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特許7411280ドローンシステム、ドローンおよび障害物検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ドローンシステム、ドローンおよび障害物検知方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 47/00 20060101AFI20231228BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20231228BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B64D47/00
B64C39/02
B64D45/00 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022509763
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2020012631
(87)【国際公開番号】W WO2021191947
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏記
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055463(JP,A)
【文献】特開2019-097533(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208354(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0051192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64D 45/00
B64D 47/00
B64U 10/16
B64U 101/32
B64U 101/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンの飛行中に当該ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知する障害物検知部と、
前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶する記憶部と、
を備え、
前記障害物を除去した旨の入力がインターフェース装置に行われた後に、前記ドローンの飛行を再開させる、
ドローンシステム
【請求項2】
前記障害物を検知した場合に、検知された前記障害物の位置よりも所定距離以上離れた位置で、前記ドローンをホバリングさせる飛行制御部を備える、
請求項1記載のドローンシステム。
【請求項3】
前記障害物を検知した場合に、検知された前記障害物の位置よりも所定距離以上離れた位置を前記ドローンに飛行させる飛行制御部を備える、
請求項1記載のドローンシステム。
【請求項4】
前記記憶部で記憶された前記障害物の位置から所定距離以内の位置における飛行を禁止する、
請求項1又は3記載のドローンシステム。
【請求項5】
前記所定時間の経過後も前記障害物を断続的にもしくは連続して検知し続ける場合、前記ドローンを離着陸地点に帰還させる、
請求項1乃至のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項6】
前記所定時間の経過後も前記障害物を断続的にもしくは連続して検知し続ける場合、前記障害物を検知した位置に着陸させる、
請求項1乃至のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項7】
前記所定時間の経過後も前記障害物を断続的にもしくは連続して検知し続ける場合に、検知された前記障害物の位置から水平方向、もしくは上下方向に所定距離以上離れた飛行ルートを再生成するルート生成部をさらに備え、前記ドローンを、当該再生成される飛行ルートに沿って飛行させる、
請求項1乃至のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項8】
前記障害物の測量情報が受信された後に、前記ドローンの飛行を再開させる、
請求項1乃至のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項9】
前記障害物を検知しなくなったとき、前記ドローンに、前記飛行ルートに沿う飛行を再開させる、
請求項1乃至のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項10】
前記障害物を除去した旨の入力がインターフェース装置に行われた後に、前記ドローンの飛行を再開させる、
請求項1乃至のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項11】
前記障害物を検知した場合に、前記ドローンに、待機、離着陸地点に帰還、前記障害物を検知した位置に着陸、および飛行の再開の少なくともいずれかを行わせる入力を、インターフェース装置において受け付ける、
請求項1乃至10のいずれかに記載のドローンシステム。
【請求項12】
ドローンの飛行中に当該ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知する障害物検知部と、
前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶する記憶部と、
前記記憶部で記憶された前記障害物の位置情報と当該障害物の測量又は除去の要求を表示する表示部と、
を備える、
ドローンシステム
【請求項13】
ドローンの飛行中に当該ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知する障害物検知部と、
前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶する記憶部と、
を備え、
前記障害物の測量情報が受信された後に、前記ドローンの飛行を再開させる、
ドローンシステム
【請求項14】
ドローンの飛行中に当該ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知する障害物検知部と、
前記障害物を検知すると、検知された前記障害物の位置から所定距離以上離れた位置で飛行又はホバリングする飛行制御部と、
