(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】徐放性哺乳動物忌避組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 43/78 20060101AFI20231228BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20231228BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20231228BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231228BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20231228BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20231228BHJP
A01M 25/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A01N43/78 B
A01P17/00
A01N43/78 C
A01N43/78 E
A01N25/10
C08L101/00
C08L71/02
C08L33/04
A01M25/00 A
(21)【出願番号】P 2022524534
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2021019153
(87)【国際公開番号】W WO2021235516
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2020089154
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021037770
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「害獣忌避剤のコントロールドリリース技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 達生
(72)【発明者】
【氏名】門 潤子
(72)【発明者】
【氏名】千波 誠
(72)【発明者】
【氏名】大熊 敬介
(72)【発明者】
【氏名】小早川 令子
(72)【発明者】
【氏名】小早川 高
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第5350496(JP,B2)
【文献】特開2019-131477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P,A01M
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐放性哺乳動物忌避組成物であって、
哺乳動物忌避剤、及び架橋型重合体を含み、
前記哺乳動物忌避剤は、以下の式(I)~(VI):
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C
1-6アルキル基又はC
1-6アルキルチオ基を示す。)
で示される化合物から選択される1又は2以上の化合物又はその塩からなり、
前記架橋型重合体は、
オキシアルキレン重合体のシロキサン架橋体、(メタ)アクリル系重合体のシロキサン架橋体、(メタ)アクリル系重合体のラジカル架橋体、及びポリオレフィン重合体のウレタン架橋体からなる群から選択される1又は2以上
である、
前記徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項2】
前記式(I)で示される化合物が、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、及び2,4-ジメチルチアゾールから選択されるいずれかの化合物である、請求項1に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項3】
前記式(II)又は(III)で示される化合物が、2-メチル-2-チアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン、4-メチル-2-チアゾリン、2,4-ジメチル-2-チアゾリン、及び2,2-ジメチルチアゾリジンから選択されるいずれかの化合物である、請求項1に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項4】
前記式(IV)で示される化合物が、チオモルホリンである、請求項1に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項5】
前記式(V)で示される化合物が、2,5-ジメチル-2-チアゾリン及び5-メチル-2-チアゾリンから選択されるいずれかの化合物である、請求項1に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項6】
前記架橋型重合体が、オキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体のシロキサン架橋体である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項7】
前記オキシアルキレン重合体のポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基が炭素数1~6のオキシアルキレン基であり、前記オキシアルキレン重合体の数平均分子量が1,000~30,000である、請求項
6に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系重合体が主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位としてブチルアクリレートを含み、前記(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が2,000~30,000である、請求項
6又は
7に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項9】
硬化触媒、開始剤、及び架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項10】
前記硬化触媒がカルボン酸、アミン化合物、又は有機金属触媒である、請求項
9に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項11】
前記徐放性哺乳動物忌避組成物のJIS K6253-3:2012に記載のタイプEデュロメータを用いて測定される硬度が0以上50未満である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項12】
前記徐放性哺乳動物忌避組成物の25℃での水蒸気透過度が0.1(g/m
2・24時間)以上100(g/m
2・24時間)以下である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項13】
前記徐放性哺乳動物忌避組成物のJIS K6251:2017に記載の方法により3号ダンベルを用いて測定される破断強度が0.01MPa以上であり、かつ破断伸びが50%以上である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項14】
前記徐放性哺乳動物忌避組成物の動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失弾性率E”の貯蔵弾性率E’に対する比率として算出される損失正接(tanδ)が1.5以上である、請求項1~
13のいずれか一項に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物、及び前記徐放性哺乳動物忌避組成物を内部に包含する容器を含む、哺乳動物忌避装置。
【請求項16】
前記容器が、外界に接する1又は2以上の開放部を有する、請求項
15に記載の哺乳動物忌避装置。
【請求項17】
前記開放部が、孔又は間隙である、請求項
16に記載の哺乳動物忌避装置。
【請求項18】
哺乳動物の忌避方法であって、
請求項1~
14のいずれか一項に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物、又は請求項
15~
17のいずれか一項に記載の哺乳動物忌避装置を、哺乳動物を忌避させる空間に配置する工程を含む、前記忌避方法。
【請求項19】
徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法であって、
哺乳動物忌避剤、
加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体、並びに硬化触媒、開始剤、及び架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを混合する混合工程、及び
前記混合工程で得られた混合物を架橋する架橋工程を含み、
前記哺乳動物忌避剤は、以下の式(I)~(VI):
【化2】
(式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C
1-6アルキル基又はC
1-6アルキルチオ基を示す。)
で示される化合物から選択される1又は2以上の化合物又はその塩からな
る、
前記製造方法。
【請求項20】
前記加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体のポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基が炭素数1~6のオキシアルキレン基であり、前記加水分解性
シリル基を有するオキシアルキレン重合体の数平均分子量が1,000~30,000である、請求項
19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体が主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位としてブチルアクリレートを含み、前記加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が2,000~30,000である、請求項
19に記載の製造方法。
【請求項22】
前記硬化触媒がカルボン酸、アミン化合物、又は有機金属触媒である、請求項
19~
21のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法であって、
哺乳動物忌避剤、水酸基を有するポリオレフィン重合体、及びイソシアネート基含有化合物を混合する混合工程、及び
前記混合工程で得られた混合物を架橋する架橋工程を含み、
前記哺乳動物忌避剤は、以下の式(I)~(VI):
【化3】
(式中、R
1
、R
2
、及びR
3
はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C
1-6
アルキル基又はC
1-6
アルキルチオ基を示す。)
で示される化合物から選択される1又は2以上の化合物又はその塩からなる、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放性哺乳動物忌避組成物、哺乳動物の忌避方法、及び徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野生動物は、様々な産業において多大な損害をもたらす。野生動物の中でもネズミは、野菜、大豆、及び稲等への食害、穀物倉庫での食害、若木や樹皮の食害、伝染病の媒介等によって、農業、林業、及び畜産業等に深刻な被害を与え続けている。例えば、農林水産省の疫学調査によれば、豚コレラ発生の要因としてネズミが農場間又は野生動物からのウイルスの媒介に関与していることが挙げられており、豚コレラの伝染への予防策が喫緊の課題となっている。また、ネズミはレストラン等の商業施設において食中毒を媒介し、電線を齧って停電や機械類の故障を発生させる点でも大きな問題を引き起こし、一次産業に限らず深刻な被害をもたらしている。
【0003】
一方、ネズミを含む野生動物に対する有効な忌避技術は、現在までに十分に開発されていない。現在市場に存在するネズミ忌避剤は、ワサビの匂いや、ハーブの匂い等を効果物質としている。これらのネズミ忌避剤は、いずれも忌避効果が弱く、匂いを繰り返し嗅いだ後に馴化してしまう問題点がある。
【0004】
近年、従来の忌避剤の問題点を克服するために、チアゾリン類化合物に基づく、強力かつ馴化しない新たな忌避剤の開発が進められてきた(特許文献1、非特許文献1)。動物の嗅覚には、進化の過程で種にとって危険であると認識された対象(例えば、小動物や草食動物にとっての捕食者)に由来する匂いを受容する特別な嗅覚システムが備わっている。チアゾリン類化合物は、この特別な嗅覚システムに受容される匂い分子であり、ネズミ、モグラ、ウサギ、及びシカ等の小動物や草食動物に対して極めて強力な忌避効果を示す上に、繰り返し嗅がせても馴化が全く起こらないという優れた性質を有している。したがって、チアゾリン類化合物を忌避剤の活性成分として活用すれば、従来の忌避剤における重大な欠点となっていた馴化問題を克服し、強力かつ馴化しない新たな忌避剤を提供することが可能になると考えられる(特許文献1)。
【0005】
野生動物に対する忌避剤は屋内又は野外において長期的に使用することが必要とされる。しかし、チアゾリン類化合物は揮発性が高く、空気に触れる条件では変性し易い性質を有する。また、チアゾリン類化合物は空気中の水分で容易に分解してしまい、忌避効果が失われる。例えば、チアゾリン類化合物を含む忌避剤の設置又は樹木への施用後に、雨が降ると動物忌避剤の活性が損なわれてしまう。チアゾリン類化合物である4E2MT(4-エチル-2-メチルチアゾリン)は、加水分解による開環反応後、2量体を形成し、不活性な化合物に変性する。こうした点が、チアゾリン類化合物を長期使用する上で弱点となっている。また、高い揮発性と変性し易い性質は、製剤化のための熱加工や徐放技術を適用する上でも障害となっている。それ故、チアゾリン類化合物の活性を損なうことなく、その忌避効果を長期間に亘って持続させる新たな技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Kobayakawa,K.,et al.,Nature,2007,450(7169):503-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、チアゾリン類化合物の活性を損なわず、長期間に亘ってチアゾリン類化合物を放散することが可能な徐放性哺乳動物忌避組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、チアゾリン類化合物を安定に包埋し、かつその徐放を可能とする有機重合体について探索を行った。その結果、有機重合体をシロキサン結合で架橋して得られる硬化物を用いた場合には、硬化反応によってチアゾリン類化合物が変性せず、かつ硬化不良も生じないことが明らかになった。さらに、上記硬化物からチアゾリン類化合物が安定的かつ長期間に亘って放散され続けることを見出した。本発明は、上記知見に基づくものであって以下を提供する。
【0010】
(1)徐放性哺乳動物忌避組成物であって、哺乳動物忌避剤、及びシロキサン架橋型有機重合体を含み、前記哺乳動物忌避剤は、以下の式(I)~(VI):
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C
1-6アルキル基又はC
1-6アルキルチオ基を示す。)
で示される化合物から選択される1又は2以上の化合物又はその塩からなり、前記シロキサン架橋型有機重合体は、2以上のオキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体がシロキサン結合で架橋されているものである、前記徐放性哺乳動物忌避組成物。
(2)前記式(I)で示される化合物が、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、及び2,4-ジメチルチアゾールから選択されるいずれかの化合物である、(1)に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
(3)前記式(II)又は(III)で示される化合物が、2-メチル-2-チアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン、4-メチル-2-チアゾリン、2,4-ジメチル-2-チアゾリン、及び2,2-ジメチルチアゾリジンから選択されるいずれかの化合物である、(1)に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
(4)前記式(IV)で示される化合物が、チオモルホリンである、(1)に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
(5)前記式(V)で示される化合物が、2,5-ジメチル-2-チアゾリン及び5-メチル-2-チアゾリンから選択されるいずれかの化合物である、(1)に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
(6)前記オキシアルキレン重合体のポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基が炭素数1~6のオキシアルキレン基であり、前記オキシアルキレン重合体の数平均分子量が1,000~30,000である、(1)~(5)のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
(7)前記(メタ)アクリル系重合体が主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位としてブチルアクリレートを含み、前記(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が2,000~30,000である、(1)~(6)のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
(8)(1)~(7)のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物、及び前記徐放性哺乳動物忌避組成物を内部に包含する容器を含む、哺乳動物忌避装置。
(9)前記容器が、外界に接する1又は2以上の開放部を有する、(8)に記載の哺乳動物忌避装置。
(10)前記開放部が、孔又は間隙である、(9)に記載の哺乳動物忌避装置。
(11)哺乳動物の忌避方法であって、(1)~(7)のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物、又は(8)~(10)のいずれかに記載の哺乳動物忌避装置を、哺乳動物を忌避させる空間に配置する工程を含む、前記忌避方法。
【0011】
(12)徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法であって、以下の式(I)~(VI):
【化2】
(式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C
1-6アルキル基又はC
1-6アルキルチオ基を示す。)
で示される化合物から選択される1又は2以上の化合物又はその塩からなる哺乳動物忌避剤、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体、及び硬化触媒を混合して架橋する混合架橋工程を含む、前記製造方法。
(13)前記加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体のポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基が炭素数1~6のオキシアルキレン基であり、前記加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の数平均分子量が1,000~30,000である、(12)に記載の製造方法。
(14)前記加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体が主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位としてブチルアクリレートを含み、前記加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が2,000~30,000である、(12)に記載の製造方法。
(15)前記硬化触媒がカルボン酸又はアミン化合物である、(12)に記載の製造方法。
【0012】
本発明はさらに以下を提供する。
[1]徐放性哺乳動物忌避組成物であって、哺乳動物忌避剤、及び架橋型重合体を含み、前記哺乳動物忌避剤は、以下の式(I)~(VI):
【化3】
(式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C
1-6アルキル基又はC
1-6アルキルチオ基を示す。)
で示される化合物から選択される1又は2以上の化合物又はその塩からなり、前記架橋型重合体は、(メタ)アクリル系重合体、オキシアルキレン重合体(ポリエーテル)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリサルファイト、ポリアルキルシロキサン、フッ素含有重合体、ゴム系重合体、及びエポキシ樹脂からなる群から選択される1又は2以上の重合体の架橋体である、前記徐放性哺乳動物忌避組成物。
[2]前記式(I)で示される化合物が、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、及び2,4-ジメチルチアゾールから選択されるいずれかの化合物である、[1]に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[3]前記式(II)又は(III)で示される化合物が、2-メチル-2-チアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン、4-メチル-2-チアゾリン、2,4-ジメチル-2-チアゾリン、及び2,2-ジメチルチアゾリジンから選択されるいずれかの化合物である、[1]に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[4]前記式(IV)で示される化合物が、チオモルホリンである、[1]に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[5]前記式(V)で示される化合物が、2,5-ジメチル-2-チアゾリン及び5-メチル-2-チアゾリンから選択されるいずれかの化合物である、[1]に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[6]前記架橋体が、シロキサン架橋、ラジカル架橋、エポキシ架橋、酸エポキシ架橋、ウレタン架橋、及びエン/チオール反応による架橋からなる群から選択される架橋を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[7]前記架橋型重合体が、オキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体のシロキサン架橋体である、[1]~[6]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[8]前記オキシアルキレン重合体のポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基が炭素数1~6のオキシアルキレン基であり、前記オキシアルキレン重合体の数平均分子量が1,000~30,000である、[7]に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[9]前記(メタ)アクリル系重合体が主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位としてブチルアクリレートを含み、前記(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が2,000~30,000である、[7]又は[8]に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[10]前記架橋型重合体が、(メタ)アクリル系重合体のラジカル架橋体である、[1]~[6]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[11]前記架橋型重合体が、オキシアルキレン重合体又はポリオレフィン重合体のウレタン架橋体である、[1]~[6]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[12]硬化触媒、開始剤、及び架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含む、[1]~[11]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[13]前記硬化触媒がカルボン酸、アミン化合物、又は有機金属触媒である、[12]に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[14]前記徐放性哺乳動物忌避組成物のJIS K6253-3:2012に記載のタイプEデュロメータを用いて測定される硬度が0以上50未満である、[1]~[13]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[15]前記徐放性哺乳動物忌避組成物の25℃での水蒸気透過度が0.1(g/m
2・24時間)以上100(g/m
2・24時間)以下である、[1]~[14]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[16]前記徐放性哺乳動物忌避組成物のJIS K6251:2017に記載の方法により3号ダンベルを用いて測定される破断強度が0.01MPa以上であり、かつ破断伸びが50%以上である、[1]~[15]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[17]前記徐放性哺乳動物忌避組成物の動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失弾性率E”の貯蔵弾性率E’に対する比率として算出される損失正接(tanδ)が1.5以上である、[1]~[16]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物。
[18][1]~[17]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物、及び前記徐放性哺乳動物忌避組成物を内部に包含する容器を含む、哺乳動物忌避装置。
[19]前記容器が、外界に接する1又は2以上の開放部を有する、[18]に記載の哺乳動物忌避装置。
[20]前記開放部が、孔又は間隙である、[19]に記載の哺乳動物忌避装置。
[21]哺乳動物の忌避方法であって、[1]~[17]のいずれかに記載の徐放性哺乳動物忌避組成物、又は[18]~[20]のいずれかに記載の哺乳動物忌避装置を、哺乳動物を忌避させる空間に配置する工程を含む、前記忌避方法。
【0013】
[22]徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法であって、哺乳動物忌避剤、少なくとも1つの反応性官能基を有する重合体、並びに硬化触媒、開始剤、及び架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを混合する混合工程、及び前記混合工程で得られた混合物を架橋する架橋工程を含み、前記哺乳動物忌避剤は、以下の式(I)~(VI):
【化4】
(式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C
1-6アルキル基又はC
1-6アルキルチオ基を示す。)
で示される化合物から選択される1又は2以上の化合物又はその塩からなり、前記反応性官能基は、加水分解性シリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、水酸基、及びオキシラン環からなる群から選択され、前記反応性官能基を有する重合体は、(メタ)アクリル系重合体、オキシアルキレン重合体(ポリエーテル)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリサルファイト、ポリアルキルシロキサン、フッ素含有重合体、ゴム系重合体、及びエポキシ樹脂からなる群から選択される、前記製造方法。
