空ボビンケースAがあり、補充ボビンケース受け2には補充ボビンケースBがセットされている。
そして、駆動軸16が一方向に回転しはじめると、タイミングチャートのとおり、ツメ装置6は旋回ベース4と共に釜64を向く方向となる側に旋回しはじめるとともに、ツメ装置6は前進しはじめる。
【0048】
(2)駆動軸16が回動して位相30°のとき、ツメ装置6は旋回ベース4と共に釜64を向く方向となり、ツメ装置6は空ボビンAのすぐ手前まで前進している。このとき、ツメ10は「開」から閉じはじめる。
【0049】
(3)駆動軸16が回動して位相35°のとき、ツメ装置6は前進し終わり、押さえ下板9及び押さえ上板13の前端が空ボビンケースAを押さえ、ツメ10は「開」から「閉」に向けて少し回動しているが、まだ空ボビンケースAのつまみを掴んではいない。このように、つまみを掴む前に空ボビンケースAを押さえる理由は、つまみを掴む際に空ボビンケースA全体が連れ動いて傾かないようにするためである(空ボビンケースAの安定化)。
【0050】
(4)駆動軸16が回動して位相60°のとき、ツメ10は「閉」となって空ボビンケースAのつまみを掴んでおり、ツメ装置6は後退しはじめる。その後、ツメ装置6は旋回ベース4と共に補充ボビンケース受け2を向く方向となる側に旋回しはじめる。
【0051】
(5)駆動軸16が回動して位相105°のとき、ツメ装置6は旋回ベース4と共に、補充ボビンケース受け2を向く方向と釜64を向く方向との中間位置にあり、ツメ装置6は後退し終わっている。その後、ツメ10は「閉」から開きはじめ、つまみを離して空ボビンケースAを落下させる。
【0052】
(6)駆動軸16が回動して位相130°のとき、ツメ装置6は旋回ベース4と共に、補充ボビンケース受け2を向く方向となり、(厳密には125°から)ツメ装置6は前進しはじめる。
【0053】
(7)駆動軸16が回動して位相145°のとき、ツメ装置6は補充ボビンケースBのすぐ手前まで前進している。
【0054】
(8)駆動軸16が回動して位相155°のとき、ツメ装置6は前進し終わり、押さえ下板9及び押さえ上板13の前端が補充ボビンケースBを押さえ、ツメ10は「開」から「閉」に向けて少し回動しているが、まだ補充ボビンケースBのつまみを掴んではいない。このように、つまみを掴む前に補充ボビンケースBを押さえる理由は、つまみを掴む際に補充ボビンケースB全体が連れ動いて傾かないようにするためである(補充ボビンケースBの安定化)。
【0055】
(9)駆動軸16が回動して位相180°のとき、ツメ10は「閉」となって補充ボビンケースBのつまみを掴んでおり、ツメ装置6は後退しはじめる。その後、ツメ装置6は旋回ベース4と共に釜64を向く方向となる側に旋回しはじめる。
【0056】
(10)駆動軸16が回動して位相210°のとき、ツメ装置6は後退し終わり、(厳密には205°から)ツメ装置6は旋回ベース4と共に釜64を向く方向となる側に旋回しはじめる。
【0057】
(11)駆動軸16が回動して位相260°のとき、ツメ装置6は旋回ベース4と共に釜64を向く方向となり、ツメ装置6は釜64のすぐ手前まで前進している。
【0058】
(12)駆動軸16が回動して位相280°のとき、ツメ装置6は前進し終わって補充ボビンケースBを釜64に係入させており、ツメ10は「閉」から回動しはじめる。
【0059】
(13)駆動軸16が回動して位相310°のとき、ツメは「開」となって補充ボビンケースBを釜64に取り付け終わっており、ツメ装置6は旋回ベース4と共に補充ボビンケース受け2を向く方向となる側に旋回しはじめ、(厳密には305°から)ツメ装置6は後退しはじめる。
【0060】
(14)駆動軸16が回動して位相340°のとき、ツメ装置6は旋回ベース4と共に、補充ボビンケース受け2を向く方向と釜64を向く方向との中間位置となり、ツメ装置6は後退し終わる。その後、駆動軸16は回動して位相0°(原点)となる。
【0061】
以上のように、駆動軸16の一方向の1回転で、ボビンケース交換が完了する。次のボビンケース交換は、同じく駆動軸16の一方向の1回転で行われる。
【0062】
[エラー検出と原点検出]