を備え、
前記障害物検知部が前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶装置に記憶させ、
前記障害物を除去した旨の入力がインターフェース装置に行われた後に、前記飛行ルートに沿う飛行を再開する、
ドローン
【請求項15】
ドローンの飛行中に当該ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知する障害物検知部と、
前記障害物を検知すると、検知された前記障害物の位置から所定距離以上離れた位置で飛行又はホバリングする飛行制御部と、
を備え、
前記障害物検知部が前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶装置に記憶させ
前記飛行制御部は、前記障害物の測量情報が受信された後に、前記測量情報に基づいて再生成された第2飛行ルートに沿う飛行を開始する、
ドローン。
【請求項16】
ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知し、前記障害物の検知を継続して行う障害物検知ステップと、
前記障害物を検知すると、検知された前記障害物の位置から所定距離以上離れた位置で前記ドローンを飛行又はホバリングさせる飛行制御ステップと、
前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶する記憶ステップと、
前記障害物を除去した旨の入力がインターフェース装置に行われた後に、前記飛行ルートに沿う前記ドローンの飛行を再開させる第2再開ステップと、
を含む、
障害物検知方法
【請求項17】
ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知し、前記障害物の検知を継続して行う障害物検知ステップと、
前記障害物を検知すると、検知された前記障害物の位置から所定距離以上離れた位置で前記ドローンを飛行又はホバリングさせる飛行制御ステップと、
前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップにおいて記憶された前記障害物の位置情報と当該障害物の測量又は除去の要求を表示部に表示する表示ステップと、
を含む、
障害物検知方法。
【請求項18】
ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知し、前記障害物の検知を継続して行う障害物検知ステップと、
前記障害物を検知すると、検知された前記障害物の位置から所定距離以上離れた位置で前記ドローンを飛行又はホバリングさせる飛行制御ステップと、
前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を管理装置に記憶する記憶ステップと、
前記ドローンが前記管理装置から前記障害物の座標情報が測量された旨の情報を受信した後に、前記ドローンに、前記座標情報に基づいて再生成された第2飛行ルートに沿う飛行を開始させる開始ステップと、
を含む、
障害物検知方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ドローンシステム、ドローンおよび障害物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの薬剤散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。比較的狭い農地においては、有人の飛行機やヘリコプターではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
準天頂衛星システムやRTK-GPS(Real Time Kinematic - Global Positioning System)などの技術によりドローンが飛行中に自機の絶対位置をセンチメートル単位で正確に知ることができるようになったことで、日本において典型的な狭く複雑な地形の農地でも、人手による操縦を最小限として自律的に飛行し、効率的かつ正確に薬剤散布を行なえるようになっている。
【0004】
特許文献2には、走行領域内に存在する障害物を回避しつつ効率の良い走行経路を生成することができる自律走行経路生成システムであって、経路生成部が障害物を回避するように走行経路を生成することが開示されている。特許文献3には、障害物が検知され一定時間接近する状態が継続した場合に、急接近と判定し、事前走行経路が設定されていれば、障害物検出時の自動回避経路作成を行うと共に、予定走行経路に障害物があることを登録する移動農機が開示されている。特許文献4には、圃場の不具合を検知し、管理者に伝達する自律走行型作業機であって、自律走行型草刈機が障害物に衝突すると、不具合情報として記録されることが開示されている。特許文献5には、走行機体の作業走行軌跡に隣接する目標移動経路を精度良く設定可能な走行作業機であって、障害物検知部は、あらかじめ設定した時間にわたって検知が連続するとき、検知されたものを障害物と判定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再公表公報 再表2017/175804
【文献】特開2017-20406号公報
【文献】特開2018-196349号公報
【文献】特開2019-83755号公報
【文献】特開2019-97533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
飛行対象エリア内の障害物を検知し、飛行対象エリアの測量作業を効率化する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の観点に係るドローンシステムは、ドローンの飛行中に当該ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知する障害物検知部と、前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶する記憶部と、を備える。
【0008】
前記障害物を検知した場合に、検知された前記障害物の位置よりも所定距離以上離れた位置で、前記ドローンをホバリングさせる飛行制御部を備えるものとしてもよい。
【0009】
前記障害物を検知した場合に、検知された前記障害物の位置よりも所定距離以上離れた位置を前記ドローンに飛行させる飛行制御部を備えるものとしてもよい。
【0010】