[23]前記混合工程における前記反応性官能基を有する重合体が、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体である、[22]に記載の製造方法。
[24]前記加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体のポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基が炭素数1~6のオキシアルキレン基であり、前記加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の数平均分子量が1,000~30,000である、[23]に記載の製造方法。
[25]前記加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体が主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位としてブチルアクリレートを含み、前記加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が2,000~30,000である、[23]に記載の製造方法。
[26]前記硬化触媒がカルボン酸、アミン化合物、又は有機金属触媒である、[22]~[25]のいずれかに記載の製造方法。
[27]前記反応性官能基が水酸基であり、前記反応性官能基を有する重合体がポリオレフィン重合体であり、前記架橋剤がイソシアネート基含有化合物である、[22]に記載の製造方法。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2021-037770号及び2020-089154号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物によれば、チアゾリン類化合物の活性を損なわず、長期間に亘ってチアゾリン類化合物を放散することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(A)忌避剤の存在下でXMAP-3又はXMAP-4をフェニルグアニジン/メタノール触媒系で硬化させた際に生じる硬化物表面の白化、(B)表層(矢印)のみが白化していることを示す硬化物の断面、(C)白化した硬化物表面を電子顕微鏡で観察した際に見られるしわ模様を示す図である。
【
図2】(A)4-エチル-2-メチルチアゾリン(4E2MT)の構造、及び(B)2量体化した4E2MTの構造を示す図である。
【
図3】(A)圃場に設置された忌避組成物の外観と、(B)設置位置を示す図である。
【
図4】フィールド設置前のサンプル、フィールド設置5か月後のサンプル、及び4E2MT(原液)からの忌避剤の放散挙動を示す図である。
【
図5】ハタネズミの写真を示す図である。ハタネズミは、フィールドテストを行ったリンゴ圃場においてネズミ穴を形成しており、リンゴの樹皮に対する食害を発生させる。
【
図6】(A)フィールドテストを実施する前のネズミ穴の分布、(B)忌避組成物、防鼠テープ、硫黄+カプサイシン、金網を設置した区画、及び無処理区の位置、(C)リンゴ圃場のある弘前市における風向きを示す図である。(C)は、平均風速が1.6km/h未満の時間を除いて、平均風向きが各方位に向いていた時間の割合を示す(https://ja.weatherspark.comより)。フィールドテスト期間は図中の11月~3月の5か月間が該当する。
【
図7】比較例1~2及び実施例5~9で用いた動物忌避装置の構造を示す図である。容器(1)、膜状部材(2)、空隙部(空気)(3)、硬化物(4)、及び動物忌避装置(10)を示す。
【
図8】比較例3及び実施例10~11の実験手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.徐放性哺乳動物忌避組成物
1-1.概要
本発明の第1の態様は、徐放性哺乳動物忌避組成物である。本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物は、哺乳動物忌避剤(以下、しばしば「忌避剤」と表記する)及び架橋型重合体を含み、忌避剤を不活性化せずに長期徐放することができる。
【0017】
1-2.定義
本明細書で頻用する用語について、以下で定義をする。
本明細書において「徐放」とは、物質が空間中に徐々に放出されることをいう。本明細書では、特に匂い物質が空気中に徐々に放散されることをいう。具体的には、通常の条件下において匂い物質が放散される速度よりも遅い速度で、匂い物質が空気中に自然放散されることをいう。例えば、希釈されていない原液の匂い物質又は通常用いられる溶媒で希釈された匂い物質よりも遅い速度で、空気中に放散されることをいう。忌避性の匂い物質が徐放される場合、周囲の空間では長期間に亘って匂い分子が存在することから動物はその空間を忌避し得る。
【0018】
本明細書において「長期」又は「長期間」とは、通常の条件下で匂い物質が放散され続ける期間よりも長いことを意味する。具体的には、希釈されていない原液の匂い物質又は通常用いられる溶媒中に希釈された匂い物質が同一条件下で放散され続ける期間よりも長いことを意味する。具体的な期間は匂い物質の種類によって異なるが、例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、半日以上、1日以上、2日以上、3日以上、1週間以上、2週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上、2年以上、3年以上、5年以上、又は10年以上の期間が該当する。
【0019】
本明細書において「哺乳動物」の種類は、限定しない。例えば、農作物、森林、家畜又は人家に被害をもたらす有害哺乳動物全般が挙げられる。一例を挙げれば、ネズミ、モグラ、ウサギ、イタチ、シカ、イノシシ、サル、ネコ、クマ等の哺乳動物が挙げられる。
【0020】
本明細書において「ネズミ」は、ネズミ目に属する動物であれば限定しない。ネズミ目には、ヤマアラシ亜目、ネズミ亜目、及びリス亜目が含まれる。例えば、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ、アカネズミ、ハタネズミ、タケネズミ、リス、ヤマアラシ、デグー、及びヌートリア等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書において「シカ」は、シカ科に属する動物である。例えば、エゾシカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカ、及びヤクジカ等のニホンジカやキョン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書において「モグラ」は、モグラ科に属する動物である。例えば、コウベモグラ、アズマモグラ、サドモグラ、及びエチゴモグラ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書において「ウサギ」は、ウサギ目に属する動物である。例えば、アナウサギ及びノウサギ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書において「チアゾリン類化合物」は、チアゾリン環若しくはチアゾリジン環を有する化合物、又はチオモルホリン環を有する化合物を意味する。限定しないが、例えば、揮発性を有し、動物の嗅覚によって知覚され得る化合物、さらにその結果、動物に対して忌避行動を誘発し得る化合物が好ましい。チアゾリン類化合物は、小動物や草食動物にとっての捕食者の尿に含まれる物質等を模した効果を有し、それ故、例えばネズミ、モグラ、ウサギ、及びシカ等の小動物や草食動物に対して強力な忌避効果を示す。
【0025】
本明細書において「架橋型重合体」とは、2以上の重合体が架橋されている高分子化合物をいう。
【0026】
本明細書において「シロキサン架橋型有機重合体」とは、2以上の有機重合体がシロキサン結合で架橋されている高分子の有機化合物をいう。
【0027】
1-3.構成
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物は、必須の構成成分として哺乳動物忌避剤及び架橋型重合体を含む。本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物は、忌避剤及び架橋型重合体からなるものであってもよく、又はその他の成分をさらに含むものであってもよい。
【0028】
1-3-1.構成成分
(哺乳動物忌避剤)
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤は、以下の一般式(1)で示される複素環式化合物又はその塩、鎖状スルフィド化合物及びアルキルイソチオシアネートから選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【0029】
【化5】
(式中、環Aは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む3-7員の複素環を示し、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、アシル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、置換されていてもよいチオール基、置換されていてもよいアミノ基又はオキソ基を示す。)
【0030】
一般式(1)の環Aは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択される少なくとも1個(好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含む3-7員の複素環を示す。環Aは、窒素原子及び/又は硫黄原子を含む3-7員の複素環が好ましい。環Aは、窒素原子及び硫黄原子を含む3-7員の複素環がさらに好ましい。環Aの員数は、3~6が好ましく、5又は6がさらに好ましい。
【0031】
前記複素環の例としては、限定されないが、例えば、ピロール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、ピロリジン、ヘキサヒドロピリダジン、イミダゾール、イミダゾリジン、ピペリジン、エチレンスルフィド、トリメチレンスルフィド、チオフェン、チオラン、テトラヒドロ-2H-チオピラン、チアゾリン(例、2-チアゾリン、3-チアゾリン、4-チアゾリン)、チアゾール、チアゾリジン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チオモルホリン、チアジアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリジン、1,3-チアザン、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジン、フラン、2H-ピラン、4H-ピラン、オキサゾール、イソオキサゾール、モルホリン、オキサゾリン等が挙げられる。好ましくは、チアゾリン(例、2-チアゾリン)、チアゾール、チアゾリジン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チオモルホリン、チアジアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリジン、1,3-チアザン、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジンであり、さらに好ましくは、チアゾリン(例、2-チアゾリン)、チアゾール、チアゾリジン、1,3-チアザン、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジン、チオモルホリンである。
【0032】
ここで用いられる「ハロゲン原子」は、好ましくは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。
【0033】
ここで用いられる「アルキル基」なる用語(基又は基の一部として用いられる場合)は指定された数の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、C1-6アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基が挙げられる。C1-6アルキル基は1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味する。C1-6アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基又は1-エチル-2-メチルプロピル基が含まれるが、これらに限定されない。好ましいアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0034】
前記アルキル基は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲノ基等が挙げられる。ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等が挙げられる。C1-6ハロアルキル基は、1~5個のハロゲノ基で置換されたC1-6アルキル基を意味し、ハロゲノ基が2個以上である場合の各ハロゲノ基の種類は、同一又は異なっていてもよい。C1-6ハロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、1-フルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、1-フルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、2,2-ジフルオロプロピル基、3-フルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4-フルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、5-フルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、6-フルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基等を挙げることができる。
【0035】
ここで用いられる「アルコキシ基」なる用語(基又は基の一部として用いられる場合)は、指定された数の炭素原子を有する、-O(アルキル)基を示す。アルコキシ基としては、例えば、C1-6アルコキシ基が挙げられる。C1-6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、1-メチルプロポキシ基、2-メチルプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、1-エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、1-エチル-2-メチルプロポキシ基等が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
前記アルコキシ基は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲノ基等が挙げられる。ハロゲノ基としては、上記アルキル基の置換基と同じ基が挙げられる。C1-6ハロアルコキシ基は、1~5個のハロゲノ基で置換されたC1-6アルコキシ基を意味し、ハロゲノ基が2個以上である場合の各ハロゲノ基の種類は、同一又は異なっていてもよい。C1-6ハロアルコキシ基としては、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1-フルオロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、1,1-ジフルオロエトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエトキシ基、1-フルオロプロポキシ基、1,1-ジフルオロプロポキシ基、2,2-ジフルオロプロポキシ基、3-フルオロプロポキシ基、3,3,3-トリフルオロプロポキシ基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、4-フルオロブトキシ基、4,4,4-トリフルオロブトキシ基、5-フルオロペンチルオキシ基、5,5,5-トリフルオロペンチルオキシ基、6-フルオロヘキシルオキシ基、6,6,6-トリフルオロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0037】
ここで用いられる「アシル基」としては、例えば、ホルミル基、C1-6アルキル-カルボニル基が挙げられる。C1-6アルキル-カルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基等が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
ここで用いられる「カルボキシル基」なる用語(基又は基の一部として用いられる場合)は、-COOH基を示す。前記カルボキシル基はエステル化されていてもよい。エステル化されていてもよいカルボキシル基の具体例としては、カルボキシル基、C1-6アルコキシカルボニル基が挙げられる。C1-6アルコキシカルボニル基のC1-6アルコキシ部分は、置換されていてもよいアルコキシ基におけるC1-6アルコキシ基と同意義である。
【0039】
ここで用いられる「チオール基」なる用語(基又は基の一部として用いられる場合)は、-SH基を示す。前記チオール基は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、C1-6アルキル基等が挙げられ、C1-6アルキル基は、置換されていてもよいアルキル基におけるC1-6アルキル基と同意義である。置換されていてもよいチオール基の具体例としては、チオール基、C1-6アルキルチオ基が挙げられる。C1-6アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
ここで用いられる「アミノ基」なる用語(基又は基の一部として用いられる場合)は、-NH2基を示す。前記アミノ基は1又は2個の置換基で置換されていてもよく、置換基としては、例えば、C1-6アルキル基、-COR5(式中、R5は水素又はC1-6アルキル基を示す。)等が挙げられ、C1-6アルキル基は、置換されていてもよいアルキル基におけるC1-6アルキル基と同意義である。置換されていてもよいアミノ基の具体例としては、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基、-NR4COR5(式中、R4及びR5はそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基を示す。)が挙げられる。C1-6アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1-メチルエチルアミノ基等が含まれ、ジ(C1-6アルキル)アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、ビス(1-メチルエチル)アミノ基等が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
ここで用いられる「オキソ」なる用語(基又は基の一部として用いられる場合)は、=O基を示す。
【0042】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤の有効成分として用いられる好適な複素環式化合物としては、例えば、チアゾール、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、2-ホルミルチアゾール、2-アミノチアゾール、5-メチルチアゾール、2,4-ジメチルチアゾール、4,5-ジメチルチアゾール、2-チアゾリン、2-メチル-2-チアゾリン、2-エチル-2-チアゾリン、2-ブロモ-2-チアゾリン、2,4-ジメチル-2-チアゾリン、4-メチル-2-チアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン、2-メチル-4-エチル-2-チアゾリン、2-アミノ-2-チアゾリン、5-メチル-2-チアゾリン、4,5-ジメチル-2-チアゾリン、2,5-ジメチル-2-チアゾリン、2-メルカプト-2-チアゾリン、2-プロピル-2-チアゾリン、2-(1-メチルエチル)-2-チアゾリン、2-(1-メチルプロピル)-2-チアゾリン、チアゾリジン、2-メチルチアゾリジン、4-メチルチアゾリジン、5-メチルチアゾリジン、2,4-ジメチルチアゾリジン、2,2-ジメチルチアゾリジン、2,5-ジメチルチアゾリジン、4,5-ジメチルチアゾリジン、2,4,5-トリメチルチアゾリジン、1,3-チアザン、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジン、2-メチル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロピル-2-オキサゾリン、2-プロピル-2-オキサゾリン、2,4,4-トリメチル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-オキサゾリン、オキサゾール、チオフェン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、イミダゾール、チオモルホリン、モルホリン、イソブチレンスルフィド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤の有効成分として用いられる複素環式化合物の別の好ましい態様としては、以下の式(I)~(VIII)で示される化合物から選択される化合物又はその塩が挙げられる。
【0044】
【0045】
ここで、式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6ハロアルコキシ基、ホルミル基、C1-6アルキル-カルボニル基、カルボキシル基、C1-6アルコキシカルボニル基、チオール基、C1-6アルキルチオ基、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基、-NR4COR5又はオキソ基を示し、R4及びR5はそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基を示す。但し、式(I)においてR1及びR2はオキソ基ではなく、式(II)、式(VII)及び式(V)においてR1はオキソ基ではなく、式(III)においてR1とR3が一緒になってオキソ基を形成してもよい。
【0046】
上記式(I)~(VIII)で示される化合物のさらに好ましい例としては、式中、R1、R2及びR3がそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルキルチオ基を示す化合物又はその塩が挙げられる。
【0047】
複素環式化合物の別の好ましい態様としては、前記式(I)~(VIII)で表される複素環式化合物のうち、2位及び/又は4位、又は、2位及び/又は5位が置換されたチアゾール、チアゾリン、チアゾリジン、並びにチオフェン、チオモルホリン等が挙げられる。このような複素環式化合物は試薬として一般的に知られた物質が含まれ、市販のものを利用でき、また公知の方法により得ることができる。
【0048】
上記式(I)、(II)、(III)、(VII)、又は(VIII)で示される化合物の好ましい例としては、式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6ハロアルコキシ基、ホルミル基、C1-6アルキル-カルボニル基、カルボキシル基、C1-6アルコキシカルボニル基、チオール基、C1-6アルキルチオ基、アミノ基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基、-NR4COR5又はオキソ基を示し、R4及びR5はそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基を示す化合物又はその塩が挙げられる。但し、式(I)においてR1及びR2はオキソ基ではなく、式(II)及び式(VII)においてR1はオキソ基ではなく、式(III)においてR1とR3が一緒になってオキソ基を形成してもよい。
【0049】
式(I)、(II)、(III)、(VII)、又は(VIII)で示される化合物のさらに好ましい例としては、式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルキルチオ基を示す化合物又はその塩が挙げられる。
【0050】
式(I)~(III)で示される化合物の特に好ましい例としては、式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C1-6アルキル基又はC1-6アルキルチオ基を示す化合物又はその塩が挙げられる。
【0051】
式(I)~(III)において、R1が水素、ハロゲン原子(例、臭素原子)、C1-6アルキル基(例、メチル、エチル)又はC1-6アルキルチオ基(例、メチルチオ)を示し、R2が水素又はC1-6アルキル基(例、メチル)を示し、R3が水素又はC1-6アルキル基(例、メチル)を示す化合物又はその塩がより好ましい。
【0052】
式(I)~(III)において、R1、R2及びR3がそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基(例、メチル、エチル)を示す化合物又はその塩がさらに好ましい。
【0053】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤の有効成分として用いられる複素環式化合物の他の好ましい態様としては、上記式(I)又は(II)において、式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ホルミル基、C1-6アルキル-カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、C1-6ハロアルキル基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基、C1-6アルキルチオ基又は-NR4COR5を示し、式(II)の化合物においては、R2はオキソ基を示してもよく、R1及びR2のいずれかが水素である場合は他方は水素ではなく、R4及びR5はそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基を示す化合物又はその塩が挙げられる。
【0054】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤の有効成分として用いられる複素環式化合物の別の好ましい態様としては、上記式(I)~(VI)において、式中、R1は水素、ハロゲン原子(例、臭素原子)、C1-6アルキル基(例、メチル、エチル)又はC1-6アルキルチオ基(例、メチルチオ)を示し、R2は水素又はC1-6アルキル基(例、メチル)を示し、R3は水素又はC1-6アルキル基(例、メチル)を示す化合物又はその塩が挙げられる。
【0055】
上記式(I)~(VI)において、R1、R2及びR3がそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基(例、メチル、エチル)である化合物又はその塩がさらに好ましい。
【0056】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤の有効成分として用いられる複素環式化合物の別の好ましい態様としては、上記式(I)又は(II)において、式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基(例、メチル、エチル)を示し、R1及びR2のいずれかが水素である場合は他方は水素ではない化合物又はその塩が挙げられる。
【0057】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤の有効成分として用いられる複素環式化合物の別の好ましい態様としては、上記式(III)において式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基(例、メチル)を示す化合物又はその塩が挙げられる。
【0058】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤の有効成分として用いられる複素環式化合物の別の好ましい態様としては、前記式(V)において、式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基(例、メチル)を示す化合物又はその塩が挙げられる。
【0059】
式(V)において、R1及びR2のいずれかが水素である場合は他方は水素ではない化合物又はその塩がさらに好ましい。