次に、本実施例のボビンケース交換装置1において、動作上問題となるため検出すべき3種類のエラー検出と、駆動軸16の原点検出とを、
図8のタイミングチャートと、
図9~
図11の動作図を参照して説明する。
【0063】
(ア)補充ボビンケース入れ忘れエラー検出
図9は、駆動軸16が回動して位相160°のとき([基本動作](8)の直後)の動作図であり、補充ボビンケースBを補充ボビンケース受け2から取り出そうとしている。
【0064】
同図(a)は、正常時、すなわち補充ボビンケース受け2に補充ボビンケースBがセットされていた場合を示す。上記[前後スライド機構22]と[基本動作](8)で説明したとおり、後側スライドブロック28及び前側スライドブロック29の前後スライド量が44mmになったときに、押さえ下板9及び押さえ上板13(同図では図示略)が補充ボビンケースBを押さえ、前側スライドブロック29及びバー状ドグ46はそれ以上スライドしなくなり、その後、後側スライドブロック28のみが間隙30のバネ31(
図3参照)を圧縮しながら2mmスライドして、間隙30は8mmから6mmに縮まっている。このとき、フォトセンサー51上を、円板側補充ボビンケース忘れ用スリット43が通過するが、該スリット43をバー状ドグ46の後端部が塞ぐため、フォトセンサー51はエラー検出しない。
なお、前側スライドブロック29の前端からフォトセンサー51までの距離は103mmである。
【0065】
同図(b)は、エラー時、すなわち補充ボビンケース受け2に補充ボビンケースBをセットし忘れていた場合を示す。上記[前後スライド機構22]で説明したとおり、押さえ下板9及び押さえ上板13は補充ボビンケースを押さえないから、後側スライドブロック28は前側スライドブロック29及びバー状ドグ46とともにストロークの46mmまでスライドし、間隙30のバネ31は圧縮しておらず、間隙30は8mmである。すなわち、バー状ドグ46は、上記(a)の正常時よりも2mmだけ前にある。このとき、フォトセンサー51上を、円板側補充ボビンケース忘れ用スリット43が通過し、該スリット43をバー状ドグ46の後端部が塞がないため、フォトセンサー51はエラー検出し、ボビンケース交換装置1は停止する。
【0066】
(イ)空ボビンケース取り出しエラー検出
図10は、駆動軸16が回動して位相270°のとき([基本動作](11)の直後)の動作図であり、補充ボビンケースBを釜64に取り付けようとしている。
【0067】
同図(a)は、正常時、すなわちそれ以前の[基本動作](4)で空ボビンケースAが取り出された釜64に、補充ボビンケースBを取り付ける場合を示す。後側スライドブロック28及び前側スライドブロック29のスライドはストロークの途中であり、補充ボビンケースBは何にも当たっていないから、間隙30のバネ31(
図3参照)は圧縮しておらず、間隙30は8mmである。このとき、フォトセンサー51上を、円板側空ボビンケース用スリット44が通過するが、該スリット44をバー状ドグ46の後部が塞ぐため、フォトセンサー51はエラー検出しない。
なお、前側スライドブロック29の前端からフォトセンサー51までの距離は91mmである。
【0068】
同図(b)は、エラー時、すなわちそれ以前の[基本動作](4)で取り出しエラーにより空ボビンケースAが残っている釜64に、補充ボビンケースBを取り付ける場合を示す。後側スライドブロック28及び前側スライドブロック29のスライドはストロークの途中であるが、補充ボビンケースBが空ボビンケースAに当たるから、前側スライドブロック29及びバー状ドグ46はすでにスライドが止まっており、後側スライドブロック28のみが間隙30のバネ31を圧縮しながら4mmスライドして、間隙30は8mmから4mmに縮まっている。すなわち、バー状ドグ46は上記(a)の正常時よりも4mmだけ後ろにある。このとき、フォトセンサー51上を、円板側空ボビンケース用スリット44が通過し、該スリット44にバー側空ボビンケース用スリット48が合致するため、フォトセンサー51はエラー検出し、ボビンケース交換装置1は停止する。
【0069】
(ウ)補充ボビンケース取り出しエラー検出