前記記憶部で記憶された前記障害物の位置から所定距離以内の位置における飛行を禁止するものとしてもよい。
【0011】
前記記憶部で記憶された前記障害物の位置情報と当該障害物の測量又は除去の要求を表示する表示部を備えるものとしてもよい。
【0012】
前記所定時間の経過後も前記障害物を断続的にもしくは連続して検知し続ける場合、前記ドローンを離着陸地点に帰還させるものとしてもよい。
【0013】
前記所定時間の経過後も前記障害物を断続的にもしくは連続して検知し続ける場合、前記検知位置に着陸させるものとしてもよい。
【0014】
前記所定時間の経過後も前記障害物を断続的にもしくは連続して検知し続ける場合に、検知された前記障害物の位置から水平方向、もしくは上下方向に所定距離以上離れた飛行ルートを再生成するルート生成部をさらに備え、前記ドローンを、当該再生成される飛行ルートに沿って飛行させるものとしてもよい。
【0015】
前記障害物の測量情報が受信された後に、前記ドローンの飛行を再開させるものとしてもよい。
【0016】
前記障害物を検知しなくなったとき、前記ドローンに、前記飛行ルートに沿う飛行を再開させるものとしてもよい。
【0017】
前記障害物を除去した旨の入力がインターフェース装置に行われた後に、前記ドローンの飛行を再開させるものとしてもよい。
【0018】
前記障害物を検知した場合に、前記ドローンに、待機、離着陸地点に帰還、前記検知位置に着陸、および飛行の再開の少なくともいずれかを行わせる入力を、インターフェース装置において受け付けるものとしてもよい。
【0019】
本発明の別の観点に係るドローンは、ドローンの飛行中に当該ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知する障害物検知部と、前記障害物を検知すると、検知された前記障害物の位置から所定距離以上離れた位置で飛行又はホバリングする飛行制御部と、を備え、前記障害物検知部が前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶装置に記憶させる。
【0020】
本発明のさらに別の観点に係る障害物検知方法は、ドローンの飛行ルート上にある障害物を検知し、前記障害物の検知を継続して行う障害物検知ステップと、前記障害物を検知すると、検知された前記障害物の位置から所定距離以上離れた位置で前記ドローンを飛行又はホバリングさせる飛行制御ステップと、前記障害物を断続的にもしくは連続して所定時間以上検知する場合に、前記障害物の位置を記憶する記憶ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0021】
飛行対象エリア内の障害物を検知し、飛行対象エリアの測量作業を効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本願発明に係るドローンシステムが有するドローンの平面図である。
図2】上記ドローンの正面図である。
図3】上記ドローンの右側面図である。
図4】上記ドローンの背面図である。
図5】上記ドローンの斜視図である。
図6】上記ドローンの飛行制御システムの全体概念図である。
図7】上記ドローンが有する機能ブロック図である。
図8】上記ドローンシステムの機能ブロック図である。
図9】上記ドローンが障害物を検知したときの流れを示すフローチャートである。
図10】本願発明の第2実施形態に係るドローンシステムにおいて、上記ドローンが障害物を検知したときの流れを示すフローチャートである。
図11】本願発明の第3実施形態に係るドローンシステムにおいて、上記ドローンシステムが有するインターフェース装置に表示されるメイン画面の一例を示す図である。
図12】上記ドローンシステムが有するドローンが障害物を検知したときに、上記インターフェース装置が表示する対応入力画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0024】
まず、本発明にかかるドローンの構成について説明する。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般(マルチコプター)を指すこととする。
【0025】
図1乃至図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の筐体110からのび出たアームにより筐体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は図1における紙面下向きを進行方向とする。
【0026】
回転翼101の各セットの外周には、略円筒形を形成する格子状のプロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4が設けられ、回転翼101が異物と干渉しづらくなるようにしている。図2および図3に示されるように、プロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4を支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0027】
回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0028】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。
【0029】
ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、散布物を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、散布物とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0030】
タンク104は散布物を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。ホース105-1、105-2、105-3、105-4は、タンク104と各ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、散布物をノズルから吐出するための手段である。
【0031】
図6に本願発明に係るドローン100の飛行制御システムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、操作器401、基地局404およびサーバ405が移動体通信網400を介して互いに接続されている。これらの接続は、移動体通信網400に代えてWi-Fiによる無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。また、構成要素間において、移動体通信網400に代えて、又は加えて、直接接続する構成を有していてもよい。