【0060】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤の有効成分として用いられる複素環式化合物の別の好ましい態様としては、式(VI)において式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素又はC1-6アルキル基(例、メチル)を示す化合物又はその塩が挙げられる。
【0061】
式(I)の化合物の好ましい例としては、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール又は2,4-ジメチルチアゾール等が挙げられる。
【0062】
式(II)の化合物の好ましい例としては、2-メチル-2-チアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン、4-メチル-2-チアゾリン又は2,4-ジメチル-2-チアゾリン等が挙げられる。
【0063】
式(III)の化合物の好ましい例としては、チアゾリジン、2-メチルチアゾリジン、2,2-ジメチルチアゾリジン、4-メチルチアゾリジン又は2,4-ジメチルチアゾリジン等が挙げられる。
【0064】
式(IV)の化合物の好ましい例としては、チオモルホリン等が挙げられる。
【0065】
式(V)の化合物の好ましい例としては、2,5-ジメチル-2-チアゾリン又は5-メチル-2-チアゾリン等が挙げられる。
【0066】
式(VI)の化合物の好ましい例としては、5-メチルチアゾリジン等が挙げられる。
【0067】
式(VII)の化合物の好ましい例としては、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジン、2-メチル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジン又は2,4-ジメチル-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジン等が挙げられる。
【0068】
式(VIII)の好ましい化合物としては、1,3-チアザン、2-メチル-テトラヒドロ-1,3-チアジン又は2,4-ジメチル-テトラヒドロ-1,3-チアジン等が挙げられる。
【0069】
哺乳動物忌避剤に含まれる忌避活性を有する化合物は、上記複素環式化合物に限定されず、環を形成せず鎖状構造を有する化合物(以下、鎖状化合物ともいう。)であってもよい。鎖状化合物は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む。鎖状化合物としては、例えば、鎖状スルフィド化合物又はアルキルイソチオシアネートが好ましく挙げられる。前記鎖状スルフィド化合物としては、例えば、アリルメチルスルフィド等が好ましく挙げられるが、これに限定されない。前記アルキルイソチオシアネートとしては、例えば、エチルイソチオシアネート等のC1-6アルキルイソチオシアネートが好ましく挙げられるが、これに限定されない。
【0070】
哺乳動物忌避剤を構成する化合物の塩としては、製薬学的又は農業上、あるいは産業上許容されるものであればあらゆるものが含まれるが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩のようなアンモニウム塩;塩酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩のような無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩のような有機酸塩等が挙げられる。
【0071】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤は、上記に加えて忌避活性を有する更なる化合物を付加的に含んでもよい。そのような付加的に含まれてもよい化合物には、限定しないが、例えばネズミ忌避剤として従来から使用されている薄荷や樟脳が挙げられる。
【0072】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる哺乳動物忌避剤の濃度は、1×10-6重量%以上、1×10-5重量%以上、1×10-4重量%以上、1×10-3重量%以上、0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、若しくは50重量%以上、及び/又は50重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下、0.1重量%以下、0.01重量%以下、1×10-3重量%以下、1×10-4重量%以下、1×10-5重量%以下、若しくは1×10-6重量%以下であってもよい。
【0073】
(架橋型重合体)
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる架橋型重合体は、1又は2以上の重合体(以下、「架橋体の主鎖を構成する重合体」と表記する)の架橋体である。架橋体の主鎖を構成する重合体は、(メタ)アクリル系重合体、オキシアルキレン重合体(ポリエーテル)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリサルファイト、ポリアルキルシロキサン、フッ素含有重合体、ゴム系重合体、及びエポキシ樹脂からなる群から選択される1又は2以上の重合体であってもよい。
【0074】
架橋体の主鎖を構成する重合体は、哺乳動物忌避剤を構成するチアゾリン類化合物と反応しないものであることが好ましい。したがって、架橋体の主鎖を構成する重合体は、チアゾリン類化合物と反応し得る置換基を有しないことが好ましい。例えば、架橋体の主鎖を構成する重合体は、架橋反応に使用する反応性官能基(例えば、加水分解性シリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、水酸基、イソシアネート基、又はオキシラン環)に由来する架橋基及び未反応基以外に置換基を有しないものであってもよい。
【0075】
架橋体の主鎖を構成するポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシ酪酸、ポリブチレンサクシネート、ポリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、モノヒドロキシエチルテレフタレート、及びビスヒドロキシエチルテレフタレートが挙げられる。
【0076】
架橋体の主鎖を構成するポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレンープロピレン共重合体、水添ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びポリシクロオレフィンが挙げられる。
【0077】
架橋体の主鎖を構成するポリサルファイトの具体例としては、ポリ硫化ナトリウム及びエチレンポリサルファイト等が挙げられる。
【0078】
架橋体の主鎖を構成するポリアルキルシロキサンの具体例としては、ポリアルキル(C1~20)シロキサン、ポリフェニルシロキサン、及びアルキルシロキサンとフェニルシロキサンの共縮合物が挙げられる。
【0079】
架橋体の主鎖を構成するフッ素含有重合体の具体例としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、及びECTFE(クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体)が挙げられる。
【0080】
架橋体の主鎖を構成するゴム系重合体は、ジエン系ゴム又は非ジエン系ゴムのいずれであってもよい。ジエン系ゴムの具体例としては、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、及びクロロプレンゴムが挙げられる。非ジエン系ゴムの具体例としては、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、及びアクリルゴムが挙げられる。
【0081】
架橋体の主鎖を構成するエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールエポキシ樹脂、水添ビスフェノールFエポキシ樹脂、及びエポキシクレゾールノボラック樹脂が挙げられる。
【0082】
架橋体の主鎖を構成する、オキシアルキレン重合体及び(メタ)アクリル系重合体は後述の通りである。なお、架橋体の主鎖を構成する重合体は、架橋前の状態では25℃で液体であるものが、取り扱い性の点から好ましい。
【0083】
架橋型重合体では、架橋体の主鎖を構成する重合体が架橋されている。この架橋は、架橋反応の前後において哺乳動物忌避剤を構成するチアゾリン類化合物と反応しないものであることが好ましい。一実施形態において、架橋型重合体は、シロキサン架橋、ラジカル架橋(炭素-炭素結合による架橋、例えば炭素-炭素単結合による架橋)、エポキシ架橋、酸エポキシ架橋、ウレタン架橋(ウレタン結合)、及びエン/チオール反応(エン/チオール架橋反応)による架橋(チオエーテル結合又はスルフィド結合)からなる群から選択される架橋を含んでもよい。
【0084】
一実施形態において、架橋型重合体はシロキサン架橋型有機重合体であってもよい。シロキサン架橋型有機重合体は、硬化物の柔軟性及び耐久性の観点から好ましい。
【0085】
架橋型重合体は、哺乳類忌避剤存在下で速やかに(例えば1週間以内で)硬化が完了し、チアゾリン類化合物の忌避活性を硬化反応中に損なうことなく、前記活性を長期間(例えば1年以上)に亘って持続させるものであることが好ましく、かつ硬化物表面が白化しないものであるが好ましい。そのような架橋型重合体として、以下の(a)~(d)が例示される。
(a)オキシアルキレン重合体のシロキサン架橋体
(b)(メタ)アクリル系重合体のシロキサン架橋体
(c)(メタ)アクリル系重合体のラジカル架橋体
(d)ポリオレフィン重合体のウレタン架橋体
【0086】
(シロキサン架橋型有機重合体)
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる架橋型重合体は、シロキサン架橋型有機重合体であってもよい。シロキサン架橋型有機重合体は、2以上のオキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体がシロキサン結合で架橋されているものである。
【0087】
(オキシアルキレン重合体がシロキサン結合で架橋されているシロキサン架橋型有機重合体)
シロキサン架橋型有機重合体のオキシアルキレン重合体がシロキサン結合で架橋されている場合、シロキサン架橋型有機重合体は少なくとも2種類のオキシアルキレン重合体(以下、「第一のオキシアルキレン重合体」、「第二のオキシアルキレン重合体」と表記する)が架橋されていてもよい。
【0088】
なお、以下の説明において「活性水素基」は、シロキサン架橋型有機重合体を構成するオキシアルキレン重合体におけるシロキサン結合の位置を特定するものとする。
【0089】
第一のオキシアルキレン重合体は、活性水素基を少なくとも2個有するオキシアルキレン重合体であり、第二のオキシアルキレン重合体は、活性水素基を1個有するオキシアルキレン重合体であってもよい。
【0090】
第一のオキシアルキレン重合体の数平均分子量は活性水素基当りで4,000以上が好ましく、4,000より低い場合は加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体の硬化物の伸びが低くなる虞がある。数平均分子量は5,000以上が好ましく7,000以上が特に好ましい。
【0091】
これに対し、第二のオキシアルキレン重合体の分子量は、第一のオキシアルキレン重合体のGPC(ゲルパーミュエーシヨンクロマトグラフィー)ピークトップ分子量の0.6倍以下が好ましく、0.6倍より大きい場合には減粘効果が小さくなるという問題がある。同分子量は、0.5倍以下であることがより好ましく0.4倍以下であることが特に好ましい。一方、第二のオキシアルキレン重合体の分子量が低すぎると活性水素基を加水分解性ケイ素基に変換する際にケイ素化合物が多量に必要になってコストアップにつながるため、第二のオキシアルキレン重合体の分子量は2,000以上が現実的で好ましい。
【0092】
第一及び/又は第二のオキシアルキレン重合体は、ポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基が炭素数1~6のオキシアルキレン基であるのが好ましい。第一及び/又は第二のオキシアルキレン重合体は、ポリオキシアルキレン構造の構成単位がオキシプロピレン基であるオキシアルキレン重合体を用いるのが他の樹脂との相溶性、速硬化性及び透明性の点で特に好ましい。
【0093】
また、第一及び/又は第二のオキシアルキレン重合体は、オキシアルキレン重合体の数平均分子量が好ましくは1,000~30,000、さらに好ましくは5,000~20,000である。
【0094】
また、第二のオキシアルキレン重合体の粘度は、第一と第二のオキシアルキレン重合体が共存する重合体の粘度の3/4以下が好ましく、3/4より大きい場合には減粘効果が小さいと考えられる。
【0095】
また、第二のオキシアルキレン重合体は、第一のオキシアルキレン重合体100重量部に対して300重量部以下共存させることが好ましく300重量部より大きい場合には最終的に得られる加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体の硬化性が著しく悪くなり、場合によっては硬化しない虞がある。200重量部以下がより好ましく、100重量部以下であることが特に好ましい。しかし、あまりに少なすぎると、期待される減粘効果が得られなくなるので、3重量部以上が好ましくより好ましくは5重量部以上、特に好ましくは10重量部以上である。最も好ましくは20重量部以上である。
【0096】
一実施形態では、オキシアルキレン重合体のポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基は炭素数1~6のオキシアルキレン基であり、オキシアルキレン重合体の数平均分子量が1,000~30,000であってもよい。
【0097】
オキシアルキレン重合体の具体例として、MSポリマーS203H(カネカ)、MSポリマーS303H(カネカ)、MSポリマー15A(カネカ)、サイリルSAT030(カネカ)、サイリルSAT200(カネカ)、サイリルSAX400(カネカ)、エクセスターS2410(旭硝子)、エクセスターS2420(旭硝子)、エクセスターS3430(旭硝子)等が例示される。
【0098】
((メタ)アクリル系重合体がシロキサン結合で架橋されているシロキサン架橋型有機重合体)
以下の説明において「架橋性シリル基」又は「加水分解性ケイ素基」は、シロキサン架橋型有機重合体を構成する(メタ)アクリル系重合体におけるシロキサン結合の位置を特定するものとする。
【0099】
シロキサン架橋型有機重合体の(メタ)アクリル系重合体がシロキサン結合で架橋されている場合、シロキサン架橋型有機重合体は、少なくとも1個の架橋性シリル基(又は加水分解性ケイ素基)を末端に有する(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部と、分岐していてもよい炭素数8以上の1価又は2価の脂肪族又は脂環式炭化水素基を有し、第1級アミノ基を少なくとも1個有するジアミン化合物(B)0.1~100質量部と、分岐していてもよい炭素数8以上の1価の脂肪族又は脂環式炭化水素基、並びに、架橋性シリル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有するジアミン化合物(C)0.1~100質量部を含有する。
【0100】
また、シロキサン架橋型有機重合体は、低汚染性をより向上させる観点から、更に、光重合性開始剤(D)を含有してもよい。
【0101】
以下に、シロキサン架橋型有機重合体に含有する(メタ)アクリル系重合体(A)、ジアミン化合物(B)及びジアミン化合物(C)並びに所望により含有する光重合開始剤(D)について詳述する。
【0102】
<(メタ)アクリル系重合体(A)>
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、末端に以下に示す架橋性シリル基を少なくとも1個有し、主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体である。
【0103】
ここで、架橋性シリル基とは、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基、加水分解性ケイ素基、又はシラノール基のように湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒等を使用することにより縮合反応を起こす基のことであり、代表的なものを示すと、例えば、下記一般式(2)で表される基が挙げられる。
【0104】
【0105】
式中、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基又は(R8)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R6又はR7が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0106】
ここで、R8は炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、3個のR8は同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2又は3を、bは0、1又は2をそれぞれ示す。
【0107】
また、t個の下記一般式(3)で表される基におけるbは異なっていてもよい。tは0~19の整数を示す。ただし、a+t×b≧1を満足するものとする。
【0108】
【0109】
上記Yで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基であることが好ましく、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという理由からメトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。
【0110】
架橋性シリル基の中で、下記一般式(4)で表される架橋性シリル基が、入手容易の点から好ましい。下記一般式(4)中、R7、Y、aは上述のR7、Y、aと同義である。
【0111】
【0112】
上記一般式(2)におけるR6及びR7の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;R8がメチル基やフェニル基等である(R8)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基;等が挙げられる。R6、R7、R8としてはメチル基が特に好ましい。
【0113】
一方、上記(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖を形成するアクリル酸アルキルエステル単量体単位としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、第3ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、トルイルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビフェニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、2-アミノエチルアクリレート、トリフルオロメチルメチルアクリレート、2-トリフルオロメチルエチルアクリレート、2-パーフルオロエチルエチルアクリレート、2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチルアクリレート、パーフルオロエチルアクリレート、パーフルオロメチルアクリレート、ジパーフルオロメチルメチルアクリレート、2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチルアクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、2-パーフルオロデシルエチルアクリレート、2-パーフルオロヘキサデシルエチルアクリレート等のアクリル酸エステル又はこれに対応するメタクリル酸エステルが挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0114】
また、上記(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖は、アクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位を含むものであれば特に限定されないが、入手性及び得られる硬化物の耐候性や低温での柔軟性がよいという理由から、これらの単量体単位が50質量%を超えるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましい。
【0115】
更に、上記(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖は、アクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位のほかに、これらと共重合性を有する単量体単位を含んでいてもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシ基を含有する単量体単位;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等のアミド基を含有する単量体単位;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有する単量体単位;ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含有する単量体単位;ポリオキシエチレンアクリレート、ポリオキシエチレンメタクリレート等は、湿分硬化性及び内部硬化性の点で共重合効果を期待することができる。
【0116】
その他に、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位が挙げられる。
【0117】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)の単量体組成は、用途、目的等により適宜選択される。
【0118】
例えば、単量体のアルキルエステル部分のアルキル鎖が長い場合には、ガラス転移温度が低くなり、硬化物の物性は軟らかいゴム状弾性体となる。逆に、短い場合には、ガラス転移温度が高くなり、硬化物の物性も硬くなる。
一方、硬化後の物性は、重合体の分子量にも大きく依存する。
【0119】
したがって、上記(メタ)アクリル系重合体(A)の単量体組成は、分子量を考慮しつつ、所望の粘度、硬化後の物性等に応じて、適宜選択すればよい。
【0120】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)の分子量は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算での数平均分子量が500~100,000であるものが、重合時の難易度、相溶性、取扱い粘度の点で好ましい。中でも、数平均分子量1,000~50,000のものが強度と粘度とのバランスの点で好ましく、2,000~30,000のものが、作業性等取扱いの容易さ、接着性等の点で、より好ましい。
【0121】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、単独で又は2種以上を混合して用いられる。このような(メタ)アクリル系重合体(A)としては、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、カネカ社製のカネカテレケリックポリアクリレート-SA100S、SA110S、SA120S、SA310S等が挙げられる。
【0122】
<ジアミン化合物(B)>
シロキサン架橋型有機重合体に含有されるジアミン化合物(B)は、分岐していてもよい炭素数8以上の1価又は2価の脂肪族又は脂環式炭化水素基を有し、第1級アミノ基を少なくとも1個有する化合物である。
【0123】
ここで、上記ジアミン化合物(B)としては、例えば、後述するジアミン化合物(C)の生成に用いられる下記式(5)で表されるジアミン化合物等や下記式(6)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
R1-NH-R2-NH2 (5)
NH2-R9-NH2 (6)
上記式(5)中、R1は分岐していてもよい炭素数8以上、好ましくは炭素数12~21、より好ましくは14~18の1価の脂肪族又は脂環式炭化水素基を表す。
【0124】
ここで、1価の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、アルケニル基等が例示される。より具体的には、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)等のアルキル基;オレイル基、リルル基、リルニル基等のアルケニル基等が好適に例示される。
【0125】
また、1価の脂環式炭化水素基としては、具体的には、単環式シクロアルキル基や多環脂環式シクロアルキル基が例示される。より具体的には、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル基等の単環式シクロアルキル基;イソボルニル基、トリシクロデシル、テトラシクロドデシル、アダマンチル等の多環脂環式シクロアルキル基;これらの脂環式単価水素基の一部の水素原子を、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、t-ブチル基等の炭素数1~4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上又は1個以上で置換した基;等が例示される。
【0126】
これらのうち、R1としては、ステアリル基、オレイル基であるのが入手し易く、得られる硬化物の耐汚染性が優れるという理由から好ましい。
【0127】
一方、上記式(5)中、R2は酸素原子を含んでいてもよく、分岐していてもよい炭素数2~18、好ましくは2~8、より好ましくは2~4の2価の炭化水素基を表す。
【0128】
ここで、2価の炭化水素基としては、具体的には、アルキレン基等が例示される。より具体的には、エチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基等が好適に例示される。
これらのうち、プロピレン基であることが入手し易いという理由から好ましい。
【0129】
また、上記式(6)中、R9は分岐していてもよい炭素数8以上、好ましくは炭素数8~20、より好ましくは10~14の2価の脂肪族又は脂環式炭化水素基を表す。
【0130】
ここで、2価の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、アルキレン基等が例示される。より具体的には、入手し易く、得られる硬化物の耐汚染性が優れるという理由から、ウンデカン基、ドデカン基等が好適に例示される。
【0131】
上記ジアミン化合物(B)は、例えば、上記式(5)又は(6)で表される化合物のうち、1種類からなるものでもよく、数種類を含有するものであってもよい。
【0132】
本発明においては、上記ジアミン化合物(B)の含有量は、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1~100質量部であり、1~10質量部であるのが好ましく、2~5質量部であるのがより好ましい。
【0133】
上記ジアミン化合物(B)の含有量がこの範囲であると、得られるシロキサン架橋型有機重合体の硬化後の表面タックがなくなる。これは、シロキサン架橋型有機重合体が大気にさらされると、硬化物表面にブリードアウトしてくる上記ジアミン化合物(B)と空気中の炭酸ガスとが反応することで結晶性のカルバミン酸が生成し、このカルバミン酸の結晶が保護膜として働くためであると考えられる。
【0134】
また、本発明においては、このようなジアミン化合物(B)として、硬化牛脂プロピレンジアミン(商品名:アスファゾール#10、日油社製)、牛脂プロピレンジアミン(商品名:アスファゾール#20、日油社製)、オレイルプロピレンジアミン(商品名:アミンDOB、日油社製)等の市販品を用いることができる。
【0135】
<ジアミン化合物(C)>
シロキサン架橋型有機重合体に含有されるジアミン化合物(C)は、分岐していてもよい炭素数8以上の1価の脂肪族又は脂環式炭化水素基、並びに、架橋性シリル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0136】
