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特許7411279金属還元による窒化ケイ素粉末の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】金属還元による窒化ケイ素粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/068 20060101AFI20231228BHJP
   C04B 35/587 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C01B21/068 E
C04B35/587
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022502489
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2019129456
(87)【国際公開番号】W WO2021008089
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】201910642283.2
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521389701
【氏名又は名称】青島瓷興新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】崔巍
(72)【発明者】
【氏名】張杰
(72)【発明者】
【氏名】李飛
(72)【発明者】
【氏名】成会明
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109761206(CN,A)
【文献】特開昭59-184770(JP,A)
【文献】特開2017-114727(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101445223(CN,A)
【文献】英国特許出願公告第01028977(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第01451472(GB,A)
【文献】特開昭62-059599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/068
C04B 35/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)以下の成分:
ケイ素粉末と、
窒化ケイ素希釈剤と、
塩化アンモニウム添加剤と
を用意するステップと、
(2)上記各成分を均一に混合し、混合物を得るステップと、
(3)前記混合物に還元性金属粉末を加え、そして前記金属粉末と前記混合物とを均一に混合し、混合後の混合物をV型混合機で均一に混合し、前記ケイ素粉末が20~70wt%、前記窒化ケイ素希釈剤が70~20wt%、前記塩化アンモニウム添加剤が0~20wt%を占める燃焼合成原料を得るステップと、
(4)ステップ(3)で得られた前記燃焼合成原料を燃焼合成し、窒化ケイ素粉末を得るステップと、を含み、
ステップ(3)で加えられた前記金属粉末の全成分に対する重量百分率は0.01~1%であり、
ステップ(3)に記載の金属粉末は、マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、イットリウム、イッテルビウムのうちの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする金属還元による窒化ケイ素粉末の製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)に記載のケイ素粉末原料は純度>99wt%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)に記載のケイ素粉末の粒度範囲は100~200メッシュである、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(3)に記載の金属粉末は粒度が20~1000メッシュ、酸素含有量<5wt%、純度>99wt%であり、前記純度では酸素含有量が不純物とはされない、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
空気中で酸化しやすい金属粉末は、混合プロセスが不活性ガスの雰囲気で行われるべきであり;
前記空気中で酸化しやすい金属粉末は、カルシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、イットリウム及びイッテルビウムを含む、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
焼結体の製造方法であって、前記焼結体は、請求項1~のいずれか1項に記載の方法で調製された窒化ケイ素粉末を用いて焼結されたものであり、前記窒化ケイ素粉末は平均粒度が1~50μm、金属酸化物の含有量が0~10wt%であり、不純物の含有量が1wt%よりも低く、
(1)以下の重量百分率:
ケイ素粉末:20~70wt%、
窒化ケイ素希釈剤:70%~20wt%、
塩化アンモニウム添加剤:0~20wt%
で原料を用意することと、
(2)上記各原料を均一に混合することと、
(3)前記原料に還元性金属粉末を加え、そして前記金属粉末を前記原料と均一に混合し、混合された混合物を篩掛けすることと、
(4)ステップ(3)で得られた混合物を燃焼合成し、窒化ケイ素粉末を得ることと、
(5)ステップ(4)で得られた前記窒化ケイ素粉末に対して酸洗いと精製を行い、窒化ケイ素粉末を得ることと、
(6)前記窒化ケイ素粉末をMgO、Y2O3と混合し、研磨して、素地を乾式プレス成形し、前記素地を1900℃、1MPaの窒素ガス圧力の条件で8hガス圧焼結することと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
上記ステップ(6)は、実施例2の生成物である窒化ケイ素粉末90wt%、MgO5wt%、Y2O35wt%をそれぞれ秤量し、3つの原料をアルコールと混合し、窒化ケイ素ボールを媒体として、遊星ミルで2hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥することと、乾燥された粉末を60メッシュの篩に掛け、篩掛け後の粉末を乾式プレス成形し、成形圧力が20MPaであり、その後乾式プレス成形された素地に対して220MPaの圧力で冷間静水圧プレスを行うことと、成形された素地を1900℃、1MPaの窒素ガス圧力の条件で8hガス圧焼結し、焼結後に、炉内で降温することと、焼結されたサンプルに対して熱伝導率及び3点曲げ強度の試験を行ったところ、熱伝導率が100W/mK、曲げ強度が800MPaであることと、を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2019年7月16日に中国国家知識産権局に提出された出願番号が201910642283.2、発明名称が「金属還元による窒化ケイ素粉末の製造方法」である先行出願の優先権を主張する。前記先行出願の全体は、引用により本願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、高品質の窒化ケイ素セラミックス粉末の製造技術に関し、特に、還元剤として活性金属粉末を添加することによって低酸素含有量の窒化ケイ素粉末を製造するプロセス技術に関し、無機非金属粉末材料分野に属する。