【0032】
ドローン100および基地局404は、GPS等のGNSSの測位衛星410と通信を行い、ドローン100および基地局404座標を取得する。ドローン100および基地局404が通信する測位衛星410は複数あってもよい。
【0033】
操作器401は、使用者の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、散布物の貯留量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピュータプログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。操作器401は、ユーザインターフェース装置としての入力部および表示部を備える。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。小型携帯端末は、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介してサーバ405からの情報等を受信可能である。
【0034】
圃場403は、ドローン100による散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他の作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。
【0035】
基地局404は、RTK-GNSS基地局として機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっている。また、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であってもよい。Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GNSS基地局が独立した装置であってもよい。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、サーバ405と互いに通信可能であってもよい。基地局404およびサーバ405は、営農クラウドを構成する。
【0036】
サーバ405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。サーバ405は、ハードウェア装置により構成されていてもよい。サーバ405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0037】
小型携帯端末は例えばスマートホン等である。小型携帯端末の表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が離着陸地点406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末からの入力に基づいて、ドローン100の動作を変更してもよい。
【0038】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある離着陸地点から離陸し、圃場403に散布物を散布した後に、あるいは、散布物の補充や充電等が必要になった時に離着陸地点に帰還する。離着陸地点から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、サーバ405等で事前に保存されていてもよいし、使用者が離陸開始前に入力してもよい。離着陸地点は、ドローン100に記憶されている座標により規定される仮想の地点であってもよいし、物理的な発着台があってもよい。
【0039】
図7に本願発明に係る散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0040】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、サーバ405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0041】
フライトコントローラー501は、通信機530を介して、さらに、移動体通信網400を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、移動体通信網400を介した通信機能に加えて、RTK-GPS基地局の機能も備えている。RTK基地局404の信号とGPS等の測位衛星410からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0042】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0043】
流量センサー510は散布物の流量を測定するための手段であり、タンク104からノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は散布物の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。
【0044】
生育診断カメラ512aは、圃場403を撮影し、生育診断のためのデータを取得する手段である。生育診断カメラ512aは例えばマルチスペクトルカメラであり、互いに波長の異なる複数の光線を受信する。当該複数の光線は、例えば赤色光(波長約650nm)と近赤外光(波長約774nm)である。また、生育診断カメラ512aは、可視光線を受光するカメラであってもよい。
【0045】
病理診断カメラ512bは、圃場403に生育する作物を撮影し、病理診断のためのデータを取得する手段である。病理診断カメラ512bは、例えば赤色光カメラである。赤色光カメラは、植物に含有されるクロロフィルの吸収スペクトルに対応する周波数帯域の光量を検出するカメラであり、例えば波長650nm付近の帯域の光量を検出する。病理診断カメラ512bは、赤色光と近赤外光の周波数帯域の光量を検出してもよい。また、病理診断カメラ512bとして、赤色光カメラおよびRGBカメラ等の可視光帯域の少なくとも3波長の光量を検出する可視光カメラの両方を備えていてもよい。なお、病理診断カメラ512bはマルチスペクトルカメラであってもよく、波長650nm乃至680nm付近の帯域の光量を検出するものとしてもよい。