本発明においては、上記ジアミン化合物(C)の含有量は、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1~100質量部であり、1~10質量部であるのが好ましく、2~5質量部であるのがより好ましい。
【0137】
上記ジアミン化合物(C)の含有量がこの範囲であると、得られるシロキサン架橋型有機重合体は、施工初期から長期にわたって低汚染性を維持することができる。これは、上記ジアミン化合物(B)と同様、シロキサン架橋型有機重合体が大気にさらされると、上記ジアミン化合物(C)は、硬化物表面にブリードアウトして空気中の炭酸ガスと反応することで結晶性のカルバミン酸を生成するとともに、上記ジアミン化合物(C)中の架橋性シリル基が上記(メタ)アクリル系重合体(A)の架橋性シリル基と結合すること、及び/又は、上記ジアミン化合物(C)中の(メタ)アクリロイル基が上記(メタ)アクリル系重合体(A)とラジカル的な反応により結合することにより、結晶性の保護膜が硬化物表面に固定化されることで、経年での表面劣化による剥落や雨水による流出が防止されるためであると考えられる。
【0138】
本発明においては、上記ジアミン化合物(C)は、下記式(5)で表されるジアミン化合物(c11)、エポキシシラン(c12)、及び、(メタ)アクリロイル基含有化合物(c13)の反応生成物(C1)であるのが好ましい。
R1-NH-R2-NH2 (5)
ジアミン化合物(C)については、国際公開WO2010/150361号を参酌して決定してもよい。
【0139】
<光重合開始剤(D)>
シロキサン架橋型有機重合体に所望により含有される光重合開始剤(D)は、光によってモノマーを重合させうるものであれば特に限定されない。
【0140】
光重合開始剤(D)としては、光ラジカル開始剤と光アニオン開始剤が好ましく、特に光ラジカル開始剤が好ましい。
【0141】
光重合開始剤(D)としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、硫黄化合物、アゾ化合物、パーオキサイド化合物、ホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0142】
具体的には、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、4-メトキシアセトフェン、3-ブロモアセトフェノン、4-アリルアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、4-クロロ-4′-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサントーン、3,9-ジクロロキサントーン、3-クロロ-8-ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサントーン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0143】
これらの開始剤は、1種単独で用いてもよく、他の化合物と組み合わせても良い。具体的には、ジエタノールメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンとの組み合わせ、更にこれにジフェニルヨードニウムクロリド等のヨードニウム塩と組み合わせたもの、メチレンブルー等の色素及びアミンと組み合わせたものが挙げられる。
【0144】
なお、上記光重合開始剤を使用する場合、必要により、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、パラターシャリーブチルカテコール等の重合禁止剤類を添加することもできる。
【0145】
これらのうち、得られる硬化物への着色が小さい点から、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE651、チバ・ジャパン社)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(IRGACURE127、チバ・ジャパン社)等がより好ましい。
【0146】
本発明においては、上記光重合開始剤(D)を含有する場合の含有割合は、上記(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.01~10質量部であるのが好ましく、得られる硬化物の耐汚染性が良好な点や経済性の点から、0.1~3質量部であるのがより好ましい。
【0147】
一実施形態では、(メタ)アクリル系重合体は主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位としてブチルアクリレートを含み、数平均分子量が2,000~30,000であってもよい。(メタ)アクリル系重合体の具体例として、分子量が14,000、アクリル成分がブチルアクリレート、シリル基末端(官能基2つ)のXMAP SA120S(カネカ)が例示される。
【0148】
(オキシアルキレン重合体及び(メタ)アクリル系重合体がシロキサン結合で架橋されているシロキサン架橋型有機重合体)
シロキサン架橋型有機重合体における2以上のオキシアルキレン重合体及び(メタ)アクリル系重合体がシロキサン結合で架橋されている場合、オキシアルキレン重合体と(メタ)アクリル系重合体との比率は、両者が相分離しない範囲で混合して使用することができる。オキシアルキレン重合体の比率が大きいと水蒸気透過性が増加し、忌避剤の加水分解が促進されるため、(メタ)アクリル系重合体が多い組成が好ましい。
【0149】
(その他の成分)
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物は、哺乳動物忌避剤、及び架橋型重合体以外の成分を含んでもよい。その他の成分は、忌避剤を不活性化させないか、又は不活性化させにくいもので、かつ忌避剤の徐放性を損なわないか、又は実質的に損なわないものであれば限定しない。その他の成分は、第4態様の記載に準じる。
【0150】
一実施形態において、本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物は、硬化触媒、開始剤、及び架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含んでもよい。硬化触媒の例として、酸触媒(例えばカルボン酸)、アミン系触媒(例えばアミン化合物)、酸/アミン系触媒(例えばカルボン酸とアミン化合物との組合せ)、又は有機金属触媒(例えば有機錫触媒)等が挙げられる。架橋剤の例としては、イソシアネート基含有化合物が挙げられる。硬化触媒、開始剤、及び架橋剤のその他の例は第4態様の記載に準じる。
【0151】
1-3-2.硬化物の物性
(硬度)
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物を構成する硬化物の硬度は、0以上、例えば1以上、5以上、10以上、20以上、30以上、若しくは40以上であり、及び/又は50未満、例えば、40以下、30以下、20以下、10以下、5以下、若しくは1以下であることが好ましい。徐放性哺乳動物忌避組成物の硬度が0以上50未満である場合、徐放性哺乳動物忌避組成物を構成する硬化物の水蒸気透過性が低く、ゴム弾性を有するため、硬化物中に含まれている動物忌避剤と空気中の水分との接触を抑制することができる。それ故、チアゾリン類化合物を有効成分として含む動物忌避剤の活性を損なうことなく、長期間に亘って動物忌避剤を放散することが可能となる。また、ゴム弾性を有する硬化物は適度に架橋密度が低く、脂溶性ガスのバリア性が低いことから硬化物中に包埋された動物忌避剤が逐次的に安定化して空気中に放散することができるという利点がある。一方、タイプEデュロメータ測定による硬度が50以上であると、前記硬化物のゴム弾性がなくなり、脂溶性ガスのバリア性が高くなり、前記硬化物から動物忌避剤が放散し難くなる。
【0152】
硬度の測定方法は、特に制限せず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」の規定に基づいて測定することができる。
【0153】
一実施形態において、本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物のJIS K6253-3:2012に記載のタイプEデュロメータを用いて測定される硬度は、0以上50未満であってもよい。
【0154】
(水蒸気透過度)
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物を構成する硬化物の25℃における水蒸気透過度は0.1(g/m2・24時間)以上、例えば1(g/m2・24時間)以上、5(g/m2・24時間)以上、10(g/m2・24時間)以上、30(g/m2・24時間)以上、50(g/m2・24時間)以上、70(g/m2・24時間)以上、若しくは100(g/m2・24時間)以上、及び/又は100(g/m2・24時間)以下、例えば70(g/m2・24時間)以下、50(g/m2・24時間)以下、30(g/m2・24時間)以下、10(g/m2・24時間)以下、5(g/m2・24時間)以下、1(g/m2・24時間)以下、若しくは0.1(g/m2・24時間)以下であることが好ましい。
【0155】
水蒸気透過度が0.1(g/m2・24時間)以上100(g/m2・24時間)以下であると、前記動物忌避組成物を構成する硬化物の水蒸気透過性が低いため、硬化物中に含まれている動物忌避剤と空気中の水分との接触を抑制でき、チアゾリン類化合物を有効成分として含む動物忌避剤の活性を損なうことなく、長期間に亘って動物忌避剤を放散することが可能となる。一方、水蒸気透過度が100(g/m2・24時間)を超えると、動物忌避組成物の硬化物内に空気中の水分が透過してしまい、前記硬化物中に含まれている動物忌避剤と空気中の水分とが接触することにより、チアゾリン類化合物を有効成分として含む動物忌避剤が加水分解してしまうことがある。
【0156】
水蒸気透過度の測定方法は、特に制限せず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、25℃における水蒸気透過度は、JIS Z0208:1976(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))に基づいて測定することができる。
【0157】
一実施形態において、本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物の25℃での水蒸気透過度が0.1(g/m2・24時間)以上100(g/m2・24時間)以下であってもよい。
【0158】
(破断強度及び破断伸び)
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物を構成する硬化物の3号ダンベルの破断強度は0.01MPa以上、0.1MPa以上、0.2MPa以上、0.5MPa以上、1MPa以上、2MPa以上、3MPa以上、若しくは5MPa以上、及び/又は5MPa以下、3MPa以下、2MPa以下、1MPa以下、0.5MPa以下、0.2MPa以下、0.1MPa以下、若しくは0.01MPa以下であってもよい。
【0159】
また、本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物の3号ダンベルの破断伸びは50%以上、80%以上、100%以上、200%以上、300%以上、若しくは500%以上、及び/又は500%以下、300%以下、200%以下、100%以下、80%以下、若しくは50%以下であってもよい。
【0160】
動物忌避組成物の硬化物の破断強度が0.01MPa以上であり、かつ破断伸びが50%以上である場合、硬化物の水蒸気透過性が低く、ゴム弾性を有するため、硬化物中に含まれている動物忌避剤と空気中の水分との接触を抑制することができる。それ故、チアゾリン類化合物を有効成分として含む動物忌避剤の活性を損なうことなく、長期間に亘って動物忌避剤を放散することが可能となる。また、ゴム弾性を有する硬化物は適度に架橋密度が低く、脂溶性ガスのバリア性が低いことから硬化物中に包埋された動物忌避剤が逐次的に安定化して空気中に放散することができるという利点がある。一方、3号ダンベルの破断強度が0.01MPa未満であり、かつ破断伸びが50%未満である場合、硬化物のゴム弾性がなくなり、脂溶性ガスのバリア性が高くなるため、硬化物から動物忌避剤が放散し難くなる。
【0161】
破断強度及び破断伸びの測定方法は、特に制限せず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」の規定に基づき、3号ダンベル形状試験片を用いて測定することができる。
【0162】
一実施形態において、徐放性哺乳動物忌避組成物のJIS K6251:2017に記載の方法により3号ダンベルを用いて測定される破断強度は0.01MPa以上であり、かつ破断伸びが50%以上であってもよい。
【0163】
(損失正接tanδ)
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物を構成する硬化物の動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失正接tanδは1.5以上、1.7以上、2.0以上、若しくは2.2以上、及び/又は2.2以下、2.0以下、1.7以下、若しくは1.5以下であってもよい。
【0164】
ガラス転移点における損失正接tanδが1.5以上であると、前記動物忌避組成物の硬化物の水蒸気透過性が低く、ゴム弾性を有するため、硬化物中に含まれている動物忌避剤と空気中の水分との接触を抑制することができる。それ故、チアゾリン類化合物を有効成分として含む動物忌避剤の活性を損なうことなく、長期間に亘って動物忌避剤を放散することが可能となる。また、ゴム弾性を有する硬化物は適度に架橋密度が低く、脂溶性ガスのバリア性が低いことから硬化物中に包埋された動物忌避剤が逐次的に安定化して空気中に放散することができるという利点がある。一方、ガラス転移点における損失正接tanδが1.5未満であると、前記硬化物のゴム弾性がなくなり、脂溶性ガスのバリア性が高くなり、前記硬化物から動物忌避剤が放散し難くなる。
【0165】
動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失正接tanδは、試料片をヒーターにより加熱し、引張りモードにより荷重を試料に応力を与え、変位検出部により、試料に与えた応力と検出した歪から、弾性率や粘性率などの各種の粘弾性量を算出する。温度毎の測定において得られる損失弾性率E”がピークを発生する温度がガラス転移温度となり、その温度において算出される損失弾性率E”と貯蔵弾性率E’の比率の正接を取った値として得られる。
【0166】
一実施形態において、徐放性哺乳動物忌避組成物の動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失弾性率E”の貯蔵弾性率E’に対する比率として算出される損失正接(tanδ)は1.5以上であってもよい。
【0167】
1-3-3.剤形
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物の剤形は、哺乳動物忌避剤を不活性化若しくは変性させないか、又は不活性化若しくは変性させにくいものであって、かつ本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物の徐放性を損なわないか、又は実質的に損なわないものであれば限定はしない。例えば、塊状、板状、線状、それらの組み合わせ等が挙げられる。
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物は、後述する容器に包含させて使用してもよく、又は容器に包含させずに対象とする空間に配置又は塗布して使用してもよい。
【0168】
1-3-4.使用方法
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物の使用方法は、第3態様の記載に準じる。
【0169】
1-4.効果
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物によれば、チアゾリン類化合物の活性を損なわず、長期に亘ってチアゾリン類化合物を放散することができる。
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる架橋型重合体は、忌避剤と混合して硬化させた場合に、忌避剤を不活性化しないか又は不活性化しにくいものであり、忌避剤の長期的な徐放を可能にする。
【0170】
2.哺乳動物忌避装置
2-1.概要
本発明の第2の態様は、哺乳動物忌避装置である。本発明の哺乳動物忌避装置は、第1態様の徐放性哺乳動物忌避組成物を容器の内部に包含する。本発明の哺乳動物忌避装置によれば、忌避剤を徐放し、長期間に亘って動物を忌避させることができる。
【0171】
2-2.構成
本発明の哺乳動物忌避装置は、徐放性哺乳動物忌避組成物、及びそれを内部に包含する容器を含む。徐放性哺乳動物忌避組成物の構成は第1態様の記載に準じる。それ故、以下ではそれ以外の構成について説明する。
【0172】
2-2-1.容器
本明細書における「容器」とは、内部に収容空間を有する器をいう。本態様の哺乳動物忌避装置において、容器は第1態様に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物を内包することを特徴とする。容器の形状は、特に限定しない。多面体形状、円柱形状、角錐形状、円錐形状、球体形状、楕円球体形状、紡錘形状、不定形状、又はそれらの組み合わせ等が例示される。
【0173】
徐放性哺乳動物忌避組成物を内部に包含する容器は、開放部を有してもよい。例えば、容器は外界に接する1又は2以上の開放部を有してもよい。容器が開放部を有する場合、忌避剤は主として開放部から外界に放散され得る。忌避剤の放散速度を考慮して開放部の形状やサイズを適宜選択することができる。
開放部は、孔又は間隙であってもよい。
【0174】
容器は、開放部を有しない、又は実質的に開放部を有しないものであってもよい。容器が開放部を有しない、又は実質的に開放部を有しない場合、忌避剤は容器の側面から外界に放散され得る。この場合、忌避剤の放散速度を考慮して容器の材質や厚みを適宜選択することができる。また、容器が実質的に開放部を有しない場合であっても、容器と容器の蓋部の間の微小な間隙から忌避剤を放散させることも可能である。
【0175】
容器は、設置場所等の使用条件に応じて、例えば置き型又は吊り下げ型等の容器とすることができる。
【0176】
容器の容積は、例えば、0.1mL以上、0.5mL以上、1mL以上、5mL以上、10mL以上、15mL以上、20mL以上、30mL以上、50mL以上、100mL以上、200mL以上、300mL以上、400mL以上、500mL以上、1L以上、2L以上、3L以上、4L以上、5L以上、若しくは10L以上、及び/又は10L以下、5L以下、4L以下、3L以下、2L以下、1L以下、500mL以下、400mL以下、300mL以下、200mL以下、100mL以下、50mL以下、30mL以下、20mL以下、15mL以下、10mL以下、5mL以下、1mL以下、0.5mL以下、若しくは0.1mL以下であってもよい。
【0177】
容器の材質は、全体又は一部が高分子化合物から構成されていてもよい。高分子化合物は、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリ塩化ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリビニル系ポリマー、ビニリデン系ポリマー、エポキシ樹脂、及びポリスチレン系ポリマーからなる群から選択される1又は2以上のポリマーであってもよいが、これらに限定されない。
【0178】
ポリオレフィン系ポリマーは、アルケンをモノマーとして合成される高分子化合物である。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-スチレン共重合体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
2-3.効果
本発明の哺乳動物忌避装置によれば、忌避剤を長期徐放し、長期間に亘って動物を忌避させることができる。
【0180】
3.哺乳動物の忌避方法
3-1.概要
本発明の第3の態様は、哺乳動物の忌避方法である。本態様の忌避方法によれば、第1態様に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物を閉鎖空間内又は開放空間中に設置し、その空間内の所定の範囲内に徐放性哺乳動物忌避組成物に含まれる忌避剤を徐放することで、長期間に亘って動物を忌避させ、その空間内への動物の侵入を防止することができる。
【0181】
3-2.方法
本発明の哺乳動物の忌避方法は、必須工程として、配置工程を含む。
「配置工程」とは、第1態様に記載の徐放性哺乳動物忌避組成物、又は第2態様に記載の哺乳動物忌避装置を、哺乳動物を忌避させる空間に配置する工程である。
【0182】
本明細書において、「動物を忌避させる空間」とは、忌避させる動物の生息空間又は侵入するおそれのある空間を意味し、例えば、田畑、果樹園、森林、家畜の飼育場、道路、高速道路、線路、空港、ゴルフ場、塵埃集積場、公園、庭、庭園、花壇、駐車場、建築物、家屋、工場、倉庫、店舗、商業施設、レストラン、厨房、洗面所、ベランダ、物置、床下、屋根裏、電柱、電線、通信ケーブル、金網、フェンス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
忌避組成物又は忌避装置は、屋内又は屋外のいずれに設置してもよい。
忌避組成物又は忌避装置は、限定しないが、例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、半日以上、1日以上、2日以上、3日以上、1週間以上、2週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上、2年以上、3年以上、5年以上、若しくは10年以上、及び/又は10年以下、5年以下、3年以下、2年以下、1年以下、6か月以下、5か月以下、4か月以下、3か月以下、2か月以下、1か月以下、2週間以下、1週間以下、3日以下、2日以下、1日以下、半日以下、6時間以下、3時間以下、2時間以下、若しくは1時間以下の期間、使用することができる。
【0184】
忌避組成物又は忌避装置によって忌避の対象となる動物は、特に限定しない。例えば、農作物、森林、家畜又は人家に被害をもたらす有害動物が対象となる。有害動物としては、例えば、ネズミ、モグラ、ウサギ、イタチ、シカ、イノシシ、サル、ネコ、クマ等の哺乳動物、ハト、カラス等の鳥類、ヘビ等の爬虫類、アリ、ムカデ、バッタ、ゴキブリ等の昆虫類が挙げられる。
【0185】
本発明の徐放性哺乳動物忌避組成物は、忌避剤が有効な濃度で放散されるように使用することができる。本明細書において「有効な濃度」とは、忌避剤が対象とする動物を忌避させることが可能となる、匂い分子の空気中の濃度である。この有効な濃度は、使用する忌避剤の種類及び忌避させる対象となる動物の組み合わせによって異なるが、例えば、0.01ppm以上、0.1ppm以上、0.2ppm以上、0.3ppm以上、0.4ppm以上、0.5ppm以上、1ppm以上、5ppm以上、若しくは10ppm以上、及び/又は10ppm以下、5ppm以下、1ppm以下、0.5ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下、0.2ppm以下、0.1ppm以下、若しくは0.01ppm以下であり得る。例えば、5ppm以上10ppm以下である。匂い分子の空気中の濃度は、使用条件下で直接測定することもできるが、測定が困難な屋外等の場合には密閉空間中で測定された値を参照値として使用することもできる。
【0186】
上記の他、忌避剤の含有量、忌避組成物又は忌避装置の容量、設置位置、及び設置密度等は、対象とする動物の種類、剤形、屋外や屋内等の使用条件、及び/又は気温や湿度等の気象条件によって適宜決定することが出来る。
【0187】
忌避組成物又は忌避装置の設置密度は、例えば、500m2辺り1つ以上、100m2辺り1つ以上、50m2辺り1つ以上、40m2辺り1つ以上、30m2辺り1つ以上、20m2辺り1つ以上、若しくは10m2辺り1つ以上、及び/又は10m2辺り1つ以下、20m2辺り1つ以下、30m2辺り1つ以下、40m2辺り1つ以下、50m2辺り1つ以下、100m2辺り1つ以下、若しくは500m2辺り1つ以下である。
【0188】
設置位置は、限定しない。屋外であれば、風向きを考慮して、動物を忌避させる空間の風上に設置してもよい。また、地中、地面、又は地面よりも高い位置に設置してもよい。
【0189】
本態様の忌避方法によれば、例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、半日以上、1日以上、2日以上、3日以上、1週間以上、2週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上、2年以上、3年以上、5年以上、又は10年以上に亘って、哺乳動物を忌避させることができる。
【0190】
4.徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法
4-1.概要
本発明の第4の態様は、徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法である。本態様の徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法によれば、忌避剤の活性を損なわず、長期間に亘って忌避剤を放散することが可能な徐放性哺乳動物忌避組成物を製造することができる。また、本態様の徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法によって製造される徐放性哺乳動物忌避組成物もまた提供される。
【0191】
4-2.方法
本態様の製造方法は、必須工程として混合工程及び架橋工程を含む。
「混合工程」は、哺乳類忌避剤、少なくとも1つの反応性官能基を有する重合体、並びに硬化触媒、開始剤、及び架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを混合する工程である。本工程で得られる混合物の状態は限定しないが、液状又は粉状であってもよく、好ましくは液状である。
【0192】
哺乳動物忌避剤は、第1態様に記載の哺乳動物忌避剤のいずれであってもよい。例えば、以下の式(I)~(VI):
【化10】
(式中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C
1-6アルキル基又はC
1-6アルキルチオ基を示す。)
で示される化合物から選択される1又は2以上の化合物又はその塩であってもよい。
【0193】
一実施形態において、反応性官能基は、加水分解性シリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、水酸基、イソシアネート基、及びオキシラン環からなる群から選択することができる。
【0194】
一実施形態において、反応性官能基を有する重合体は、(メタ)アクリル系重合体、オキシアルキレン重合体(ポリエーテル)、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリサルファイト、ポリアルキルシロキサン、フッ素含有重合体、ゴム系重合体、及びエポキシ樹脂からなる群から選択することができる。反応性官能基を有する重合体は、哺乳動物忌避剤を構成するチアゾリン類化合物と反応しないものであることが好ましい。例えば、反応性官能基を有する重合体は、架橋反応に用いる反応性官能基(例えば、加水分解性シリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、水酸基、イソシアネート基、及びオキシラン環)以外に置換基を有しない重合体であってもよい。
【0195】
一実施形態において、反応性官能基を有する重合体は、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体であってもよい。
【0196】
硬化触媒には、限定しないが、例えば酸触媒、アミン系触媒、酸/アミン系触媒、又は有機金属触媒等が挙げられる。
【0197】
酸触媒は、限定しないが、例えば無機酸(例えば塩酸又は硫酸)又は有機酸(例えばスルホン酸又はカルボン酸)であってもよい。カルボン酸には、バーサチック酸(ネオデカン酸)、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクチル酸、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、及びステアリン酸等が例示される。
【0198】