【0003】
〔背景技術〕
窒化ケイ素セラミックスは、低密度、高熱伝導率、高硬度、良好な熱安定性及び化学的安定性などの様々な優れた特性を有し、構造用セラミックスファミリーにおいて総合的性能が最も良い材料である。セラミックスエンジン、切削工具、熱伝導性基板などの分野で広く適用されている。窒化ケイ素粉末はその主原料として、明らかに重要な地位を占めている。窒化ケイ素セラミックスの焼結プロセスにおいて、窒化ケイ素原料における酸素は、セラミックスの性能に悪影響を与え、窒化ケイ素セラミックスの力学的特性及び熱伝導性を大幅に低下させる。従って、酸素含有量が低く、特にセラミックスの焼結に適する窒化ケイ素粉末が製造されると、セラミックスの性能が大幅に向上する。しかし、現在市販されている窒化ケイ素粉末の製造プロセスにおいて、粉末中の酸素含有量を低下させる効果的な方法はない。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、製造された窒化ケイ素粉末の酸素含有量が1wt%よりも低く、最終に得られた生成物が高品質の窒化ケイ素になり、相の含有量が制御可能で、平均粒度が1~50μm、金属酸化物の含有量が0~10wt%で、不純物の含有量が1wt%よりも低くなるように、活性金属粉末を還元剤として原料に加えることによって高品質の窒化ケイ素粉末を製造するプロセス方法を提供することにある。
【0005】
本発明の実施例は、金属還元による窒化ケイ素粉末の製造方法を提供し、前記方法は、
(1)以下の成分:
ケイ素粉末と、
窒化ケイ素希釈剤と、
塩化アンモニウム添加剤と
を用意するステップと、
(2)上記各成分を均一に混合し、混合物を得るステップと、
(3)前記混合物に還元性金属粉末を加え、そして前記金属粉末と前記混合物とを均一に混合し、混合後の混合物をV型混合機で均一に混合及び/又は篩掛けし、前記ケイ素粉末が20~70wt%、前記窒化ケイ素希釈剤が70~20wt%、前記塩化アンモニウム添加剤が0~20wt%を占める燃焼合成原料を得るステップと、
(4)ステップ(3)で得られた前記燃焼合成原料を燃焼合成し、窒化ケイ素粉末を得るステップと、を含む。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(1)に記載のケイ素粉末原料は、純度>99wt%である。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(1)に記載のケイ素粉末の粒度範囲は、100~200メッシュである。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)で加えられた前記金属粉末の全成分に対する重量百分率は、0.01~10%である。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記ステップ(4)は、ステップ(3)で得られた混合物を反応ボートに緩く散布し、そして前記ボートを燃焼合成反応装置内に置き、真空引きした後に、高純度窒素ガスを充填し、前記燃焼合成反応装置内の圧力を1~8MPaに維持し、通電したタングステンコイルで点火剤を点火し、燃焼合成反応を誘発することと、反応終了後、前記燃焼合成反応装置内の圧力が低下し始め、この時に装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して冷却することと、最終的に柔らかくて割れやすいバルク状の生成物を得て、研磨した後に窒化ケイ素粗粉を得ることとを含み、好ましくは、前記高純度窒素ガスの純度は97%以上、又は前記高純度窒素ガスの純度は99.9%以上である。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記方法は、ステップ(4)の後、ステップ(4)で得られた前記窒化ケイ素粉末に対して酸洗いと精製を行って窒化ケイ素粉末を得るステップ(5)をさらに含む。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(1)に記載の希釈剤は高純度窒化ケイ素粉末で、平均粒径が0.5~10μmであり、前記高純度窒化ケイ素粉末はα相の含有量>60wt%である。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(1)に記載の塩化アンモニウム添加剤は平均粒径が0.1~50μm、純度>99wt%である。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(2)に記載の混合方法は、サンドミリング、ボールミリング、攪拌ミリング、V型混合機による混合ミリング及び/又はドラムミリングを含む。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)に記載の金属粉末は、マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、イットリウム、イッテルビウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
好ましくは、ステップ(3)に記載の篩掛けは、40~100メッシュの篩孔を備える篩で篩掛けすることを含み、さらに好ましくは、ステップ(3)に記載の篩掛けは、60メッシュの篩孔を備える篩で篩掛けすることを含む。その中で、ステップ(3)に記載の「混合後の混合物をV型混合機で均一に混合及び/又は篩掛け」することは、反応原料がさらに緩くなるように、反応原料の積み重ね状態を改善して、後続の燃焼合成に役立つためである。特に、V型混合機で均一に混合した後にさらに篩掛けすることにより、反応原料の積み重ね状態をさらに改善することができる。篩掛けする篩は40~100メッシュが好ましいが、より好ましくは、60メッシュの篩孔の篩を選択してもよい。細かすぎる篩は、反応原料の組成に変化を引き起こす可能性があるが、粗すぎる篩は、反応原料の積み重ね状態を改善する効果を十分に果たすことができない。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)に記載の金属粉末は粒度が20~1000メッシュ、酸素含有量<5wt%、純度>99wt%であり、前記純度では酸素含有量が不純物とはされない。好ましくは、前記還元性金属粉末の粒度は50~200メッシュであり、好ましくは、前記還元性金属粉末の粒度は200~1000メッシュである。一般的に、還元性金属粉末の粒度は、50~200メッシュに収まることが好ましいが、これは、還元性金属粉末の粉砕プロセス及び混合プロセスが空気中で行われる場合のことである。この場合、金属粉末が細かすぎる(例えば、200メッシュ以上の金属粉末)と、空気中の酸素の影響により、金属粉末自体の持つ酸素含有量が高くなるからである。しかし、還元性金属粉末の粉砕プロセス及び混合プロセスの全体が不活性ガスの保護で行われ、空気が遮断されている場合に、酸素ガスは入ることができないので、還元性金属粉末の粒度は、できる限り細かく、例えば、1000メッシュまで細かくすることができる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)に記載の混合方法は、サンドミリング、ボールミリング、攪拌ミリング、V型混合機による混合ミリング及び/又はドラムミリングを含む。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、空気中で酸化しやすい金属粉末は、混合プロセスが不活性ガスの雰囲気において行われるべきである。