【0046】
なお、生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bは、1個のハードウェア構成により実現されていてもよい。
【0047】
障害物検知カメラ513はドローン侵入者を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きが生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは異なるため、生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、障害物接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。注入口センサー517はタンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。
【0048】
これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報を移動体通信網400経由又はWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0049】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、吐出量の調整や吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0050】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザーは、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。通信機530は、3G、4G、およびLTE等の移動体通信網400と接続されており、移動体通信網400を介して基地局、サーバで構成される営農クラウド、操作器と通信可能に接続される。通信機に替えて、または、それに加えて、Wi‐Fi、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0051】
●ドローンシステム500の概要
ドローンシステム500は、圃場等の作業エリアにおいてドローン100を飛行させるシステムであり、特に、あらかじめ取得された作業エリアおよび作業エリア内の障害物の座標に基づいて、障害物を避けて作業エリア内を網羅的に飛行させる飛行ルート(以下、「ミッション」ともいう。)を生成し、飛行ルートに沿ってドローン100を飛行させるシステムである。作業エリアおよび障害物の座標は、ドローンシステム500に含まれる座標測量装置2により、ドローン100の飛行前に測量される。また、ドローンシステム500は、ドローン100が飛行中に障害物を検知すると、検知した旨の情報を記憶し、必要に応じて飛行ルートに反映する。すなわち、障害物を避けた飛行ルートを再生成することができる。
【0052】
このとき、ドローンシステム500は、障害物が飛行ルートに反映すべき障害物であるかを判別する。障害物には、人や動物、風で浮遊する浮遊物などの動的な障害物と、鉄塔や柵、車、荷物など、自然に移動することがない静的な障害物とがある。動的な障害物の場合、時間の経過と共にその場から移動するため、ドローン100をその場で待機させることで当該ルートの飛行を再開できる。一方、静的な障害物の場合、ドローン100を待機させても障害物が消失することはないため、作業者が障害物を移動させるか、障害物の位置を記憶して障害物を避けた飛行ルートを生成する等の対応が必要である。そこで、ドローンシステム500は、所定時間継続して存在している障害物が飛行ルートに反映すべき静的な障害物である旨判定し、静的な障害物である場合にのみ、当該障害物の情報を記憶する。
【0053】
また、ドローンシステム500は、ドローン100の進行方向を遮る位置に障害物が検知されると、ドローン100が障害物に衝突しないよう、ホバリング、着陸、離着陸地点への帰還などの動作を行わせ、ドローン100の安全を担保することができる。
【0054】
●ドローンシステム500の構成
図8を用いて、ドローンシステム500の詳細を説明する。同図に示すドローンシステム500は、ネットワークNWを介して接続される基地局404、座標測量装置2、ドローン100、圃場管理装置50および操作器401により構成されている。なお、圃場管理装置50は、他の構成要素に含まれていてもよいし、サーバ405上に実現されていてもよい。また、これらの接続は、例えば移動体通信網により接続されているが、これに代えてWi-Fiによる無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。また、構成要素間において、移動体通信網に代えて、又は加えて、直接接続する構成を有していてもよい。
【0055】
●座標測量装置2
座標測量装置2は、RTK-GNSSの移動局の機能を有する装置であり、基地局404と適宜通信して圃場の座標情報を測量することができる。座標測量装置2は、使用者により保持して歩行することが可能な小型の装置であり、例えば棒状の装置である。座標測量装置2は、下端を地面についた状態で、使用者が直立して上端部を保持できる程度の長さの、杖のような装置であってもよい。ある圃場の座標情報を読み取るために使用可能な座標測量装置2の個数は、1個であっても複数であってもよい。複数の座標測量装置2により1か所の圃場に関する座標情報を測量可能な構成によれば、複数の使用者がそれぞれ座標測量装置2を保持して圃場を歩行することができるため、測量作業を短時間で完了することができる。
【0056】
また、座標測量装置2は、圃場における障害物の情報を測量することができる。障害物は、ドローン100が衝突する危険のある壁や法面、電柱、電線などや、薬剤散布又は監視を要さない各種物体を含む。
【0057】
座標測量装置2は、入力部201、座標検出部202および送信部203を備える。
【0058】
入力部201は、座標測量装置2の上端部に設けられる構成であり、例えば使用者の押下を受け付けるボタンである。使用者は、座標測量装置2の下端の座標を測量する際に、入力部201のボタンを押下する。また、入力部201は、一度押下され、座標を測量した測量点のデータを削除する入力を受け付ける構成を有していてもよい。
【0059】