図11は、駆動軸16が回動して位相290°のとき([基本動作](12)の直後)の動作図であり、補充ボビンケースBを釜64に取り付け終わろうとしている。
【0070】
同図(a)は、正常時、すなわちそれ以前の[基本動作](9)で補充ボビンケース受け2から取り出して掴んでいる補充ボビンケースBを釜64に取り付ける場合を示す。上記(ア)(a)と(場所は異なるが)同様に、押さえ下板9及び押さえ上板13が補充ボビンケースBを押さえることから、間隙30は8mmから6mmに縮まっている。このとき、フォトセンサー51上を、円板側補充ボビンケース用スリット45が通過するが、該スリット45をバー状ドグ46の後端部が塞ぐため、フォトセンサー51はエラー検出しない。
【0071】
同図(b)は、エラー時、すなわちそれ以前の[基本動作](9)で補充ボビンケース受け2からの取り出しエラーにより掴んでいない補充ボビンケースを釜64に取り付けようとする場合を示す。上記(ア)(b)と(場所は異なるが)同様に、押さえ下板9及び押さえ上板13は補充ボビンケースを押さえないから、間隙30は8mmである。すなわち、バー状ドグ46は、上記(a)の正常時よりも2mmだけ前にある。このとき、フォトセンサー51上を、円板側補充ボビンケース用スリット45が通過し、該スリット45をバー状ドグ46の後端部が塞がないため、フォトセンサー51はエラー検出し、ボビンケース交換装置1は停止する。
【0072】
(エ)駆動軸16の原点検出
駆動軸16が1回転して正しく位相0°(原点)となったとき、フォトセンサー51上で、円板側原点検出スリット42とバー側原点検出スリット47が合致するため、フォトセンサー51は原点検出し、ボビンケース交換装置1は停止する。
【0073】
以上の3種類のエラー検出と駆動軸16の原点検出を行うために、エラー検出装置40の制御装置70は、
図12のフローチャートと、
図13のタイムチャートと、下記説明のとおり動作するように構成されている。
【0074】
(1)ミシン作業者が起動スイッチ71をONすると(
図12のS1)、パルス発生部が発生したパルスに基づいてモータードライバ72により通電された駆動モーター14が回転開始し(S2)、パルスカウント部がパルスカウントを開始する(S3)。
【0075】
(2)フォトセンサー51が開スリット42-45のいずれも検知しない平常時には、パルスカウント部はパルスカウントを続ける(S4-S6-S3)。
【0076】
(3)フォトセンサー51がスリット42-45のいずれかを検知(S4)した時には、スリット検出フラグを立て(S5)、パルスカウント部は1周カウントとは別に、スリット幅検出のためのパルス数を120カウントまで継続し(S6-S7-S8)、センサー状態を確認する(S9)。
【0077】
(4)ここで、円板側原点検出スリット42のスリット幅は回転角で7.5°であるから、パルスカウント数に換算すると約210(≒10000/360×7.5)であり(
図13(a))、120パルス時点でセンサー状態が「H」であれば、すなわちエラーではなく平常動作完了を表す円板側原点検出スリット42を検出したと判別して、モーター停止させ、原点位置で動作完了する(S9-S14-S15)。
【0078】
(5)一方、エラー検出用のスリット43,44,45のスリット幅は回転角で2.5°であるから、パルスカウント数に換算すると約70(≒10000/360×2.5)であり(
図13(b))、120パルス時点でセンサー状態が「L」であれば、すなわちいずれかのエラーを検出したと判別して、モーター停止させる(S9-S10)。
【0079】
(6)エラーを検出したパルスカウント部は、続いて、
図13(c)に示すように、エラーの種類を識別する。
上記(ア)(
図9)のように、位相160°で円板側補充ボビンケース忘れ用スリット43がフォトセンサー51に到達して、該スリット43のエラー検出時には、カウント済みパルス数は約4560(≒10000/360×160+120)となる。
上記(イ)(
図10)のように、位相270°で円板側空ボビンケース用スリット44がフォトセンサー51に到達して、該スリット44のエラー検出時には、カウント済みパルス数は約7620(≒10000/360×270+120)となる。