アミン系触媒は、アミン化合物であれば限定せず、第一級アミン、第二級アミン、又は第三級アミンのいずれであってもよく、脂肪族アミン又は芳香族アミンのいずれであってもよく、またモノアミン又はポリアミンであってもよい。例えば、アミン類、ポリアミン類、又はアミノアルコール類であってもよい。アミン系触媒の具体例としては、3-ジエチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジシアンアミド、トリエチルアミン、ヘキシルアミン、ラウリルアミン、グアニジン、モリフォリン、及びジアザビシクロウンデセン等が例示される。
【0199】
酸/アミン系触媒は、酸触媒とアミン系触媒とを組み合わせた触媒であれば限定せず、例えば、上記の酸触媒とアミン系触媒の任意の組合せを用いることができる。酸/アミン系触媒の例としては、バーサチック酸と3-ジエチルアミノプロピルアミンとの組合せ、バーサチック酸とジアザビシクロウンデセン等との組み合わせを挙げることができる。
【0200】
有機金属触媒は、限定しないが、例えば有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、又は有機パラジウム化合物であってもよい。有機金属触媒の具体例としては、モノブチル錫、ジブチル錫、ジオクチル錫、ジブチル錫とシリケートの縮合物、及びジオクチル錫とシリケートの縮合物等が例示される。
【0201】
開始剤としては、限定しないが、例えば光重合開始剤及び熱重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤の例としては、光ラジカル重合開始剤(例えばベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、又はアシルホスフィン系の光ラジカル重合開始剤)、光酸発生剤、及び光塩基発生剤が挙げられる。熱重合開始剤の例としては、熱ラジカル重合開始剤(例えばアゾ化合物や過酸化物)、及び熱カチオン重合開始剤が挙げられる。開始剤の具体例としては、α-ヒドロキシアセトフェノン及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)等が例示される。
【0202】
架橋剤は、架橋される重合体に応じて適宜選択することができる。限定しないが、例えばラジカル架橋剤、エポキシ架橋剤、チオール化合物、及びイソシアネート基含有化合物が挙げられる。
【0203】
イソシアネート基含有化合物は、イソシアネート基を分子内に有する化合物であればよい。より具体的には、1分子中にイソシアネート基を1個、2個、3個、又は4個以上含むイソシアネート基含有化合物であってもよい。イソシアネート基含有化合物は、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、又は脂環族ポリイソシアネート(例えばイソシアヌレート型ポリイソシアネート)であってもよい。イソシアネート基含有化合物の具体例としては、ヌレート型イソシアネート化合物、ビレット型イソシアネート化合物が例示される。
【0204】
混合工程で混合される重合体、及び硬化触媒、開始剤、又は架橋剤の組合せは、次の架橋工程において哺乳類忌避剤存在下で速やかに(例えば1週間以内で)硬化が完了し、架橋工程後に得られる硬化物においてチアゾリン類化合物の忌避活性が長期間(例えば1年以上)に亘って持続するものであることが好ましく、かつ架橋工程後に得られる硬化物の表面が白化しないものであるが好ましい。そのような重合体、及び硬化触媒、開始剤、又は架橋剤の組合せとして以下の(a)~(g)が例示される。
(a)反応性官能基(例えば加水分解性シリル基)を有するオキシアルキレン重合体、及び有機金属触媒(例えば有機錫触媒)
(b)反応性官能基(例えば加水分解性シリル基)を有するオキシアルキレン重合体、及びアミン系触媒(例えばアミン化合物)
(c)反応性官能基(例えば加水分解性シリル基)を有する(メタ)アクリル系重合体、及び有機金属触媒(例えば有機錫触媒)
(d)反応性官能基(例えば加水分解性シリル基)を有する(メタ)アクリル系重合体、及びアミン系触媒(例えばアミン化合物)
(e)反応性官能基(例えば加水分解性シリル基)を有する(メタ)アクリル系重合体、及び酸/アミン併用系触媒(例えばカルボン酸/アミン化合物)
(f)反応性官能基(例えば(メタ)アクリロイル基)を有する(メタ)アクリル系重合体、及びラジカル架橋剤
(g)反応性官能基(例えば水酸基)を有するポリオレフィン重合体、及びイソシアネート基含有化合物
【0205】
「架橋工程」は混合工程で得られた混合物を架橋する工程である。架橋工程における架橋方法は限定しない。例えば、温度変化、加熱(熱硬化)、乾燥、脱水、紫外線照射(UV硬化)、γ線照射、及び/又は電子線照射を用いることができる。本工程により、シロキサン架橋、ラジカル架橋、エポキシ架橋、酸エポキシ架橋、ウレタン架橋、又はエン/チオール反応による架橋等の架橋によって重合体が架橋される。
【0206】
架橋工程は、混合工程と同時に行ってもよく(この場合、特に「混合架橋工程」という)、又は混合工程の後に行ってもよい。特に混合工程で硬化触媒、開始剤、又は架橋剤が混合される場合には、混合と共に架橋反応を進行させてもよい。
【0207】
混合工程及び/又は架橋工程は、忌避剤が揮発、不活性化、若しくは変性しない、又は揮発、不活性化、若しくは変性しにくい温度範囲で行うことが好ましい。例えば、200℃以下、150℃以下、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、又は35℃以下の温度条件下で混合及び/又は架橋を行うことができる。例えば、常温で混合及び/又は架橋を行ってもよい。
【0208】
(オキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体のシロキサン架橋体を含む徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法)
一実施形態において、本態様の製造方法は、オキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体のシロキサン架橋体を含む徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法であってもよい。
本実施形態において、オキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体のシロキサン架橋体を含む徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法は、加水分解性ケイ素基(加水分解性シリル基)を有するオキシアルキレン重合体を用いる場合と、加水分解性ケイ素基(加水分解性シリル基)を有する(メタ)アクリル系重合体を用いる場合とで、工程が異なる。
【0209】
(加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を用いる、オキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体のシロキサン架橋体を含む徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法)
加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を用いる場合、本実施形態の製造方法は、必須工程として混合工程及び架橋工程を含む。本実施形態において混合工程は、哺乳類忌避剤、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体、及び硬化触媒を混合する工程であってもよい。
【0210】
本実施形態において、哺乳動物忌避剤、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体、及び硬化触媒を混合する順序は、樹脂の硬化が完了する前に忌避剤が混合される限り、いかなる順序であってもよい。例えば、忌避剤と加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を混合した後に硬化触媒を混合してもよく、忌避剤と硬化触媒を混合した後に加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体を混合してもよく、又は哺乳動物忌避剤、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体、及び硬化触媒を同時に混合してもよい。
【0211】
第一のオキシアルキレン重合体は、活性水素基を少なくとも2個有するオキシアルキレン重合体であり、第二のオキシアルキレン重合体は、活性水素基を1個有するオキシアルキレン重合体であってもよい。
【0212】
第一のオキシアルキレン重合体の数平均分子量は活性水素基当りで4,000以上が好ましく、4,000より低い場合は加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体の硬化物の伸びが低くなる虞がある。数平均分子量は5,000以上が好ましく7,000以上が特に好ましい。
【0213】
これに対し、第二のオキシアルキレン重合体の分子量は、第一のオキシアルキレン重合体のGPC(ゲルパーミュエーシヨンクロマトグラフィー)ピークトップ分子量の0.6倍以下が好ましく、0.6倍より大きい場合には減粘効果が小さくなる虞がある。同分子量は、0.5倍以下であることがより好ましく0.4倍以下であることが特に好ましい。一方、第二のオキシアルキレン重合体の分子量が低すぎると活性水素基を加水分解性ケイ素基に変換する際にケイ素化合物が多量に必要になってコストアップにつながるため、第二のオキシアルキレン重合体の分子量は2,000以上が現実的で好ましい。
【0214】
第一及び/又は第二のオキシアルキレン重合体は、ポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基が炭素数1~6のオキシアルキレン基であるのが好ましい。第一及び/又は第二のオキシアルキレン重合体は、ポリオキシアルキレン構造の構成単位がオキシプロピレン基であるオキシアルキレン重合体を用いるのが他の樹脂との相溶性、速硬化性及び透明性の点で特に好ましい。
【0215】
また、第一及び/又は第二のオキシアルキレン重合体は、オキシアルキレン重合体の数平均分子量が好ましくは1,000~30,000、さらに好ましくは5,000~20,000である。
【0216】
また、第二のオキシアルキレン重合体の粘度は、第一と第二のオキシアルキレン重合体が共存する重合体の粘度の3/4以下が好ましく、3/4より大きい場合には減粘効果が小さいと考えられる。
【0217】
また、第二のオキシアルキレン重合体は、第一のオキシアルキレン重合体100重量部に対して300重量部以下共存させることが好ましく300重量部より大きい場合には最終的に得られる加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体の硬化性が著しく悪くなり、場合によっては硬化しない虞がある。200重量部以下がより好ましく、100重量部以下であることが特に好ましい。しかし、あまりに少なすぎると、期待される減粘効果が得られなくなるので、3重量部以上が好ましくより好ましくは5重量部以上、特に好ましくは10重量部以上である。最も好ましくは20重量部以上である。
【0218】
第一及び/又は第二のオキシアルキレン重合体は、アルカリ金属触媒、金属ポルフィリン触媒(特開昭61-197631等の公報参照)、複合金属シアン化物錯体触媒(USP3278457、USP3278458、USP3278459、USP3427256、USP4055188、USP4721818等の各公報参照)、P=N結合を有する化合物触媒(特開平11-106500、特開平10-36499、特開平11-302371等の各公報参照)等の触媒存在下、少なくとも1個の水酸基を有するヒドロキシ化合物等のイニシエータにアルキレンオキシド等を重合させて製造することができる。これら触媒の中でも高分子量で着色のないオキシアルキレン重合体が得られる複合金属シアン化物錯体触媒やP=N結合を有する化合物触媒を用いることが好ましく、特に複合金属シアン化物錯体触媒が好ましい。
【0219】
複合金属シアン化物錯体触媒としては、Zn[Fe(CN)6]2、Zn3[Co(CN)6]2、Fe[Fe(CN)6]、Fe[Co(CN)6]等が挙げられる。より好ましくはZn3[Co(CN)6]2(すなわち、亜鉛へキサシアノコバルテート錯体)を触媒骨格として、有機配位子が配位した構造を有するものが好ましい。
【0220】
このような触媒は、例えば水中でハロゲン化金属塩とアルカリ金属シアノメタレートとを反応させて得られる反応生成物に有機配位子を配位させて製造できる。ハロゲン化金属塩の金属としては、Zn(II)又はFe(II)が好ましく、Zn(II)が特に好ましい。ハロゲン化金属塩としては特に塩化亜鉛が好ましく、アルカリ金属シアノメタレートのシアノメタレートを構成する金属としては、Co(III)又はFe(III)が好ましく、Co(III)が特に好ましい。アルカリ金属シアノメタレートとしては、カリウムへキサシアノコバルテートが好ましい。有機配位子としては、アルコール及び/又はエーテルが好ましい。tert-ブチルアルコール、下記式7で表される化合物、エタノール、sec-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール、並びに、エチレングリコールジメチルエーテル(以下、グライム)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、ジオキサン、及びMnが150~5000のポリエーテル等のエーテルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。なかでもtert-ブチルアルコール、下記式7で表される化合物、及びグライムから選ばれる1種又は2種以上が特に好ましい。
R4-C(CH3)2(OR5)nOH (7)
(式中、R4はメチル基又はエチル基、R5はエチレン基又は該エチレン基の水素原子がメチル基又はエチル基で置換された基、nは1、2又は3である。)
【0221】
式7で表される化合物としては、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルテル、エチレングリコールモノ-tert-ペンチルエーテル、プロピレングリコールモノ-tert-ペンチルエーテルが好ましく、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテルが特に好ましい。
【0222】
複合金属シアン化物錯体触媒は、ハロゲン化金属塩とアルカリ金属シアノメタレートとを反応させて得られる触媒骨格を、有機配位子中で撹拌し熟成させ、ついで公知の方法により、濾別、洗浄、乾燥させることで製造できる。
【0223】
イニシエータとしては、活性水素含有化合物が使用でき、下記の化合物が挙げられる:メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、へキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等の一価の1級、2級、3級アルコール。アリルアルコール、メタリルアルコール、プロぺニルアルコール等の1価の不飽和基含有アルコール類。及び、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、1,4-シクロへキサンジオール等をモノアリルエーテル化した前記のモノアリルエーテル化体やモノビニルエーテル化した前記のモノビニルエーテル化体等の1価の不飽和基含有アルコール類、及びモノアルキルエーテル化した前記のモノアルキルエーテル化体等の1価の飽和アルコール類。エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジォール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、1,4-シクロへキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グルコース、ソルビトール、シュクロース、メチルグリコシド等の多価アルコール類。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類。ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、ハイドロキノン等のフェノール化合物。エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、へキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン類、又は前記既出のイニシエータにアルキレンオキシドを反応させて得られる目的物である加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体より低分子量のオキシアルキレン重合体。
【0224】
上記イニシエータは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。但し、第一のオキシアルキレン重合体を重合するために使用する第一のイニシエータは、少なくとも2個の活性水素基を主に含有する化合物であることが好ましい。第一のオキシアルキレン重合体は加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体へ変換後、湿分等により硬化し、ゴム状弾性体となる成分であり、その目的から少なくとも2個の活性水素基を主に含有する化合物であることが好ましい。
【0225】
一方、第二のオキシアルキレン重合体を重合するために使用する第二のイニシエータは、1個の活性水素基を主に含有する化合物であることが好ましい。第二のオキシアルキレン重合体は、オキシアルキレン重合体の粘度を低下させる目的で共存させるため、分子量が比較的小さい。このため2個以上の活性水素基を含有する化合物を多く含むと、第一と第二のオキシアルキレン重合体が共存したオキシアルキレン重合体からなる加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体硬化物の柔軟性が低下し、硬く脆い硬化物となってしまう。1個の活性水素基を含有する化合物を第二のイニシエータとして重合したオキシアルキレン重合体を用いる場合には、加水分解性ケイ素基導入後に湿分等により硬化した後も加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体硬化物の柔軟性を低下させないため、第二のオキシアルキレン重合体を重合するために使用する第二のイニシエータは、1個の活性水素基を主に含有する化合物であることが好ましく式8で表されるイニシエータを用いることが特に好ましい。
R1-OH (8)
(式中、R1は不飽和基を有しない、炭素、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される1種以上を構成原子として含有する1価の有機基である。)
【0226】
また、第二のオキシアルキレン重合体のイニシエータ量は、第一のオキシアルキレン重合体のイニシエータ量に対してモル比で5以下であり、5より多い場合は最終的に得られる加水分解性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体の硬化性が著しく悪くなり、場合によっては硬化しない虞がある。そのモル比は3以下であることが好ましく、2以下であることが特に好ましい。
【0227】
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、エピブ口モヒドリン、メチルダリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルダリシジルエーテル、2-エチルへキシレングリシジルエーテル、トリフルオロプロピレンオキシド等が挙げられる。これらは、単独使用でも2種以上の併用でもよい。これらのうち、プロピレンオキシドが好ましい。
【0228】
少なくとも2個の活性水素基を有する第一のオキシアルキレン重合体と1個の活性水素基を有する第二のオキシアルキレン重合体が共存するオキシアルキレン重合体を製造する方法としては、第一のオキシアルキレン重合体を重合した後、第二のオキシアルキレン重合体のイニシエータを添加する方法(後添加法)と、第一と第二のオキシアルキレン重合体のイニシエータを共存させて同時に重合する方法(共開始法)があり、どちらの方法で重合しても良い。また、別々に重合して混合する方法であっても良い。
【0229】
後添加法では、第二のオキシアルキレン重合体のイニシエータを添加する時期とアルキレンオキシドの供給量を変化させることで第一と第二のオキシアルキレン重合体のGPCピークトップ分子量とその比を任意に決めることができ、効果的にオキシアルキレン重合体の粘度を低減させる方法として適用することができる。
【0230】
第二のオキシアルキレン重合体のイニシエータは、第一のオキシアルキレン重合体を目標とする分子量付近まで重合した後に添加するのが良い。複合金属シアン化物錯体を用いたアルキレンオキシドの重合ではGPCピークトップ分子量の異なるイニシエータが共存する場合、より低分子量であるイニシエータの重合が優先して進行し、より高分子量であるイニシエータの重合がほとんど進行しない特徴を有する。この傾向は分子量の異なるイニシエータから得られるオキシアルキレン重合体のGPCピークトップ分子量比が、該イニシエータの活性水素基数比付近になるまで続き、その後その比を維持するように各々のイニシエータの分子量が増大する。従って、第一と第二のオキシアルキレン重合体のGPCピークトップ分子量比を任意に決める為には、第一のオキシアルキレン重合体を目標とする分子量付近まで重合した後に第二のオキシアルキレン重合体のイニシエータ(すなわち、1個の活性水素基を有するイニシエータ)を添加するのが良い。
【0231】
第二のオキシアルキレン重合体の分子量は、第二のオキシアルキレン重合体のイニシエータ添加後に供給するアルキレンオキシド量で任意に決めることができる。そのアルキレンオキシド供給量は、第一のオキシアルキレン重合体を重合する際に供給された第一のイニシエータのモル量当たりのアルキレンオキシド供給量の0.6倍以下であり、0.6倍より大きい場合には第二のオキシアルキレン重合体の分子量が大きくなるため好ましくない。同アルキレンオキシド供給量は、0.5倍以下であることが好ましく、0.4倍以下であることが特に好ましい。
【0232】
一方、共開始法では、第一と第二のオキシアルキレン重合体のGPCピークトップ分子量比を任意に決めることができないが、第二のオキシアルキレン重合体を第一のオキシアルキレン重合体と共に重合できるために分子量、その比ともに大きい第二のオキシアルキレン重合体が共存するオキシアルキレン重合体を簡便に得ることができる。このようなオキシアルキレン重合体は分子量が大きい為に粘度低減効果は小さい、分子末端数が少なくなる為に導入する加水分解性ケイ素基量が少なくなりコスト的に有利であり、加水分解性ケイ素基導入後に湿分等により硬化した硬化物の柔軟性も適度に付与できる方法として適用することができる。
【0233】
加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体は、活性水素基を含有したオキシアルキレン重合体に適当な方法で加水分解性ケイ素基を導入することによって得られる。
【0234】
本発明における加水分解性ケイ素基としては、湿分で加水分解及び架橋反応が起こるケイ素基であればよく、一般に知られている加水分解性ケイ素基が使用できる。
【0235】
例えば、式9で表されるケイ素基がよい。
-SiXaR3-a (9)
(式中Rは炭素数1~20の置換又は非置換の1価の有機基であり、好ましくは炭素数8以下のアルキル基、フェニル基やフルオロアルキル基である。特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、へキシル基、シクロへキシル基、フェニル基等である。)
Xは加水分解性基であり、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミド基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基等がある。
【0236】
これらのうち炭素原子を有する加水分解性基の炭素数は6以下が好ましく、特に4以下が好ましい。好ましい加水分解性基は炭素数4以下の低級アルコキシ基、特にメトキシ基やエトキシ基、プロポキシ基、プロぺニルオキシ基等が例示できる。aは1、2又は3であり、特に2又は3であることが好ましい。
【0237】
式9で表されるケイ素基のオキシアルキレン重合体への導入方法は特には限定されないが、例えば以下の方法(A)~(D)で導入することができる。なお、下記(A)や(D)の方法で加水分解性ケイ素基を導入する場合、不飽和基含有オキシアルキレン重合体に変換して使用する。但し、この場合1個の活性水素基を有する第二のオキシアルキレン重合体のイニシエータとしては、式8で表されるイニシエータを用いる必要がある。
R1-OH (8)
(式中、R1は不飽和基を有しない、炭素、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される1種以上を構成原子として含有する1価の有機基である。)
【0238】
R1に不飽和基を有するイニシエータを用いて第二のオキシアルキレン重合体を重合した場合、第二のオキシアルキレン重合体に含まれる活性水素基を不飽和基に変換すると、少なくとも2個の不飽和基を有するオキシアルキレン重合体となる。そのため、湿分等で硬化した加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体硬化物の柔軟性が低下し、硬く脆い硬化物となってしまう。
【0239】
したがって、下記(A)や(D)の方法で加水分解性ケイ素基を導入する場合、1個の活性水素基を有する第二のオキシアルキレン重合体のイニシエータとして、式8で表されるイニシエータを用いる必要がある。
【0240】
また、(B)や(C)の方法で加水分解性ケイ素基を導入する方法では、活性水素基とイソシァネート化合物を反応させる際に進行する副反応の為に(A)や(D)の方法で加水分解性ケイ素基を導入する場合より粘度が上昇しやすい欠点を有するが、活性水素基を有する第一と第二のオキシアルキレン重合体が共存するオキシアルキレン重合体を用いると、活性水素基を有するオキシアルキレン重合体の粘度を下げることができるため、加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体の粘度を効果的に低減することが出来る。
【0241】
(A)オキシアルキレン重合体に含まれる活性水素基を不飽和基に変換し(式10)、不飽和基含有オキシアルキレン重合体とした後、式11で表される水素化ケイ素化合物を反応させる方法。
-O-R2 (10)
(式中、R2は不飽和結合を有する炭素、水素、酸素及び窒素からなる群より選択される1種以上を構成原子として含有する1価の有機基である。)
HSiXaR3-a (11)
(式中R、X、aは前記式9に同じである。)
ここで不飽和基を導入する方法としては、不飽和基及び官能基を有する化合物をオキシアルキレン重合体の活性水素基に反応させて、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合等により結合させる方法、又はアルキレンオキシドを重合する際に、アリルグリシジルエーテル等の不飽和基含有エポキシ化合物を添加して共重合させることにより側鎖に不飽和基を導入する方法等が挙げられる。
【0242】
(B)オキシアルキレン重合体に含まれる活性水素基と式12で表される化合物を反応させる方法。
R3-a-SiXa-R3NCO (12)
(式中R、X、aは前記に同じ、R3は炭素数1~20の置換又は非置換の2価の有機基である。)
【0243】
(C)オキシアルキレン重合体に含まれる活性水素基とトリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物を反応させてイソシアネート基に変換した後、該イソシアネート基に式13で表されるケイ素化合物のW基を反応させる方法。
R3-a-SiXa-R3W (13)
(式中R、R3、X、aは前記に同じ、Wは水酸基、カルボキシル基、メルカプト基及びアミノ基(1級又は2級)から選ばれた活性水素含有基である。)
【0244】
(D)オキシアルキレン重合体に含まれる活性水素基を不飽和基に変換し、その不飽和基とWがメルカプト基である式13で表されるケイ素化合物を反応させる方法。
【0245】
本発明の組成物では、公知の種々の硬化触媒、充填剤、各種添加剤を含むことができる。さらに必要ならば可塑剤等も含むことができる。
【0246】
第一と第二のオキシアルキレン重合体の加水分解性ケイ素基含有量は、原料としたオキシアルキレン重合体中に含まれていた活性水素基に対して40%以上100%以下が好ましく、50%以上100%以下であることがより好ましく、60%以上100%以下であることが特に好ましい。
【0247】