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記空気中で酸化しやすい金属粉末は、カルシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、イットリウム及びイッテルビウムを含む。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)に記載の篩掛けは、20~1000メッシュの篩で行われる。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記ステップ(5)は、20~500メッシュの篩によりステップ(4)で得られた窒化ケイ素粉末を粗く篩掛けし、そして硝酸、塩酸、硫酸の混酸にて酸洗いすることにより、前記窒化ケイ素粉末における金属酸化物を除去することを含む。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記混酸における前記硝酸、前記塩酸、前記硫酸は、体積含有率がそれぞれ10%~20%、60%~80%、10%~20%であり、質量分率がそれぞれ68%よりも小さく、20%よりも小さく、70%よりも小さいもので、1~10時間酸洗いし、酸洗い後の粉末に対して1~5回水洗いを行い、水溶性物質を除去し、吸引ろ過後にプレス乾燥、スプレー乾燥又は真空乾燥の方法で乾燥する。
【0022】
本発明の実施例は、上記方法により製造された窒化ケイ素粉末をさらに提供し、前記窒化ケイ素粉末は平均粒度が1~50μm、金属酸化物の含有量が0~10wt%であり、不純物の含有量が1wt%よりも低い。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、例えば、前記窒化ケイ素粉末における金属酸化物の含有量は1wt%よりも小さく、焼結された焼結体は熱伝導率が90W/mK以上、曲げ強度が700MPa以上である。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、例えば、前記焼結体の焼結条件は、前記窒化ケイ素粉末をMgO、Y2O3と混合し、研磨して、素地を乾式プレス成形し、前記素地を1900℃、1MPaの窒素ガス圧力の条件で8hガス圧焼結することである。
【0025】
本発明の実施例は、焼結体をさらに提供し、前記焼結体は、上記方法により製造された窒化ケイ素粉末を用いて焼結されたもので、前記窒化ケイ素粉末は平均粒度が1~50μm、金属酸化物の含有量が0~10wt%であり、不純物の含有量が1wt%よりも低い。
【0026】
本発明の実施例は、上記焼結体の製造方法をさらに提供し、前記方法は、
(1)以下の重量百分率:
ケイ素粉末:20~70wt%、
窒化ケイ素希釈剤:70%~20wt%、
塩化アンモニウム添加剤:0~20wt%
で原料を用意することと、
(2)上記各原料を均一に混合することと、
(3)前記原料に還元性金属粉末を加え、そして前記還元性金属粉末を前記原料と均一に混合し、混合された混合物を篩掛けすることと、
(4)ステップ(3)で得られた混合物を燃焼合成し、窒化ケイ素粉末を得ることと、
(5)ステップ(4)で得られた前記窒化ケイ素粉末に対して酸洗いと精製を行い、窒化ケイ素粉末を得ることと、
(6)前記窒化ケイ素粉末をMgO、Y2O3と混合し、研磨して、素地を乾式プレス成形し、前記素地を1900℃、1MPaの窒素ガス圧力の条件で8hガス圧焼結することと、を含む。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、上記ステップ(6)は、実施例2の生成物である窒化ケイ素粉末90wt%、MgO5wt%及びY2O35wt%をそれぞれ秤量し、3つの原料をアルコールと混合し、窒化ケイ素ボールを媒体として、遊星ミルで2hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥することと、乾燥された粉末を60メッシュの篩に掛け、篩掛け後の粉末を乾式プレス成形し、成形圧力が20MPaであり、その後乾式プレス成形された素地に対して220MPaの圧力で冷間静水圧プレスを行うことと、成形された素地を1900℃、1MPaの窒素ガス圧力の条件で8hガス圧焼結し、焼結後に、炉内で降温することと、焼結されたサンプルに対して熱伝導率及び3点曲げ強度の試験を行ったところ、熱伝導率が100W/mK、曲げ強度が800MPaであることと、を含む。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(1)に記載のケイ素粉末原料は、純度>99wt%である。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(1)に記載のケイ素粉末の粒度範囲は、100~200メッシュである。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)で加えられた前記金属粉末の全成分に対する重量百分率は、0.01~10%である。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記ステップ(4)は、ステップ(3)で得られた混合物を反応ボートに緩く散布し、そして前記ボートを燃焼合成反応装置内に置き、真空引きした後に、高純度窒素ガスを充填し、前記燃焼合成反応装置内の圧力を1~8MPaに維持し、通電したタングステンコイルで点火剤を点火し、燃焼合成反応を誘発することと、反応終了後、前記燃焼合成反応装置内の圧力が低下し始め、この時に装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して冷却することと、最終的に柔らかくて割れやすいバルク状の生成物を得て、研磨した後に窒化ケイ素粗粉を得ることとを含み、好ましくは、前記高純度窒素ガスの純度は97%以上、又は前記高純度窒素ガスの純度は99.9%以上である。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記方法は、ステップ(4)の後、ステップ(4)で得られた前記窒化ケイ素粉末に対して酸洗いと精製を行って窒化ケイ素粉末を得るステップ(5)をさらに含む。