入力部201は、入力される情報が圃場の外縁座標であるか、障害物の外縁座標であるかを区別して入力可能に構成されている。例えば、入力部201は少なくとも2個のボタンを有し、一方のボタンが圃場の外縁座標を取得するボタンで、他方のボタンが障害物の外縁座標を取得するボタンであってよい。さらに、入力部201は、障害物の外縁座標を、障害物の種類と関連付けて入力可能である。
【0060】
座標検出部202は、基地局404と適宜通信を行って座標測量装置2の下端の3次元座標を検出可能な機能部である。
【0061】
送信部203は、入力部201への入力に基づいて、当該入力時の座標測量装置2下端の3次元座標を、例えば移動体通信網400を介して操作器401又は圃場管理装置50に送信する機能部である。
【0062】
圃場の座標情報を読み取る工程において、使用者は、座標測量装置2を持って圃場を移動し、当該圃場および障害物の端点又は端辺上において入力部201によるポインティングを行う。
【0063】
ポインティングされて送信される圃場の端点又は端辺上の3次元座標は、圃場外周の3次元座標および障害物の3次元座標を区別して、圃場管理装置50により受信される。また、ポインティングされる3次元座標は、操作器401の受信部により受信され、表示部により表示されてもよい。また、操作器401は、受信される3次元座標が圃場外周又は障害物の3次元座標として適しているかを判定し、再測量が必要と判定される場合は、表示部を通じて使用者に再測量を促してもよい。
【0064】
●ドローン100の障害物検知に関する構成
ドローン100は、障害物検知に関する機能部として、障害物検知部30、飛行制御部31および通信処理部32を備える。
【0065】
障害物検知部30は、ドローン100の飛行中に当該ドローン100の飛行ルート上にある障害物を検知する機能部である。障害物検知部30は、例えば図7に示す障害物検知カメラ513の情報に基づいて、ドローン100の進行方向を遮る位置に存在する障害物を検知する。なお、障害物検知部30は、ドローン100の移動に障害となる物を検知してよく、特にドローン100が作業エリア外を飛行することが予定されている場合に、作業エリア外の障害物を検知してもよい。また、障害物検知部30は、ドローン100の進行方向に関わらず、ドローン100周辺の障害物も検知してもよい。
【0066】
障害物検知部30は、障害物の検知後も継続して検知を行い、障害物を連続して検知する検知時間を計測する。また、障害物検知部30は、障害物の検知を断続的に行い、検知が複数回に渡る場合には、当該検知時点間においても継続して検知していたものとして検知時間を計測してもよい。障害物検知部30は、当該検知時間に応じて、障害物が静的なものか動的なものかを判別し、障害物の性質に応じて、ドローン100および圃場管理装置50に異なる措置を取らせる。
【0067】
飛行制御部31は、ドローン100が有するモータ102等の揚力発生装置を制御し、ドローン100の飛行を制御する機能部である。飛行制御部31は、障害物検知部30が障害物を検知すると、当該検知位置、すなわち検知された障害物よりも所定距離以上離れた位置にドローン100を留まらせる。このとき、飛行制御部31は、ドローン100をホバリングさせてもよい。また、飛行制御部31は、例えばドローン100に低速で移動させる飛行をさせてもよい。障害物検知部30は、ドローン100がホバリング又は飛行をして待機している状態で、障害物の継続的な検知を行う。また、障害物の検知が所定時間未満で中断される場合、飛行制御部31は、ドローン100の飛行ルートに沿う飛行を再開させる。この構成によれば、自動的にドローン100の飛行が再開され、操作が簡便である。
【0068】
通信処理部32は、主に圃場管理装置50と通信を行う機能部である。通信処理部32は、障害物検知部30が障害物を検知した旨の情報、および障害物の位置を圃場管理装置50に送信する。また、通信処理部32は、障害物検知部30が障害物を所定時間継続して検知した旨の情報を圃場管理装置50に送信してもよい。また、通信処理部32は、圃場管理装置50から、検知している障害物の座標情報が測量された旨の情報を受信し、ドローン100の飛行を開始する契機としてもよい。
【0069】
通信処理部32は、圃場管理装置50が生成したドローン100の飛行ルートを受信する。また、通信処理部32は、ドローン100が飛行中に検知した障害物の情報に基づいて圃場管理装置50により再生成された飛行ルートを受信する。ドローン100は、飛行制御部31により、当該受信された飛行ルートに沿って飛行することができる。
【0070】
●圃場管理装置50
圃場管理装置50は、座標測量装置2により取得される座標に基づいて、ドローン100が自律的に飛行する飛行ルートを生成する装置である。圃場管理装置50は、その機能がサーバ405上にあってもよいし、別途の装置であってもよい。圃場管理装置50は、ドローン100が有する構成であってもよい。また、圃場管理装置50は、ドローン100が進入できない障害物の存在範囲を格納している。飛行ルートは、障害物の位置から水平方向又は上下方向に所定以上離れた位置に、障害物を避けて生成される。
【0071】
圃場管理装置50は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備え、これによりソフトウェア資源として少なくとも、記憶部51、ルート生成部52および通信処理部53を有する。
【0072】
通信処理部53は、主に座標測量装置2およびドローン100と通信を行う機能部である。通信処理部53は、障害物検知部30が所定時間以上に渡って連続して障害物を検知した旨の情報、および障害物の位置をドローン100の通信処理部32から受信する。このとき、記憶部51は、障害物の座標を記憶する。
また、通信処理部53は、ドローン100の飛行中において、ドローン100の進行方向を遮る障害物が座標測量装置2により測量されたとき、その旨を受信する。
【0073】
記憶部51は、ドローン100が飛行して作業を行う作業エリア、障害物の座標、および作業エリア内におけるドローン100の飛行ルートが記憶される機能部である。また、記憶部51は、ドローン100が飛行中に検知した障害物の位置情報を記憶する。
【0074】
ルート生成部52は、作業エリア内をドローン100が網羅的に飛行し、薬剤散布や撮影等を行うための、ドローン100の飛行ルートを生成する機能部である。ルート生成部52は、座標測量装置2による測量結果に基づいて得られた作業エリアおよび障害物の情報に基づいて、当該作業エリア内に飛行ルートを生成する。飛行ルートは、例えば作業エリア内を往復して走査するものであってもよいし、作業エリアの略中央から外側に向かって周回するルート、又は作業エリアの外側から略中央に向かって周回するルートであってもよい。また、飛行ルートは、周回と往復とを組み合わせて飛行するルートであってもよい。