上記(ウ)(
図11)のように、位相290°で円板側補充ボビンケース用スリット45がフォトセンサー51に到達して、該スリット45のエラー検出時には、カウント済みパルス数は約8180(≒10000/360×290+120)となる。
また、原点検出時には、カウント済みパルス数は10000となる。
【0080】
よってパルスカウント部は、上記カウント済みパルス数により、検出したエラーが(ア)補充ボビンケース入れ忘れエラー、(イ)空ボビンケース取り出しエラー、(ウ)補充ボビンケース取り出しエラーのいずれなのか、あるいは(エ)原点検出なのかを識別して出力し、伝達装置80のLEDを発光させる。ここで、識別と発光のさせ方として次の二例を例示する。
【0081】
[a]伝達装置80にフルカラーLEDを用い、例えば(ア)を識別したときは黄色を点灯させ、(イ)を識別したときは赤色を点灯させ、(ウ)を識別したときは緑色を点灯させ、(エ)原点検出のときは青色を点灯させる。点灯は点滅でもよい。
【0082】
[b][発明が解決しようとする課題]の項で述べたとおり、(ア)ではミシン使用者が補充ボビンケースを準備して持って行く必要があるが、(イ)(ウ)ではその必要はない。このミシン使用者の視点によれば、(イ)(ウ)は区別せずに一緒として扱ってもよい。そこで、
図13(c)に加入したように、エラー判定基準6500を設定し、この6500を過ぎて検出する(イ)(ウ)は区別せずに1種類のエラー検出とする。そして、伝達装置80にフルカラーLEDを用い、例えば(ア)を識別したときは黄色を点灯させ、(イ)(ウ)を識別したときは赤色を点灯させ、(エ)原点検出のときは青色を点灯させる。点灯は点滅でもよい。
【0083】
以上説明したとおり、本実施例によれば、ボビンケース交換装置で発生する複数種類のエラーを検出するだけでなく、いずれのエラーが発生したのかをミシン使用者に伝達してボビンケース交換装置を調べなくても分かるようにしたので、エラーを解消する処置を効率的に行えるようにすることができる。なお、伝達装置80は、ボビンケース交換装置又はその近傍に設置してもよいし、ボビンケース交換装置から離れたところに設置してもよい。
【0084】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)伝達装置を前述の表示装置又は発音装置として、文字、図形、音、声などでエラーの種類を伝達すること。
(2)多頭ミシンに具体化し、伝達装置を多頭ミシンの操作部画面として、いずれのミシンヘッド用のボビンケース交換装置で発生したエラーであるかを集中的に表示できるようにすること。
【符号の説明】
【0085】
A 空ボビンケース
B 補充ボビンケース
1 ボビンケース交換装置
2 補充ボビンケース受け
14 駆動モーター
16 駆動軸
40 エラー検出装置
41 円板状ドグ
42 円板側原点検出スリット
43 円板側補充ボビンケース忘れ用スリット
44 円板側空ボビンケース用スリット
45 円板側補充ボビンケース用スリット
46 バー状ドグ
47 バー側原点検出スリット
48 バー側空ボビンケース用スリット
51 フォトセンサー
60 ミシン
61 ベッド
64 釜
70 制御装置
71 起動スイッチ
72 モータードライバ
73 MCU
74 クロック信号生成回路
75 パルス出力回路
76 カウンタ回路
77 判定回路
80 伝達装置
【要約】
【課題】ボビンケース交換装置で発生する複数種類のエラーを検出するだけでなく、いずれのエラーが発生したのかをミシン使用者に伝達してボビンケース交換装置を調べなくても分かるようにし、エラーを解消する処置を効率的に行えるようにする。
【解決手段】ボビンケース交換装置のエラー検出装置40は、エラーの種類に応じた回転位置に複数の被検知部が設けられたドグ41と、ドグ41の回転により到達する被検知部を検知するセンサー51と、センサー51が検知した被検知部の到達タイミングの違いによりエラーの種類を識別して出力する制御装置70と、制御装置が出力したエラーの種類をミシン使用者に伝達する伝達装置80とを含み構成されている。
【選択図】
図7