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(1)に記載の希釈剤は高純度窒化ケイ素粉末で、平均粒径が0.5~10μmであり、前記高純度窒化ケイ素粉末はα相の含有量>60wt%である。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(1)に記載の塩化アンモニウム添加剤は平均粒径が0.1~50μm、純度>99wt%である。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(2)に記載の混合方法は、サンドミリング、ボールミリング、攪拌ミリング、V型混合機による混合ミリング及び/又はドラムミリングを含む。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)に記載の金属粉末は、マグネシウム、カルシウム、鉄、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、イットリウム、イッテルビウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)に記載の還元性金属粉末は粒度が20~1000メッシュ、酸素含有量<5wt%、純度>99wt%であり、前記純度では酸素含有量が不純物とはされない。好ましくは、前記還元性金属粉末の粒度は50~200メッシュであり、好ましくは、前記還元性金属粉末の粒度は200~1000メッシュである。一般的に、還元性金属粉末の粒度は、50~200メッシュに収まることが好ましいが、これは、還元性金属粉末の粉砕プロセス及び混合プロセスが空気中で行われる場合のことである。この場合、金属粉末が細かすぎる(例えば、200メッシュ以上の金属粉末)と、空気中の酸素の影響により、金属粉末自体の持つ酸素含有量が高くなるからである。しかし、還元性金属粉末の粉砕プロセス及び混合プロセスの全体が不活性ガスの保護で行われ、空気が遮断されている場合に、酸素ガスは入ることができないので、還元性金属粉末の粒度は、できる限り細かく、例えば、1000メッシュまで細かくすることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)に記載の混合方法は、サンドミリング、ボールミリング、攪拌ミリング、V型混合機による混合ミリング及び/又はドラムミリングを含む。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、空気中で酸化しやすい金属粉末は、混合プロセスが不活性ガスの雰囲気において行われるべきである。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記空気中で酸化しやすい金属粉末は、カルシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、イットリウム及びイッテルビウムを含む。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、ステップ(3)に記載の篩掛けは、20~1000メッシュの篩で行われる。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記ステップ(5)は、20~500メッシュの篩によりステップ(4)で得られた窒化ケイ素粉末を粗く篩掛けし、そして硝酸、塩酸、硫酸の混酸にて酸洗いすることにより、前記窒化ケイ素粉末における金属酸化物を除去することを含む。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、前記方法において、例えば、前記混酸における前記硝酸、前記塩酸、前記硫酸は、体積含有率がそれぞれ10%~20%、60%~80%、10%~20%であり、質量分率がそれぞれ68%よりも小さく、20%よりも小さく、70%よりも小さいもので、1~10時間酸洗いし、酸洗い後の粉末に対して1~5回水洗いを行い、水溶性物質を除去し、吸引ろ過後にプレス乾燥、スプレー乾燥又は真空乾燥の方法で乾燥する。
【0044】
本発明は、エネルギー消費が低く、設備が簡単で、省エネで、汚染がなく、毒性がないといった特徴を有し、製造された窒化ケイ素粉末相の含有量が制御可能となり、その顕著な利点は以下のとおりである。
【0045】
1.活性金属粉末を加えることによって、反応プロセスにおいて、金属はケイ素粉末及び窒化ケイ素よりも強い還元性を有するため、反応系における酸素と優先的に反応し、対応する金属酸化物を生成することで、反応して生成された窒化ケイ素中の酸素含有量が低下され、粉末の焼結性能が向上する。上記「系における酸素」は、一般的にケイ素酸化物の形で存在し、活性金属粉末はケイ素酸化物におけるOを還元して、金属酸化物を生成することができ、これにより、系における酸素を除去する目的が達成される。
【0046】
2.酸素は窒化ケイ素が生成される前に一部還元されたため、前記方法で得られた窒化ケイ素粉末における格子酸素は、他の方法により製造された窒化ケイ素粉末よりも著しく低い。粉末における格子酸素は、窒化ケイ素が生成された後に除去することができないため、前記方法により製造された粉末は、酸素含有量が厳しく要求される(即ち、極めて低い酸素含有量が要求される)セラミックスの焼結に非常に適用される。
【0047】
3.前記方法で得られた窒化ケイ素粉末は、結晶性が良く、外観が均一である。
【0048】
4.省エネである。反応プロセスを誘起するために少量のエネルギーが必要である以外に、合成プロセス全体は、エネルギーを印加することなく、全て反応発熱により維持されて実現される。
【0049】
5.生産効率が高く、合成反応が素速い。
【0050】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の実施例の技術案をより明らかに説明するために、以下、実施例の図面を簡単に紹介するが、無論、以下の説明中の図面は、単に本発明のいくつかの実施例に係るものであり、本発明を限定するものではない。
【0051】
図1〕実施例1における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
【0052】
図2〕実施例1における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のSEM図である。
【0053】
図3〕実施例2における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
【0054】
図4〕実施例2における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のSEM図である。
【0055】
図5〕実施例5における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
【0056】
図6〕実施例8における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
【0057】