本発明の製造方法で得た加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体は、そのまま、若しくは種々の添加剤を配合して室温硬化性組成物とすることが出来る。
【0248】
硬化触媒には、従来公知のものを広く使用することができる。その具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、チタンテトラアセチルアセトナート等のチタン化合物;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズフタレート、ジブチルスズジオタテート、ジブチルスズジエチルへキサルト、ジブルマレエート、ジブチルスズジオクチルマレエート、ジブチルスズジトリデシルマレエート、ジブチルスズジベンジルマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジォクチルスズジエチルマレエート、ジオクチルスズジオクチルマレエート、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルスズジノユルフェノキサイド、ジブテニルスズオキサイド、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズジエチルアセトアセトナート、ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価のスズ化合物;オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ステアリン酸スズ、バーサチック酸スズ等の2価のスズ化合物;アルミ二ウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコ二ウムテトラアセチルァセトナート等のジルコニウム化合物類;オクチル酸鉛;バーサチック酸のようなカルボン酸;ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルァミン、シクロへキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルダアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾル、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)等のアミン系化合物、又はこれらアミン系化合物のカルボン酸等との塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;1-アミノプロピルトリメトキシシラン、Ν-(β-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;等のシラノール縮合触媒、さらには他の酸性触媒、塩基性触媒等の公知のシラノール縮合触媒等が挙げられる。好ましくは、バーサチック酸等のカルボン酸、及び/又はアミン系化合物を用いることができる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0249】
これらの硬化触媒の使用量は、オキシアルキレン重合体100重量部に対して、0.1~20重量部程度が好ましい。硬化触媒の使用量が少なすぎると硬化速度が遅くなり、また硬化反応が充分に進行しにくくなるので好ましくない。一方、硬化触媒の使用量が多すぎると硬化時に局部的な発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られにくくなるので好ましくない。
【0250】
本発明の組成物においては、縮合触媒の活性をより高めるために、一般式R4-aSi(OR)a(式中、R、aは前記に同じ。)で示されるケイ素化合物を添加しても構わない。前記ケイ素化合物としては、限定はされないが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン等の一般式中のRが、炭素数6~20のアリール基であるものが、組成物の硬化反応を加速する効果が大きいために好ましい。特に、ジフェニルジメトキシシランやジフェニルジェトキシシランは、低コストであり、入手が容易であるために特に好ましい。この計素化合物の配合量はオキシアルキレン重合体100重量部に対して0.01~20重量部程度が好ましく、0.1~10重量部が更に好ましい。ケイ素化合物の配合量がこの範囲を下回ると硬化反応を加速する効果が小さくなる場合がある。一方、ケイ素化合物の配合量がこの範囲を上回ると、硬化物の硬度や引張強度が低下することがある。
【0251】
本発明の組成物には、シランカップリング剤、シランカップリング剤の反応物、又はシランカップリング剤以外の化合物を接着性付与剤として添加することができる。シランカップリング剤の具体例としては、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β-カルボキシェチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-β-(カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ-クロ口プロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等を挙げることができる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。本発明に用いるシランカップリング剤は、通常、オキシアルキレン重合体100重量部に対して、0.1~20重量部の範囲で使用される。特に、0.5~10重量部の範囲で使用するのが好ましい。
【0252】
組成物に添加されるシランカップリング剤の効果は、各種被着体、すなわち、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、モルタル等の無機基材や、塩ビ、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の有機基材に用いた場合、ノンプライマー条件又はプライマー処理条件下で、著しい接着性改善効果を示す。ノンプライマー条件下で使用した場合には、各種被着体に対する接着性を改善する効果が特に顕著である。シランカップリング剤以外の具体例としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硫黄、アルキルチタネート類、芳香族ポリイソシァネート等が挙げられる。上記接着性付与剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。これら接着性付与剤は添加することにより被着体に対する接着性を改善することができる。
【0253】
本発明の組成物は、種々の充填剤を配合することができる。充填剤としては、ヒューム シリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、及びカーボンブラックの如き補強性充填剤;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂や塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末等樹脂粉末の如き充填剤;石綿、ガラス繊維及びフィラメントの如き繊維状充填剤等が挙げられる。充填剤を使用する場合、その使用量はオキシアルキレン重合体100重量部に対して1~300重量部、好ましくは10~200重量部である。
【0254】
これら充填剤の使用により強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸及びカーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、及び活性亜鉛華等から選ばれる充填剤が好ましくオキシアルキレン重合体100重量部に対し、1~200重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。また、低強度で破断伸びが大である硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、及びシラスバルーン等から選ばれる充填剤をオキシアルキレン重合体100重量部に対して5~200重量部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。なお、一般的に炭酸カルシウムは、比表面積の値が大きいほど硬化物の破断強度、破断伸び、接着性の改善効果は大きくなる。もちろんこれら充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。脂肪酸表面処理膠質炭酸カルシウムと表面処理がされていない重質炭酸カルシウム等粒径が1μ以上の炭酸カルシウムを併用して用いることができる。
【0255】
組成物の作業性(キレ等)向上や硬化物表面を艷消し状にするために、有機バルーン、無機バルーンの添加が好ましい。これらの充填剤は表面処理することもでき、1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用することもできる。作業性(キレ等)向上には、バルーンの粒径は0.1mm以下が好ましい。硬化物表面を艷消し状にするためには、5~300μmが好ましい。
【0256】
本発明の組成物には、必要に応じて生成する硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を添加しても良い。物性調整剤としては特に限定されないが、例えば、ルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロぺノキシシラシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類等が挙げられる。前記物性調整剤を用いることにより、本発明の組成物を硬化させた時の硬度を上げたり、逆に硬度を下げ、破断伸びを生じたりし得る。上記物性調整剤は単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0257】
物性調整剤はオキシアルキレン重合体100重量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部の範囲で使用される。
【0258】
組成物には、必要に応じて垂れを防止し、作業性を良くするためにチクソ性付与剤(垂れ防止剤)を添加しても良い。また、垂れ防止剤としては特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリンアルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。チクソ性付与剤はオキシアルキレン重合体100重量部に対して、0.1~20重量部の範囲で使用される。
【0259】
本発明の組成物においては1分子中にエポキシ基を含有する化合物を使用できる。エポキシ基を有する化合物を使用すると硬化物の復元性を高めることができる。エポキシ基を有する化合物としてはエポキシ化不飽和油脂類、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル類、脂環族エポキシ化合物類、エピクロルヒドリン誘導体に示す化合物及びそれらの混合物等が例示できる。具体的には、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、ジ-(2-エチルへキシル)4,5-エポキシシクロへキサン-1,2-ジカーボキシレート(E-PS)、エポキシオクチルステアレート、エポキシブチルステアレート等が挙げられる。これらのなかではE-PSが特に好ましい。硬化物の復元性を高める目的には分子中にエポキシ基を1個有する化合物を用いるのが好ましい。エポキシ化合物はオキシアルキレン重合体100重量部に対して0.5~50重量部の範囲で使用するのがよい。
【0260】
本発明の組成物には光硬化性物質を使用できる。光硬化性物質を使用すると硬化物表面に光硬化性物質の皮膜が形成され、硬化物のベたつきや硬化物の耐候性を改善できる。光硬化性物質とは、光の作用によってかなり短時間に分子構造が化学変化を起こし硬化等の物性的変化を生ずるものである。この種の化合物には有機単量体、オリゴマー、樹脂又はそれらを含む組成物等多くのものが知られており、市販の任意のものを採用し得る。代表的なものとしては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類又はアジド化樹脂等が使用できる。不飽和アクリル系化合物としては、アクリル系又はメタクリル系不飽和基を1ないし数個有するモノマー、オリゴマー又はそれ等の混合物であって、プロピレン(又はブチレン、エチレン)グリコールジ(メタ)アタリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)ジメタタリレート等の単量体又は分子量10,000以下のオリゴエステルが例示される。具体的には、例えば特殊アタリレート,2官能のアロニックスM-210,アロニックスM-215,アロニックスM-220,アロニックスM-233,アロニックスM-240,アロニックスM-245;3官能のアロニックスM-305,アロニックスM-309,アロニックスM-310,アニックスM-315,アロニックスM-320,アロニックスM-325,及び多官能のアロニックスM-400等が例示できるが、特にアクリル官能基を含有する化合物が好ましくまた1分子中に平均して3個以上の同官能基を含有する化合物が好ましい(以上アロニックスはいずれも東亜合成化学工業株式会社の製品である。)。
【0261】
ポリケイ皮酸ビニル類としては、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂でありポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル誘導体が例示される。アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はジアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液の他、「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、第93頁~、第106頁~、第117頁~)に詳細な例示があり、これらを単独又は混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。なお、ケトン類、ニトロ化合物等の増感剤やアミン類等の促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。
【0262】
光硬化性物質の使用量は、オキシアルキレン重合体100重量部に対して0.01~20重量部が好ましくさらには0.5~10重量部範囲が好ましい。0.01重量部以下では耐候性を高める効果が小さく20重量部以上では硬化物が硬くなりすぎて、ヒビ割れを生じるため好ましくない。
【0263】
本発明の組成物には酸素硬化性物質を使用することができる。酸素硬化性物質には空気中の酸素と反応し得る不飽和化合物を例示でき、空気中の酸素と反応して硬化物の表面付近に硬化皮膜を形成し表面のベたつきや硬化物表面へのゴミやホコリの付着を防止する等の作用をする。酸素硬化性物質の具体例には、キリ油、アマニ油等で代表される乾性油や、該化合物を変性してえられる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコン樹脂;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等のジエン系化合物を重合又は共重合させてえられる1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン、C5-C8ジエンの重合体等の液状重合体や、これらジエン系化合物と共重合性を有するアタリロニトリル、スチレン等の単量体とをジエン系化合物が主体となるように共重合させてえられるNBR、SBR等の液状共重合体や、さらにはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物等)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらのうちではキリ油や液状ジエン系重合体がとくに好ましい。又、酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果が高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属塩や、アミン化合物等が例示される。酸素硬化性物質の使用量は、オキシアルキレン重合体100重量部に対して0.1~20重量部の範囲で使用するのがよくさらに好ましくは1~10重量部である。前記使用量が0.1重量部未満になると汚染性の改善が充分でなくなり、20重量部をこえると硬化物の引張特性等が損なわれる傾向が生ずる。特開平3-160053号公報に記載されているように酸素硬化性物質は光硬化性物質と併用して使用するのがよい。
【0264】
本発明の組成物には酸化防止剤(老化防止剤)を使用することができる。酸化防止剤を使用すると硬化物の耐候性を高めることができる。酸化防止剤としてはヒンダ一ドフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が例示できるが、特にヒンダードフェノール系が好ましい。同様に、チヌビン622LD,チヌビン144;CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上いずれも日本チバガイギー株式会社製);MARK LA-57,MARK LA-62,MARK LA-67,MARK LA-63,MARK LA-68(以上いずれもアデカアーガス化学株式会社製);サノールLS-770、サノールLS-765、サノールLS-292、サノールLS-2626、サノールLS-1114、サノールLS-744(以上いずれも三共株式会社製)に示されたヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。酸化防止剤の具体例は特開平4-283259号公報や特開平9-194731号公報にも記載されている。酸化防止剤の使用量は、オキシアルキレン重合体100重量部に対して0.1~10重量部の範囲で使用するのがよくさらに好ましくは0.2~5重量部である。
【0265】
本発明の組成物には光安定剤を使用することができる。光安定剤を使用すると硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定剤としてべンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が例示できるが、特にヒンダードアミン系が好ましい。光安定剤の使用量は、オキシアルキレン重合体100重量部に対して0.1~10重量部の範囲で使用するのがよくさらに好ましくは0.2~5重量部である。光安定剤の具体例は特開平9-194731号公報にも記載されている。
【0266】
本発明の組成物に光硬化性物質を併用する場合、特に不飽和アクリル系化合物を用いる場合、特開平5-70531号公報に記載されているようにヒンダードアミン系光安定剤として3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いるのが組成物の保存安定性改良のために好ましい。3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としてはチヌビン622LD,チヌビン144;CHIMASSORB119F(以上いずれも日本チバガイギー株式会社製);MARKLA-57,LA-62,LA-67,LA-63(以上いずれもアデカアーガス化学株式会社製);サノールLS-765,LS-292,LS-2626,LS-1114,LS-744(以上いずれも三共株式会社製)等の光安定剤が例示できる。
【0267】
本発明の組成物には紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤を使用すると硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としてはべンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が例示できるが、特にべンゾトリアゾール系が好ましい。紫外線吸収剤の使用量は、オキシアルキレン重合体100重量部に対して0.1~10重量部の範囲で使用するのがよくさらに好ましくは0.2~5重量部である。フェノール系やヒンダ一ドフェノール系酸化防止剤とヒンダードアミン系光安定剤とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を併用して使用するのが好ましい。
【0268】
本発明の組成物には、エポキシ樹脂を添加し、弾性接着剤等として用いることもできる。エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリン-ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリン-ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル等の難燃型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、p-オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m-アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリン等のごとき多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂等のごとき不飽和重合体のエポキシ化物等が例示されるが、これらに限定されるものではなく一般に使用されているエポキシ樹脂が使用されうる。エポキシ基を少なくとも分子中に2個含有するものが、硬化に際し反応性が高く、また硬化物が3次元的網目をつくりやすい等の点から好ましい。さらに好ましいものとしてはビスフェノールA型エポキシ樹脂類又はノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂とオキシアルキレン重合体の使用割合は、重量比でオキシアルキレン重合体/エポキシ樹脂=100/1~1/100の範囲である。本発明のオキシアルキレン重合体/エポキシ樹脂の割合が1/100未満になると、エポキシ樹脂硬化物の衝撃強度や強靱性の改良効果が得られがたくなり、オキシアルキレン重合体エポキシ樹脂の割合が100/1を超えると、オキシアルキレン系重合体硬化物の強度が不十分となる。好ましい使用割合は、硬化性樹脂組成物の用途等により異なるため一概には決められないが、たとえばエポキシ樹脂硬化物の耐衝撃性、可撓性、強靱性、剥離強度等を改善する場合には、エポキシ樹脂100重量部に対してオキシアルキレン重合体を1~100重量部、さらに好ましくは5~100重量部使用するのがよい。一方、本発明の硬化物の強度を改善する場合には、オキシアルキレン重合体100重量部に対してエポキシ樹脂を1~200重量部、さらに好ましくは5~100重量部使用するのがよい。
【0269】
エポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を併用できる。使用し得るエポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はなく一般に使用されているエポキシ樹脂硬化剤を使用できる。具体的には、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルァミン、N-アミノエチルピペリジン、m-キシリレンジアミン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、アミン末端ポリエーテル等の1級、2級アミン類;2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリプロピルアミンのような3級アミン類、及び、これら3級アミン類の塩類;ポリアミド樹脂類;イミダゾール類;ジシアンジアミド類;三弗化硼素錯化合物類、無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ドデシニル無水琥珀酸、無水ピロメリット酸、無水クロレン酸等のような無水カルボン酸類;アルコール類;フェノール類;カルボン酸類;アルミニウム又はジルコニウムのジケトン錯化合物等の化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、硬化剤も単独でも2種以上併用してもよい。エポキシ樹脂の硬化剤を使用する場合、その使用量はエポキシ樹脂100重量部に対し、0.1~300重量部の範囲である。
【0270】
エポキシ樹脂の硬化剤としてケチミンを用いることができる。ケチミンは、水分のない状態では安定に存在し、水分によって1級アミンとケトンに分解され、生じた1級アミンがエポキシ樹脂の室温硬化性の硬化剤となる。ケチミンを用いると1液型の組成物を得ることができる。このようなケチミンとしては、アミン化合物とカルボニル化合物との縮合反応により得ることができる。
【0271】
ケチミンの合成には公知のアミン化合物、カルボニル化合物を用いればよいが、例えばアミン化合物としてはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、1,3-ジアミノブタン、2,3-ジアミノブタン、ペンタメチレンジアミン、2,4-ジアミノペンタン、へキサメチレンジアミン、p-フェニレンジアミン、p,p'-ビフェニレンジアミン等のジアミン;1,2,3-トリアミノプロパン、トリアミノべンゼン、トリス(2-アミノエチル)アミン、テトラ(アミノメチル)メタン等の多価アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン;ポリオキシアルキレン系ポリアミン;γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、Ν-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン;等が使用されうる。また、カルボニル化合物としてはアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ジエチルアセトアルデヒド、グリオキサール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;シクロペンタノン、トリメチルシクロペンタノン、シクロへキサノン、トリメチルシクロへキサノン等の環状ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソプチルケトン等の脂肪族ケトン類;アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸メチルエチル、ジベンゾイルメタン等の3-ジカルボニル化合物等が使用できる。
【0272】
ケチミン中にイミノ基が存在する場合には、イミノ基をスチレンオキサイド;ブチルダリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;グリシジルエステル等と反応させてもよい。これらのケチミンは、単独で用いてもよく2種類以上を併用して用いてもよくエポキシ樹脂100重量部に対し、1~100重量部使用され、その使用量はエポキシ樹脂及びケチミンの種類によって異なる。
【0273】
本発明の組成物には、硬化性組成物又は硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、たとえば、難燃剤、硬化性調整剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤、溶剤、防かび剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。本明細書にあげた添加物の具体例以外の具体例は、たとえば、特公平4-69659号、特公平7-108928号、特開昭63-254149号、特開昭64-22904号、特開2001-72854号の各公報等に記載されている。
【0274】
本発明の組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することも可能であり、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と重合体組成物を使用前に混合する2成分型として調製することもできる。
【0275】