【0075】
ルート生成部52は、ドローン100が取得した障害物の位置情報に基づいて、当該障害物を避けた範囲に飛行ルートを再生成する。言い換えれば、ルート生成部52は、記憶部51に記憶された障害物の位置から所定距離以内の位置におけるドローン100の飛行を禁止する。また、ルート生成部52は、検知された障害物の位置から水平方向もしくは上下方向に所定距離以上離れた飛行ルートを再生成する。この構成によれば、障害物を測量しなくても、ドローン100の飛行ルートを生成することができる。また、ルート生成部52は、ドローン100が障害物を検知したことを契機に、座標測量装置2により当該障害物を測量した場合に、この測量結果を参照して飛行ルートを再生成することができる。この構成によれば、測量を要する障害物の発見をドローン100に行わせることができ、測量作業が簡便である。ドローン100は、再生成された飛行ルートを受信すると、飛行を再開してもよい。
【0076】
●障害物を検知するフローチャート(1)
図9に示すように、まず、ドローン100が飛行を開始し、(S1)、障害物を検知すると、(S2)ドローン100は障害物の位置より所定距離以上離れた位置でのホバリング又は飛行を開始する(S3)。ドローン100はホバリング又は飛行をしながら障害物を検知可能な位置に留まって障害物の検知を継続し、所定時間を経過しても障害物の検知が継続するとき(S4)、検知されている障害物の位置を記憶部51に保存する(S5)。このとき、検知した障害物の位置情報を、操作器401の表示部において、作業エリアの地図又は写真に重畳的に表示させてもよい。また、ドローン100は、離着陸地点に帰還する(S6)。
【0077】
ステップS4において、所定時間経過前に障害物の検知が中断される場合、ドローン100は飛行ルートに沿う飛行を再開し(S10)、ステップS2に戻る。
【0078】
また、ステップS6における離着陸地点に帰還中又は帰還後において、障害物を除去した旨の入力がなされた場合(S7)、その後、ドローン100は障害物の検知地点まで飛行した上で、飛行ルートに沿う飛行を再開し(S10)、ステップS2に戻る。
【0079】
ステップS7において、障害物を除去した旨の入力がなされない場合、又は飛行ルートを再生成する旨の入力がなされた場合、障害物の位置を記憶部51に保存し(S5)、障害物を避けた範囲でミッションを再生成する(S8)。次いで、ドローン100は、再生成されたミッションで飛行を再開する(S9)。
【0080】
本願発明によれば、圃場内の障害物を正確に検知し、ドローン100により障害物の測量を促すことができる。また、ドローン100による検知結果に基づいて飛行ルートを再生成することができる。すなわち、圃場の測量作業を効率化することができる。
【0081】
●ドローンシステム(2)の処理フロー
図10を用いて、本願発明に係るドローンシステムの第2実施形態における処理の流れを、図9に示した第1実施形態とは異なる部分を中心に説明する。同図に示すように、ステップS4においてドローン100が障害物を所定時間継続して検知すると、障害物の位置を記憶部51に保存し(S5)、障害物を検知した位置にドローン100を着陸させる(S16)。ステップS16における着陸中又は着陸後において、障害物を除去した旨の入力がなされた場合(S7)、ドローン100はその場で上昇した上で、飛行ルートに沿う飛行を再開し(S10)、ステップS2に戻る。
●ドローンシステム(3)における操作器の画面構成
図11を用いて、本願発明に係るドローンシステムの第3実施形態について説明する。本実施形態では、ドローン100が所定時間に渡って障害物を検知し続ける場合に、インターフェース装置の例である操作器401がドローンの動作の選択を受け付ける。
【0082】
図11は、操作器401の表示部4011に表示される、メイン画面G1の実施例を示す。操作器401は、スマートホンあるいはタブレット端末上で稼働するコンピュータプログラムによって実現される。メイン画面G1上には特定の圃場の画像が表示されているが、当該画面表示前に、使用者の管理下にある複数の圃場の選択を行なわせるメニュー画面が表示されてもよい。なお、当該メイン画面G1の構成については、第1および第2実施形態におけるドローンシステムにおいても適用可能である。
【0083】
メイン画面G1上には、周辺機器状態表示領域801、飛行状況表示領域802、機体状況表示領域803、高度調整入力領域804、地図表示領域805、詳細ステータス表示領域806、および、緊急操作入力領域807が設けられている。なお、操縦桿に相当する機能はメイン画面G1上には表示されない。この構成によれば、操作ミスによりドローン100の作業計画に影響を及ぼすのを抑止できる。地図表示領域805は、メイン画面G1の全域に表示されている。周辺機器状態表示領域801、飛行状況表示領域802、機体状況表示領域803、高度調整入力領域804、詳細ステータス表示領域806、および、緊急操作入力領域807は、半透明に塗りつぶされた領域で構成され、地図表示領域805の前面に、地図表示領域805と重ね合わされて表示されている。
【0084】
周辺機器状態表示領域801は、メイン画面G1の右上に配置され、ドローン100のバッテリー残量、基地局404のバッテリー残量、および操作器401のバッテリー残量等を表示する。ドローン100、基地局404および操作器401は、それぞれピクトグラムで表示されている。また、バッテリー残量は、数値および模式図により表されている。バッテリー残量の模式図は、残量に応じて異なる色で表示されてもよい。ドローン100、基地局404および操作器401のいずれかにエラーが生じている場合は、エラーが生じている構成に関する表示領域内に、その旨が表示される。エラーの表示は、正常時の表示とは異なる態様、例えば異なる色で表示されていてもよい。この構成によれば、エラーである旨の情報を操作者により確実に伝えられる。
【0085】
飛行状況表示領域802は、メイン画面G1の上部に渡って帯状に配置され、ドローン100の飛行時間、飛行速度、高度等を表示する。加えて、薬剤散布の完了状況を示すためのプログレスバー(図示していない)を表示してもよい。
【0086】