図7〕実施例11における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
【0058】
図8〕比較例2における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のSEM図である。
【0059】
図9〕比較例3における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のSEM図である。
【0060】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の窒化ケイ素及び窒化ケイ素セラミックスラリーをさらに説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものと解釈されてはならないと理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、全て本発明により請求される範囲内に含まれる。
【0061】
本明細書において、特に説明のない限り、全ての百分率は質量百分率である。
【0062】
本明細書において、前記還元性金属粉末は、還元性がケイ素粉末及び窒化ケイ素よりも強い活性金属粉末を指す。
【0063】
理解の便宜上、以下、燃焼合成により窒化ケイ素粉末を製造する具体的な例と合わせて、本発明をさらに解釈して説明する。
【0064】
実施例1
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)という成分を取り、上記成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とマグネシウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は70wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は29.99wt%、塩化アンモニウムは0wt%、マグネシウム粉末は0.01wt%である)を得て、前記マグネシウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、検出結果は図1に示す通りであり、分析により、その中のβ相の含有量は100%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.8%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。図1に示すXRD図から分かるように、生成物は結晶性能に優れており、本願の方法に比べると、例えば、気相法で合成された窒化ケイ素は結晶性がなく、XRD図には特性ピークがない。生成物のSEM図(図2)から分かるように、本実施例の窒化ケイ素粉末は結晶性が良く、外観が均一であり、窒化ケイ素粉末粒子は長さがばらつく短い棒状を呈し、一つの粒子は幅、高さが1~2μmの間にあるが、長さが1μmから20μmとばらついており、アスペクト比が1~10の間にある。
【0065】
上記「酸素含有量」は、窒化ケイ素粉末における、粉末表面及び窒化ケイ素結晶格子での遊離酸素又は複合酸素を含む全ての状態の酸素含有量を指す。以下は、同様である。
【0066】
実施例2
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とマグネシウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は20wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は70wt%、塩化アンモニウムは9wt%、マグネシウム粉末は1wt%である)を得て、前記マグネシウム粉末は粒度が60メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、検出結果は図3に示す通りであり、分析により、その中のα相の含有量は95%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.5%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0067】
生成物のSEM図(図4)から分かるように、本実施例の窒化ケイ素粉末は結晶性が良く、外観が均一であり、窒化ケイ素粉末粒子は不規則な多面体を呈し、ほとんどの粒子のサイズは1~2μmの間にあり、少量の大きい粒子のサイズは5μm以上にも達し、少量の小さい粒子のサイズは1μm未満である。
【0068】
実施例3
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とマグネシウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は20wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は70wt%、塩化アンモニウムは5wt%、マグネシウム粉末は5wt%である)を得て、前記マグネシウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。α相の含有量は95%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.5%で、不純物の総量は1wt%よりも低い。
【0069】
実施例4
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とマグネシウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は20wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は70wt%、塩化アンモニウムは2wt%、マグネシウム粉末は8wt%である)を得て、前記マグネシウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。α相の含有量は95%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.5%で、不純物の総量は1wt%よりも低い。
【0070】
実施例3と実施例4の結果を比較すると、マグネシウム粉末の添加量が多い(例えば、1wt%より大きい)場合、還元性金属粉末の使用量をさらに増やしても完成品の性能への影響が大きくないことが分かる。その理由としては、一般的に、原料中の酸素と反応するために1wt%の還元性金属の添加量で十分であるが、過剰な金属粉末をさらに添加するのは、大部分の酸素が還元性金属と反応して対応する酸化物を生成することを確保するためであり、自己伝播反応の温度は対応する金属粉末の融点と沸点をはるかに超える1900℃に達することができるので、過剰な未反応の還元性金属は揮発することになる。
【0071】
実施例5
100メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、サンドミルで1h研磨してから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とマグネシウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、100メッシュのケイ素粉末は35wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は35wt%、塩化アンモニウムは20wt%、マグネシウム粉末は10wt%である)を得て、前記マグネシウム粉末は粒度が1000メッシュ(マグネシウム粉末の粉砕プロセス及び混合プロセスは、いずれも不活性ガスの保護で行われた)、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、5MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、検出結果は図5に示す通りであり、分析により、その中のα相の含有量は95%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.3%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0072】
比較例1
100メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、サンドミルで1h研磨してから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とマグネシウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、100メッシュのケイ素粉末は35wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は35wt%、塩化アンモニウムは20wt%、マグネシウム粉末は10wt%である)を得て、前記マグネシウム粉末は粒度が1000メッシュ、純度>99wt%であり、前記混合プロセスが空気中で完成された。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、5MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。1000メッシュのマグネシウム粉末は空気中で酸化しやすいため、大量の酸素が反応原料に持ち込まれたことにより、生成物がバルク状になり、全体が黄白色であり、表面に未反応のケイ素粉末及び酸化マグネシウム粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が90%であることが分かる。その中でα相の含有量は95%、窒化ケイ素中の酸素含有量は1%、不純物の総量は1.5wt%である。
【0073】
比較例1と実施例5との唯一の相違点として、比較例1のマグネシウム粉末の粉砕と混合プロセスは空気中で行われるのに対し、実施例5のマグネシウム粉末の粉砕プロセス及び混合プロセスは、いずれも不活性ガスの保護で行われる。これ以外、比較例1と実施例5の実験条件は同じである。比較例1と実施例5の結果を比較すると、マグネシウム粉末の粉砕プロセス及び混合プロセスでは、酸素が遮断されていないため、比較例1で最終的に得られた製品における酸素含有量及び不純物の総量は、実施例5に比べて、ある程度増加していることが分かる。
【0074】
実施例6
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とアルミニウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は70wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は20wt%、塩化アンモニウムは9.99wt%、アルミニウム粉末は0.01wt%である)を得て、前記アルミニウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、分析により、その中のβ相の含有量は100%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.8%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0075】
実施例7
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とアルミニウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は20wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は70wt%、塩化アンモニウムは9wt%、アルミニウム粉末は1wt%である)を得て、前記アルミニウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、分析により、その中のα相の含有量は95%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.5%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0076】
実施例8
100メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、サンドミルで1h研磨してから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とアルミニウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、100メッシュのケイ素粉末は35wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は35wt%、塩化アンモニウムは20wt%、アルミニウム粉末は1wt%である)を得て、前記アルミニウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、5MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、検出結果は図6に示す通りであり、分析により、その中のα相の含有量は95%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.3%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0077】
実施例9
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とイットリウム粉末とをV型混合機内で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は70wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は20wt%、塩化アンモニウムは9.99wt%、イットリウム粉末は0.01wt%である)を得て、前記イットリウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、分析により、その中のβ相の含有量は100%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.8%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0078】