前記硬化性組成物が1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧等により脱水するのが好ましい。前記硬化性組成物が2成分型の場合、反応性ケイ素基を有する重合体を含有する主剤に硬化触媒を配合する必要がないので配合剤中には若干の水分が含有されていてもゲル化の心配は少ないが、長期間の貯蔵安定性を必要とする場合には脱水乾燥するのが好ましい。脱水、乾燥方法としては粉状等の固状物の場合は加熱乾燥法、液状物の場合は減圧脱水法又は合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル等を使用した脱水法が好適である。また、イソシアネーと化合物を少量配合してイソシアネート基と水とを反応させて脱水してもよい。かかる脱水乾燥法に加えてメタノール、エタノール等の低級アルコール;n-プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物を添加することにより、さらに貯蔵安定性は向上する。
【0276】
脱水剤、特にビニルトリメトキシシラン等の水と反応し得るケイ素化合物の使用量はオキシアルキレン重合体100重量部に対して、0.1~20重量部、好ましくは0.5~10重量部の範囲が好ましい。
【0277】
一実施形態では、加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体のポリオキシアルキレン構造の構成単位であるオキシアルキレン基が炭素数1~6のオキシアルキレン基であり、前記加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の数平均分子量が1,000~30,000であってもよい。
【0278】
本発明の製造方法で使用することができる加水分解性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体の具体例には、MSポリマーS203H(カネカ)、MSポリマーS303H(カネカ)、MSポリマー15A(カネカ)、サイリルSAT030(カネカ)、サイリルSAT200(カネカ)、サイリルSAX400(カネカ)、エクセスターS2410(旭硝子)、エクセスターS2420(旭硝子)、エクセスターS3430(旭硝子)等が例示される。
【0279】
(加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体を用いる、オキシアルキレン重合体及び/又は(メタ)アクリル系重合体のシロキサン架橋体を含む徐放性哺乳動物忌避組成物の製造方法)
加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体を用いる場合、本態様の製造方法は、必須工程として、混合工程及び架橋工程を含む。本実施形態において混合工程は、哺乳類忌避剤、加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体、及び硬化触媒を混合する工程であってもよい。
【0280】
本実施形態において、哺乳動物忌避剤、加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体、及び硬化触媒を混合する順序は、樹脂の硬化が完了する前に忌避剤が混合される限り、いかなる順序であってもよい。例えば、忌避剤と加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体を混合した後に硬化触媒を混合してもよく、忌避剤と硬化触媒を混合した後に加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体を混合してもよく、又は哺乳動物忌避剤、加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体、及び硬化触媒を同時に混合してもよい。
【0281】
「混合工程」及び/又は「架橋工程」において加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体を使用する場合、「混合工程」及び/又は「架橋工程」では、少なくとも1個の架橋性シリル基(又は加水分解性ケイ素基)を末端に有する(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部と、分岐していてもよい炭素数(B)0.1~100質量部と、分岐していてもよい炭素数8以上の1価の脂肪族8以上の1価又は2価の脂肪族又は脂環式炭化水素基を有し、第1級アミノ基を少なくとも1個有するジアミン化合物又は脂環式炭化水素基、並びに、架橋性シリル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有するジアミン化合物(C)0.1~100質量部が混合される。
【0282】
また、シロキサン架橋型有機重合体は、低汚染性をより向上させる観点から、更に、光重合性開始剤(D)を混合してもよい。
【0283】
以下に、(メタ)アクリル系重合体(A)について詳述する。ジアミン化合物(B)及びジアミン化合物(C)並びに所望により含有する光重合開始剤(D)については、第1態様の記載に準じる。
【0284】
<(メタ)アクリル系重合体(A)>
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、末端に以下に示す架橋性シリル基を少なくとも1個有し、主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体である。
【0285】
ここで、架橋性シリル基とは、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基、加水分解性ケイ素基、又はシラノール基のように湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒等を使用することにより縮合反応を起こす基のことであり、代表的なものを示すと、例えば、下記一般式(2)で表される基が挙げられる。
【0286】
【0287】
式中、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基又は(R8)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R6又はR7が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0288】
ここで、R8は炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、3個のR8は同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2又は3を、bは0、1又は2をそれぞれ示す。
【0289】
また、t個の下記一般式(3)で表される基におけるbは異なっていてもよい。tは0~19の整数を示す。ただし、a+t×b≧1を満足するものとする。
【0290】
【0291】
上記Yで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基であることが好ましく、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという理由からメトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。
【0292】
架橋性シリル基の中で、下記一般式(4)で表される架橋性シリル基が、入手容易の点から好ましい。下記一般式(4)中、R7、Y、aは上述のR7、Y、aと同義である。
【0293】
【0294】
上記一般式(2)におけるR6及びR7の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;R8がメチル基やフェニル基等である(R8)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基;等が挙げられる。R6、R7、R8としてはメチル基が特に好ましい。
【0295】
一方、上記(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖を形成するアクリル酸アルキルエステル単量体単位としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、第3ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベフェニルアクリレート、フェニルアクリレート、トルイルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビフェニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルアクリレート、2-アミノエチルアクリレート、トリフルオロメチルメチルアクリレート、2-トリフルオロメチルエチルアクリレート、2-パーフルオロエチルエチルアクリレート、2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチルアクリレート、パーフルオロエチルアクリレート、パーフルオロメチルアクリレート、ジパーフルオロメチルメチルアクリレート、2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチルアクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、2-パーフルオロデシルエチルアクリレート、2-パーフルオロヘキサデシルエチルアクリレート等のアクリル酸エステル又はこれに対応するメタクリル酸エステルが挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0296】
また、上記(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖は、アクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位を含むものであれば特に限定されないが、入手性及び得られる硬化物の耐候性や低温での柔軟性がよいという理由から、これらの単量体単位が50質量%を超えるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましい。
【0297】
更に、上記(メタ)アクリル系重合体(A)の主鎖は、アクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位のほかに、これらと共重合性を有する単量体単位を含んでいてもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシ基を含有する単量体単位;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等のアミド基を含有する単量体単位;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有する単量体単位;ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基を含有する単量体単位;ポリオキシエチレンアクリレート、ポリオキシエチレンメタクリレート等は、湿分硬化性及び内部硬化性の点で共重合効果を期待することができる。
【0298】
その他に、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位が挙げられる。
【0299】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)の単量体組成は、用途、目的等により適宜選択される。
【0300】
例えば、単量体のアルキルエステル部分のアルキル鎖が長い場合には、ガラス転移温度が低くなり、硬化物の物性は軟らかいゴム状弾性体となる。逆に、短い場合には、ガラス転移温度が高くなり、硬化物の物性も硬くなる。
一方、硬化後の物性は、重合体の分子量にも大きく依存する。
【0301】
したがって、上記(メタ)アクリル系重合体(A)の単量体組成は、分子量を考慮しつつ、所望の粘度、硬化後の物性等に応じて、適宜選択すればよい。
【0302】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)の分子量は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算での数平均分子量が500~100,000であるものが、重合時の難易度、相溶性、取扱い粘度の点で好ましい。中でも、数平均分子量1,000~50,000のものが強度と粘度とのバランスの点で好ましく、2,000~30,000のものが、作業性等取扱いの容易さ、接着性等の点で、より好ましい。
【0303】
上記(メタ)アクリル系重合体(A)は、単独で又は2種以上を混合して用いられる。 このような(メタ)アクリル系重合体(A)としては、公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、カネカ社製のカネカテレケリックポリアクリレート-SA100S、SA110S、SA120S、SA310S等が挙げられる。
【0304】
(メタ)アクリル系重合体(A)の合成は特に限定されず、公知の方法により合成することができる。
【0305】
公知の方法としては、例えば、特開昭61-271306号公報に開示されている水酸基含有開始剤を用いて合成した末端に水酸基を有するテレケリック重合体に、水酸基と反応しうる官能基と上記架橋性シリル基を含有する化合物(例えば、イソシアネートシラン類等)を反応させることで重合体末端に架橋性シリル基を導入する方法や;特開平1-247403号公報に開示されている、アルケニル基を有するジチオカーバメート又はジアリルスルフィドを連鎖移動剤に用いることにより両末端にアルケニル基を有する重合体を用いて、このアルケニル基と反応しうる官能基と上記架橋性シリル基とを有する化合物(例えば、トリメトキシハイドロシラン、メチルジメトキシハイドロシラン等)を反応させて重合体末端に上記架橋性シリル基を導入する方法;等が挙げられる。
【0306】
また、特開平6-211922号公報に開示されている、水酸基含有ポリスルフィド又はアルコール系化合物を連鎖移動剤として、末端に水酸基を有するアクリル系重合体を製造し、更に、水酸基の反応を利用して末端にアルケニル基を有するアクリル系重合体の製造方法等も挙げられる。この末端にアルケニル基を有するアクリル系重合体を用いて、同様に重合体末端に上記架橋性シリル基を導入することが可能である。
【0307】
また、特公平3-14068号公報には、(メタ)アクリル系モノマーを架橋性シリル基含有メルカプタン、又は架橋性シリル基含有ジスルフィド、又は架橋性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に重合させ重合体末端に架橋性シリル基を導入する方法が開示されている。
【0308】
また、特公平4-55444号公報には、アクリル系モノマーを架橋性シリル基含有ヒドロシラン化合物又はテトラハロシラン化合物の存在下に重合させる方法が開示されている。
【0309】
更に、特開平5-97921号公報には、架橋性シリル基を有する安定カルバニオンを開始剤としてアクリル系モノマーをアニオン重合させ、重合末端を2官能性の求電子化合物と反応させて重合体末端に架橋性シリル基を導入する方法が開示されている。
【0310】
これらの方法で得られる架橋性シリル基を末端に有する(メタ)アクリル系重合体を上記(メタ)アクリル系重合体(A)として用いることができるが、下記理由により、他の方法で得られる(メタ)アクリル系重合体の方がより好ましい場合がある。
【0311】
すなわち、これらの方法では、反応性が低いことに起因して、通常、重合体末端に確実に架橋性シリル基を導入することが困難であったり、原料となる化合物が高価で経済性に劣ったりする等の欠点がある。また、これらのフリーラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。更に、連鎖移動剤を用いることから、高分子量の(メタ)アクリル系重合体を得ることが困難であり、したがって架橋点間分子量が短くなり、シーリング材として用いた際に伸びや耐久性に劣るという欠点がある。
【0312】
そこで、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル系重合体であって、重合体末端に確実に架橋性官能基を導入された(メタ)アクリル系重合体を得るための方法として、リビングラジカル重合を用いることができる。
【0313】
特に、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁や、特開平9-272714号公報、特開2000-154205号公報及び特開2000-178456号公報には、リビングラジカル重合法の中でも、原子移動有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」について開示されている。
【0314】
これは、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。
【0315】
ここで、ラジカル重合反応は一般的に重合速度が速く、ラジカル同士のカップリング等による停止反応が起り易いため、一般的には反応の制御が難しいとされているが、原子移動リビングラジカル重合法では、重合体成長末端での停止反応等の副反応が起り難く、さらにモノマーと開始剤の仕込み比によって分子量を自由にコントロールすることができるという特徴を有する。
【0316】
また、原子移動ラジカル重合法により得られる重合体は、分子量分布が1.6以下と極めて狭く制御することが可能であるため、同一の数平均分子量を有する(メタ)アクリル系重合体を合成した場合、従来のフリーラジカル重合法と比較して低粘度の(メタ)アクリル系重合体を得ることが可能である。そのため、この方法により得られる重合体を用いたシーリング材は低粘度で作業性に優れる。
【0317】
また、原子移動ラジカル重合法では、重合体の末端に高効率で官能基を導入することが可能であり、開始点を2個以上有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニルを開始剤として用いた場合には、両末端に官能基を有するテレケリック重合体を合成することが可能である。そのため、架橋点間分子量が長い硬化物が得られることから、この方法により得られる重合体を用いたシーリング材は、従来の分子側鎖に官能基を有する(メタ)アクリル系重合体を用いた場合と比較して、高伸びで耐久性に優れるものとなる。
【0318】
シロキサン架橋型有機重合体が、(メタ)アクリル系重合体がシロキサン結合で架橋されている場合、シロキサン架橋型有機重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエーテルを主鎖とする架橋可能な架橋性シリル基を有する重合体、硬化触媒、脱水剤、可塑剤、充填剤、補強剤、垂れ防止剤、着色剤(顔料)、老化防止剤、接触促進剤等を配合してもよい。
【0319】
硬化触媒としては、具体的には、例えば、オクタン酸亜鉛、オクタン酸鉄、オクタン酸マンガン、オクタン酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸鉄、ブタン酸錫、カプリル酸錫、オレイン酸錫のようなカルボン酸金属塩;バーサチック酸のようなカルボン酸;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジフェニル錫ジアセテート、酸化ジブチル錫、酸化ジブチル錫とフタル酸エステルとの反応生成物、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫(トリエトキシシロキシ)のような有機錫化合物;ジブチル錫ジアセチルアセトナートのような錫キレート化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラ-2-エチルヘキシルオキシチタン、テトライソプロペニルオキシチタンのようなチタン酸エステル;ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、1,3-プロパンジオキシチタンビス(アセチルアセトナート)、1,3-プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタントリス(アセチルアセトナート)のようなチタンキレート化合物;テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムステアレートのようなジルコニウムアルコキシド;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)のようなジルコニウムキレート化合物;トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウムのようなアルミニウムアルコキシド;ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)のようなアルミニウムキレート化合物;ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミンのような第1級アミン;ジブチルアミンのような第2級アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、キシリレンジアミンのようなポリアミン;トリエチレンジアミン、モルホリン、N-メチルホルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセンのような環状アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのようなアミノアルコール化合物;2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのようなアミノフェノール化合物等のアミン化合物及びそのカルボン酸塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセタートのような第4級アンモニウム塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量アミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;並びに3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル(メチル)トリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン等が挙げられる。その他、シリル基の加水分解及び/又は縮合反応に有効な公知の化合物を用いることができる。好ましくは、バーサチック酸等のカルボン酸、及び/又は第1級アミン、第2級アミン、ポリアミン、環状アミン等のアミン化合物を用いることができる。また、硬化触媒の成分は、上記例示した硬化触媒のうち、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0320】
これらのうち、保存及び取扱い中に揮発しにくいことから、金属化合物が好ましく、中でも微量の配合で優れた触媒能が得られることから、有機錫化合物、錫キレート化合物及びチタン酸エステルが好ましい。
【0321】
脱水剤としては、具体的には、例えば、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトイソプロピオン酸トリメチル、オルトイソプロピオン酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチル、オルトイソ酪酸トリメチル、オルトイソ酪酸トリエチル等の加水分解性エステル化合物;又は、ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,1-ジメトキシプロパン、1,1-ジメトキシブタン;又は、エチルシリケ-ト(テトラメトキシシラン)、メチルシリケ-ト(テトラメトキシシラン)、メチルトリメトキシシラン;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミン、ビストリエトキシシリルプロピルアミン、ビスメトキシジメトキシシリルプロピルアミン、ビスエトキシジエトキシシリルプロピルアミン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルエチルジエトキシシラン等のアミノシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン等が挙げられる。これらのうち、脱水効果の点から、アミノシラン、ビニルシランを用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0322】
可塑剤は粘度及び物性調整に使用され、一般には、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸等の誘導体をはじめ、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系等のものが例示される。
【0323】
充填剤は機械物性を調整するために各種の充填剤を配合することができ、一般には、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カーボンブラック等が用いられる。充填剤の活性、粒子形状、pH、表面処理の有無等により、貯蔵安定性、硬化速度、物性、発泡に与える影響が大きく、種類、量の決定には注意する必要がある。特に炭酸カルシウムは、脂肪酸エステル、又は高級アルコールウレタン化合物により処理されたものが好適に使用される。
【0324】
着色剤(顔料)としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0325】
老化防止剤の具体例としては、一般に用いられている酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が適宜用いられる。例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、アクリレート系、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系の各化合物が挙げられる。
【0326】
一実施形態では、架橋性シリル基又は加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体は、主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位としてブチルアクリレートを含み、数平均分子量が2,000~30,000であってもよい。
【0327】
本発明の製造方法で使用することができる加水分解性ケイ素基を有する(メタ)アクリル系重合体の具体例には、XMAP SA120S(カネカ)、及びテレケリックポリアクリレート(SA100S、SA110S、又はSA310S(カネカ))等が例示される。(メタ)アクリル系重合体の具体例として、分子量が14,000、アクリル成分がブチルアクリレート、シリル基末端(官能基2つ)のXMAP SA120S(カネカ)が例示される。
【0328】
忌避剤とシロキサン架橋型有機重合体との混合比率は、忌避剤を不活性化することなく、かつ忌避組成物が硬化し得る比率である。シロキサン架橋型有機重合体の比率が小さ過ぎると忌避剤がブリードアウトして均一にならず、逆に忌避剤の比率が小さ過ぎると忌避剤の放散量が少なくなるため、好ましくない。例えば、忌避剤に対して、等倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上、5倍以上、10倍以上、100倍以上、又は1000倍以上、及び/又は1000倍以下、100倍以下、10倍以下、5倍以下、4倍以下、3倍以下、2倍以下、若しくは等倍以下のシロキサン架橋型有機重合体を混合することができる。
【0329】
本発明の忌避組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、ロール、ニーダ―、押出し機、万能攪拌機等により混合し製造することができる。
【実施例】
【0330】
<実施例1:シロキサン架橋型有機重合体の硬化条件>
(目的)
シロキサン架橋型有機重合体がチアゾリン類化合物の存在下で硬化し得ることを確認する。
【0331】
(方法と結果)
(1)硬化触媒
忌避剤の存在下、異なる硬化触媒を用いて樹脂を硬化させる実験を行った。
忌避剤としては、2MT(2-メチル-2-チアゾリン、東京化成工業株式会社)、及び4E2MT(4-エチル-2-メチルチアゾリン、東京化成工業株式会社)を用いた。
【0332】
硬化触媒としてS-1、U-50/V10、PG-F/MeOH、及びDEAPAを用いた。S-1は錫系触媒のネオスタンS-1(日東化成、高活性)である。U-50/V10は錫系触媒のネオスタンU-50/Versatic10(日東化成)であり、Versatic10は助触媒(混合比率1:1)である。PG-F/MeOH(日本カーバイド)はアミン系触媒であり、フェニルグアニジンの混合比率は2:1である。DEAPA(広栄化学、低活性、Versatic10と併用)はアミン系触媒である。