機体状況表示領域803は、メイン画面G1の左上に配置され、ドローン100の現在のステータス、たとえば、飛行準備中、薬剤補充中、離陸中、飛行中、緊急退避中等を表示する。加えて、次の作業の告知やユーザーへの行動要望(たとえば、「薬剤補充の準備をしてください」)を表示してもよい。
【0087】
高度調整入力領域804は、ドローン100の現在の高度を増減する入力を受け付ける領域である。本願発明に係るドローン100は原則的に自律的に飛行し、高度もコンピュータプログラムにより自動的に調整されるが、たとえば、作物の高さの高低等に応じて、操作者が高度を微調整したい場合が生じ得るためである。高度調整入力領域804は、高度上昇ボタン804aおよび高度下降ボタン804bにより構成され、それぞれが離間して配置されていてもよい。具体的には、高度上昇ボタン804aおよび高度下降ボタン804bは、画面の右端および左端であって、操作器401を左右の手で把持したときに親指が届く位置に配置されていてもよい。この構成によれば、操作器401を両手で把持した姿勢のまま入力が可能である。
【0088】
地図表示領域805は、薬剤散布の対象となる圃場を含む地図であり、航空写真であっても地形図であっても、または、それらの重ね合わせ表示であってよい。縮尺、および、位置が、ジェスチャー操作等で調整可能になっていてもよい。地図表示領域805には、ドローン100の現在の位置を示すピン810がリアルタイムで表示される。地図表示と切り替えて、あるいは、地図表示と共に、ドローン100のカメラ512、513が撮影した圃場403の画像を表示してもよい。ドローン100の飛行予定ルートが航空写真又は地図上に表示されてもよい。
【0089】
詳細ステータス表示領域806は、メイン画面G1の右部に配置されている。詳細ステータス表示領域806は、ポンプ状況、薬剤残量、通信状況、GPS受信状況等、ドローン100およびその周辺構成の状況がより詳細に表示される。
【0090】
緊急操作入力領域807は、ドローン100の故障や衝突等の緊急事態が発生した際の指令を受け付ける領域である。緊急操作入力領域807は、緊急時に操作者が容易に操作できるように、メイン画面G1上の大きな部分、例えば他の表示領域および入力領域よりも広い範囲を占めている。緊急操作ボタンは、画面の縁から十分な距離だけ離間している。この構成によれば、操作器401を持つ操作者の指が入力領域にかかることによる誤操作を防止できる。
【0091】
緊急操作入力領域807上には、緊急時に行なうべき操作が文字で表示されている。緊急時の操作は、単一のタップ動作と比較して入力動作に長時間を要する動作である。緊急時の操作は、例えば横方向にスワイプする動作である。また、緊急時の操作は、複数回タップする動作であってもよい。さらに、緊急時の操作は、長押し動作であってもよい。このような構成によれば、操縦者が動揺している場合でも間違えることがない単純な操作であって、かつ、誤操作が行われにくい。この動作により、ドローン100は自律飛行を中断してホバリングを開始する。
【0092】
図12に示すように、ドローン100が障害物検知部30により障害物を検知すると、操作器401には対応入力画面G2が表示される。対応入力画面G2は、障害物の検知後直ちに表示されてもよいし、間をおいて表示されてもよい。障害物の移動等により、障害物が自然に除去される場合、作業者は対応を入力する必要がなく、ドローン100は自動的に飛行を再開する。対応入力画面G2が、障害物の検知後間をおいて表示される構成によれば、操作器401の画面遷移にかかる処理負担が軽減され、作業者にとっても表示を確認する負担が少ない。対応入力画面G2は、記憶部51に障害物の情報が登録された後に表示されてもよい。
【0093】
対応入力画面G2は、メイン画面G1の一部に重畳するように表示されるポップアップ画面であってもよい。対応入力画面G2には、ドローン100が障害物を検知した旨の情報とともに、ドローン100の動作の選択入力を受け付けるボタンが表示される。具体的には、対応入力画面G2には、ドローンの飛行を再開させる再開ボタンG21、離着陸地点に帰還させる帰還ボタンG22、検知した位置に着陸させる着陸ボタンG23、およびさらに所定時間待機させる待機ボタンG24が表示される。このとき、メイン画面G1の地図表示領域805に、障害物の位置を示す障害物ピン811が表示されてもよい。この構成によれば、作業者が障害物を把握しやすい。また、対応入力画面G2には、障害物の測量又は除去を行う旨の、作業者に対する要求が表示される。
【0094】
再開ボタンG21が押下されるとき、ドローン100は、当初予定されていた飛行ルートに沿う飛行を再開する。この飛行の再開は、障害物が除去されている場合に可能である。すなわち、飛行再開ボタンG21は、障害物を除去した旨の入力を受け付けるボタンであるといえる。障害物を除去した旨の入力が行われた後に、ドローン100は飛行を再開する。
【0095】
所定時間経過後においても障害物を検知し続ける場合、障害物の位置が記憶部51に記憶される。また、ドローン100は離着陸地点に帰還する、又は、障害物の検知位置、すなわちホバリングしている地点に着陸する。所定時間障害物を検知し続ける場合のドローン100の動作は、あらかじめ定められていてもよいし、障害物を検知した後に選択されてもよい。
【0096】
帰還ボタンG22および着陸ボタンG23が押下された場合、各動作を押下後直ちにドローン100に実行させてもよいし、障害物が記憶部51に記憶された後に実行させてもよい。
【0097】
このような構成によれば、ドローン100の動作の一部を作業者により選択可能とすることで、作業者の要望に応じた柔軟な動作が可能である。
【0098】
なお、ボタンG21乃至G24のいずれかが押下される前に障害物の検知が中断された場合、操作器401は対応入力画面G2による入力の受付を停止する。すなわち、操作器401の画面はメイン画面G1に遷移し、ドローン100は飛行を再開する。
【0099】
ドローンは、作業エリア内を自律的に飛行する形態に限られず、例えば作業エリア内又は離着陸地点と作業エリアとの移動経路上において一部又は全部を使用者の操縦に基づいて飛行するドローンであってもよい。
【0100】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本願発明によれば、飛行対象エリア内の障害物を正確に検知し、飛行対象エリアの測量作業を効率化することができる。

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