実施例10
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とイットリウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は20wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は70wt%、塩化アンモニウムは9wt%、イットリウム粉末は1wt%である)を得て、前記イットリウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、分析により、その中のα相の含有量は95%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.5%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0079】
実施例11
100メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、サンドミルで1h研磨してから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とイットリウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、100メッシュのケイ素粉末は35wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は35wt%、塩化アンモニウムは20wt%、イットリウム粉末は10wt%である)を得て、前記イットリウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、5MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、検出結果は図7に示す通りであり、分析により、その中のα相の含有量は95%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.3%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0080】
実施例12
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物と0.01%の鉄粉とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は70wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は20wt%、塩化アンモニウムは9.99wt%、鉄粉は0.01wt%である)を得て、前記鉄粉は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、分析により、その中のβ相の含有量は100%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.8%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0081】
実施例13
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された上記混合物とイッテルビウム粉末とをV型混合機内で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は70wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は20wt%、塩化アンモニウムは9.99wt%、イッテルビウム粉末は0.01wt%である)を得て、前記イッテルビウム粉末は粒度が200メッシュ、純度>99wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が95%であることが分かる。生成物に対してXRD検出が行われ、分析により、その中のβ相の含有量は100%、窒化ケイ素中の酸素含有量は0.8%で、不純物の総量は1wt%よりも低いことが明らかになる。
【0082】
実施例14
実施例2の生成物である窒化ケイ素粉末90wt%、MgO5wt%、Y2O35wt%をそれぞれ秤量し、3つの原料をアルコールと混合し、窒化ケイ素ボールを媒体として、遊星ミルで2hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥した。乾燥された粉末を60メッシュの篩に掛け、篩掛け後の粉末を乾式プレス成形し、成形圧力が20MPaであり、その後乾式プレス成形された素地に対して220MPaの圧力で冷間静水圧プレスを行った。成形された素地を1900℃、1MPaの窒素ガス圧力の条件で8hガス圧焼結し、焼結後に、炉内で降温した。焼結されたサンプルに対して熱伝導率及び3点曲げ強度の試験を行ったところ、熱伝導率は100W/mK、曲げ強度は800MPaである。
【0083】
比較例2
実施例2の重量比で200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムを秤量し、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物(前記混合物において、200メッシュのケイ素粉末は20重量部、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は70重量部、塩化アンモニウムは9重量部である)を得た。その後、上記混合物を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物である窒化ケイ素粉末を取り出した。
【0084】
上記反応生成物である窒化ケイ素粉末90wt%、MgO5wt%、Y2O35wt%をそれぞれ秤量し、上記3つの原料をアルコールと混合し、窒化ケイ素ボールを媒体として、遊星ミルで2hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥した。乾燥された粉末を60メッシュの篩に掛け、篩掛け後の粉末を乾式プレス成形し、成形圧力が20MPaであり、その後乾式プレス成形された素地に対して220MPaの圧力で冷間静水圧プレスを行った。成形された素地を1900℃、1MPaの窒素ガス圧力の条件で8hガス圧焼結し、焼結後に、炉内で降温した。焼結されたサンプルに対して熱伝導率及び3点曲げ強度の試験を行ったところ、熱伝導率は85W/mK、曲げ強度は650MPaである。
【0085】