【0333】
配合比率は、樹脂/忌避剤/触媒=100/10/適量とした。触媒の配合比率は表に示している通りである。
【0334】
オキシアルキレン重合体で構成されるMS系樹脂(カネカ、S257、Mn20000、D末端)を忌避剤の存在下で硬化させた結果を以下の表1に示す。硬化は表面硬化を示し、120分以降の硬化は、翌朝に確認した。
【0335】
【0336】
次に(メタ)アクリル系重合体で構成されるXMAP系樹脂(カネカ、SA120S、Mn14000、D末端)を忌避剤の存在下で硬化させた結果を以下の表2に示す。
【0337】
【0338】
アミン系触媒は、PG-F/MeOH、及びDEAPA系のいずれについても大幅な硬化遅延を生じなかった。
【0339】
硬化触媒の硬化時間比較結果を以下の表3に示す。配合比率は、XMAP(カネカ、SA120S、Mn14000、D末端)/忌避剤/触媒=100/10/適量とした。触媒の配合比率は表に示している通りである。有機錫触媒にはネオスタンS-1(日東化成)を、無機錫触媒にはネオスタンU-50(日東化成)を、アミン系触媒にはDEAPA(広栄化学)を使用した。酸/アミン触媒には、酸としてVersatic酸であるネオデカン酸(モメンティブ・スペシャリティケミカルズ、V10)、アミンとして3-ジエチルアミノプロピルアミン(光栄化学工業)を使用した。いずれの硬化触媒を用いた場合でも忌避剤の存在下で硬化が確認された。
【0340】
【0341】
(2)樹脂
次に樹脂について検討を行った。
硬化物の硬化前の粘度は、BH型粘度計(No.7ローター、回転数20rpm)で測定した。硬化時間は以下の2種類(TFT-1、TFT-2)を測定した。TFT-1は、23℃、50%RHにおける表面硬化時間(Tack-Free-Time)を示し、樹脂/硬化触媒(アミン系触媒DEAPA)=100/5の条件で測定した。TFT-2は、23℃、50%RHにおける表面硬化時間(Tack-Free-Time)を示し、樹脂/硬化触媒(Versatic酸)/硬化触媒(アミン系触媒DEAPA)=100/3/0.5の条件で測定した。
【0342】
オキシアルキレン重合体で構成されるMSポリマーを忌避剤の存在下で硬化させた結果を以下の表4に示す。忌避剤として4E2MTを10部配合させた場合の硬化時間をTFT-2の列の括弧内に示す。
【0343】
【0344】
次に(メタ)アクリル系重合体で構成されるXMAP可塑剤希釈品を忌避剤の存在下で硬化させた結果を以下の表5に示す。忌避剤として4E2MTを10部配合させた場合の硬化時間をTFT-2の括弧内に示す。組成において示すUP-1021はオールアクリル可塑剤(東亞合成)を示し、DINCHはDINP水素化(BASFジャパン)を示す。
【0345】
【0346】
(3)硬化物表面の白化
(メタ)アクリル系重合体で構成されるXMAP-3又はXMAP-4にフェニルグアニジン/メタノール触媒系(PG-F(3phr)/MeOH(0.5phr))を混合し、23℃、50%RHにて48時間開放静置して硬化させた結果、硬化物の表面が白化する現象が観察された(
図1A、B)。表面白化は、触媒を使用しない場合、及びDEAPA(5phr)を用いた場合には観察されなかった(
図1A、B)。
【0347】
白化した硬化物表面を電子顕微鏡で観察した結果、表面にしわ模様が観察された(
図1C)。フェニルグアニジン/メタノール触媒系を用いた場合に観察される表面白化は、微細な表面構造に起因すると考えられる。この硬化系では、メタノールの揮発が生じることから、その影響と考えられた。硬化物表面の白化は、製品の外観を損ない、チアゾリン類化合物の忌避効果を減弱させる可能性があるため、好ましくない。
【0348】
<実施例2:忌避剤放散量の測定>
(目的)
忌避剤として4-エチル-2-メチルチアゾリン(4E2MT、
図2A)をアクリルエラストマー(XMAP)に可塑化させた忌避組成物を調製し、4E2MTの徐放性を検討する。
【0349】
(方法)
XMAP SA120S(カネカ)16.5gに4E2MT(2-メチル-4-エチルチアゾリン、東京化成工業株式会社)6.5gを加えて混合した後、硬化剤としてネオデカン酸(八洲薬品株式会社)0.65g及び3-ジエチルアミノプロピルアミン(光栄化学社)0.22gを加えて混合した。得られた混合物を30mL入りPETスクリューバイアル(JST-30、MSD研究用科学機器社)に流し込み、約3時間かけて硬化させた。XMAP SA120S(カネカ)は、分子量が14,000、アクリル成分がブチルアクリレート、シリル基末端(官能基2つ)を有するアクリルエラストマーである。上記スクリューバイアルにポリエチレンラップ(Newポリラップ、30cm×50m、宇部フィルム社)を被せて麻紐で縛り、さらにビニールテープでスクリューバイアル全体を巻いたものを屋外のフィールドに設置した(
図3A、B)。
【0350】
5か月後にスクリューバイアルを回収し、密閉空間に放置した際の忌避剤の空間への放散挙動を匂いセンサ(新コスモス電機社、ニオイセンサXP-329m)を用いて測定した。この測定値からの匂い濃度の決定は、匂いセンサ検出値と匂い濃度を対応付ける検量線に基づいて行った。検量線は、0.3ppm、1ppm、3ppm、及び10ppmの4E2MTを含んだ標準空気を用いて作成した。標準空気は、気体混合装置(パーミエータPD-1B-2、ジーエルサイエンス)を用いて、一定温度で忌避剤を揮発させた空気と圧縮空気とを混合することによって調製した。
【0351】
(結果)
フィールド設置前のサンプル、及びフィールド設置5か月後のサンプルからの忌避剤の放散挙動を
図4に示す。忌避剤の放散挙動はフィールド設置前後でほぼ同等であり、忌避効果を示す上で基準となる0.5ppmの閾値を超えることが示された。
【0352】
この結果から、5か月以上に亘って4E2MTがアクリルエラストマー中で安定に維持され、長期的に徐放され得ることが示された。また、4E2MTの2量体化(
図2B)が抑制され、忌避剤の変性が抑制されたことが示された。
【0353】
<実施例3:リンゴ圃場における忌避効果>
(目的)
実施例2で調製した忌避組成物をリンゴ圃場に設置して、ハタネズミに対する忌避効果を検証する。
【0354】
(方法)
ハタネズミに対する忌避効果を検証するために、実施例2で調製した忌避組成物をリンゴ圃場に設置した(
図3B)。フィールドテストの対象としたリンゴ圃場には、ハタネズミ(
図5)がネズミ穴を形成し、毎年食害が発生していた。フィールドテストを実施する以前のハタネズミのネズミ穴の分布を
図6Aに示す。
【0355】
忌避組成物は、ネズミ穴が多い位置に設置された(
図6B)。また、無処理区、防鼠テープ、硫黄+カプサイシン、金網を設置した(
図6B)。
【0356】
忌避組成物を設置した5か月後に、各区画におけるリンゴ樹皮に対する食害の有無を調べた。
【0357】
(結果)
フィールドテスト期間(11月~3月)後に現地の状況を確認した結果、圃場における全てのリンゴの樹皮について、食害の痕跡は全く観察されなかった。
【0358】
忌避組成物を設置した区画以外(無処理区、防鼠テープ、硫黄+カプサイシン、金網)においても食害の痕跡が観察されなかったのは、忌避組成物の匂い分子が拡散した結果であると考えられる。フィールドテスト期間(11月~3月)中の圃場の風向きを確認したところ、フィールドテスト期間中は主に西風が吹いており、忌避組成物が風上に位置していることが判明した。一方、圃場では地表に広範囲に巣穴が形成されており、リンゴの樹木の根元にも巣の入り口が確認されている事、ハタネズミの捕獲にも成功している事等に基づき、忌避の対象とするネズミが圃場に存在していたことは明らかである。したがって、フィールドテスト期間中ハタネズミは圃場に存在していたが、風上に位置する忌避組成物から徐放される匂い分子が周囲及び風下に位置する全ての試験区に放散され続けた結果。試験区全体でリンゴ樹皮に食害が発生しなかったと考えられた。
【0359】
<実施例4:地中への忌避剤の放散>
(目的)
ハタネズミによるリンゴの食害は、ハタネズミが住む地下に位置するリンゴの根部にも及ぶ。例えば、リンゴの若木を圃場に植樹する際、圃場に住んでいるハタネズミに根を食べられてしまうケースがあり、対策が必要である。そこで本実施例では、地中への忌避剤の放散について検討を行った。
【0360】
(方法と結果)
匂いセンサ(新コスモス電機社、ニオイセンサXP-329m)を容器の底に設置した2Lのプラスチックビーカー中に園芸用土を500mLまで入れた。この園芸用土の中又は上に、実施例2と同じ忌避組成物を包含する30mLスクリューバイアル(高さ6.8cm、キャップなし)を設置し、実験室ドラフト内で1日経過した後に匂いセンサによる測定値を記録した。この測定値から土中の匂い濃度を決定した。匂い濃度の決定は、実施例2で作成した検量線を用いて行った。園芸用土自体にも匂いがあるため、忌避剤を含まない組成物を包含するバイアルを設置した場合をブランクとして測定した。
【0361】
測定結果を以下の表6に示す。「バイアルの位置」は、土中にバイアルを埋め込んだ深さ(土表面からバイアル底面までの距離)を示す。0cmは、バイアルを土表面に設置したことを意味する。
【0362】
【0363】
本発明の忌避組成物を地中に設置することによって、動物が忌避し得る濃度で忌避剤が周囲の地中に放散され得ることが示された。
【0364】
<比較例1>
(1)動物忌避組成物の調製及び硬化
200mLのディポカップに、架橋型ポリマーS203Hを100質量部、動物忌避剤4E2MTを40質量部、硬化触媒VAを3質量部、及び硬化触媒DEAPAを0.5質量部添加し、薬さじにてよく混合後、脱泡を行い、動物忌避組成物を調製した。
得られた動物忌避組成物をポリスチレン製の30mL容量(直径Φ33mm×高さ65mm)の容器(試薬瓶)に充填後、23℃×55%RH条件下7日間養生して、動物忌避組成物を硬化させた。
【0365】
(2)動物忌避装置の作製
その後、
図7に示すように空隙部分の頭頂部に膜状部材としてポリエチレンラップ(Newポリラップ、30cm×50cm、宇部フィルム株式会社製)を貼合して、周辺をビニールテープで固定して、比較例1の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置を作製した。
【0366】
(3)物性評価
比較例1の動物忌避組成物の硬化物について、JIS Z0208:1976(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))で規定される25℃での水蒸気透過度が140g/(m2・24時間)であった。
また、比較例1の動物忌避組成物の硬化物について、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」で規定される3号ダンベルの100%モジュラスは0.14MPaであり、前記3号ダンベルの破断強度が0.01MPa未満、破断伸びが50%未満であった。また、JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」で規定するタイプEデュロメータ測定による硬度が50であり、また、動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失正接tanδは、ガラス転移温度において算出される損失弾性率E”と貯蔵弾性率E’の比率の正接を求めたところ、1.9であり、比較例1の硬化物はゴム弾性を有することが示された。
【0367】
(4)忌避効果
比較例1の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置をリンゴ園に設置し、ネズミに対する忌避効果を1年間に亘って評価した。その結果、設置初期においては、ネズミに対する忌避効果が認められたものの、1年間経過時には忌避効果が失われていた。これは、硬化物の水蒸気透過度が非常に高いことから、動物忌避剤が加水分解によって変質し、忌避効果が失われたためである。上記の結果から、比較例1による動物忌避組成物の硬化物は、忌避効果の持続性を有さず、長期間に亘って動物忌避剤を放散することができない。
【0368】
<比較例2>
(1)動物忌避組成物の調製及び硬化、並びに動物忌避装置の作製
比較例1において、架橋型ポリマーS203HをポリマーjER(登録商標)828に変更し、動物忌避剤4E2MTを動物忌避剤2MTに変更し、硬化触媒VA及び硬化触媒DEAPAをエチレンジアミンに変更した点以外は、比較例1と同様にして、比較例2の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置を作製した。
【0369】
(2)物性評価
比較例2の動物忌避組成物の硬化物について、JIS Z0208:1976(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))で規定される25℃での水蒸気透過度が2.3g/(m2・24時間)であった。
また、比較例2の動物忌避組成物の硬化物について、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」で規定される3号ダンベルの破断強度及び伸びは硬化物の強度が高すぎて測定不能であり、また、JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」で規定するタイプEデュロメータ測定による硬度は測定上限値を超過した。また、比較例1と同様にして測定した動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失正接tanδは0.9と小さく、比較例2のゴム弾性は全く観察されなかった。
【0370】
(3)忌避効果
比較例1の(4)忌避効果と同様の方法にて、比較例2の動物忌避組成物の忌避効果を評価した。その結果、比較例2の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置では、設置初期及び1年間経過後のいずれにおいても、ネズミに対する十分な忌避効果は認められなかった。比較例2の動物忌避組成物の硬化物は、高強度及び高架橋密度であることから、動物忌避剤の放散が十分に行われていなかったと推測された。
【0371】
<実施例5>
(1)動物忌避組成物の調製及び硬化、動物忌避装置の作製
比較例1において、架橋型ポリマーS203Hを架橋型ポリマーSA100Sに変更した点以外は、比較例1と同様にして、実施例5の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置を作製した。
【0372】
(2)物性評価
実施例5の動物忌避組成物の硬化物について、JIS Z0208:1976(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))で規定される25℃での水蒸気透過度が40g/(m2・24時間)であった。
また、実施例5の動物忌避組成物の硬化物について、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」で規定される3号ダンベルの破断強度は0.25MPa、破断伸びは100%であった。JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」で規定するタイプEデュロメータ測定による硬度は28であり、また、比較例1と同様にして測定した動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失正接tanδは2.0であった。この結果から、実施例5の硬化物はゴム弾性を有することが示された。
【0373】
(3)忌避効果
比較例1の(4)忌避効果と同様の方法にて、実施例5の動物忌避組成物の忌避効果を評価した。実施例5の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置では、設置初期においてネズミに対する忌避効果が認められただけでなく、前記装置設置から1年間経過後にもネズミに対する忌避効果を確認できた。したがって、実施例5の動物忌避組成物の硬化物は、動物忌避剤の活性を損なうことなく長期間に亘って動物忌避剤を放散し、忌避効果を維持できることが示された。このことから実施例5の動物忌避組成物の硬化物のように、水蒸気透過度が十分に低い上に、ゴム弾性を有する硬化物であれば、長期間動物忌避剤を放散させることができると推測された。
【0374】
<実施例6>
(1)動物忌避組成物の調製及び硬化
200mLのディポカップに、架橋型ポリマーRC100Cを100質量部、動物忌避剤4E2MTを40質量部、光ラジカル開始剤Omnirad1173を0.02質量部、及び光ラジカル開始剤Omnirad819を0.01質量部添加し、薬さじにてよく混合後、脱泡を行い、動物忌避組成物を調製した。
得られた動物忌避組成物をポリスチレン製の30mL容量(直径Φ33mm×高さ65mm)の容器(試薬瓶)に充填後、高圧水銀ランプにより積算光量3000mJ/cm2のUV光を照射して、動物忌避組成物を硬化させた。
【0375】
(2)動物忌避装置の作製
その後、
図7に示すように空隙部分の頭頂部に膜状部材としてポリエチレンラップ(Newポリラップ、30cm×50cm、宇部フィルム株式会社製)を貼合して、周辺をビニールテープで固定して、実施例6の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置を作製した。
【0376】
(3)物性評価
実施例6の動物忌避組成物の硬化物について、JIS Z0208:1976(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))で規定される25℃での水蒸気透過度が37g/(m2・24時間)であった。
また、実施例6の動物忌避組成物の硬化物について、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」で規定される3号ダンベルの破断強度が0.28MPa、破断伸びは110%であり、また、JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」で規定するタイプEデュロメータ測定による硬度は25であり、また、比較例1と同様にして測定した動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失正接tanδは1.9であった。前述の結果から、実施例6の硬化物はゴム弾性を有することが示された。
【0377】
(4)忌避効果
比較例1の(4)忌避効果と同様の方法にて、実施例6の動物忌避組成物の忌避効果を評価した。実施例6の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置では、設置初期においてネズミに対する忌避効果が認められただけでなく、前記装置設置から1年間経過後にもネズミに対する忌避効果を確認できた。したがって、実施例6の動物忌避組成物の硬化物は、動物忌避剤の活性を損なうことなく長期間に亘って動物忌避剤を放散し、忌避効果を維持できることが分かった。
【0378】
<実施例7>
(1)動物忌避組成物の調製及び硬化、動物忌避装置の作製
実施例6において、架橋型ポリマーRC100Cを60質量部、架橋型ポリマーMM100Cを40質量部、動物忌避剤4E2MTを動物忌避剤2MTに変更した点以外は、実施例6と同様にして、実施例7の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置を作製した。
【0379】
(2)物性評価
実施例7の動物忌避組成物の硬化物について、JIS Z0208:1976(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))で規定される25℃での水蒸気透過度が35g/(m2・24時間)であった。
また、実施例7の動物忌避組成物の硬化物について、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」で規定される3号ダンベルの破断強度が0.15MPa、破断伸びは170%であり、また、JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」で規定するタイプEデュロメータ測定による硬度は13であり、また、比較例1と同様にして測定した動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失正接tanδは2.1であった。前述の結果から、実施例7の硬化物はゴム弾性を有することが示された。
【0380】
(3)忌避効果
比較例1の(4)忌避効果と同様の方法にて、実施例7の動物忌避組成物の忌避効果を評価した。実施例7の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置では、設置初期においてネズミに対する忌避効果が認められただけでなく、前記装置設置から1年間経過後にもネズミに対する忌避効果を確認できた。したがって、実施例7の動物忌避組成物の硬化物は、動物忌避剤の活性を損なうことなく長期間に亘って動物忌避剤を放散し、忌避効果を維持できることが分かった。
【0381】
<実施例8>
(1)動物忌避組成物の調製及び硬化、動物忌避装置の作製
実施例6において、反応性希釈剤IBXAを20質量部添加した点以外は、実施例6と同様にして、実施例8の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置を作製した。
【0382】
(2)物性評価
実施例8の動物忌避組成物の硬化物について、JIS Z0208:1976(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))で規定される25℃での水蒸気透過度が15g/(m2・24時間)であった。
また、実施例8の動物忌避組成物の硬化物について、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」で規定される3号ダンベルの破断強度が3.3MPa、破断伸びは300%であり、また、JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」で規定するタイプEデュロメータ測定による硬度は5であり、また、比較例1と同様にして測定した動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失正接tanδは2.2であった。前述の結果から、実施例8の硬化物はゴム弾性を有することが示された。
【0383】
(3)忌避効果
比較例1の(4)忌避効果と同様の方法にて、実施例8の動物忌避組成物の忌避効果を評価した。実施例8の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置では、設置初期においてネズミに対する忌避効果が認められただけでなく、前記装置設置から1年間経過後にもネズミに対する忌避効果を確認できた。したがって、実施例8の動物忌避組成物の硬化物は、動物忌避剤の活性を損なうことなく長期間に亘って動物忌避剤を放散し、忌避効果を維持できることが分かった。
【0384】
<実施例9>
(1)動物忌避組成物の調製及び硬化、動物忌避装置の作製
実施例5において、動物忌避剤4E2MTを動物忌避剤2MTに変更した点以外は、実施例5と同様にして、実施例9の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置を作製した。
【0385】
(2)物性評価
実施例9の動物忌避組成物の硬化物について、JIS Z0208:1976(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))で規定される25℃での水蒸気透過度が45g/(m2・24時間)であった。
また、実施例9の動物忌避組成物の硬化物について、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」で規定される3号ダンベルの破断強度が0.24MPa、破断伸びは95%であり、また、JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」で規定するタイプEデュロメータ測定による硬度は25であり、また、比較例1と同様にして測定した動的粘弾性測定時のガラス転移点における損失正接tanδは2.0であった。前述の結果から、実施例9の硬化物はゴム弾性を有することが示された。
【0386】
(3)忌避効果
比較例1の(4)忌避効果と同様の方法にて、実施例9の動物忌避組成物の忌避効果を評価した。実施例9の動物忌避組成物の硬化物を含む動物忌避装置では、設置初期においてネズミに対する忌避効果が認められただけでなく、前記装置設置から1年間経過後にもネズミに対する忌避効果を確認できた。したがって、実施例9の動物忌避組成物の硬化物は、動物忌避剤の活性を損なうことなく長期間に亘って動物忌避剤を放散し、忌避効果を維持できることが分かった。
比較例1~2及び実施例5~9における硬化物の成分及び硬化条件を以下の表7に示す。
【0387】
【0388】
表7中の各成分の内容は以下のとおりである。
(ポリマー)
S203Hは、オキシアルキレン重合体で構成されるMSポリマー(株式会社カネカ製、S203H、数平均分子量(Mn)11,000、D末端)であり、シロキサン架橋型オキシアルキレン重合体を形成する。
SA100Sは、(メタ)アクリル系重合体で構成されるXMAP系樹脂(SA100S、数平均分子量(Mn)22,000、D末端、株式会社カネカ製)であり、シロキサン架橋型(メタ)アクリル系重合体を形成する。
RC100Cは、(メタ)アクリル系重合体で構成されるXMAP系樹脂(株式会社カネカ製、RC100C、数平均分子量(Mn)28,000、アクリロイル末端)であり、MM100C(株式会社カネカ製、MM100C、数平均分子量(Mn)14,000、アクリロイル片末端)と組み合わせてラジカル架橋型(メタ)アクリル系重合体を形成する。
jER(登録商標)828(三菱化学株式会社製)は、エポキシ樹脂を形成する。
【0389】
(反応性希釈剤)
反応性希釈剤として、イソボルニルアクリレート(商品名:IBXA、共栄社化学株式会社製)を用いた。
【0390】
(動物忌避剤)
動物忌避剤として、2MT(2-メチル-2-チアゾリン、東京化成工業株式会社製)、又は4E2MT(4-エチル-2-メチルチアゾリン、東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0391】
(硬化触媒)
硬化触媒(酸/アミン併用系触媒)として、VA(ネオデカン酸、八洲薬品株式会社製)及びDEAPA(3-ジエチルアミノプロピルアミン、光栄化学工業株式会社製)、又はエポキシ樹脂用硬化剤としてエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0392】
(光ラジカル開始剤)
光ラジカル開始剤として、Omnirad1173(α-ヒドロキシアセトフェノン、BASFジャパン株式会社製)及びOmnirad819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)、BASFジャパン株式会社製)を用いた。
【0393】
比較例1~2及び実施例5~9における実験結果を以下の表8に示す。
【0394】
【0395】
比較例1~2及び実施例5~9で作製した硬化物では、実施例1の(3)で観察されたような硬化物表面の白化は観察されなかった。
【0396】
<比較例3、実施例10~11>
遊星式攪拌脱泡機(泡取り練太郎ARE-310((株)シンキ―製)専用の容器(300cc容量)に所定量の樹脂(XMAP等)、忌避剤成分、及び硬化触媒(バーサチック/DEAPA等)を所定量秤量し、同攪拌脱泡機にセットして、先ずは回転数1600rpm×1.5分間攪拌混合(自転、公転の組合せ)を行った。続いて2200rpm×2分間遠心脱泡を行い、配合物を作製した。
【0397】
得られた配合物を、下記ポリスチレン製30cc量のバイアル瓶に25g分泡無く注ぎ、上部の蓋を取りポリエチレン製のラップを被せた状態で23℃×55%RH条件下で所定期間(7日間)養生して忌避剤含有硬化物を得た。
【0398】
上記忌避剤を含む硬化物を充填した容器を上部にポリエチレン製のラップで覆った状態まで、屋外或いは屋内の所定の場所に曝露を行い、対象動物に対する忌避効果、徐放性を確認した。
【0399】
比較例3及び実施例10~11の実験手順を
図8のフローチャートに示す。比較例3及び実施例10~11の結果を以下の表9に示す。なお、比較例3及び実施例10~11で作製した硬化物では、実施例1の(3)で観察されたような硬化物表面の白化は観察されなかった。
【0400】
【0401】
実施例10~11の結果から、(メタ)アクリル系重合体のラジカル架橋によって形成される架橋型重合体、及びポリオレフィン重合体のウレタン架橋によって形成される架橋型重合体により、動物忌避剤が活性を損なうことなく長期間に亘って放散され、忌避効果を維持できることが示された。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。