実施例14の結果と比較例2の結果を比較すると、実施例14と比較例2の試験条件は同じであるが、唯一の相違点として、実施例14は窒化ケイ素粉末の燃焼合成プロセスでマグネシウム粉末1%を加えたのに対し、比較例2は、いかなる還元性金属粉末も加えなかった。試験の結果から見ると、最終的な焼結製品は、熱伝導率が比較例2の85W/mKから実施例14の100W/mKに向上し、曲げ強度が比較例2の650MPaから実施例14の800MPaに向上した。燃焼合成による窒化ケイ素粉末の製造プロセスにおいて還元性金属粉末を加えることにより、窒化ケイ素粉末の焼結性能を大幅に改善することができ、優れた性能を有する当該窒化ケイ素粉末に基づく焼結製品を得ることができることが分かる。
【0086】
実施例15
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された原料とマグネシウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は20wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は70wt%、塩化アンモニウムは9wt%、マグネシウム粉末は1wt%である)を得て、前記マグネシウム粉末は粒度が40メッシュ、不純物の含有量(Fe、Al、Ca等の金属不純物)>1wt%、O含有量=8wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が90%であることが分かる。その中でα相の含有量は50%、窒化ケイ素中の酸素含有量は1%、不純物の総量は1wt%である。
【0087】
生成物のSEM図(図8)から分かるように、窒化ケイ素粉末はひどく凝集することになり、ほとんどの粒子のサイズは1~5μmの間にあり、凝集サイズは10μmに達した。
【0088】
上記反応生成物である窒化ケイ素粉末90wt%、MgO5wt%、Y2O35wt%をそれぞれ秤量し、上記3つの原料をアルコールと混合し、窒化ケイ素ボールを媒体として、遊星ミルで2hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥した。乾燥された粉末を60メッシュの篩に掛け、篩掛け後の粉末を乾式プレス成形し、成形圧力が20MPaであり、その後乾式プレス成形された素地に対して220MPaの圧力で冷間静水圧プレスを行った。成形された素地を1900℃、1MPaの窒素ガス圧力の条件で8hガス圧焼結し、焼結後に、炉内で降温した。焼結されたサンプルに対して熱伝導率及び3点曲げ強度の試験を行ったが、熱伝導率は50W/mK、曲げ強度は500MPaである。
【0089】
実施例2、14、15の結果を比較すると、粒度が大きくて、純度が低い(純度による影響は粒度よりも顕著である)マグネシウム粉末を用いたことにより、窒化ケイ素粉末の性能及び該窒化ケイ素粉末に基づく焼結生成物の性能は、いずれもある程度の影響を受けたことが分かる。
【0090】
実施例16
200メッシュのケイ素粉末、窒化ケイ素(平均粒径2μm)、塩化アンモニウムという成分を取り、上記3つの成分をアルコールと混合した後、窒化ケイ素ボールを媒体として、ロータリーボールミルで1hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥し、混合物を得た。乾燥された前記混合物とマグネシウム粉末とをV型混合機で均一に混合し、燃焼合成原料(前記燃焼合成原料において、200メッシュのケイ素粉末は20wt%、窒化ケイ素(平均粒径2μm)は70wt%、塩化アンモニウムは9wt%、マグネシウム粉末は1wt%である)を得て、前記マグネシウム粉末は粒度が300メッシュ、不純物の含有量(Fe、Al、Ca等の金属不純物)>1wt%、O含有量=20wt%であり、混合プロセスは不活性ガスで保護されていた。その後、前記燃焼合成原料を反応ボートに緩く詰め、燃焼合成装置内に置いた。真空引きした後に、8MPaの高純度窒素ガスを充填した。点火剤としてチタン粉末を使用し、燃焼合成反応を誘発した。燃焼反応が終了した後、装置内のガスを放出すると同時に、循環水を供給して40℃以下に冷却した時、チャンバドアを開けて、反応生成物を取り出した。生成物は柔らかいバルク状を呈し、全体が白色であり、表面に未反応のケイ素粉末が少し残っていた。生成物を片付けて収集し、秤量して計算したところ、製品の収率が50%であることが分かる。分析により、その中のα相の含有量は0%、窒化ケイ素中の酸素含有量は2%、不純物の総量は2%であることが明らかになる。
【0091】
生成物のSEM図(図9)から分かるように、窒化ケイ素粉末はひどく凝集することになり、ほとんどの粒子のサイズは5μm以上であり、凝集サイズは10μmに達した。
【0092】
上記反応生成物である窒化ケイ素粉末90wt%、MgO5wt%、Y2O35wt%をそれぞれ秤量し、上記3つの原料をアルコールと混合し、窒化ケイ素ボールを媒体として、遊星ミルで2hボールミリングしてから、80℃で真空乾燥した。乾燥された粉末を60メッシュの篩に掛け、篩掛け後の粉末を乾式プレス成形し、成形圧力が20MPaであり、その後乾式プレス成形された素地に対して220MPaの圧力で冷間静水圧プレスを行った。成形された素地を1900℃、1MPaの窒素ガス圧力の条件で8hガス圧焼結し、焼結後に、炉内で降温した。焼結されたサンプルに対して熱伝導率及び3点曲げ強度の試験を行ったが、熱伝導率は20W/mK、曲げ強度は500MPaである。
【0093】
実施例2、14、16の結果を比較すると、粒度が小さすぎで、純度が低い(純度による影響は粒度よりも顕著である)マグネシウム粉末を用いたことにより、窒化ケイ素粉末の性能及び該窒化ケイ素粉末に基づく焼結生成物の性能は、いずれもある程度の影響を受けたことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】実施例1における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
図2】実施例1における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のSEM図である。
図3】実施例2における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
図4】実施例2における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のSEM図である。
図5】実施例5における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
図6】実施例8における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
図7】実施例11における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のXRD分析図である。
図8】比較例2における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のSEM図である。
図9】比較例3における燃焼合成された窒化ケイ素粉末の生成物のSEM図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9